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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】粒子特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20220801BHJP
   G01N 21/51 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G01N15/02 A
G01N21/51
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019519749
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017074094
(87)【国際公開番号】W WO2018069024
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】16193377.5
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518101646
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スカリオン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コーベット ジェイソン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532468(JP,A)
【文献】特開2016-026301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0264809(US,A1)
【文献】特表2015-500467(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127880(WO,A1)
【文献】特開平07-182439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的光散乱測定および/または静的光散乱測定を行うように構成された粒子特性測定装置であって、前記粒子特性測定装置は、
光源と、
サンプル位置を画定するサンプルキャリアと、
前記光源と前記サンプルキャリアとの間に配置された光学素子であって、前記光学素子は、前記光源からの光を修正し、修正ビームを生成するように構成され、
前記修正ビームは、
a)前記修正ビーム自身に干渉して、前記サンプル位置において有効ビームを照射軸に沿って生成し、
b)遠視野において発散し、実質的に照光されない暗領域を、前記照射軸に沿って前記サンプルキャリアから離れた位置に生成する、光学素子と、
前記サンプルキャリア内のサンプルによって前記有効ビームから散乱された光を検出するように構成された、前記サンプルキャリアから離れて配置された検出器であって、前記照射軸から0°~10°の角度に画定された散乱軸に沿った前方散乱光または後方散乱光を検出するように配置された検出器と、を備える粒子特性測定装置。
【請求項2】
前記サンプルキャリアはサンプルセルであり、前記修正ビームは自身に干渉して、前記サンプルセルにおいて、前記有効ビームを前記照射軸に沿って生成することを特徴とする、請求項1に記載の粒子特性測定装置。
【請求項3】
前記検出器は、前方散乱光を検出するように配置された第1検出器であって、前記粒子特性測定装置は、後方散乱光を検知するように配置された第2検出器をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子特性測定装置。
【請求項4】
前記検出器はアクティブな検出領域を備え、前記アクティブな検出領域は、完全に前記暗領域内に位置することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項5】
前記有効ビームは、ベッセルビームに近似していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項6】
前記光学素子は、アキシコンレンズであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項7】
前記光学素子は減光レンズであって、前記レンズは、その中心に遮光オブスキュレーション(obscuration)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項8】
前記検出器または第2検出器が後方散乱光を検出するように配置された際、前記検出器または前記第2検出器が前記遮光オブスキュレーションを形成することを特徴とする、請求項7に記載の粒子特性測定装置。
【請求項9】
前記レンズは、前記レンズの中心を貫く開口部を備え、前記検出器または第2検出器が後方散乱光を検出するように配置された際、前記検出器または前記第2検出器が前記開口内に配置されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の粒子特性測定装置。
【請求項10】
前記光学素子は、
前記光源からの光を第1部分と第2部分とに分割するように構成されたビームスプリッタと、
前記第1部分および前記第2部分を受光するように配置された少なくとも1枚のレンズとを備え、前記少なくとも1枚のレンズは、前記第1部分および前記第2部分をサンプルキャリアの表面に向けるように構成されたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項11】
