(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】釣用回路ユニット及び釣用両軸受リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A01K89/017
(21)【出願番号】P 2019177933
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】堀 茂樹
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-071768(JP,U)
【文献】特開2016-007184(JP,A)
【文献】特開2016-049041(JP,A)
【文献】特開2014-100079(JP,A)
【文献】特開2018-130042(JP,A)
【文献】特開2013-046580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣用両軸受リール(10)の
回動部品(17S)
の回転軸回りにN極とS極とが並ぶマグネット(18)の磁気を検出する磁気センサ(19)と、
前記磁気センサ(19)の検出結果に基づいて前記
回動部品(17S)の
回転位置又は動きを演算する信号処理回路(52)と、
前記信号処理回路(52)の演算結果に応じて前記釣用両軸受リール(10)を制御するか又は前記釣用両軸受リール(10)の状態の報知を制御する制御回路(52)と、
前記信号処理回路(52)と前記制御回路(52)とが実装される回路基板(60A,60B)と、
前記回路基板(60A,60B)と前記磁気センサ(19)とを収容する防水ケース(41)と、を備え
、
前記磁気センサ(19)は、前記マグネット(18)に対して、前記回動部品(17S)の回転半径方向外側から対向配置される、釣用回路ユニット(40)。
【請求項2】
前記磁気センサ(19)は、前記回路基板(60A)に実装されている、請求項1に記載の釣用回路ユニット(40)。
【請求項3】
前記信号処理回路(52)は、前記回動部品(17S)の実際の回転位置の変化に対し、前記磁気センサ(19)の検出結果に基づく前記回動部品(17S)の演算上の回転位置がリニアに変化するように前記回転位置を演算する請求項1又は2に記載の釣用回路ユニット(40)。
【請求項4】
前記信号処理回路(52)は、前記回動部品(17S)の実際の回転位置の変化に対し、前記磁気センサ(19)の検出結果に基づく前記回動部品(17S)の演算上の回転位置がsin曲線状に変化するように前記回転位置を演算する請求項1又は2に記載の釣用回路ユニット(40)。
【請求項5】
前記sin曲線のうち隣り合う極大値と極小値の間の部分に相当する演算上の回転位置のみが使用される、請求項4に記載の釣用回路ユニット(40)。
【請求項6】
前記回路基板(60A,60B)には、電動の前記釣用両軸受リール(10)のモータ(12)を駆動する駆動回路(54)が実装され、
前記制御回路(52)は、前記信号処理回路(52)の演算結果に応じて前記駆動回路(54)から前記モータ(12)への出力を制御する、請求項1から5のうち何れか1の請求項に記載の釣用回路ユニット(40)。
【請求項7】
請求項6に記載の釣用回路ユニット(40)を有する釣用両軸受リール(10)。
【請求項8】
前記
回動部品(17S)がフリーローラ構造をなしている、請求項7に記載の釣用両軸受リール(10)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の釣用両軸受リール(10)であって、
前記防水ケース(41)は、上下方向に扁平な形状をなして上部に配置され、
前記
回動部品(17S)は、前記防水ケース(41)の後方に配置されると共に、横方向に延びる回転軸を中心に回転するように操作される釣用両軸受リール(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動部品を備えた釣用両軸受リールと、その釣用両軸受リールに備えられる釣用回路ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣用両軸受リールとして、両端部が軸受で支持されるスプールや、スプールを駆動するための駆動操作レバー等を、可動部品として備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような釣用両軸受リールには、可動部品の近くに配置されるセンサと、そのセンサの検出結果を用いて可動部品の位置や動き等を演算する回路基板と、を有する釣用回路ユニットが備えられるものがある。