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▶ ティーアイエルティー・バイオセラピューティクス・オーワイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】増強された養子細胞療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220801BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20220801BHJP
   C12N 15/28 20060101ALN20220801BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220801BHJP
【FI】
A61K35/17 Z ZNA
A61K35/761
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/19
A61K38/20
A61K48/00
A61P37/04
A61K39/395 T
A61K45/00
C12N15/861 Z
C12N7/01
C12N15/26
C12N15/28
C12N5/0783
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019155755
(22)【出願日】2019-08-28
(62)【分割の表示】P 2016508153の分割
【原出願日】2014-04-16
(65)【公開番号】P2020011966
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2019-09-26
(31)【優先権主張番号】20135387
(32)【優先日】2013-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515288018
【氏名又は名称】ティーアイエルティー・バイオセラピューティクス・オーワイ
【氏名又は名称原語表記】TILT Biotherapeutics Oy
【住所又は居所原語表記】Pohjoinen Hesperiankatu 37 A 22, FI-00260 Helsinki, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アクセリ・ヘムミンキ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・べへ-コスケラ
(72)【発明者】
【氏名】シリ・テーティネン
(72)【発明者】
【氏名】ビンセンツォ・セルロ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525989(JP,A)
【文献】特表2012-504959(JP,A)
【文献】特表2012-513209(JP,A)
【文献】国際公開第2012/038607(WO,A1)
【文献】特開昭62-242629(JP,A)
【文献】特表2008-510493(JP,A)
【文献】特表2005-507248(JP,A)
【文献】特表2012-516682(JP,A)
【文献】国際公開第2012/122444(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy, 2003, Vol.7, No.4, pp.526-534
【文献】J. Translational Medicine, 2012, Vol.10, Article No.169, pp.1-12
【文献】Clin. Cancer Res., 2013.03, Vol.19, No.10, pp.2734-2744
【文献】Cancer Research, 1989, Vol.49, No.21, pp.5979-5985
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00
A61K 48/00
A61K 39/00-39/44
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌の治療のための医薬の製造のための、サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターおよび養子細胞治療組成物の使用であって、
前記養子細胞治療組成物と、サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターとが、対象に別々に投与される、使用。
【請求項2】
前記養子細胞治療組成物が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、T細胞受容体改変リンパ球およびキメラ抗原受容体改変リンパ球からなる群から選択される細胞型を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記養子細胞治療組成物が、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、デルタ-ガンマT細胞、調節性T細胞および末梢血単核細胞からなる群から選択される細胞型を含む、請求項1~2の何れか1項に記載の使用。
【請求項4】
前記養子細胞治療組成物がT細胞を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記癌が、上咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎臓癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛腫瘍、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼の癌、頸部癌、腎癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポジ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃腺癌からなる群から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記対象がヒトまたは動物である、請求項1~5の何れか1項に記載の使用。
【請求項7】
養子細胞治療組成物およびサイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの対象への投与を、同時にまたは任意の順序で連続して行う、請求項1~6の何れか1項に記載の使用。
【請求項8】
養子細胞治療組成物およびサイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの連続投与の間隔が、1分から4週間の期間である、ならびに/または養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性ウイルスベクターを複数回投与する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記養子細胞治療組成物および/またはサイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの投与を、腫瘍内、動脈内、静脈内、胸膜内、膀胱内、腔内もしくは腹膜注射、または経口投与により行う、請求項1~8の何れか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記アデノウイルスベクターが、Ad5、Ad3またはAd5/3から選択される、請求項1~9の何れか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記アデノウイルスベクターが、Ad5核酸骨格およびAd3繊維ノブまたはAd5/3キメラ繊維ノブを含むAd5/3である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記アデノウイルスベクターが、2つの導入遺伝子の間に内部リボソーム侵入部位(IRES)または任意にリボソームシャント部位2Aを含む、請求項1~11の何れか1項に記載の使用。
【請求項13】
サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、1×1010~1×1014ウイルス粒子の量で投与する、請求項1~12の何れか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、同時にまたは任意の順序で連続して対象に投与する、請求項1~13の何れか1項に記載の使用。
【請求項15】
対象の腫瘍内における別個の養子細胞療法またはT細胞療法の効果を増加させるための医薬の製造のための腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの使用であって、
前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする、使用。
【請求項16】
養子細胞治療組成物、およびサイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを含む、対象における癌の治療のための医薬キットであって、
前記養子細胞治療組成物が第1の製剤に製剤化され、サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが第2の製剤に製剤化される、医薬キット。
【請求項17】
前記第1および第2の製剤が同時にまたは任意の順序で連続して対象に投与されるためのものである、請求項16に記載の医薬キット。
【請求項18】
サイトカインとしてTNFアルファおよびIL-2のみを導入遺伝子としてコードする、腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
【請求項19】
前記アデノウイルスベクターが、Ad5、Ad3またはAd5/3から選択される、請求項18に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
【請求項20】
前記アデノウイルスベクターが、Ad5核酸骨格およびAd3繊維ノブまたはAd5/3キメラ繊維ノブを含むAd5/3である、請求項19に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
【請求項21】
前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、2つの導入遺伝子の間に内部リボソーム侵入部位(IRES)または任意にリボソームシャント部位2Aを含む、請求項18~20の何れか1項に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
【請求項22】
請求項18~21の何れか1項に記載の腫瘍退縮性ベクターを含む、医薬組成物。
【請求項23】
癌の治療のための医薬の製造のための請求項18~21の何れか1項に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの使用。
【請求項24】
前記使用が、同時もしくは連続する放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法または他の抗癌薬もしくは介入の対象への適用をさらに含む、請求項1~13または23の何れか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は生命科学および医薬の分野に関する。具体的には、本発明はヒトの癌治療に関する。より具体的には、本発明は、癌のための治療的使用および治療的方法のための、単独のまたは治療組成物と併用される腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。一側面において、本発明は、養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの個別投与に関する。さらに、本発明は医薬キットおよび医薬組成物に関し、両方とも腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを利用する。
【発明の背景】
【0002】
新規療法が癌治療のために絶えず開発されている。養子細胞療法(ACT)は癌を治療するための有力な手法であるが、他の疾患、たとえば感染および移植片対宿主疾患を治療するための有力な手法でもある。養子細胞移入は、ex vivoで成長した細胞、最も一般的には免疫由来細胞の、免疫学的機能性および移植特性を移入する目的を有する宿主内への受動移入である。養子細胞移入は、養子T細胞療法において一般的であるような自己移植であってもよく、または感染もしくは移植片対宿主疾患の治療に典型的な同種異系であってもよい。臨床的に、この手法の一般的な態様は、ウイルスおよび癌に対する免疫を増強すること、または自己免疫疾患、たとえばI型糖尿病もしくは関節リウマチの状況における寛容性を促進することのいずれかのために、免疫促進または寛容原性細胞のいずれか、たとえばリンパ球の患者への移入を含む。
【0003】
癌療法に関しては、ACT手法が米国で研究している少数のグループによって1980年代に考え出され、その主要なグループの1つはNCIのSteven Rosenbergおよび共同研究者であった。自己移植腫瘍浸潤リンパ球(TIL)または遺伝学的に再誘導される末梢血単核細胞の養子移入が、進行した固形腫瘍、たとえば黒色腫を有する患者およびCD19発現血液悪性腫瘍を有する患者を治療するために使用され、成功していた。ACTにおいて、最も一般的に使用されている細胞型は、時々CD8+として分類されるT細胞であるが、他の変種には、CD4+細胞、NK細胞、デルタ-ガンマT細胞、調節性T細胞および末梢血単核細胞が含まれる。細胞は、たとえばTIL療法において改変されていなくてもよい、または遺伝子改変されていてもよい。腫瘍特異的標的に対するT細胞の遺伝子ターゲティングを達成するために、2つの一般的な手段が存在する。1つは、既知の特異性(TCR療法)および一致したヒト白血球抗原(齧歯動物における主要組織適合性遺伝子複合体として知られているHLA)型を有するT細胞受容体の移入である。もう1つは、人工分子、たとえばキメラ抗原受容体(CAR)による細胞の改変である。この手法はHLAに依存せず、ターゲティング分子に関して十分に柔軟性がある。たとえば、一本鎖抗体が使用されていてもよく、CARも共刺激ドメインを組み込んでいてもよい。しかしながら、CAR細胞の標的は標的細胞の膜上に存在することを必要とするのに対して、TCR改変は細胞内標的を利用していてもよい。
【0004】
ACT開発の最初の10年の間、TILに焦点が当てられていた。TILは腫瘍に見出されており、腫瘍が宿主内で免疫反応を誘発することを示唆している。このいわゆる腫瘍免疫原性は、腫瘍抗原によって媒介される。これらの抗原は正常細胞から腫瘍を識別し、それにより免疫刺激を提供する。
【0005】
たとえば、米国特許出願公開第2003194804(A1)号は、TILを利用することによって腫瘍細胞に対するT細胞の反応性を増強するための方法を記載している。米国特許出願公開第2003194804(A1)号において、T細胞は作用物質に曝露され、患者内に再び導入される。作用物質はT細胞における内因性NotchまたはNotchリガンドの発現または相互作用を低減または阻止できる。
【0006】
米国特許第5126132(A)号は、有効量の自己移植TILおよびサイトカインが使用される、癌を治療する方法を記載している。
【0007】
Diaz RMら(Cancer Res.2007 Mar 15;67(6):2840-8)は、水疱性口内炎ウイルス腫瘍内ウイルス療法と組み合わせて養子T細胞移入療法を使用することによる、腫瘍抗原特異的T細胞の循環レベルの増加を記載している。Diazらは、養子T細胞移入療法において、OT1細胞、すなわち人工モノクローナル細胞株を使用した。
【0008】
