IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図1
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図2
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図3
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図4
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図5
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図6
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図7
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図8
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図9
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図10
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図11
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図12
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図13
  • 特許-消火装置用架台、消火装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】消火装置用架台、消火装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/78 20060101AFI20220801BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20220801BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A62C13/78 A
A62C3/00 J
A62C35/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018190107
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020058460
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205497(JP,A)
【文献】特開2001-9052(JP,A)
【文献】特開2012-252928(JP,A)
【文献】国際公開第2006/049212(WO,A1)
【文献】米国特許第5963631(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00,27/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に消火用の機器を収納した消火装置をトンネルの壁面に設置するための消火装置用架台であって、
前記トンネルの壁面に固定される固定部材と、
該固定部材に直接または他の部材を介して取り付けられて、前記固定部材に対して横方向の位置調整可能に構成され、前記筐体が載置固定される載置固定部材と、を備えたことを特徴とする消火装置用架台。
【請求項2】
前記載置固定部材は、横方向に延びる長孔を有し、前記固定部材は前記長孔に挿入されて所望の位置に固定されるボルト・ナットを備えていることを特徴とする請求項1記載の消火装置用架台。
【請求項3】
筐体の内部に消火用の機器を収納した消火装置をトンネルの壁面に設置するための消火装置用架台であって、
前記トンネルの壁面に固定される固定部材と、
該固定部材に直接または他の部材を介して固定され、前記筐体が横方向の位置調整可能に載置固定される載置固定部材と、を備えたことを特徴とする消火装置用架台。
【請求項4】
前記載置固定部材は前記固定部材に上下方向の位置調整可能に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の消火装置用架台。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の消火装置用架台を備えたことを特徴とする消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部に消火用のホースを収納する消火栓装置、及び筐体の内部に消火器を収納する消火器箱といった消火装置を、トンネルの壁面に設置するための消火装置用架台、及び消火装置用架台を備えた消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の消火装置のうちの消火栓装置を例に挙げて説明する。
