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特許7114559ショベル、建設機械用の端末及び端末用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ショベル、建設機械用の端末及び端末用プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20220801BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220801BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20220801BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20220801BHJP
   G08B 21/22 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
G01S1/68
H04M1/00 R
G08B21/22
H04M1/00 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019226890
(22)【出願日】2019-12-16
(62)【分割の表示】P 2014092984の分割
【原出願日】2014-04-28
(65)【公開番号】P2020073766
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英彦
(72)【発明者】
【氏名】泉川 岳哉
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-346228(JP,A)
【文献】特開2007-085091(JP,A)
【文献】特開2005-071377(JP,A)
【文献】特開2012-127059(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013910(WO,A1)
【文献】特開2014-031660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0151508(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0021316(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
G01S 1/68
H04M 1/00
G08B 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルであって、
走行体と、
前記走行体に搭載された旋回体と、
前記旋回体の前側に設けられた掘削アタッチメントと、
前記掘削アタッチメントの左側に設けられたキャビンと、を備え、
前記ショベルの周囲の所定距離内の端末を持つ作業者に関する情報を、前記ショベルの周囲の所定距離内の端末が、前記キャビンの運転者が持つ運転者端末とは異なる、前記ショベルの周囲の作業者が持つ作業者端末であると判断された場合に前記キャビンの運転者に通知する、
ショベル。
【請求項2】
前記ショベルから所定距離内に存在する端末毎のGPS情報を受信する、
請求項1のショベル。
【請求項3】
前記作業者に関する情報には、前記作業者の接近、前記作業者の位置、前記作業者と前記ショベルとの間の距離、及び、前記作業者の識別情報のうちの少なくとも1つが含まれる、
請求項1のショベル。
【請求項4】
前記キャビン内に存在する端末を介し、前記作業者に関する情報を、前記キャビン内の前記運転者に通知する、
請求項1乃至3の何れかのショベル。
【請求項5】
前記キャビン内に存在する端末は、前記作業者に関する情報を、音、表示、又は、振動によって、前記キャビン内の前記運転者に通知する、
請求項4のショベル。
【請求項6】
前記キャビン内に設けられ、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)の通信機能を備えた手段を接続するための接続部と、
前記キャビン内に設けられた通知部と、を備え、
前記接続部及び前記通知部を介し、前記ショベルから所定距離内の端末を持った前記作業者に関する情報を、前記キャビン内の前記運転者に通知する、
請求項1乃至5の何れかのショベル。
【請求項7】
前記キャビン内に設けられたディスプレイを備え、
前記ディスプレイに、端末毎の端末に関する情報を表示する、
請求項1乃至6の何れかのショベル。
【請求項8】
建設機械の周りで作業する作業者の安全を図る建設機械用の端末であって、
前記建設機械の周囲の所定距離範囲内に存在し、かつ、前記建設機械のキャビンの運転者が持つ運転者端末とは異なる、前記建設機械の周囲の作業者が持つ作業者端末であると判断された場合に、前記建設機械に取り付けられる発信機からの第1情報を受信し、前記建設機械の存在を通知する、
建設機械用の端末。
【請求項9】
建設機械の周りで作業する作業者が所持する端末へインストールされるプログラムであって、
