(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有するペプチド、及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20220801BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220801BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220801BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220801BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220801BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220801BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220801BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20220801BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220801BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K38/10 ZNA
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P19/00
A61P21/00
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P17/02
A61P7/06
A61P35/00
A23L33/18
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2018552817
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2017003815
(87)【国際公開番号】W WO2017176087
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2016-0042915
(32)【優先日】2016-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514286826
【氏名又は名称】ジェムバックス アンド カエル カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286848
【氏名又は名称】キム サン チェ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】キム サン チェ
(72)【発明者】
【氏名】リ キュヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ ソン ホ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523323(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0140396(KR,A)
【文献】国際公開第2015/067781(WO,A1)
【文献】特表2015-525768(JP,A)
【文献】国際公開第2014/171792(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0128336(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/10
A23L 33/18
A61K 8/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、および該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する
アミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を、薬学的に有効な量で含む、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状を、予防又は治療するための組成物であって、
前記疾患が、神経系退行性疾患、骨格系の退行性疾患、筋肉系の退行性疾患、加速化された細胞死亡率を誘発する遺伝的疾患から選ばれる一つ以上の疾患であり、
前記神経系退行性疾患が、末梢神経損傷、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、ハンチントン病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、及び多発性神経病症のうちいずれか一つであり、
前記細胞損失及び老化による症状が、皮膚の創傷による組織の損失、皮膚のシワ、貧血、皮膚の癌化から選ばれる一つ以上の症状である、
組成物。
【請求項2】
薬学的組成物である、請求項1に記載の組成
物。
【請求項3】
前
記組成物は、配列番号1のペプチドが、0.1μg/kg~100mg/kgで投与されるようにすることを特徴とする
、請求項2に記載
の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を活性成分とする、
テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状を、予防又は改善するための健康機能食品用組成物であって、
前記疾患が、神経系退行性疾患、骨格系の退行性疾患、筋肉系の退行性疾患、加速化された細胞死亡率を誘発する遺伝的疾患から選ばれる一つ以上の疾患であり、
前記神経系退行性疾患が、末梢神経損傷、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、ハンチントン病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、及び多発性神経病症のうちいずれか一つであり、
前記細胞損失及び老化による症状が、皮膚の創傷による組織の損失、皮膚のシワ、貧血、皮膚の癌化から選ばれる一つ以上の症状である、