レンズが、前記光源からの前記光の両方の部分を受光するように配置され、前記レンズは光の両方の部分を前記サンプルキャリアの表面に向けるように構成され、前記レンズは、前記第1部分および前記第2部分が前記レンズの前記中心に対して前記レンズの対向する位置に入射するように、任意に配置されることを特徴とする、請求項10に記載の粒子特性測定装置。
【請求項12】
前記サンプルキャリアは、液体サンプルの液滴を保持するための液滴表面を備える、または、前記サンプルキャリアは、キュベットを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項13】
前記散乱軸に沿って散乱した光を、前記検出器へと偏光するように構成された偏光素子をさらに備えることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項14】
前記光学素子、前記サンプルキャリア、および前記偏光素子は、ボディ上に支持されており、前記ボディは、前記光源と前記検出器とを備える光学装置に任意で収容されるように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の粒子特性測定装置。
【請求項15】
前記サンプル位置において、サンプルによって前記有効ビームから散乱された光を検出するように構成された追加の検出器であって、前記照射軸から85~95°の角度に画定された散乱軸に沿った散乱光を検出するように配置された、追加の検出器をさらに備えることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の粒子特性測定装置。
【請求項16】
動的光散乱法を用いてサンプル中に分散した粒子の特性を測定する方法であって、該方法は、
前記サンプルをサンプルキャリア上、またはサンプルキャリア内に配置することと、
前記サンプルを照光する光源を提供することと、
前記光源と前記サンプルとの間に配置された光学素子を用いて、前記光源からの光を修正することであって、前記光学素子は、前記光源からの光を修正し、修正ビームを生成するように構成され、前記修正ビームは、自身に干渉して前記サンプルにおいて有効ビームを照射軸に沿って生成し、遠視野において発散して、実質的に照光されない暗領域を前記照射軸に沿って前記サンプルセルから離れた位置に生成する、前記光源からの光を修正することと、
前記照射軸から0~10°の角度で画定された散乱軸に沿って、前記サンプルから前方または後方に散乱した光を、前記サンプルから離れて配置された検出器を用いて検出することとを備える、方法。
【請求項17】
液体サンプルを支持、または収容するように構成されたキュベットホルダに収容可能なボディと、
前記ボディに取り付けられ、光源からの光を修正し、修正ビームを生成するように構成された光学素子であって、前記修正ビームは、a)自身に干渉して、前記ボディにおいて、照射軸に沿って伝搬する有効ビームを生成する、b)遠視野において発散して、実質的に照光されない暗領域を、前記照射軸に沿って前記サンプルセルから離れた位置に生成する、光学素子とを備える、光学アセンブリ。
【請求項18】
前記ボディは、液体サンプルを収容するように構成され、前記ボディの外側からの照明光を前記サンプルへと伝送させ、散乱した光を前記サンプルから前記ボディの外側へと伝送させるように構成されていることを特徴とする、請求項17に記載の光学アセンブリ。
【請求項19】
前記ボディに取り付けられ、前記暗領域に配置された偏光素子であって、前記偏光素子は、前記液体サンプルから散乱した光を、前記照射軸の方向に、前記照射軸に対してゼロではない角度の軸に沿ってそらすように構成された偏光素子をさらに備えることを特徴とする、請求項17または18に記載の光学アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、粒子特性を測定するための装置、特に、その粒子を含むサンプルから散乱した光を検出することによって、粒子特性を測定するための装置に関する。
[背景技術]
サンプルによる光の散乱は、サンプル中の粒子の特性を判定するための様々な実験手法において用いられる。例えば、電気泳動光散乱法、動的光散乱法、偏向解消動的光散乱法、および静的光散乱法は全て、粒子の形状、粒子径分布、または分子量等の粒子特性の抽出に用いることが可能である。
【0002】
通常、このような実験には、光源を用いてサンプルを照光し、サンプルから明確に画定された検出角度で散乱した光の強度を検出することが含まれる。散乱角は、照明光ビームの方向に対して測定される。照明光ビームの方向は、ゼロ軸を画定し、照射軸とも呼ばれ、そこから散乱の角度が測定可能である。
【0003】
いくつかの用途では、低角度(例えば、照射軸に対して10°未満)で散乱した光を測定することが望ましい。低角度で散乱した光を検出するのは、難しい場合がある。照明光ビームは、照射軸に沿ってサンプルを貫いて進む。特に、入射光の波長および偏光と散乱光の波長および偏光とが同じ場合は、入射光から散乱光を分離するのは困難な場合がある。その結果、低角度の手法、例えば低角度光散乱法(LALS)では、ゼロではない角度で散乱した光を検出し、ゼロ度でない小さな角度の散乱光の強度は、ゼロ度の散乱光(すなわち、サンプルから照射軸に沿って照明光ビームの伝搬方向に散乱した光)の強度と同一であると仮定する。このような仮定によって、これらの測定から判定される粒子特性測定の精度が制限されてしまう。