従来の釣用回路ユニットでは、回路基板がケースに収容され、そのケース外に引き出されるケーブルにより回路基板とケース外のセンサとが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-49040号公報(段落[0022]、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の釣用回路ユニットでは、防水の手間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、釣用両軸受リール(10)の回動部品(17S)の回転軸回りにN極とS極とが並ぶマグネット(18)の磁気を検出する磁気センサ(19)と、前記磁気センサ(19)の検出結果に基づいて前記回動部品(17S)の回転位置又は動きを演算する信号処理回路(52)と、前記信号処理回路(52)の演算結果に応じて前記釣用両軸受リール(10)を制御するか又は前記釣用両軸受リール(10)の状態の報知を制御する制御回路(52)と、前記信号処理回路(52)と前記制御回路(52)とが実装される回路基板(60A,60B)と、前記回路基板(60A,60B)と前記磁気センサ(19)とを収容する防水ケース(41)と、を備え、前記磁気センサ(19)は、前記マグネット(18)に対して、前記回動部品(17S)の回転半径方向外側から対向配置される、釣用回路ユニット(40)である。
【0007】
請求項2の発明は、前記磁気センサ(19)は、前記回路基板(60A)に実装されている、請求項1に記載の釣用回路ユニット(40)である。
【0008】
請求項3の発明は、前記信号処理回路(52)は、前記回動部品(17S)の実際の回転位置の変化に対し、前記磁気センサ(19)の検出結果に基づく前記回動部品(17S)の演算上の回転位置がリニアに変化するように前記回転位置を演算する請求項1又は2に記載の釣用回路ユニット(40)である。
請求項4の発明は、前記信号処理回路(52)は、前記回動部品(17S)の実際の回転位置の変化に対し、前記磁気センサ(19)の検出結果に基づく前記回動部品(17S)の演算上の回転位置がsin曲線状に変化するように前記回転位置を演算する請求項1又は2に記載の釣用回路ユニット(40)である。
【0009】
請求項5の発明は、前記sin曲線のうち隣り合う極大値と極小値の間の部分に相当する演算上の回転位置のみが使用される、請求項4に記載の釣用回路ユニット(40)である。
【0010】
請求項6の発明は、前記回路基板(60A,60B)には、電動の前記釣用両軸受リール(10)のモータ(12)を駆動する駆動回路(54)が実装され、前記制御回路(52)は、前記信号処理回路(52)の演算結果に応じて前記駆動回路(54)から前記モータ(12)への出力を制御する、請求項1から5のうち何れか1の請求項に記載の釣用回路ユニット(40)である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の釣用回路ユニット(40)を有する釣用両軸受リール(10)である。
【0012】
請求項8の発明は、前記回動部品(17S)がフリーローラ構造をなしている、請求項7に記載の釣用両軸受リール(10)である。
【0013】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の釣用両軸受リール(10)であって、前記防水ケース(41)は、上下方向に扁平な形状をなして上部に配置され、前記回動部品(17S)は、前記防水ケース(41)の後方に配置されると共に、横方向に延びる回転軸を中心に回転するように操作される釣用両軸受リール(10)である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の釣用回路ユニット(40)では、信号処理回路(52)及び制御回路(52)が実装される回路基板(60A,60B)と、磁気センサ(19)とが、共通の防水ケース(41)に収容されるので、従来に比べて、釣用回路ユニット(40)の防水が容易となる。
【0015】
また、本発明では、磁気センサ(19)が、マグネット(18)に対して回動部品(17S)の回転半径方向外側から対向するので、釣用両軸受リール(10)を、可動部材(17S)の回転軸方向で嵩張ることを抑制可能となる。
