(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】引戸の引き込み装置の作動ユニット
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20220801BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
E05F1/16 A
E05F5/02 E
E05F5/02 A
(21)【出願番号】P 2019002481
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】森田 奈々
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 久喜
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163704(JP,A)
【文献】特開2012-136831(JP,A)
【文献】特開2012-207518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
E05F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸と戸枠のうちの一方に取り付けられ、引戸が第一位置に来たときに、引戸と戸枠のうちの他方に取り付けられた装置本体におけるフックと係合することにより装置本体を作動させて引戸を第二位置まで誘導する、引戸の引き込み装置の作動ユニットであって、
引戸と戸枠のうちの一方に取り付けられる固定部材と、該固定部材に対して移動可能に設けられ、フックと係合する係合凸部を有する係合部材と、該係合部材を、引戸の開閉方向であって且つ引戸が第一位置に来たときにフックが当接する第一側面側に付勢する付勢部材とを備え、
固定部材は、係合部材を案内するガイドレールを備え、該ガイドレールは、第一位置においてフックが第一側面に当接したときに係合部材を第一側面とは反対側の第二側面側に逃がす逃がし区間を有している、引戸の引き込み装置の作動ユニット。
【請求項2】
ガイドレールは、逃がし区間の第二側面側に、係合部材を第二側面側に案内しつつ上側に案内してフックを回避する傾斜案内区間を有している請求項1記載の引戸の引き込み装置の作動ユニット。
【請求項3】
付勢部材はダンパーを備え、該ダンパーは、係合部材が第二側面側に移動する際に係合部材に制動力を付与する請求項1又は2記載の引戸の引き込み装置の作動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を所定位置まで引き込むための引き込み装置における作動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
引戸の引き込み装置は、引戸が開位置から所定位置まで閉まった際に、その引戸を閉位置まで自動的に引き込んで閉じたり、あるいは、引戸が閉位置から所定位置まで開いた際に、その引戸を開位置まで自動的に引き込んで開いたりするために使用されている。
【0003】
下記特許文献1の引き込み装置では、引戸の上端部に装置本体が設置され、戸枠の所定位置には係合ピンが設置される。例えば引戸を閉める際、引戸が所定位置まで来ると、装置本体の作動カムが係合ピンに係合する。装置本体には作動カムを戸尻側に付勢するバネが設けられている。係合ピンに係合した作動カムは、このバネの付勢力によって係合ピンと共に装置本体内を戸尻側に移動する。即ち、引戸は、バネの付勢力によって、装置本体と共に戸先側に引き込まれる。このような引き込み装置においては、係合ピンに作動カムが係合することによって装置本体が作動し、引戸が引き込まれることになる。
【0004】
ところで、このような引戸は、使用状況によっては、勢い良く閉じ操作される場合がある。引戸が強く閉じ側に操作されると、引戸と共に閉じ側に移動する作動カムが係合ピンに激しく衝突する。