健康機能食品用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、粉末、顆粒、丸、錠剤、カプセル、キャンディ、シロップ及び飲料から選ばれたいずれか一つの剤形として製造されることを特徴とする、請求項4に記載の健康機能食品用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を活性成分とする、
細胞損失及び老化による症状を予防又は改善するための化粧用組成物
であって、
前記細胞損失及び老化による症状が、皮膚の創傷による組織の損失、皮膚のシワ、皮膚の癌化から選ばれる一つ以上の症状である、
化粧用組成物。
【請求項7】
前記化粧用組成物は、スキン、ロション、クリーム、ファウンデーション、エッセンス
、ジェル、パック、フォームクレンジング、石鹸及び皮膚外用軟膏からなる群より選ばれるいずれか一つの剤形を有することを特徴する
、請求項6に記載の化粧用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有するペプチド、及びこれを含む組成物に関し、より詳しくは、テロメラーゼに由来のペプチドを含み、テロメラーゼ活性の減少及びテロメアの損失による細胞の退化、老化又は死滅に対し治療又は予防の効果を発揮する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テロメア(telomere)は、染色体の末端部に見られるDNAヘキサマー(hexamer)(TTAGGG)配列が反復して存在するものであって、当該染色体を安定化する機能を有すると知られている。細胞の複製を繰り返しながら、染色体の末端が短縮され、長さが短くなるほど、細胞の老化を意味するため、多くの組織において、細胞の寿命を維持する重要な要素であり、細胞老化の評価に用いられる。テロメラーゼ(telomerase)は、テロメアの3´末端にテロメアの反復配列の付加を触媒する酵素タンパク質であって、細胞の老化によって損失されるテロメアを復旧する役割を果たしている。テロメラーゼは、殆どの正常な成人の細胞においては発現されておらず、テロメアの長さは、細胞の複製時毎に漸進的に減少し、テロメアの反復配列の減少は、細胞の老化を誘導する。
【0003】
特定の疾病において、このテロメアの末端が、非正常的に素早く損失されることで、未成熟の細胞の老化又は退化が誘導される。ヒトの場合、ヒトテロメラーゼ(hTERT, human-telomerase reverse transcriptase)を発現する細胞は、正常的な細胞老化経路を迂回する場合として現れた。短いテロメアを有する老化細胞において、テロメラーゼの発現が誘導されると、テロメアの長さが増加し、より若い細胞と類似の表現型を回復すると示された。
【0004】
癌細胞や特定の幹細胞とは異なって、体細胞は、テロメラーゼの活性が、殆ど又は全くなく、テロメアを含む一部の染色体の末端が、一定のレベル以下の長さと短縮される場合、分裂を止め、プログラムされた細胞老化(細胞死滅)の段階に入っていく。テロメア末端の反復配列の損失は、テロメラーゼ活性の増大により減少されるので、テロメア末端のテロメアの反復配列を付加する効果を有するテロメラーゼ活性の誘導は、老化又は死滅の段階にある体細胞の複製及び分裂を再開し、老化又は死滅の段階の細胞が多く分布した損傷の組織の回復を誘導すると予想される。
【0005】
追加に、体細胞においてテロメラーゼ活性を増大させる場合、退行性神経疾患(代表的にアルツハイマー)の治療又は予防、感染された細胞を殺す免疫細胞(細胞毒性Tリンパ球)の早期老化により触発されるHIVの治療又は改善、肌の外傷などの創傷の治癒(wound healing)、骨髄移植などの移植細胞の維持などに役立つことができる。追加に、テロメラーゼ活性は、テロメラーゼの酵素部分であるhTERTの過発現(over-expression)又は熱衝撃タンパク質(HSP, Heat-shock protein)のように、テロメラーゼのアセンブリーを調整するタンパク質の発現により増加すると知られている。
【0006】
テロメア長の算定は、テロメアの生物学的及び臨床学的な重要度を理解する上で重要である。テロメアの長さは、細胞の染色体の安定性、テロメラーゼの活性及び/又は発現、増殖能力、及び老化過程の研究に有用な指標として作用する。テロメアの臨床的価値は、癌、早老症候群、又は部分的早老症;遺伝的異常、染色体の不安定による疾患、例えば、ブルーム(Bloom)症候群(感染者の染色体の断絶、及び再配列の頻度が高い稀な遺伝的障害)、及び老化関連の疾患、例えば、ウェルナー症候群(Warner's Syndrome)(比較的に若いヒトにおいて急老化を示す稀な疾患)から、その重要性が立証できる。テロメア長の動態は、特定の疾患の進行から独特な発現のパターンを有する。したがって、これは、疾患の予測に非常に有用である。
【0007】
一方、テロメラーゼ活性の減少、及びテロメア長の減少により誘導される退行性神経疾患、及びよく知られた退行性神経疾患であるアルツハイマーの治療剤の開発のための効力、効能の実験に使われる動物モデルとしては、アミロイドβの蓄積及びNFT(neurofibrillary tangle)が誘導されるように、三つの特定の遺伝子(APP、Tau、 PS1)が変異されたマウス(3xTg-AD mouse model)などがある。この三つの遺伝子が変異されたマウスは、時間の経過とともに、アルツハイマー症状を含む神経細胞損傷の疾病が進行する状況を示す。このような神経細胞の損失が誘導される動物に対いて、開発した薬剤を投与することにより、神経細胞の破壊の抑制及び再生能を観察し、非投与対照群と比べることで、治療剤の候補の効力、効能を測定できると知られている。
【0008】
本発明の一側面によるペプチドPEP1(以下、PEP1という)は、テロメラーゼ(telomerase)の触媒部分に存在する16個の重要なアミノ酸から構成されたペプチドで、抗炎症及び抗酸化などの効能を有すると知られている。本発明の一側面によるペプチドが、テロメラーゼの活性を増加させ、細胞内のテロメアの長さを増大させる効果があることが、動物実験などを通じて見付けられたことによって、PEP1が、テロメラーゼ活性の減少及びテロメア長の縮少により誘導される様々な疾患の予防及び治療に効果を見せると期待される。
【0009】