【0016】
請求項2の発明では、磁気センサ(19)が回路基板(60A)に実装されるので、磁気センサ(19)と回路基板(60A)をケーブルで接続する従来の構成に比べて、釣用回路ユニット(40)をコンパクトにすることが可能となる。
【0018】
請求項6の発明のように、釣用回路ユニット(40)は、電動の釣用両軸受リールのモータ(12)を駆動する駆動回路(54)を備え、制御回路(54)が信号処理回路(52)の演算結果に応じて駆動回路(54)からモータ(12)への出力を制御する構成であってもよい(請求項7の発明)。即ち、釣用両軸受リール(10)が電動リールであってもよい。この場合、可動部品(17S)がフリーローラ構造をなしていてもよい(請求項8の発明)。
【0019】
請求項9の発明では、横方向に延びる回転軸を中心に回転する回動部品(17S)が、防水ケース(41)の後方に配置される。これにより、回動部品(17S)の回転軸方向に釣用両軸受リール(10)が嵩張ることを抑制することができる。また、防水ケース(41)が上下方向に扁平な形状をなしているので、釣用両軸受リール(10)を上下方向にコンパクトにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電動リールの斜視図
【
図4】釣用回路ユニットとマグネットのA-A断面図
【
図7】第2実施形態に係る電動リールのマグネットと釣用回路ユニットの側断面図
【
図8】駆動操作部の実際の回転位置と磁気センサの検出結果に基づく駆動操作部の回転位置の演算値とを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、
図1~6を参照しつつ、本開示の第1実施形態に係る釣用両軸受リールとしての電動リール10と、電動リール10に備えられる釣用回路ユニット40について説明する。
図1に示すように、電動リール10には、横方向で対向する1対の側壁21,21が設けられ、それら側壁21,21の間に、スプール11が差し渡されている。スプール11の両端部は各側壁21に備えられた図示しない軸受に支持され、スプール11は、横方向に延びる回転軸を中心に回転可能となっている。
【0022】
電動リール10では、スプール11に、モータ12(
図6参照)と手巻きハンドル13とが、図示しないクラッチ機構とギヤとを介して連結されている。また、スプール11の後側(電動リール10を使用する釣り人側)では、1対の側壁21,21の間に前述のクラッチ機構をオンオフするためのクラッチレバー14が差し渡されている。そして、クラッチ機構により、スプール11が、釣糸99を巻き取る巻取方向のみに回転可能な状態と、自在回転可能な状態とに切り替えられる。また、スプール11の巻取方向への回転は、モータ12又は手巻ハンドル13にて行うことができる。一方、スプール11の巻取方向とは逆の送出方向への回転は、スプール11が自在回転可能な状態で、釣糸99が餌や錘等に引っ張られることで行われる。また、クラッチ機構により、モータ12の一方向の回転出力が、スプール11に対して異なる向きの力に切り替えられて伝達され、スプール11の送出方向の回転をモータ12にてアシストすることもできるようになっている。なお、電動リール10の下側部分には図示しない釣竿が取り付けられる。
【0023】
電動リール10には、スプール11よりも上側に配置され、1対の側壁21の上端部同士を連絡する上側架橋部22が設けられている。上側架橋部22の後端部の横方向の中央には、後端凹部23が形成されている。そして、上側架橋部22のうち後端凹部23を挟んで横方向で対向する部分に、電動モードで使用する駆動操作部17が差し渡されて回転可能に支持されている。駆動操作部17は、例えば、1回転未満の回転範囲内で回転可能となっていて、駆動操作部17が回転範囲の一端側に配置されると、モータ12への電圧出力が停止される(スプール11が回転駆動されない)。そして、駆動操作部17が回転範囲の他端側に回転されるにつれて、モータ12への電圧出力が大きくなり(スプール11を速く回転可能となり)、駆動操作部17が回転範囲の他端に配置されると、モータ12への電圧出力が最大となる(スプール11を最大速度で回転可能となる)。
【0024】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、駆動操作部17は、ローラ形状をなし、横方向に延びるシャフト17S(特許請求の範囲に記載の「