係合ピンや作動カムは衝突に耐えうるように設計されるが、それらの故障リスクを更に小さくする対策は重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、装置の故障の発生を抑制することができる引戸の引き込み装置の作動ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る引戸の引き込み装置の作動ユニットは、引戸と戸枠のうちの一方に取り付けられ、引戸が第一位置に来たときに、引戸と戸枠のうちの他方に取り付けられた装置本体におけるフックと係合することにより装置本体を作動させて引戸を第二位置まで誘導する、引戸の引き込み装置の作動ユニットであって、引戸と戸枠のうちの一方に取り付けられる固定部材と、該固定部材に対して移動可能に設けられ、フックと係合する係合凸部を有する係合部材と、該係合部材を、引戸の開閉方向であって且つ引戸が第一位置に来たときにフックが当接する第一側面側に付勢する付勢部材とを備え、固定部材は、係合部材を案内するガイドレールを備え、該ガイドレールは、第一位置においてフックが第一側面に当接したときに係合部材を第一側面とは反対側の第二側面側に逃がす逃がし区間を有している。
【0008】
引き込み装置によって引戸を第二位置である閉じ位置まで誘導する場合を例に説明する。例えば、装置本体は引戸に取り付けられ、作動ユニットは戸枠に取り付けられる。作動ユニットは、閉じ位置より開き側の所定位置に取り付けられる。引戸が第一位置まで閉じた際、装置本体のフックが作動ユニットの係合凸部の第一側面に当接する。フックは作動ユニットの係合凸部に係合し、これにより装置本体が作動を開始して引戸が閉じ位置まで誘導される。また、フックが係合凸部に当接すると、係合部材は、ガイドレールの逃がし区間に案内されながら、付勢部材の付勢力に抗して第二側面側に移動する。引戸が強く閉じ操作されると、フックは係合凸部に強く衝突することになるが、係合部材が第二側面側に移動することによって衝撃が緩和される。
【0009】
また、ガイドレールは、逃がし区間の第二側面側に、係合部材を第二側面側に案内しつつ上側に案内してフックを回避する傾斜案内区間を有していることが好ましい。このようにガイドレールが傾斜案内区間を有していると、フックと係合した係合部材は、逃がし区間において第二側面側に移動した後、傾斜案内区間において第二側面側に移動しつつ上昇していくことになる。係合部材の上昇に伴って、フックと係合凸部との係合度合いは徐々に減少し、やがて係合凸部はフックから上側に離れる。そのため、万一、引戸が過度に強く閉じ操作された場合であっても、係合部材が上側に退避してフックを通過させるので、係合部材や装置本体の損傷を回避することができる。
【0010】
また、付勢部材はダンパーを備え、該ダンパーは、係合部材が第二側面側に移動する際に係合部材に制動力を付与することが好ましい。このようにダンパーを備えていると、係合部材が第二側面側に移動する際に係合部材に制動力が付与されるため、衝撃がより一層緩和されて、フックや係合部材の損傷が防止される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、フックが係合凸部の第一側面に強く衝突した場合には係合部材が第二側面側に移動してその衝撃を緩和するので、装置の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における引き込み装置の作動ユニットを使用した引戸を示す要部正面図であって、(a)は全開状態を示し、(b)は所定位置まで閉じた状態を示し、(c)は全閉状態を示す。
【
図2】(a)は同作動ユニットの正面図、(b)は同作動ユニットの一部破断線を含む正面図。
【
図4】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図5】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図6】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図7】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図8】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図9】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【
図10】同引き込み装置の使用状態を示す要部概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる引戸の引き込み装置について
図1~