ACTの初期試行においてさえも、治療有益性およびさらに治癒の劇的な例が存在したが、ほとんどの患者では有益ではなく、多くの患者は重度の副作用を経験した。養子細胞療法の最初の20年の間、細胞移入自体の安全性は一般的に良好であったが、顕著な毒性およびさらに死亡率が、プレコンディショニング化学療法および放射線ならびに移入後に使用されるIL-2を含む、療法を増強するために使用される併用療法と関連した。プレコンディショニングは、宿主内の抑制細胞、たとえば調節性T細胞および骨髄由来抑制因子を殺傷するため、腫瘍微小環境を調節するため、および移植のための「空間を作る(make room)」ために使用される。IL2は、移植のアネルギーを低減させるため、およびIL2を増殖させるために移入後に使用される。
【0009】
有効性に関して、改善の余地が残っている。一般には、細胞療法の増加した特異性および十分な腫瘍殺傷能力が保証される。特に、従来技術のACTにおいて、移入細胞は腫瘍に輸送できず、たとえできたとしても、それらの細胞は多くの場合、すぐにアネルギーになり、腫瘍細胞を殺傷できない、または増殖できず、その結果細胞数の急速な減少を生じる。さらに癌は、腫瘍細胞内で、動物における主要組織適合性遺伝子複合体として知られているヒト白血球抗原(HLA)を頻繁に下方制御し、それ故、HLAがT細胞受容体に対する腫瘍エピトープの提示に必要とされるので、T細胞を殺傷できなくなる。
【0010】
本発明は養子細胞移入を利用する癌治療のための有効な手段および方法を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、非効率で安全ではなく、予測不可能な癌療法に関する上記の問題を克服するための簡単な方法および手段を提供することである。より具体的には、本発明は細胞療法のための新規方法および手段を提供する。本発明の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とする、ウイルスベクター、方法および構成によって達成される。本発明の具体的な態様は従属請求項に開示されている。
【0012】
本出願は、組換えウイルスベクターの構築、ウイルスベクターに関連する方法、ならびに腫瘍細胞株、動物モデルおよび癌患者におけるそれらの使用を記載している。
【0013】
本発明は、新規および独創的なやり方で、サイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターを癌治療のための養子細胞治療と組み合わせる考えに基づく。本発明は、驚くべき効果、すなわち養子T細胞療法における以下の改善:i)移入細胞の腫瘍への動員、ii)腫瘍における移入細胞の増殖、iii)腫瘍における移入細胞の増強した反応性(図20)に基づく。実際に、ウイルスベクターおよびサイトカインと養子細胞治療との前記組合せは、想定され得るよりも広い標的に対してより効果的な結果を提供する。サイトカイン導入遺伝子を含むウイルスベクターと養子細胞移入との前記組合せの効果は、サイトカイン導入遺伝子を含むウイルスベクターのみの効果、または養子細胞移入のみの効果と比べて相乗的である。
【0014】
さらに本発明の目的は、ヒトにおける悪性腫瘍を治療するために腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびトランスジェニック(ウイルスにより送達される導入遺伝子から産生される)インターロイキン-2(IL-2)の組合せを提供することである。本発明の上記および様々な他の目的および利点は、ヒトにおける悪性腫瘍を治療する方法であって、プレコンディショニング化学療法および/または放射線療法を用いて、または用いずに、癌の退縮または安定化を引き起こすように有効量のTILおよびIL-2を癌に罹患している患者に投与することを含む、方法によって達成される。
【0015】
本発明は、対象における癌を治療する方法であって、養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性(=正常細胞ではなく、腫瘍において複製可能)アデノウイルスベクターの対象への個別投与を含む、方法に関する。
【0016】
本発明はさらに、癌の治療に使用するための別個の養子細胞治療組成物と併用される少なくとも1種のサイトカインをコードする、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。
【0017】
本発明はさらに、対象における癌を治療するための医薬の製造における別個の養子細胞治療組成物と併用される少なくとも1種のサイトカインをコードする、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【0018】
本発明はまた、対象における養子細胞療法またはT細胞療法の効果を増加させる際に使用するための、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。
【0019】
本発明はまた、対象におけるT細胞療法の効果を増加させるための医薬の製造における、退縮性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【0020】
本発明はまた、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを必要とする対象に投与することによって対象における養子細胞療法またはT細胞療法の効果を増加させる方法に関する。
【0021】
本発明はまた、養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを含む医薬キットであって、養子細胞治療組成物が第1の製剤に製剤化され、少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが第2の製剤に製剤化される、医薬キットに関する。
【0022】
さらに本発明は、
1)5/3キメラ繊維ノブを含むアデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格、
2)E1Aの腫瘍特異的発現のためのE2F1プロモーター、
3)アデノウイルスE1のRb結合定常領域2における24bp欠失(D24)、
4)ウイルスgp19kおよび6.7kリーディングフレームの核酸配列欠失、ならびに
5)ウイルスE3プロモーター下で導入遺伝子発現の複製に関連する制御を生じる、E3領域において欠失したgp19k/6.7Kの代わりに少なくとも1種のサイトカイン導入遺伝子をコードする核酸配列であり、サイトカインは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなる群から選択される、核酸配列を含む、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。
【0023】
さらに本発明は、E3領域における欠失およびE3の欠失領域の代わりに導入遺伝子を発現するための腫瘍特異的プロモーターを含む、血清型3(Ad3)腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。
【0024】
さらに本発明は、本発明の腫瘍退縮性ベクターを含む医薬組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、対象における癌を治療する方法であって、本発明の腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを必要とする対象へ投与することを含む、方法に関する。また本発明は、癌の治療に使用するための本発明の腫瘍退縮性アデノウイルスベクターに関する。
【0026】
本発明はまた、対象における癌を治療するための医薬の製造における本発明の腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【0027】
本発明の構成の利点は、増強された治療効果および低減された副作用である。効果の増強および本発明者らの手法の抗抑制効果が、移入細胞のための「空間を作る」および腫瘍免疫抑制を低減させるために従来技術の方法で使用されるプレコンディショニング化学療法、および/または放射線療法の必要性を低減させることができるので、重度の有害事象、さらに死が阻止される。また、細胞を患者内へ移入した後、ウイルスが腫瘍内で複製している間にIL2を産生する場合、移入細胞を増殖させ維持するための、従来技術の方法で使用されるIL2の個別投与が必要とされないので、重度の有害事象、さらに死が阻止される。腫瘍における局所産生はまた、有害事象の原因である全身曝露を低減させながら、IL-2の求められている効果(移植の刺激および増殖)を増強し得る。本発明は、健常組織に対して低い毒性または低い損傷を伴う選択的治療を提供する。
【0028】
本発明はまた、以下によって、驚くべき治療効果を提供する:i)たとえば組換えサイトカインを含むウイルスベクターを腫瘍内に注射することによって腫瘍に輸送信号を提供すること。ウイルス注射の結果、この効果に関連するサイトカインの産生(病原体に関連する分子パターン認識受容体に対するウイルス結合に反応する)が生じるが、ウイルス由来の導入遺伝子としての大部分の関連サイトカインのさらなる産生によって、非常に高い効果が達成され得る。ii)危険信号を増加させることによって寛容性を低減させること。ウイルス注射自体は病原体に関連する分子パターン認識受容体に結合することによってこれを達成し得るが、効果はウイルス由来の導入遺伝子としてのサイトカインのさらなる産生によって増強され得る。iii)HLA発現を誘導すること。細胞は抗ウイルスT細胞反応を開始するためにウイルスエピトープを提示しようとするので、ウイルス感染はHLA発現を増加させる。予想外にも、これは腫瘍エピトープに対するT細胞療法を増強するために使用でき、その腫瘍エピトープは作用するためにHLAを必要とする。HLAに対するウイルスの効果はサイトカインによって部分的に媒介され、それ故、ウイルス由来の前記サイトカインの産生は、本発明の驚くべき態様において、近接する腫瘍細胞においてもHLA発現を誘導し得る。iv)免疫抑制を上昇させることによって細胞の増殖を誘導すること。免疫抑制はウイルス自体の存在(再び、病原体に関連する分子パターン認識受容体による)の両方によって媒介されるが、サイトカインの産生によって増強される(図48)。それ故この手法は、現在養子細胞療法を妨げている臨床的障害を解決できる。
【0029】
以下において、本発明を添付の図面を参照して特定の態様によって、より詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、Ad5/3キメラ腫瘍退縮性アデノウイルスによる処置がB16-OVA腫瘍において、サイトカインおよびケモカイン分泌を増加させたことを示す。インターフェロン-γはHLA(=MHC)クラスIの発現を上方制御できるので、TILによって効果的に認識され得る腫瘍細胞表現型を生成する。様々なIFN-γ誘導性ケモカイン(たとえばRANTES、MIP-1αおよびMCP-1)は免疫細胞動員に関与し、それによりTIL活性化および増殖を促進できる。また、TILの輸送はこれらのケモカインの上方制御によって増強され得る。
図2図2は、養子細胞移入を用いたまたは用いていない5/3キメラ腫瘍退縮性アデノウイルスの頻回注射後の腫瘍成長制御を示す。アデノウイルス処置単独(A)は、PBS処置と比較して、B16-OVA腫瘍成長に対してほとんど効果を有さなかった。ウイルス注射と組み合わせた500000(B)または2000000(C)腫瘍特異的OT-Iリンパ球の養子移入の結果、顕著な腫瘍成長制御が生じた。アデノウイルス単独またはPBSと組み合わせたOT-I細胞を使用した腫瘍成長に対する不十分な治療効果により、腫瘍退縮性ウイルスに関する、および単剤として使用した養子細胞移入療法に関する大きな欠点が目立ち、アデノウイルスを使用した養子細胞療法の効果を増強する本発明の目的を支持する。
図3図3は、アデノウイルス注射は腫瘍内へのT細胞輸送を誘導し、腫瘍内で養子移入T細胞の増殖を増加させることを示す。A)養子移入CD8+CFSE+細胞の量は、リンパ球輸送に起因していると考えられ、処置後1日にAd処置したマウスの腫瘍内で増加し、血液、流入領域リンパ節および脾臓内で減少する。全体のCD8+ T細胞数は実験の全体を通して、アデノウイルス処置した腫瘍において高いままであり、有害な腫瘍微小環境に対するこれらの細胞の耐性および/またはCD8+ T細胞の増加した増殖を示唆している。B)6日および14日に、OT-I細胞増殖はPBS群と比べてAD処置した腫瘍において増強し、PBS群においてより多くの割合で細胞分裂を受けている(M7に向かう)細胞が見られる。したがって、腫瘍退縮性アデノウイルスによる処置は養子移入TILの輸送および増殖を誘導する。C)CFSE陽性細胞のゲーティングを行った方法についての例。M0は分裂していない細胞を示し、M7はCFSEを検出可能な限界(7倍超)未満に希釈するのに十分に分裂された細胞を示す。
図4図4は、矢印によって示される日に腫瘍退縮性アデノウイルスで処置したヒトから得たデータを表す。腫瘍内へのウイルス注射の結果、血液中のリンパ球の減少が生じ、腫瘍へのそれらの輸送を反映している。
図5図5は、ヒト癌患者の腫瘍内への腫瘍退縮性アデノウイルス注射により、CD8+ T細胞の流入が引き起こされたデータを表す。腫瘍退縮性アデノウイルスの腫瘍内注射の結果、処置の前後に針生検から評価した腫瘍においてCD8+ T細胞の蓄積が生じた。
図6図6は、T細胞の養子移入と組み合わせたアデノウイルス注射の結果を示す。皮下B16-Ova腫瘍を有するマウスに5×105OT1リンパ球を腹腔内に養子移入し、腫瘍は未処置のままであったか、またはPBSもしくはAd5/3を注射した(例の材料および方法を参照のこと)。ヒト黒色腫と同様の免疫抑制B16-Ovaモデルにおいて、抗Ova OT1細胞の養子移入を少しだけ行う。ウイルス注射を加えることにより、有効性が劇的に増加する(a)。CD8+ T細胞が増加する(b)。これらの細胞は抗Ova T細胞ではない(c)。
図7図7は、養子移入およびウイルス注射に起因する「天然」抗腫瘍T細胞の数の劇的な増加を表す。皮下B16-Ova腫瘍を有するマウスに5×105OT1リンパ球を腹腔内に養子移入し、腫瘍は未処置のままであったか、またはPBSもしくはAd5/3を注射した(例の材料および方法を参照のこと)。養子移入+ウイルス注射は、腫瘍および局所リンパ節における「他の」T細胞を増殖させるための触媒として作用する。(a)腫瘍部位におけるTrp2 CD8+細胞。(b)腫瘍部位における抗gp100 CD8+細胞。
図8図8は、14日目の腫瘍内の活性化CD8+細胞および腫瘍内のTIM-3発現を示す。皮下B16-Ova腫瘍を有するマウスに5×105OT1リンパ球を腹腔内に養子移入し、腫瘍は未処置のままであった、またはPBSもしくはAd5/3を注射した(例の材料および方法を参照のこと)。免疫療法における免疫抑制:免疫抑制が除去されない場合、T細胞数の増加は十分ではない。ウイルス処置した腫瘍において多くの活性化T細胞が存在し、免疫抑制は少ししかない。
図9図9は、抗腫瘍T細胞の増加および免疫抑制の減少の結果、腫瘍抗原に対する全身性免疫が生じることを示す。皮下B16-OVa腫瘍を有するマウスに、5×105OT1(a)または2×106(b)OT1リンパ球を腹腔内に養子移入し、腫瘍は未処置のままであった、またはPBSもしくはAd5/3を注射した(例の材料および方法を参照のこと)。抗原提示はウイルスにより増強される:T細胞は良好に作用する。いくつかの腫瘍エピトープに対する全身性免疫が生じる。(a)14日目の腫瘍内の樹状細胞(CD11c+ CD80+ CD86+)での共刺激分子の発現。(b)14日目の脾細胞でのIFNg ELISPOT。
図10図10は、ウイルス注射後のOTI T細胞の分布を示す:有効性を説明するのに十分ではないが、輸送する傾向がある。(a)図、(b)動物モデル、(c)腫瘍。
図11図11は、免疫抑制の上昇が細胞の増殖を誘導し得ることを表す。アデノウイルス処置した腫瘍は多くの腫瘍特異的リンパ球(OT-I細胞)を含有した。PBS処置した腫瘍において、OTI細胞はM5期において停止したが(左側の矢印)、Ad群においてそれらは増殖し続けた(右側の矢印)。
図12図12は、OT1細胞と組み合わせた組換えサイトカイン(ウイルスなし)の有効性を示す。
