(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】コンバイン及びバケット式コンベア
(51)【国際特許分類】
A01F 12/46 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A01F12/46
(21)【出願番号】P 2019051522
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝之
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-115213(JP,A)
【文献】実開昭58-106312(JP,U)
【文献】特開2001-008542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部にて脱穀された脱穀処理物を貯留部に搬送するバケット式コンベアを備え、
前記バケット式コンベアは、上下に配置された回転体に巻きかけられて駆動される無端回転帯と、前記無端回転帯に取り付けられる複数のバケットを有して構成され、
前記バケットは、移動前方側に開口し、
前記バケットは、脱穀処理物を前記バケットの内部に案内するように傾斜する第1の板部及び第2の板部を備え、
前記第2の板部は、前記第1の板部よりも移動前方側に所定間隔を隔てて設けられて
おり、
前記バケットの前記第2の板部とそれの移動前方側に隣接する他の前記バケットの前記第1の板部との隣接間隔は、前記バケットにおける前記所定間隔よりも小に構成されている、
コンバイン。
【請求項2】
前記バケットは、底壁部とそれに連続する周壁部とを備え、前記周壁部は、前記無端回転帯に取り付けられる基端壁部と、前記無端回転帯から離間した位置で前記基端壁部に対向する先端壁部と、相対向する一対の側壁部と、を備え、前記第1の板部は、前記先端壁部から構成され、前記第2の板部は、前記一対の側壁部に亘って設けられている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記バケットの前記先端壁部は、バケット開口端ほど前記無端回転帯から離間する傾斜姿勢に構成され、前記第2の板部は、前記バケットの前記先端壁部と平行又は略平行に設けられている請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記バケットの前記一対の側壁部のバケット開口端は、前記先端壁部のバケット開口端よりも移動前方側に延長され、前記一対の側壁部の延長壁部分に、前記第2の板部が設けられている請求項2又は3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記脱穀部の下部に設けられて脱穀処理物を前記バケット式コンベアに搬送する搬送部を備え、
前記搬送部は、機体の左右方向に延びる底スクリューと、前記底スクリューの搬送終端部に設けられて脱穀処理物を前記バケットに向けて投げ出す羽根部材とを備え、
前記羽根部材から投げ出された脱穀処理物がバケット移動経路の脱穀処理物受取領域に到達するとき、前記バケットが前記脱穀処理物受取領域に位置するように、前記羽根部材の駆動と前記バケット式コンベアの駆動とを連係する連係部が設けられている
請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記連係部には、前記羽根部材の駆動と前記バケット式コンベアの駆動との連係状態を調整する連係調整部が設けられている
請求項5記載のコンバイン。
【請求項7】
脱穀部にて脱穀された脱穀処理物を貯留部に搬送するバケット式コンベアであって、
前記バケット式コンベアは、上下に配置された回転体に巻きかけられて駆動される無端回転帯と、前記無端回転帯に取り付けられる複数のバケットを有して構成され、
前記バケットは、移動前方側に開口し、
前記バケットは、脱穀処理物を前記バケットの内部に案内するように傾斜する第1の板部及び第2の板部を備え、
前記第2の板部は、前記第1の板部よりも移動前方側に所定間隔を隔てて設けられており、
前記バケットの前記第2の板部とそれの移動前方側に隣接する他の前記バケットの前記第1の板部との隣接間隔は、前記バケットにおける前記所定間隔よりも小に構成されている、