図10を参酌しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる引き込み装置が取り付けられた引戸1の全体構造を示している。引き込み装置は、作動ユニット3と、装置本体4とを備えている。作動ユニット3は、引戸1と戸枠2のうちの一方に取り付けられ、装置本体4は、引戸1と戸枠2のうちの他方に取り付けられる。本実施形態では、作動ユニット3が戸枠2に取り付けられ、装置本体4が引戸1に取り付けられる構成について説明するが、逆の取付態様であってもよい。また、引き込み装置は、本実施形態では、引戸1が閉じる際に引戸1を全閉位置まで誘導するために使用されているが、引戸1が開く際に引戸1を全開位置まで誘導するために使用されてもよい。以下、引戸1の開閉方向を左右方向とし、引戸1の正面及び背面が対向する方向を前後方向とする。
【0014】
<装置本体4>
装置本体4は、引戸1の上面に取り付けられている。装置本体4は、左右方向に沿って長い形状である。
図4のように、装置本体4は、本体ケース10と、フック11と、スライダ12と、図示しない本体ダンパーと、第一バネ13と、を備えている。フック11とスライダ12と本体ダンパーと第一バネ13は、本体ケース10に収容されている。本体ケース10は左右方向に沿って長い形状であり、その主要部は長手方向に直交する断面が上方に開いた略コの字形状に形成されている。即ち、本体ケース10の主要部は、前側壁と後側壁と底壁とを有している。本体ケース10の前後両側壁には本体案内溝が形成されている。本体案内溝は、左右方向に沿って直線状に延びる直線溝部14aと、該直線溝部14aの一端部から下方に屈曲して連続して延びる係止溝部14bとからなる。
【0015】
スライダ12は、本体ケース10内を左右方向に沿ってスライドする。スライダ12は、本体案内溝の直線溝部14aに係合して直線溝部14aをスライドするガイド凸部15を一対備えている。スライダ12の上面右部には、戸尻側に向けて傾斜しつつ下降する傾斜面12aが形成されている。フック11は、スライダ12に対して戸先側に位置している。フック11は、スライダ12に回動自在に支持されている。フック11は、前後方向の支軸16を中心として上下に揺動する。支軸16はフック11の基端部に設けられている。従って、フック11の基端部がスライダ12に軸支されている。フック11は、上面に係合凹部17を有している。係合凹部17は上方に開口している。係合凹部17に作動ユニット3の係合凸部40が係合する。フック11が下側に傾倒した状態では作動ユニット3の係合凸部40から外れた状態にあり、フック11が上側に回動して略水平な状態になると、係合凹部17に作動ユニット3の係合凸部40が係合した状態となる。フック11の先端部の前後両面にはそれぞれ本体案内溝に係合するガイド凸部18が形成されている。フック11とスライダ12との間には第二バネ19が設けられている。第二バネ19はコイルバネである。第二バネ19は、第一バネ13よりも弱い。第二バネ19は、フック11をスライダ12側即ち戸尻側に引き寄せる方向に付勢している。従って、フック11は、
図4等において反時計回りに付勢されており、フック11は下側に傾倒する方向に付勢されている。
【0016】
本体ダンパーは、ピストン式のものであって、その軸線方向は左右方向である。本体ダンパーはオイル式本体ダンパーであって、ピストンの伸縮に伴うオイルの移動抵抗によって制動力を与えるものである。本体ダンパーは、エアーを封入したエアー式本体ダンパーであってもよい。本体ダンパーは、スライダ12に対して戸尻側に位置している。本体ダンパーのピストンの戸先側の端部がスライダ12に接続されていて、スライダ12が第一バネ13の付勢力によって戸尻側に移動する際にスライダ12に制動力を付与する。第一バネ13は、コイルバネである。第一バネ13はスライダ12に対して戸尻側に位置している。第一バネ13の戸先側の端部はスライダ12に係止され、第一バネ13の戸尻側の端部は本体ケース10に係止されている。第一バネ13は、スライダ12に、引戸1の引込み方向の付勢力を付与する。即ち、本実施形態において第一バネ13はスライダ12を戸尻側に付勢している。
【0017】
<作動ユニット3>
図2及び
図3に作動ユニット3を示している。作動ユニット3は、ハウジング20と係合部材21と作動ダンパー22とダンパーケース23とを備えている。係合部材21と作動ダンパー22とダンパーケース23は、ハウジング20に収容されている。ハウジング20は左右方向に沿って長い形状であって、その上面が戸枠2に取り付けられる。本実施形態においてハウジング20が作動ユニット3の固定部材を構成する。ハウジング20の左右両端部にはネジ止め用の貫通孔24a,24bが形成されており、そのネジ止め用の貫通孔24a,24bを介してハウジング20は下側から戸枠2にネジ止めされる。
