(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】建物外壁の出隅構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
E04F13/08 101Q
(21)【出願番号】P 2019017312
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中村 大
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121522(JP,A)
【文献】特開2008-095480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の長辺の一方に表側が切り欠かれた長辺表合いじゃくり部が、他方に裏側が切り欠かれた長辺裏合いじゃくり部がそれぞれ形成され、一対の短辺のうち少なくともいずれか一方に裏側が切り欠かれた短辺裏合いじゃくり部が形成される矩形板状の外壁パネルと、
2つの前記外壁パネルを建物外壁の出隅部で接合するための接合用役物と、を有して構成される建物外壁の出隅構造であって、
前記接合用役物は、前記接合される2つの外壁パネルの、前記短辺裏合いじゃくり部と、前記長辺裏合いじゃくり部と、の間に挿入される縦辺部を有して構成されるとともに、両外壁パネルの室内側に配置され、
前記2つの外壁パネルは、長辺を略水平方向に、短辺を略鉛直方向に配置した一方の前記外壁パネルの前記短辺裏合いじゃくり部と、短辺を略水平方向に、長辺を略鉛直方向に配置した他方の前記外壁パネルの前記長辺裏合いじゃくり部と、を略直角に突き合わせて接合されて建物外壁の出隅部を構成
し、
前記長辺裏合いじゃくり部を勝ち側、前記短辺裏合いじゃくり部を負け側とする、建物外壁の出隅構造。
【請求項2】
前記外壁パネルは、両方の短辺に短辺裏合いじゃくり部が形成される、請求項1に記載の建物外壁の出隅構造。
【請求項3】
前記縦辺部と、少なくとも一方の前記外壁パネルとの間には、シール材が配置される、請求項1または2に記載の建物外壁の出隅構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の出隅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物外壁の構成として、平板状の窯業系サイディングの外壁材を縦横に並べて構成する技術が知られている。特に建物の隅部においては、隅部の形状に合わせて、平面視で略L字型の隅部材が使用されていた。
【0003】
特許文献1には、側端部に裏合いじゃくり部を形成した2つの平板状の外壁材で出隅部を構成する技術が提案されている。これにより、外壁の平面部も出隅部も平板状の外壁材で構成することができ、略L字型の隅部材を別途製作する場合に比べて製造コストが削減される。また、裏合いじゃくり部同士を接合することで2つの外壁材間に隅部隙間を介在させ、地震発生時等における外壁材の干渉による損傷を防止することができる。
【0004】
しかしながら特許文献1の構造は横張り用の構成であり、外壁を縦張りの構成としたい際には使用できない。
【0005】
また特許文献1の構造は、いずれの外壁材の正面視においても他方の外壁材の側端部が見える構成であるため、外壁材同士の継ぎ目が視認されやすく、出隅部の意匠性を損ねてしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、2つの平板状の外壁材で構成される出隅部において、縦張りの構成を可能とするとともに、勝ち側の外壁パネルの正面視において外壁パネルの継ぎ目が視認されず、意匠性が向上した建物外壁の出隅構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、一対の長辺の一方に表側が切り欠かれた長辺表合いじゃくり部(例えば、後述の長辺表合いじゃくり部11)が、他方に裏側が切り欠かれた長辺裏合いじゃくり部(例えば、後述の長辺裏合いじゃくり部12)がそれぞれ形成され、一対の短辺のうち少なくともいずれか一方に裏側が切り欠かれた短辺裏合いじゃくり部(例えば、後述の短辺裏合いじゃくり部13)が形成される矩形板状の外壁パネル(例えば、後述の外壁パネル1)と、2つの前記外壁パネルを建物外壁の出隅部で接合するための接合用役物(例えば、後述の出隅ジョイナー2)と、を有して構成される建物外壁の出隅構造(例えば、後述の出隅構造100)であって、前記接合用役物は、前記接合される2つの外壁パネルの、前記短辺裏合いじゃくり部と、前記長辺裏合いじゃくり部と、の間に挿入される縦辺部(例えば、後述の縦辺部21)を有して構成されるとともに、両外壁パネルの室内側に配置され、前記2つの外壁パネルは、長辺を略水平方向に、短辺を略鉛直方向に配置した一方の前記外壁パネルの前記短辺裏合いじゃくり部と、短辺を略水平方向に、長辺を略鉛直方向に配置した他方の前記外壁パネルの前記長辺裏合いじゃくり部と、を略直角に突き合わせて接合されて建物外壁の出隅部を構成する、建物外壁の出隅構造を提供する。
【0009】
(2) (1)の発明において、前記外壁パネルは、両方の短辺に短辺裏合いじゃくり部が形成されてもよい。
【0010】