回動部品」に相当する。)の中央部に一体回転可能に備えられている。シャフト17Sは、両端部を図示しない1対の軸受に支持され、駆動操作部17は、例えば、シャフト17Sと共に1回転未満の範囲で回転可能になっている。なお、駆動操作部17の周方向の一部には、駆動操作部17の回転位置を使用者に把握させ易くしたり、駆動操作部17を操作し易くするための突部17Tが設けられている。また、駆動操作部17は、容易に回転可能であるが、振動では動かない程度に例えば前述の1対の軸受に備えた防水シール等により任意の位置で摩擦係止されるようになっている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、シャフト17Sの一端部には、マグネット18が一体回転可能に備えられている。本実施形態では、マグネット18は、シャフト17Sと同軸の環状をなし、シャフト17Sの回転軸回りにN極とS極とが交互に配置される。詳細には、マグネット18は、周方向に等分(本実施形態の例では4等分)するようにN極とS極が配置されている。なお、スプール11の端部にも図示しないマグネットが取り付けられている。スプール11のマグネットは、例えば、シャフト17Sのマグネット18と同様の構成となっている。
【0026】
電動リール10の上側架橋部22の上面には、窓部15が配置され、その窓部15を通してモニタ67(
図5参照)が視認可能となっている。また、上側架橋部22の上面には、窓部15の後側に横並びに配置された複数の設定ボタン16が備えられている。
【0027】
電動リール10内の上部には、
図2及び
図3に示す釣用回路ユニット40が備えられている。具体的には、釣用回路ユニット40は、例えば透明な樹脂製の防水ケース41を有し、防水ケース41の内部に回路基板を収容して備える。防水ケース41は、上下方向に扁平な形状をなして、シャフト17Sの周面に前側から対向し、例えば、透明な樹脂からなる。また、本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、前述の回路基板としては、上下に対向する1対の回路基板60A,60Bが設けられ、上側に配置される第1の回路基板60Aの上面には、前述のモニタ67が配置されている。
【0028】
前述の複数の設定ボタン16は、防水ケース41の複数の貫通孔に防水された状態で支持され、第1の回路基板60Aの上面に実装されている図示しない複数の押圧スイッチに突き当てられている。
【0029】
なお、釣用回路ユニット40は、上側架橋部22に組み付けられると、
図1に示すように、防水ケース41のうち窓部15と複数の設定ボタン16とを除いた部分が上側架橋部22の上面カバー49にて覆われる。
【0030】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の釣用回路ユニット40では、防水ケース41の両側面のケーブル引出口37Aからは、第1及び第2のケーブル42A,42Bが側方に引き出されている。また、防水ケース41の一側面に設けられたケーブル引出切欠き部37C(
図5参照)からは、第3のケーブル42Cが側方に引き出されている。第1~第3のケーブル42A~42Cは、1対の回路基板60A,60Bのうち下側に配置される第2の回路基板60Bに接続される。なお、防水ケース41のケーブル引出口37A,37Aは、防水処理されている。
【0031】
詳細には、
図6に示すように、第1ケーブル42Aの末端は、直流の外部電源59に接続するための電源コネクタ42Eの端子に接続される。なお、電源コネクタは、電動リール10の下面に固定されている。第2ケーブル42Bの末端は、前述のモータ12に接続される。第3ケーブル42Cの末端には、後述の磁気センサ19Zが接続されている。
【0032】
なお、防水ケース41及び防水ケース41に収容される部品の詳細は、例えば以下のようになっている。
図4及び
図5に示すように、防水ケース41は、下方が開放した容器状の上側ケース構成体41Aと、上側ケース構成体41Aの下方開口を閉塞する蓋状の下側ケース構成体41Bとからなる。下側ケース構成体41Bは、平板の外縁部から包囲壁61を起立させた構成となっていて、下側ケース構成体41Bのうち、上側ケース構成体41Aのケーブル引出口37Aとケーブル引出切欠き部37Cに対応する部分には、包囲壁61を内側に凹ませてシール剤受容部62が形成されている。
