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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20220801BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220801BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/416 331
G01N15/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019030512
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020134392
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】太田 綾香
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】石黒 靖浩
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-15596(JP,A)
【文献】実開昭53-144391(JP,U)
【文献】特開平10-197475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 27/416
G01N 15/06
G01K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、前記センサ素子を収容する主体金具と、
前記センサ素子の後端側に配置されて前記センサ素子と電気的に接続される端子金具と、
軸線方向に延び、前記主体金具の後端側に配置されて接続される筒状のケースと、
前記端子金具の後端側に電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びる1本以上のリード線と、
前記リード線の後端側に接続され、前記リード線の径方向外側に突出するコネクタ部と、
前記ケースの後端側の外面に被せられると共に、前記ケースの後方に延びて前記リード線の周囲を包囲する筒状の遮熱チューブと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱チューブは、第1チューブと、自身の内径が前記第1チューブの外径より大径で前記第1チューブを収容可能な第2チューブと、を備え、
前記第2チューブは、前記第1チューブと重なり部分を設けつつ、前記第1チューブより先端側に配置されて前記ケースの後端側の外面に被せられ、
前記第1チューブの後端側は、前記コネクタ部に隣接し、
前記遮熱チューブの全長T、前記重なり部分の長さSとしたとき、T/10≦S≦T/5を満たし、
前記第1チューブの長さL1、前記第2チューブの長さL2としたとき、T/2≦L2<L1を満たすことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記第1チューブ及び前記第2チューブは、ガラス繊維の編組体の外表面をアルミニウムで被覆してなることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
センサ素子と、前記センサ素子を収容する主体金具と、
前記センサ素子の後端側に配置されて前記センサ素子と電気的に接続される端子金具と、
軸線方向に延び、前記主体金具の後端側に配置される筒状のケースと、
前記端子金具の後端側に電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びる1本以上のリード線と、
前記リード線の後端側に接続され、前記リード線の径方向外側に突出するコネクタ部と、
前記ケースの後端側の外面に被せられると共に、前記ケースの後方に延びて前記リード線の周囲を包囲する筒状の遮熱チューブと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱チューブは、第1チューブと、自身の内径が前記第1チューブの外径より大径で前記第1チューブを収容可能な第2チューブと、自身の内径が前記第2チューブの外径より大径で前記第2チューブを収容可能な第3チューブとを備え、
前記第3チューブは、前記第2チューブと第1重なり部分を設けつつ、前記第2チューブより先端側に配置されて前記ケースの後端側の外面に被せられ、
前記第2チューブは、前記第1チューブと第2重なり部分を設けつつ、前記第1チューブより先端側に配置され、
前記第1チューブの後端側は、前記コネクタ部に隣接し、
前記遮熱チューブの全長T、第1重なり部分の長さS1、第2重なり部分の長さS2としたとき、T/10≦S1≦T/5、T/10≦S2≦T/5を満たし、
前記第1チューブの長さL1、前記第2チューブの長さL2、前記第3チューブの長さL3としたとき、T/3≦L3<L2<L1を満たすことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
前記第1チューブ~前記第3チューブは、ガラス繊維の編組体の外表面をアルミニウムで被覆してなることを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気管には、被測定ガスの濃度を検出するセンサが取付けられている。