トンネル等に設置される消火栓装置は、例えば特許文献1に開示されたように、消火栓装置の筐体を「トンネル壁面に形成された箱抜き部分」に設置していた。
消火栓装置は、トンネル内において、所定の距離(例えば、50m)毎に設置することが要求されることがあり、トンネルに沿って設置されている各消火栓装置との距離を所定の距離になるようにする必要がある。
この場合、予め消火栓装置を設置するべき位置を正確に計測して、当該位置にアンカーを打ち込んで、該アンカーに消火栓装置を設置することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-44039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の大口径のトンネルはシールド工法によって構築されることが多く、この場合、トンネルの壁面がトンネルの掘削と同時にセグメントで構築されるため、特許文献1に開示されているような箱抜きをすることができず、所定の位置にアンカーを打ち込むことができない。
【0005】
そのため、セグメント構造のトンネル壁面に消火栓装置を設置する場合、セグメントに予め設けられているインサートアンカーを利用することが考えられる。
しかしながら、インサートアンカーはセグメントのスパンで設けられているので、インサートアンカーを利用して消火栓装置を設置した場合、上述したようにトンネルに沿って設置される各消火栓装置の間隔を所定の距離にすることができない。
そこで、インサートアンカーを用いた場合であっても、トンネルに沿って設置される各消火栓装置間の距離を一定にすることができる消火装置用架台が求められている。
【0006】
なお、シールドトンネルでないトンネル壁面に消火栓装置を取り付ける場合、前述したように所定の位置にアンカーを打ち込むことになるが、打ち込んだアンカーを基準にして消火栓装置を設置する場合、アンカーの位置を予め正確に計測する必要がある。しかし、数十メートル毎に設置される消火栓装置について、各消火栓装置間の距離や路面からの距離を正確に計測して設置するのは難しい。
このため、シールドトンネル以外のトンネルであっても、アンカー設置後において、そのアンカー位置から位置調整して消火栓装置を設置できる消火装置用架台が求められている。
【0007】
トンネル壁面には、消火栓装置の他、内部に消火器を収容した消火器箱が設置されることがあり、上記の課題は消火器箱についても共通するものである。
【0008】
したがって、本発明は、消火栓装置、消火器箱等の消火装置をトンネル壁面に位置調整可能に取り付けることができる消火装置用架台、及び該消火装置用架台を備えた消火装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る消火装置用架台は、筐体の内部に消火用の機器を収納した消火装置をトンネルの壁面に設置するためのものであって、
前記トンネルの壁面に固定される固定部材と、該固定部材に直接または他の部材を介して取り付けられて、前記固定部材に対して横方向の位置調整可能に構成され、前記筐体が載置固定される載置固定部材と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記載置固定部材は、横方向に延びる長孔を有し、前記固定部材は前記長孔に挿入されて所望の位置に固定されるボルト・ナットを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、筐体の内部に消火用の機器を収納した消火装置をトンネルの壁面に設置するための消火装置用架台であって、
前記トンネルの壁面に固定される固定部材と、
該固定部材に直接または他の部材を介して固定され、前記筐体が横方向の位置調整可能に載置固定される載置固定部材と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記載置固定部材は前記固定部材に上下方向の位置調整可能に取り付けられることを特徴とするものである。
【0013】