(3) (1)または(2)の発明において、前記縦辺部と、少なくとも一方の前記外壁パネルとの間には、シール材が配置されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外壁パネルを用いれば、建物外壁の出隅構造において、勝ち側の外壁パネル側から外壁パネルの継ぎ目が視認されず、建物外観の意匠性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における建物外壁の第1出隅構造100を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の外壁パネル1の水平方向の斜視図である。
【
図3】本発明の外壁パネル1の水平方向の断面図である。
【
図4】第1実施形態における建物外壁の第1出隅構造100の一部を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態における建物外壁の第1出隅構造100を構成する手順を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態における建物外壁の第2出隅構造200を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態として、
図1に示す建物外壁の第1出隅構造100について、以下に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる建物外壁の第1出隅構造100を模式的に示す図である。第1出隅構造100は、長辺の一方に表側が切り欠かれた長辺表合いじゃくり部11が、他方に裏側が切り欠かれた長辺裏合いじゃくり部12がそれぞれ形成され、両方の短辺に裏側が切り欠かれた短辺裏合いじゃくり部13が形成される矩形板状の外壁パネル1と、2つの外壁パネル1を建物外壁の出隅部で接合するための出隅ジョイナー2と、を有して構成される建物外壁の出隅構造である。
【0016】
図2および
図3は、外壁パネル1の斜視図および断面図である。より詳しくは、
図2(a)は正面側斜視図であり、
図2(b)は裏面側斜視図である。また
図3(a)は長辺を横断する断面図であり、
図3(b)は短辺を横断する断面図である。
図3に示すように、外壁パネル1において一対の長辺には、一方の辺に表側が切り欠かれた長辺表合いじゃくり部11が、他方の辺に裏側が切り欠かれた長辺裏合いじゃくり部12が形成される。また一対の短辺には両方に短辺裏合いじゃくり部13が形成される。
長辺裏合いじゃくり部12と、短辺裏合いじゃくり部13は合いじゃくりの形状が異なり、長辺裏合いじゃくり部12のほうがサネが長く形成される。
【0017】
第1出隅構造100において少なくとも2つの外壁パネル1は、長辺を略水平方向に、短辺を略鉛直方向に配置した横張りの外壁パネル1の短辺裏合いじゃくり部13と、短辺を略水平方向に、長辺を略鉛直方向に配置した縦張りの外壁パネル1の長辺裏合いじゃくり部12と、を略直角に突き合わせて接合されて建物外壁の出隅部を構成する。
【0018】
横張りの外壁パネル1と縦張りの外壁パネル1は、同一形状のパネルであり、横張り外壁パネル1を90度回転させて縦張りの外壁パネルとして使用する。
図1および
図5に示すように、各外壁パネルは建物の壁面において複数枚が縦横に繰り返し並べて配置され、その長辺において長辺表合いじゃくり部11と長辺裏合いじゃくり部12が接合用部品3によって、短辺において短辺裏合いじゃくり部13と合いじゃくり部の形成されていない側端部とが、または短辺裏合いじゃくり部13同士が、平面ジョイナー7,9によって別の外壁パネル1と連結される。
【0019】
外壁パネル1は、建物外壁の出隅部および平面部のいずれにおいても併用して用いられるが、施工現場において出隅部に用いられる外壁パネル1は通常、切断によって寸法調整して使用される。工場から出荷される外壁パネル1の寸法は規格化されており、これを並べただけでは実際の建物外壁の寸法と一致させることは困難なためである。切断された外壁パネル1の切断端は略平面状であるため、別の外壁パネル1との接合には現場にて加工を行い短辺裏合いじゃくり部13を形成するか、平面端に適応した平面ジョイナー7を用いて接合を行うことが好ましい。
【0020】
接合用部品3および平面ジョイナー7,9は、建物内部構造の柱51や胴縁6等にビス4で固定される。本実施形態において、平面ジョイナー7は2つの外壁パネル1の短辺裏合いじゃくり部13と合いじゃくり部の形成されていない側端部とを、平面ジョイナー9は短辺裏合いじゃくり部13同士を接合するために使用される。外壁パネル1を横方向に繰り返し並べていくと、接合用部品3を配置したい箇所に建物の柱51が対応して位置しない事態が、特に縦張りを行う壁面について多く発生する。そのため外壁パネル1の取付施工にあたり、縦張りおよび横張りともに必要に応じて接合用部品3を固定する基礎として横胴縁61を設けておくことが好ましい。
【0021】
図4は、本実施形態の第1出隅構造100の一部を示す斜視図である。
出隅部においては、横張りの外壁パネル1の短辺裏合いじゃくり部13と、縦張りの外壁パネル1の長辺裏合いじゃくり部12を略直角に突き合わせることで、建物外壁の出隅部が構成される。本実施形態においては、縦張りの外壁パネル1の長辺裏合いじゃくり部12を勝ち側、横張りの外壁パネル1の短辺裏合いじゃくり部13を負け側とする。これにより、縦張りの外壁パネル1の長辺裏合いじゃくり部12のサネが長く形成されているために、横張りの外壁パネル1は、縦張りの外壁パネル1の正面視において、サネによって遮蔽されて視認できなくなる。すなわち、出隅部に外壁パネル1の継ぎ目が露出せず、建物外観の意匠性が向上する。
【0022】
