(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ポプラの芽の抽出物を含む組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/76 20060101AFI20220801BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220801BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220801BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220801BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220801BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K36/76
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/46
A61P11/04
A61P31/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P31/04
A61K47/44
(21)【出願番号】P 2018560987
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2017053000
(87)【国際公開番号】W WO2017203414
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-01-27
(31)【優先権主張番号】102016000053369
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515126341
【氏名又は名称】アボカ エッセ.ピ.ア.ソシエタ アグリコラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルカティ、ヴァレンティノ
(72)【発明者】
【氏名】マットーリ、ルイザ
(72)【発明者】
【氏名】マイデッキ、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ルッリ、アンドレア
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095649(JP,A)
【文献】RYAN DRUM,POPLAR BUDS, GRINDELIA BUDS & FIG LEAVES,[ONLINE],2009年03月27日,P1-14,https://web.archive.org/web/20090327124300/http://www.ryandrum.com/twobudsoneleaf.htm
【文献】Journal of Natural Products, 2015, Vol.78 No.5, p.1147-1153
【文献】VIREY J J,UNGUENTO POPULEO RIFORMATO,TRATTATO COMPIUTO DI FARMACIA TEORICA E PRATICA (VOL. 2),PAGE(S):43 - 46,https://books.google.co.jp/books?id=SqpNAAAAcAAJ&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false
【文献】Industrial Crops and Products, 2014, Vol.53, p.85-92
【文献】和漢薬, 2009, No.675, p.12-14
【文献】ANONYMOUS,HONEY LEMON THROAT LOZENGES,MINTEL DATABASE,2015年02月,P1-4,http://www.gnpd.com,RECORD ID: 3006879
【文献】J Ethnopharmacology, 2014, Vol.155, p.300-311
【文献】J Agricultural and Food Chemistry, 2011, Vol.59 No.9, p.4527-4536
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中咽頭腔
疾患の治療に使用のための組成物であって、
前記組成物は流体形態又は固体形態であり、
前記組成物が流体形態であるとき、組成物は
0.1~70重量%のポプラの芽の抽出物と、
1~80重量%の賦形剤と、
0~80重量%の溶媒と、
0~50重量%の天然または凍結乾燥果汁と、
0.05~2重量%の天然または人工香料と、
0.01~1重量%の精油と、を含み、
前記組成物が固体形態であるとき、組成物は
0.5~10重量%の乾燥したポプラの芽の抽出物と、
10~97重量%の賦形剤と、
0.5%~3重量%の天然または人工香料と、
0.05~1重量%の精油と、
0.5~15重量%の粉末または凍結乾燥果汁および/または天然抽出物と、
1~10重量%の甘味料と、を含み、
前記ポプラの芽の抽出物は、
a.85
%エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
b.13
%エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
c.a.およびb.で調製された抽出物を混合することによって、多分画アルコール抽出物を得る工程と、
d.前記アルコール抽出物(c.)をデカントおよび/または遠心分離し、濾過して、上清を収集する工程と、