【0033】
モニタ67は、モニタ受容プレート68で下側から覆われた状態で第1の回路基板60Aに実装されている。第1の回路基板60Aのうちモニタ67よりも後側には、上側ケース構成体41Aの上面孔38に対応する位置に、前述の複数の押圧スイッチが実装されている。また、枠状のパッキン65が、モニタ67の外縁部と上側ケース構成体41Aの窓部15を囲む部分との間に挟まれる。第1の回路基板60Aと上側ケース構成体41Aとは、例えば、ビスB1により固定される。
【0034】
第2の回路基板60Bの下面の両側部には、前述の第1~第3のケーブル42A~42Cが接続される。そして、第1と第2のケーブル42A,42Bが、上側ケース構成体41Aの側面のケーブル引出口37Aに挿通される。また、第2のケーブル42Cが、上側ケース構成体41Aの側面のケーブル引出切欠き部37Cから引き出される。そして、下側ケース構成体41Bのシール剤受容部62にシール剤が充填されると共に、第2の回路基板60Bが上側ケース構成体41Aと下側ケース構成体41Bの間に配置されて、上側ケース構成体41Aと下側ケース構成体41BがビスB2により固定される。このとき、上側ケース構成体41Aと下側ケース構成体41Bとの間が、図示しないシール部品によりシールされると共に、ケーブル引出口37A及びケーブル引出切欠き部37Cと第1~第3のケーブル42A~42Cとの間が、前述のシール剤によりシールされる。これにより、
図4に示すように、回路基板60A,60Bやモニタ67等の部品が、防水ケース41内に水密状態に収容される。なお、
図4では、パッキン65とモニタ受容プレート68は省略されている。
【0035】
図4及び
図5に示すように、駆動操作部17の回転に伴う磁界の変化を検出するために釣用回路ユニット40には、マグネット18の磁気を検出する磁気センサ19が備えられている。磁気センサ19は、防水ケース41内のうち、マグネット18の近傍位置に配置される。詳細には、磁気センサ19は、マグネット18に対して、シャフト17S(駆動操作部17)の回転半径方向の外側から対向する。本実施形態では、磁気センサ19は、第1の回路基板60Aに実装されている。具体的には、磁気センサ19は、第1の回路基板60Aの後端部(シャフト17S側の端部)の下面うち、シャフト17Sの一端側(マグネット18側)寄りの位置に搭載されている。また、磁気センサ19は、駆動操作部17の回転方向を判別するために、磁力検出部(図示せず)をマグネット18の回転方向に沿った少なくとも2箇所に備える。そして、駆動操作部17の回転位置に応じた検出信号を後述のインターフェース回路53に出力する。
【0036】
本実施形態では、磁気センサ19は、ホール素子で構成されるが、これに限定されるものではなく、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)、AMR素子(異方性磁気抵抗効果素子)、TMR素子(トンネル磁気抵抗効果素子)等で構成されてもよい。なお、磁気抵抗効果素子(MR素子)として、例えば、磁化方向が固定されたピン層と磁化方向が可変のフリー層とで非磁性層を挟んだ積層構造をなすものを用いてもよい。そして、このMR素子を2行2列に同一平面上に載置して、各ピン層の磁化方向が90度ずつ異なるように配置してもよい。この場合、MR素子の載置面を、例えば、駆動操作部17の回転軸と平行に配置してもよいし、駆動操作部17の回転軸と直交するように配置してもよい。
【0037】
なお、釣用回路ユニット40には、スプール11の回転を検出するための磁気センサ19Zも備えられている。磁気センサ19Zは、前述の第3のケーブル42Cの末端に接続され、スプール11に備えられた前述のマグネットと対向配置される。磁気センサ19Zとしては、駆動操作部17用の磁気センサ19と同様に、ホール素子、GMR素子、AMR素子、TMR素子等からなるものを用いることができる。
【0038】
図6には、釣用回路ユニット40を含んだ電動リール10の回路の一部が示されている。釣用回路ユニット40は、例えば外部電源59から受電する電源回路51と、MCU52(Micro Controller Unit)と、磁気センサ19の検出信号をMCU52に取り込むためのインターフェース回路53と、モータ12を駆動するための駆動回路54と、を有する。なお、これら電源回路51、MCU52、インターフェース回路53、駆動回路54は、第1と第2の回路基板60A,60Bのうち何れかに実装されていて、これら全てが一方の回路基板にのみ実装されていてもよいし、それらのうち一部が第1の回路基板60Aに実装され、残りが第2の回路基板60Bに実装されていてもよい。
