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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】モータ及びバルブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20220801BHJP
   F16K 31/53 20060101ALI20220801BHJP
   F16K 3/08 20060101ALI20220801BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20220801BHJP
   H02K 1/30 20060101ALI20220801BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H02K7/116
F16K31/53
F16K3/08
F16K31/04 A
H02K1/30 Z
H02K1/28 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018104893
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019213273
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/081037(WO,A1)
【文献】特開2014-236650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 7/00- 7/20
F16K 3/00- 3/36
F16K 31/00-31/05
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットがロータ本体の外周に固定され、前記ロータ本体に一体回転部が組付けられているロータと、
前記ロータを回転可能に支持する支軸と、を備え、
前記マグネットは、
円筒形状であり、
円筒部分の周方向にN極とS極の対の複数組が交互に配置され、
前記ロータ本体を該マグネットに固定する際の位置決め用目印を前記円筒部分の周面ではなく上面と下面の少なくとも一方に有し、
前記一体回転部と前記ロータ本体は、設定された相対配置で組付け可能に構成されている、ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載されたモータにおいて、
前記ロータ本体は、前記マグネットにインサート成形で固定されている、ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたモータにおいて、
前記位置決め用目印は前記マグネットに形成された切欠きである、ことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたモータにおいて、
前記位置決め用目印は、前記マグネットの周方向において磁極の切り替わる位置に設けられている、ことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載されたモータにおいて、
前記一体回転部と前記ロータ本体は、凹部と凸部の嵌め込みで固定されている、ことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項5に記載されたモータにおいて、
前記ロータ本体に凹部が形成され、前記一体回転部に凸部が形成されている、ことを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載されたモータにおいて、
前記凹部及び前記凸部はそれぞれ複数形成され、
複数の前記凹部の内の一つの凹部が他の凹部と形状を異にし、
複数の前記凸部の内の一つの凸部が他の凸部と形状を異にし、
前記一体回転部と前記ロータ本体は、前記一つの凹部と前記一つの凸部が互いに嵌り合う相対配置で組付け可能である、ことを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載されたモータにおいて、
前記凹部及び凸部はそれぞれ複数形成され、
複数の前記凹部の内の一組の周方向における間隔が他の間隔と長さを異にし、
複数の前記凸部の内の一組の周方向における間隔が他の間隔と長さを異にし、
前記一体回転部と前記ロータ本体は、前記長さの異なる間隔を挟んで存在する一組の凹部と前記一組の凸部が互いに嵌り合う相対配置で組付け可能である、ことを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載されたモータにおいて、
前記一体回転部はピニオンを備える動力出力部材であり、該ピニオンの歯が存在する面と干渉しない部位に当接用凸部を少なくとも一つ備えている、ことを特徴とするモータ。
【請求項10】
流体入口、流体出口および弁座面を備え、前記弁座面で前記流体入口および前記流体出口のうちの少なくとも一方の口が開口する基台と、
前記弁座面との間に前記流体入口および前記流体出口が連通するバルブ室を区画しているカバーと、
前記バルブ室内に回転可能に配置され、前記弁座面と摺動する接触面を備え、回転することで前記流体の流路の切り換えが行われる弁体と、
前記弁座面と直交する軸線回りに前記弁体を回転させる弁体駆動機構と、を備えるバルブ駆動装置であって、
前記弁体駆動機構は、請求項1から9のいずれか一項に記載されているモータを動力源として前記弁体を回転させる、ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項11】
請求項10に記載されたバルブ駆動装置において、
モータの前記支軸は、一端部が前記基台に回転不能に固定され、