e.d.で得られた濾過した前記上清を、濃縮および凍結乾燥に供する工程と、随意に、
f.d.で得られた前記濾過した上清にアラビアガムを添加し、その後、それを濃縮および凍結乾燥に供する工程と、
を含む方法によって得ることができる抽出物である、組成物。
【請求項2】
前記組成物が流体形態であり、前記ポプラの芽の抽出物が、0.3~45重量%で存在する、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の使用のための組成物であって、
【表1】
または
【表2】
または
【表3】
または
【表4】
からなり、前記組成物は流体形態である、組成物。
【請求項4】
請求項
1に記載の使用のための組成物であって、
【表5】
または
【表6】
または
【表7】
または
【表8】
からなり、前記組成物は固体形態である、組成物。
【請求項5】
前記中咽頭腔の疾患が、咽頭痛、咽頭炎、アフタ、口腔炎症または感染症から選択される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
粉末、錠剤、カプセル、硬質または軟質ゼラチン、シロップ、スプレー、懸濁液の形態である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポプラが黒ポプラである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中咽頭腔、泌尿器官、消化/排泄器官、皮膚疾患および細菌感染症の治療に使用のための、ポプラの芽の抽出物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
文献では、黒ポプラ(セイヨウハコヤナギ)の樹脂性滲出物が、ヨーロッパプロポリス、一般的には温帯におけるミツバチが産生するプロポリスの基本成分を構成することが知られている。
【0003】
多くの薬理学的活性で知られているプロポリスは、(主に黒ポプラの)樹脂性滲出液をミツバチが収集した後でミツバチによって産生される物質である。概して、プロポリスは、25~35%のミツロウ、5%の花粉、5%の、ミツバチの足に存在する様々な物質、および約50%の植物樹脂で構成される。
【0004】
ポプラの芽に基づく薬物の様々な使用もまた文献で知られている。
【0005】
数多くの疾患の治療のための天然起源の物質の使用に対する関心が絶え間なく高まっていることを考えると、また、ミツバチがさらされている現在の劇的な絶滅危機を考えると、同等またはより効果的な方法で、ミツバチが産生する物質に同等に取って代わることのできる天然起源の生成物を発見することが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の立案者らは、ポプラの芽の抽出物を分析して、プロポリスに対する植物起源の完全な代替物としての治療目的でのその可能な使用を確認した。
【0007】
ポプラの芽の抽出物は、プロポリスとは異なり、動物由来の物質および花粉などのアレルギー物質を含まないという利点も伴う。
【0008】
本発明の立案者らは、驚くべきことに、ヨーロッパプロポリスに対して、ポプラの芽の抽出物が同等またはさらに高い粘膜付着特性を示すことを確認した。
【0009】
本発明の立案者らはまた、随意に凍結乾燥され、随意に天然ガムと共凍結乾燥された(ガムで担持された)、ポプラの芽の抽出物の、特に化膿性連鎖球菌、緑膿菌および黄色ブドウ球菌に対する有効な抗菌活性を初めて明らかにした。
【0010】
したがって、本発明の目的は、
中咽頭腔、泌尿器官、消化/排泄器官、皮膚疾患、および細菌感染症の治療に使用のための組成物であって、0.1~70重量%までのポプラの芽の抽出物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、香料、防腐剤のうちの1つまたはそれ以上と、を含む組成物である。
【0011】
さらに、本発明の目的は、中咽頭腔、泌尿器官、消化/排泄器官、皮膚疾患および細菌感染症を、本発明の混合物または組成物を前記障害の影響を受けた対象に投与することにより治療することである。
他の記載と重複するが、本発明の一態様を以下に示す。
[発明1]
中咽頭腔、泌尿器官、消化/排泄器官、皮膚疾患、および細菌感染症の治療に使用のための組成物であって、0.1~70重量%までのポプラの芽の抽出物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、香料、防腐剤のうちの1つまたはそれ以上と、を含む組成物。
[発明2]
前記ポプラの芽の抽出物が、0.3~45重量%で存在する、発明1に記載の使用のための組成物。
[発明3]
0.1~70重量%のポプラの芽の抽出物と、
1~80重量%の賦形剤と、
0~80重量%の溶媒と、
0~50重量%の天然または凍結乾燥果汁と、
0.05~2重量%の天然または人工香料と、
0.01~1重量%の精油と、を含む、発明1または2に記載の使用のための組成物。
[発明4]
0.5~10重量%の乾燥したポプラの芽の抽出物と、
10~97重量%の賦形剤と、
0.5%~3重量%の天然または人工香料と、
0.05~1重量%の精油と、
0.5~15重量%の粉末または凍結乾燥果汁および/または天然抽出物と、
1~10重量%の甘味料と、を含む、発明1または2に記載の使用のための組成物。
[発明5]
発明1、2、または3のいずれか一に記載の使用のための組成物であって、
[表1]
または
[表2]
または
[表3]
または
[表4]
からなり、前記組成物は流体形態である、組成物。
[発明6]
発明1、2または4のいずれか一に記載の使用のための組成物であって、
[表5]
または