【0018】
<ハウジング20>
ハウジング20は、ハウジング本体30と蓋31とから構成されている。ハウジング本体30は、上側に開口した収容室を有しており、該収容室に係合部材21と作動ダンパー22とダンパーケース23が収容される。詳細には、ハウジング本体30は、第一収容室32と第二収容室33とを有している。第一収容室32は第二収容室33の戸尻側(開き側)に位置している。第一収容室32と第二収容室33は互いに連通している。第一収容室32には係合部材21が収容され、第二収容室33には作動ダンパー22とダンパーケース23が収容される。第一収容室32の前後方向の寸法は第二収容室33のそれよりも小さく幅狭である。第一収容室32の底面には開口部35が形成されていて、その開口部35から係合部材21の係合凸部40が下方に突出する。
【0019】
ハウジング本体30は前後一対の側壁を有している。前後両側壁のそれぞれの全長のうち第一収容室32に面した部分には、前後両側壁をそれぞれ前後に貫通してハウジング本体30の外部と第一収容室32とを連通する作動案内溝36が形成されている。作動案内溝36は、係合部材21を案内するためのガイドレールである。作動案内溝36は、前後両側壁にそれぞれ左右一対ずつ形成されている。左右の作動案内溝36は互いに同一形状である。作動案内溝36は、作動案内溝36の開き側の端部から閉じ側に向けて略水平に一直線状に延びる所定長さの逃がし区間36aと、該逃がし区間36aの閉じ側に位置し、閉じ側に向けて傾斜しつつ上昇する傾斜案内区間36bと、該傾斜案内区間36bの閉じ側に位置し、閉じ側の端部まで傾斜しつつ下降する係止区間36cとから構成されている。作動案内溝36の閉じ側の端部は開き側の端部よりも高い位置にある。尚、前後両側壁のそれぞれの全長のうち第一収容室32に面した部分は、一段内側に奥まっていて前後の寸法が小さい幅狭部37となっている。その幅狭部37に作動案内溝36が形成されている。
【0020】
蓋31は、四本のネジ38によって上側からハウジング本体30にネジ止めされる。蓋31は略平板状であって、収容室の上面開口部35を閉塞する。蓋31は、ハウジング本体30の幅狭部37の前後両側にそれぞれ位置するカバー片39を前後一対有している。カバー片39は、下側に向けて延びていて作動案内溝36を外側から覆う。尚、
図2(b)においては、カバー片39の大部分を破断して図示しており、
図4~
図10においても同様である。
【0021】
<係合部材21>
係合部材21は、左右方向に長い略直方体形状である。係合部材21はハウジング本体30の第一収容室32に収容されていて、ハウジング20に対して左右方向及び上下方向にスライド可能である。係合部材21は、その下面に、下方に突出した係合凸部40を有している。係合凸部40は、係合部材21のうち、フック11の係合凹部17に係合する部分である。
図2に示している状態が係合部材21の基準状態である。この基準状態において係合凸部40はハウジング20の下面から下方に最も突出した状態にある。係合部材21は、スライドピン41を一対備えている。スライドピン41は前後方向に延びている。スライドピン41の前後両端部はそれぞれ係合部材21の前後両側面から外側に所定長さ突出していて、ハウジング本体30の作動案内溝36に係合している。
【0022】
係合凸部40は、互いに左右方向に対向した第一側面40aと第二側面40bとを有している。第一側面40aは開き側に位置し、第二側面40bは閉じ側に位置している。第一側面40aと第二側面40bは、それぞれ左右方向を略法線方向とする平面である。
図1(b)のように引戸1が第一位置まで来たとき、装置本体4のフック11は係合凸部40の第一側面40aに当接する。
【0023】
<作動ダンパー22及びダンパーケース23>
作動ダンパー22は、本体ダンパーと同様にピストン式のものであり、その軸線方向は左右方向を向いている。本実施形態において作動ダンパー22は二本設けられている。二本の作動ダンパー22は前後並列に並べられている。作動ダンパー22は、係合部材21の閉じ側に位置している。作動ダンパー22は、シリンダ50とロッド51とを備えている。ロッド51はシリンダ50に対して出退自在であって、ロッド51がシリンダ50に進入する際にロッド51に制動力が付与される。ロッド51は閉じ側を向いている。ロッド51の先端部はハウジング本体30の第二収容室33の閉じ側の壁面に当接している。従って、ロッド51は移動せず、シリンダ50が左右方向に向けて移動する。