図13図13は、養子T細胞移入と組み合わせたサイトカイン武装(armed)アデノウイルスの抗腫瘍効果を示す。皮下B16-OVA黒色腫を保有するC57BL/6マウスを、1日目に1.5×10e6CD8+濃縮OT-1 T細胞により腹腔内(interaperitoneally)で処置した。サイトカインをコードするアデノウイルスまたは対照ウイルスAd5-Luc1を、1日目およびその後1週間に1回、腫瘍内に注射した(1つの腫瘍当たり1×10e9ウイルス粒子)。腫瘍体積を以前に記載されているように計算し(Bramanteら Serotype chimeric oncolytic adenovirus coding for GM-CSF for treatment of sarcoma in rodents and humans.Int J Cancer.2013 Dec 24)、腫瘍サイズは1日目を100%と設定してそれぞれパーセンテージとして示す。リスクの数の図:所与の時点における各実験群に存在している動物の数。腫瘍が最大の許容可能なサイズを超えた場合、または疼痛もしくは苦痛の任意の兆候が明らかになった場合、動物を安楽死させた。
図14図14は、腫瘍サイズに対する異なるウイルスの効果を示す。
図15図15は、腫瘍サイズを低減させることに対する、OT1 T細胞と組み合わせたmTNFa導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの優れた結果を示す。
図16図16は、腫瘍サイズを低減させることに対する、OT1 T細胞と組み合わせたmIL3導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの優れた結果を示す。
図17図17は、C5aまたはTNF-α発現腫瘍退縮性アデノウイルスの概略図を示す。導入遺伝子が挿入される部位を含む、ウイルスのいくつかの重要な特徴が示される。
図18図18は、A549細胞における腫瘍退縮性アデノウイルスによるTNF-αの発現を示す。細胞を10VP/細胞に感染させ、示した時点において培地を回収し、ELISAを使用して培地中のTNF-αの量を評価した。ウイルスは感染細胞からのTNF-αの発現および分泌を誘導する。
図19図19は、腫瘍退縮性TNF-アルファ武装腫瘍退縮性アデノウイルスによって産生されたTNF-アルファの生物活性を示す。このアッセイにおいて、感染細胞由来の上清を使用して、TNF感受性WEHI-13VAR細胞をチャレンジし、腫瘍退縮性アデノウイルスが機能的サイトカインの発現を駆動することを裏付けた。
図20図20は、腫瘍退縮性アデノウイルスによるヒト癌細胞の用量依存的殺傷を示す。予想されるように、TNF-アルファ非感受性腫瘍退縮性許容ヒトA549またはPC3腫瘍細胞において、腫瘍退縮性のみで細胞を殺傷するのに十分であったので、非武装(unarmed)対照ウイルスとTNF-アルファ発現腫瘍退縮性アデノウイルスとの間で相違は観察されなかった。しかしながら、ヒトTNF-アルファは、ヒトアデノウイルスによる腫瘍退縮性に許容可能ではないマウス細胞において部分的に活性であるために、TNF-アルファは、非武装ウイルスと比較してB16-OVAマウス細胞に見られるウイルスの、より強い細胞毒性の原因となった。複製欠損ウイルスはごくわずかな細胞殺傷能力を示す。
図21図21は、TNF-アルファ発現ウイルスとの放射線療法の相乗作用を示す。A)この実験における処置スケジュールの概略図。放射線(XRT)は2×2Gyの用量での全身照射であり、ウイルスは1×108VP/腫瘍であり、その各々のヌードマウスは2つのA549異種移植片を有した。B)TNF-アルファウイルスは非武装親ウイルスより大きな抗腫瘍効果を保有する。複製欠損(RD)ウイルスは培地中でA549細胞を殺傷しなかったので(図20)、in vivoでRDウイルスにより与えられる抗腫瘍効果は、ウイルス注射によって誘発されるサイトカイン、NK細胞およびマクロファージを含む、先天性免疫反応に起因する可能性がある。C)TNF-アルファ発現ウイルスは、臨床的に関連する用量の外照射と組み合わせた場合、より大きな抗腫瘍効果を引き起こし、サイトカイン武装ウイルスの臨床的翻訳可能性を支持する。重要なことに、これらおよび以前の実験は、TNF-アルファ発現腫瘍退縮性アデノウイルスが複製でき細胞を殺傷できることを示し、TNF-アルファがアデノウイルスに対して抗ウイルス効果を与えないことの根拠となる。
図22図22は、B16-OVA腫瘍に対するhTNF-アルファをコードするアデノウイルスの抗腫瘍効果を示す。この実験はC5aウイルスを用いた図26に示したものと類似しており、TNF-アルファ発現が非武装ウイルスと比較してより大きな治療有益性を与えることを実証する。
図23図23は、サイトカイン武装ウイルス(II)で処置した腫瘍内の腫瘍特異性CD8+ T細胞の増強された誘導/増殖を示す。図20に示した実験における腫瘍は、実験11と同様のフローサイトメトリー分析のために切除し、処理した。OVA特異的CD8+ T細胞のより大きな誘導/数を、非武装対照ウイルスと比較してTNFをコードするウイルスで処置した腫瘍において検出し、ウイルス誘導性炎症と一緒に腫瘍退縮性アデノウイルスによって発現された、合理的に選択されたサイトカインが特有の腫瘍環境を生じることをC5aデータと一緒に示唆し、これにより、図2B、Cに対する推測(inferral)および比較によって、養子移入T細胞でもある腫瘍特異的T細胞の増殖および活性化を強く支持する。
図24図24は、A549細胞におけるC5aの発現を示す。細胞を10VP/細胞に感染させ、示した時点において培地を回収し、ELISAを使用して培地中のC5aの量を評価した。2回の個々の実験の結果を示す。
図25図25は、in vitro走化性アッセイの結果を示す。試験上清中のケモカインによって引きつけられる、下側チャンバ内の半透過性膜を介して通過するTHP1ヒト単球の量を製造業者の指示書(Millipore QCMキット)に従って定量化した。C5a発現ウイルスは、感染細胞から対照ウイルスより強い走化性因子を引き起こす。結果は、非武装ウイルスではなくサイトカイン武装ウイルスを使用することを支持する根拠となっている。
図26図26は、in vivoでのAdD24-C5aの抗腫瘍効果を示す。0日目、2日目および4日目に、樹立した皮下腫瘍に1×109VPの各ウイルスまたは50ulのPBSを注射し、腫瘍体積をカリパスによって測定した。C5a発現ウイルスは対照ウイルスと比較して優れた腫瘍制御を提供する。アデノウイルスはマウス細胞において複製しない、またはマウス細胞を殺傷しないので、すなわちアデノウイルスはこのモデルにおいて非細胞溶解性であるので(Young AMら、Mol Ther.2012 Sep;20(9):1676-88、PMID:22735379)、これらの結果は免疫学的抗腫瘍効果を増強するためのサイトカイン武装ウイルスの強力な能力を強調し、養子細胞療法の効果を増強するためにサイトカイン武装ウイルスを使用する概念を強く支持する。
図27図27は、サイトカイン武装ウイルス(I)で処置した腫瘍内の腫瘍特異的CD8+ T細胞の増強された誘導/増殖を示す。図26に示した実験における腫瘍を、フローサイトメトリー分析のために切除し、処理した。単一細胞の懸濁液をCD8に対する抗体および抗ova TCRに対する五量体で染色した。非細胞溶解性アデノウイルスによるC5a発現は、対照ウイルス、非武装アデノウイルスまたはC5aアンタゴニストを発現するウイルスと比較して腫瘍内でより多くのOVA特異的CD8 T細胞の数を誘導し、腫瘍内の養子移入T細胞の数を増加させるためにサイトカイン武装ウイルスの使用を支持する。実験13も参照のこと。
図28図28は、適応(adaptive)T細胞反応の概略図を示す。
図29図29は、適応的(adaptively)に移入されたT細胞が既存のT細胞のための触媒(「スパーク」)として作用することを示す。
図30図30は、適応(adaptive)「スパーク」の結果、「天然」抗腫瘍T細胞が増加することを示す。
図31図31は、養子細胞移入の方法を示す。
図32図32は、本発明のTILT技術を用いて、毒性プレコンディショニング(化学療法+放射線)およびポストコンディショニング(全身性IL2)が回避できることを示す。(TILT技術の機構については図48を参照のこと。)
図33図33は、単一のサイトカインを発現する新規ウイルス構築物の概略図を示す。ウイルス骨格は繊維ノブとは別のヒトアデノウイルス血清型5であり、この繊維ノブは血清型3由来である。単一導入遺伝子と二重導入遺伝子の両方はウイルスE3プロモーターの転写制御下にある。両方の導入遺伝子はgp19kおよび6.7kを欠失しているE3領域内に配置される。E1Aタンパク質は定常領域2において24アミノ酸(「D24」)を欠失しており、Rb結合に欠陥を生じさせる。E1A発現はE2Fプロモーターの調節下にある。いくつかのウイルス遺伝子領域が参照のために示される。
図34図34は、2つのサイトカインを発現する新規ウイルス構築物の概略図を示す。1つの型において、「リボソームシャント部位」/「リボソームスキッピング部位」/「cis作用ヒドロラーゼエレメント」(CHYSEL)が各サイトカインの間にインフレーム融合物として配置される。サイトカイン挿入物は両方のサイトカイン(sytokines)を産生するために共翻訳的に切断される単一ポリタンパク質として合成され、その結果、前者のサイトカインの3’末端においていくつかの追加のアミノ酸の付加を生じ、後者のサイトカイン、IL2の5’末端において単一のプロリンを生じる)。別の型において、IRESエレメントは2つのサイトカインを分離し、その結果、追加のアミノ酸を有さないサイトカインの合成を生じる。
図35図35は、2Aのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
図36図36は、TILT生物学的治療の静脈内アデノウイルス送達技術を示す。上記のTILTアデノウイルスはT細胞療法を増強させるために、患者の腫瘍内に与えられる(4a、5aの印をつけた)。しかしながら、全ての腫瘍が腫瘍内経路を介して到達できるとは限らない。それ故、本発明者らは静脈内経路を介して腫瘍に到達できるAd3に基づいた送達ビヒクルを開発した(4b、5bとして印をつけた)。
図37図37は、Ad3-hTERT-E3del-CMV-CD40Lベクターの構造を示す。ウイルスベクターAd3-hTERT-E3del-CMV-CD40Lのヌクレオチド配列を配列番号30に示す。
図38図38は、Ad3-hTERT-E3del-E2F-CD40Lベクターの構造を示す。ウイルスベクターAd3-hTERT-E3del-E2F-CD40Lのヌクレオチド配列を配列番号31に示す。
図39図39は、制限酵素によるpWEA-Ad3-hTERT-CMV-CD40Lベクター切断のアガロースゲルを示す。クローニングしたウイルスベクターの正確な制限分析は、ウイルスについての正確なDNA配列を示唆する。
図40図40は、制限酵素によるpWEA-Ad3-hTERT-E2F-CD40Lベクター切断のアガロースゲルを示す。クローニングしたウイルスベクターの正確な制限分析は、ウイルスについての正確なDNA配列を示唆する。
図41図41は、in vitroでのE2F-CD40LおよびCMV-CD40Lベクターの機能性を示す。垂直軸に相対的な視覚的力価TCID50産生の対数(logarytmic)尺度(PUF/ml)。水平軸に感染後の日数(d)。これにより、ウイルスが機能的であり、少なくともいくつかの腫瘍細胞株に感染できることが示された。ウイルスの希釈物はVP力価に従って作製しなかった。進行性TCID50:新たに産生したウイルスを、それらが腫瘍退縮特性を有するかどうかを決定するために進行性TCID50を用いて最初に試験した。インキュベーションの9日後、A549細胞の全ての培養プレートにおいて感染が見え、これにより、全ての新規ウイルスが機能的であることが示された。それ以降の日の間、感染は1つの細胞当たりピペットで採取したウイルスの量に応じて拡散し続けた。細胞溶解の量および速度のわずかな相違を検出した。
図42図42は、全ての腫瘍退縮性血清型3ウイルスは、A549肺癌細胞における非複製Ad3eGFP対照ウイルスより有意に(p<0.05)良好な細胞殺傷を示したことを表す。腫瘍退縮性Ad3ウイルスの間で有意な相違を見ることはできず、全てのウイルス構築物は完全に機能的であり、E3領域欠失、挿入されたプロモーター(CMVまたはE2F)または挿入された導入遺伝子(CD40L)がin vitroで腫瘍退縮性効果に影響を及ぼさないことを示唆している。
図43図43は、全ての腫瘍退縮性血清型3ウイルスは、PC3-MM2前立腺癌細胞における非複製Ad3eGFP対照ウイルスより有意に(p<0.05)良好な細胞殺傷を示したことを表す。腫瘍退縮性Ad3ウイルスの間で有意な相違を見ることはできず、全てのウイルス構築物は完全に機能的であり、E3領域欠失、挿入されたプロモーター(CMVまたはE2F)または挿入された導入遺伝子(CD40L)がin vitroで腫瘍退縮性効果に影響を及ぼさないことを示唆している。
図44図44は、全ての腫瘍退縮性血清型3ウイルスは、SKOV3卵巣癌細胞における非複製Ad3eGFP対照ウイルスより有意に(p<0.05)良好な細胞殺傷を示したことを表す。腫瘍退縮性Ad3ウイルスの間で有意な相違を見ることはできず、全てのウイルス構築物は完全に機能的であり、E3領域欠失、挿入されたプロモーター(CMVまたはE2F)または挿入された導入遺伝子(CD40L)がin vitroで腫瘍退縮性効果に影響を及ぼさないことを示唆している。
図45図45は、in vivoでAd3に基づいたウイルス:同所性腹腔内卵巣癌モデルの抗腫瘍効果を示す。Ad3-hTERT-E3del-E2F-CD40Lは最適な抗腫瘍効果を有した。ELISAにより、CD40Lが血流中に放出していることが確認された。
図46図46は、免疫応答性マウスにおいてマウスCD40Lをコードする退縮性アデノウイルスの治療域を示す。用量5:1×1011VP/マウス;用量4:3×1010VP/マウス;用量3:1×1010VP/マウス;用量2:1×109VP/マウス;用量1:1×108VP/マウス;陽性対照(用量2腫瘍内。)用量5に関して、マウスの67%は肝臓毒性の兆候を有した。用量4は、i.v.送達後、肝臓毒性の兆候なしに良好な腫瘍導入を達成できた。
図47図47は、免疫応答性マウスにおいてマウスCD40Lをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスにより静脈内経路を介して処置したマウスにおける肝臓酵素放出を示す。任意の静脈内処置群(用量1~5)において肝臓酵素放出によって測定した場合、肝臓毒性はあまりなかった。最後のバーは腫瘍内に与えられた用量2を示す。しかしながら、用量5において、目視検査において肝臓毒性が存在した->用量4は静脈内送達についての最大耐性用量である。(偽から用量2までの用量は左から右のバーとして表す)
図48図48は、二重サイトカイン発現ウイルスによる養子細胞療法の増強の機構を示す。ウイルス感染およびウイルス粒子の生得的検知は危険信号を誘発し、この危険信号は、癌細胞でのHLA/MHCクラスI分子の上方制御、抗原提示細胞の活性化および成熟、ならびに免疫細胞動員サイトカインの分泌を含む。危険信号は腫瘍退縮性ウイルスによる腫瘍細胞死によりさらに増幅され、この退縮性ウイルスはまた腫瘍抗原を放出し、免疫系による腫瘍組織の認識を増加させる。ウイルスは2種のサイトカインを発現する:T細胞動員サイトカインは養子移入T細胞を腫瘍内に引きつけ、特定の態様のインターロイキン2においてT細胞発現サイトカインはそれらの増殖を増加させ、維持する。
図49図49は、組換えマウスサイトカインを用いた輸送実験の概略図を示す。B16-OVA保有C57BL/6メスマウスに、0日目に2,0*106CD8a+濃縮OT-Iリンパ球(四角)をi.p.(腹腔内投与)で養子移入し、研究の日に組換えマウスサイトカイン(三角)の腫瘍内注射で処置する。腫瘍成長をモニターし、電子カリパスを使用することによって週に3回(丸)記録する。マウスを2つの異なる時点(SAC1およびSAC2)で屠殺し(X)、腫瘍を採取し、OT-I qPCRおよびT細胞FACS分析を使用して試料を分析する。