[表6]
または
[表7]
または
[表8]
からなり、前記組成物は固体形態である、組成物。
[発明7]
前記中咽頭腔の疾患が、咽頭痛、咽頭炎、アフタ、口腔炎症または感染症から選択される、発明1から6のいずれか一に記載の使用のための組成物。
[発明8]
前記消化/排泄器官の疾患が、胃炎、逆流、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、痔核、感染症から選択される、発明1から7のいずれか一に記載の使用のための組成物。
[発明9]
前記細菌感染症が、化膿性連鎖球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌のうちの1つまたはそれ以上によって生じる感染症である、発明1から8のいずれか一に記載の使用のための組成物。
[発明10]
化膿性連鎖球菌からの前記感染症が、咽頭炎、猩紅熱、膿皮症または膿痂疹、丹毒、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、連鎖球菌毒素ショック症候群、菌血症、急性リウマチ熱、急性糸球体腎炎、結節性紅斑、P.A.N.D.A.S(連鎖球菌感染症に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症、良性線維束性収縮症候群(BFS)から選択される、発明9に記載の使用のための組成物。
[発明11]
前記ポプラの芽の抽出物は、
a.85°エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
b.13°エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
c.a.およびb.で調製された抽出物を混合することによって、多分画アルコール抽出物を得る工程と、
d.前記アルコール抽出物(c.)をデカントおよび/または遠心分離し、濾過して、上清を収集する工程と、
e.d.で得られた濾過した前記上清を、濃縮および凍結乾燥に供する工程と、随意に、
f.d.で得られた前記濾過した上清にアラビアガムを添加し、その後、それを濃縮および凍結乾燥に供する工程と、
含む方法によって得ることができる抽出物である、発明1から10のいずれか一に記載の使用のための組成物。
[発明12]
粉末、錠剤、カプセル、硬質または軟質ゼラチン、シロップ、スプレー、懸濁液の形態である、発明1から11のいずれか一に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に記載したように実施した様々な製剤の粘膜付着アッセイである。
【
図1A】組成物-希釈(1:2.5および1:5)実施例固体組成物4の、ヒト口腔細胞に対する粘膜付着率(%)を示す。
【
図1B】組成物-希釈(1:2.5および1:5)実施例固体組成物3の、ヒト口腔細胞に対する粘膜付着率(%)を示す。
【
図1C】組成物-非希釈または希釈(1:2および1:5)実施例流体組成物4の、ヒト口腔細胞に対する粘膜付着率(%)を示す。
【
図1D】組成物-非希釈または希釈(1:2および1:5)実施例流体組成物3の、ヒト口腔細胞に対する粘膜付着率(%)を示す。
【
図2】模擬唾液溶液(0.9%NaCl生理溶液)に対する異なる時間における(様々な希釈度で、異なる時間に本発明の異なる製剤で得られた)粘膜付着層の抵抗を示す。
【
図2A】模擬唾液溶液(0.9%NaCl生理溶液)に対する異なる時間(0時間、0.5時間、1時間および2時間)における組成物-(1:2.5希釈)実施例固体組成物4を示す。
【
図2B】模擬唾液溶液(0.9%NaCl生理溶液)に対する異なる時間(時間:0時間、0.5時間、1時間および2時間)における組成物-(1:2.5希釈)実施例固体組成物3を示す。
【
図2C】人工唾液溶液に対する異なる時間(時間:0時間、0.5時間、1時間および2時間)における組成物-(1:2希釈)実施例流体組成物4を示す。
【
図3】バリアアッセイにおけるIL6産生を示す。グラフは、細胞に対して本発明の組成物によって及ぼされる保護を示し、データは対照C-と比較したフォールドオーバー(F.O.)の点で表される。フォールドオーバーC-=[測定されたIL-6]/[C- IL-6]
【
図4】記載された本発明の様々な実施形態について計算されたバリア効果を、IL6放出阻害率(%)の観点からグラフで描く。
【
図5】内部対照におけるフォールドオーバーC-の観点から細胞産生IL-6値をグラフで描く。
【
図6】アスコルビン酸と比較した、本発明によるポプラの芽の抽出物の抗酸化活性を示す。
【
図7】本発明によるポプラの芽の抽出物の細菌性バイオフィルムからの阻害活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明の目的は、
中咽頭腔、泌尿器官、消化/排泄器官、皮膚疾患、および細菌感染症の治療に使用のための組成物であって、0.1~70重量%までのポプラの芽の抽出物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、香料、防腐剤のうちの1つまたはそれ以上と、を含む組成物である。
【0014】
一実施形態によれば、組成物は、
0.1~70重量%までのポプラの芽の抽出物と、
1~80重量%の賦形剤と、
0~80重量%の溶媒と、
0~50重量%の天然または凍結乾燥果汁と、
0.05~2重量%の天然または人工香料と、
0.01~1重量%の精油と、を含むか、またはこれらからなることができる。
【0015】
さらなる実施形態によれば、本発明の組成物は、
0.5~10重量%の凍結乾燥された乾燥ポプラ芽抽出物と、
10~97重量%の賦形剤と、