図4に示すように、このようなセンサ1000は、センサ素子192を主体金具180で保持し、センサ素子192の先端側をプロテクタ190で覆うと共に、センサ素子192の後端側を筒状のケース170で覆っている。さらに、ゴム製のシール部材110ごとケース170の後端側を加締めて内外を封止すると共に、リード線123をシール部材110に挿通させて外部に引き出している。
ところが、シール部材110は一般に耐熱性が低いため、センサ1000が高温環境下で長時間使用されると、シール部材110が輻射熱を受けて劣化し、センサ1000のシールが損なわれるおそれがある。又、リード線123が熱を受けて絶縁被覆が溶けると、絶縁性を損なってしまう。
【0003】
そこで、シール部材110とリード線123とを遮熱チューブ130で包囲し、遮熱チューブ130の後端側にて留め具150でリード線123を遮熱チューブ130に固定する技術が開発されている(特許文献1)。
なお、リード線123は、一つにまとめられて保護チューブ120によって被覆されている。又、リード線123の後端側には、リード線123の径方向外側に突出するコネクタ160が接続され、コネクタ160は外部機器(車両のECU等)に接続可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-003076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、センサ1000においては、リード線123(を覆う保護チューブ120)の後端側の領域V1が遮熱チューブ130の後端に露出している。これは、図5に示すように、予めリード線123の後端側にコネクタ160が接続されている一方で、リード線123の先端側に後から接続端子125を加締め接続する必要があるからである。
つまり、加締め接続の際、リード線123を未加締めのケース170xを通して先端側に前進させて、リード線123とケース170の先端との間にリード線123を把持するためのスペースV2を確保する必要があるが、大径のコネクタ160が遮熱チューブ130の後端に当接して干渉することを考慮して、領域V1の長さをスペースV2より長くする必要が生じる。
なお、未加締めのケース170xではシール部材110が加締められておらず、シール部材110を通してリード線123を前進させることが可能である。
【0006】
しかしながら、近年では、センサを車両のエンジンやその排気系により近接して設置する要求があり、センサの耐熱性をさらに向上すべく、リード線(保護チューブ)のほぼ全体を遮熱チューブで覆うことが必要になってきている。また、遮熱チューブは構造上、伸縮性に乏しく手繰り寄せることができないため、リード線のほぼ全体を遮熱チューブで覆ってしまうと、リード線123を前進させることができなくなり、十分な領域V2を確保することができず、リード線123の先端側に後から接続端子125を加締め接続することが困難になるという問題があった。
そこで、本発明は、センサの外部へ延びるリード線を遮熱チューブで確実に包囲して耐熱性を向上させると共に、リード線への端子金具の接続を妨げないセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を収容する主体金具と、前記センサ素子の後端側に配置されて前記センサ素子と電気的に接続される端子金具と、軸線方向に延び、前記主体金具の後端側に配置されて接続される筒状のケースと、前記端子金具の後端側に電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びる1本以上のリード線と、前記リード線の後端側に接続され、前記リード線の径方向外側に突出するコネクタ部と、前記ケースの後端側の外面に被せられると共に、前記ケースの後方に延びて前記リード線の周囲を包囲する筒状の遮熱チューブと、を備えるセンサであって、前記遮熱チューブは、第1チューブと、自身の内径が前記第1チューブの外径より大径で前記第1チューブを収容可能な第2チューブと、を備え、前記第2チューブは、前記第1チューブと重なり部分を設けつつ、前記第1チューブより先端側に配置されて前記ケースの後端側の外面に被せられ、前記第1チューブの後端側は、前記コネクタ部に隣接し、前記遮熱チューブの全長T、前記重なり部分の長さSとしたとき、T/10≦S≦T/5を満たし、前記第1チューブの長さL1、前記第2チューブの長さL2としたとき、T/2≦L2<L1を満たすことを特徴とする。
【0008】
このセンサによれば、遮熱チューブを構成する第1チューブと第2チューブとを重なり部分を設けて、ケースの後端側からコネクタ部に隣接する部位まで延ばすことで、リード線のほぼ全体を遮熱チューブで覆うことができ、リード線を遮熱チューブで確実に包囲して耐熱性を向上させることができる。
又、第1チューブを第2チューブの内側に収容できるようにすることで、収容時の遮熱チューブの長さが第1チューブの長さまで短くなり、延長時の遮熱チューブの全長Tとの差が生じる。そして、この差だけ遮熱チューブごとリード線をケースを通して先端側に前進させることができるので、リード線への端子金具の接続の際、リード線とケースの先端との間にリード線を把持するためのスペースを確保でき、リード線への端子金具の接続を妨げない。
【0009】