図50図50は、マウスサイトカインをコードするアデノウイルスによる輸送実験の概略図を示す。B16-OVA保有C57BL/6メスマウスに、0日目に2,0*106CD8a+濃縮OT-Iリンパ球(四角)をi.p.で養子移入し、研究の日に異なるマウスサイトカインで武装したアデノウイルス(赤色の三角)により腫瘍内で処置する。腫瘍成長をモニターし、電子カリパスを使用することによって週に3回(丸)記録する。マウスを2つの異なる時点(SAC1およびSAC2)で屠殺し(X)、腫瘍を採取し、OT-I qPCRおよびT細胞FACS分析を使用して試料を分析する。
図51図51は、111In放射線標識したOT-I細胞およびSPECT/CT画像化を使用した輸送実験の概略図を示す。B16-OVA保有C57BL/6メスマウスに、6連続日で1e9VPの5/3キメラウイルス(三角)を腫瘍内注射する。第1の群のマウスは、0日目に2,0*106CD8a+濃縮、インジウムオキシン標識したOT-Iリンパ球(四角)のi.v.による養子移入を受け、他の群のマウスは7日目に受ける。OT-I細胞の腫瘍内での蓄積をSPECT/CT画像化(丸)によって定量化する。マウスを2つの異なる時点(SAC1およびSAC2)で屠殺し(X)、腫瘍を採取し、それらの最後の放射線を測定する。
【発明の詳細な説明】
【0031】
養子細胞療法
本発明の一般的手法は、癌と反応でき破壊できる免疫リンパ球の移入を使用する、癌を有する患者のための治療の開発である。単離された腫瘍浸潤リンパ球は培養液中で多くの数まで成長し、患者内へ注入される。本発明において、少なくとも1種のサイトカインをコードするアデノウイルスベクターがリンパ球の効果を増加させるために利用される。養子細胞治療組成物およびアデノウイルスベクターの個別投与に先立って、しばしば、骨髄破壊的(myeloablating)または非骨髄破壊的(non-myeloablating)プレコンディショニング化学療法および/または放射線療法が行われる。養子細胞療法処置は患者における癌を低減または排除することを意図する(図21)。
【0032】
本発明は、養子細胞治療組成物、たとえば腫瘍浸潤リンパ球、TCR改変リンパ球またはCAR改変リンパ球を用いた療法に関する。本発明は、特にT細胞療法に関するが、他の養子療法、たとえばNK細胞療法または他の細胞療法にも関する。実際に、本発明によれば、養子細胞治療組成物は、たとえばTIL療法において改変されていない細胞または遺伝子改変された細胞を含んでいてもよい。T細胞の腫瘍特異的標的への遺伝子ターゲティングを達成するための2つの一般的な手段が存在する。1つは、既知の特異性を有するT細胞受容体の移入(TCR療法)および一致したヒト白血球抗原(齧歯動物における主要組織適合複合体として知られているHLA)型を有するT細胞受容体の移入である。もう1つは、人工分子、たとえばキメラ抗原受容体(CAR)による細胞の改変である。この手法はHLAに依存せず、ターゲティング分子に関して十分に柔軟性がある。たとえば、一本鎖抗体が使用されていてもよく、CARも共刺激ドメインを組み込んでいてもよい。しかしながら、CAR細胞の標的は標的細胞の膜上に存在することを必要とするのに対して、TCR改変は細胞内標的を利用していてもよい。
【0033】
ここに使用される場合、「養子細胞治療組成物」とは、養子細胞移入に適した細胞を含む任意の組成物を指す。本発明の一態様において、養子細胞治療組成物は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR(すなわち異種T細胞受容体)改変リンパ球およびCAR(すなわちキメラ抗原受容体)改変リンパ球からなる群から選択される細胞型を含む。本発明の別の態様において、養子細胞治療組成物は、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、デルタ-ガンマT細胞、調節性T細胞および末梢血単核細胞からなる群から選択される細胞型を含む。別の態様において、TIL、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、デルタ-ガンマT細胞、調節性T細胞または末梢血単核細胞は、養子細胞治療組成物を形成する。本発明の1つの特定の態様において、養子細胞治療組成物はT細胞を含む。ここに使用される場合、「腫瘍浸潤リンパ球」またはTILとは、血流から出て腫瘍内に移動する白血球を指す。リンパ球は、B細胞、T細胞およびナチュラルキラー細胞を含む3つの群に分かれ得る。本発明の別の特定の態様において、養子細胞治療組成物は、標的特異的キメラ抗原受容体または特異的に選択されたT細胞受容体により改変されているT細胞を含む。ここに使用される場合、「T細胞」とは、CD4+ヘルパー細胞、CD8+細胞毒性T細胞およびγδT細胞を含む、CD3+細胞を指す。
【0034】
適切な細胞に加えて、本発明に使用される養子細胞治療組成物は任意の他の薬剤、たとえば薬学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、充填剤、安定剤および/もしくは増粘剤、ならびに/または対応する製品に通常見出される任意の構成成分を含んでいてもよい。組成物を製剤化するための適切な成分および適切な製造方法の選択は当業者の一般的知識に属する。
【0035】
養子細胞治療組成物は投与に適した任意の形態、たとえば固体、半固体または液体形態であってもよい。製剤は、これらに限定されないが、液剤、エマルション、懸濁剤、錠剤、ペレット剤およびカプセル剤からなる群から選択されていてもよい。組成物は特定の製剤に限定されず、代わりに組成物は任意の公知の薬学的に許容される製剤に製剤化されていてもよい。医薬組成物は当該技術分野において公知の任意の従来の方法によって製造されていてもよい。
ウイルスベクター
本発明に使用される腫瘍退縮性アデノウイルスベクターはヒトまたは動物を治療するのに適した任意のアデノウイルスベクターであってもよい。本発明の一態様において、アデノウイルスベクターはヒトウイルスのベクターであり、Ad5、Ad3およびAd5/3ベクターからなる群から選択されていてもよい。別の態様において、ベクターはAd5またはAd5/3ベクターである。
【0036】
ここに使用される場合、「腫瘍退縮性アデノウイルスベクター」とは、正常細胞に対する腫瘍細胞における選択的複製によって癌細胞に感染でき、殺傷できるアデノウイルスベクターを指す。
【0037】
ベクターは、当該技術分野において公知の任意の手段において、たとえば任意のウイルス領域を欠失、挿入、変異または改変することによって改変されていてもよい。ベクターは複製に関して腫瘍特異的になる。たとえばアデノウイルスベクターは、E1、E3および/またはE4における改変、たとえば腫瘍特異的プロモーターの挿入(たとえばE1を駆動するため)、領域(たとえば「D24」、E3/gp19K、E3/6.7kに使用されるようなE1の定常領域2)の欠失および導入遺伝子の挿入を含んでいてもよい。さらに、ベクターの繊維ノブ領域が改変されていてもよい。本発明の一態様において、アデノウイルスベクターは、Ad5核酸骨格およびAd3繊維ノブまたはAd5/3キメラ繊維ノブを含むAd5/3である。
【0038】
ここに使用される場合、「アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格」という表現はAd5のゲノムを指す。同様に、「アデノウイルス血清型3(Ad3)核酸骨格」はAd3のゲノムを指す。「Ad5/3ベクター」は、Ad5とAd3ベクターの両方の部分を有するキメラベクターを指す。本発明の特定の態様において、ベクターのカプシド改変はAd5/3キメラ現象である。ここに使用される場合、「Ad5/3キメラ繊維ノブ」は、繊維のノブ部分がAd血清型3由来であり、繊維の残りがAd血清型5由来である、キメラ現象を指す。具体的には、一態様において、構築物はAd3由来の繊維ノブを有するのに対して、ゲノムの残りはAd5由来である。(図17、33および34を参照のこと)
腫瘍特異的腫瘍退縮性アデノウイルスを生成するための1つの手法は、E1の定常領域2(CR2)に影響を与える24塩基対欠失(D24)を操作することである。野生型において、アデノウイルスCR2は、合成(S)期、すなわちDNA合成または複製期を誘導するための、細胞性Rb腫瘍抑制因子/細胞周期調節タンパク質を結合するのに関与している。pRbとE1Aとの間の相互作用はE1Aタンパク質保存領域の8アミノ酸121~127を必要とし、このE1Aタンパク質保存領域は本発明において欠失している。本発明のベクターは、Heise C.ら(2000、Nature Med 6、1134-1139)に従ってベクターのアミノ酸122~129に対応するヌクレオチドの欠失を含む。D24を有するウイルスは、G1-Sチェックポイントを克服することにおける低い能力を有し、この相互作用が必要でない細胞、たとえばRb-p16経路において欠損のある腫瘍細胞においてのみ効果的に複製することが知られており、これは全てではないが大部分のヒト腫瘍を含む。(図17、33および34を参照のこと)
たとえば腫瘍特異的プロモーターによってE1A内因性ウイルスプロモーターを置きかえることも可能である。本発明の特定の態様において、hTERTプロモーターがE1A内因性ウイルスプロモーターの代わりに利用される。
【0039】
E3領域はin vitroでのウイルス複製に必須ではないが、E3タンパク質は宿主免疫反応の調節において、すなわち先天性と特異的免疫反応の両方の阻害において、重要な役割を有する。E3におけるgp19k/6.7K欠失は、アデノウイルスE3A領域由来の965塩基対の欠失を指す。得られたアデノウイルス構築物において、gp19kと6.7K遺伝子の両方は欠失している(Kanerva Aら 2005、Gene Therapy 12、87-94)。gp19k遺伝子産物は、小胞体内の主要組織適合複合体I(ヒトにおいてHLA1として知られているMHC1)分子に結合し、隔離し、細胞毒性Tリンパ球による感染細胞の認識を阻止することが知られている。多くの腫瘍はHLA1/MHC1を欠損しているので、gp19kの欠失はウイルスの腫瘍選択性を増加させる(ウイルスは野生型ウイルスより速く正常細胞から除去されるが、腫瘍細胞内で相違は存在しない)。6.7Kタンパク質は細胞表面上で発現され、それらはTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体2を下方制御するのに関わる。(図17、33および34を参照のこと)
これらの欠失の両方は本発明者らの発明に関して驚くべき利点を提供する。本発明者らは養子移入T細胞に対する腫瘍エピトープの提示のためのHLA/MHCの発現を回復しようと試みているので、gp19kタンパク質の発現は非生産的であり、実際にHLA/MHCの上方制御はgp19kの欠失を必要とする。6.7kに関して、本発明者らの発明の態様はウイルス由来のTNFアルファの産生であり、その抗腫瘍活性の1つは、(形質導入と非形質導入バイスタンダー細胞の両方で)直接的な抗腫瘍アポトーシス促進効果があるので、6.7kの存在は非生産的である。
【0040】
本発明の一態様において、サイトカイン導入遺伝子または複数の導入遺伝子はE3プロモーターの下でgp19k/6.7k欠失E3領域内に配置される。これは、導入遺伝子発現を、ウイルスの複製、およびその後のE3プロモーターの活性化を可能にする腫瘍細胞に制限する。E3プロモーターは、当該技術分野において知られている任意の外因性(たとえばCMVまたはE2Fプロモーター)または内因性プロモーター、具体的には内因性E3プロモーターであってもよい。E3プロモーターは複製によって主に活性化されるが、E1が発現される場合、いくつかの発現が生じる。D24型ウイルスの選択性はE1発現後(E1がRbに結合できない場合)に生じるので、これらのウイルスは形質導入正常細胞においてもE1を発現する。それ故、E3プロモーター媒介性導入遺伝子発現を腫瘍細胞に制限するためにE1発現も調節することが非常に重要である。
【0041】
本発明の別の態様において、E3gp19k/6.7kはベクター内に維持されるが、1つまたは多くの他のE3領域は欠失している(たとえばE3 9-kDa、E3 10.2kDa、E3 15.2kDaおよび/またはE3 15.3kDa)。
【0042】
本発明の特定の態様において、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは、5/3キメラ繊維ノブを含み、以下:E1Aの腫瘍特異的発現のためのE2F1プロモーター、アデノウイルスE1のRb結合定常領域2における24bp欠失(D24)、欠失領域内への導入遺伝子挿入を伴う、ウイルスgp19kおよび6.7kリーディングフレームの核酸配列欠失、ならびにウイルスE3プロモーターの下で導入遺伝子発現の複製に関連した制御を生じる、E3領域において欠失したアデノウイルス遺伝子gp19k/6.7Kの代わりに少なくとも1種のサイトカイン導入遺伝子をコードする核酸配列を含む、アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格に基づく(図17)。本発明の一態様において、アデノウイルスベクターはヒトアデノウイルスに基づく。(図17、33および34を参照のこと)
本発明の別の特定の態様において、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターはアデノウイルス血清型3(Ad3)核酸骨格に基づき、以下:E3領域における欠失、およびE3の欠失領域の代わりに導入遺伝子(たとえばCD40L)を発現するための腫瘍特異的プロモーター(たとえばCMVまたはE2F)を含む。本発明の一態様において、アデノウイルスベクターはヒトアデノウイルスに基づく。(図37および38を参照のこと、ウイルスベクターAd3-hTERT-E3del-CMV-CD40LおよびAd3-hTERT-E3del-E2F-CD40Lの対応するヌクレオチド配列は配列番号30および31に示される)
アデノウイルス3における早期領域(E3)タンパク質の正確な機能は知られていない。一般的にアデノウイルスにおいて、それらは、欠失した場合、複製を損なうようには見えず、それらはアデノウイルスに対する抗ウイルス宿主反応に影響を与えるように見える(Woldら、1999)。ヒトアデノウイルスゲノムのE3はヒトに見出される6種(A~F)のアデノウイルスの間で最高レベルの遺伝的多様性を含有する。遺伝的内容のこの多様性は、遺伝子の種特異的アレイがコードされる、高度に保存されたE3-gp19KとE3-RIDαオープンリーディングフレーム(ORF)との間に主に位置する(Burgert and Blusch、2000)。
【0043】
ウイルス感染細胞の細胞毒性T細胞媒介性殺傷はE3-gp19Kによって調節される。これは、細胞膜へのMHCクラスIの輸送を遮断し、TAP-MHCクラスI複合体形成を阻害することによって達成される(Anderssonら、1985;Anderssonら、1987;Burgert and Kvist、2002、Bennetら、1999)。
【0044】
それ故、本発明の一側面において、重要な分子であるE3-gp19Kは、十分に安定で(stealty)、十分な時間にわたって、腫瘍退縮およびその有益な効果を可能にするウイルス複製を行うために、アデノウイルスベクター内に含まれる。また、E3-gp19Kを保持することにより、抗アデノウイルス細胞毒性T細胞の誘導が低減され、十分な抗腫瘍T細胞を生じることができる。
【0045】
本発明の一態様において、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターはアデノウイルス血清型3(Ad3)核酸骨格に基づき、以下:E1Aの腫瘍特異的発現のためのプロモーター(たとえばhTERT)、E3領域における欠失(たとえばE3 9-kDa、E3 10.2kDa、E3 15.2kDaおよびE3 15.3kDaに影響を与える欠失)、ならびにE3の欠失領域の代わりに導入遺伝子(たとえばCD40L)を発現するための腫瘍特異的プロモーター(たとえばCMVまたはE2F)を含む。本発明の一態様において、ベクターの核酸骨格は完全にアデノウイルス血清型3である。本発明の一態様において、Ad3 delE3ウイルスにおいて以下の特徴が欠失していた:E3 9k-Da、E3 10.2-kDa、E3 15.2-kDa、E3 15.3-kDa、およびさらにプロモーター(CMVまたはE2F)がそれらの場所に挿入されているCD40L。これらのウイルスは腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、Tヘルパー型1(TH1)反応を含むいくつかの免疫機構を誘発し、このTヘルパー型1(TH1)反応は細胞毒性T細胞の活性化および免疫抑制の低減を導く。