0.5%~3重量%の天然または人工香料と、
0.05~1重量%の精油と、
0.5~15重量%の粉末または凍結乾燥果汁および/もしくは天然抽出物と、
1~10重量%の甘味料と、を含むか、またはこれらからなることができる。
【0016】
「ポプラの芽の抽出物」とは、本発明の目的上、黒ポプラ(セイヨウハコヤナギ)の葉芽から、または主として葉芽から調製された抽出物を意味する。
【0017】
特に、本発明による抽出物は、開いていない葉芽の抽出物である。芽は、ヨーロッパでは通常3月から5月までである、春期には主に開いていないと認められる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、組成物の唯一の有効成分は、ポプラの芽の抽出物によって表される。
【0019】
上記で報告された実施形態のいずれか1つによる組成物において、ポプラの芽の抽出物は、1:2~1:20の範囲で構成される抽出物:ガム比率で天然ガムと関連付けられ得る。
【0020】
上記で定義され、以下の実施例でさらに例示されるような組成物を、中咽頭腔疾患の治療のために、以下に述べるように使用することができる。そのような疾患は、例えば、咽頭痛、咽頭炎、アフタ、口腔炎症または感染症から選択することができる。
【0021】
前記組成物が消化/排泄器官疾患の治療に使用される実施形態において、これらは胃炎、逆流、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、痔核、感染症から選択され得る。
【0022】
さらに、本発明の組成物は、例えば膀胱炎のような尿路の疾患の治療に使用することができる。
【0023】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物は、細菌感染症の治療のために使用することができ、これらのうち、化膿性連鎖球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌のうちの少なくとも1つの感染症が特に好適である。
【0024】
化膿性連鎖球菌感染症の治療において、本発明による組成物は、例えば、咽頭炎、猩紅熱、膿皮症または膿痂疹、丹毒、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、連鎖球菌毒素ショック症候群、菌血症、急性リウマチ熱、急性糸球体腎炎、結節性紅斑、P.A.N.D.A.S(連鎖球菌感染症に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、慢性疲労症候群(CFS)および線維筋痛症、良性線維束性収縮症候群(BFS)の治療に使用され得る。
【0025】
本発明の組成物を実施するためには、ポプラの芽の水―アルコール抽出物を好ましくは35~70のアルコール度数の等級で使用することができる。特に好ましい実施形態では、抽出物を凍結乾燥することができる。随意に、抽出物は、水中での抽出物溶解度を増加させ、乾燥抽出物をより容易に加工可能にするために、天然ガムと共凍結乾燥され得る。
【0026】
しかしながら、得られたデータは、実験の項で見ることができるが、天然ガムとの共凍結乾燥(担持)が抽出物の粘膜付着および保護特性を増加させ、ガムで担持された抽出物を含む本発明の組成物を特に有効にすることを示している。
【0027】
特に、ポプラの芽の抽出物は、
a.85°エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
b.13°エタノールでの抽出によりポプラの芽の水-アルコール抽出物を調製する工程と、
c.a.およびb.で調製された抽出物を混合することによって、多分画アルコール抽出物を得る工程と、
d.前記アルコール抽出物(c.)をデカントおよび/または遠心分離し、濾過して、上清を収集する工程と、
e.d.で得られた濾過した上清を、濃縮および凍結乾燥に供する工程と、随意に、
f.d.で得られた濾過した上清に、天然ガムを添加し(以下の説明に記載のガムまたはそれらの組み合わせから選択されたもの、特にアラビアガムを添加し)、したがって濃縮および凍結乾燥に供する工程と、を含む方法によって得ることができる抽出物であり得る。
【0028】
特に、a.およびb.の抽出物は、唯一の抽出溶媒の動きによる浸出物消化(percolate digestion)による抽出、およびブレードスターラーを備えた抽出器による抽出の両方、ならびに溶媒および芽の両方の移動によって調製することができる。抽出は、35~55℃で構成される温度、例えば40℃~50℃(両端を含む)の範囲で構成される温度、特に約40℃または50℃の温度で実施することができる。
【0029】
抽出は、4~12時間の時間の長さで、例えば約8時間、実施することができる。
【0030】
a.およびb.で調製した抽出物は、c.の時点で、好ましくは50:50の比率で混合されるが、35:65、40:60、45:55、55:45、60:40、65:35の比率で混合してもよい。混合は、85°アルコール抽出物中で13°アルコール抽出物を徐々に添加する(添加速度:15~20L/分)ことによって実施されるが、逆の添加も可能である。混合は20℃±5℃の温度で実施する。
【0031】
c.の時点で調製した多分画抽出物は、最低72時間、円錐形の底部を備えた容器でデカントすることによる清澄化に供する。前記時間が経過すると、抽出物をこぼし、セルロースフィルターで濾過する。このような濾過は、例えば、0.5μm、15μmのカットオフ、または30μmもしくはさらに高いカットオフなど、単一ステップまたは複数の連続ステップで例えば0.5~50μm(両端を含む)のカットオフを有するパネルフィルター上で、実施することができる。