上記センサにおいて、前記第1チューブ及び前記第2チューブは、ガラス繊維の編組体の外表面をアルミニウムで被覆してなっていてもよい。
【0010】
又、本発明のセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を収容する主体金具と、前記センサ素子の後端側に配置されて前記センサ素子と電気的に接続される端子金具と、軸線方向に延び、前記主体金具の後端側に配置される筒状のケースと、前記端子金具の後端側に電気的に接続されて、前記ケースの内部から外部へ延びる1本以上のリード線と、前記リード線の後端側に接続され、前記リード線の径方向外側に突出するコネクタ部と、前記ケースの後端側の外面に被せられると共に、前記ケースの後方に延びて前記リード線の周囲を包囲する筒状の遮熱チューブと、を備えるセンサであって、前記遮熱チューブは、第1チューブと、自身の内径が前記第1チューブの外径より大径で前記第1チューブを収容可能な第2チューブと、自身の内径が前記第2チューブの外径より大径で前記第2チューブを収容可能な第3チューブとを備え、前記第3チューブは、前記第2チューブと第1重なり部分を設けつつ、前記第2チューブより先端側に配置されて前記ケースの後端側の外面に被せられ、前記第2チューブは、前記第1チューブと第2重なり部分を設けつつ、前記第1チューブより先端側に配置され、前記第1チューブの後端側は、前記コネクタ部に隣接し、前記遮熱チューブの全長T、第1重なり部分の長さS1、第2重なり部分の長さS2としたとき、T/10≦S1≦T/5、T/10≦S2≦T/5を満たし、前記第1チューブの長さL1、前記第2チューブの長さL2、前記第3チューブの長さL3としたとき、T/3≦L3<L2<L1を満たすことを特徴とする。
【0011】
このセンサによれば、遮熱チューブを構成する第1チューブ~第3チューブを第1重なり部分及び第2重なり部分を設けて、ケースの後端側からコネクタ部に隣接する部位まで延ばすことで、リード線のほぼ全体を遮熱チューブで覆うことができ、リード線を遮熱チューブで確実に包囲して耐熱性を向上させることができる。
又、第1チューブを第2チューブの内側に収容し、第2チューブを第3チューブの内側に収容できるようにすることで、収容時の遮熱チューブの長さが第1チューブの長さまで短くなり、延長時の遮熱チューブの全長Tとの差が生じる。そして、この差だけ遮熱チューブごとリード線をケースを通して先端側に前進させることができるので、リード線への端子金具の接続の際、リード線とケースの先端との間にリード線を把持するためのスペースを確保でき、リード線への端子金具の接続を妨げない。
【0012】
上記センサにおいて、前記第1チューブ~前記第3チューブは、ガラス繊維の編組体の外表面をアルミニウムで被覆してなっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、センサの外部へ延びるリード線を遮熱チューブで確実に包囲して耐熱性を向上させると共に、リード線への端子金具の接続を妨げないセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るセンサの軸線方向に沿う半断面図である。
図2】リード線に端子金具を加締め接続する工程図である。
図3】リード線に端子金具を接続したケースアセンブリを素子アセンブリに組付ける工程図である。
図4】従来のセンサの軸線方向に沿う半断面図である。
図5】従来のセンサにおいて、リード線に端子金具を加締め接続する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る酸素センサ(センサ)100の軸線O方向に沿う半断面図、図2はリード線12に端子金具25を加締め接続する工程図、図3はリード線12に端子金具25を接続したケースアセンブリを素子アセンブリに組付ける工程図を示す。
この酸素センサ100は、自動車の排気管(図示しない)に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度を検知するものである。排気管は、排ガスの熱により例えば800℃という高温状態になる可能性があるため、酸素センサ100も高温になる。また、外部からの熱が酸素センサ100に加わることもある。従って、酸素センサ100には、このような熱に対する対策が要求される。
特に、酸素センサ100を車両のエンジンやその排気系(エキゾーストマニホールド等)により近接して設置する場合などに、センサの耐熱性をさらに向上すべく、リード線12(保護チューブ13)のほぼ全体を遮熱チューブで覆うことが必要となる。
【0016】
図1に示すように、酸素センサ100は、センサ素子15と、センサ素子15を保持する筒状の主体金具18と、センサ素子15の先端側を覆う筒状のプロテクタ19と、センサ素子15の後端側を覆う筒状のケース17を備えている。さらに、ケース17の後端側にゴム製のシール部材11を加締めて内外を封止すると共に、リード線12をシール部材11に挿通させて外部に引き出している。
センサ素子15は、軸線O方向に延びる板形状の積層部材であり、検出部を含む素子部と、素子部を加熱するためのヒータ部と、を備える。
主体金具18、プロテクタ19及びケース17は、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料を用いて構成され、プロテクタ19及びケース17はそれぞれ主体金具18の先端側及び後端側に溶接等で接続されている。