【0046】
サイトカインは、腫瘍に対するT細胞の動員を含む、様々な機構を介して作用することによって免疫反応に関与する。サイトカイン導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、任意の動物、たとえばヒト、サル、ラット、マウス、ハムスター、イヌまたはネコ由来であってもよいが、具体的には、それはヒト配列によってコードされる。導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、その効果を改善するために改変されていてもよい、または改変されていない、すなわち野生型でもよい。
【0047】
本発明の特定の態様は、少なくとも1種のサイトカインをコードするウイルスベクターを含む。本発明に使用されるサイトカインは当該技術分野において任意の公知のサイトカインから選択されていてもよい。本発明の一態様において、サイトカインは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなる群から選択される。本発明の特定の態様において、サイトカインはIL-2またはTNFアルファである。本発明の別の態様において、サイトカインまたは複数のサイトカインは、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなるケモカイン群から選択される。
【0048】
本発明のウイルスベクターは、1種、2種、3種、4種、5種またはそれ以上のサイトカインをコードしていてもよい。本発明の一態様において、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは2種以上のサイトカイン、最も具体的には2種をコードする。これらの2種のサイトカインはたとえば、これらに限定されないが、GMCSFの付加を有する、上記に挙げたものを含む任意の公知のサイトカインであってもよい。2種のサイトカインは異なるサイトカインであってもよい。本発明の一態様において、腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、GMCSF、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなるサイトカイン群から選択される任意の2種以上のサイトカインをコードする、または腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは、IL-2ならびにインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、GMCSF、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなるサイトカイン群から選択される1種のサイトカインまたは複数種のサイトカインをコードする。本発明の特定の態様において、サイトカインはIL-2およびTNFアルファである。他のサイトカインは、T細胞を引きつけ、活性化し、腫瘍免疫抑制を低減することによって機能するのに対して、IL-2はT細胞移植片の増殖を誘導する。それ故、IL-2は、T細胞療法において典型的に行われるような全身注射の代わりに、それを必要とする腫瘍において局所的に産生され、このT細胞療法は副作用を引き起こし得るので、従来技術の療法の主要な問題(すなわち全身性IL-2の毒性)がこの態様によって阻止され得る。
【0049】
導入遺伝子の作用と一緒に、腫瘍退縮性ウイルスの複製およびウイルスDNAによる病原体に関連した分子パターン認識受容体の活性化によって提供される危険信号は、腫瘍免疫抑制をプレコンディショニング療法を省略できるような程度まで低減させることができる。その結果として、従来技術における主要な問題であるプレコンディショニング化学療法、および放射線に起因する毒性が回避され得る。
【0050】
本発明の一態様において、ウイルスベクターは、2つの導入遺伝子の間に内部リボソーム侵入部位(IRES)または任意にリボソームシャント部位2Aを含む。それ故、IRESまたはリボソームシャント部位2Aは、任意のサイトカイン、たとえばIL-2と上記に挙げたサイトカイン群から選択される任意のサイトカインとの間にあってもよい。ここに使用される場合、「IRES」は、タンパク質合成においてメッセンジャーRNA配列の中間における翻訳の開始を可能にするヌクレオチド配列を指す。IRESは任意のウイルス由来であってもよいが、本発明の一態様において、IRESは脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来である。ここに使用される場合、「リボソームシャント部位2A」は、リボソームが開始コドンに到達するように5’非翻訳領域の部分を物理的に迂回する翻訳開始部位を指す。IRESとA2の両方は、ウイルスに1つのプロモーター(E3プロモーター)由来の2つの導入遺伝子を産生させることができる。
【0051】
本発明に使用されていてもよいウイルスゲノムの一般的な設計の概略図は、図17、33、34、37および38に示される。導入遺伝子C5a、hCD40L、hIFNa2、hIFNb1、hIFNg1、hIL2またはTNFアルファを含むウイルスベクターのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1~7(Ad5/3-E2F-D24-導入遺伝子)に示される。CD40Lを含むウイルスベクターのヌクレオチド配列はまた、配列番号30および31(Ad3-hTERT-E3del-CMV-CD40LおよびAd3-hTERT-E3del-E2F-CD40L)に示される。さらに、一方がIL-2であり、他方がC5a、CD40L、IFNa2、IFNb、IFNg、GMCSFまたはTNFアルファである、2つの導入遺伝子を含むウイルスベクターのヌクレオチド配列は、配列番号8~21(配列番号8 C5a-2A-IL2、配列番号9 IFNa-2A-IL2、配列番号10 TNFアルファ-2A-IL2、配列番号11 CD40L-2A-IL2、配列番号12 IFNb-2A-IL2、配列番号13 GMCSF-2A-IL2、配列番号14 IFNg-2A-IL2、配列番号15 C5a-IRES-IL2、配列番号16 IFNa-IRES-IL2、配列番号17 TNFアルファ-IRES-IL2、配列番号18 CD40L-IRES-IL2、配列番号19 IFNb-IRES-IL2、配列番号20 GMCSF-IRES-IL2、配列番号21 IFNg-IRES-IL2)(Ad5/3-E2F-D24-導入遺伝子-IRES/2A-導入遺伝子)に示される。
【0052】
まとめると、少なくとも1種のサイトカイン導入遺伝子を含むウイルスベクターを利用する本発明の重要な利点は、i)サイトカインおよびウイルス自体がT細胞および他の免疫細胞を腫瘍に動員する危険信号を引き起こし、ii)サイトカインが腫瘍と局所リンパ器官の両方においてT細胞増殖を誘導し、iii)サイトカインおよびウイルス自体が腫瘍において増殖するためにT細胞(養子T細胞移植片と天然の先天性抗腫瘍T細胞の両方)を誘導でき、iv)サイトカインおよび/またはウイルスが癌細胞上の抗原提示分子(HLA)の上方制御を誘導し、それらをT細胞による認識および殺傷に対して感受性にし、v)サイトカインおよびウイルス複製が免疫抑制および細胞アネルギーを低減させることによって腫瘍微小環境を有利に変えることである。
【0053】
本発明に利用されるウイルスベクターはまた、上記以外の他の改変を含んでいてもよい。任意のさらなる構成成分または改変が任意に使用されていてもよいが、本発明に必須ではない。
【0054】
外因性エレメントの挿入は標的細胞においてベクターの効果を増強できる。外因性組織または腫瘍特異的プロモーターの使用は組換えベクターにおいて一般的であり、それらもまた本発明に利用されていてもよい。
【0055】
まとめると、本発明は、腫瘍退縮性ウイルスの複製がT細胞を動員でき、腫瘍において危険信号を誘導でき、免疫抑制および細胞アネルギーを低減することを明らかにする。これらの効果は、免疫を誘導するための進化的に保存された機構である、病原体に関連した分子パターン認識受容体を介して媒介され、寛容性に依存しない。本発明はまた、正常細胞ではなく腫瘍内で複製できる腫瘍退縮性プラットフォームの付与される利点が腫瘍における自己増幅であることを明らかにする。加えて、腫瘍退縮性効果自体がヒトにおける全抗腫瘍効果に付与されてもよい。

本発明の組換えベクターは腫瘍細胞内で複製可能である。本発明の一態様において、ベクターは細胞内で複製可能であり、その細胞はRb経路、具体的にはRb-p16経路を欠損している。これらの欠損細胞には動物およびヒトにおける全ての腫瘍細胞が含まれる。ここに使用される場合、「Rb経路の欠損」は、経路のいずれかの遺伝子またはタンパク質における変異および/または後成的変化を指す。これらの欠損に起因して腫瘍細胞はE2Fを過剰発現するので、通常、有効な複製に必要とされるE1A CR2によるRbの結合は不要である。さらに選択性はE2Fプロモーターによって媒介され、そのE2Fプロモーターは、Rb/p16経路欠損細胞において見られるように、遊離E2Fの存在下でのみ活性化する。遊離E2Fの非存在下ではE1Aの転写は生じず、ウイルスは複製しない。E2Fプロモーターの包含は正常組織内でE1Aの発現を阻止するのに重要であり、その正常組織は、E3プロモーターから導入遺伝子発現を可能にすることにより、直接と間接の両方で毒性を引き起こし得る。
【0056】
本発明は対象における癌を治療するための手法に関する。本発明の一態様において、対象はヒトまたは動物、具体的には動物またはヒト患者、より具体的には癌を患っているヒトまたは動物である。
【0057】
手法は悪性腫瘍と良性腫瘍の両方を含む、任意の癌または腫瘍を治療するために使用でき、原発腫瘍と転移癌の両方が手法の標的であってもよい。本発明の一態様において、癌は腫瘍浸潤リンパ球を特徴付ける。本発明の手段は腫瘍浸潤リンパ球を特徴付ける転移性固形腫瘍の治療に特に魅力的である。別の態様において、T細胞移植片はキメラ抗原受容体の腫瘍または組織特異的T細胞受容体によって改変されている。
【0058】
ここに使用される場合、「治療」または「治療する」という用語は、癌または腫瘍に関連する障害または症状の完全な治癒だけでなく、予防、改善または緩和を含む目的のために、対象、好ましくは哺乳動物またはヒト対象への、少なくとも腫瘍退縮性アデノウイルスベクターまたは少なくとも腫瘍退縮性アデノウイルスベクターおよび養子細胞治療組成物の投与を指す。治療効果は、患者の症状、血液中の腫瘍マーカー、またはたとえば腫瘍のサイズ、もしくは患者の生存期間をモニターすることによって評価されていてもよい。
【0059】
本発明の別の態様において、癌は、上咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎臓癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌(oral cancer)、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛腫瘍、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼の癌、頸部癌、腎癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポジ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌(oral cancer)、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌(mouth cancer)、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃腺癌からなる群から選択される。
【0060】
本発明の療法に適するようにヒトまたは動物患者を分類する前に、臨床医は患者を検査していてもよい。正常から外れて腫瘍または癌を明らかにしている結果に基づいて、臨床医は患者のために本発明の治療を提案してもよい。
医薬組成物
本発明の医薬組成物は本発明の少なくとも1種類のウイルスベクターを含む。さらに組成物は、少なくとも2種、3種または4種の異なるベクターを含んでいてもよい。ベクターに加えて、医薬組成物はまた、他の治療的に有効な薬剤、任意の他の薬剤、たとえば薬学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、充填剤、安定剤および/もしくは増粘剤、ならびに/または対応する製品に通常見出される任意の構成成分を含んでいてもよい。組成物を製剤化するための好適な成分および適切な製造方法の選択は当業者の一般的知識に属する。
【0061】
医薬組成物は投与に適した任意の形態、たとえば固体、半固体または液体形態であってもよい。製剤は、これらに限定されないが、液剤、エマルション、懸濁剤、錠剤、ペレット剤およびカプセル剤からなる群から選択されていてもよい。本発明の組成物は特定の製剤に限定されず、代わりに組成物は任意の公知の薬学的に許容される製剤に製剤化されていてもよい。医薬組成物は当該技術分野において公知の任意の従来の方法によって製造されていてもよい。
【0062】
本発明の一態様において、ウイルスベクターまたは医薬組成物はT細胞を動員するためのインサイチュービヒクルとして作用し、それらの治療効果を増強し、腫瘍におけるそれらの増殖を可能にする。
【0063】
本発明の医薬キットは、養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを含む。養子細胞治療組成物は第1の製剤に製剤化され、少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは第2の製剤に製剤化される。本発明の別の態様において、第1および第2の製剤は同時にまたは任意の順序で連続して対象へ投与するためのものである。
投与
本発明のベクターまたは医薬組成物は、植物、動物およびヒトからなる群から選択される任意の真核生物対象に投与されていてもよい。本発明の特定の態様において、対象はヒトまたは動物である。動物は、ペット、家畜および生産動物からなる群から選択されていてもよい。
【0064】
任意の従来の方法がベクターまたは組成物を投与するために対象に使用されていてもよい。投与経路は、製剤または組成物の形態、疾患、腫瘍の位置、患者、共存症および他の要因に依存する。
【0065】
本発明の一態様において、対象への養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの個別投与は同時にまたは任意の順序で連続して行われる。ここに使用される場合、「個別投与」または「個別」は、養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、互いに別個の2つの異なる製品または組成物である状況を指す。
【0066】