バケット式コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀部にて脱穀された脱穀処理物を貯留部に搬送するバケット式コンベアを備えたコンバイン及びバケット式コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインのバケット式コンベアでは、例えば、特許文献1に示すように、上下に配置された回転体に巻きかけられて駆動される無端回転帯と、無端回転帯に取り付けられる複数のバケットと、を備える。バケットは、移動前方側(脱穀処理物の揚送経路では上方側)に配置される無底状のバケットと、移動後方側(脱穀処理物の揚送経路では下方側)に配置される有底状のバケットとを組み合わせて構成されている。各バケットの周壁部は、無端回転帯に取り付けられる基端壁部と、無端回転帯から離間した位置で基端壁部と対向する先端壁部と、相対向する一対の側壁部と、を備える。一対の側壁部のバケット開口端は、先端壁部のバケット開口端よりも移動前方側に延長されている。
特許文献1に示すバケット式コンベアでは、移動前方側の無底状バケット内の脱穀処理物は、それの底部の開口部から次の無底状バケットに送られ、さらに、有底状バケットに送られる。これにより、最前方の無底状バケット以外の無底状バケット及び有底状バケットは、脱穀処理物が満杯状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記バケット式コンベアは、バケットの一対の側壁部のバケット開口端を、先端壁部のバケット開口端よりも移動前方側に延長することによって、バケット内に収納された脱穀処理物が一対の側壁部から側方にこぼれ落ちることを抑制することができる。しかし、先端壁部のバケット開口端は、一対の側壁部のバケット開口端よりも底壁部側の低い位置にあるため、この先端壁部のバケット開口端を基準にした安息角によってバケットの最大収納量が制限され、バケット内の上部空間は無駄になっている。しかも、安息角をもって収納されているバケット内の脱穀処理物は、搬送中の振動等によって先端壁部のバケット開口端からこぼれ落ち易く、バケットの搬送能力の向上が望まれている。
【0005】
この実情に鑑み、搬送能力を大きく向上させるバケットを備えるコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、脱穀部にて脱穀された脱穀処理物を貯留部に搬送するバケット式コンベアを備え、
前記バケット式コンベアは、上下に配置された回転体に巻きかけられて駆動される無端回転帯と、前記無端回転帯に取り付けられる複数のバケットを有して構成され、
前記バケットは、移動前方側に開口し、
前記バケットは、脱穀処理物を前記バケットの内部に案内するように傾斜する第1の板部及び第2の板部を備え、
前記第2の板部は、前記第1の板部よりも移動前方側に所定間隔を隔てて設けられている点にある。
【0007】
上記構成によれば、バケットに収納された脱穀処理物は、無端回転帯から離間する先端側においては、第1の板部と、これよりも移動前方側に所定間隔を隔てて設けられている第2の板部とで受け止められる。そのため、バケットの脱穀処理物の最大収納量は、第1の板部の移動前方側端縁(脱穀処理物の揚送経路では上端縁)を基準にした安息角と、第2の板部の移動前方側端縁を基準にした安息角とによって決定される。これにより、第2の板部で受け止められる脱穀処理物は、バケットの収納空間における移動前方側空間(脱穀処理物の揚送経路では上部空間)を活用して収納される。しかも、安息角をもって収納されているバケット内の脱穀処理物の上層側は、第1の板部から所定間隔を隔てて配置された第2の板部で受け止められているので、振動等による第1の板部の移動前方側端縁からこぼれ落ちる脱穀処理物も減少することができる。これにより、バケットの搬送能力を大きく向上させることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記バケットは、底壁部とそれに連続する周壁部とを備え、前記周壁部は、前記無端回転帯に取り付けられる基端壁部と、前記無端回転帯から離間した位置で前記基端壁部に対向する先端壁部と、相対向する一対の側壁部と、を備え、前記第1の板部は、前記先端壁部から構成され、前記第2の板部は、前記一対の側壁部に亘って設けられている点にある。
【0009】