前記支軸の前記一端側であって、前記基台と前記ロータ本体との間にピニオンを備える動力出力部材が配置され、
前記ピニオンと噛み合う減速歯車を介して、前記弁体が回転するように構成されている、ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、詳しくは、ロータを支軸に回転可能に支持するモータ、更に該モータを備えたバルブ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のモータとして、特許文献1に記載されているモータが挙げられる。このモータは、円筒形状のマグネットの内周にロータ本体が固定され、前記ロータ本体にピニオンが組付けられているロータと、前記ロータを回転可能に支持する支軸とを備える。前記ロータは、通常、周方向にN極とS極が交互に着磁された前記マグネットに樹脂材よりなる前記ロータ本体をインサート成形して固定し、そのロータ本体に前記ピニオンを嵌め込んで固定することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5615993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータのロータは、円筒形状の着磁前基材(フェライト材等)にN極とS極を周方向に交互の配置になるように着磁してマグネットを作る際に各磁極の着磁位置について誤差(製造時の誤差)が出る。次に、各磁極が着磁されたマグネットに前記ロータ本体をインサート成形で固定する際にも誤差(製造時の誤差)が出る。更に、前記マグネットに固定された状態の前記ロータ本体に前記ピニオンを嵌め込んで組付けるが、その組付けの際にも誤差(組付け時の誤差)が出る。
従来は、上記誤差の内、製造時の誤差は考慮されている。しかし、組み付け時の誤差については考慮されていない。
その結果、前記「製造時の誤差」と「組み付け時の誤差」が組み合わさることよる位置ずれについて従来は考慮されていない。
そのため、前記マグネットの磁極の位置と前記ピニオンの歯の相対位置は、各ロータ毎にバラツキが出る問題がある。
例えば冷蔵庫の冷媒バルブ等の流路切り換え用の弁体を回転するために用いられるモータは、前記ロータの回転量に対する前記ピニオンの歯の位置を高精度で合わせることが必要となる場合がある。このような用途の場合に、従来のロータを有するモータでは対応するのが難しい。
【0005】
本発明の目的は、マグネットの磁極の位置とロータ本体と一体に回転する一体回転部の回転位置(例えばピニオンの歯の位置)との相対位置について、各ロータ毎にバラツキが出ることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るモータは、マグネットがロータ本体の外周に固定され、前記ロータ本体に一体回転部が組付けられているロータと、前記ロータを回転可能に支持する支軸と、を備え、前記マグネットは、前記ロータ本体を該マグネットに固定する際の位置決め用目印を有し、前記一体回転部と前記ロータ本体は、設定された相対配置で組付け可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、「設定された相対配置で組付け可能」とは、前記一体回転部と前記ロータ本体は、両者の相対配置が自由な配置で組付けることはできず、少なくとも一つの限られた相対配置で組付けできることを意味する。
【0008】
本態様によれば、前記マグネットは、前記ロータ本体を該マグネットに固定する際の位置決め用目印を有しているので、この位置決め用目印を基準位置として、円筒形状の着磁前基材にN極とS極を周方向に交互の配置になるように着磁して作ることで、前記位置決め用目印という一つの基準位置に対して各磁極を配置させることが可能となる。これにより、各磁極の着磁位置のバラツキを低減することができる。
そして、各磁極が着磁されたマグネットに対してロータ本体をインサート成形等によって一体化して固定することで、前記マグネットの磁極の位置に対する当該ロータ本体の位置を、前記位置決め用目印という一つの基準位置に対して配置させることが可能となる。
更に、ピニオン等の前記一体回転部と前記ロータ本体は、設定された相対配置で組付け可能に構成されているので、該一体回転部は前記ロータ本体部を介して前記マグネットの磁極の位置に対する当該一体回転部の位置を、前記位置決め用目印という一つの基準位置に対して配置させることが可能となる。
従って、前記「製造時の誤差」と「組み付け時の誤差」が組み合わさることによる位置ずれを抑制することができる。即ち、前記マグネットの磁極の位置と前記一体回転部、例えばピニオンの歯等との相対位置について、各ロータ毎にバラツキが出ることを抑制することができる。
【0009】
本発明に係る上記モータにおいて、前記ロータ本体は、前記マグネットにインサート成形で固定されていることを特徴とする。
【0010】
ロータ本体がマグネットにインサート成形で固定されている構造のロータを備えるモータに効果的に適用することができる。
【0011】
本発明に係る上記モータにおいて、前記位置決め用目印は前記マグネットに形成された切欠きであることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記位置決め用目印は切欠きという機械的な構造のものであるので、目印として使いやすい。
【0013】
本発明に係る上記モータにおいて、前記位置決め用目印は、前記マグネットの周方向において磁極の切り替わる位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