本明細書は、テロメラーゼの逆転写酵素(reverse transcriptase of telomerase)由来のペプチドを含む、テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有する組成物を提供する。具体的には、本明細書は、ヒトテロメラーゼの逆転写酵素(reverse transcriptase of human telomerase、hTERT)由来のアミノ酸ペプチドを含む、テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有する組成物を提供する。より詳しくは、本明細書は、hTERT由来の16個のアミノ酸ペプチドであるPEP1を、テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有する組成物として提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Simonsen, J. L. et al., "Telomerase expression extends the proliferative life-span and maintains the osteogenic potential of human bone marrow stromal cells", Nat biotechnol 20 (6): 592-6 (2002年1月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような背景の下で、本発明者らは、副作用が殆どなく、かつ効果が優れたテロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有する、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少による症状の予防及び治療用組成物を開発するために、鋭意努力をした結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
本明細書の目的は、効果的でありながら、同時に副作用がなく、テロメラーゼの活性を増加させ、テロメアの長さを伸ばすペプチド組成物及び、これを用いたテロメラーゼ活性の減少及びテロメア長の減少による細胞の老化、損傷、死滅などにより誘発される症状の予防及び改善、治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によると、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を、薬学的に有効な量で含む、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための組成物が提供される。
【0015】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を、必要とする個体に適用することを含む、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長の方法を提供する。
【0016】
本発明の他の側面において、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長に用いるための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を提供する。
【0017】
本発明のまた他の側面において、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための有効成分として、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上の非治療的化粧用途を提供する。
【0018】
本発明のまた他の側面において、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための組成物の製造に用いるための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上の用途を提供する。
【0019】
本発明の一側面による組成物において、前記組成物は、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞の損失及び老化による症状を、予防又は治療することを特徴とする。
【0020】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を、必要とする個体に適用することを含む、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状の治療方法又は予防方法を提供する。
【0021】
本発明の他の側面において、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状の治療又は予防に用いるための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上を提供する。
【0022】
本発明のまた他の側面において、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状を改善又は予防するための有効成分として、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上の非治療的化粧用途を提供する。
【0023】
本発明のまた他の側面において、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状を治療又は予防するための組成物の製造に用いるための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドからなる群から選ばれる一つ以上の用途を提供する。
【0024】
本発明の一側面による組成物において、前記疾患は、神経変性疾患、神経系退行性疾患、骨格系の退行性疾患、筋肉系の退行性疾患、ウィルス性感染疾患、加速化された細胞死亡率を誘発する遺伝的疾患から選ばれる一つ以上の疾患であることを特徴とする。
【0025】