【0004】
また、照明光は後方散乱光の検出を制限してしまう。照射軸から180°、または180°付近で散乱した光(「π散乱光」)は、入ってくる入射光と一致する。入射光は散乱光の分離を困難にするだけでなく、散乱を測定するために検出器を配置することによって、入射光を減光させてしまうというおそれがある。
[発明の概要]
本発明の第1の局面によると、光源と、サンプル位置を画定するサンプルキャリアと、前記光源と前記サンプルキャリアとの間に配置された光学素子であって、前記光学素子は前記光源からの光を修正し修正ビームを生成するように構成され、前記修正ビームはa)前記修正ビーム自身に干渉して、前記サンプル位置において有効ビームを生成し、b)遠視野において発散し、実質的に照光されない暗領域を、前記照射軸に沿って前記サンプル位置から離れた位置に生成する光学素子と、前記サンプル位置におけるサンプルによって前記有効ビームから散乱された光を検出するように構成された、前記サンプル位置から離れて配置された検出器であって、前記照射軸から0~10°の角度の散乱軸に沿った前方散乱光または後方散乱光を検出するように配置された検出器とを備える、粒子特性測定装置が提供される。
【0005】
前記サンプルキャリアは、液滴または液体サンプルを保持するための液滴表面を備えていてもよい。前記サンプルキャリアは、サンプルを載せるためのセルまたはキュベット、またはサンプル台を備えていてもよい。前記サンプル位置は定点でもよく、または、例えばキュベットのサンプル量等の、体積でもよい。
【0006】
本発明の第2の局面によると、光源と、サンプルセルと、前記光源とサンプルセルとの間に配置された光学素子であって、前記光学素子は前記光源からの光を修正し修正ビームを生成するように構成され、前記修正ビームはa)前記修正ビーム自身に干渉して、照射軸に沿って伝搬する有効ビームを前記サンプルセル中に生成し、b)遠視野において発散し、前記照射軸に沿って、実質的に照光されない暗領域を前記サンプルセルから離れた位置に生成する光学素子と、前記サンプルセル中のサンプルによって前記有効ビームから散乱された光を検出するように構成された、前記サンプルセルから離れて配置された検出器であって、前記照射軸から0~10°の角度の散乱軸に沿った前方散乱光または後方散乱光を検出するように配置された検出器とを備える、粒子特性測定装置が提供される。
【0007】
前記サンプルセルは、液滴または液体サンプルを保持するための液滴表面を備えていてもよい。前記サンプルセルは、キュベットを備えていてもよい。前記サンプルセルは、サンプル位置を画定していてもよい。前記サンプル位置は定点でもよく、または、例えばキュベットのサンプル量等の、体積でもよい。
【0008】
このような装置は、ゼロ度散乱光および/またはπ角散乱光を測定するために用いることが可能である。よって、前記有効ビームは、従来の散乱測定装置の入射光として作用し、光がサンプルによって散乱されるように、サンプルをゼロ軸に沿って照光する。従来の装置とは異なり、前記修正ビームは、暗領域を照射(すなわちゼロ)軸に沿って生成する。前記サンプルによってゼロ度(前記照射軸に対して0°)または低角度で散乱された光は、前記照射軸に沿って、実質的に前記修正ビームがない状態で光が検出可能な前記暗領域へと進む。同様に、後方散乱光、または180°に近い角度で散乱した光は、前記サンプルセルの手前に生成された修正ビームの暗領域において検出可能である。
【0009】
実質的に照光されないとは、前記暗領域における光度の、そこから離れた場所にある最も明るい領域における光度に対する比が、10-6未満(または10-5未満、または10-5、または10-4)となるのに十分な暗さであるということである。
【0010】
前記光の修正は、回折、屈折、減光(例えば不透明なディスクまたは開口部を用いて)、反射(例えば曲面を用いて、該曲面は開口部を備えていてもよい)、またはこれらの現象の組み合わせの一部を備えていてもよい。
【0011】
前記光源はレーザであってもよい。前記光源は280~2000nmの範囲の波長を有する光を供給してもよい。
前記装置は、前記光源の像、または入射瞳または射出瞳、または前記装置のその他の部分等の像が、前記サンプルセル内、または前記サンプル位置において形成される、結像システムであってもよい。または前記装置は、例えば、集束またはコリメートされたレーザビームを前記光源として用いるシステム、または集束またはコリメートされた光学ファイバ検出経路等の、像が前記サンプルセル内、または前記サンプル位置に形成されない非結像システムであってもよい。
【0012】
前記照射軸は、前記光源からの光の入射軸と平行および/または一致していてもよい。
前記検出器は、前方散乱光を検出するように配置された第1検出器であってもよく、前記装置は、後方散乱光を検出するように配置された第2検出器をさらに備えていてもよい。このような装置は、ゼロ度の散乱光とπ角の散乱光とを同時に検出することが可能であってもよい。その代わりに、前記装置の前記検出器、または前記装置の検出器の1つは、ゼロ度(またはゼロ度から10°以内)またはπ角(またはπ角から10°以内)の光のいずれかを検出するように配置可能であってもよい。
【0013】
第1の局面または第2の局面のいずれかの、いくつかの実施例において、前記検出器はアクティブな検出領域を備えていてもよい。前記検出器の位置は、前記アクティブな検出領域の重心を基準にしてもよい。前記アクティブな検出領域は、完全に前記暗領域内に位置していてもよい。例えば、前記修正ビームは前記アクティブな検出領域にて全く受光されなくてもよく、または、ごくわずかな量の前記修正ビームのみが前記アクティブな検出領域にて受光されてもよい。前記サンプルセルから離れた前記最も明るい領域における前記修正ビームの光度に対する、前記暗領域における光度の割合が10-6未満の場合、前記修正ビームの量はごくわずかであると考えられてもよい。