(5)また、本発明に係る消火装置は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の消火装置用架台を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る消火装置は、トンネルの壁面に固定される固定部材と、該固定部材に直接または他の部材を介して取り付けられて、前記固定部材に対して横方向の位置調整可能に構成され、前記筐体が載置固定される載置固定部材と、を備えたことにより、消火装置をトンネル壁面に位置調整可能に取り付けることができる。これによって、シールドトンネルの場合には、インサートアンカーを利用して、トンネル軸方向に設置される各消火装置間の距離が一定となるように消火装置をトンネルの壁面に取り付けることができる。また、トンネル壁面にアンカーを打ち込んで該アンカーを利用して消火装置を設置する場合には、アンカー位置がずれていても、アンカー設置後に正しい位置に消火装置を設置できるので、アンカーの高い施工精度が要求されず、消火装置の設置の施工効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る消火装置用架台を用いて消火栓装置をトンネル壁面に設置した状態の正面図である。
図2図1に示した消火栓装置の取付状態の側面図である。
図3図1に示した消火装置用架台のみをトンネル壁面に設置した状態の正面図である。
図4図1に示した消火装置用架台を構成する一部品(下部側固定部材)を示す図であり、図4(a)が側面図、図4(b)が平面図、図4(c)が背面図、図4(d)が正面図である。
図5図1に示した消火装置用架台を構成する一部品(縦部材)を示す図であり、図5(a)が背面図、図5(b)が平面図、図5(c)が側面図である。
図6図1に示した消火装置用架台の動作を説明する説明図である。
図7図1に示した消火装置用架台を構成する一部品(載置固定部材)を示す図であり、図7(a)が正面図、図7(b)が平面図、図7(c)が側面図である。
図8図1に示した消火装置用架台を構成する一部品(壁面側固定部材)を示す図であり、図8(a)が側面図、図8(b)が平面図、図8(c)が背面図、図8(d)が正面図である。
図9図1に示した消火装置用架台を構成する一部品(筐体側固定部材)を示す図であり、図9(a)が背面図、図9(b)が平面図、図9(c)が側面図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る消火装置用架台を用いて消火栓装置をトンネル壁面に設置した状態の正面図である。
図11図10に示した消火栓装置の取付状態の側面図である。
図12図10に示した消火装置用架台のみをトンネル壁面に設置した状態の正面図である。
図13図10に示した消火装置用架台を構成する部品を示す図であり、図13(a)が載置固定部材、図13(b)が背面固定部材を示している。なお、図13(a―1)は正面図、図13(a―2)は平面図、図13(a―3)は側面図、図13(b―1)は背面図、図13(b―2)は平面図、図13(b―3)は側面図である。
図14】本発明が解決しようとする課題を説明する説明図であって、トンネル軸方向直交断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
以下の説明は、消火装置として、図1に示すように、筐体1の内部に消火用の機器としてのホースを収納した消火栓装置3を例に挙げ、上下方向及び左右方向の位置調整可能な態様について説明する。なお、本実施の形態1においては、消火栓装置3を上下方向にも位置調整可能にしているので、まずは、そのようにした理由について以下に説明する。
【0017】
最近の大口径のトンネルはシールド工法によって構築されることが多く、この場合、トンネルの壁面がトンネルの掘削と同時にセグメントで構築されるため、特許文献1に開示されているような箱抜きをすることができず、所定の位置にアンカーを打ち込むことができない。
そのため、セグメント構造のトンネル壁面に消火栓装置を設置する場合、セグメントに予め設けられているインサートアンカーを利用することが考えられる。
ただし、トンネル軸線方向に沿って配置されている各インサートアンカーの位置は、一般的にトンネル壁面に対して一定の位置になるように施工されるが、各インサートアンカーの位置は、車道の路面からの高さが異なっている。この点を、図14に基づいて説明する。
【0018】
図14は、トンネルの軸方向直交断面を示したもので、図14(a)が左カーブ、図14(b)が右カーブの位置における断面図である。車道の路面98の図中左側には監視員通路99が設けられている。図中左側のトンネル壁面に着目して、仮にトンネル径方向1/2の高さの位置(中心線と壁面の交点A)にインサートアンカーが設けられていたとすれば、この位置は、トンネルの壁面全体に対する絶対位置は、図14(a)、図14(b)のいずれの場合もトンネル径方向1/2の高さ位置であり、両者は同じ高さ位置である。
【0019】