本発明の一側面による組成物において、前記神経系退行性疾患は、脳疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、抹消神経系疾患、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、痴呆、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー性疾患、脊髄小脳変性症、及び多発性神経病症のうちいずれか一つであることを特徴とする。
【0026】
本発明の一側面による組成物において、前記細胞損失及び老化による症状は、皮膚の創傷による組織の損失、皮膚のシワ、貧血、皮膚の乾癬、皮膚の癌化から選ばれる一つ以上の症状であることを特徴とする。
【0027】
本発明の他の一側面によると、前記組成物を活性成分とするテロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための薬学的組成物が提供される。
【0028】
本発明の他の側面による薬学的組成物において、前記薬学的組成物は、配列番号1のペプチドが、0.1μg/kg~100mg/kgの容量で投与されるようにすることを特徴とする、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための薬学的組成物が提供される。
【0029】
本発明の他の一側面によると、前記組成物を活性成分とする、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための健康機能食品用組成物が提供される。
【0030】
本発明の他の一側面による健康機能食品用組成物において、前記組成物は、粉末、顆粒、丸、錠剤、カプセル、キャンディ、シロップ及び飲料のうちいずれか一つの剤形として製造されることを特徴とする。
【0031】
本発明の他の一側面によると、前記組成物を活性成分とする、テロメラーゼ活性の増加又はテロメア長の延長のための化粧用組成物が提供される。
【0032】
本発明の他の側面による化粧用組成物において、前記化粧用組成物は、スキン、ロション、クリーム、ファウンデーション、エッセンス,ジェル、パック、フォームクレンジング、石鹸及び皮膚外用軟膏からなる群より選ばれる一つ以上の剤形を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本明細書による配列番号1の配列を有するペプチド、又は該配列と80%以上の相同性を有する配列のペプチド、又はそのフラグメントであるペプチドが、細胞の非正常的なテロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少及び損失などによる疾患、細胞の老化による症状、神経細胞の損失及び再生能力の喪失と関連の疾患の予防及び治療の効能を有することにより、これらの疾患の予防及び治療の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】退行性神経系疾患の実験のための遺伝子操作の動物モデルにおいて、退行性神経疾患が誘導されたとき、本明細書によるペプチドの濃度別投与(0、0.01、0.1、1mg/kg)によって、テロメラーゼ活性が増加された程度を比較測定した結果を示したグラフである。
【
図2】退行性神経系疾患の実験のための遺伝子操作の動物モデルにおいて、退行性神経疾患が誘導されたとき、本明細書によるペプチドの濃度別投与(0、0.01、0.1、1mg/kg)によって、テロメアの長さが増加された程度を見せる染色体の電気泳動写真である。
【
図3】テロメラーゼ活性を測定するRTA(Relative telomerase activities)を計算する計算式である。
【
図4】テロメラーゼ活性を測定するための実験において、PCR段階の実験条件を示した表である。
【
図5】テロメアの長さを測定するための実験において、イメージの分析に用いられた計算式である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、多様な変換を加えてもよく、様々な実施例を有してもよい。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に限定することではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むことを理解すべきである。本発明を説明するにあたって、関連の公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にする恐れがあると判断する場合、その詳細な説明を省略する。
【0036】
テロメア(telomere)は、染色体の末端に繰り返して存在する遺伝物質であって、当該染色体の損傷や他の染色体との結合を防止すると知られている。テロメアの長さは、細胞が分裂する度に、少しずつ短くなって、一定の回数以上の細胞分裂があれば、テロメアは非常に短くなり、その細胞は、分裂を止めて死になる。その反面、テロメアを長くすると、細胞の寿命が延長されると知られている。テロメラーゼに由来のペプチドであるPEP1は、膵臓癌を始めた、多様な癌に対する抗がん剤として開発されてきたが、いままで、抗がん効果の他にも、抗炎症、抗酸化、細胞透過性及び細胞内の主要なシグナル伝達経路に関与することが明らかになり、PEP1のこのような細胞内機能に着目して、既存の抗がん剤としての用途の他に、新しい適応症に対する活用可能性が探求されてきた。
【0037】
本発明者らは、テロメラーゼに由来のペプチドが、テロメラーゼの活性を増大させ、かつメロメアの長さを伸ばす活性があることを確認し、本発明を完成するに至った。より詳しくは、本発明の一側面においては、アルツハイマー動物モデル実験を通じて、PEP1が、テロメラーゼの活性が減少されているか、長さが短くなったアルツハイマー動物モデルから抽出された細胞の実験を通じて、テロメラーゼの活性を増加させ、テロメア関連のDNAの長さを増加させる結果を確認した。
【0038】
本発明の一側面において、配列番号1のペプチド(PEP1)、配列番号1のフラグメントであるペプチド、又は前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、テロメラーゼ、具体的には、ヒト(Homo sapiens)テロメラーゼ由来のペプチドを含む。
【0039】