一つの磁極の位置に前記切欠きを設けると、仮にその切欠きから少しの割れが発生した場合に、同極同士の反発力が発生してマグネットが破損しやすくなる問題がある。しかし、本態様によれば、前記位置決め用目印は、前記マグネットの周方向において磁極の切り替わる位置に設けられているので、前記問題が生じる虞は少ない。
【0015】
本発明に係る上記モータにおいて、前記一体回転部と前記ロータ本体は、凹部と凸部の嵌め込みで固定されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記一体回転部と前記ロータ本体は、凹凸の嵌め込みで固定されているので、固定構造がシンプルである。
【0017】
本発明に係る上記モータにおいて、前記ロータ本体に凹部が形成され、前記一体回転部に凸部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記ロータ本体に凹部が形成され、前記一体回転部に凸部が形成されているので、固定構造がシンプルである。
【0019】
本発明に係る上記モータにおいて、前記凹部及び前記凸部はそれぞれ複数形成され、複数の前記凹部の内の一つの凹部が他の凹部と形状を異にし、複数の前記凸部の内の一つの凸部が他の凸部と形状を異にし、前記一体回転部と前記ロータ本体は、前記一つの凹部と前記一つの凸部が互いに嵌り合う相対配置で組付け可能であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記一体回転部と前記ロータ本体が設定された相対配置で組付け可能となる構造を容易に実現することができる。
【0021】
本発明に係る上記モータにおいて、前記凹部及び前記凸部はそれぞれ複数形成され、複数の前記凹部の内の一組の周方向における間隔が他の間隔と長さを異にし、複数の前記凸部の内の一組の周方向における間隔が他の間隔と長さを異にし、前記一体回転部と前記ロータ本体は、前記長さの異なる間隔を挟んで存在する一組の凹部と前記一組の凸部が互いに嵌り合う相対配置で組付け可能である、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記態様と同様、前記一体回転部と前記ロータ本体が設定された相対配置で組付け可能となる構造を容易に実現することができる。また、前記態様と組み合わせた場合には、前記設定された相対配置での前記一体回転部と前記ロータ本体との組付けが一層確実になる。
【0023】
本発明に係る上記モータにおいて、前記一体回転部はピニオンを備える動力出力部材であり、該ピニオンの歯が存在する面と干渉しない部位に凸部を少なくとも一つ備えていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記一体回転部はピニオンを備える動力出力部材であり、該ピニオンの歯が存在する面と干渉しない部位に当接用凸部を少なくとも一つ備えている。この構造では前記当接用凸部も前記ピニオンの歯と同様に前記磁極に対する前記組み付け時の誤差が出るが、本態様によれば、前記位置決め用目印という一つの基準位置に対して前記当接用凸部を配置させることが可能となる。これにより、前記当接用凸部を有する一体回転部とロータ本体間の組付け時の誤差を低減することができる。
【0025】
本発明に係るバルブ駆動装置は、流体入口、流体出口および弁座面を備え、前記弁座面で前記流体入口および前記流体出口のうちの少なくとも一方の口が開口する基台と、前記弁座面との間に前記流体入口および前記流体出口が連通するバルブ室を区画しているカバーと、前記バルブ室内に回転可能に配置され、前記弁座面と摺動する接触面を備え、回転することで前記流体の流路の切り換えが行われる弁体と、前記弁座面と直交する軸線回りに前記弁体を回転させる弁体駆動機構と、を備えるバルブ駆動装置であって、前記弁体駆動機構は、上記態様に記載されているモータを動力源として前記弁体を回転させることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、流体の流量を調整する弁体駆動機構を備えるバルブ駆動装置において、上記いずれか一つの態様のモータを前記弁体駆動機構の動力源として前記弁体を回転させることで、前記各態様の効果を得ることができる。
【0027】
本発明に係る上記バルブ駆動装置において、モータの前記支軸は、一端部が前記基台に回転不能に固定され、前記支軸の前記一端側であって、前記基台と前記ロータ本体との間にピニオンを備える動力出力部材が配置され、前記ピニオンと噛み合う減速歯車を介して、前記弁体が回転するように構成されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、前記ピニオンと噛み合う減速歯車を介して、前記弁体が回転するように構成されている。これにより、減速歯車によりモータの回転を減速して伝達することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、マグネットの磁極の位置とロータ本体と一体に回転する一体回転部の回転位置(例えばピニオンの歯の位置)との相対位置について、各ロータ毎にバラツキが出ることを抑制することができるモータ及びそれを備えるバルブ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態を示す図で、バルブ駆動装置の外観を表す斜視図。
図2】本発明の実施形態を示す図で、バルブ駆動装置の内部構造を表す分解斜視図。
図3】本発明の実施形態を示す図で、バルブ駆動装置を一部破断して表す斜視図。
図4】本発明の実施形態を示す図で、モータとバルブ駆動装置を表す側断面図。
図5】本発明の実施形態を示す図で、第2軸受部材を表す斜視図。
図6】本発明の実施形態を示す図で、マグネットとロータ本体が組み付けられたロータを表す下面を上にした状態の斜視図。