しかし、左カーブの場合には、図14(a)に示すように、路面98の左側が低く、右側が高い傾斜面となり、他方、右カーブでは、図14(b)に示すように、路面98の左側が高く、右側が低い傾斜面となるため、A点の位置は左カーブの路面98からの距離と右カーブの路面98からの距離が大きく異なる。このような違いは、トンネル径やカーブの緩急にもよるが、大きい場合で1m程度にもなる。
このため、仮にトンネル壁面において同じ高さ位置のインサートアンカーを用いて消火栓装置を固定したとしても、消火栓装置の路面98からの位置が異なることになる。
【0020】
一方で、トンネル壁面に設置される消火栓装置は、監視員通路99からのみではなく路面98からの操作も想定されるため、操作位置が路面98から一定であることが求められる。
しかし、インサートアンカーを用いてその位置に消火栓装置を固定した場合には、上述したように、消火栓装置の路面98からの高さ位置が異なるため、操作位置が所定の位置にならないという問題がある。
そこで、インサートアンカーを用いた場合であっても、路面98からの操作位置を一定にすることができる消火装置用架台が求められている。
以上が本実施の形態において、消火栓装置3を上下方向にも位置調整可能にした理由である。
【0021】
本実施の形態に係る消火装置用架台5は、消火栓装置3をトンネルの壁面7に設置するための消火装置用架台5であって、図1図3に示すように、トンネルの壁面7に固定される固定部材としての下部側固定部材9と、下部側固定部材9に上下方向の位置調整可能に取り付けられる縦部材11と、縦部材11を介して下部側固定部材9に横方向の位置調整可能に構成され、消火栓装置3の筐体1が載置固定される載置固定部材13とを備えたことを特徴とするものである。
なお、本実施の形態の消火装置用架台5は消火栓装置3の筐体1の底面を載置固定するものであるため、上記の構成で機能するが、本実施の形態では、消火栓装置3をより安定して固定するために、消火栓装置3の背面側をトンネルの壁面7に固定して消火栓装置3の姿勢を保持する背面固定部材15を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0022】
<消火栓装置>
消火栓装置3は、筐体1の内に消火用ホースを収容するものである。なお、消火栓装置3には、消火用ホースに加えて消火器を収納するものも含まれる。
筐体1は、鋼板製の矩形の箱状からなり、底面には、消火装置用架台5の一部品を構成する載置固定部材13にボルト固定するためのボルト挿入孔(図示なし)が設けられている。
また、筐体1の正面パネルには、開閉扉(図示なし)が設けられており、消火栓装置3を使用する場合には、開閉扉を開扉して使用する。
【0023】
さらに、筐体1は、図2に示すように、その背面の所定高さより下の部分が、上方から下方に向かう方向で、かつ背面側から前面側に向かって傾斜する傾斜面部17になっている。
筐体1の背面側に傾斜面部17を設けることで、トンネルの壁面7に設置するときに、シールドトンネルのトンネルの壁面7との干渉を避けることができ、消火栓装置3の壁面7からの突出をできるだけ小さくすることができる。
【0024】
<下部側固定部材>
下部側固定部材9は本発明の固定部材に相当するものであり、壁面7のインサートアンカー19に固定される部材であって、図4に示すように、矩形状の背面プレート21と、後端側が背面プレート21に接合され、前端側に係合部材23が接合された連結部材25と、連結部材25の前端に固定された係合部材23とからなる。
【0025】
背面プレート21は、略中央部にボルトが挿入されるボルト孔27が設けられている。ボルト孔27にボルトを挿入して該ボルトをインサートアンカー19にねじ込むことで、背面板が壁面7に固定される。
【0026】
連結部材25は、断面コ字状の部材からなり、後端面と前端面とが所定の角度θを成すように設定されている(図4(a)参照)。このθは、インサートアンカー19位置のトンネルの壁面7の傾斜角度と略一致している。連結部材25の後端面と前端面に所定の角度θを設定することで、連結部材25の後端に背面プレート21を固定し、背面プレート21をトンネルの壁面7に沿って配設すると、連結部材25の前端面が略垂直面となり、連結部材25の前端面に係合部材23を鉛直方向に取り付けられるようになっている。
係合部材23は、水平断面がコ字状で、コ字の対向する片部29には上下二箇所に位置決め用のボルト孔31が設けられている。前述したように、背面プレート21をトンネルの壁面7の傾斜に沿って取り付けたときに、係合部材23は略垂直になる。
【0027】
<縦部材>
縦部材11は、図5に示すように、係合部材23と同様の断面がコ字状の縦長の部材であり、対向する一対の片部33に、例えば8個のボルト孔35が設けられている。