【0039】
電源回路51は、外部電源59から受電して変圧し、直流電圧をMCU52、インターフェース回路53等に出力する。
【0040】
モータ12は、直流モータであり、モータ12の一方の電極は、電源ケーブル42Aを介して外部電源59の正極に接続される一方、モータ12の他方の電極は、スイッチ57と電源ケーブル42Aとを介して外部電源59の負極に接続されている。即ち、本実施形態の駆動回路54は、外部電源59に接続される1対の入力電極54Aと、モータ12に接続される1対の出力電極54Bとを有した構造をなし、スイッチ57がMCU52よりオンオフされるPWM制御によって、モータ12への出力電圧が変更される。
【0041】
MCU52は、ROM,RAM、CPU、A/Dコンバータを有する。そして、MCU52は、インターフェース回路53を通して磁気センサ19から取得した検出信号に基づいて、駆動回路54の出力をPWM制御する。
【0042】
具体的には、MCU52は、磁気センサ19からの検出信号を取得し、その検出信号の変化に基づいて駆動操作部17の回転方向と回転位置等を演算する。そして、MCU52の制御回路52Aは、その演算結果に応じて(即ち、駆動操作部17の操作に応じて)、駆動回路54の出力を例えばPWM制御によって変更する。なお、例えば、駆動操作部17の回転量と駆動回路54の出力の変化量とが一定となっている。
【0043】
本実施形態の釣用回路ユニット40と電動リール10の構成についての説明は以上である。本実施形態の釣用回路ユニット40では、インターフェース回路53やMCU52等が実装される回路基板60A、60Bと、磁気センサ19とが、共通の防水ケース41に収容されるので、磁気センサ19が防水ケース41外に配置される従来の構成に比べて、釣用回路ユニット40の防水が容易となる。
【0044】
また、本実施形態では、磁気センサ19が、マグネット18に対して駆動操作部17(シャフト17)の回転半径方向外側から対向するので、釣用両軸受リール10を、駆動操作部17の回転軸方向で嵩張ることを抑制可能となる。しかも、磁気センサ19が回路基板60Aに実装されるので、磁気センサと回路基板をケーブルで接続する従来の構成に比べて、釣用回路ユニット40をコンパクトにすることが可能となる。また、本実施形態では、横方向に延びる回転軸を中心に回転する駆動操作部17が、防水ケース41の後方に配置される。これにより、駆動操作部17の回転軸方向に釣用両軸受リール10が嵩張ることを抑制することができる。また、防水ケース41が上下方向に扁平な形状をなしているので、釣用両軸受リール10を上下方向にコンパクトにすることが可能となる。
【0045】
[第2実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態において、駆動操作部17と一体回転するマグネット18を変更したものである。
図7に示すように、本実施形態の釣用回路ユニット40Vでは、シャフト17Sの一端部に、棒磁石状のマグネット18Vが備えられている。詳細には、マグネット18Vは、軸方向の一端部がN極、他端部がS極となっている。そして、マグネット18Vは、軸方向がシャフト17Sの回転軸と直交するように配置され、軸方向の中央がシャフト17Sの回転軸上に配置される。即ち、マグネット18Vにおいても、シャフト17Sの回転軸回りにN極とS極が並ぶこととなる。
【0046】
図8のグラフには、駆動操作部17の実際の回転位置と、磁気センサ19の検出結果を基にMCU52が演算した駆動操作部17の回転位置の演算結果と、の関係が示されている。
図8のグラフに実線で示すように、上記第1実施形態の釣用回路ユニット40における環状のマグネット18を用いた場合、駆動操作部17(マグネット18)の実際の回転位置と、MCU52により演算された回転位置とが、直線関係を有するようにMCU52の演算処理や回路等を設定することができる。ここで、この設定のままマグネット18を本実施形態のように棒磁石状のマグネット18Vに変更すると、マグネット18Vの回転による周辺の磁気(磁束密度)変化が
図8のグラフに破線で示すようにsin曲線状に変化するため、