図7】本発明の実施形態を示す図で、ロータに一体回転部を組付ける状態を表す斜め下方からの分解斜視図。
図8A】本発明の実施形態を示す図で、ロータに一体回転部を組付けた状態を表す平面図。
図8B】本発明の実施形態の変形例を示す図で、ロータに一体回転部を組付けた状態を表す平面図。
図9】本発明の実施形態を示す図で、ロータと一体回転部と弁体駆動機構を組付けた状態を表す斜め下方からの斜視図。
図10】本発明の実施形態を示す図で、ロータに組み付けられたステータの外観を表す斜視図。
図11】本発明の実施形態を示す図で、マグネットとステータコアと位置決め用目印の位置関係を表す平面図。
図12】本発明の実施形態を示す図で、バルブ駆動装置を表すカバーを取り外した状態の斜視図。
図13】本発明の実施形態を示す図で、弁体駆動機構を表す分解斜視図。
図14】本発明の実施形態を示す図で、基台と弁体の位置関係を表す斜視図。
図15】本発明の実施形態を示す図で、弁体を表す底面側からの斜視図。
図16】本発明の実施形態を示す図で、弁体の回転角度(step数)と弁体の開閉動作の関係を表すグラフ。
図17】本発明の実施形態を示す図で、弁体が原点位置から図16の各ステップ回転した状態の弁体と弁座面の位置関係を表す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るモータ及びバルブ駆動装置を、図1図7図8A図8B図9図16図17に表す実施形態を例にとって、これらの図面に基づいて詳細に説明する。
尚、以下の説明では最初に図1図8Bに基づいて本実施形態のモータの概略の構成と、該モータを備える本実施形態のバルブ駆動装置の概略の構成について説明する。
次に、図3図11に基づいて本実施形態のモータの具体的構成と、その作用、効果について説明する。
【0032】
次に、図1図4に及び図12図15に基づいて本実施形態のバルブ駆動装置の具体的構成について説明し、続いて図16図17に基づいて本実施形態のバルブ駆動装置の作動態様を、弁体の回転角度(step数)と弁体の開閉動作の関係を中心に説明し、その後、本実施形態のバルブ駆動装置の作用、効果に言及する。
最後に、このようにして構成される本実施形態とは部分的構成を異にする本発明の他の実施形態について簡単に説明する。
【0033】
(1)モータの概略の構成(図1図8B参照)
本発明の実施形態に係るモータ1は、マグネット3がロータ本体5の外周に固定され、ロータ本体5に一体回転部12が組付けられているロータ7と、ロータ7を回転可能に支持する支軸9と、を備える。
そして、マグネット3は、ロータ本体5をマグネット3に固定する際の位置決め用目印85を有しており、一体回転部12とロータ本体5は、設定された相対配置で組付け可能に構成されている。
ここで、「設定された相対配置で組付け可能」とは、一体回転部12とロータ本体5は、両者の相対配置が自由な配置で組付けることができず、少なくとも一つの限られた相対配置で組付けることができることを意味する。具体的には、一体回転部12とロータ本体5は、周方向Rには相対位置を変化させることができず、設定された一義的に定まる相対配置でのみ組み付けることができることを意味している。
【0034】
また、図示のモータ1では、一体回転部12は、ロータ7の支軸9の長手方向Zにおける一端A側において支軸9に対して一例としてクリアランスを有する状態で摺動可能に設けられている第1軸受部11の下方に位置している。
また、ロータ7の支軸9の長手方向Zにおける他端B側には、支軸9に対して弾性的に押し付けられた状態で摺動可能に接触する一例として弾性軸受部15を備えた第2軸受部13が設けられている。
【0035】
また、第1軸受部11と第2軸受部13を介してロータ7が取り付けられた支軸9は、一端A側がモータ1の一例として円板状の基台2に対して回転不能な状態(固定状態)で固定されている。一方、支軸9の他端B側は、基台2の周縁部から図3及び図4中、上方に立ち上げられているカバー4の天板に形成さられている凹部4aに嵌まって回転方向Rに非固定な状態で取り付けられている。
【0036】
また、カバー4を挟んでロータ7の外周には、ステータコア18とコイル19を備えたステータ17が配置されている。ステータ17の外方には、ステータ17の上面の一部と外周面を覆うハウジング21が一例として設けられている。
また、本実施形態では、一体回転部12は、図3及び図4中において上方の位置に、ロータ本体5に設けた係合凹部6に係合する凸部23が設けられており、これら係合凹部6と凸部23を備える凹凸の嵌め込み構造22によってロータ本体5と一体回転部12の相対配置が一義的に定まって両者が一体になって支軸9を回転中心として回転するように構成されている。
更に、一体回転部12は、図3及び図4中において下方の位置に、モータ1によって生起された回転動を外部に出力する動力出力部材の主要な構成であるピニオン25が一体に設けられている。
【0037】
(2)バルブ駆動装置の概略の構成(図1図4参照)
本実施形態に係るバルブ駆動装置31は、流体入口33、流体出口35および弁座面37を有する弁座36を備え、弁座面37で流体入口33および流体出口35のうちの少なくとも一方の口が開口する基台2と、弁座面37との間に流体入口33および流体出口35が連通するバルブ室27を区画しているカバー4と、バルブ室27内に回転可能に配置され、弁座面37と摺動する接触面39を備える。更に、回転することで流体Sの流路の切り換えが行われる弁体38と、弁座面37と直交する軸線L1(図4図9図13図14)の回りに弁体38を回転させる弁体駆動機構41と、を備えている。
そして、弁体駆動機構41は、その動力源として前述したロータ7、支軸9及び一体回転部12を備える本実施形態に係るモータ1を使用している。
【0038】
