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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】電子顕微鏡および電子顕微鏡の調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20220801BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H01J37/147 A
H01J37/22 501A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018168563
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020042957
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 仁嗣
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-321271(JP,A)
【文献】特開昭63-094544(JP,A)
【文献】特開2001-210261(JP,A)
【文献】特開2000-082433(JP,A)
【文献】特開2002-134048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/147
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃と、
電子を加速させる加速電圧を前記電子銃に供給する加速電圧供給部と、
前記電子銃から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記電子線を偏向させる偏向器と、
前記試料を透過した前記電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
結像された電子顕微鏡像を撮影する撮像装置と、
前記加速電圧供給部および前記偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記加速電圧が所定の周期で変動するように前記加速電圧供給部を制御する処理と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように前記偏向器を制御する処理と、
を行い、
前記偏向器を制御する処理は、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成する処理と、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電圧軸の中心を特定する処理と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理では、露光時間を、電子顕微鏡像に前記加速電圧を変動させたことによる像のぶれが含まれる時間とする、電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理では、露光時
間を、前記加速電圧の変動の周期の1/2以上とする、電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記電圧軸の中心を特定する処理は、
前記フーリエ変換像を楕円近似する処理と、
楕円の傾きに基づいて、前記電圧軸の中心を特定する処理と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記電圧軸の中心を特定する処理は、
前記フーリエ変換像を楕円近似する処理と、
楕円の短軸の長さおよび楕円の長軸の長さに基づいて、前記電圧軸の中心を特定する処理と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項6】
電子銃と、
前記電子銃から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記電子線を偏向させる偏向器と、
前記試料を透過した前記電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズに励磁電流を供給する励磁電流供給部と、
結像された電子顕微鏡像を撮影する撮像装置と、
前記励磁電流供給部および前記偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記励磁電流が所定の周期で変動するように前記励磁電流供給部を制御する処理と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように前記偏向器を制御する処理と、
を行い、
前記偏向器を制御する処理は、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成する処理と、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電流軸の中心を特定する処理と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項7】
電子顕微鏡の調整方法であって、
電子銃に供給される加速電圧を所定の周期で変動させた状態で、電子顕微鏡像を撮影する工程と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器を制御する工程と、
を含み、
前記偏向器を制御する工程では、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成し、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電圧軸の中心を特定する、電子顕微鏡の調整方法。
【請求項8】
電子顕微鏡の調整方法であって、
対物レンズに供給される励磁電流を所定の周期で変動させた状態で、電子顕微鏡像を撮
影する工程と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器を制御する工程と、
を含み、
前記偏向器を制御する工程では、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成し、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電流軸の中心を特定する、電子顕微鏡の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡および電子顕微鏡の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)は、電子線を用いて試料を観察する装置である。
【0003】
透過電子顕微鏡では、対物レンズおいて、試料に入射する入射電子の入射方向を適切に調整する必要がある(例えば特許文献1参照)。この調整方法として、電圧軸調整法と、電流軸調整法と、が知られている。
【0004】
まず、電圧軸調整法について説明する。加速電圧を変動させると、TEM像が渦巻き状に拡大縮小する。この拡大縮小の中心を電圧軸の中心という。電圧軸調整法では、電圧軸の中心を、偏向器を使って視野の中心に合わせる。これにより、入射電子の入射方向を適切に調整できる。
【0005】
電圧軸の調整は、例えば、まず、視野内で対象物を決め、試料ステージによって対象物を視野の中心に配置する。その後、加速電圧を変動させる。対象物の位置が加速電圧の変動に応じて移動する場合には、対象物の位置が移動しなくなるように偏向器を調整する。そして、対象物の位置が移動しなくなったら、加速電圧の変動を止めて、調整を終了する。
【0006】