図8のグラフに1点鎖線又は2点鎖線で示すように、MCU52の演算結果には、直線関係からズレが生じ得る。このようなズレは、MCU52の演算処理等の設定を変更して補正することができるが、このようにズレが生じた設定のままとすることで、駆動操作部17の回転量に対するモータ12の出力の変化量を、一定ではなくすることができる。従って、例えば、微調整したいモータ12の出力領域に対応する駆動操作部17の回動範囲を、
図8のグラフの2点鎖線で示す曲線において傾きが実線で示す直線よりも小さい部分に設定することで、モータ12の出力を微調整し易くすることが可能となると考えられる。また、磁気センサ19が検出した磁気のsin曲線のうち隣り合う極大値と極小値の間の部分のみを使用して(又は、
図8のグラフの実線の直線に対する上記演算結果のズレにおける隣り合う極大値と極小値の間の部分のみを使用して)、駆動操作部17の回転位置を検出するように構成すれば、磁気が単調増加又は単調減少で変化する範囲を使用することとなるので、駆動操作部17の回転位置の算出が容易となる。これらの構成では、
図8のグラフにおいて完全な直線関係が得られなくてもよくなるため、磁気センサ19及びマグネット18Vの配置や形状の設計の自由度や、磁気回路の設計の自由度を高くすることが可能となる。その結果、磁気センサ19やマグネット18Vに廉価なものを使用することが可能となり、コスト削減を図ることが可能となる。
【0047】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、磁気センサ19Zにより位置又は動きが検出される可動部品として、回転する部品(スプール11)が設けられていたが、スライドする部品が設けられてよいし、シーソー状に傾動する部品(例えば、駆動操作部)が設けられてもよい。例えば、前者の場合、磁気センサをマグネット付きのスライド部品の移動方向に沿って複数備えることで、スライド部品の位置や動きを検出することができる。
【0048】
(2)上記実施形態では、本開示の「両軸受リール」が、電動リール10であったが、スプール11を手動で回転させる手動式のベイトリールであってもよい。この場合においても、スプール11にマグネットを固定することで、上記実施形態と同様にして、磁気センサ19Zの検出結果に基づいて、スプール11の回転位置や回転回数をMCU52で演算し、水面からの釣糸の先端の位置(釣針の位置)の深さを概算することが可能となる。そして、その概算結果(ベイトリールの状態)をモニタ等で報知し、その報知を制御回路52Aにより制御すればよい。
【0049】
(3)上記実施形態において、インターフェース回路53とMCU52とを実装する回路基板が、共通であってもよいし、別々であってもよい。また、MCU52を実装する回路基板が、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0050】
(4)上記実施形態では、スプール11用の磁気センサ19Zが、防水ケース41の外側に配置されていたが、防水ケース41の内部に収容されてスプール11のマグネットの近傍に配置されてもよい。なお、磁気センサ19,19Zのうち少なくとも一方が、防水ケース41に収容されていればよい。
【0051】
(5)上記実施形態において、駆動操作部17が、フリーローラ構造になっていてもよく、駆動操作部17が、シャフト17Sと共に無制限に回転可能となっていてもよい。
【0052】
(6)上記実施形態では、マグネット18が、シャフト17S(駆動操作部17)に一体回転可能に備えられていたが、シャフト17Sと連動する部品(例えば、シャフト17Sに固定されたギヤと連動する他のギヤ)に備えられていてもよい。
【0053】
(7)上記実施形態では、磁気センサ19が、シャフト17Sの周面に対向していたが(マグネット18に径方向外側から対向していたが)、シャフト17Sに、軸方向で対向していてもよい。この場合、磁気センサ19が防水ケース41内に収容されるように、防水ケースの一部を、シャフト17Sに軸方向で対向する位置まで張り出させ、その張り出し部分に、磁気センサ19を配置すればよい。
【符号の説明】
【0054】
10 電動リール
11 スプール
12 モータ
17 駆動操作部
17S シャフト
18 マグネット
19 磁気センサ
19Z 磁気センサ
40 釣用回路ユニット
41 防水ケース
52A 制御回路
53 インターフェース回路
54 駆動回路
60A 第1の回路基板
60B 第2の回路基板