前記建設機械の周囲の所定距離範囲内に前記端末が存在し、かつ、前記建設機械のキャビンの運転者が持つ運転者端末とは異なる、前記建設機械の周囲の作業者が持つ作業者端末であると判断された場合に、前記建設機械に取り付けられる発信機からの第1情報を前記端末が受信したときに、前記端末に前記建設機械の存在を通知させる、
端末用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダを装着したショベル周辺の作業者とショベルに搭載されたトランシーバとの間でマイクロ波を送受信させることによりトランスポンダとトランシーバとの間の距離を取得し、その距離に基づいて作業者がショベルに接近したことをショベルのオペレータに知らせるシステムが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-036050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のシステムは、専用のトランスポンダを作業者の数だけ用意する必要があるため、作業現場毎に異なる作業者の数に対応できないおそれがある。
【0005】
上述に鑑み、周辺で作業する作業者の安全を更に図るショベルを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例に係るショベルは、走行体と、前記走行体に搭載された旋回体と、前記
旋回体の前側に設けられた掘削アタッチメントと、前記掘削アタッチメントの左側に設け
られたキャビンと、を備え、前記ショベルの周囲の所定距離内の端末を持つ作業者に関する情報を、前記ショベルの周囲の所定距離内の端末、前記キャビンの運転者が持つ運転者端末とは異なる、前記ショベルの周囲の作業者が持つ作業者端末であると判断された場合に前記キャビンの運転者に通知する。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、周辺で作業する作業者の安全を更に図るショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る安全作業支援システムが搭載されるショベルの構成例を示す側面図である。
図2】安全作業支援アプリケーションの構成例を示す機能ブロック図である。
図3】ショベル及びその周辺の上面視である。
図4】情報通知処理の流れを示すフローチャートである。
図5】作業者端末のディスプレイに表示される警告画面の一例を示す。
図6】運転者端末のディスプレイに表示される警告画面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る安全作業支援システム100を搭載する建設機械としてのショベルの側面図を示す図である。ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられる。ブーム4、アーム5、及びバケット6は掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。また、上部旋回体3の上部には発信機50が取り付けられる。
【0010】
また、図1は、スマートフォンSP0を持った運転者D0がショベルのキャビン10内に搭乗している状態を示す。また、図1は、スマートフォンSP1を持った作業者W1とスマートフォンSP2を持った作業者W2とがショベルの周囲で作業している状態を示す。
【0011】
安全作業支援システム100は、ショベルの周りで作業する作業者W1、W2の安全を図るシステムであり、主に発信機50で構成される。発信機50は、作動状態のときに所定周期でショベル信号を発信する装置であり、例えば、近距離無線通信規格であるBluetooth(登録商標)に準拠した装置、又は、無線LAN規格であるIEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))に準拠した装置である。ショベル信号はショベルの存在を周囲に知らせるための信号である。本実施例では、発信機50は、ショベルを中心とする所定距離範囲内の領域に存在するスマートフォンが受信できる程度の電波強度でショベル信号を発信する。また、発信機50は、ショベルへの着脱が容易な電池駆動の装置であり、例えばショベルを作動させる際に取り付けられ、ショベルを停止させた後で取り外される。そして、ショベルに取り付けられている間は常に作動状態となるように構成される。なお、発信機50はショベルの起動に連動して起動し、ショベル作動時に作動状態となりショベル停止時に停止状態となるように構成されてもよい。
【0012】
また、ショベル信号は発信機50の識別情報を含む。発信機50の識別情報は、例えばBluetooth Deviceアドレス、MACアドレス等である。そのため、ショベル信号を受信したスマートフォンは発信機50を一意に特定できる。
【0013】
次に、図2及び図3を参照し、スマートフォンSP0~SP2のそれぞれにインストールされる安全作業支援アプリケーション60の各構成要素について説明する。なお、図2は、安全作業支援アプリケーション60の構成例を示す機能ブロック図である。また、図3は、ショベル及びその周辺の上面視であり、破線円50Rは、発信機50の電波到達範囲を表す。また、図3は、ショベルのキャビン10内に車載ディスプレイ55、車載ラジオ56、及び車載スピーカ57が設置された状態を示す。