上記構成によれば、バケットの周壁部における先端壁部をもって第1の板部が構成されているので、バケットの両側壁部に亘って第2の板部を設けるだけで、搬送能力の大きなバケットを容易に製作することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記バケットの前記先端壁部は、バケット開口端ほど前記無端回転帯から離間する傾斜姿勢に構成され、前記第2の板部は、前記バケットの前記先端壁部と平行又は略平行に設けられている点にある。
【0011】
上記構成によれば、無端回転帯が巻き掛けられている上部の回転体に沿ってバケットが下向きに反転回動する際、バケットに生起される遠心力によって、バケット内の脱穀処理物が貯留部側に向かって投入される。このとき、バケットの先端壁部と第2の板部は平行又は略平行な傾斜姿勢にあるため、バケット内の脱穀処理物をスムーズに排出することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記バケットの前記一対の側壁部のバケット開口端は、前記先端壁部のバケット開口端よりも移動前方側に延長され、前記一対の側壁部の延長壁部分に、前記第2の板部が設けられている点にある。
【0013】
上記構成によれば、バケットの一対の側壁部のバケット開口端を移動前方側に延長することにより、バケット内に収納された脱穀処理物が一対の側壁部から側方にこぼれ落ちることを抑制することができる。しかも、この一対の側壁部の延長壁部分を利用して、第2の板部を、バケットの先端壁部から移動前方側に所定間隔を隔てた位置に容易に取り付けることができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記バケットの前記第2の板部とそれの移動前方側に隣接する他の前記バケットの前記先端壁部との隣接間隔は、前記バケットにおける前記第2の板部と前記先端壁部との所定間隔よりも小に構成されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、バケットにおける先端壁部と第2の板部との間隔を、バケット内の脱穀処理物をスムーズに排出することのできる所定間隔に構成する。他方、バケットの第2の板部とそれの移動前方側に隣接する他のバケットの先端壁部との隣接間隔は、所定間隔よりも小に構成することにより、バケットの取付けピッチを小さくすることができる。これにより、無端回転帯に取り付けられるバケット数の増加によって脱穀処理物の搬送能力を高めることができる。
【0016】
本発明の第6特徴構成は、前記脱穀部の下部に設けられて脱穀処理物を前記バケット式コンベアに搬送する搬送部を備え、
前記搬送部は、機体の左右方向に延びる底スクリューと、前記底スクリューの搬送終端部に設けられて脱穀処理物を前記バケットに向けて投げ出す羽根部材とを備え、
前記羽根部材から投げ出された脱穀処理物がバケット移動経路の脱穀処理物受取領域に到達するとき、前記バケットが前記脱穀処理物受取領域に位置するように、前記羽根部材の駆動と前記バケット式コンベアの駆動とを連係する連係部が設けられている点にある。
【0017】
上記構成によれば、脱穀部にて脱穀された脱穀処理物は、脱穀部の下部に設けられた底スクリューによって機体の左右方向に沿ってバケット式コンベア側に搬送される。搬送された脱穀処理物は、底スクリューの搬送終端部に設けられた羽根部材によってバケット移動経路の脱穀処理物受取領域に投げ出される。投げ出された脱穀処理物はバケットに受止められて上方に搬送される。このとき、羽根部材の駆動とバケット式コンベアの駆動とを連係する連係部により、羽根部材から投げ出された脱穀処理物がバケット移動経路の脱穀処理物受取領域に到達するときには、バケットが脱穀処理物受取領域に位置するので、底スクリューで搬送されてきた脱穀処理物をバケットに効率良く受け継ぎ搬送することができる。
【0018】
本発明の第7特徴構成は、前記連係部には、前記羽根部材の駆動と前記バケット式コンベアの駆動との連係状態を調整する連係調整部が設けられている点にある。
【0019】
上記構成によれば、脱穀処理物の種類によって脱穀処理物受取領域が変動する場合でも、連係調整部による羽根部材の駆動とバケット式コンベアの駆動との連係状態の調整により、羽根部材から投げ出された脱穀処理物が変動した脱穀処理物受取領域に到達するときには、バケットを変動した脱穀処理物受取領域に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】底スクリュー及び羽根部材の駆動とバケット式コンベアの駆動とを連係する連係部の斜視図