本明細書に開示されたペプチドは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列相同性を有するペプチドを含んでもよい。また、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1を含むペプチド又はそのフラグメントと、1個以上のアミノ酸、2個以上のアミノ酸、3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸、又は7個以上のアミノ酸が変化されたペプチドとを含んでもよい。
【0040】
本発明の一側面において、アミノ酸の変化は、ペプチドの物理化学的特性を変更させる性質に属する。例えば、ペプチドの熱安定性を向上し、気質特異性を変更させ、最適のpHを変化させるなどのアミノ酸の変化が行われてもよい。
【0041】
配列番号1に記載されたペプチドは、以下の表1の通りである。以下の表1における「名称」は、ペプチドを区別するために命名したものである。本発明の一側面において、配列番号2に記載されたペプチドは、ヒトテロメラーゼの全ペプチドを示す。本発明の別の一側面において、配列番号1の配列を有するペプチド、配列番号1の配列のフラグメントであるペプチド、又は前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、テロメラーゼに含まれたペプチドのうち、当該位置のペプチドを選別して合成した「合成ペプチド」を含む。配列番号2は、全テロメラーゼのアミノ酸配列を示したものである。
【0042】
【0043】
本発明の一側面による配列番号1のペプチドを含む組成物は、テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患、又は細胞損失及び老化による症状の、予防又は治療に有用である。テロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少により誘導される疾患は、神経変性疾患、神経系退行性疾患、骨格系の退行性疾患、筋肉系の退行性疾患、ウィルス性感染疾患、加速化された細胞の死亡を誘発する遺伝的疾患から選ばれる一つ以上の疾患である。テロメラーゼ活性の増加が有利であり得る神経系退行性疾患としては、脳疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、抹消神経系疾患、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、痴呆、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー性疾患、脊髄小脳変性症、及び多発性神経病症のうちいずれか一つであってもよいが、これに制限されない。追加に、テロメラーゼ活性の増加が有利であり得る疾病の状態としては、退行性関節の疾病、粥状硬化症、血栓症、心不全又は虚血のようなストレスによる細胞死、年齢関連の斑状退行、AIDS、加速化された細胞の再編成を引き起こす遺伝疾患と共に発生する組織再編成の損傷及びその他の退行性状態を含む。
【0044】
本発明の一側面によるテロメラーゼの活性を増加させる組成物は、細胞損失及び老化による症状の治療を促進する上で効果的であり、皮膚の創傷による組織損失、皮膚のシワ、貧血、皮膚の乾癬、皮膚の癌化、又は他の急性又は慢性の皮膚疾患から選ばれる一つ以上の症状の治療に好ましし効果を有する。
【0045】
本発明の一側面においては、配列番号1のアミノ酸配列を含む(comprising)ペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントである、テロメラーゼ活性の増加及びテロメアの延長の効能を有するペプチドを、有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0046】
本発明の一側面による組成物は、ヒト、イヌ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ギニアピッグ又はサルを含む全ての動物に適用できる。
【0047】
本発明の一側面による組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含む(comprising)ペプチド、該アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はそのフラグメントである、神経細胞の損失の予防及び再生の効能を有するペプチドを含む薬学組成物を提供する。本発明の一側面による薬学組成物は、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜内又は皮下などで投与できる。
【0048】
経口投与のための剤形は、錠剤、丸剤、軟質又は硬質のカプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、又は乳濁剤であってもよいが、これに限定されない。非経口投与のための剤形は、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチ、又は噴霧剤であってもよいが、これに限定されない。
【0049】
本発明の一側面による薬学組成物は、必要に応じて、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩解剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料、又は甘味剤などの添加剤を含んでもよい。本発明の一側面による薬学組成物は、当業界の常法により製造できる。
【0050】
本発明の一側面による薬学化組成物の有効成分は、投与される対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその重症度、投与経路又は処方者の判断によって変わる。このような因子に基づいた適用量の決定は、当業者のレベル内にあり、この1日投与用量は、例えば、0.01μg/kg/日~10g/kg/日、具体的には、0.1μg/kg/日~1g/kg/日、より具体的には、0.5μg/kg/日~100mg/kg/日となってもよく、用量による効果の差を見せる場合、これを適切に調節できる。本発明の一側面による薬学組成物は、1日1回~3回投与できるが、これに制限されることではない。
【0051】