【0024】
シリンダ50はダンパーケース23に収容されている。ダンパーケース23は左右方向に長い略直方体形状である。ダンパーケース23は、閉じ側に開口して左右方向に延びるダンパー収容部60を有しており、該ダンパー収容部60に二本の作動ダンパー22のシリンダ50が収容されている。ダンパーケース23は、ハウジング本体30の第二収容室33に収容されていて、ハウジング20に対して左右方向にスライド可能である。シリンダ50はダンパーケース23と共に左右方向に移動する。係合部材21の閉じ側の端面はダンパーケース23の開き側の端面に当接している。
【0025】
作動ダンパー22のロッド51はシリンダ50を開き側に付勢している。その付勢力はシリンダ50からダンパーケース23に作用し、ダンパーケース23を開き側に付勢する。ダンパーケース23には係合部材21が当接しているので、付勢力はダンパーケース23から係合部材21へと伝達される。従って、係合部材21は作動ダンパー22によって開き側に付勢されている。本実施形態において作動ダンパー22が、係合部材21を開き側に付勢する付勢部材を構成している。
【0026】
<引戸1の開閉動作>
図1(a)のような全開状態から引戸1を閉じ側に引いて
図1(b)に示す所定位置まで引戸1が到達すると、作動ユニット3の係合凸部40に、装置本体4のフック11が当接する。
図1(b)に示す引戸1の位置は、引き込み装置が作動を開始する作動開始位置である。その作動開始位置から
図1(c)に示す引戸1の全閉位置まで引戸1は引き込み装置によって誘導される。全閉位置は引き込み装置が作動を終了する位置でもある。本実施形態において作動開始位置が第一位置であり、全閉位置が第二位置である。
【0027】
図4~
図10に要部の拡大図を示している。
図4は、引戸1が閉じ側に移動してきてフック11が作動ユニット3の係合凸部40に係合する直前の状態を示している。即ち、
図4は、引戸1が作動開始位置よりも少し開き側に位置する状態を示している。フック11とスライダ12は本体ケース10内において最も戸先側(閉じ側)に位置している。フック11は下側に傾倒した状態にあって、フック11のガイド凸部18は本体案内溝の係止溝部14bに位置している。第一バネ13は最も引き延ばされた状態にあって、スライダ12を開き側に付勢している。第一バネ13によってスライダ12及びフック11は開き側に引っ張られているが、フック11のガイド凸部18が係止溝部14bに位置していて開き側への移動が規制されているため、スライダ12及びフック11は開き側へは移動できない。このように装置本体4は、フック11のガイド凸部18が係止溝部14bに位置してフック11が前傾姿勢となった状態で作動開始位置に接近する。
【0028】
一方、作動ユニット3は、係合部材21が開き側に位置して作動ダンパー22が閉じ側に位置する状態で、戸枠2の所定位置に固定されている。係合部材21は作動ダンパー22によって開き側に付勢されていて、その付勢力によってスライドピン41は作動案内溝36の開き側の端部に位置している。即ち、作動ユニット3は基準状態にある。係合凸部40はハウジング20の下面から下方に突出した状態にあり、係合凸部40は、最も開き側且つ下側に位置している。係合凸部40のこの位置を基準位置とする。
【0029】
図5は
図4の状態から更に引戸1が閉じ側に移動した状態であってフック11が作動ユニット3の係合凸部40に当接した瞬間の状態を示している。フック11が係合凸部40に当接することにより、フック11は第二バネ19の付勢力に抗して支軸16を回動支点として上側に回動する。そして、
図6のように、フック11は略水平姿勢となって、フック11の係合凹部17に作動ユニット3の係合凸部40が係合する。
【0030】