また、一対の片部33を繋ぐ正面部37における上端の正面側には、載置固定部材13における屈曲した前側の片部43の背面に当接する管状突起部39が設けられている。また、管状突起部39が設けられた正面部37における背面側には、ナット41が設けられている。
【0028】
図6に示すように、縦部材11の対向する片部33を、下部側固定部材9における係合部材23の対向する片部29の間に挿入し、両者を嵌合させる。そして、係合部材23のボルト孔31と縦部材11のボルト孔35の位置を合わせて、位置決め用のボルトを挿入することで、縦部材11の位置固定が行われる。
図6において、一点鎖線の位置は、背面プレート21を固定するインサートアンカー19の位置であり、この位置に、下部側固定部材9が固定されている。図6(a)~図6(c)の順で、縦部材11の位置が上方に移動している。言い換えれば、下側固定部材9に固定される縦部材11のボルト孔35を上方から下方へ変えて位置決め用のボルトを挿入している。このように、縦部材11の下部側固定部材9に対する上下方向の相対位置を調整することで、縦部材11の上端に設けられている載置固定部材13の上下方向の位置調整が可能になっている。載置固定部材13の上下方向の位置調整をすることで、載置固定部材13に載置固定される消火栓装置3の上下方向の位置調整ができる。
【0029】
<載置固定部材>
載置固定部材13は、消火栓装置3の筐体1が載置されて固定される部材である。載置固定部材13は、消火栓装置3の筐体1の横幅と同一の長さを有する、軸直交断面が略コ字状の部材である。載置固定部材13は、図6に示すように、コ字の開口側を下にして縦部材11の上端に設置される。そして、コ字の対向する片部43を繋ぐ面部が、筐体1が載置固定される載置固定面部45となっている。載置固定面部45の両端部には、筐体1と連結するためのボルトを挿通するボルト孔47が設けられている。また、載置固定面部45の両端部には、矩形状の開口部49が設けられて、配線、ケーブル、接続ホース等を挿通可能になっている(図7参照)。
【0030】
載置固定部材13の前側の片部43には、ほぼ全長に亘るスリット51が形成されている。スリット51は、載置固定部材13を縦部材11に固定するためのものであり、図6に示すように、縦部材11の管状突起部39をスリット51の背面側に位置させ、この状態で、ボルトを挿入して縦部材11のナット41に螺合させて締め付けることで、載置固定部材13が縦部材11に対して所望の位置に固定される。すなわち、載置固定部材13における前側の片部43にスリット51を設け、スリット51と縦部材11とを所望の位置で固定できるようしたことで、消火栓装置3の横方向(左右方向)の位置調整が可能になっている。
【0031】
<背面固定部材>
背面固定部材15は、トンネルの壁面7のインサートアンカー19に固定される壁面側固定部材53と、消火栓装置3の筐体1の背面側の所望の位置に取り付けられると共に壁面側固定部材53に連結固定される筐体側固定部材55からなる。
【0032】
《壁面側固定部材》
壁面側固定部材53は、図8に示すように、インサートアンカー19に固定される固定面部57と、固定面部57に対して略直角で前方に屈曲形成されて筐体側固定部材55に連結される壁面側連結面部59と、壁面側連結面部59の側端部と固定面部57の側端部からなるL字状の部位に、両方に亘るように設けられて固定面部57と壁面側連結面部59を補剛する補剛面部61を有するものである。
【0033】
固定面部57にはインサートアンカー19に固定されるボルトが挿通されるボルト孔63が設けられている。このボルト孔63は、図8(c)、図8(d)に示すように、縦方向に長い長孔になっており、上下の位置ずれに対する調整が可能になっている。
壁面側連結面部59の中央にはボルト孔65が設けられ、壁面側連結面部59のボルト孔65が設けられた位置における下面にはナット67が固定されている。
【0034】
《筐体側固定部材》
筐体側固定部材55は、軸直交断面がL字のアングル材からなり、筐体1の背面にボルト固定される筐体側固定面部69と、壁面側固定部材53の壁面側連結面部59に載置されて固定される筐体側連結面部71とを有している。
筐体側固定面部69の両端にはボルト孔73と、ボルト孔73が設けられた部位に固定されたナット75とが設けられている。
また、筐体側連結面部71には、ほぼ全長に亘るスリット77が形成されており、スリット77にボルトを挿入して壁面側連結面部59にボルト固定することで、壁面側固定部材53に対して横方向の位置を調整して固定できるようになっている。
【0035】