次に、電流軸調整法について説明する。対物レンズの励磁電流を変動させると、TEM像が渦巻き状に拡大縮小する。この拡大縮小の中心を電流軸の中心という。電流軸調整法では、電流軸の中心を、偏向器を使って視野の中心に合わせる。これにより、入射電子の入射方向を適切に調整できる。
【0007】
電流軸の調整は、加速電圧にかえて対物レンズの励磁電流を変動させる点を除いて、電圧軸の調整と、同様の工程で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-95841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、軸調整を容易に行うことができる電子顕微鏡およびその調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
電子銃と、
電子を加速させる加速電圧を前記電子銃に供給する加速電圧供給部と、
前記電子銃から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記電子線を偏向させる偏向器と、
前記試料を透過した前記電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
結像された電子顕微鏡像を撮影する撮像装置と、
前記加速電圧供給部および前記偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記加速電圧が所定の周期で変動するように前記加速電圧供給部を制御する処理と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように前記偏向器を制御する処理と、
を行い、
前記偏向器を制御する処理は、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成する処理と、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電圧軸の中心を特定する処理と、
を含む
【0011】
このような電子顕微鏡では、電圧軸の調整を制御部が行うため、電圧軸の調整の手間を省くことができる。したがって、このような電子顕微鏡では、容易に、電圧軸の調整が可能である。
【0012】
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
電子銃と、
前記電子銃から放出された電子線を試料に照射する照射レンズと、
前記電子線を偏向させる偏向器と、
前記試料を透過した前記電子線で電子顕微鏡像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズに励磁電流を供給する励磁電流供給部と、
結像された電子顕微鏡像を撮影する撮像装置と、
前記励磁電流供給部および前記偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記励磁電流が所定の周期で変動するように前記励磁電流供給部を制御する処理と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を取得する処理と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように前記偏向器を制御する処理と、
を行い、
前記偏向器を制御する処理は、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成する処理と、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電流軸の中心を特定する処理と、
を含む
【0013】
このような電子顕微鏡では、電流軸の調整を制御部が行うため、電流軸の調整の手間を省くことができる。したがって、このような電子顕微鏡では、容易に、電流軸の調整が可能である。
【0014】
本発明に係る電子顕微鏡の調整方法の一態様は、
電子顕微鏡の調整方法であって、
電子銃に供給される加速電圧を所定の周期で変動させた状態で、電子顕微鏡像を撮影する工程と、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器を制御する工程と、
を含み、
前記偏向器を制御する工程では、
前記加速電圧を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成し、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電圧軸の中心を特定する
【0015】
本発明に係る電子顕微鏡の調整方法の一態様は、
電子顕微鏡の調整方法であって、
対物レンズに供給される励磁電流を所定の周期で変動させた状態で、電子顕微鏡像を撮影する工程と、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器を制御する工程と、
を含み、
前記偏向器を制御する工程では、
前記励磁電流を変動させた状態で撮影された電子顕微鏡像を分割して分割画像を生成し、
前記分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、前記電流軸の中心を特定する
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】第1実施形態に係る電子顕微鏡の制御部における電圧軸を調整する処理の一例を示すフローチャート。
図3】加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像の一例を示す図。
図4】TEM像を分割する処理を説明するための図。
図5】分割画像をフーリエ変換する処理を説明するための図。
図6】分割画像をフーリエ変換する処理を説明するための図。
図7】フーリエ変換像を楕円近似した結果を示す図。
図8】電圧軸の中心を特定する手法を説明するための図。
図9】第1実施形態に係る電子顕微鏡の制御部における電流軸を調整する処理の一例を示すフローチャート。
図10】第1実施形態に係る電子顕微鏡の制御部における電圧軸を調整する処理の変形例を示すフローチャート。
図11】電圧軸の中心を特定する手法を説明するための図。
図12】第3実施形態に係る電子顕微鏡の制御部における電圧軸を調整する処理の一例を示すフローチャート。
図13】加速電圧を変動させない状態で撮影されたTEM像の一例を示す図。
図14】TEM像を分割する処理を説明するための図。
図15】第3実施形態に係る電子顕微鏡の制御部における電流軸を調整する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0019】
電子顕微鏡100は、電子線EBを用いて試料Sを観察する装置である。電子顕微鏡100は、透過電子顕微鏡(TEM)である。
【0020】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子銃10と、照射レンズ12と、偏向器14と、対物レンズ16と、試料ステージ18と、試料ホルダー19と、撮像装置20と、加速電圧電源22(加速電圧供給部の一例)と、励磁電流電源24(励磁電流供給部の一例)と、偏向器電源26と、撮像制御装置28と、試料ステージ制御装置30と、制御部32と、表示部34と、を含んで構成されている。
【0021】
電子銃10は、電子線EBを放出する。電子銃10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する。電子を加速するための加速電圧は、陰極と陽極との間に印加される。加速電圧は、加速電圧電源22から供給される。
【0022】