なお、外壁パネル1は両方の短辺に短辺裏合いじゃくり部13が形成されていることでいずれの辺が出隅部に来ても出隅構造100を構成することができるため、外壁パネル1の取り扱いが容易になり、壁面取付施工の作業性が向上する。詳しくは、片方の短辺に短辺裏合いじゃくり部13が形成されていない場合、その短辺の端部は別の外壁パネル1の下辺に形成される短辺裏合いじゃくり部13の負け側として第1出隅構造100を構成することができないため、短辺裏合いじゃくり部13が構成されている側を考慮して外壁パネル1を取り扱う必要がある。
【0023】
本実施形態の第1出隅構造100によれば建物外壁において、1種の外壁パネル1で壁面の方向によって異なる意匠性を発現することができる。例えば建物正面および裏面側を縦張りに、側面側の壁面を横張りにすることで、1種の外壁パネル1で建物の正面および裏面を縦張り様の意匠に、側面を横張り様の意匠に構成することができる。
【0024】
また、一方の外壁パネル1の長辺裏合いじゃくり部12のサネ裏面と、他方の外壁パネル1の合いじゃくり部13の切り欠き部によって、両外壁パネルの間には隙間24が形成される。この隙間24には、後述の出隅ジョイナー2の縦辺部21が挿入されるほか、地震発生時等、外壁が外力を受ける際に衝撃を吸収して側端部の損傷を防ぐ効果がある。
【0025】
出隅ジョイナー2は、2つの外壁パネル1を短辺裏合いじゃくり部13と長辺裏合いじゃくり部12で接合するための役物であり、柱51に沿って上下に延び、スペーサー23を介してビス4により建物の柱51に取り付けられる。横張りの外壁パネル1の短辺に形成される短辺裏合いじゃくり部13と、縦張りの外壁パネル1の下辺に形成される長辺裏合いじゃくり部12の間に挿入される縦辺部21を有して構成されるとともに、両外壁パネル1の室内側に配置される。出隅ジョイナー2と両外壁パネル1との間には、シール材22が配置され、出隅部の接合箇所からの雨水等の侵入を防止することができる。
【0026】
出隅ジョイナー2は、上下方向に延びるとともに平面視で略L字状に構成される金属部品であり、
図1に示すようにL字の角部外側に縦辺部21を有する。縦辺部21は上述のように、出隅を構成する2つの外壁パネル1の裏合いじゃくり部間に挿入されて固定され、第1出隅構造100を構成する。またL字の両端部は外側に折り返すように突出しており、この突出部が外壁パネル1の室内側の面に当接されることで、出隅部の接合箇所から侵入した雨水等が壁面裏側奥深くまで侵入することを防止することができる。
【0027】
次に、本実施形態の第1出隅構造100を構成する手順について説明する。
【0028】
図5は、本実施形態の第1出隅構造100を構成する手順を説明するための図である。
まず、
図5Aに示すように、柱51を含む内部構造5に胴縁6を取り付ける。上述したように、縦張りを行う面については横胴縁61を取り付けておくことで、接合用部品3を固定して外壁パネル1を並べていくことができる。
【0029】
次に、
図5Bに示すように、出隅ジョイナー2を出隅部に取り付ける。また、外壁パネル1の取付を開始する出隅部の下辺に、パネルを安定して取り付けるためのスターター部材62を合わせて取り付ける。
【0030】
続いて
図5Cに示すように、スターター部材62に沿って縦張り、横張り各面の1枚目の外壁パネル1を取り付けることで、出隅部を形成する。
【0031】
最後に
図5Dに示すように、1枚目の外壁パネル1から順に、複数の外壁パネル1を接合して貼り付けていく。これにより、本実施形態の第1出隅構造100が完成する。
【0032】
以上、本発明の第1実施形態である第1出隅構造100について説明した。第1出隅構造100によれば、2つの平板状の外壁材で構成される建物外壁の出隅構造において、縦張りの構成を可能にするとともに、勝ち側の外壁パネル1の正面視において2つの外壁パネル1同士の継ぎ目が視認されず、建物外観の意匠性が向上する。さらに、1種の外壁パネル1で壁面の方向によって異なる意匠性を発現することができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、
図6に示す建物外壁の第2出隅構造200である。
【0034】
第2出隅構造200では、第1出隅構造100において、出隅ジョイナー2とは形状が異なる出隅ジョイナー202を使用している。出隅ジョイナー202は出隅ジョイナー2と異なり、
図6に示すように断面の略L字の直線部が内側に向けてコ字状に窪んだ縦溝部を形成している。上下に延びる出隅ジョイナー202の縦溝部は、侵入した雨水等を下方から外部へと排出する効果がある。
【0035】
以上、本発明の実施形態について、例を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上記の実施形態を変形・改良したものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の構成は、窯業系サイディングの板状の外壁パネルを接合させる出隅構造において、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 外壁パネル
11 長辺表合いじゃくり部
12 長辺裏合いじゃくり部
13 短辺裏合いじゃくり部
2 出隅ジョイナー
202 出隅ジョイナー
21 縦辺部
22 シール材
23 スペーサー
24 シール材
3 接合用部品
4 ビス
5 内部構造
51 柱
52 内装
53 断熱材
6 胴縁
61 横胴縁
62 スターター部材
7 平面ジョイナー
8 合板胴縁
9 平面ジョイナー