【0017】
リード線12は複数本備えられ、リード線12の後端側にはリード線12の径方向外側に突出する径大なコネクタ部20が電気的に接続され、コネクタ部20は外部機器(車両のECU等)に接続可能になっている。
又、リード線12の後端側は一つにまとめられて保護チューブ13によって被覆され、保護チューブ13は、コネクタ部20に隣接するように延びている。
保護チューブ13は、ガラス繊維を用いて構成された筒状の編組であり、可撓性を備えている。
【0018】
さらに、酸素センサ100は、ケース17の後端側17eの外面に被せられると共に、ケース17の後方に延びてリード線12(又は保護チューブ120)の周囲を包囲する筒状の遮熱チューブ30を備えている。
なお、ケース17は、主体金具18の後端側を覆う先端から後端に向かって小径となる段部17dを備えている。
【0019】
また、ケース17の内側には、シール部材11の位置よりも先端側に、アルミナなどの絶縁性材料で構成された、図示しない絶縁セパレータが配置されている。この絶縁セパレータは、図2に示す端子金具25を収容する。
本実施形態では、リード線12は5本のリード線を含む。リード線12は、センサ素子15によって検出された検出信号を取り出すとともに、酸素センサ100を駆動するための駆動信号を伝達するための信号線である。リード線12は、その先端が端子金具25の後端側に加締め接続され(図2参照)、端子金具25がセンサ素子15の後端側の電極パッド16(図3参照)に電気的に接続されるようになっている。又、シール部材11には、5本の各リード線12を一本ずつ個々に挿通させる5個のリード線挿通孔が軸線O方向に貫通している。
【0020】
遮熱チューブ30は、軸線O方向に延びる筒状の部材である。遮熱チューブ30の外表面及び内表面は、シール部材11よりも熱伝導性の高い材料で構成されている。具体的には、遮熱チューブ30は、例えばアルミニウムなどの金属の箔や蒸着体でガラス繊維の編組体の外表面を被覆してなり、剛性が高くて軸線O方向の伸縮性が低い。
遮熱チューブ30は、外表面が金属で被覆されて構成されているため、酸素センサ100の周囲の環境が高温環境になっても、外部の熱線を反射して、内部のシール部材11やリード線12への熱の伝達を抑制することができる。
【0021】
図1に示すように、遮熱チューブ30は、第1チューブ31と、自身の内径が第1チューブ31の外径より大径で第1チューブ31を収容可能な第2チューブ32と、を備えている。第2チューブ32は、第1チューブ31と重なり部分33を設けつつ、第1チューブ31より先端側に配置されてケース17の後端側17eの外面に被せられている。一方、第1チューブ31の後端側は、コネクタ部20に隣接している。ここで、「隣接」とは、第1チューブ31の後端側がコネクタ部20に接していてもよく、接さずにコネクタ部20に近接していてもよい。
ここで、本実施形態では、第2チューブ32の先端側のうち、ケース17の後端側17eに対応する位置に、第2チューブ32をケース17に固定するためのC字状のCリング50が外嵌されている。同様に、第2チューブ32の後端側のうち、重なり部分33に対応する位置に、第2チューブ32と第1チューブ31を固定するためのCリング50が外嵌されている。
Cリング50は、固定位置の第2チューブ32に被せた後で所定の治具にて縮径することで固定するようになっている。
【0022】
ここで、遮熱チューブ30の全長T、重なり部分33の長さSとしたとき、T/10≦S≦T/5を満たし、第1チューブ31の長さL1、第2チューブ32の長さL2としたとき、T/2≦L2<L1を満たす。ここで、遮熱チューブ30の全長Tとは、重なり部分33を設けた状態で固定されたときの第2チューブ32の先端から第1チューブ31の後端までの軸線O方向の長さである。
なお、L1の上限は、上記したT/2≦L2、及びT=L1+L2-Sの関係から、L1≦(T/2+S)である。
【0023】
まず、L2<L1とする理由は、図2のように第1チューブ31を第2チューブ32の内側に収容したとき、第2チューブ32の先端から第1チューブ31が突出するので、第1チューブ31を第2チューブ32の先端に延ばすときに第1チューブ31の先端を掴むことができるからである。
又、T/2≦L2とする理由は、T/2>L2であると、全長Tに比べてL2が短くなり過ぎ、第1チューブ31を第2チューブ32の内側に収容したときの全長Tからの遮熱チューブ30全体の軸線O方向の短縮度が小さくなってしまい、後述するスペースV2を確保し難くなるからである。
T/10≦S≦T/5とする理由は、重なり部分33の長さSを適度に確保するためである。T/10<Sであると重なり部分33が短くなり過ぎる。S>T/5であると重なり部分33が長くなり過ぎ、第1チューブ31を第2チューブ32の内側に収容したときの全長Tからの遮熱チューブ30全体の軸線O方向の短縮度が小さくなってしまい、後述するスペースV2を確保し難くなる。
【0024】
次に、図2を参照して、第1チューブ31及び第2チューブ32の長さを上述のように規定したことによる作用について説明する。