照射レンズ12は、電子銃10から放出された電子線EBを集束して試料Sに照射する。照射レンズ12は、複数(図示の例では3つ)のコンデンサーレンズで構成されている。
【0023】
偏向器14は、照射レンズ12で集束された電子線EBを偏向させる。偏向器14が電子線EBを偏向させることにより、対物レンズ16において、試料Sに入射する電子線E
Bの入射角度(すなわち、対物レンズ16の光軸に対する電子線EBの傾斜角度(Tilt))を変えることができる。また、偏向器14は、電子線EBを偏向させることにより、電子線EBをシフトさせることもできる。偏向器14は、例えば、照射レンズ12と対物レンズ16との間に配置される。
【0024】
偏向器14は、図示の例では、2段の偏向コイル(第1偏向コイル14a、第2偏向コイル14b)で構成されている。偏向器14では、例えば、第1偏向コイル14aで偏向した電子線EBを、第2偏向コイル14bで振り戻す。これにより、電子線EBの入射角度を変えることができる。偏向器14に供給されるコイル電流は、偏向器電源26から供給される。
【0025】
対物レンズ16は、試料Sを透過した電子線EBで透過電子顕微鏡像(以下「TEM像」ともいう)を結像するための初段のレンズである。対物レンズ16は、励磁電流に応じてレンズ作用(レンズの焦点距離や倍率)が変化する。対物レンズ16の励磁電流は、励磁電流電源24から供給される。
【0026】
試料ステージ18は、試料Sを保持する。図示の例では、試料ステージ18は、試料ホルダー19を介して、試料Sを保持している。試料ステージ18によって、試料Sの位置決めを行うことができる。図示の例では、試料ステージ18は、対物レンズ16のポールピースに対して水平方向(横)から試料ホルダー19を挿入するサイドエントリー方式の試料ステージである。なお、試料ステージ18は、対物レンズ16のポールピースの上方から試料Sを挿入するトップエントリー方式の試料ステージであってもよい。
【0027】
電子顕微鏡100は、図示はしないが、中間レンズおよび投影レンズを備えている。中間レンズおよび投影レンズは、対物レンズ16によって結像された像を拡大し、撮像装置20上に結像させる。対物レンズ16、中間レンズ、および投影レンズは、電子顕微鏡100の結像系を構成している。
【0028】
撮像装置(カメラ)20は、結像系によって結像されたTEM像を撮影する。撮像装置20は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等のデジタルカメラである。撮像装置20で撮影されたTEM像の画像データは、撮像制御装置28を介して制御部32に出力される。撮像装置20で撮影されたTEM像は、制御部32によって画像ファイルとして記憶装置(図示せず)に記憶されるとともに、表示部34に表示される。
【0029】
表示部34は、制御部32によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD(liquid crystal display)などにより実現できる。表示部34には、例えば、加速電圧電源22、励磁電流電源24、偏向器電源26、撮像制御装置28、および試料ステージ制御装置30を操作するためのGUI(Graphical User Interface)画面が表示される。また、表示部34には、撮像装置20で撮影されたTEM像が表示される。
【0030】
制御部32(制御CPU)は、加速電圧電源22、励磁電流電源24、偏向器電源26、撮像制御装置28、および試料ステージ制御装置30を制御する。制御部32は、例えば、GUIの操作に基づいて、加速電圧電源22、励磁電流電源24、偏向器電源26、撮像制御装置28、および試料ステージ制御装置30を制御するための制御信号を生成する。
【0031】
制御部32は、後述するように、電圧軸を調整する処理および電流軸を調整する処理を行う。すなわち、電子顕微鏡100では、自動で、電圧軸の調整および電流軸の調整が行われる。
【0032】
制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶装置(メモリ)と、を含む。記憶装置には、各種制御を行うためのプログラム、およびデータが記憶されている。制御部32の機能は、プロセッサでプログラムを実行することにより実現できる。
【0033】
加速電圧電源22は、制御部32で生成された制御信号に基づいて、電子銃10に加速電圧を供給する。励磁電流電源24は、制御部32で生成された制御信号に基づいて、照射レンズ12および対物レンズ16に励磁電流を供給する。励磁電流電源24は、さらに、制御部32で生成された制御信号に基づいて、中間レンズおよび投影レンズに励磁電流を供給する。偏向器電源26は、制御部32で生成された制御信号に基づいて、偏向器14、すなわち、第1偏向コイル14aおよび第2偏向コイル14bにコイル電流を供給する。撮像制御装置28は、制御部32で生成された制御信号に基づいて、撮像装置20を制御する。試料ステージ制御装置30は、制御部32で生成された制御信号に基づいて、試料ステージ18を制御する。
【0034】
1.2. 電子顕微鏡の動作
1.2.1. 電圧軸の調整
次に、電子顕微鏡100の動作について説明する。まず、電子顕微鏡100における、電圧軸の調整方法について説明する。電子顕微鏡100では、制御部32が電圧軸の調整を行う。
【0035】
図2は、電子顕微鏡100の制御部32における電圧軸を調整する処理の一例を示すフローチャートである。
【0036】
制御部32は、例えば、GUIの操作に基づいて、ユーザーが電圧軸の調整を開始する指示を行ったか否かを判定する。制御部32は、開始指示が行われたと判定した場合、電圧軸を調整する処理を開始する。
【0037】
(1)加速電圧の変動開始(S100)
制御部32は、加速電圧が所定の周期、所定の振幅で変動するように加速電圧電源22を制御する処理を開始する。
【0038】
このように加速電圧を所定の周期および所定の振幅で変動させる機能を、加速電圧ウォブラ(HT wobbler)という。加速電圧の変動の周期および振幅は、あらかじめ設定されている。加速電圧を所定の周期で変動させることにより、TEM像が渦巻き状に拡大縮小する。
【0039】
(2)TEM像の取得(S102)
制御部32は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する。制御部32は、露光時間を設定し、設定した露光時間でTEM像の撮影が行われるように撮像装置20を制御する。このとき、制御部32は、露光時間を、TEM像に加速電圧を変動させたことによる像のぶれが含まれるように設定する。制御部32は、例えば、露光時間を、加速電圧の変動の周期の1/2以上に設定する。なお、露光時間は、加速電圧の変動の周期と同じであることが好ましい。
【0040】
図3は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aの一例を示す図である。
【0041】
図3に示すように、加速電圧を変動させた状態で、すなわち、加速電圧ウォブラがONの状態で撮影されたTEM像Aでは、ある点を中心として、像が渦巻き状に歪んでいる。
このように、TEM像Aには、加速電圧を変動させたことによる像のぶれが見られる。
【0042】
ここで、露光時間を加速電圧の変動の周期の1/2よりも小さくした場合、加速電圧の変動による像の変化に対して、撮影されたTEM像Aに含まれる像のぶれが小さくなってしまう。すなわち、加速電圧を無駄に大きく変動させていることになる。したがって、露光時間を加速電圧の変動の周期の1/2以上とすることが好ましい。さらに、露光時間を加速電圧の変動の周期と同じとすることがより好ましい。露光時間を加速電圧の変動の周期と同じによることによって、効率よく、像のぶれが大きいTEM像Aを取得することができる。