本発明の一側面による健康機能食品用組成物は、粉末、顆粒、丸、錠剤、カプセル、キャンディ、シロップ及び飲料のうちいずれか一つの剤形として製造できるが、これに制限されない。本発明の一側面による健康機能食品用組成物を、食品添加物として用いる場合、前記健康機能食品組成物をそのまま添加して用いてもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法に従って適切に用いてもよい。前記健康機能食品組成物を添加できる食品の例としては、肉類、パン、キャンディ類、スナック類、麺類、酪農製品、ビタミン複合剤、飲料水、茶、ドリンク剤などがあるが、これに制限されず、通常的な意味での健康食品をすべて含む。
【0052】
本発明の一側面による健康機能食品組成物は、食品、特に、機能性食品として製造してもよい。本発明の一側面による機能性食品は、食品の製造の際に通常的に添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素及び調味剤を含む。
【0053】
本発明による薬学組成物又は健康機能食品組成物は、好ましくは、0.1%以上、最大に約0%、より好ましくは、最大に約5%、及び最も好ましくは、最大1%(w/v)で
配列番号1のペプチドを含有する。適当な濃度の選択は、例えば、好ましい投与量、頻度及び活性成分の送達方法のような因子に依存的である。
【0054】
本発明の一側面による化粧用組成物は、その剤形において特に限定されることなく、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パウダー、エッセンス、パックなどの剤形を有してもよい。
【0055】
本発明の一側面による化粧料組成物は、通常の化粧料の製造方法に従い、多様な形態で製造できる。例えば、前記化粧料組成物は、前記ペプチドを含有する香粧品、化粧水、クリーム、ロションなどの形態で製造でき、これは、通常のクレンジング液、収斂液及び保湿液で希釈して使用してもよい。また、前記化粧料組成物は、化粧料組成物の分野において通常用いられる安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、及び香料のような通常的な補助剤を含んでもよい。
【0056】
本発明の一側面による組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、固形製剤などに剤形化することができる。各剤形は、有効成分の他に、当該分野において通常用いられる成分を、剤形又は使用目的に応じて、当業者が容易に適宜選択して配合でき、他の原料と同時に適用する場合、相昇効果を奏することができる。
【0057】
本明細書において用いられた用語は、特定の具体例を説明するための目的のみで意図されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。名詞の前に個数が省略された用語は、数量を制限するものではなく、言及された名詞の物品が、一つ以上存在することを示すものである。用語「含む」、「有する」、及び「含有する」とは、包括的意味と解釈される(即ち、「含まれるが、これに限定されない」という意味)。
【0058】
数値の範囲を言及するのは、単にその範囲内に属するそれぞれの別個の数値を、個別的に言及することに代わる容易な方法であるためであり、それではないと明示されていない限り、各数値は、個別的に明細書に言及されているように本明細書に適用される。全ての範囲の限界値は、その範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。
【0059】
本明細書に述べられる全ての方法は、特に明示されているか、文脈により明白に矛盾しない限り、適切な順序で行われ得る。いずれか一つの実施例及び全ての実施例又は例示的言語(例えば、「~のような」)を使用するのは、特許請求の範囲に含まれていない限り、単に本発明の記載を容易にするためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書のいかなる言語も、請求されていない構成要素を、本発明の実施に必須的なものであると解釈してはいけない。特に定めのない限り、本明細書に用いられる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により通常理解されるような意味を有する。
【0060】
本発明の好適な具体例は、本発明を実行するために、発明者に知られた最適のモードを含む。好適な具体例の変形は、先行する記載に触れれば、当業者に明白になるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に利用することを期待し、発明者らは、本明細書の記載とは異なる方式で、本発明が実施されることを期待する。従って、本発明は、特許法により許容されているように、添付の特許請求の範囲に述べられた発明の要旨の均等物及び全ての変形を含む。さらに、全ての可能な変形内で、前述の構成要素のいかなる組み合わせも、ここで異なって明示するか、文脈上、明白に矛盾しない限り、本発明に含まれる。本発明は、例示的な具体例を参照して、具体的に開示し、記述されたが、当業者は、添付の特許請求の範囲により定められる発明の思想及び範囲を逸脱することなく、形態及びディテールにおいて多様な変化が可能であることがよく分かる。
【0061】
以下、実施例及び実験例をもって、本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例及び実験例は、本発明の理解を助けるために例示の目的にのみ提供されたものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲を限定するものではない。
【0062】
実施例1:ペプチドの合成
配列番号1のペプチド(以下、「PEP1」という)を、従来知られている固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis, SPPS)に従って製造した。具体的に、ペプチドは、ASP48S(Peptron, Inc., 大韓民国・大田)を用いて、Fmoc固相合成法でC-末端からアミノ酸を一つずつカップリングすることにより合成した。以下のように、ペプチドのC-末端の一番目のアミノ酸が、レジンに付着されたものを用いた。例えば、次の通りである。