【0014】
安全作業支援アプリケーション60は、スマートフォン上で動作するプログラムであり、主に、識別部61、通知部62、及び送信部63を含む。
【0015】
識別部61は、ショベル信号を受信したスマートフォンが運転者端末であるかを識別する機能要素である。本実施例では、識別部61は、ショベル信号に含まれる発信機50の識別情報に基づいて、ショベル信号を受信したスマートフォンが運転者端末であるかを識別する。また、各スマートフォンは、発信機50の識別情報とその識別情報によって特定される発信機50が取り付けられたショベルの運転者に関する情報との対応関係を示す対応テーブルを予め記憶している。なお、運転者に関する情報は、運転者が所持するスマートフォン(以下、「運転者端末」とする。)の識別情報を含み、例えば、IMEI(International Mobile Equipment Identity)、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)等である。
【0016】
具体的には、識別部61は、対応テーブルを参照して運転者端末の識別情報を取得する。その後、識別部61は、運転者端末の識別情報と、自身が動作するスマートフォン(以下、「自端末」とする。)の識別情報とを比較して2つの識別情報が一致するかを判定する。そして、一致すると判定した場合、識別部61は、自端末が運転者端末であると識別する。また、一致しないと判定した場合、識別部61は、自端末が運転者端末以外の端末(以下、「作業者端末」とする。)であると識別する。
【0017】
また、運転者端末は、作業者端末となり得るスマートフォンの識別情報を取得できる場合には、例えばショベル及び発信機50が起動されたときに、自端末が運転者端末であることを各作業者端末に通知し、各作業者端末に記憶された対応テーブルを更新させてもよい。
【0018】
なお、識別部61は、ネットワークを経由して所定の情報サーバにアクセスし、その情報サーバに記憶された対応テーブルを参照して自端末が運転者端末であるかを識別してもよい。また、運転者は、運転者端末を通じて情報サーバに記憶された対応テーブルを更新し、自端末が運転者端末であることを登録してもよい。
【0019】
また、上述の例はショベルの運転者が固定的である場合に関するが、ショベルの運転者はその都度入れ替わる場合もある。この場合、識別部61は、ショベル信号の電波強度に基づいて自端末が運転者端末であるかを識別してもよい。これは、運転者が所持するスマートフォンは、発信機50に近い位置(キャビン10内)に存在するという事実に基づく。
【0020】
なお、識別部61は、情報サーバを利用する場合には、ショベル信号の電波強度に基づいて自端末が運転者端末であると識別したときにその旨を情報サーバに通知し、情報サーバが記憶する対応テーブルの内容を更新してもよい。他のスマートフォンが情報サーバにアクセスしたときに最新の情報を得ることができるようにするためである。また、情報サーバは、対応テーブルの内容が更新された場合にその更新された情報を各スマートフォンに通知し、各スマートフォンが記憶する対応テーブルの内容を更新させてもよい。
【0021】
通知部62は、スマートフォンの所持者に各種情報を通知する機能要素である。本実施例では、通知部62は、ショベル信号を受信し且つ自端末が作業者端末であると識別された場合、近くにショベルが存在する旨をそのスマートフォンの所持者である作業者に通知する。具体的には、通知部62は、自端末の付属ディスプレイにその旨を表すテキストメッセージ等の画像を表示させたり、自端末の付属スピーカからその旨を表す音声メッセージを音声出力させたりする。その際、通知部62は、自端末のバイブレーション機能を利用してもよい。また、通知部62は、作業者信号を受信した場合、近くに作業者が存在する旨をそのスマートフォンの所持者である運転者に通知する。
【0022】
作業者信号は、自端末が作業者端末であると識別した場合にその作業者端末が運転者端末に対して送信する信号である。作業者信号は、例えば、作業者端末が受信したショベル信号に含まれる発信機50の識別番号、作業者端末の位置情報等を含む。なお、作業者端末の位置情報は、例えば、作業者端末のGPS機能によるGPS情報(緯度、経度、高度に関する情報)である。
【0023】
また、通知部62は、作業者信号に含まれる作業者端末の位置情報と、運転者端末である自端末の位置情報とに基づいて作業者端末と運転者端末との位置関係を把握し、その位置関係を表す画像情報を付属ディスプレイに表示してもよい。
【0024】