【0043】
制御部32は、上記のように露光時間を設定し、設定された露光時間で撮像装置20にて撮影されたTEM像Aを取得し、記憶装置(図示せず)に記憶させる。以上の処理により、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aを取得することができる。制御部32は、TEM像Aを取得した後、加速電圧の変動を停止させる。
【0044】
制御部32は、以下で説明するように、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aに基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御して、電圧軸の調整を行う。
【0045】
(3)TEM像の分割(S104)
制御部32は、取得したTEM像Aを分割して、分割画像を生成する。
【0046】
図4は、TEM像Aを分割する処理を説明するための図である。制御部32は、例えば、図4に示すように、TEM像Aを4×4に分割する。これにより、16個の分割画像A1~A16が生成される。なお、TEM像Aの分割数は、特に限定されない。
【0047】
制御部32は、以下で説明するように、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電圧軸の中心を特定する処理を行う。
【0048】
(4)分割画像のフーリエ変換(S106)
制御部32は、分割画像をフーリエ変換して、フーリエ変換像を生成する。
【0049】
図5および図6は、分割画像をフーリエ変換する処理を説明するための図である。
【0050】
制御部32は、図5に示すように、TEM像Aの四隅に位置する分割画像A1、分割画像A4、分割画像A13、および分割画像A16を選択する。制御部32は、分割画像A1、分割画像A4、分割画像A13、および分割画像A16に対して、FFT(fast Fourier transform)を行う。これにより、図6に示すように、フーリエ変換像F1、フーリエ変換像F4、フーリエ変換像F13、およびフーリエ変換像F16が得られる。
【0051】
なお、ここでは、TEM像Aの四隅に位置する分割画像を選択したが、選択する分割画像の数および位置は特に限定されない。選択する分割画像の数を増やすことで、電圧軸の中心を特定するための精度を高めることができる。なお、TEM像Aを分割して得られた全ての分割画像A1~A16に対してフーリエ変換を行って、フーリエ変換像F1~F16を得てもよい。
【0052】
(5)楕円近似(S108)
制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似する。楕円近似は、例えば、最小二乗法により行われる。図7は、フーリエ変換像F1、フーリエ変換像F4、フーリエ変換像F13、およびフーリエ変換像F16をそれぞれ楕円近似した結果を示す図である。
【0053】
フーリエ変換像を楕円近似して得られた楕円は、次式で表される。
【0054】
【数1】
【0055】
ここで、aは楕円の短軸の長さである。bは楕円の長軸の長さである。θはx軸に対する短軸の傾き角である。cは楕円の中心のx座標であり、dは楕円の中心のy座標である。なお、x軸およびy軸は、TEM像上の位置を特定するための直交する2つの軸である。
【0056】
(6)電圧軸の中心の特定(S110)
制御部32は、楕円の傾きに基づいて、電圧軸の中心を特定する。
【0057】
図8は、電圧軸の中心を特定する手法を説明するための図である。
【0058】
ここで、フーリエ変換像F4を楕円近似して得られた楕円の短軸を延長した直線を直線L1とし、フーリエ変換像F16を楕円近似して得られた楕円の短軸を延長した直線を直線L2とし、フーリエ変換像F13を楕円近似して得られた楕円の短軸を延長した直線を直線L3とし、フーリエ変換像F1を楕円近似して得られた楕円の短軸を延長した直線を直線L4とする。
【0059】
図8に示すように、直線L1と直線L2との交点(x1,y1)、直線L2と直線L3との交点(x2,y2)、直線L3と直線L4との交点(x3,y3)、および直線L4と直線L1との交点(x4,y4)を算出する。
【0060】
例えば、任意の2つの楕円を第1楕円および第2楕円とした場合、第1楕円の短軸を延長した直線と、第2楕円の短軸を延長した直線との交点(xi,yi)は、第1楕円の中心位置を(c1,d1)とし、第1楕円の傾きをθ1とし、第2楕円の中心位置を(c2,d2)とし、第2楕円の傾きをθ2とした場合、次式で算出できる。
【0061】
【数2】
【0062】
次に、交点(x1,y1)、交点(x2,y2)、交点(x3,y3)、および交点(x4,y4)の平均値(X,Y)を求める。この平均値(X,Y)が電圧軸の中心の位置となる。以上の処理により、電圧軸の中心の位置(X,Y)を求めることができる。
【0063】
(7)電圧軸の中心のずれ量の算出(S112)
制御部32は、TEM像Aの視野の中心に対する、電圧軸の中心のずれ量を算出する。
x方向のずれ量ΔX、およびy方向のずれ量ΔYは、視野の中心の位置を(xc,yc)とすると、電圧軸の中心の位置(X,Y)と視野の中心の位置(xc、yc)との差で求めることができる。
【0064】
【数3】
【0065】
(8)偏向器の制御(S114)
制御部32は、求めたずれ量(ΔX,ΔY)に基づいて、偏向器14を制御する。
【0066】
ここで、電子顕微鏡100では、あらかじめ、偏向器14に供給する電流Ixの変化量ΔIxに対して、電圧軸の中心の位置が(Δx,Δy)変化するときの係数Px,Qx(例えば、単位はμm/A)が設定されている。同様に、電子顕微鏡100では、あらかじめ、偏向器14に供給する電流Iyの変化量ΔIyに対して、電圧軸の中心の位置が(Δx,Δy)変化するときの係数Py,Qy(例えば、単位はμm/A)が設定されている。これらは、次式のように表される。
【0067】
【数4】
【0068】
なお、電流Ixは、電子線EBを第1方向に偏向させるためのコイル電流であり、電流Iyは、電子線EBを第1方向に直交する第2方向に偏向させるためのコイル電流である。
【0069】
偏向器14を制御する処理は、例えば、まず、偏向器14に供給されるコイル電流の変化量ΔIxおよび変化量ΔIyを算出する。
【0070】
ここで、ずれ量(ΔX,ΔY)は、次式のように表される。
【0071】
【数5】
【0072】
そのため、変化量ΔIxおよび変化量ΔIyは、次式で算出できる。
【0073】
【数6】
【0074】
ここで、係数Px、係数Py、係数Qx、および係数Qyの値は、上述したようにあらかじめ設定されているため、その値を用いる。
【0075】
上記式により、変化量ΔIxおよび変化量ΔIyを求めて、偏向器14に流すコイル電流Ixおよびコイル電流Iyを、求めた変化量ΔIxおよび変化量ΔIyだけ変化させる。この結果、電圧軸の中心を、TEM像Aの視野の中心に移動させることができる。
【0076】
以上の処理により、電圧軸の調整を行うことができる。
【0077】
1.2.2. 電流軸の調整
次に、電子顕微鏡100における、電流軸の調整方法について説明する。電子顕微鏡100では、制御部32が電流軸の調整を行う。
【0078】
上述した電圧軸の調整は、加速電圧を周期的に変動させて、電圧軸の中心を特定し、電圧軸の中心を視野の中心に移動させることで行った。
【0079】
これに対して、電流軸の調整は、対物レンズ16の励磁電流を周期的に変動させて、電流軸の中心を特定し、電流軸の中心を視野の中心に移動させることで行う。
【0080】