【0032】
濾過の終了時に、アルコールの等級を制御し、アルコール度50°±15°に調整する。
【0033】
デカントの代わりに、5~20L/分の流速で供給される垂直遠心分離機での遠心分離によって抽出物を分離することができる。
【0034】
d.のように清澄化した抽出物を、多分画アルコール抽出物としてそのまま(tel quel)使用することができる。
【0035】
d.のように清澄化した抽出物を、e.のように濃縮および凍結乾燥プロセスに供して、固形製剤に使用できる凍結乾燥抽出物を提供する。
【0036】
d.のように清澄化された抽出物に、アラビアガムまたは天然ガムが添加されたものを、f.のように濃縮および凍結乾燥にかけて、固形製剤に使用することができるアラビアガムに担持された凍結乾燥抽出物を提供する。アラビアガム、または1つまたはそれ以上の天然ガムは、固体に対して10~20%のパーセンテージを生じるような量で使用される。
【0037】
ダイアグラム1:ポプラの芽のアルコール多分画抽出物のブロックダイアグラム
【化1】
【0038】
ダイアグラム2:ポプラの芽の凍結乾燥多分画抽出物のブロックダイアグラム
【化2】
【0039】
ダイアグラム3:ポプラの芽のアラビアガム(または以下に示すような1つもしくはそれ以上の天然ガム)に担持された凍結乾燥多分画抽出物のブロックダイアグラム
【化3】
【0040】
上記の方法に従って得られた抽出物は、以下の組成を特徴とする。
【表A-1】
【0041】
値は、上記で報告された方法論に従って異なる抽出物の分析の平均によって与えられる。
【0042】
一実施形態によれば、上記で定義した任意の形態のポプラの芽の抽出物は、0.3~45重量%であり得る。
【0043】
例えば、流体形態の組成物は、以下の実施例に従うことができる。
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【表A-5】
【表A-6】
【表A-7】
【表A-8】
【表A-9】
【0044】
本発明の組成物は、例えば、粉末、錠剤、カプセル、硬質または軟質ゼラチン、シロップ、スプレー、懸濁液の形態であり得る。
【0045】
したがって、当業者に既知の薬学的に許容される担体、賦形剤、香料、防腐剤のうちの1つまたはそれ以上を使用することができる。
【0046】
広義には、流体形態で製造される場合、組成物は、有効成分として、本明細書に記載の任意の実施形態におけるポプラの芽の抽出物と、当業者に既知の賦形剤、溶媒、香料、防腐剤などのうちの1つまたはそれ以上と、を含む。非限定的な例として、賦形剤としては、例えばアラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、タラガムまたはそれらの混合物などの天然ガム;例えばスクロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトールまたはそれらの混合物などの天然および合成ポリアルコール;例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物などのセルロースおよびセルロース誘導体;例えばポリビニルピロリドン、ポリメタクリレートまたはそれらの混合物などの合成ポリマー;マルトデキストリン、イヌリンおよび/またはシクロデキストリン、のうちの1つまたはそれ以上を使用することができる。
【0047】
溶媒としては、常に非限定的な例として、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコールまたはそれらの混合物を使用することができる。
【0048】
例えばリンゴ、ナシ、オレンジ、レモン、ラズベリー、ブルーベリー果汁またはそれらの混合物などの天然または凍結乾燥果汁;例えばイチゴ、レモン、オレンジ、ラズベリー、モモ、サクランボ、ミックスベリー、マンダリンオレンジ香料またはそれらの混合物などの天然または人工香料;例えばレモン、オレンジ、ミント、ユーカリ精油またはそれらの混合物などの精油(E.O.)も使用することができる。
【0049】
概して、固体形態で製造される場合、組成物は、本明細書に記載の任意の実施形態におけるポプラの芽の抽出物と、当業者に既知の賦形剤、溶媒、香料、防腐剤などのうちの1つまたはそれ以上と、を有効成分として含む。非限定的な例として、例えばスクロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトールまたはそれらの混合物などの糖;例えば、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはそれらの混合物などのセルロースおよびセルロース誘導体;マルトデキストリン、シクロデキストリンおよび/またはイヌリン、のうちの1つまたはそれ以上を賦形剤として使用することができる。
【0050】
例えば米デンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプンまたはそれらの混合物などのデンプンおよびデンプン誘導体;例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリルまたはそれらの混合物などの潤滑剤;例えば、イチゴ、レモン、オレンジ、ラズベリー、モモ、サクランボ、ミックスベリー香料またはそれらの混合物などの天然および合成香料;例えばレモン、オレンジ、ミント、ユーカリ精油またはそれらの混合物などの精油;例えばリンゴ、ナシ、オレンジ、レモン、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ、ニワトコ果汁またはそれらの混合物などの凍結乾燥果汁;ライム(シナノキ)、ゼニアオイ、アロエ、アルテアまたはそれらの混合物などの粉末または凍結乾燥天然抽出物;例えばはちみつ、糖類、アスパルテーム、シクラマート、アセスルファムK、ステビア抽出物、スクラロースまたはそれらの混合物などの甘味剤、のうちの1つまたはそれ以上を使用することができる。