また、本実施形態では、基台2の中心からモータ1の支軸9が立ち上げられており、支軸9の外方領域に流体入口33と、弁座36を取り付けるための開口29と、が形成されている。
開口29に取り付けられる弁座36には、第1流体出口35Aと、第2流体出口35Bと、の二つの流体出口35が形成されている。そして、流体入口33、第1流体出口35Aおよび第2流体出口35Bには、図3及び図4に表したように、下方に延びる一本の流入管43と二本の流出管45A、45Bがそれぞれ接続されている。
【0039】
(3)モータの具体的構成(図3図11参照)
本実施形態では、モータ1は一例としてステッピングモータによって構成されている。モータ1の第2軸受部13は、図示のように上部に、水平方向に張り出すフランジ部47が形成された一例として円筒状の本体部46と、弾性軸受部15と、を備えている。弾性軸受部15は、本体部46の中心には、所定深さの凹部48が形成されている。そして、凹部48の底面から支軸9の長手方向Zで且つ一体回転部12から離れる方向(図3図4中、上方)に、一例として3つの弾性アーム部49が延設されることで弾性軸受部15が構成されている。
弾性アーム部49は、支軸9の軸線Lを中心とする円弧状に湾曲した板材によって構成されており、該板材の幅寸法と厚みは一例として凹部48の底面に接続される基部側で幾分大きく、支軸9に対して摺動可能に接触するアーム先端側の接触部51で幾分小さくなるように形成されている。
【0040】
また、3つの弾性アーム部49の先端の接触部51の内面の径は、支軸9が挿入される前の状態では、支軸9の外径よりも幾分小さめに形成されている。これにより、3つの弾性アーム部49は、支軸9が3つの弾性アーム部49で囲われる内側に挿入されると支軸9の外径に接触部51が接触するため、該外径に倣って外側に撓み変形し、この撓み変形の反力によって接触部51が支軸9に対して押し付けられるように構成されている。
また、3つの弾性アーム部49は、支軸9の周方向に等分割されて位置しており、本実施形態では、周方向に角度が120°間隔で三分割されて設けられている。
【0041】
また、本体部46のフランジ部47の上面には、凹部48の周面に沿って上方に立ち上げられ、3つの弾性アーム部49を外方から囲う囲い部53が備えられている。
そして、本実施形態では、弾性アーム部49の延設の方向を高さ方向としたときの弾性アーム部49のアーム先端位置の高さH1が囲い部53の高さH2よりも低くなるように形成されている。
【0042】
また、本実施形態では、ロータ本体5は、マグネット3に対して一例としてインサート成形により一体成形されている。
また、本実施形態では位置決め用目印85は、マグネット3に形成された切欠き86によって構成されている。具体的にはマグネット3の下面(一端A側の端面)の180°対向する位置に設けられる2つのU字形の溝部によって形成される切欠き86によって位置決め用目印85は構成されている。
【0043】
また、本実施形態では、位置決め用目印85は、図11に表したように、マグネット3の周方向Rにおいて磁極の切り替わる位置に設けられている。具体的には、マグネット3の周方向Rにおいて4つずつ、N極87と、S極89が交互に配置されている場合に、図中上部のD点で示すN極87とS極89の境界位置と、図中下部のE点で示すS極89とN極87の境界位置と、の2ケ所に切欠き86によって構成されている位置決め用目印85が形成されている。
尚、図11中、18a~18dで示すステータコアは、図10中のステータコア18a~18dに対応している。
【0044】
また、本実施形態では係合凹部6と凸部23は、それぞれ複数形成されている。複数の係合凹部6の内の一つの係合凹部6aが他の係合凹部6b、6cと形状を異にし、複数の凸部23の内の一つの凸部23aが他の凸部23b、23cと形状を異にし、一体回転部12とロータ本体5は、前記一つの係合凹部6aと一つの凸部23aが互いに嵌り合う相対配置で組付けることが可能に構成されている。
具体的には、図8Aに表すように3つの係合凹部6a、6b、6cと、3つの凸部23a、23b、23cと、が周方向Rに等間隔で設けられており、このうち一組の係合凹部6aと凸部23aの周方向Rの長さを表す角度θ1が100°、残りの二組の係合凹部6bと凸部23b及び係合凹部6cと凸部23cの周方向Rの長さを表す角度θ2、θ3がそれぞれ85°に設定されている。
このような係合凹部6と凸部23を採用することによって一体回転部12とロータ本体5の周方向Rにおける相対配置が一義的に定まる。
【0045】
また、図8Bの変形例に表すように、係合凹部6と凸部23をそれぞれ3つずつ形成し、これらの形状をすべて同じにするが、3組の係合凹部6と凸部23の内の一組の周方向Rにおける間隔91aを他の間隔91b、91cと長さを異にすることで、一体回転部12とロータ本体5の周方向Rの相対配置を一義的に定めることも可能である。
因みに、図8Bでは、前記一組の間隔91aの周方向Rの長さを表す角度がα1、残りの二組の間隔91b、91cの周方向Rの長さを表す角度がα2、α3であり、それぞれの関係はα1≠α2=α3になっている。
【0046】
また、本実施形態では、図3図4に表したように、第2軸受部13とカバー4の天板の内面との間に一例として板バネ様のバネ座金によって構成される弾性部材55が縮設されている。
そして、図5に表したように、第2軸受部13の囲い部53の上面が、弾性部材55が当接する受部57になっている。そして、この受け部57によって弾性部材55が有する一端A側への付勢力を受け、以って第2軸受部13の上方への脱落や移動を規制するように構成されている。
【0047】