なお、運転者D0の所持するスマートフォンSP0は、ショベルのキャビン10内にある車載機器に自動的に無線接続されてもよく有線接続されてもよい。そして、スマートフォンSP0が車載機器に接続されている場合、通知部62は、車載機器を利用して運転者に対する通知を行うようにしてもよい。例えば、本実施例では、スマートフォンSP0は、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等に準拠する無線通信により車載ディスプレイ55及び車載ラジオ56に接続される。そのため、スマートフォンSP0は、各種画像を車載ディスプレイ55に表示させ、且つ、車載ラジオ56を通じて車載スピーカ57から音声を出力させることができる。そして、通知部62は、近くに作業者が存在する旨を表すテキストメッセージ等の画像を車載ディスプレイ55に表示させることができ、その旨を表す音声メッセージを車載スピーカ57から音声出力させることができる。
【0025】
送信部63は、各種情報を他のスマートフォンに送信する機能要素である。本実施例では、送信部63は、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等に準拠する無線通信を通じ、運転者端末に対して作業者信号を送信する。具体的には、送信部63は、識別部61が取得した運転者端末の識別情報に基づいて送信先を特定し、その送信先に作業者信号を送信する。
【0026】
次に、図4を参照し、安全作業支援アプリケーション60が運転者D0、作業者W1、作業者W2に情報を通知する処理(以下、「情報通知処理」とする。)の一例について説明する。なお、図4は、情報通知処理の流れを示すフローチャートであり、安全作業支援アプリケーション60は、所定周期で繰り返しこの情報通知処理を実行する。
【0027】
最初に、安全作業支援アプリケーション60は、ショベルに取り付けられた発信機50が発信するショベル信号を受信したか判定する(ステップS1)。
【0028】
そして、ショベル信号を受信したと判定した場合(ステップS1のYES)、安全作業支援アプリケーション60の識別部61は、自端末が運転者端末であるかを識別する(ステップS2)。
【0029】
識別部61により自端末が運転者端末でないと判定された場合(ステップS2のNO)、すなわち自端末が作業者端末であると判定された場合、安全作業支援アプリケーション60の通知部62は、ショベルの存在を作業者に通知する(ステップS3)。具体的には、通知部62は、作業者端末としての自端末のディスプレイにショベルが近くに存在する旨を表す警告画面を表示する。なお、図5は、作業者端末のディスプレイに表示される警告画面の一例を示す。このとき、通知部62は、ショベルが近くに存在する旨を表す音声メッセージをその作業者端末の付属スピーカから音声出力させてもよく、バイブレータ機能を作動させてもよい。
【0030】
その後、安全作業支援アプリケーション60の送信部63は、運転者端末に対して作業者信号を送信する(ステップS4)。具体的には、送信部63は、無線通信を通じ、作業者端末の位置情報を含む作業者信号を運転者端末に向けて送信する。なお、運転者端末は、識別部61が運転者端末の識別の際に取得した運転者端末の識別情報に基づいて特定される。
【0031】
一方、識別部61により自端末が運転者端末であると判定された場合(ステップS2のYES)、通知部62は、作業者端末から作業者信号を受信したかを判定する(ステップS5)。
【0032】
そして、作業者端末から作業者信号を受信したと判定した場合(ステップS5のYES)、通知部62は、作業者の存在を運転者に通知する(ステップS6)。具体的には、通知部62は、運転者端末としての自端末の付属ディスプレイに作業者が近くに存在する旨を表す警告画面を表示する。
【0033】
図6は、運転者端末の付属ディスプレイに表示される警告画面の一例を示す。図6の警告画面はその中央部分にショベルのCG画像を表示する。また、作業者信号に含まれる作業者端末の位置情報と運転者端末である自端末の位置情報とに基づいて導き出される作業者端末とショベルとの位置関係を表示する。なお、図6の点滅画像G1は作業者W1が所持するスマートフォンSP1の位置を表し、点滅画像G2は作業者W2が所持するスマートフォンSP2の位置を表す。このとき、通知部62は、作業者W1、W2がショベルの近くに存在する旨を表す音声メッセージを自端末の付属スピーカから音声出力させてもよく、バイブレータ機能を作動させてもよい。また、通知部62は、自端末がキャビン10内の車載機器に接続されている場合には、車載ディスプレイ55に警告画面を表示させてもよく、車載スピーカ57から音声メッセージを音声出力させてもよい。
【0034】
以上の構成により、安全作業支援システム100は、発信機50が周囲に向けて発信するショベル信号を作業者W1、W2が所持するスマートフォン(作業者端末)SP1、SP2に受信させてショベルの存在を通知する。このように、安全作業支援システム100は、通信端末として一般的に普及しているスマートフォンの標準的な通信機能を利用し、ショベルの周辺で作業する作業者にショベルの存在を通知できる。また、作業者が所有するスマートフォンを利用し、ショベルの周辺で作業する作業者にショベルの存在を通知できる。そのため、トランスポンダ等の専用端末を用意する必要がない。その結果、作業現場毎に作業者の数が異なる場合であっても必要な数の作業者端末を容易に確保でき、作業現場毎に異なる作業者の数に柔軟に対応できる。また、作業現場毎にショベルの数が異なる場合であっても必要な数の運転者端末を容易に確保でき、作業現場毎に異なるショベルの数に柔軟に対応できる。また、情報サーバを介さずに各種機能を実現できるため、周囲に基地局がなく携帯電話通信サービスを利用できない僻地に作業現場がある場合であっても有効に機能する。