なお、筐体1の背面には、縦部材11の調整高さに対応して、高さ方向に複数のボルト挿入孔(図示なし)が形成されており、筐体側固定部材55は、縦部材11の高さ位置に対応して予め筐体1の背面に固定される。
【0036】
以上のように構成された、本実施の形態の消火装置用架台5を用いて消火栓装置3をトンネルの壁面7に取り付ける取付方法を説明する。
【0037】
まず、下部側固定部材9をトンネルの壁面7にボルト固定する。具体的には、下部側固定部材9における背面プレート21のボルト孔27をインサートアンカー19の位置に合わせて、ボルトをねじ込むことで、背面プレート21をトンネルの壁面7に固定する。本実施の形態では、図1図3に示すように、1台の消火栓装置3を設置するのに2個の下部側固定部材9を使用しているので、2個の下部側固定部材9を固定する。
【0038】
次に、各下部側固定部材9に縦部材11を、その高さを所定の高さに調整して取り付ける。
高さの調整は、縦部材11に設けている複数のボルト孔35のうちから最も適切なボルト孔35を選択することによって行う。
なお、縦部材11を調整する所定の高さとは、消火栓装置3を設置した状態において、消火栓装置3の操作部の位置が、車道の路面から予め設定した所定の高さになる高さである。
【0039】
次に、縦部材11の上端面に載置固定部材13を設置し、載置固定部材13の左右方向の位置を所定の位置に調整する。縦部材11の上端面に載置固定部材13を載置した状態では、図6に示すように、縦部材11の上端部に設けられている管状突起部39をスリット51の背面側に位置させる。
前述したように、消火栓装置3は、トンネル軸線方向に所定の間隔で設置する必要があり、載置固定部材13の左右方向の位置調整は、各消火栓装置間の距離が所定の距離になるように調整するものである。
【0040】
載置固定部材13の左右位置が決定すると、ボルトを載置固定部材13のスリット51に挿入して、縦部材11の管状突起部39を貫通させてナット41に螺合させて固定する。このとき、管状突起部39が載置固定部材13のスリット51の背面側を支持するので、ボルトをねじ込んだ際にも、載置固定部材13における前側の片部43の変形を防止できる。
【0041】
次に、背面固定部材15における壁面側固定部材53を、下部側固定部材9を取り付けたインサートアンカー19の上方にあるインサートアンカー19に固定する。なお、壁面側固定部材53の取り付けは、下部側固定部材9の取り付けと同時に行ってもよい。
次に、消火栓装置3の筐体1の背面の所定の位置に筐体側固定部材55をボルト固定する。前述したように、筐体1の背面には高さ方向に複数のボルト挿入孔が設けられているが、筐体側固定部材55を取り付けるボルト挿入孔は、消火栓装置3の底面からの高さが、高さ調整がされている載置固定部材13の上面から壁面側固定部材53までの高さと略同一高さとなるものを選択する。
【0042】
次に、消火栓装置3を載置固定部材13に載置して、消火栓装置3の底面と載置固定部材13をボルトによって固定する。このとき、載置固定部材13は、高さ方向及び左右方向の位置調整がされているので、消火栓装置3のボルト挿入孔の位置を、載置固定部材13のボルト孔47の位置に合わせて載置することで、消火栓装置3の路面に対する上下方向及び左右方向の位置が所定の位置となる。
また、消火栓装置3を載置固定部材13に載置する際には、筐体側固定部材55における筐体側連結面部71を壁面側固定部材53における壁面側連結面部59に載置し、両者をボルト接合する。この際、壁面側固定部材53の固定面部57には縦方向に長孔のボルト孔63が設けられているので、壁面側固定部材53の上下方向の位置を微調整することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態の消火装置用架台5によれば、トンネルの壁面7のセグメントに設けられたインサートアンカー19を利用して消火栓装置3をトンネルの壁面7に設置することができ、しかも、消火栓装置3が載置固定される載置固定部材13の左右方向の位置調整を可能にしているので、必ずしも消火栓装置3の設置間隔で設けられているわけではないインサートアンカー19を利用して、トンネル軸線方向に複数設置される消火栓装置3の消火栓装置間の距離を所定の距離に調整することができる。
また、高さ方向の位置調整もできるので、車道の路面からインサートアンカー19の高さや位置が異なっていても、車道の路面から消火栓装置3の操作部までの高さを一定にすることができる。
【0044】
[実施の形態2]
実施の形態1では、載置固定部材13を縦部材11と別体で構成し、載置固定部材13と縦部材11との間で位置調整可能にした例を示したが、本実施の形態は、載置固定部材81と縦部材11とを固定して、載置固定部材81に対して消火栓装置3の設置位置を左右に位置調整可能にしたものである。