【
図11】バケットによる脱穀処理物の収納状態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、普通型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本実施形態で例示する普通型コンバインは、稲、麦、そば、大豆、とうもろこし、などの穀類を収穫対象とする汎用性の高いものである。
図1に示すように、普通型コンバインは、乗用型の走行機体1、機体前方の未刈り穀稈を刈り取る刈取部2、刈り取られた穀稈を刈取部2から受け取って後上方に搬送する穀稈搬送部3、穀稈搬送部3から搬送されてきた穀稈に脱穀処理を施すとともに脱穀処理で得られた選別対象物に選別処理を施す脱穀部(以下、脱穀選別部4と記載する)、脱穀処理後の穀稈(排わら)を細断して機外に排出する排わら処理部5、脱穀選別部4での脱穀・選別処理で得られた脱穀処理物である単粒化した穀粒を貯留する貯留部(以下、穀粒貯留部6と記載する)、及び、穀粒貯留部6に貯留された穀粒を機外に排出するスクリュ搬送式の穀粒排出装置7、などを備えている。
【0022】
走行機体1は、機体フレーム8の下部に取り付けられた左右のクローラ9、機体フレーム8における穀粒貯留部6の後方箇所に搭載された原動部(図示省略)、及び、機体フレーム8における穀粒貯留部6の前方箇所に搭載されたキャビン仕様の運転部11、などを有している。原動部には、ディーゼルエンジンやラジエータなどが備えられている。運転部11には、図示はしないが、ステアリングホイールや変速レバーなどの各種の操作具及び運転席などが備えられている。
【0023】
図1に示すように、刈取部2は、収穫対象の未刈り穀稈を刈取部2の作業幅内に案内する左右のデバイダ12、作業幅内に位置する未刈り穀稈の穂先側を後方に掻き込む掻込リール13、作業幅内に位置する未刈り穀稈を刈り取る刈取装置14、刈り取られた穀稈を受け止めるプラットホーム15、及び、プラットホーム15上の穀稈を左右中央側の所定位置に搬送して後方に送り出すオーガ16、などを有している。プラットホーム15の左右中央側の所定位置には、刈り取られた穀稈を穀稈搬送部3に受け渡す開口(図示省略)が形成されている。
【0024】
穀稈搬送部3は、刈取部2の後端から脱穀選別部4の前上部にわたるフィーダハウス17、及び、フィーダハウス17で覆われたスラットコンベヤ(図示省略)、などを有している。そして、スラットコンベヤが、オーガ16にて送り出された穀稈を、フィーダハウス17の底板に沿って後上方に掻き上げ搬送した後、脱穀選別部4の扱室(図示省略)に投入するように構成されている。穀稈搬送部3の搬送終端部位は、スラットコンベヤを駆動する駆動軸18を介して脱穀選別部4に連結されている。これにより、穀稈搬送部3は、刈取部2とともに駆動軸18を支点にした昇降操作が許容されている。
【0025】
図1に示すように、脱穀選別部4は、扱室に投入された穀稈に脱穀処理を施しながら穀稈を後方に搬送する扱胴20、脱穀処理で得られた穀粒やわら屑などが混在した選別対象物を漏下させる受網21、漏下した選別対象物に篩い選別処理を施す揺動選別装置22、選別対象物に選別風を供給してわら屑などを風力選別する主選別ファン23と2つの副選別ファン(図示省略)、選別された単粒化穀粒を一番物として脱穀選別部4の右端部に搬送する搬送部(以下、スクリュー搬送式一番コンベヤ24と記載する)、スクリュー搬送式一番コンベヤ24で右端部に搬送された穀粒を上方に搬送して穀粒貯留部6に供給する穀粒搬送装置としてのバケット式コンベヤ30、選別された枝梗付着粒や二又粒などを二番物として脱穀選別部4の左端部に搬送するスクリュー搬送式の二番コンベヤ(図示省略)、及び、左端部に搬送された二番物を前上方に搬送して脱穀選別部4の扱室に還元するスクリュー搬送式の二番還元コンベヤ19、などを有している。これにより、単粒化した穀粒を一番物として穀粒貯留部6に貯留することができる。又、選別後の枝梗付着粒や二又粒などの二番物に脱穀・選別処理を施すことができる。
【0026】
スクリュー搬送式一番コンベヤ24は、