【0035】
また、ショベル信号に含まれる発信機50の識別情報は、作業者端末SP1、SP2にインストールされた安全作業支援アプリケーション60により、運転者D0が所持するスマートフォン(運転者端末)SP0の識別情報に対応付けられる。そのため、ショベル信号を受信した作業者端末SP1、SP2は、運転者端末SP0に対して作業者情報を送信し、作業者端末SP1、SP2の存在を、運転者端末SP0に通知できる。
【0036】
また、作業者情報は、作業者端末SP1、SP2の位置情報を含む。具体的には、作業者情報は、ショベルと作業者端末SP1、SP2との間の距離に関する情報を含む。そして、その距離に関する情報の内容は、例えば、作業者端末SP1、SP2が受信したショベル信号の電波強度に応じて決定される。また、運転者端末SP0は、作業者端末SP1、SP2の位置情報と運転者端末SP0の位置情報とに基づいて作業者端末SP1、SP2と運転者端末SP0との位置関係を把握する。そして、作業者端末SP1、SP2の位置情報は、例えば、作業者端末SP1、SP2のGPS機能によるGPS情報に基づき、運転者端末SP0の位置情報は、例えば、運転者端末SP0のGPS機能によるGPS情報に基づく。この構成により、安全作業支援システム100は、作業者及び運転者のそれぞれに適した有用な情報を通知できる。
【0037】
また、運転者端末SP0は、ショベルに搭載される車載ディスプレイ55、車載ラジオ56等の出力装置に接続されてもよい。この場合、運転者端末SP0は、作業者端末SP1、SP2から作業者信号を受信した場合に、作業者端末SP1、SP2に関する情報をその出力装置から出力させる。そのため、安全作業支援システム100は、運転者端末SP0の付属ディスプレイよりも大きな車載ディスプレイに警告画面等を表示させることができる。また、運転者端末SP0の付属スピーカよりも大きな出力で車載スピーカから音声メッセージを音声出力させることができる。
【0038】
また、作業者端末SP1、SP2は、発信機50からショベル信号を受信した場合に、ショベルに関する情報を、付属ディスプレイ、付属スピーカ等の付属の出力装置に出力する。そのため、安全作業支援システム100は、運転者端末SP0を所持する運転者に対する情報の通知とは無関係に、作業者端末SP1、SP2を所持する作業者にショベルの存在を通知できる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0040】
例えば、上述の実施例では、単一の発信機50がショベルに取り付けられるが、複数個の発信機が取り付けられてもよい。この場合、安全作業支援システム100は、各発信機の識別情報を異ならせ、各発信機がショベル上で互いに所定距離以上離れた位置(例えば、ショベルの右前部、左前部、右後部、左後部の4箇所等)に取り付けられるようにする。この構成により、安全作業支援システム100は、取り付け位置と識別情報との対応関係を予め定義しておくことで、各発信機と作業者端末との間の距離に関する情報に基づいて作業者端末がショベルに対して周囲のどの位置に存在するかを特定できる。
【0041】
また、安全作業支援システム100は、1台のショベルの周辺で作業する作業者の安全を図るためのものとして説明された。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、安全作業支援システム100は、同じ作業現場で複数台のショベルが稼働している場合に、それら複数台のショベルのそれぞれの周辺で作業する作業者の安全を図るために利用されてもよい。この場合、ある特定のショベルに関する運転者端末は、他のショベルに関する作業者端末として機能する。
【0042】
また、安全作業支援システム100は、バケット、アーム、ブーム、旋回機構等の可動部材を備えながら自走するショベルに搭載される。しかしながら、安全作業支援システム100は、フォークリフト、アスファルトフィニッシャ等のように旋回機構を有しない建設機械に搭載されてもよい。或いは、安全作業支援システム100は、産業用機械若しくは固定式クレーン等のように可動部材を有するが自走はしない建設機械に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 50・・・発信機 50R・・・電波到達範囲 55・・・車載ディスプレイ 56・・・車載ラジオ 57・・・車載スピーカ 60・・・安全作業支援アプリケーション 61・・・識別部 62・・・通知部 63・・・送信部 100・・・安全作業支援システム D0・・・運転者 G1、G2・・・点滅画像 SP0、SP1、SP2・・・スマートフォン W1、W2・・・作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6