養子細胞治療組成物および本発明の少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの1回の投与のみ、または腫瘍退縮性もしくは非細胞溶解性ウイルスベクターのみの投与が治療効果を有していてもよい。たとえば患者および癌の種類、程度または位置に応じて投与の間隔は任意の期間であってもよい。本発明の一態様において、養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの連続投与の間隔は、1分~4週間、具体的には1~10日、より具体的には1~5日の期間である、ならびに/または養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが複数回投与される。養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスの投与回数はまた、治療期間の間、異なっていてもよい。腫瘍退縮性アデノウイルスベクターまたは医薬もしくは養子細胞組成物は、たとえば最初の2週間、4週間、1カ月または治療期間の間に1~10回投与されていてもよい。本発明の一態様において、ベクターまたは任意の組成物の投与は、最初の2週間、次いで4週間、次いで1カ月に3~7回行われる。本発明の特定の態様において、投与は、最初の2週間、次いで4週間、次いで1カ月に4回行われる。治療期間の長さは変化させていてもよく、たとえば2~12カ月以上続けていてもよい。
【0067】
本発明の特定の態様において、養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは同日に投与され、その後腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは、たとえば1~6または12カ月以上続けていてもよい治療期間の間、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または1カ月に1回投与される。
【0068】
本発明の一態様において、腫瘍退縮性ウイルスの投与は、腫瘍内、動脈内、静脈内、胸膜内、膀胱内、腔内もしくは腹膜注射、または経口投与により行われる。投与の任意の組合せも可能である。手法は局所注射にも関わらず全身効果を与えることができる。養子細胞治療組成物は静脈内または腫瘍内に投与されていてもよい。一態様において、養子細胞治療組成物および/または少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの投与は、腫瘍内、動脈内、静脈内、胸膜内、膀胱内、腔内もしくは胸膜注射、または経口投与により行われる。本発明の特定の態様において、TILまたはT細胞は静脈内に投与され、ウイルスベクターは腫瘍内および/または静脈内に投与される。注目すべきことに、ウイルスはT細胞の投与とは別に腫瘍に送達され、ウイルスはex vivoでT細胞移植片を改善するために使用されない。本質的に、T細胞移植片が良好に作用できるようにウイルスは腫瘍を改善する。
【0069】
ベクターの有効量は、治療を必要とする対象、腫瘍の種類、腫瘍の位置および腫瘍の段階に少なくとも依存する。用量はたとえば約1×108ウイルス粒子(VP)~約1×1014VP、具体的には約5×109VP~約1×1013VP、より具体的には約8×109VP~約1×1012VPで変化させていてもよい。一態様において、少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターは、1×1010~1×1014ウイルス粒子の量で投与される。本発明の別の態様において、用量は約5×1010~5×1011VPの範囲である。
【0070】
移入される細胞の量もまた患者に依存するが、典型的な量は1回の注射につき1×109~1×1012細胞の範囲である。注射の回数も変わるが、典型的な態様は、数週間(たとえば2~4週間)の間隔を空けた1または2ラウンドの治療を含む。
【0071】
任意の他の治療または治療の組合せが本発明の療法に加えて使用されていてもよい。特定の態様において、本発明の方法または使用は、対象への放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法、または他の抗癌薬、もしくは介入(手術を含む)の同時または連続適用をさらに含む。
【0072】
ここに使用される場合、「治療する」または「増加する」という用語、およびそれらからの語幹の単語は、必ずしも100%または完全な治療または増加を示すとは限らない。むしろ、当業者が潜在的利点または治療効果を有すると認識する様々な程度が存在する。これに関して、本発明の方法は、T細胞療法の効果または疾患の治療もしくは予防の任意の程度の任意の量の増加を提供できる。
【0073】
図28~32、36および48は、本発明の方法および機構を示す。
【0074】
技術が進歩するにつれて、本発明の概念は様々な方法で実施され得ることは当業者に自明である。本発明およびその態様は上記の例に限定されないが、特許請求の範囲内で変更していてもよい。
【0075】
[実施例]
材料および方法
B16-OVA動物モデル:オボアルブミンを発現するB16細胞(B16-OVA)を、RPMI、10%FBS、5mg/mlのG418、20mMのL-グルタミン、1×Pen/Strep溶液(GIBCO)中に維持した。4~7週齢のC57BL/6免疫応答性メスマウスに、50ulのRPMI、0%FBS中の2.5×105B16-OVA細胞を、一匹のマウスにつき1つの腫瘍で右脇腹に皮下移植した。腫瘍生着のおおよそ10日後(腫瘍が注射可能、約3mmの最小直径になったとき)、マウスを群に分け、いくつかの実験において、50ulのPBSまたは50ulのPBS中の腫瘍退縮性アデノウイルスの1×109ウイルス粒子(VP)のいずれかの腫瘍内注射により6連続日で処置した。他の実験において、0、2および4日目に3回注射を与えた。マウス細胞はヒトアデノウイルスに対して非許容性であるので、ウイルス複製により誘導される炎症を模倣するために複数の腫瘍内ウイルス注射を使用した(Blairら、1989)。
【0076】
養子移入:i.t.処置の最初の日に、マウスはまた、養子移入によって腹腔内空洞において、100ulのRPMI、0%FBS中の5×105~2×106の一晩置いたCD8aを濃縮し、増殖させた脾細胞を受け、その脾細胞は、オボアルブミン(OVA)特異的CD8 T細胞受容体のみを有するように遺伝子操作された4~8週齢のC57BL/6-Tg(TcraTcrb)1100Mjb/J(OT-1)マウス由来であった。CD8a濃縮は、製造業者の指示書(Miltenyi Biotech、USA、cat.no 130-049-401)に従って移入の5日前にマウスCD8a(Ly-2)Microbeadsによって実施した。濃縮細胞は、組換えマウスIL-2(160ng/ml)および可溶性抗マウスCD3ε抗体(0,3ug/ml、Abcam、クローン145-2C11)の存在下でリンパ球培地(RPMI、10%FBS、20mMのL-グルタミン、1×Pen/Strep溶液、15mMのHEPES、50μMの2-メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸Na)中で合計5日間増殖させた。
【0077】
フローサイトメトリーのための組織処理:マウスを安楽死させ、脾臓、流入領域リンパ節および腫瘍を1~10mlのRPMI、10%FBS中で採取し、末端心臓出血によって血液を胸腔内に回収し、使い捨てシリンジによってEDTA含有微小遠心管内に移し、分析のために処理した:固形腫瘍を外科用メスによって大まかに解離し、5~10mlのACK溶解緩衝液(150mMのNH4Cl、10mMのKHCO3、0.1mMのEDTA、pH7.2)入りの10mlの使い捨て滅菌ピペットチップ中で粉砕し、室温(RT)にて約20分間インキュベートし、そのときに細胞を1200rpm、5分、+4℃にてペレット化し、その後、細胞の推定量に応じて、細胞を1~10mlのRPMI、10%FBS中に再懸濁し、40μmの無菌フィルターを通過させ、単一の細胞溶液を作製した。いくつかの態様において、代わりに腫瘍組織を、37℃、5%CO2にて1~2時間、全体積1mlのプロテアーゼカクテル(1mg/mlのA、HまたはP型コラゲナーゼ、Rocheおよびベンゾナーゼ、最終濃度125単位/ml、Sigma、E1014-25KUを補足したRPMI)中で外科用メスで切断した後(ACKを加える前)に直接処理し、その後、10mlのACK溶解緩衝液を加え、細胞を上記のように処理した。200μlの全血を5mlのACK溶解緩衝液中にピペットで採取し、上記のように処理した。細胞を37℃、5%CO2にて一晩インキュベートした、または免疫染色およびフローサイトメトリーによって直接分析した。
【0078】
サイトカイン分析のための組織処理:マウスを安楽死させ、約2~10mm3の腫瘍部分をドライアイス上の2mlの微小遠心管内で凍結し、-80℃に保存した。腫瘍部分を秤量し、200μlの氷冷PBSを加えた。部分をTissue Master 125ローターによりホモジナイズし、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)および0.1%BSA最終濃度を加え、管を氷上に維持した。腫瘍ホモジネートを2000rpm、10分、+4℃にて回転させ、製造業者の指示書に従って、BD FACSArray上でCBA Flex Setサイトカインビーズ(BD、USA)を用いて上清を分析した。
本発明を支持する実験
実験1(腫瘍内アデノウイルス注射によって誘導されるサイトカインおよびケモカイン):
アデノウイルス注射がサイトカインおよびケモカイン発現を生じ得るかどうかを調べるために、本発明者らは、皮下B16-OVA腫瘍を保有するマウスに、0、1、2、3、4および5日目に、PBSまたは5/3キメラ腫瘍退縮性アデノウイルスのいずれかを腫瘍内に注射した。1つの治療群につき3匹のマウスから腫瘍を抽出し、0日目(ウイルス注射の前=ベースライン対照)にサイトカイン分析のために処理し、6、10、14および18日目の時点ごとに3匹の他のマウス由来の腫瘍を処理した。
【0079】
注目すべきことに、結果は、ウイルスにより誘導されるIFN-γの分泌の増加、およびその後の、10日目のIFN-γ誘導性ケモカインRANTES、MIP-1αおよびMCP-1の上方制御を示した(図1)。
【0080】
養子細胞療法の治療効果を増強させるために、これらの知見は重要である。
【0081】
このデータによれば、腫瘍退縮性サイトカイン武装アデノウイルスによる処置の結果、腫瘍微小環境の有益な変化が生じ、養子移入免疫細胞の走化性を増加させ、細胞毒性CD8+ T細胞による腫瘍細胞認識を増強させた。
実験2(養子T細胞療法のアデノウイルスにより媒介される増強):
養子T細胞療法のアデノウイルス処置の影響を調べるために、マウスB16-OVA黒色腫を、5/3キメラ腫瘍退縮性アデノウイルス単独、または腫瘍特異的OT-I細胞の養子移入との組合せで処置し、腫瘍内PBS注射を受けているマウスと比較した。図2にまとめた3回の独立した実験の結果は、一方で、ウイルス注射それ自体で(ヒトアデノウイルスはマウス細胞において生産的に複製しないことに留意されたい)、小さい腫瘍の成長制御を生じ、処置後14日まで続き、その後減少したことを表す(図2A)。他方で、処置したマウスに5×105または2×106OT-I細胞を養子移入した場合、PBSとAd群との間に統計的に有意な相違が2つの別の実験において観察された(それぞれ図2Bおよび2C)。
【0082】
それ故、腫瘍内のウイルスの存在は養子細胞療法に対する効果を非常に増強させた。B16.OVA黒色腫モデル(Song XTら Mol Ther.2011 Jan;19(1):211-7、PMID:20959814)において、A20特異的ショートヘアピンRNAおよびトール様受容体5を刺激するフラジェリンの分泌型(Ad-shAF)を同時発現する等量のアデノウイルスと混合したOVAを発現する複製欠損アデノウイルス(Ad-OVA)の1×1010VPの単回筋肉内注射のために、各々1×109VPの6回の腫瘍内ウイルス注射を、Songら(2011、Mol Ther)によって報告されているものと比較してOT-I細胞が等しいまたは優れた抗腫瘍効果の養子移入と組み合わせて本発明者らの手で行った。これらの結果を考慮すると、本発明の新規側面は腫瘍内へのウイルス注射を標的とすることであり、これにより、非武装ウイルスを用いてでさえ、筋肉内に投与される複数の免疫機能武装ウイルスよりも優れた腫瘍制御を本発明者らは達成できる。
実験3(in vivoでの免疫細胞集団の質および量のアデノウイルスにより媒介される変化):
実験2の養子移入細胞の輸送および増殖を調べるために、OT-I細胞を、5μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を用いてex vivoで染色した。この蛍光細胞染色色素を全ての細胞分裂に伴って希釈し、したがって本発明者らは、各細胞分裂(最大7回の分裂、ここでM0-7と標識した)における蛍光信号強度の約1/2のわずかな減少を分析することにより、フローサイトメトリーによってリンパ球増殖を追跡できる。移入の1日後、結果は、腫瘍内で移入OT-I細胞(CD8+ CFSE+二重陽性集団)のウイルスにより誘導される蓄積を示し、血液中のこれらの細胞の低減が同時に起こった(図3A)。その後、また、全CD8+ T細胞数が、PBS注射した腫瘍と比べてウイルス処置した腫瘍において多いように見え、14日目に全CD8+ T細胞数はウイルス処置したマウスのリンパ器官において増加した。
【0083】
異なる時点におけるOT-I細胞分裂の量を図3Bに示す。OT-I細胞の増殖状態は1日目において両方の群の間で同じであったので、様々な器官内のCD8+細胞数の相違はアデノウイルスにより誘導される免疫細胞輸送に起因した。しかしながらその後、この状況は変化し、アデノウイルス処置した腫瘍におけるOT-I細胞の増加は、増加したリンパ球増殖に起因した。6日目に、PBS処置した腫瘍内のOT-I細胞の大部分はM5期において停止したのに対して、アデノウイルス群における移入細胞は増殖し続けた(分裂M6-M7)。このデータにより、腫瘍退縮性ウイルス療法または非細胞溶解性ウイルス注射の結果、腫瘍内の免疫抑制を遮断し、CD8+細胞活性化の原因となる免疫細胞を引きつけることによって、および/またはT細胞アネルギーを克服するのに役立ついくつかの他の重要な機構によって、養子移入リンパ球の増強された輸送および増殖が生じることが示唆される。
【0084】
動物モデルにおける本発明者らの知見に対する支持として、本発明者らは、進行癌を有する患者への腫瘍退縮性ウイルス投与後の最初の日の間、血中リンパ球数の一時的な低下を観察した(図4)が、これは、腫瘍内の急性アデノウイルス感染に反応して循環T細胞が動員されたことを示唆する。
【0085】
さらに、腫瘍内にT細胞を動員するアデノウイルス感染の支持として、本発明者らは、治療前より治療後、腫瘍生検組織切片内に増加した数のCD8+T細胞を検出した(図5)。
【0086】
図6は、T細胞の養子移入と組み合わせたアデノウイルス注射の結果を示す。
【0087】
図7は、養子移入およびウイルス注射に起因した「天然」抗腫瘍T細胞の数の劇的な増加を表す。
【0088】
図8は、14日目の腫瘍内の活性化CD8+細胞および腫瘍内のTIM-3発現を示す。
【0089】
図9は、抗腫瘍T細胞の増加および免疫抑制の低減の結果、腫瘍抗原に対して全身性免疫が生じることを示す。
【0090】
図10は、ウイルス注射後のOTI T細胞の分布を示す。
【0091】
図11は、上昇した免疫抑制が細胞の増殖を誘導できることを表す。
【0092】
図12は、OT1細胞と組み合わせた組換えサイトカイン(ウイルスなし)の効果を示す。
実験4(養子移入T細胞+マウスサイトカイン武装Ad5アデノウイルス):
モデル:
B16-OVA(1匹の動物につき0,25×10e6細胞)を有するC57BL/6
群:
注射なし
Ad5-Luc
Ad5-CMV-mTNFa
Ad5-CMV-mIFNg
Ad5-CMV-mIL2
Ad5-CMV-mIFNb1
注射なし+OT1
Ad5-Luc+OT1
Ad5-CMV-mTNFa+OT1
Ad5-CMV-mIFNg+OT1
Ad5-CMV-mIL2+OT1
Ad5-CMV-mIFNb1+OT1
Ad5ベクターはマウス導入遺伝子をコードする非複製ヒトアデノウイルスのベクターである。構築物はAdEasy技術(Agilent Inc)を用いて作製し、導入遺伝子カセット(CMVプロモーターによって駆動される)はE1領域を欠失している(たとえばDiaconu Iら Cancer Res.2012 May 1;72(9):2327-38を参照のこと)。
【0093】
群のサイズ:
n=7、12×7=84(+追加20%=100)
処置スケジュール:
OT1細胞:1日目に1匹の動物につき2×10e6腹腔内投与(i.p.)