図2、
図4に示すように、脱穀選別部4の下部において左右方向に延伸する樋状の一番樋25(
図1参照)と、一番樋25内に左右方向に軸線を向けた状態で配置される底スクリュー26と、底スクリュー26の搬送終端部に設けられて穀粒をバケット式コンベヤ30のバケット50に向けて投げ出す羽根部材27と、を備える。一番樋25は、
図1に示すように、揺動選別装置22から落下した一番物としての単粒化された穀粒を収容する。底スクリュー26は、一番樋25内の穀粒を左右方向に沿ってバケット式コンベヤ30に搬送する。
羽根部材27は、
図4、
図7に示すように、底スクリュー26のスクリュー軸26Aの搬送終端部で、且つ、円周方向に180度位相を異にする二箇所に設けられている。詳しくは、スクリュー軸26Aの搬送終端部の円周方向の二箇所の各々に、接線方向に沿うブラケット28が設けられ、各ブラケット28に、羽根部材27がボルト29A・ナット29Bで固定連結されている。
図4、
図5に示すように、羽根部材27から投げ出された穀粒がバケット移動経路31の穀粒受取領域(脱穀処理物受取領域)31Cに到達するとき、一つのバケット50が穀粒受取領域31Cに位置するように、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動とを連係する連係部60が設けられている。この連係部60には、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整する連係調整部70が設けられている。
【0027】
次に、バケット式コンベヤ30について詳述する。
バケット式コンベヤ30は、
図2、
図3に示すように、脱穀選別部4と穀粒貯留部6との間に配置され、且つ、上下方向に直上に延伸する筒状に形成した揚穀筒32と、揚穀筒32の上端部から穀粒貯留部6に向けた穀粒投入流路33を形成する投入流路形成体34と、を備える。揚穀筒32の下端部は、一番樋25の搬送終端部に連通連結されている。
また、
図3に示すように、揚穀筒32の内部と投入流路形成体34の内部の一部に亘るバケット設置領域には、バケット式コンベヤ30の主要部が配設されている。投入流路形成体34は、揚穀筒32の上端部と穀粒貯留部6の一側部(本実施形態では左側部)の天井部との間に跨架状に載架されている。この投入流路形成体34内に形成される逆Uの字状の穀粒投入流路33を介して、揚穀筒32内と穀粒貯留部6内とが連通形成されている。
【0028】
バケット式コンベヤ30の主要部は、
図3に示すように、投入流路形成体34内の一側部(本実施形態では後部)に配置される上部スプロケット35(上部回転体の一例)と、揚穀筒32内の下端部に配置される下部スプロケット36(下部回転体の一例)と、両スプロケット35,36に巻きかけられて駆動されるコンベヤチェーン37(無端回転帯の一例)と、コンベヤチェーン37に取り付けられる移動前方側に開口する複数のバケット50と、を有する。
上部スプロケット35は、
図2、
図3、
図9に示すように、投入流路形成体34に左右方向に沿って架設された上部スプロケット支軸38に取り付けられている。下部スプロケット36は、
図3、
図6、
図7に示すように、揚穀筒32の下部に左右方向に沿って架設された下部スプロケット支軸39に取り付けられている。下部スプロケット支軸39は、底スクリュー26のスクリュー軸26Aから動力を受けて駆動される。
【0029】
図3に示すように、バケット式コンベヤ30のバケット移動経路31のうち、バケット50が下部スプロケット36側から上部スプロケット35側に移動する移動経路部が揚送経路部31Aとなり、バケット50が上部スプロケット35側から下部スプロケット36側に移動する移動経路部が戻り経路部31Bとなる。コンベヤチェーン37には、
図5、
図7、
図8に示すように、多数の移動ガイド輪40が所定ピッチで枢着され、コンベヤチェーン37の回動内側領域には、揚送経路部31Aでの移動時にコンベヤチェーン37の移動ガイド輪40が転動状態で接触する移動ガイド部材41が設けられている。
【0030】
底スクリュー26によって搬送された穀粒は、
図3、