【0063】
NH2-Lys(Boc)-2-クロロ-トリチルレジン
NH2-Ala-2-クロロ-トリチルレジン
NH2-Arg(Pbf)-2-クロロ-トリチルレジン
ペプチドの合成に用いた全てのアミノ酸原料は、N-末端がFmocで保護(protection)され、残基は全て酸で除去される、Trt、Boc、t-Bu(t-ブチルエステル)、Pbf(2、2、4、6、7-ペンタメチルジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルフォニル)などで保護されたものを用いた。例えば、次の通りである。
【0064】
Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Ahx-OH、Trt-メルカプト酢酸。
【0065】
カップリング試薬(Coupling reagent)としては、HBTU[2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1、1、3、3-テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート]/HOBt[N-ヒドロキシベンゾトリアゾル]/NMM[4-メチルモルホリン]を用いた。Fmocの除去は、20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を用いた。合成されたペプチドを、レジンから分離及び残基の保護基の除去には、切断カクテル(Cleavage Cocktail)[TFA (トリフルオロ酢酸)/TIS(トリイソプロピルシラン)/EDT(エタンジチオール)/H2O=92.5/2.5/2.5/2.5]を用いた。
【0066】
アミノ酸の保護基が結合された出発アミノ酸が、固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸を各々反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護の過程を繰り返すことにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを、レジンから切り取った後、HPLCで精製し、MSで合成の可否を確認した後、凍結乾燥した。
【0067】
本実施例に用いられたペプチドへの高速液体クロマトグラフィーの結果、全てのペプチドの純度は、95%以上であった。
【0068】
ペプチドPEP1の製造についての具体的な過程は、以下の通りである。
【0069】
1)カップリング
NH2-Lys(Boc)-2-クロロ-トリチルレジンに、保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解して加えた後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0070】
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を加えて、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0071】
3)前記1)と2)の反応を繰り返して行い、ペプチドの基本骨格NH2-E(OtBu)-A-R(Pbf)-P-A-L-L-T(tBu)-S(tBu)-R(Pbf)L-R(Pbf)-F-I-P-K(Boc)-2-クロロ-トリチルレジンを作製した。
【0072】
4)切断(Cleavage):合成が完了されたペプチドレジンに、切断カクテル(Cleavage Cocktail)を加えて、レジンからペプチドを分離した。
【0073】
5)得られた混合物に、冷却ジエチルエーテルを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈殿した。
【0074】
6)Prep-HPLCで精製した後、LC/MSで分子量を確認し、凍結してパウダーとして製造した。
【0075】
実施例2:実験材料及び方法
実施例2-1:実験動物の用意
動物に関する全ての手続きは、ハンヤン大学校(Hanyang University)の実験動物ガイドラインに従って進行した。全ての実験は、動物の個体数と、苦痛とを最小化し、全ての動物は、一度だけ使用した。
【0076】
PEP1は、前記実施例1による方法で用意したものを用い、残りの試薬及び対照物質は、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入した純正品を用いた。
【0077】
アルツハイマー病におけるPEP1の治療効果をテストするために、ジャクソンラボ(Jackson Laboratory)から、アルツハイマー形質転換マウス(3XTg-AD)を購入して用いた。この形質転換マウスの遺伝的特性は、表2の通りである。
【0078】
【0079】
8週令の形質転換マウスの分譲を受け、予備飼育した後、形質転換マウスの個体数を増やすために、オスとメスの比率を1:2にして、ケージで飼育した後、約7~8日が過ぎてから分離し、約7~8週後、妊娠が確認されたマウスは、1週間の経過後、出産をし、3週間の離乳過程を経た。そして2週が過ぎたら、成熟のマウスが得られる。予備飼育及び実験の全期間中、温度23±2℃、相対湿度60±10%を維持し、12時間の明暗周期を守って飼育した。
【0080】
飼育の後、PEP1の濃度別の効果を調べるために、以下のように実験動物を分けて、実験物質の投与を行った。陽性対照物質として、ドネペジル(Donepezil)を用い、実験動物を5群に分けて、各群毎に10匹ずつ配置した。各群別の投与物質及び投与量は、以下の通りである。
【0081】
1群:食塩水(Saline)
2群:0.01mg/kgのPEP1
3群:0.1mg/kgのPEP1
4群:1mg/kgの PEP1
5群:1mg/kgのドネペジル
PEP1、食塩水及びドネペジルは、12ケ月のときから2ケ月の間、1週間に3回ずつ、各濃度別に皮下注射した後、1ケ月後(15ケ月令)に、マウス(各群当りの10匹)を麻酔した後、0.9%食塩水を用いて、マウスの心臓を通した再灌流を行い、全血を除去した。その後、脳を摘出し、海馬部位と、全体の脳部位とに分離して、脳組織を得た後、液体窒素を用いて、急激に凍らせた。
【0082】
実施例2-2:テロメラーゼ活性及びテロメア長の測定方法