また、3つの弾性アーム部49の先端の接触部51における内面の曲率半径は、接触する支軸9の外径の曲率半径とほぼ同じになるように設定されている。これにより、弾性軸受部15は支軸9に対して面接触するように構成されている。
また、本実施形態では、第2軸受部13は、ロータ本体5と別体の部材によって形成されており、ロータ本体5に係合されて一体に回転するように構成されている。即ち、第2軸受部13の本体部46をロータ本体5に形成された凹部8に挿入して両者を係合させることで、第2軸受部13がロータ本体5と一体になって回転するように構成されている。
また、一体回転部12も、ロータ本体5と別体の部材によって形成されている。上記したように、一体回転部12の凸部23を凹凸の嵌め込み構造22の他の構成部材であるロータ本体5に形成された係合凹部6に挿入して両者を係合させることで、一体回転部12がロータ本体5と一体になって回転するように構成されている。
【0048】
また、本実施形態では、図5に表したように、ロータ本体5の凹部8の内周面には、係合される第2軸受部13の本体部46の外周面に圧接状態で接触することで第2軸受部13を保持して、第2軸受部13のロータ本体5に対する位置を決める(固定された状態にする)複数の凸部59が周方向に間隔をあけて設けられている。
更に、本実施形態ではロータ本体5の支軸9の外周面と対向する部分であって第1軸受部11と第2軸受部13の間の領域には、支軸9と接触しないように第1軸受部11の内径よりも内径が大径に形成される逃げ部61が設けられている。
【0049】
そして、このようにして構成される本実施形態に係るモータ1によれば、位置決め用目印85である切欠き86が形成されているマグネット3の位置を基準位置として、マグネット3とロータ本体5をインサート成形等により一体化して固定することができる。これにより、円筒形状の着磁前基材に対してN極87とS極89を周方向Rに交互に配置する着磁の段階と、マグネット3とロータ本体5をインサート成形等により一体化する段階と、で発生するマグネット3の磁極(N極87とS極89)の位置とロータ本体5の周方向Rにおける製造時の位置ずれを低減することが可能である。
また、一体回転部12とロータ本体5に設けた凹凸の嵌め込み構造22の採用によって、一体回転部12とロータ本体5は、設定された相対配置で組付け可能になっているので、一体回転部12はロータ本体5を介してマグネット3の磁極(N極87とS極89)の位置に対する一体回転部12の位置を、位置決め用目印85(切欠き86)という一つの基準位置に対して配置させることが可能となる。即ち、一体回転部12とロータ本体5の周方向Rの位置ずれを小さくし、組付け時の誤差を小さくして、モータ1の正確な回転を安定して継続することが可能になる。
【0050】
(4)バルブ駆動装置の具体的構成(図1図4及び図12図15参照)
本実施形態に係るバルブ駆動装置31は、例えば冷蔵庫の庫内冷却用の冷媒(流体)Sの供給量を調節するために使用される。図1に表したように、バルブ駆動装置31は、モータ1、基台2、カバー4、弁座36、弁体38及び弁体駆動機構41が収容されているバルブ本体63と、バルブ本体63から平行に延びる一本の流入管43と、二本の流出管45A、45Bと、を有している。
また、バルブ本体63には、外部に設けられる制御装置との電気的な接続を確保するための図示しないコネクタと、バルブ駆動装置31を冷蔵庫内等に取り付けるための取付けプレート65と、が備えられている。
【0051】
バルブ本体63の内部には、前述したように一例として円板状の基台2と、基台2を覆い、下部で径が大きく上部で径の小さな段付きカップ状で一例として非磁性材料(例えばステンレス鋼製)のカバー4が設けられている。また、基台2とカバー4によって密閉された内部空間がバルブ室27になっている。また、基台2には開口29が形成されており、この開口29を利用して弁座36が取り付けられている。
また、基台2の外周縁には環状の段部67が形成されていて、この段部67にカバー4の開口した底部外周縁に形成されているフランジ部4bが係合して取り付けられるように構成されている。
【0052】
弁座36は、一例として上部が小径、下部が大径の段付きの円板状の部材で、弁座36には支軸9の長手方向Zに貫通する二つの流体出口35A、35Bが形成されている。
また、弁座36の平坦な上面は弁座面37になっており、流体出口35A、35Bに対して下方から二本の流出管45A、45Bがそれぞれ取り付けられている。
【0053】
また、弁座36の中心には、弁座面37と交差する支軸9の長手方向Zに平行に延びる取付け軸69が立ち上げられている。取り付け軸69の上端部は、バルブ室27内に配置される図示しない支持プレートによって一例として支持されている。尚、取付け軸69の軸線L1は、支軸9の軸線Lと平行で一定距離オフセットされた基台2の外周寄りの位置に設けられている。
取付け軸69には、円板状の弁体38が回転可能な状態で取付けられている。この弁体38は、取付け軸69の軸線L1回りに回転可能な状態で弁座面37上に載置されている。
【0054】
弁体38は、図14及び図15に表したように、上部と下部で異なる断面形状を有しており、上部の断面形状は円形、下部の断面形状は円形の一部(例えば160°位の範囲)を切除した扇形に形成されている。
また、扇形に形成された弁体38の底面が弁座面37と接触する接触面39になっており、この扇形部分が当該弁体38の閉領域C、残りの切除された部分が開領域Oになっている。この他、弁体38の閉領域Cには、冷媒Sの流量を微調整するための絞り孔71が形成されている。
【0055】
弁体駆動機構41は、駆動源としてモータ1を使用しており、該モータ1の支軸9の一端A側において、一体回転部12に一体に設けられているピニオン25と、ピニオン25と噛み合う減速歯車73と、更に弁体38と、を備えることによって一例として構成されている。