図7に示すように、底スクリュー26の搬送終端部に設けられた羽根部材27によってバケット移動経路31の穀粒受取領域31Cに投げ出される。投げ出された穀粒は一つのバケット50に受止められて上方に搬送される。このとき、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動とを連係する連係部60により、羽根部材27から投げ出された穀粒がバケット移動経路31の穀粒受取領域31Cに到達するときには、一つのバケット50が穀粒受取領域31Cに位置するので、底スクリュー26で搬送されてきた穀粒をバケット50に効率良く受け継ぎ搬送することができる。
さらに、揚穀筒32の下端部内に穀粒が滞留している場合には、穀粒受取領域31Cから揚送経路部31Aの下端部に反転回動するバケット50は、揚穀筒32の下端部内に滞留する穀粒を掬い取りながら移動する。
【0031】
上部スプロケット35の上端部(頂部)に移動したバケット50の位置は、
図3、
図9に示すように、穀粒投入位置に設定されている。この穀粒投入位置では、揚送経路部31Aを移動してきたバケット50が上部スプロケット35に沿って戻り経路部31B側に反転回動する。この反転回動時に、バケット50に生起される遠心力によって、バケット50内に収納されている穀粒は、投入流路形成体34内の穀粒投入流路33の延伸方向に向けて(本実施形態では前部に向けて)投入される。穀粒投入流路33内に投入された穀粒は、穀粒貯留部6内で回転しているレベリングディスク42上に落下する。回転しているレベリングディスク42上に落下した穀粒は回転半径方向に弾き飛ばされて、穀粒貯留部6内に略均一に分散される。
【0032】
次に、バケット式コンベヤ30のバケット50について詳述する。
バケット50は、
図7~
図10に示すように、穀粒をバケット50の内部に案内するように傾斜する第1の板部51及び第2の板部52を備える。第1の板部51は、バケット50の周壁部54の一部をもって構成されている。第2の板部52は、第1の板部51よりも移動前方側に所定間隔H1(
図8、
図11参照)を隔てて設けられる。揚送経路部31Aでは、第2の板部52は第1の板部51の上方に位置し、バケット50内に収納された穀粒を受け止める。
【0033】
バケット50は、
図8、
図10に示すように、底壁部53とそれに連続する周壁部54とを備え、移動前方側に矩形状に開口する。バケット50の周壁部54は、コンベヤチェーン37のチェーンリンク37Aにボルト連結される基端壁部54Aと、コンベヤチェーン37から離間した位置で基端壁部54Aに対向する先端壁部54Bと、相対向する一対の側壁部54Dと、を備える。周壁部54の先端壁部54Bは、バケット開口端54bほどコンベヤチェーン37から離間する傾斜姿勢に構成され、この傾斜姿勢の先端壁部54Bをもって第1の板部51が構成されている。
一対の側壁部54Dのバケット開口端54dは、
図8、
図10に示すように、基端壁部54Aのバケット開口端54aと先端壁部54Bのバケット開口端54bとを結ぶ線分よりも移動前方側に略三角形状に延長されている。各側壁部54Dの延長壁部分54Daの上端辺54daは水平又は略水平に形成され、各側壁部54Dの延長壁部分54Daの先端辺54dbは、上端辺54daに対して垂直又は略垂直に形成されている。各側壁部54Dの延長壁部分54Daの先端辺54dbは、先端壁部54Bのバケット開口端54bよりも基端壁部54A側に若干後退した位置に形成されている。
第2の板部52は、一対の側壁部54Dの延長壁部分54Daに亘って設けられ、バケット50の先端壁部54Bと平行又は略平行な傾斜姿勢に構成されている。
【0034】
そして、
図11に示すように、バケット50に収納された穀粒は、コンベヤチェーン37から離間する先端側においては、第1の板部51を構成する先端壁部54Bと、これよりも移動前方側に所定間隔H1を隔てて設けられている第2の板部52とで受け止められる。そのため、バケット50の穀粒の最大収納量は、先端壁部54Bのバケット開口端54bを基準にした安息角と、第2の板部52の移動前方側端縁(揚送経路部31Aでは上端縁になる)を基準にした安息角と、によって決定される。これにより、第2の板部52で受け止められる穀粒は、バケット50の収納空間における移動前方側空間(揚送経路部31Aでは上部空間)を活用して収納される。しかも、安息角をもって収納されているバケット50内の穀粒の上層側は、先端壁部54Bから所定間隔H1を隔てて配置された第2の板部52で受け止められているので、振動等による先端壁部54Bのバケット開口端54bからこぼれ落ちる穀粒も減少することができる。これにより、バケット50の搬送能力を大きく向上させることができる。