【0051】
明細書および特許請求の範囲のいずれの箇所においても、「含む」という用語は、「からなる」または「で作られている」という用語で置き換えることができる。
【0052】
以下の実施例は、本発明をさらに明確にするために提供され、限定目的ではない。
【実施例】
【0053】
1.粘膜付着アッセイ
良好な粘膜付着効果は、生成物が意図された作用部位(咽頭粘膜)に留まり、既に説明したようにそこでその保護的および治癒的作用を機械的に実行するために最も重要な要件である。このアッセイの主な目的は、口腔細胞の使用を想定した適切な細胞モデルにおける異なる製剤中の本発明の組成物のin vitro付着を評価することである。このアッセイの第2の目的は、人工唾液溶液の流れに対する経時的な生体付着抵抗を決定することである。異なる製剤における本発明の組成物の粘膜付着は、膜糖タンパク質と結合するレクチン(グルコシドおよびマンノシド残基に対する高い親和性を有するタンパク質)を阻害することにより細胞に付着する生成物の能力の評価によって決定された。粘膜付着の程度は、粘膜付着生成物が関与する、レクチンが関与していない糖タンパク質上の部位を定量することを可能にする比色反応によって測定される。以下のダイアグラムに示す、特有のレクチン標識システムにより、比色反応が可能である。
【化4】
【0054】
吸光値の減少は、生成物が細胞に付着する(「粘膜付着する」)能力に比例する。粘膜付着能力は、糖タンパク質/レクチン結合の阻害率として表され、以下の式によって、生成物によって占有される粘膜部位の割合を表す:
生成物の粘膜付着率=(1-absサンプル/abs対照)×100
【0055】
この生成物は、実際の使用において、送達直後に、中咽頭腔に存在する唾液との混合が生じるという事実を考慮に入れて、希釈後に適用される。以下のグラフは、異なる製剤中において本発明による組成物の異なるサンプルで得た結果を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0056】
実験の第2段階では、経時的に粘膜に付着したままである組成物の能力を、pH7のリン酸緩衝液および0.5%のムチンを含む等張性水溶液で作られた人工唾液の2mL/分の流れにシステムを供することによって評価した。得られた結果は、適用の最初の1時間の間に粘膜に生物付着したままである興味深い生成物の能力を強調した。
【0057】
模擬唾液溶液(0.9%NaCl生理溶液)に対する0.5時間、1時間および2時間の異なる時間における1:2.5に希釈した組成物の、実施例固体組成物3で得られた粘膜付着層の抵抗を以下の表5に報告する。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0058】
この実験で得られた結果は、本発明の組成物の異なる製剤が口腔細胞に対する高い粘膜付着能力を有することを実証する。さらに、人工唾液溶液での流れに対する粘膜付着保護層の抵抗の評価は、適用の最初の1時間の間、良好な粘膜付着保持能力を強調することを可能にした。
【0059】
得られた結果に照らして、良好な抵抗性の粘膜付着性を有することが実証された本発明の組成物は、中咽頭粘膜に対して実際の保護的役割を果たすことができると述べることができる。
【0060】
2.バリアアッセイ
アッセイの目的は、既知の刺激剤と比較して、その膜形成および保護能力をアッセイすることによって、本発明の組成物の作用機序を実証することである。使用される刺激剤は、炎症誘導の古典的モデルであるリポ多糖(LPS)膜である。前記アッセイは、粘膜と外部刺激剤との間の接触を制限する生成物の有効な能力を強調することを目的とする。
【0061】
選択された刺激剤は、大腸菌細胞膜から単離された。LPSの寸法は、刺激に、したがってこの特定の繊細な環境に負担をかける異なる病状の発症に結び付く、ほこり、スモッグ、花粉および他の物質から粘膜を保護する上で有効なバリアを考慮できるようなものである。
【0062】
実験プロトコルをより詳細に分析して、IL6産生を測定し、細胞層(線維芽細胞)とLPSとの接触の結果として、バリアとして作用するサンプルの能力を評価する。この実験システムは、特別なトランスウェルのウェル(Transwell well)を使用し、このウェルは、コラーゲンでコーティングされた半透膜を備え、この半透膜は、ウェルの2部分間の唯一の連絡ルートを表す、底部に沈着した細胞とオーバーハングする半透膜上に層化されたサンプルとの間の直接接触を防止する。LPSはサンプル上の空間に接種されるため、サンプル自体によって発揮されるバリア効果が大きいほど、膜通過がより困難になる。したがって、LPS添加から+24時間で産生されるインターロイキンの定量化は、アッセイされたサンプルによって発揮されるバリア効果の直接的な証拠をもたらす。IL6阻害は、バリア効果の直接測定である。
【0063】
バリア効果(BE)は、IL-6の放出の減少率として表され、陽性対照(C+)から得られた値、すなわちサンプルの非存在下でLPSのみで処理した細胞から得られた値、との比較を通じて得る。
BE率(%)=産生されたIL-6(pg/mL)の阻害率(%)
【0064】
本発明の組成物の異なる実施形態で3回実施した実験で得られた結果を以下の表に報告する。高濃度の樹脂の存在のために、バリアアッセイを1:2.5希釈生成物および1:5希釈生成物の両方で行った。まず、LPS損傷後の細胞分泌IL6のピコグラムを、そして次の表では、陽性対照と比較した阻害率(%)を報告する。