尚、減速歯車73は、ピニオン25よりも大径で歯数が多く形成されており、これにより出力歯車73とピニオン25は減速機構を構成している。
【0056】
また、図13に表したように、本実施形態では、弁体38が原点に復帰する時に生じる衝撃音を小さくするための機構としてロータ脱調抑制機構75が設けられている。そして、このロータ脱調抑制機構75は、減速歯車73に設けられ回動軸L2を中心に回動するレバー77と、ピニオン25の上部において支軸9の長手方向Zと平行に延びる一例として4つの当接用凸部79と、常時レバー77をピニオン25側に圧接するように付勢する一例として捩じりコイルバネによって構成される付勢バネ81と、を備えることによって一例として構成されている。
【0057】
一体回転部12はピニオン25を備える動力出力部材であり、ピニオン25の歯が存在する面と干渉しない部位に当接用凸部79を上記の通り一つ以上備えている。この構造では当接用凸部79もピニオン25の歯と同様に磁極(N極87とS極89)に対する前記組み付け時の誤差が出るが、本実施形態によれば、位置決め用目印85という一つの基準位置に対して当接用凸部79を配置させることが可能となる。これにより、当接用凸部79を有する一体回転部12とロータ本体5間の組付け時の誤差を低減することができる。
【0058】
さらに、レバー77が取り付けられる部位の減速歯車73には欠歯部83が形成されていて、この欠歯部83とピニオン25が対向したときに、ピニオン25が空転して減速歯車73に回転が伝達されないように構成されている。即ち、ロータ7と一体にピニオンが回転を継続しても、この回転は前記欠歯部83の存在によって空転となり、減速歯車73には伝わらない。この空転時には、ピニオン25の上部に位置する凸部79がレバー77を付勢バネ81のバネ力に抗して押して後退させることで、脱調なくピニオン25の回転が継続される。
弁体38の開閉動作を行うために、ピニオンを前記と逆方向(正転方向)に回転させると、先ずは凸部79がレバー77の被当接部に当接し、該レバー77が押され、これにより減速歯車73が回転し始め、ピニオン25が減速歯車73の欠歯部83ではない歯車部分と対向する位置関係になって噛み合い、その後はピニオン25から動力伝達されて減速歯車73が回転し、弁体38の開閉動作が行われる。
また、減速歯車73の下面側と弁体38の上面側には、両者を一体に係合するための図示しない凹凸係合構造が設けられている。
【0059】
(5)バルブ駆動装置の作動態様(図16図17参照)
次に、このようにして構成される本実施形態に係るバルブ駆動装置の作動態様を、弁体38の回転角度(step数)と弁体38の開閉動作の関係を中心に説明する。
バルブ駆動装置31の駆動源となるモータ1に電力を供給し、コイル19に所定の方向の電流を流すと、ロータ7は正転方向に回転を始める。ロータ7の回転は、ロータ本体5に形成されている係合凹部6と一体回転部12に設けられている凸部23を備える凹凸の嵌め込み構造22を介して一体回転部12の下端部に設けられているピニオン25に伝達される。
【0060】
ピニオン25の回転は、ピニオン25に噛み合う減速歯車73に減速された状態で伝達され、減速歯車73と一体になって回転する弁体38に伝達される。
そして、弁体38の回転角度(step数)と弁体38の開閉動作の関係は、図16に表すようになっている。先ず、弁体38が原点位置に位置している状態では、弁体38と弁座面37の位置関係は図17に表すようになっており、弁座面37の第1流体出口35Aと第2流体出口35Bは、共に開状態になっている。
【0061】
従って、流入管45を通って、流体入口33からバルブ室27内に流入した冷媒Sは、二つの流体出口35A、35B及び二本の流出管45A、45Bを通って所定の流量が冷蔵庫の冷却管路に供給される。
尚、この状態は図17に表す弁体38が原点位置(stepS0)からstepS1正転方向に回転した位置でも継続される。
【0062】
弁体38が図17に表す原点位置からstepS2正転方向に回転した位置では、第1流体出口35Aは依然として開状態であるが、第2流体出口35Bは弁体38の接触面39によって、その多くの部分が閉塞される。
ただし、この位置では弁体38に形成されている絞り孔71が第2流体出口35Bと連通しているため、第2流体出口35Bには、絞り孔71を通って流れる流量が制限された冷媒Sが流れ込む。
【0063】
更に、弁体38が正転方向に回転して、図17に表す原点位置からstepS3回転した位置に来ると、絞り孔71と第2流体出口35Bの位置がずれるため、第1流体出口35Aは開状態、第2流体出口35Bは閉状態となる。
更に、弁体38が正転方向に回転して、図17に表す原点位置からstepS4回転した位置に来ると、今度は絞り孔71と第1流体出口35Aの位置が一致し、絞り孔71を通って流れる流量が制限された冷媒Sが第1流体出口35Aに流れ込む。尚、第2流体出口35Bは依然として閉状態である。
【0064】
更に、弁体38が正転方向に回転して、図17に表す原点位置からstepS5回転した位置に来ると、絞り孔71と第1流体出口35Aの位置がずれるため、第1流体出口35Aと第2流体出口35Bは、共に閉状態になる。
そして、弁体38が正転方向に回転して、図17に表す原点位置からstepS6回転した位置に来ると、弁体38の接触面39によって閉塞されていた第2流体出口35Bが開状態となり、第1流体出口35Aは引き続き閉状態になって弁体38による一連の開閉動作が終了する。
【0065】