まず、本発明においては、遮熱チューブ30を構成する第1チューブ31と第2チューブ32とを重なり部分33を設けて、ケース17の後端側17eからコネクタ部20に隣接する部位まで延ばすことで、リード線12(保護チューブ13)のほぼ全体を遮熱チューブ30で覆うことができ、耐熱性を向上させることができる。
【0025】
一方、遮熱チューブ30は伸縮性が低いので、ケース17の後端側17eからコネクタ部20に隣接する部位まで遮熱チューブ30を延ばすと、リード線12の先端側に後から接続端子25を加締め接続する際の妨げとなってしまい、加締め接続が困難になる。
すなわち、既に述べたように、予めリード線12の後端側にコネクタ部20が接続されているので、リード線12の先端側に後から接続端子25を加締め接続するには、リード線12をケース17を通して先端側に前進させて、リード線12とケース17の先端との間にリード線12を把持するためのスペースV2を確保する必要がある。
ここで、コネクタ部20はリード線12の径方向外側に突出して遮熱チューブ30の内径よりも径大であるので、遮熱チューブ30の後端に当接して干渉する。このため、ケース17の後端側17eからコネクタ部20に隣接する部位まで遮熱チューブ30を延ばすと、リード線12をケース17側に前進させることが困難になる。
【0026】
そこで、遮熱チューブ30を構成する第1チューブ31を第2チューブ32の内側に収容できるようにすることで、収容時の遮熱チューブ30の長さが第1チューブ31の長さL1まで短くなり、延長時の遮熱チューブ30の全長Tとの差が生じる。そして、この差だけ遮熱チューブ30毎リード線12を、未加締めのケース17xを通して先端側に前進させることができ、スペースV2を確保できる。
未加締めのケース17xではシール部材11が加締められておらず、シール部材11を通してリード線12を前進させることが可能である。
【0027】
なお、第1チューブ31を第2チューブ32の内側に収容することでできる全長Tとの差は(T-L1)であるが、第2チューブ32のうちケース17の後端側17eに被せられる部分はリード線12の前進に利用できないので、正味の差は、図2のV3の長さとなる。
以上のようにして、センサ100の外部へ延びるリード線12を遮熱チューブ30で確実に包囲して耐熱性を向上させると共に、リード線12への端子金具25の接続を妨げることを回避でき、生産性も損なわないことになる。
【0028】
なお、図3に示すように、端子金具25を接続したリード線12を後端側へ引き出し、ケース17内の図示しないセパレータに端子金具25を保持し、リード線12を挿通したシール部材11の外側のケース17を加締めてケースアセンブリを製造する。
そして、このケースアセンブリを、センサ素子15を主体金具18及びプロテクタ19に組付けた素子アセンブリの後端側に配置し、センサ素子15の電極パッド16に端子金具25が電気的に接続するようにケース17を主体金具18の後端側に被せ、ケース17を全周溶接等してセンサ100を製造する。
【0029】
本発明は遮熱チューブ30が第1チューブ31と第2チューブ32の2つからなるものに限らず、第1チューブ~第3チューブの3つからなるものに拡張できる。
この場合、遮熱チューブは、第1チューブと、自身の内径が第1チューブの外径より大径で第1チューブを収容可能な第2チューブと、自身の内径が第2チューブの外径より大径で第2チューブを収容可能な第3チューブとを備えればよい。
先端側から第3チューブ、第2チューブ、第1チューブの順に各チューブが配置される。そして、第3チューブは、第2チューブと第1重なり部分を設けつつ、第2チューブより先端側に配置されてケースの後端側の外面に被せられ、第2チューブは、第1チューブと第2重なり部分を設けつつ、第1チューブより先端側に配置され、第1チューブの後端側は、コネクタ部に隣接する。
【0030】
ここで、遮熱チューブの全長T、第1重なり部分の長さS1、第2重なり部分の長さS2としたとき、T/10≦S1≦T/5、T/10≦S2≦T/5を満たし、第1チューブの長さL1、第2チューブの長さL2、第3チューブの長さL3としたとき、T/3≦L3<L2<L1を満たすようにすればよい。
なお、L1+L2の上限は、上記したT/3≦L3、及びT=L1+L2+L3-(S1+S2)の関係から、(L1+L2)≦2T/3+(S1+S2)である。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0032】
遮熱チューブ30の材質は上記実施形態に限定されず、遮熱性を有すればよい。
第2チューブ32をケース17に固定する方法、及び重なり部分33に対応する位置で第2チューブ32と第1チューブ31を固定する方法もCリングに限定されず、バンド、ワイヤ等が挙げられる。
センサ素子は板型素子に限らず、筒型素子でもよい。
又、センサの種類も限定されず、酸素センサの他、NOxセンサ、全領域センサ、温度センサ、PMセンサ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0033】
100 センサ
11 シール部材
12 リード線
15 センサ素子
17 ケース
17e ケースの後端側
18 主体金具
20 コネクタ部
25 端子金具
30 遮熱チューブ
31 第1チューブ
32 第2チューブ
33 重なり部分
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5