本実施の形態のものも上下方向位置調整可能であるが、上下方向の位置調整に関する構成は実施の形態1と同様なので説明を省略し、以下においては左右方向の位置調整に関連する載置固定部材81と背面固定部材83について説明する。
【0045】
<載置固定部材>
載置固定部材81は、図10図12図13(a)に示すように、消火栓装置3の幅寸法よりも長尺の断面略コ字状の部材である。載置固定部材81の長さは、「消火栓装置3の幅+インサートアンカー左右方向1スパン」以上にするのが好ましい。
載置固定部材81におけるコ字の前片の4か所には、縦部材11に固定するためのボルト孔85が設けられている。このボルト孔85は、設置された縦部材11における管状突起部39の位置に対応する位置に設けられている。
【0046】
また、載置固定部材81における筐体1が載置される載置面には、略全長に亘る矩形開口部87と、矩形開口部87に沿って略全長に亘るスリット89とが設けられている。
矩形開口部87は、消火栓装置3の筐体1からの配線、ケーブル、接続ホース等を挿通するためのものである。また、スリット89は、消火栓装置3の筐体1をボルト固定するためのボルトを挿通するためのものである。
矩形開口部87及びスリット89を載置固定部材81の略全長に亘って設けることで、消火栓装置3を載置固定部材81の所望の位置に載置固定することができる。
【0047】
<背面固定部材>
背面固定部材83は、図12に示すように、実施の形態1で説明した壁面側固定部材53と、壁面側固定部材53を介して壁面に固定される第2壁面側固定部材84(図13(b)参照)によって構成されている。第2壁面側固定部材84は、消火栓装置3の幅寸法よりも長尺(載置固定部材81と同じ長さ)に設定されたL字のアングル材によって構成されている。第2壁面側固定部材84における壁面側固定部材53に固定される壁面固定片部91の4か所にはボルト孔93が設けられている。このボルト孔93はトンネルの壁面7のインサートアンカー19に固定される壁面側固定部材53の位置に対応する位置に設けられている。また、L字の筐体側と連結される筐体連結片部95には、ほぼ全長に亘るスリット97が形成されている。
【0048】
以上のように構成された、本実施の形態の消火装置用架台79を用いて消火栓装置3をトンネルの壁面7に取り付ける取付方法を、載置固定部材81と背面固定部材83を中心に説明する。
【0049】
下部側固定部材9をトンネルの壁面7にボルト固定し、縦部材11を高さ調整して下部側固定部材9に取り付ける。この点は実施の形態1と同様である。
【0050】
次に、縦部材11の上端面に載置固定部材81を設置し、縦部材11の上端部に設けられている管状突起部39を載置固定部材81のボルト孔85の位置に合わせて、ボルト固定する。
【0051】
次に、壁面側固定部材53を、下部側固定部材9を取り付けたインサートアンカー19の上方にある4か所のインサートアンカー19に固定し、さらに壁面側固定部材53に第2壁面側固定部材84を固定する。なお、壁面側固定部材53及び第2壁面側固定部材84の取り付けは、下部側固定部材9の取り付けと同時に行ってもよい。
【0052】
次に、消火栓装置3を載置固定部材81に載置して、消火栓装置3の左右方向の位置調整をする。
このとき、載置固定部材81には、ほぼ全長に亘る矩形開口部87とスリット89が形成されているので、消火栓装置3を載置固定部材81に対してどの位置に載置しても配線等の挿通やボルト固定を行うことができる。
【0053】
左右の位置調整が完了すると、載置固定部材81のスリット89にボルトを挿通させて消火栓装置3の筐体1の底面に設けられているボルト挿入孔に固定し、消火栓装置3の底面と載置固定部材81の載置面をボルト固定する。
筐体1の背面側のボルト挿入孔は第2壁面側固定部材84のスリット97に対向しているので、スリット97にボルトを挿通して筐体1の背面と第2壁面側固定部材84をボルト固定する。
なお、筐体1の背面には、ボルト挿入孔を形成しておく必要があるが、このボルト挿入孔は幅方向(横方向)で2か所、高さ方向(縦方向)で複数段形成するようにすればよい。このボルト挿入孔は、位置調整が可能なように縦方向に長い長孔にしてもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態の消火装置用架台79によれば、実施の形態1と同様に、トンネルの壁面7のセグメントに設けられたインサートアンカー19を利用して消火栓装置3をトンネルの壁面7に設置することができ、トンネル軸線方向に複数設置される消火栓装置3の消火栓装置間の距離を所定の距離に調整することができる。