ウイルス注射:1日目およびその後1週間に1回で1×10e9ウイルス粒子(OD260)
エンドポイント:
腫瘍体積(最初の週の間2日ごと、次いで3日ごとに測定した)
FACSおよび/またはELISPOT(Siriデータに従って最も関連するアッセイに焦点を当てる)のために、マウスが死んだまたはマウスを殺傷した場合の、腫瘍および脾臓の採取。
【0094】
T細胞療法と組み合わせた最適な導入遺伝子はTNFアルファja IL2であった(図13)。データを増加させると、同じサイトカインがウイルスなしの実験において関係した。
【0095】
図14は、腫瘍サイズに対する異なるウイルス(T細胞療法なし)の結果を示す(図14)。
【0096】
図15は、Ad5-CMV-mTNFアルファ-ベクターと組み合わせたT細胞療法の優れた結果を示す。
【0097】
図16は、Ad5-CMV-mIL2-ベクターと組み合わせたT細胞療法の優れた結果を示す。
新規ウイルス構築物
以下の新規ウイルス構築物を本発明者らの提案した技術の例として提示する:C5aおよびTNF-α発現腫瘍退縮性ウイルス
本発明者らは、6.7K/gp19遺伝子領域の代わりに導入遺伝子として相補体構成成分C5aまたはヒトTNF-αの活性部分を有する新規腫瘍退縮性Ad5/3アデノウイルスを生成した(図17)。
実験5(C5aコードアデノウイルスベクターからの導入遺伝子発現):
概念の実証として、腫瘍退縮性アデノウイルスが、養子細胞療法を増強させるために提案されている選択されたサイトカインを発現できるかどうかを確認するために、本発明者らは、C5aをコードするアデノウイルスの10VP/細胞にて培地中でヒトA549細胞を感染させ(図24)、感染後の異なる時点にて細胞培養上清中でC5aレベルをELISAによって評価した。実際に結果は、所有しているアデノウイルス構築物が選択されたサイトカインを保有しているという仮定を実証し、支持している。
実験6(新規アデノウイルスベクターによる単球移動に対する効果):
本発明者らは、in vitro走化性アッセイを使用して単球を動員するC5aの能力を試験した:A549細胞を、C5aを発現するアデノウイルスもしくは非武装対照ウイルス(10VP/細胞-同様のウイルス間の感染単位)のいずれかで感染させた、またはPBSで処置し、感染の48時間後に培地を採取し、製造業者の指示書(Millipore QCM、cat.no.ECM512)に従ってトランスウェル走化性アッセイにおいてヒト単球細胞株THP1を動員するために使用した。結果は、非感染細胞または非武装対照ウイルスに感染した細胞由来の培地による以上に、C5a発現ウイルスに感染した細胞由来の上清によって、有意に多い単球の誘引を表す(図25)。
実験7(C5a武装アデノウイルスの抗腫瘍効果):
非細胞溶解性腫瘍感染の状況においてC5aの抗腫瘍有効性を評価するために、本発明者らは、PBS、C5a発現または非武装対照ウイルスのいずれかを用いて、0、2および4日目にC57BL/6マウスにおいて樹立されたB16-OVA腫瘍を処置した。結果はC5a発現ウイルスによる強力な抗腫瘍効果を表す(図26)。
実験8(C5aウイルスによる増加した抗腫瘍T細胞増殖):
C5a発現ウイルスの抗腫瘍効果の観察された増加(図24)がT細胞に関連しているかどうかを評価するために、免疫優勢オボアルブミンペプチドSIINFEKL(ProImmune、USA)が負荷されたMHC Iを認識するTCRに特異的なAPCがコンジュゲートした五量体で染色することによって検出された、オボアルブミン特異的CD8+ T細胞についてフローサイトメトリーによって腫瘍を分析した。実際に、C5aウイルス群における腫瘍は、対照ウイルスまたはPBSを注射した腫瘍より有意に多い割合の腫瘍特異的CD8 T細胞を含有した(図27)。
実験9(TNF-αコードアデノウイルスからの導入遺伝子発現):
C5aウイルス(図24および実験5)と同様に、本発明者らは、最適な導入遺伝子の分泌を媒介する、hTNF-αを発現する腫瘍退縮性アデノウイルスの能力を試験した。結果により、発現が確認される(図18)。
実験10(発現された導入遺伝子の生物学的効果は腫瘍退縮性アデノウイルスにおいて保持される):
アデノウイルス発現導入遺伝子がその生物学的効果を維持するかどうかを評価するために、対照非武装ウイルスまたはTNF-アルファ発現ウイルス(様々なVP/細胞、72時間 p.i.)に感染させたA549細胞由来のウイルスを含まない(100kD濾過した)上清を、TNF-アルファに対して感受性があるWEHI-13VAR(ATCC CRL-2148)細胞上に適用し、これらの細胞を上清への曝露の72時間後に生存について評価した。(たとえばEspevik Tら J Immunol Methods.1986;95(1):99-105が方法を記載している。)結果は、腫瘍退縮性アデノウイルスから発現したTNF-アルファが効力のある生物学的効果を保持することを表す(図19)。
実験11(腫瘍退縮性サイトカイン発現ウイルスはin vitroで細胞殺傷能力を保持する):
TNF-アルファは抗ウイルス効果を有する可能性があるので、TNF-アルファを発現するアデノウイルスの腫瘍退縮効果が、癌細胞に感染し、殺傷する、その能力を保持することを確認することは重要であった。培養物中のいくつかの癌細胞株をTNF-アルファ発現または対照ウイルスに感染させ、製造業者の指示書(Promega、USA)に従って、CelltiterGlo AQ MTSアッセイによって生存について評価した。結果は、ウイルスがin vitroで腫瘍退縮性であることを示す(図19~20)。
実験12(放射線療法とTNFアルファを発現する腫瘍退縮性ウイルスとの間の相乗効果):
本発明者らは、付随する焦点外部ビーム放射線(XRT)を用いて、または用いずに皮下A549異種移植片を有するヌードマウスを腫瘍内においてウイルス処置した(図21)。RDは複製欠損ウイルスを示し、非武装ウイルスはTNFアルファを有さない腫瘍退縮性ウイルスである。
実験13(免疫応答性宿主内のTNF-アルファ発現アデノウイルスの増加した抗腫瘍効果):
マウス細胞内で複製しない腫瘍退縮性アデノウイルスが依然として、免疫応答性マウスにおいてin vivoで抗腫瘍効果を引き起こすことができるかどうかを試験するために、樹立したB16.OVA腫瘍を有するマウスに、図26と同様にTNF-アルファ発現もしくは非武装対照ウイルスまたはPBSを腫瘍内に注射した。結果は、対照と比較してTNF-アルファ発現ウイルスにより強力な全体の腫瘍制御を示し(図22)、ヒトTNFアルファがマウスにおいて部分的に活性であることを示唆し、強力な抗腫瘍効果を達成する武装ウイルスの考えを支持する。
実験14(TNFα-ウイルスによる増加した抗腫瘍T細胞増殖):
実験11と同様に、本発明者らは、TNF-アルファ発現ウイルスの観察された抗腫瘍効果が、腫瘍特異的細胞溶解性T細胞反応の誘導に関連するかどうかを試験することを望んだ。本発明者らは腫瘍を抽出し、それらを実験11のようにフローサイトメトリー分析のために処理した。結果(図23)により実際に、同様にTNF-アルファ発現が腫瘍部位における腫瘍特異的T細胞の増殖を促進することが確認され、提案された技術を支持する強力な根拠が示される。
【0098】
図28~32、36および48は、本発明の方法および機構を例示する。
実験15(2つの異なるアデノウイルスベクターおよびOT1(Ad-mTNFa/Ad-mIL2+OT1)を用いた組合せ実験):
モデル:
B16-OVA(1匹の動物につき0.25×10e6細胞)を有するC57BL/6
群:
Ad5-CMV-mTNFa(1×10e9のVP)
Ad5-CMV-mIL2(1×10e9のVP)
Ad5-CMV-mTNFa+Ad5-CMV-mIL2(0.5+0.5×10e9個のVP)
Ad5-CMV-mTNFa+OT1
Ad5-CMV-mIL2+OT1
Ad5-CMV-mTNFa+Ad5-CMV-mIL2+OT1
Ad5Luc1+OT1
注射なし(偽-偽)
Ad5ベクターはマウス導入遺伝子をコードする非複製ヒトアデノウイルスのベクターである。構築物はAdEasy技術(Agilent Inc)により作製した;導入遺伝子カセット(CMVプロモーターにより駆動される)は欠失したE1領域にある(たとえばDiaconu Iら Cancer Res.2012 May 1;72(9):2327-38を参照のこと)。
【0099】
群サイズ:
n=9
100匹を順序付けた
処置スケジュール:
OT1細胞:1日目に1匹の動物当たり1.5×10e6腹腔内投与(i.p.)(以前の実験と同じ量、2×10e6ではない)
ウイルス注射:単一の薬剤について:1日目、その後1週間に1回で1×10e9ウイルス粒子(OD260);組合せについて:1日目、その後1週間に1回で0.5×10e9VP+0.5×10e9VP
エンドポイント:腫瘍体積(最初の週の間2日ごと、次いで3日ごとに測定した)さらに本発明を支持する実験
いくつかの動物実験は本発明を支持する。最初に本発明者らは、サイトカインの組換えマウス型を使用して養子T細胞移入と組み合わせるための最適なサイトカイン候補をスクリーニングした(図49)。サイトカインは以下の群:インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、GMCSF、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2から選択される。サイトカイン導入遺伝子または2つの導入遺伝子を含むウイルスゲノムの一般的設計の概略図は図33および34に示される。図35は2Aのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。導入遺伝子C5a、hCD40L、hIFNa2、hIFNb1、hIFNg1、hIL2またはTNFaを含むウイルスベクターのヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号1~7に示される(Ad5/3-E2F-D24-導入遺伝子)。さらに、一方がIL-2であり、他方がC5a、CD40L、IF-Na2、IFNb、IFNg、GMCSFまたはTNFaである、2つの導入遺伝子を含むウイルスベクターのヌクレオチド配列は配列番号8~21(配列番号8 C5a-2A-IL2、配列番号9 IFNa-2A-IL2、配列番号10 TNFa-2A-IL2、配列番号11 CD40L-2A-IL2、配列番号12
IFNb-2A-IL2、配列番号13 GMCSF-2A-IL2、配列番号14 IFNg-2A-IL2、配列番号15 C5a-IRES-IL2、配列番号16 IFNa-IRES-IL2、配列番号17 TNFa-IRES-IL2、配列番号18
CD40L-IRES-IL2、配列番号19 IFNb-IRES-IL2、配列番号20 GMCSF-IRES-IL2、配列番号21 IFNg-IRES-IL2)(Ad5/3-E2F-D24-導入遺伝子-IRES/2A-導入遺伝子)に示される。
【0100】
最適な候補のいくつかをサイトカイン/ウイルス組合せ実験のために選択し、それらのレジメンはおおよそ同じであり、全てのマウスはCD8a+濃縮OT-Iリンパ球の腹腔内注射およびアデノウイルスと混合した、選択したサイトカインの腫瘍内処置を受けた。加えて、マウスにおいて活性が証明されているマウスサイトカインまたはヒトサイトカインのいずれかをコードする本発明者らの既存の複製欠損アデノウイルスを使用して、別の輸送実験を行った(図50)。RDは複製欠損ウイルスを示す。これらの実験に基づいて、最終的なサイトカイン候補または複数の候補が選択され得、さらに臨床においても分析され得る。
【0101】
実験の結果は、a)腫瘍内のウイルス注射の結果、腫瘍へのT細胞の輸送が増強され、b)ウイルス注射の結果、腫瘍内のMHC1発現が増強され、c)低い寛容性および免疫抑制を生じる危険信号が活性化され、d)ウイルス注射後、T細胞が腫瘍において増殖することを示す。重要なことに、導入遺伝子としてサイトカインを加えることにより、これらの効果の各々が増強された。注目すべきことに、二重導入遺伝子は効果をさらに増強させた。それ故、サイトカイン武装腫瘍退縮性アデノウイルスの腫瘍内注射は、ウイルスベクターまたは養子細胞移入単独のいずれかで達成され得るものよりも、相乗的に養子細胞移入の効果を増強させた。
【0102】
養子移入後のT細胞輸送および生体内分布を調べるために、SPECT/CT画像化実験を行った(図51)。CD8a+濃縮OT-Iリンパ球を111Inで放射線標識し、レシピエントマウス内に養子移入した。
【0103】
インジウムオキシンの半減期は比較的短い(2,83日)ので、画像化の最大監視期間を7日に制限した。この制限のために、細胞を2つのバッチにおいて標識し、2つの異なる時点でマウスに移入した。第1のバッチからの画像化データが0~7日の輸送事象に及ぶのに対して、第2のバッチは、本発明者らがウイルス後8~14日の間、腫瘍内の事象を観察することを可能にする。
腫瘍退縮性Ad3ウイルス(図37~40、配列番号30および31(Ad3-hTERT-E3del-CMV-CD40LおよびAd3-hTERT-E3del-E2F-CD40L))
クローニング手順:
1.対応する発現カセットを含有するAd3 3’末端プラスミドの構築、このプラスミドはAd3ゲノムの3’ITRを含有し、Ad3ゲノムの29,892~30,947のE3領域を発現カセットと置きかえた。(注記:本発明者らは、3’末端に近接するAd3ゲノムにおけるEcoRI制限部位を利用する)
2.Ad3 5’末端プラスミドの構築、このプラスミドは5’ITRおよびhTERT-E1を含有する。(注記:本発明者らは、Ad3ゲノムにおける特有の制限部位NotIおよび5’末端に近接するNheI制限部位を利用する)
3.pWEA-Ad3-hTERT-CMV-CD40LおよびpWEA-Ad3-hTERT-E2F-CD40Lの構築(注記:本発明者らは、ファージパッキングシステムを利用する)
対応する発現カセットを含有するAd3 3’末端プラスミドの構築:
1.PCRによりE2Fプロモーターを増幅する、フォワードプライマー:5’AAAttaattaatggtaccatccggacaaagc3’(配列番号22)、リバースプライマー5’TTTgctagcggcgagggctcgatcc3’(配列番号23)。TAベクターpGEM-T(promega)→pGemT-E2F内にクローニングした。
【0104】
2.PCRによりCD40Lフラグメントを増幅する、フォワードプライマー:5’TAGCTGCTAGCATGATCGAAACATACAAC3’(配列番号26)、リバースプライマー:5’GTCAATTTGGGCCCTCAGAGTTTGAGTAAGCCAA3’(配列番号27)。pGEM-T→pGemT-CD40L内にクローニングした。
【0105】
3.CMV-GFP(pWEA-Ad3-3’末端-CMVGFP)を含有する本発明者らのAd3 3’末端プラスミドはGFPを除去するためにNheI/ApaIを用いて消化され、pGemT-CD40LはNheI/ApaIを用いて消化された→pWEA-Ad3-3’末端-CMV-CD40L。
【0106】
4.pWEA-Ad3-3’末端-CMV-CD40LにおけるCMVプロモーターを、E2Fプロモーター(pGemT-E2FはPacI/NheIを用いて消化した)→pWEA-Ad3-3’末端-E2F-CD40Lと置きかえた。
【0107】
hTERT-E1を含有するAd3 5’末端プラスミドの構築物:
1.PCRにより、pKBS2-hTERT(Ad3-hTERT-E1Aペーパー由来のプラスミド)由来のAd3ゲノムの5’末端を増幅する、フォワードプライマー5’gtcagtttaaacttaggccggccctatctatataatataccttatagatggaatgg3’(配列番号28)、リバースプライマー5’CTTCATCAGCAGCTAGCAGCATAGAATCAG3’(配列番号29)。pGem-T→pGemT-Ad3-5’末端-hTERT内にクローニングした。
【0108】
2.プラスミドpWEA-Ad3(これは全ad3ゲノムを含有する)はFseI/NotIを用いて消化し、Ad3ゲノムの5’末端を含有する13.2kb断片を、pBluescript KS(-)から改変した(SacIとXbaIとの間の制限部位はSacI-PmeI-MluI-FseI-SalI-NotI-XbaIとして改変した)ベクター→pBS-Ad3-5’末端内にクローニングした。
【0109】
3.プラスミドpBS-Ad3-5’末端はPmeI/NheIを用いて消化し、5’ITRを含有する約800bp断片を、pGemT-Ad3-5’末端-hTERT→pBS-Ad3-5’末端-hTERT由来の対応するPmeI/NheI断片と置きかえた。
【0110】
pWEA-Ad3-hTERT-CMV-CD40LおよびpWEA-Ad3-hTERT-E2F-CD40L:
1.プラスミドpWEA-Ad3-hTERT-E2F-は3’末端ゲノムを除去するためにEcoRIを用いて消化し、pWEA-Ad3-3’末端-CMV-、pWEA-Ad3-3’末端-CMV-CD40LおよびpWEA-Ad3-3’末端-E2F-CD40L由来の発現カセットを含有する対応する断片とライゲーションする。
【0111】
2.ライゲーションは、Gigapack IIIプラスパッケージング抽出物(Stratagen)を使用してファージ内にパッケージングし、増殖させた(Xl1青色染色)
Ad3ウイルスの機能性をin vitroで試験し、その結果を図41に示す。全ての新規ウイルスは機能的であり、腫瘍細胞株に感染できる。
【0112】
ウイルスをまたCHO-K7で試験したが、それらはTCID50の間、それらの細胞の生存に対して効果を示さなかった。これは恐らく、これらのハムスター細胞の表面上のヒト様デスモグレイン-2の欠失に起因した。
AD3ベクターのin vivoでの結果
全ての動物実験は、ヘルシンキ大学および南フィンランド州政府の動物実験委員会により承認された。マウスをそれらの健康状態について頻繁にモニターし、疼痛または苦痛の兆候に気付くとすぐに安楽死させた。メスのfox chase重症複合免疫不全マウス(Charles River)を使用した。
【0113】
腹膜に広がった卵巣癌の同所性モデルを、300mlの純粋なダルベッコ改変イーグル培地中の5×10e6 SKOV3-luc細胞を、重症複合免疫不全マウス(n=5/群)の腹腔内に注射することによって開発した。3日後、マウスを非侵襲的に画像化し、一匹のマウスにつきPBSまたはPBS中の109VPを腹腔内に注射することによって処置した。IVIS100(Xenogen、Alameda、CA)を使用して3、7、14、21および25日目にマウスを画像化して、マウスにおける腫瘍細胞の数を推定した。生物発光画像化のために、150mg/kgのD-ルシフェリン(Promega)を腹腔内に注射し、10秒の曝露時間、1f/停止、中間ビニングおよびオープンフィルターで10分後にキャプチャーした。画像化の間、マウスをイソフルランガスで麻酔した。Living Image 2.50(Xenogen)を用いて画像を重ね合わせた。マウスの腹膜領域周囲の目的の領域を描くことによって全光束(光子/s)を測定した。バックグラウンドは減算した。
【0114】
図45はin vivoでのウイルスに基づいたAd3の抗腫瘍効果を示す。
MTS細胞増殖アッセイ(図42~44)
1日目に、105細胞/ウェル(A549、PC3-MM2またはSKOV3-luc)を、5%のFBSを含有した100μlの成長培地(GM)入りの96ウェルプレート内に播種した。2日目に、5%のFBSを含有するGMを用いて単層を1回洗浄した。次いで細胞を、100、10、1、0.1および0ウイルス粒子/細胞の用量にて異なるウイルスに感染させた。その後、細胞を振盪機械上で1時間インキュベートし、次いでGMで洗浄した。新たに5%GMを加えた後、細胞をインキュベータに残し、GMを4日ごとに置きかえた。試験したウイルスの1つの細胞変性効果が最高濃度で100%に到達した後、mts試薬(Promega)を加えることによって試験を終了した。インキュベーションの2時間後、吸光度を490nmフィルターにて測定した。次いでバックグラウンドを減算し、結果を分析した。
免疫応答性マウスにおいてマウスCD40Lをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスの治療域
免疫応答性動物において、ウイルスゲノムは、静脈注射後、腫瘍内に存在する(図46)。アルビノC57マウスにマウスB16-ova細胞を皮下接種し、マウスCD40Lをコードする5つの異なるウイルス用量のAd5に基づいたウイルスを用いて静脈内で処置した(実験4および15を参照のこと)。1群当たり3匹の動物の腫瘍を採取し、-80℃にて保存した。全DNAを抽出し、ウイルスDNA負荷を定量的PCRを用いて調べた。ウイルスE4コピー数を、マウスB-アクチンプライマーを用いてゲノムDNAに正規化した。図46において、各記号は1つの腫瘍を表し、水平線は群の中央値を示す。偽:n=5;用量5:n=4;用量4:n=4;用量3:n=4;用量2:n=6;用量1:n=2;用量2 i.t.:n=4。用量5:1×1011VP/マウス;用量4:3×1010VP/マウス;用量3:1×1010VP/マウス;用量2:1×109VP/マウス;用量1:1×108VP/マウス;陽性対照(用量2腫瘍内。)
用量5に関して、マウスの67%は肝臓毒性の兆候を有した。用量4は、静脈送達後、肝臓毒性の兆候なしに良好な腫瘍形質導入を達成できた。
【0115】
肝臓酵素放出実験の結果を図47に示す。肝臓酵素放出実験は以下のように実施した。全ての動物プロトコールは、ヘルシンキ大学および南フィンランド州政府の動物実験委員会により調査され、承認された。3~4週齢のメスアルビノC57マウス(Harlan Laboratories、オランダ)に2.5×105B16-ova細胞を両脇腹の皮下に注射し、7群(3匹のマウス/群)に無作為化した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈したAd5/3CMV-mCD40Lウイルスを108~1011ウイルス粒子(VP)/マウス(用量1~用量5)にて静脈内に注射した。1つの処置群は用量2(109VP/細胞)を陽性対照として腫瘍内に受けた。全ての手段の前に動物に麻酔をし、健康状態を毎日モニターした。ウイルス注射の48時間後、マウスを屠殺し、心穿刺によって血液を採取した。5000rpmにて10分間、血液試料を遠心分離することによって血清を分離した。血清試料中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル(単位/リットル)を、Simens ADVIA 1650臨床化学分析器を使用してUniversity of Helsinki Clinical Chemistry Coreにて定量化した。血清溶血はアッセイを妨げる可能性があるので(誤った高いALTおよびASTレベル)、溶血試料を分析から排除した。バーは平均+SEMを示す。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 対象における癌を治療する方法であって、養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターの対象への個別投与を含む、方法。
[2] 癌の治療に使用するための別個の養子細胞治療組成物と併用される少なくとも1種のサイトカインをコードする、腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[3] 前記養子細胞治療組成物が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、T細胞受容体改変リンパ球およびキメラ抗原受容体改変リンパ球からなる群から選択される細胞型を含む、[1]~[2]の何れか1項に記載の方法または使用。
[4] 前記養子細胞治療組成物が、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、デルタ-ガンマT細胞、調節性T細胞および末梢血単核細胞からなる群から選択される細胞型を含む、[1]~[3]の何れか1項に記載の方法または使用。
[5] 前記養子細胞治療組成物がT細胞を含む、[1]~[4]の何れか1項に記載の方法または使用。
[6] 前記癌が、上咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎臓癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛腫瘍、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼の癌、頸部癌、腎癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポジ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃腺癌からなる群から選択される、[1]~[5]の何れか1項に記載の方法または使用。
[7] 前記対象がヒトまたは動物である、[1]~[6]の何れか1項に記載の方法または使用。
[8] 養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの対象への投与を、同時にまたは任意の順序で連続して行う、[1]~[7]の何れか1項に記載の方法または使用。
[9] 養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの連続投与の間隔が、1分から4週間の期間である、ならびに/または養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性ウイルスベクターを複数回投与する、[8]に記載の方法または使用。
[10] 前記養子細胞治療組成物および/または少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性ウイルスベクターの投与を、腫瘍内、動脈内、静脈内、胸膜内、膀胱内、腔内もしくは腹膜注射、または経口投与により行う、[1]~[9]の何れか1項に記載の方法または使用。
[11] 前記アデノウイルスベクターが、Ad5、Ad3またはAd5/3から選択される、[1]~[10]の何れか1項に記載の方法または使用。
[12] 前記アデノウイルスベクターが、Ad5核酸骨格およびAd3繊維ノブまたはAd5/3キメラ繊維ノブを含むAd5/3である、[11]に記載の方法または使用。
[13] 前記サイトカインが、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなる群から選択される、[1]~[12]の何れか1項に記載の方法または使用。
[14] 前記腫瘍退縮性ウイルスベクターが、2種以上のサイトカインをコードする、[1]~[13]の何れか1項に記載の方法または使用。
[15] 前記腫瘍退縮性ウイルスベクターが、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、GMCSF、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなるサイトカイン群から選択される任意の2種以上のサイトカインをコードする、または前記腫瘍退縮性ウイルスベクターが、IL-2、およびインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、GMCSF、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなるサイトカイン群から選択される1種のサイトカインまたは複数種のサイトカインをコードする、[13]に記載の方法または使用。
[16] 前記アデノウイルスベクターが、2つの導入遺伝子の間に内部リボソーム侵入部位(IRES)または任意にリボソームシャント部位2Aを含む、[14]または[15]に記載の方法または使用。
[17] 少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、1×10 10 ~1×10 14 ウイルス粒子の量で投与する、[1]~[16]の何れか1項に記載の方法または使用。
[18] 前記養子細胞治療組成物および腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、同時にまたは任意の順序で連続して対象に投与する、[1]~[17]の何れか1項に記載の方法または使用。
[19] 対象における養子細胞療法またはT細胞療法の効果を増加させる際に使用するための腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[20] 腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することによって、対象における養子細胞療法またはT細胞療法の効果を増加させる方法。
[21] 養子細胞治療組成物および少なくとも1種のサイトカインをコードする腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを含む医薬キットであって、前記養子細胞治療組成物が第1の製剤に製剤化され、少なくとも1種のサイトカインをコードする前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが第2の製剤に製剤化される、医薬キット。
[22] 前記第1および第2の製剤が同時にまたは任意の順序で連続して対象に投与されるためのものである、[21]に記載の医薬キット。
[23] 1)5/3キメラ繊維ノブを含むアデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格、
2)E1Aの腫瘍特異的発現のためのE2F1プロモーター、
3)アデノウイルスE1のRb結合定常領域2における24bp欠失(D24)、
4)ウイルスgp19kおよび6.7kリーディングフレームの核酸配列欠失、ならびに
5)ウイルスE3プロモーター下で導入遺伝子発現の複製に関連する制御を生じる、E3領域において欠失したgp19k/6.7Kの代わりの少なくとも1種のサイトカイン導入遺伝子をコードする核酸配列であり、前記サイトカインが、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、相補体C5a、IL-2、TNFアルファ、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7およびXCL2からなる群から選択される、核酸配列
を含む、腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[24] E3領域における欠失およびE3の欠失領域の代わりに導入遺伝子を発現するための腫瘍特異的プロモーターを含む、血清型3(Ad3)腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[25] 前記サイトカインが[13]に記載のサイトカイン群から選択される、[24]に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[26] 前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが2種以上のサイトカインをコードする、[23]~[25]の何れか1項に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[27] 前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、[15]に記載の第1のサイトカイン群から選択される任意の2種以上のサイトカインをコードする、または前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、IL-2と[15]に記載の第2のサイトカイン群から選択される1種のサイトカインまたは複数種のサイトカインとをコードする、[26]に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[28] 前記腫瘍退縮性アデノウイルスベクターが、2つの導入遺伝子の間に内部リボソーム侵入部位(IRES)または任意にリボソームシャント部位2Aを含む、[26]または[27]に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[29] [23]~[28]の何れか1項に記載の腫瘍退縮性ベクターを含む、医薬組成物。
[30] 対象における癌を治療する方法であって、[23]~[28]の何れか1項に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクターを、それを必要とする対象へ投与することを含む、方法。
[31] 癌の治療に使用するための[23]~[28]の何れか1項に記載の腫瘍退縮性アデノウイルスベクター。
[32] 前記方法または使用が、同時もしくは連続する放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法または他の抗癌薬もしくは介入の対象への適用をさらに含む、[1]~[17]、[20]または[30]~[31]の何れか1項に記載の方法または使用。
【0116】
参考文献
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ウイルス構築物についての参考文献
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