【表9】
【0065】
この結果から、アッセイされた生成物が存在する実験において産生されたIL-6の濃度の顕著な低下が、両方の希釈において明らかであり、時間が長期化するバリアを示し、これは、錠剤を口でゆっくりと溶解することができないことによる生成物の部分損失の場合にも有効である。
【0066】
陰性対照について検出された64.6pg/μLに等しいIL-6値は、正常な基底値、すなわち非炎症状態に同化可能である。
図2Aのグラフは、生成物が細胞に及ぼす保護を明確に示している。データは対照C-と比較したフォールドオーバー(F.O.)の点で表される。
【0067】
バリアアッセイおよび陽性対照において測定された平均IL-6値から、IL-6放出減少率が計算される。
100-[(IL-6サンプル)/IL-6C+)×100]
【0068】
したがって、この式を適用することにより、アッセイされたサンプルの存在下で、上記の詳細な部分に記載した成人用錠剤(実施例固体組成物3)の形態で製造された本発明の組成物について表10に報告されている陽性対照と比較して、1:5希釈で54%および1:2.5希釈で48%のIL-6産生の減少の値が得られる。
【表10】
【表11】
【0069】
バリアアッセイおよび陽性対照において測定された平均IL-6値から、IL-6放出減少率が計算される。100-[(IL-サンプル)/IL-6C+)×100]
【0070】
したがって、この式を適用することにより、アッセイされたサンプルの存在下で、上記の詳細な部分に記載した小児用錠剤(実施例固体組成物4)の形態で製造された本発明の組成物について表12に報告されている陽性対照と比較して、1:5希釈で49%および1:2.5希釈で51%のIL-6産生の減少の値が得られる。
【表12】
値は小数第4位で四捨五入したもの
【表13】
【0071】
バリアアッセイおよび陽性対照において測定された平均IL-6値から、IL-6放出減少率が計算される。100-[(IL-サンプル)/IL-6C+)×100]
【0072】
したがって、式を適用することによって、アッセイされたサンプルの存在下で、上記の詳細な部分に記載されているような強力なスプレー(実施例流体組成物3)の形態で製造された本発明の組成物について表14に報告された陽性対照と比較して39%であるIL-6産生の減少の値が得られる。
【表14】
【0073】
以下の表15は、本発明の詳細な部分で報告された実施例による、アルコールなしのスプレー(実施例流体組成物4)における本発明の組成物の製剤でのバリアアッセイにおけるIL6産生を示す。
【表15】
【0074】
バリアアッセイおよび陽性対照において測定された平均IL-6値から、IL-6放出減少率が計算される。
100-[(IL-6サンプル)/IL-6C+)×100]
【0075】
したがって、式を適用することによって、アッセイされたサンプルの存在下で、上記の詳細な部分に記載されているようなアルコールなしのスプレー(実施例流体組成物4)の形態で製造された本発明の組成物について表16に報告された陽性対照と比較して56%であるIL-6産生の減少の値が得られる。
【表16】
【0076】
使用した方法を検証し、その結果がアッセイされたサンプルの唯一のバリア効果に依存し、あらゆる薬理学的、免疫学的または代謝的効果(例えば、サイトカイン合成調節)を排除することを検証するために、バリアアッセイは、各サンプルに対して付随して行った内部対照(IC)により補助された。
【0077】
ICアッセイでは、最初に細胞をLPSで刺激するが、サンプルはトランスウェルにその後に添加される。この場合、0%のIL6阻害は、アッセイされた組成物の存在が機械的保護を与え、決して細胞性サイトカイン合成を妨害しないことを明確に示す。
【0078】
成人用錠剤の形態の組成物(実施例固体組成物3)による前記処置がLPS損傷の後に行われる、内部対照実験で測定したIL-6濃度値を以下の表17に報告する。
【表17】
値は小数第4位で四捨五入したもの
【0079】
小児用錠剤の形態の組成物(実施例固体組成物4)による前記処置がLPS損傷の後に行われる、内部対照実験で測定したIL-6濃度値を以下の表18に報告する。
【表18】
値は小数第4位で四捨五入したもの
【0080】
強力なスプレーの形態の組成物(実施例固体組成物3)による前記処置がLPS損傷の後に行われる、内部対照実験で測定したIL-6濃度値を以下の表19に報告する。
【表19】
【0081】
アルコールなしのスプレーの形態の組成物(実施例流体組成物4)による前記処置がLPS損傷の後に行われる、内部対照実験で測定したIL-6濃度値を以下の表20に報告する。
【表20】
【0082】
これらの実験で得られた値は、バリアアッセイの陽性対照(サンプル不在)の値と均質であることが判明し、どのようにしてLPS損傷後に適用されたサンプルが、炎症メディエーターの産生に影響を及ぼさず、したがって直接的な抗炎症効果を有しないのかを確認する。これは、フォールドオーバーCの点で細胞産生IL-6の値を表す、
図5に報告されたグラフでよりよく表されている。
【0083】
3.ラジカルスカベンジャー活性のためのDPPHアッセイ
DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)アッセイにより、本明細書の説明に従ったポプラの芽の抽出物(上記の方法で得られ、上記の特徴を有する)によって誘導されたスカベンジャー抗酸化活性を評価した。DPPHは有色の安定したラジカルであり、抗酸化化合物と化学的に反応すると色が変わり、分光光度法で検出することができる。したがって、このアッセイの目的は、分析されたサンプルが、生物学的基質に適用された場合に薬理学的、免疫学的または代謝的メカニズムを伴わずに純粋に化学的な方法(フリーラジカルへの水素転移)で行われる良好な抗酸化活性を有することを実証することである。分析されたサンプルは、1000、100および10μg/mLの濃度の、本明細書の説明に従ったポプラの芽の抽出物である。この活性を、陽性対照として用いたビタミンCの活性と比較した。