図9は、電子顕微鏡100の制御部32における電流軸を調整する処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した電圧軸の調整の場合と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0081】
制御部32は、例えば、GUIの操作に基づいて、ユーザーが電流軸の調整を開始する指示を行ったか否かを判定する。制御部32は、開始指示が行われたと判定した場合、電流軸を調整する処理を開始する。
【0082】
(1)対物レンズの励磁電流の変動開始(S200)
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流が所定の周期、所定の振幅で変動するように励磁電流電源24を制御する処理を開始する。このように対物レンズ16の励磁電流を所定の周期および所定の振幅で変動させる機能を、対物レンズウォブラ(OL wobbler)という。対物レンズ16の励磁電流の変動の周期および振幅は、あらかじめ設定されている。対物レンズ16の励磁電流を所定の周期で変動させることにより、TEM像が渦巻き状に拡大縮小する。
【0083】
(2)TEM像の取得(S202)
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する。制御部32は、露光時間を設定し、設定した露光時間でTEM像の撮影が行われるように撮像装置20を制御する。このとき、制御部32は、露光時間を、TEM像に対物レンズ16の励磁電流を変動させたことによる像のぶれが含まれるように設定する。制御部32は、例えば、露光時間を、対物レンズ16の励磁電流の変動の周期の1/2以上に設定する。なお、露光時間は、対物レンズ16の励磁電流の変動の周期と同じであるこ
とがより好ましい。これにより、上述した電圧軸の調整の場合と同様に、効率よく像のぶれが大きいTEM像を取得することができる。
【0084】
制御部32は、以下で説明するように、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御して、電流軸の調整を行う。
【0085】
(3)TEM像の分割(S204)
制御部32は、取得したTEM像を分割して、分割画像を生成する。分割画像を生成する処理は、上述したステップS104の処理と同様に行われる。
【0086】
制御部32は、以下で説明するように、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電流軸の中心を特定する処理を行う。
【0087】
(4)分割画像のフーリエ変換(S206)
制御部32は、分割画像をフーリエ変換して、フーリエ変換像を生成する。フーリエ変換像を生成する処理は、上述したステップS206の処理と同様に行われる。
【0088】
(5)楕円近似(S208)
制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似する。楕円近似は、上述したステップS108の処理と同様に行われる。
【0089】
(6)電圧軸の中心の特定(S210)
次に、制御部32は、楕円の傾きに基づいて、電流軸の中心を特定する。電流軸の中心を特定する処理は、電圧軸の中心を特定する処理(S110)と同様に行うことができる。
【0090】
(7)電流軸の中心のずれ量の算出(S212)
制御部32は、TEM像Aの視野の中心に対する、電流軸の中心のずれ量を算出する。電流軸の中心のずれ量を算出する処理は、上述した電圧軸の中心のずれ量を算出する処理(S112)と同様に行われる。
【0091】
(8)偏向器の制御(S214)
制御部32は、求めた電流軸の中心のずれ量に基づいて、偏向器14を制御する。偏向器14を制御する処理は、上述したステップS114と同様に行われる。
【0092】
以上の処理により、電圧軸の調整を行うことができる。
【0093】
1.3. 特徴
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0094】
電子顕微鏡100では、制御部32は、加速電圧が所定の周期で変動するように加速電圧電源22を制御する処理と、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aを取得する処理と、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aに基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理と、を行う。このように、電子顕微鏡100では、電圧軸の調整を制御部32が行うため、すなわち、電圧軸の調整が自動で行われるため、電圧軸を調整する手間を省くことができる。したがって、電子顕微鏡100では、容易に、電圧軸の調整が可能である。
【0095】
電子顕微鏡100において、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得す
る処理では、露光時間を、TEM像に加速電圧を変動させたことによる像のぶれが含まれる時間とする。そのため、電子顕微鏡100では、取得したTEM像に基づいて、電圧軸の中心を特定することができる。
【0096】
電子顕微鏡100において、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する処理では、露光時間を加速電圧の変動の周期の1/2以上とする。そのため、電子顕微鏡100では、電圧軸の中心を特定することが可能なTEM像を、効率よく取得することができる。
【0097】
電子顕微鏡100では、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aに基づいて電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像を分割して分割画像を生成する処理と、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電圧軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では、TEM像から、容易に、電圧軸の中心を特定することができる。
【0098】
電子顕微鏡100では、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電圧軸の中心を特定する処理は、フーリエ変換像を楕円近似する処理と、楕円の傾きに基づいて、電圧軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では、TEM像から、容易に、電圧軸の中心を特定することができる。
【0099】
電子顕微鏡100では、制御部32は、対物レンズ16の励磁電流が所定の周期で変動するように励磁電流電源24を制御する処理と、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する処理と、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理と、を行う。このように、電子顕微鏡100では、電流軸の調整を、制御部32が行うため、すなわち、電流軸の調整が自動で行われるため、電流軸を調整する手間を省くことができる。したがって、電子顕微鏡100では、容易に、電流軸の調整が可能である。
【0100】
電子顕微鏡100において、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する処理では、露光時間を、TEM像に対物レンズ16の励磁電流を変動させたことによる像のぶれが含まれる時間とする。そのため、電子顕微鏡100では、取得したTEM像に基づいて、電流軸の中心を特定することができる。
【0101】