図17に表す原点位置から正転方向にstepS6回転した位置に弁体38が到達すると、モータ1の回転方向が逆になって弁体38は逆転方向に回転するようになる。そして、弁体38が図17に表す原点位置に戻り、更に弁体38を逆転方向に回転させると、ピニオン25は減速歯車73の欠歯部83と対向する状態になって両者の噛み合いが解除され、前述したロータ脱調抑制機構75が作動して弁体38の原点復帰時の衝撃を小さくして騒音(ノイズ)の発生を抑制する。
次に、モータ1を正転方向に回転させると、ロータ脱調抑制機構75を介して出力歯車73に動力が伝わって回転し、図17のピニオン25と減速歯車73が噛み合う状態に戻る。
【0066】
このようにして構成される本実施形態に係るバルブ駆動装置31によれば、マグネット3の着磁時、マグネット3とロータ本体5との一体成形時及びロータ本体5と一体回転部12の組付け時における誤差の少ないモータ1を有するバルブ駆動装置31が提供できるようになる。
また、モータ1の前記バラツキの少ない製造と組み立てによって、弁体38の円滑で騒音(ノイズ)の小さな弁動作が実行されるようになる。
【0067】
[他の実施形態]
本発明に係るモータ1及びバルブ駆動装置31は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0068】
例えば、弾性アーム部49の数は、前記実施形態では3つとしたが、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。また、弾性軸受部15を弾性アーム部49以外の他の構成(例えば弾性変形可能な合成ゴムやウレタンゴム等)によって構成することも可能である。
また、前記実施形態では第2軸受部13とロータ本体5を別部材によって構成したが、第2軸受部13とロータ本体5を一体成形によって成形することも可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、片持ち式の支軸9に対して第1軸受部11と第2軸受部13を介して設けられるロータ本体5に一体回転部12を適用したが、両持ち式の支軸9に対して設けられるロータ本体5に一体回転部12を適用することも可能である。
また、前記実施形態では、弁座面37に対して流体出口35を設ける構成が採用されているが、弁座面37に対して流体入口33を設けて、基台2の他の部位に流体出口35を設ける構成を採用することも可能である。
【0070】
また、前記実施形態では、弁体駆動機構41としてピニオン25と減速歯車73を使用してモータ1の出力を減速して弁体38に伝える減速方式の構成が採用されているが、ピニオン25と減速歯車73を省略して、ロータ7の回転を直接弁体38に伝える直動方式の弁体駆動機構41を採用することも可能である。
そして、この場合には、前述した構成のロータ脱調抑制機構75は使用できない。従って、弁体38を原点に戻すときに衝撃が発生する場合には、その衝撃を小さくするための他の構成が必要になってくる。
【0071】
また、位置決め用目印85は、前述した実施形態ではU字形断面の溝部によって構成される切欠き86を採用したが、V字形断面、台形の底辺と上辺を天地逆にした形状の断面、あるいは矩形断面の溝部によって構成される切欠き86でもよい。更に、マグネット3の下面側ではなく、上面側に位置決め用目印85を設けてもよく、マグネット3の下面側と上面側の両方に位置決め用目印85を設けてもよい。また、このような切欠き部86に代えて種々の形状の凹部や孔部あるいは凸部によって位置決め用目印85を構成することも可能である。
更に、位置決め用目印85は、このような視覚によって確認できる目印の他、視覚によって確認できない目印であってもよい。具体的には、着磁機や成形機の構造を磁力によって位置決めできるように認識できる目印であってもよいし、光の透過や反射によってマグネット3とロータ本体5間の周方向Rの位置決めができる目印であってもよい。
【0072】
また、ロータ本体5の係合凹部6に嵌まる一体回転部12の凸部23の形状は前述した実施形態では湾曲した板形状が採用されていたが、この他、平板形状や種々の横断面形状の棒形状の凸部23であってもよい。
また、前記実施形態の説明の中で述べた図8Aに示す構成と図8Bに示す構成を組み合わせた構成のモータ1や該モータ1を備えるバルブ駆動装置31とすることも可能である。また、ロータ本体5に設けた係合凹部6と、一体回転部12に設けた凸部23の数は、少なくとも一つずつあればよく、前記実施形態のように3つずつ設ける場合に限られない。
【符号の説明】
【0073】
1…モータ、2…基台、3…マグネット、4…カバー、4a…凹部、
4b…フランジ部、5…ロータ本体、6…凹部、7…ロータ、8…凹部、
9…支軸、11…第1軸受部、12…一体回転部(動力出力部材)、
13…第2軸受部、15…弾性軸受部、17…ステータ、18…ステータコア、
19…コイル、21…ハウジング、22…凹凸の嵌め込み構造、23…凸部、
25…ピニオン、27…バルブ室、29…開口、31…バルブ駆動装置、
33…流体入口、35…流体出口、36…弁座、37…弁座面、38…弁体、
39…接触面、41…弁体駆動機構、43…流入管、45…流出管、46…本体部、
47…フランジ部、48…凹部、49…弾性アーム部、51…接触部、
53…囲い部、55…弾性部材、57…受け部、59…凸部、61…逃げ部、
63…バルブ本体、65…取付けプレート、67…段部、69…取付け軸、
71…絞り孔、73…減速歯車、75…ロータ脱調抑制機構、
77…レバー、79…当接用凸部、81…付勢バネ、83…欠歯部、
85…位置決め用目印、86…切欠き、87…N極、89…S極、91…間隔、
Z…長手方向、A…一端、B…他端、R…回転方向(周方向)、S…流体(冷媒)、
L…軸線(回転軸)、H…高さ、 C…閉領域、O…開領域、D…点、E…点、
θ…角度、α…角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17