【0035】
また、
図10に示すように、バケット50の一対の側壁部54Dのバケット開口端54dを移動前方側に延長することにより、バケット50内に収納された穀粒が一対の側壁部54Dから側方にこぼれ落ちることを抑制することができる。しかも、この一対の側壁部54Dの延長壁部分54Daを利用して、第2の板部52を、バケット50の先端壁部54Bから移動前方側に所定間隔H1を隔てた位置に容易に取り付けることができる。
【0036】
さらに、
図11に示すように、バケット50の先端壁部54Bと第2の板部52は、互いに平行又は略平行な傾斜姿勢にあるため、上部スプロケット35の上端部の穀粒投入位置において、バケット50内の穀粒をスムーズに排出することができる。
【0037】
図8、
図11に示すように、バケット50の第2の板部52とそれの移動前方側に隣接する他のバケット50の先端壁部54Bとの隣接間隔H2は、バケット50における第2の板部52と先端壁部54Bとの所定間隔H1よりも小に構成されている。つまり、バケット50における先端壁部54Bと第2の板部52との間隔を、バケット50内の穀粒をスムーズに排出することのできる所定間隔H1に構成する。他方、バケット50の第2の板部52とそれの移動前方側に隣接する他のバケット50の先端壁部54Bとの隣接間隔H2は、所定間隔H1よりも小に構成することにより、バケット50の取付けピッチを小さくすることができる。本実施形態では、
図8に示すように、移動前方側のバケット50の底壁部53が、移動後方側のバケット50の周壁部54内に入り込み配置される取付けピッチに構成されている。これにより、コンベヤチェーン37に取り付けられるバケット数の増加によって脱穀処理物の搬送能力を高めることができる。
【0038】
次に、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動とを連係する連係部60について説明する。
図2、
図4~
図6に示すように、揚穀筒32の側板32Aの下部に取り付けられ伝動ケース61の伝動ケース本体61Aには、底スクリュー26のスクリュー軸26Aの終端側軸部26aを回転自在に軸支する第1軸受け部62と、下部スプロケット支軸39の一端部39aを回転自在に軸支する第2軸受け部63と、が備えられている。伝動ケース61内において、スクリュー軸26Aの終端側軸部26aには駆動スプロケット64が取り付けられ、下部スプロケット支軸39の一端部39aには受動スプロケット65が取り付けられている。駆動スプロケット64と受動スプロケット65とに亘って伝動チェーン66が巻回されている。
伝動チェーン66が巻回された状態では、一つの羽根部材27から投げ出された穀粒がバケット移動経路31の穀粒受取領域(脱穀処理物受取領域)31Cに到達するとき、一つのバケット50が穀粒受取領域31Cに位置するように、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動とが連係されている。これにより、底スクリュー26で搬送されてきた穀粒をバケット50に効率良く受け継ぎ搬送することができる。
尚、
図2、
図4~
図6においては、伝動ケース61の伝動カバーを省略した状態で表示している。
【0039】
バケット移動経路31の穀粒受取領域31Cは、
図3、
図7に示すように、戻り経路部31Bに沿って下方に移動してきたバケット50が下部スプロケット36に沿って反転回動する始端回動領域に設定されている。また、揚穀筒32の底壁部32Bには、
図3、
図7に示すように、羽根部材27から投げ出された穀粒をバケット移動経路31の穀粒受取領域31Cに飛翔案内する飛翔案内部67が設けられている。この飛翔案内部67は、羽根部材27の回転軌跡の下端近傍位置から穀粒受取領域31Cでのバケット50の移動先端軌跡の近傍位置に及ぶ長さの飛翔案内傾斜面67aを有する。
【0040】
次に、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整する連係調整部70について詳述する。
図4~