電子顕微鏡100において、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像を取得する処理では、露光時間を励磁電流の変動の周期の1/2以上とする。そのため、電子顕微鏡100では、電流軸の中心を特定することが可能なTEM像を、効率よく取得することができる。
【0102】
電子顕微鏡100では、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像を分割して分割画像を生成する処理と、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電流軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、電子顕微鏡像では、TEM像から、容易に、電流軸の中心を特定することができる。
【0103】
電子顕微鏡100では、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電流軸の中心を特定する処理は、フーリエ変換像を楕円近似する処理と、楕円の傾きに基づいて、電流軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では
、TEM像から、容易に、電流軸の中心を特定することができる。
【0104】
1.4. 変形例
次に、電子顕微鏡100の変形例について説明する。
【0105】
図10は、電子顕微鏡100の制御部32における電圧軸を調整する処理の変形例を示すフローチャートである。
【0106】
図10に示すように、制御部32は、電圧軸の中心のずれ量を算出する処理(S112)の後に、電圧軸の中心のずれ量が、あらかじめ設定された許容値以下か否かを判定する処理(S113)を行う。
【0107】
具体的には、制御部32は、例えば、電圧軸の中心のずれ量を算出する処理(S112)で求められたずれ量ΔXおよびずれ量ΔYがそれぞれ許容値以下か否かを判定する。
【0108】
制御部32は、ずれ量ΔXおよびずれ量ΔYの少なくとも一方が許容値より大きかった場合(ステップS113のNo)、偏向器14を制御する処理(S114)を行う。そして、制御部32は、ステップS100に戻って、ステップS100、ステップS102、ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、ステップS113の処理を行う。制御部32は、ずれ量ΔXおよびずれ量ΔYが共に許容値以下となるまで、ステップS100、ステップS102、ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、ステップS113の処理を繰り返し行う。
【0109】
制御部32は、ずれ量ΔXおよびずれ量ΔYがともに許容値以下と判定した場合(S113のYes)、処理を終了する。
【0110】
なお、上記では、電圧軸の調整する処理において、電圧軸の中心のずれ量があらかじめ設定された許容値以下か否かを判定する処理(S113)を行う場合について説明したが、図9に示す電流軸を調整する処理においても適用できる。すなわち、電流軸の中心のずれ量を算出する処理(S212)の後に、電流軸の中心のずれ量があらかじめ設定された許容値以下か否かを判定する処理を行ってもよい。
【0111】
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。第2実施形態に係る電子顕微鏡の構成は、図1に示す電子顕微鏡100の構成と同じであり、図示および説明を省略する。
【0112】
2.2. 電子顕微鏡の動作
2.2.1 電圧軸の調整
第2実施形態では、図2に示す第1実施形態に係る電子顕微鏡における電圧軸を調整する処理とは、電圧軸の中心を特定する手法が異なる。具体的には、第2実施形態では、制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似し、楕円の短軸の長さおよび楕円の長軸の長さに基づいて、電圧軸の中心を特定する。
【0113】
以下、図2に示すフローチャートを参照しながら、第2実施形態に係る電子顕微鏡の制御部32における電圧軸を調整する処理を説明する。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡における電圧軸の調整の場合と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0114】
制御部32は、加速電圧が所定の周期、所定の振幅で変動するように加速電圧電源22を制御する処理を開始する(S100)。
【0115】
次に、制御部32は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像A(図3参照)を取得する(S102)。制御部32は、取得したTEM像Aを分割して、分割画像を生成する(S104)。
【0116】
図11は、電圧軸の中心を特定する手法を説明するための図である。図11に示すように、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像Aを分割して、分割画像A1、分割画像A2、・・・、分割画像Anを生成する。TEM像Aは、例えば、m×m(=n個)に分割される。このとき、隣り合う分割画像(例えば、分割画像A1と分割画像A2)とは重なっていてもよい。これにより、電圧軸の中心を精度よく特定することができる。なお、図示はしないが、隣り合う分割画像が重なっていなくてもよい。
【0117】
制御部32は、分割画像A1、分割画像A2、・・・、分割画像Anをそれぞれフーリエ変換して、フーリエ変換像F1、フーリエ変換像F2、・・・、フーリエ変換像Fnを生成する(S106)。制御部32は、フーリエ変換像F1、フーリエ変換像F2、・・・、フーリエ変換像Fnをそれぞれ楕円近似する(S108)。
【0118】
制御部32は、フーリエ変換像F1、フーリエ変換像F2、・・・、フーリエ変換像Fnをそれぞれ楕円近似して得られたn個の楕円について、短軸の長さと長軸の長さを求め、短軸の長さおよび長軸の長さに基づいて電圧軸の中心を求める(S110)。
【0119】
具体的には、n個の楕円から、短軸の長さと長軸の長さとの差の絶対値が最も小さい楕円を選択する。すなわち、n個の楕円から最も円に近い楕円を選択する。そして、選択された楕円が得られた分割画像の位置(例えば分割画像の中心の位置)を、電圧軸の中心とする。
【0120】
次に、制御部32は、TEM像Aの視野の中心に対する、電圧軸の中心のずれ量を算出する(S112)。制御部32は、求めた電圧軸の中心のずれ量に基づいて、偏向器14を制御する(S114)。
【0121】
以上の処理により、電圧軸の調整を行うことができる。
【0122】
2.2.2 電流軸の調整
第2実施形態では、図9に示す第1実施形態に係る電子顕微鏡における電流軸を調整する処理とは、電流軸の中心を特定する手法が異なる。具体的には、第2実施形態では、制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似し、楕円の短軸の長さおよび楕円の長軸の長さに基づいて、電流軸の中心を特定する。
【0123】
以下、図9に示すフローチャートを参照しながら、第2実施形態に係る電子顕微鏡の制御部32における電流軸を調整する処理を説明する。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡における電流軸の調整の場合と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0124】
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流が所定の周期、所定の振幅で変動するように加速電圧電源22を制御する処理を開始する(S200)。