また、高さ方向の位置調整もできるので、車道の路面からインサートアンカー19の高さ位置が異なっていても、車道の路面から消火栓装置3の操作部までの高さを一定にすることができる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1、2では、載置固定部材13、81を、縦部材11を介して下部側固定部材9に設置する例を示したが、上下方向の位置調整が不要な場合には、載置固定部材13、81は下部側固定部材9に直接取り付けるようにしてもよい。この場合、実施の形態1のタイプでは、載置固定部材13は、下部側固定部材9に対して左右方向位置調整できるようにする必要があり、下部側固定部材9は、例えば実施の形態1で示した下部側固定部材9と縦部材11を一体化したようなものであればよい。他方、実施の形態2のタイプでは、載置固定部材81を下部側固定部材9に固定するだけでよい。
【0056】
また、上記の実施の形態1、2では、縦部材11に複数のボルト孔35を設けて、縦部材11の下部側固定部材9に対する高さ方向の位置調整は所望のボルト孔35を選択して段階的に調整するというものであったが、縦部材11に上下方向に長い長孔を形成して、縦部材11を下部側固定部材9に対して無段階に調整できるようにしてもよい。
【0057】
また、上記の実施の形態1、2では、消火装置の例として、内部に消火用のホースを収納した消火栓装置3を例に挙げて説明したが、本発明の消火装置としては、消火器のみを収納した消火器箱も含まれる。
また、上記の実施の形態1、2では、1台の消火栓装置3を設置するのに複数本(実施の形態1では2本、実施の形態2では4本)の縦部材11を用いていたが、本発明では1台の消火栓装置3を設置するのに用いる縦部材11の数は特に限定されない。特に、消火器箱の場合には、横幅が短いことから、1台の消火器箱を1本の縦部材11を用いて設置することもできる。また、縦部材11を、その上端から左右方向に延出する横片を有するT字状の部材から構成することで、縦部材11の数が少なくてもより安定した支持が可能になる。
【0058】
また、上記の実施の形態1、2では、消火栓装置3の姿勢を保持するために、消火栓装置3の筐体1の背面を壁面7に固定するための背面固定部材15、83を設けた例を示しているが、消火栓装置3の背面を固定する部材については、消火栓装置3の荷重を支持するものではなく、消火栓装置3の姿勢を保持する補助的なものであることから、上記の例に限られず、筐体1のいずれかの箇所とトンネルの壁面7とを連結するような部材であれば、その形状は問わない。上記の実施の形態1、2のように、消火栓装置3の背面を固定する部材を設ける方が好ましいが、例えば消火栓装置3の筐体背面をトンネルの壁面7に当接させてトンネルの壁面7で荷重を支持させる等すれば、消火栓装置3の背面固定部材15、83はなくても支障はない。
【0059】
なお、上記の説明は、トンネルの壁面7以外にも設置できる消火栓装置3を前提として、該消火栓装置3を壁面7に設置するための消火装置用架台5、79について説明したが、例えばトンネルの壁面7に設置することを前提とするならば実施の形態1、2で説明した消火装置用架台5、79を含めてトンネルの壁面設置タイプの消火栓装置として捉えることもできる。
【符号の説明】
【0060】
<実施の形態1>
1 筐体
3 消火栓装置
5 消火装置用架台
7 壁面
9 下部側固定部材
11 縦部材
13 載置固定部材
15 背面固定部材
17 傾斜面部
19 インサートアンカー
21 背面プレート
23 係合部材
25 連結部材
27 ボルト孔(背面プレート)
29 片部(係合部材)
31 ボルト孔(係合部材)
33 片部(縦部材)
35 ボルト孔(縦部材)
37 正面部
39 管状突起部
41 ナット(縦部材)
43 片部(載置固定部材)
45 載置固定面部
47 ボルト孔(載置固定面部)
49 開口部
51 スリット(載置固定部材)
53 壁面側固定部材
55 筐体側固定部材
57 固定面部
59 壁面側連結面部
61 補剛面部
63 ボルト孔(固定面部)
65 ボルト孔(壁面側連結面部)
67 ナット(壁面側連結面部)
69 筐体側固定面部
71 筐体側連結面部
73 ボルト孔(筐体側固定面部)
75 ナット(筐体側固定面部)
77 スリット(筐体側連結面部)
<実施の形態2>
79 消火装置用架台
81 載置固定部材
83 背面固定部材
84 第2壁面側固定部材
85 ボルト孔(載置固定部材)
87 矩形開口部
89 スリット(載置固定部材)
91 壁面固定片部
93 ボルト孔(壁面固定片部)
95 筐体連結片部
97 スリット(筐体連結片部)
98 路面
99 監視員通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14