図6に示すように、下部スプロケット支軸39の一端部39aには、スプロケットボス71が外嵌固定されている。このスプロケットボス71には、受動スプロケット65の中心に形成されている貫通孔65aに相対回転自在に嵌合するボス部71Aと、受動スプロケット65にボルト72で固定連結される連結フランジ71Bと、を備える。スプロケットボス71の連結フランジ71Bの円周方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)には、ボルト72が螺合されるネジ孔(図示省略)が形成されている。連結フランジ71Bのネジ孔に対応する受動スプロケット65の円周方向の複数箇所には、ボルト72が挿通されるボルト挿通孔74が形成されている。各ボルト挿通孔74は円周方向に沿う長孔に形成されている。この長孔によるスプロケットボス71と受動スプロケット65との位相調節により、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整することができる。
【0041】
そして、穀物の種類によってバケット移動経路31の穀粒受取領域(脱穀処理物受取領域)31Cが変動する場合でも、連係調整部70による羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態の調整により、羽根部材27から投げ出された穀粒が変動した穀粒受取領域31Cに到達するときには、一つのバケット50を変動した穀粒受取領域31Cに位置させることができる。
【0042】
次に、連係調整部70による連係状態の調整操作方法の一例を説明する。
先ず、スプロケットボス71の連結フランジ71Bと受動スプロケット65とを固定連結しているボルト72を緩み操作する。この状態で、底スクリュー26のスクリュー軸26Aを各ボルト挿通孔74の長孔の範囲で回転操作する。この回転操作に伴ってスプロケットボス71と受動スプロケット65との位相が調節され、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整することができる。
尚、下部スプロケット支軸39を回転操作しても、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整することができる。しかし、この場合、下部スプロケット支軸39には、コンベヤチェーン37や多数のバケット50等の荷重が加わるため、上述のように、底スクリュー26のスクリュー軸26Aを回転操作する方が少ない労力で容易に行うことができる。
【0043】
次に、バケット式コンベヤ30によって投入された穀粒を穀粒貯留部6内に略均等に分散供給するレベリングディスク42について説明する。このレベリングディスク42は、
図2、
図3、
図9に示すように、穀粒貯留部6に連通する投入流路形成体34の接続開口部80に支持されている。レベリングディスク42は、上部スプロケット35から動力を受けて縦軸芯周りで駆動回転する駆動軸81と、この駆動軸81に一体回転状態で取り付けられるディスク片82と、このディスク片82の上面に放射状に設けられる羽根片83と、を備える。
そして、駆動軸81と一体回転するディスク片82上に穀粒が落下してくると、穀粒は羽根片83によってディスク片82の回転半径方向に弾き飛ばされて、穀粒貯留部6内に穀粒が平均的に貯留される。
【0044】
〔その他の実施形態〕
上述の実施形態の連係調整部70では、スプロケットボス71と受動スプロケット65との位相を調節するように構成したが、底スクリュー26のスクリュー軸26Aと駆動スプロケット64との位相調節により、羽根部材27の駆動とバケット式コンベヤ30の駆動との連係状態を調整するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
4 脱穀部(脱穀選別部)
6 貯留部(穀粒貯留部)
24 搬送部(スクリュー搬送式一番コンベヤ)
26 底スクリュー
27 羽根部材
30 バケット式コンベヤ
31 バケット移動経路
31C 脱穀処理物受取領域(穀粒受取領域)
35 上部の回転体(上部スプロケット)
36 下部の回転体(下部スプロケット)
37 無端回転帯(コンベヤチェーン)
50 バケット
51 第1の板部
52 第2の板部
53 底壁部
54 周壁部
54A 周壁部
54B 先端壁部
54b バケット開口端
54D 側壁部
54Da 延長壁部分
54d バケット開口端
60 連係部
70 連係調整部
H1 所定間隔
H2 隣接間隔