また、フック11が係合凸部40に当接すると、係合凸部40はフック11によって閉じ側に押されて閉じ側に所定長さ平行移動する。即ち、スライドピン41は作動案内溝36の逃がし区間36aを閉じ側にスライドする。スライドピン41は逃がし区間36aの開き側の端部から閉じ側の端部までスライドする。逃がし区間36aは略水平な区間であるため、スライドピン41は閉じ側に向けて略水平に平行移動し、係合凸部40も、フック11の衝突と同時に、高さを略一定に保ちながら閉じ側にスライドする。係合部材21は作動ダンパー22によって開き側に付勢されているので、その付勢力に抗して係合部材21は閉じ側にスライドし、ハウジング20の第二収容室33に進入する。ダンパーケース23は係合部材21によって押されて閉じ側にスライドし、その内側のシリンダ50も閉じ側にスライドする。シリンダ50が閉じ側にスライドすることによってロッド51が相対的にシリンダ50内に押し込まれ、シリンダ50に制動力が作用する。
【0031】
一方、フック11が上側に回動することに伴ってフック11のガイド凸部1818は係止溝部14bを上側に移動して直線溝部14aに移行する。フック11のガイド凸部18が係止溝部14bから直線溝部14aへと移動することで、係止溝部14bによるフック11の係止状態が解除される。フック11及びスライダ12は、第一バネ13の付勢力によって本体ケース10内を開き側へと相対的に移動する。係合凸部40の第二側面40bがフック11によって開き側に押され、フック11の開き側への移動に伴って係合凸部40は開き側に戻る。即ち、
図7のようにスライドピン41は逃がし区間36aを開き側にスライドして逃がし区間36aの開き側の端部(始端)に戻る。それと共に係合凸部40は元の基準位置に戻り、係合部材21やダンパーケース23、シリンダ50も元の基準状態に復帰する。
【0032】
そして、係合凸部40が基準位置に留まった状態で、
図8のようにフック11のガイド凸部18は直線溝部14aを係止溝部14bとは反対側即ち開き側に向けてスライドしていく。係合凸部40は基準位置よりも開き側には移動できないので、フック11とスライダ12も開き側には移動できない。そのため、第一バネ13の付勢力によって本体ケース10がフック11及びスライダ12に対して相対的に閉じ側に移動することになり、引戸1が本体ケース10と共に閉じ側へと移動し、やがて引戸1は全閉状態となる。尚、スライダ12が第一バネ13によって本体ケース10に対して相対移動する際、本体ダンパーによってスライダ12の移動速度が減速される。そのため、引戸1を強く閉じ操作したとしても、引戸1が強く戸枠2に衝突することはなく、ゆっくりと全閉状態まで誘導されることになる。
【0033】
一方、引戸1を全閉状態から開く際には、上述とは反対の動作となる。即ち、引戸1を全閉状態から開いていくと、その引戸1の移動に伴って本体ケース10も移動し、
図8のようにフック11とスライダ12は第一バネ13の付勢力に抗して係止溝部14b側に向けてスライドしていく。そして、引戸1が作動開始位置まで開かれると、
図7のようにフック11のガイド凸部18が係止溝部14bに到達する。第二バネ19によってフック11が下側に回動付勢されているため、フック11のガイド凸部18は係止溝部14bを下側に移動し、
図5のようにフック11は傾倒姿勢となる。フック11の下側への回動に伴ってフック11の係合凹部17と作動ユニット3の係合凸部40との係合状態が解除される。その後、
図4のようにフック11及びスライダ12は本体ケース10と一体となって、引戸1と共に開き側へと移動していく。
【0034】
このように通常の使用状況においては、スライドピン41は逃がし区間36aのみをスライドする。上述のようにフック11が係合凸部40に当接した際に、係合凸部40は、逃がし区間36aに対応して閉じ側にスライドするので、フック11が係合凸部40に強く衝突してもその衝撃が緩和され、衝突音も軽減される。また、係合凸部40がフック11の係合凹部17と係合した後には係合凸部40は元の基準位置に自動的に復帰するので、開かれた引戸1が再び閉じられる際にも衝撃は緩和され、衝突音は軽減される。
【0035】
一方、非常に強い力で引戸1が閉じ操作された場合や引き込み装置が引戸1を閉じ側に誘導している最中にも引戸1が強く閉じ操作されたような場合には、作動ユニット3の安全機構が働く。即ち、
図6のように係合部材21が逃がし区間36aの終端まで来てもなお引戸1が強く閉じ操作されていて係合凸部40がフック11によって強く閉じ側に押されているような場合には、スライドピン41は逃がし区間36aから傾斜案内区間36bに進入して傾斜案内区間36bを移動する。スライドピン41が傾斜案内区間36bを閉じ側に向けて移動することによって係合部材21は閉じ側に移動しつつ徐々に上昇し、係合凸部40も徐々に上昇してハウジング20の下面からの突出量を徐々に減少させていく。その間においても作動ダンパー22が縮むことに伴って作動ダンパー22から係合部材21に制動力が付与され続ける。