テロメラーゼの活性及びテロメアの長さが、時間が経つにつれ、減少されることを確認するために、アルツハイマー誘導の動物モデルの7ケ月令(AD Tg 7Mとして表示)と、15ケ月令(AD Tg 15Mとして表示)において、実施例2-1の方法で脳組織を得て、テロメラーゼの活性及びテロメアの長さを測定した。
【0083】
PEP1によるテロメラーゼの活性を調べるために、TeloTAGGG Telomerase PCR ELISAPLUS(Cat # 12 013 789 001, Roche Boehringer-Mannheim, IN, USA)を用いて測定し、実施例2-1の方法に従って用意した脳組織の全体を粉砕した後、2~3gの組織に200μlのice-cold lysis bufferを入れて、iceで30分間インキュベーションの後、16,000xg20分間遠心分離すると、175μlのタンパク質が分離される。10μgのタンパク質を定量し、反応混合物(reaction mixture)と、内部標準物質(internal standard)とを混合して、PCR(
図4参照)を行った後、ハイブリダイゼーション(Hybridization)を進行し、特殊コーティングのMPモジュールに、サンプルを入れて反応させた後、ELISAリーダーで、450、690nm吸光度を測定した。RTA(Relative telomerase activities)は、提示の計算式(
図3参照)を用いて、結果を導き出した。
【0084】
テロメア長の測定は、TeloTAGGG Telomere length assay(Cat # 12 209 136 001, Roche Boehringer-Mannheim, IN, USA)を用い、脳組織の全体を粉砕した後、High Pure PCR Template preparation kit(Cat # 11 796 828 001, Roche Boehringer-Mannheim, IN, USA)を用いて、DNAを抽出し、1~2μgの精製されたゲノムDNAと、Hinf1/Rsa 1 酵素混合物とを混合して、37℃で2時間、反応させた。反応が終わったら、5μlのゲル電気泳動ローディングバッファー(gel eletrophoresis loading buffer)5xと混合して、0.8%アガロースゲルに5V/cmの速度で3時間、電気泳動を行った。反応を済んだゲルは、HCL溶液に10分間反応させると、ブロモフェノールブルー染色の色が黄色に変わった。変性溶液(denaturation solution)と、中和溶液(neutralization solution)とで順次反応した後、20xSSCを用いて、ナイロンメンブレン(nylon membrane)に最小6時間から12時間、サザンブロッティング(southern blotting)でトランスファーした。サザントランスファー(Southern transfer)が終わったら、メンブレンを120℃で20分間ベークして、DNAをメンブレンに固定し、2xSSCバッファーで洗浄したメンブレンをハイブリダイゼーションの後、イメージアナライザー(image analyzer、GE Healthcare, ImageQuant LAS 4000)により、4時間の露出時間の設定でイメージ分析を行った(分析式は、
図5を参照)。長さの測定イメージのための対照DNA((control DNA1,2としてそれぞれ表記)は、キットから提供する無作為配列DNAを用いた。
【0085】
実施例2-3:統計的検証方法
全ての統計的検証において、SPSS21統計プログラムと、統計サイト(http://vassarstats.net)とを用いた。等間尺度や比率尺度で測定したデータは、mean±S.E.M.として示し、母数統計のためには、一元配置分散分析(one-way ANOVA test)又は2元配置分散分析(two-way ANOVA test)の後、チューキー検定(Tukey test)で事後検定を行い、非母数統計のためには、クラスカル-ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)、マン・ホイットニーのU検定(Mann-Witney U-test)を用いて分析した。各群間の比較は、チューキー検定法を行った。命名尺度の場合、カイ二乗検定(chi-square test)を用いて、群間の比較を行った。p値が0.05未満の場合に、統計学的に有意であると判定した。
【0086】
実施例3:テロメラーゼ活性及びテロメア長の測定結果
実施例3-1:テロメラーゼ活性の測定結果
PEP1がテロメラーゼ活性を増加するかを確認するために、実施例2-1及び2-2による方法を通じて測定した。その結果、PEP1(0.1mg/kg)投与群(3群)において、食塩水投与群(1群)対比の増加率が266%を示し、 PEP1(1mg/kg)投与群(4群)において、食塩水投与群(1群)対比の増加率が370%を示し、ドネペジル(1mg/kg)投与群(5群)と対比しても、統計的に有意に増加した(
図1参照)。また、テロメラーゼ活性が、7ケ月令(AD Tg 7M)に比べて、15ケ月令(AD Tg 15M)において減少されたことも確認した。
【0087】
実施例3-2:テロメア長の測定結果
PEP1が示したテロメラーゼ活性の増加率が、テロメア長の維持又は増加にも直接的な影響を及ぼすかを確認するために、テロメア長の測定実験を、実施例2-2による方法を通じて実施した。その結果、テロメラーゼ活性の増加の結果と同様に、PEP1の投与濃度に応じて、テロメアの長さが増加する結果が現れた(
図2参照)。これは、 PEP1がテロメアの長さもまた増大させ、これにより染色体の安定性の増大及び細胞保護の効果を与えることが分かる。また、テロメアの長さは、7ケ月令(AD Tg 7M)に比べ、15ケ月令(AD Tg 15M)において減少されたことも確認した。
【0088】
前記多数の実施例から、PEP1が、動物モデルを用いた実験において、テロメラーゼ活性の増加、及びテロメア長の増大の効能を有することが分かる。従って、本発明の一側面によるペプチドPEP1は、細胞の非正常的なテロメラーゼ活性の減少又はテロメア長の減少及び損失などによる疾患、及び細胞の老化による症状などを、予防又は改善、治療できる物質として開発でき、これを用いて、関連の疾患の予防及び治療の方法を提供することができる。
【配列表】