【0125】
次に、制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM
像を取得する(S202)。制御部32は、取得したTEM像を分割して、分割画像を生成する(S204)。
【0126】
制御部32は、分割画像をフーリエ変換して、フーリエ変換像を生成する(S206)。そして、制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似する(S208)。
【0127】
制御部32は、フーリエ変換像を楕円近似して得られた楕円について、短軸の長さと長軸の長さを求め、短軸の長さおよび長軸の長さに基づいて電圧軸の中心を求める(S210)。
【0128】
具体的には、n個の楕円から、短軸の長さと長軸の長さとの差の絶対値が最も小さい楕円を選択し、選択された楕円が得られた分割画像の位置を、電流軸の中心とする。
【0129】
次に、制御部32は、TEM像の視野の中心に対する、電流軸の中心のずれ量を算出する(S212)。制御部32は、求めた電流軸の中心のずれ量に基づいて、偏向器14を制御する(S214)。
【0130】
以上の処理により、電流軸の調整を行うことができる。
【0131】
2.3. 特徴
第2実施形態に係る電子顕微鏡は、例えば、以下の特徴を有する。
【0132】
第2実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部32は、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電圧軸の中心を特定する処理を行う。この電圧軸の中心を特定する処理は、フーリエ変換像を楕円近似する処理と、楕円の傾きに基づいて、電圧軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、第2実施形態に係る電子顕微鏡では、TEM像から、容易に、電圧軸の中心を特定することができる。
【0133】
第2実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部32は、分割画像をフーリエ変換し、得られたフーリエ変換像に基づいて、電流軸の中心を特定する処理を行う。この電流軸の中心を特定する処理は、フーリエ変換像を楕円近似する処理と、楕円の傾きに基づいて、電流軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、第2実施形態に係る電子顕微鏡では、TEM像から、容易に、電流軸の中心を特定することができる。
【0134】
なお、上述した「1.4. 変形例」に記載した第1実施形態の変形例は、第2実施形態にも適用可能である。
【0135】
3. 第3実施形態
3.1. 電子顕微鏡
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。第3実施形態に係る電子顕微鏡の構成は、図1に示す電子顕微鏡100の構成と同じであり、図示および説明を省略する。
【0136】
3.2. 電子顕微鏡の動作
3.2.1. 電圧軸の調整
第3実施形態では、図2に示す第1実施形態に係る電子顕微鏡における電圧軸を調整する処理とは、電圧軸の中心を特定する手法が異なる。具体的には、第3実施形態では、制御部32は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像(以下、「第1の像」ともいう)と同じ撮影位置で、加速電圧を変動させない状態で撮影されたTEM像(以下「第2の像」ともいう)を取得し、第1の像と第2の像とを比較して電圧軸の中心を特定する
【0137】
図12は、第3実施形態に係る電子顕微鏡の制御部32における電圧軸を調整する処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡における電圧軸の調整の場合と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0138】
(1)加速電圧の変動開始(S300)
制御部32は、まず、加速電圧が所定の周期、所定の振幅で変動するように加速電圧電源22を制御する処理を開始する。加速電圧の変動を開始する処理は、上述したステップS100の処理と同様に行われる。
【0139】
(2)TEM像(第1の像)の取得(S302)
制御部32は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像A(図3参照)を取得する。TEM像A(第1の像)を取得する処理は、上述したステップS102の処理と同様に行われる。
【0140】
(3)加速電圧の変動停止(S304)
制御部32は、TEM像Aを取得した後、加速電圧の変動を停止させる。
【0141】
(4)TEM像(第2の像)の取得(S306)
制御部32は、加速電圧を変動させない状態で撮影されたTEM像(第2のTEM像)を取得する。
【0142】
図13は、加速電圧を変動させない状態で撮影されたTEM像Bの一例を示す図である。TEM像Bは、TEM像Aと同じ撮影位置(同じ試料ステージの座標)で撮影されたTEM像である。TEM像Bは、加速電圧を変動させていない点を除いて、TEM像Aと同じ条件で撮影される。
【0143】
(5)TEM像AおよびTEM像Bの分割(S308)
制御部32は、図11に示すように、TEM像Aを分割して、分割画像A1、分割画像A2、・・・、分割画像Anを生成する。制御部32は、TEM像Aを、m×m(=n個)に分割する。
【0144】
また、制御部32は、図14に示すように、TEM像Bを分割して、分割画像B1、分割画像B2、・・・、分割画像Bnを生成する。制御部32は、TEM像Bを、m×m(=n個)に分割する。TEM像Bは、TEM像Aと同様に分割される。
【0145】
(6)対応する分割画像間の類似度の算出(S310)
制御部32は、対応する分割画像間の類似度を求める。すなわち、同じ位置にある分割画像間の類似度を求める。図示の例では、分割画像A1と分割画像B1との類似度、分割画像A2と分割画像B2との類似度、・・・、および分割画像Anと分割画像Bnとの類似度を求める。
【0146】
例えば、分割画像Anと分割画像Bnとの類似度は、次式を用いて算出することができる。
【0147】
【数7】
【0148】
ただし、RSSDは、差分二乗和(Sum of Squared Difference、SSD)であり、I(I,J)は、分割画像Anの画素値であり、T(i,j)は、分割画像Bnの画素値である。RSSDの値が小さいほど、類似度が高い。
【0149】
なお、類似度の算出は、上記式に限定されない。例えば、類似度を、以下で示す式のいずれかを用いて算出してもよい。
【0150】
【数8】
【0151】
ただし、RSADは、差分絶対値和(Sum of Absolute Difference、SAD)である。RSADの値が小さいほど、類似度が高い。
【0152】
また、RNCCは、正規化相互相関(Normalized Cross-Correlation、NCC)である。RNCCは、-1.0~1.0の範囲の値をとり、1.0に近いほど類似度が高い。
【0153】
また、RZNCCは、零平均正規化相互相関(Zero means Normalized Cross Correlation、ZNCC)である。RZNCCは、-1.0~1.0の範囲の値をとり、1.0に近いほど類似度が高い。
【0154】
(7)電圧軸の中心の特定(S312)
制御部32は、類似度が最も高い分割画像が得られた位置を、電圧軸の中心の位置とする。例えば、分割画像Akと分割画像Bkとの類似度が最も高い場合、分割画像Akの位置(例えば、分割画像Akの中心の位置)を、電圧軸の中心の位置とする。