【0084】
図6から分かるように、本発明によるポプラの芽の抽出物は、1000および100μg/mLのより高い濃度で優れた抗酸化活性を示し、10μg/mLのより低い濃度で良好な活性を示す。
【0085】
4.バイオフィルム形成阻害アッセイ
このアッセイで使用される方法論は、微生物がポリスチレンプレートウェル上で付着してバイオフィルムを形成する能力を利用する。バイオフィルムの質量は、クリスタルバイオレット染色によって決定される。このアッセイで使用される細菌は、咽頭粘膜の感染を最も頻繁に含む細菌、すなわち、化膿性連鎖球菌である。分析されたサンプルは、本明細書の説明に従ったポプラの芽の抽出物(上記の方法で得ることができ、上記の特徴を有する)である。アッセイの第1段階は、最小阻止濃度(MIC)、すなわち微生物増殖を阻害する最低サンプル濃度の評価にある。抗生物質のゲンタマイシンを陽性対照として選択した。第2段階では、バイオフィルム形成を阻害する能力が測定される。アッセイされたサンプルをMIC以下の濃度で培地に添加して、抗バイオフィルム活性が微生物増殖阻害に起因するものであることを除外する。適切なインキュベーション期間後、形成されたバイオフィルムをクリスタルバイオレットで染色した。染色後、過剰の色素を水で除去し、バイオフィルムに付着したものをエタノールに溶解した。得られた溶液を分光光度計で570nmで分析した。この分析からの吸光度の強度は、形成されたバイオフィルムの質量が大きいほど大きくなる。したがって、抗バイオフィルム活性および記録された吸光度は、互いに反比例する。各サンプルについて、使用される濃度は、1×MIC、0.5×MICおよび0.1MICであった。報告されたデータは、3回実施された9個の測定値の平均値である。統計学的有意性は、t検定で計算し、*p<0.01および**p<0.001(処理細菌対未処理細菌)であった。このアッセイは、本発明の抽出物が、標準的な50%水-アルコール抽出物と比較してどれだけ有効であるかを示す。
【0086】
5.異なる実施形態における本発明による組成物と、プロポリススプレーとの間の粘膜付着および洗浄に対する抵抗の比較アッセイ
プロポリススプレー
脱イオン水in 33%
プロポリスd.e. 多分画 41.6%
植物グリセリンa 55%
レモン遊離精油 0.1%
アルコールなしのプロポリススプレー
脱イオン水in 57.2%
プロポリス、凍結乾燥抽出物e 4%
サクランボ香料 天然 p 0.8%
イチゴ天然香料 1.2%
透明なレモン果汁 1.8%
植物グリセリンa 35%
【0087】
アッセイは、本発明の組成物および異なる希釈度のプロポリススプレーをアッセイして、実施例1について上述したように行った。
【0088】
表中に報告されたデータは、とりわけ、より高い希釈度で、どのようにして本発明の組成物がプロポリスと比較してより大きな粘膜付着効果を有するかを示す。
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0089】
上記で報告されたアッセイから明らかなように、アッセイされた組成物は、アッセイされたあらゆる実施形態(固体、アルコールを含むスプレー、アルコールなしのスプレー)において、どのようにしてポプラの芽の抽出物がプロポリスの粘膜付着能力よりも大きい粘膜付着能力を有するかを示し、これは、特に1:5の希釈度で得られたデータから明らかなように、アッセイされた生成物のより高い希釈率で明らかである。
【0090】
6.水-アルコール多分画抽出物の調製
黒ポプラ(セイヨウハコヤナギ)の芽を断片化し、メカニカルスターラーを備えた抽出器により、濃度を減少させたエタノール中で、2つの抽出工程に供し、第一段階を85%エタノールで、第二段階を13%エタノールで行った。使用されるD/S比は1:6に等しい。抽出温度は40℃に等しい。85°エタノールでの抽出長さは8時間に等しく、13°エタノールでの抽出長さは8時間に等しい。
【0091】
上記のように得られたアルコール抽出物を50:50の比率で再結合させた。混合は、13°アルコール抽出物を85°アルコール抽出物に添加することを想定した(添加速度は16L/分に等しい)。混合は20℃±5℃で行った。添加の終わりに、混合物を20℃±5℃で72時間デカンテーションし、次いで上清を回収し、さらに30μmのカットオフを有するセルロースフィルターを備えたパネルフィルターで濾過した。濾過の終了時に、アルコールの等級をチェックし、アルコール度数62°±1°に調整する。
【0092】
7.凍結乾燥多分画抽出物の調製
実施例1に記載したようにして得られた清澄化アルコール抽出物は、アルコール等級を補正することなく、エタノール蒸発によって、標準的なプロトコルに従って薄膜蒸留システムを用いて、約500L/時の流速で濃縮されるように抽出物の供給を想定して濃縮される。この作業は、残留真空度を60~80kPa(0.6~0.8bar)に設定して実行し、蒸発壁を加熱する流体を140℃に設定することにより、エタノール除去後に濃縮水性抽出液を得る。このようにして得られた水性抽出物を凍結乾燥に付した。
【0093】
8.アラビアガムに担持された凍結乾燥多分画抽出物の調製
実施例1に記載したように得られた清澄化アルコール抽出物をアラビアガムと混合し、実施例2に記載のように濃縮および凍結乾燥に供した。