【0036】
スライドピン41が傾斜案内区間36bを閉じ側に移動することに伴って係合凸部40が上昇していくので、
図9のようにフック11と係合凸部40との係合量も徐々に減少していくことになる。やがて
図10のように係合凸部40がフック11から上方に離れてフック11は係合凸部40の下側を閉じ側に通過する。スライドピン41は傾斜案内区間36bから係止区間36cに移行して作動案内溝36の閉じ側の端部に到達する。作動ダンパー22によって係合部材21は開き側に付勢されているが、スライドピン41が係止区間36cに位置していてその開き側への移動が係止区間36cによって阻止されているので、係合部材21は開き側へは移動できず、係合凸部40は基準位置には戻らずにその位置、即ち上方回避位置に留まる。このように通常の使用状況とは異なるような過度の大きな力で引戸1が閉じ操作された場合には、係合凸部40がフック11を回避するように上昇してフック11を閉じ側に通過させるので、作動ユニット3や装置本体4の損傷が防止される。
【0037】
フック11が係合凸部40を閉じ側に通過して引戸1が全閉状態となった後に引戸1を開いていくと、係合凸部40にスライダ12の傾斜面12aが当接して係合凸部40を押し上げる。係合凸部40が押し上げられることによって、スライドピン41は係止区間36cから傾斜案内区間36bに移動して、フック11の係合凹部17に係合凸部40が係合する。その後は、上述した通常の使用状況と同様に、引戸1の開き側への移動に伴って本体ケース10も移動して、フック11とスライダ12が第一バネ13の付勢力に抗して係止溝部14b側に向けてスライドする。尚、スライドピン41が係止区間36cに位置して係合凸部40が上方回避位置にあるとき、係合凸部40がフック11やスライダ12と干渉しない高さに位置していてもよい。上方回避位置において係合凸部40がフック11やスライダ12と干渉しない場合には、引戸1を開いた際にフック11は係合凸部40と係合することなく係合凸部40の下方を開き側に通過する。その場合には、引戸1を開いた後で例えば手動によって作動ユニット3を基準状態(初期状態)に復帰させることができる。即ち、手動で係合凸部40を上方に押し上げることによって、スライドピン41を係止区間36cから傾斜案内区間36bに移動させることができる。スライドピン41が傾斜案内区間36bに戻ると、その後はスライドピン41は自動的に傾斜案内区間36bから逃がし区間36aと戻る。
【0038】
尚、引戸1の閉じ操作の強さの程度によっては、スライドピン41が逃がし区間36aから傾斜案内区間36bに進入するものの、係止区間36cには到達せずに傾斜案内区間36bの途中までしか上昇しない場合もある。その場合、スライドピン41は傾斜案内区間36bの途中から逆に傾斜案内区間36bを下降して逃がし区間36aに戻る。
【0039】
尚、本実施形態では係合部材21を開き側に付勢する付勢部材として作動ダンパー22を備えていたが、作動ダンパー22に代えて、あるいは、作動ダンパー22と共に、係合部材21を開き側に付勢するバネを備えていてもよい。また、上記実施形態では引戸1を全開位置から作動開始位置まで手動で閉じる構成であったが、引戸1がドアクローザを備えていてそのドアクローザによって引戸1が自動的に閉じる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 引戸
2 戸枠
3 作動ユニット
4 装置本体
10 本体ケース
11 フック
12 スライダ
12a 傾斜面
13 第一バネ
14a 直線溝部
14b 係止溝部
15 ガイド凸部
16 支軸
17 係合凹部
18 ガイド凸部
19 第二バネ
20 ハウジング(固定部材)
21 係合部材
22 作動ダンパー(付勢部材)
23 ダンパーケース
24a ネジ止め用の貫通孔
24b ネジ止め用の貫通孔
30 ハウジング本体
31 蓋
32 第一収容室
33 第二収容室
35 開口部
36 作動案内溝(ガイドレール)
36a 逃がし区間
36b 傾斜案内区間
36c 係止区間
37 幅狭部
38 ネジ
39 カバー片
40 係合凸部
40a 第一側面
40b 第二側面
41 スライドピン
50 シリンダ
51 ロッド
60 ダンパー収容部