【0155】
(8)電圧軸の中心のずれ量の算出(S314)
制御部32は、TEM像Aの視野の中心に対する、電圧軸の中心のずれ量を算出する。電圧軸の中心のずれ量を算出する処理は、上述したステップS112の処理と同様に行われる。
【0156】
(9)偏向器の制御(S316)
次に、制御部32は、求めた電圧軸の中心のずれ量に基づいて、偏向器14を制御する。偏向器14を制御する処理は、上述したステップS114と同様に行われる。
【0157】
以上の処理により、電圧軸の調整を行うことができる。
【0158】
3.2.2. 電流軸の調整
第3実施形態では、図9に示す第1実施形態に係る電子顕微鏡における電流軸を調整する処理とは、電流軸の中心を特定する手法が異なる。具体的には、第3実施形態では、制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像(第1の像)と同じ撮影位置で、対物レンズ16の励磁電流を変動させない状態で撮影されたTEM像(第2の像)を取得し、第1の像と第2の像とを比較して電流軸の中心を特定する。
【0159】
図15は、第3実施形態に係る電子顕微鏡の制御部32における電流軸を調整する処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡における電流軸の調整の場合と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0160】
(1)対物レンズの励磁電流の変動開始(S400)
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流が所定の周期、所定の振幅で変動するように励磁電流電源24を制御する処理を開始する。対物レンズ16の励磁電流の変動を開始する処理は、上述したステップS200の処理と同様に行われる。
【0161】
(2)TEM像(第1の像)の取得(S402)
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像(第1の像)を取得する。TEM像を取得する処理は、上述したステップS202の処理と同様に行われる。
【0162】
(3)加速電圧の変動停止(S404)
制御部32は、TEM像(第1の像)を取得した後、加速電圧の変動を停止させる。
【0163】
(4)TEM像(第2の像)の取得(S406)
制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させない状態で撮影されたTEM像(第2の像)を取得する。
【0164】
(5)TEM像の分割(S408)
制御部32は、TEM像(第1の像)を分割して、分割画像を生成する。また、制御部32は、TEM像(第2の像)を分割して、分割画像を生成する。TEM像を分割する処理は、上述したステップS308の処理と同様に行われる。
【0165】
(6)対応する分割画像間の類似度の算出(S410)
制御部32は、対応する分割画像間の類似度を求める。類似度を求める処理は、上述したステップS310と同様に行われる。
【0166】
(7)電流軸の中心の特定(S412)
制御部32は、類似度が最も高い分割画像が得られた位置を、電流軸の中心の位置とす
る。電圧軸の中心を特定する処理は、上述したステップS312の処理と同様に行われる。
【0167】
(8)電圧軸の中心のずれ量の算出(S414)
制御部32は、TEM像(第1の像)の視野の中心に対する、電流軸の中心のずれ量を算出する。電流軸の中心のずれ量を算出する処理は、上述したステップS314の処理と同様に行われる。
【0168】
(9)偏向器の制御(S416)
制御部32は、求めた電圧軸の中心のずれ量に基づいて、偏向器14を制御する。偏向器14を制御する処理は、上述したステップS316と同様に行われる。
【0169】
以上の処理により、電流軸の調整を行うことができる。
【0170】
3.3. 特徴
第3実施形態に係る電子顕微鏡は、例えば、以下の特徴を有する。
【0171】
第3実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部32は、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像である第1の像と同じ撮影位置で、加速電圧を変動させない状態で撮影されたTEM像である第2の像を取得する処理を行う。また、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理では、第1の像と、第2の像と、を比較して、電圧軸の中心を特定する。そのため、第3実施形態に係る電子顕微鏡では、TEM像から、容易に、電圧軸の中心を特定することができる。
【0172】
また、第3実施形態に係る電子顕微鏡では、加速電圧を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電圧軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理は、第1の像を分割して複数の第1分割画像を生成する処理と、第2の像を分割して複数の第2分割画像を生成する処理と、対応する第1分割画像と第2分割画像との類似度を求め、類似度に基づいて、電圧軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、第1の像および第2の像から、容易に、電圧軸の中心を特定することができる。
【0173】
第3実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部32は、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像である第1の像と同じ撮影位置で、対物レンズ16の励磁電流を変動させない状態で撮影されたTEM像である第2の像を取得する処理を行う。また、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理では、第1の像と、第2の像と、を比較して、電流軸の中心を特定する。そのため、第3実施形態に係る電子顕微鏡では、TEM像から、容易に、電流軸の中心を特定することができる。
【0174】
また、第3実施形態に係る電子顕微鏡では、対物レンズ16の励磁電流を変動させた状態で撮影されたTEM像に基づいて、電流軸の中心が視野の中心に位置するように偏向器14を制御する処理は、第1の像を分割して複数の第1分割画像を生成する処理と、第2の像を分割して複数の第2分割画像を生成する処理と、対応する第1分割画像と第2分割画像との類似度を求め、類似度に基づいて、電流軸の中心を特定する処理と、を含む。そのため、第1の像および第2の像から、容易に、電流軸の中心を特定することができる。
【0175】
なお、上述した「1.4. 変形例」に記載した第1実施形態の変形例は、第3実施形態にも適用可能である。
【0176】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0177】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0178】
10…電子銃、12…照射レンズ、14…偏向器、14a…第1偏向コイル、14b…第2偏向コイル、16…対物レンズ、18…試料ステージ、19…試料ホルダー、20…撮像装置、22…加速電圧電源、24…励磁電流電源、26…偏向器電源、28…撮像制御装置、30…試料ステージ制御装置、32…制御部、34…表示部、100…電子顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15