【0014】
前記検出器は、散乱光を直接検出することによって散乱光を検出してもよく、またはヘテロダインまたはホモダイン検出方法を用いてもよい。前記装置は、ヘテロダインまたはホモダイン検出のための参照ビームを備えていてもよく、前記参照ビームは、前記検出器の手前で(または前記検出器の位置において)前記散乱光と混合されてもよい。
【0015】
第1の局面または第2の局面のいずれかの、いくつかの実施例において、前記装置は複数の検出器を備えていてもよく、各検出器は前記サンプル位置から離れており、前記有効ビームから前記サンプル位置におけるサンプルによって散乱された光を検出するように構成され、前記検出器は、前記照射軸から0~10°の角度の散乱軸に沿った前方散乱光または後方散乱光を検出するように配置されていてもよい。具体的には、前記複数の検出器はそれぞれ、前方散乱光を検出するように構成されていてもよく、または前記複数の検出器はそれぞれ後方散乱光を検出するように構成されていてもよい。前記複数の検出器のうちの1つまたは複数の検出器は、前記複数の検出器の他の検出器とは異なる散乱軸に沿って、光を検出するように配置されていてもよい。例えば、前記複数の検出器の第1検出器は、前記照射軸から第1の角度の散乱軸に沿った光を検出するように配置されていてもよく、前記複数の検出器の第2検出器は、前記照射軸から第2の角度の散乱軸に沿った光を検出するように配置されていてもよく、前記第1の角度および前記第2の角度はそれぞれ、前記照射軸から0~10°の範囲であってもよい。前記第1の角度は、前記照射軸から第1の方向(例えば、時計回り方向)であってもよく、前記第2の角度は、前記照射軸から第2の方向(例えば、反時計回り方向)であってもよい。このような場合、前記第1の角度の大きさは、前記第2の角度の大きさと同じであってもよい。前記第1の角度および前記第2の角度は、ともに前記照射軸から同じ方向(例えば、時計回り方向)であってもよいが、前記第1の角度の大きさは、前記第2の角度の大きさと違っていてもよい。前記複数の検出器は、いくつの検出器、例えば2つ、3つ、4つ、または5つの検出器、を備えていてもよい。このような配置によって、2つ以上の検出器がゼロ度付近で散乱した光を受光するように配置されていてもよい。前記装置は、前記少なくとも2つの検出器によって受信された信号を比較し、ゼロ度信号を推定するように構成されていてもよい。
【0016】
任意の実施例の前記検出器または前記複数の検出器は、ある角度の範囲の散乱光を検出するように構成されていてもよい。例えば、前記検出器または前記複数の検出器は、1°または2°または3°または4°または5°の範囲の光を検出するように構成されていてもよい。例えば、前記検出器または前記複数の検出器は、所望の角度からある角度の範囲内、例えば所望の角度から±0.5°、または±1°、または±1.5°、または±2°、または±2.5°の範囲、に散乱した光を検出するように構成されていてもよい。前記所望の角度は、前記照射軸から0°、または0~10°の間の任意の角度であってもよい。検出される角度の範囲は、前記検出器の前記アクティブな検出領域によって範囲が定められた、散乱光の角度と対応していてもよい。前記散乱光が光ファイバによって検出器に結合している場合、検出される角度の範囲は、光学ファイバの入り口によって範囲が定められた散乱光の角度に対応していてもよい。
【0017】
いくつかの実施例において、前記有効ビームは、前記照射軸に沿って進む平面波、またはエアリーディスクの強度プロファイルを有し、前記照射軸に沿って進む平面波に近似していてもよい。例えば、前記有効ビームの前記強度プロファイルは、有効ビームの中心に中心の強度のピークと、前記有効ビームの中心から離れた場所に複数の2次的な強度のピークとを備えていてもよい。前記2次的な強度のピークは、例えば、中心の強度のピークの10%の強度と同じくらいの強度を有していてもよい。
【0018】
ここで用いられる強度プロファイルとは、前記ビームに沿った特定の距離における光の強度であって、その距離におけるビームの断面の位置に関係する、という意味である。
【0019】
前記有効ビームは、平面波に近似していてもよい。具体的には、前記有効ビームは、前記サンプルセル/前記サンプル位置全体が平面であっても、または前記サンプルセル/前記サンプル位置の一部が全体的に平面であってもよい。いくつかの実施例において、前記有効ビームはベッセルビームに近似していてもよい。
【0020】
いくつかの実施例において、前記光学素子は、アキシコンレンズ、すなわち円錐面を有するレンズであってもよく、アキシコンレンズを備えていてもよい。前記光源は、例えば、平面波を備える光をアキシコンレンズに供給するように構成されていてもよい。前記アキシコンレンズは、例えば、前記サンプルセル内で/前記サンプル位置において前記光が集束し、前記サンプルセル内で/前記サンプル位置において、ベッセルビームに近似する有効ビームを形成するように、かつ、前記サンプルセル/前記サンプル位置から離れていく前記修正ビームが前記照射軸を中心としたリングを形成し、前記リングの内側に前記暗領域を有するように、光を修正してもよい。
【0021】
いくつかの実施例において、前記光学素子は減光レンズであってもよく、または減光レンズを備えていてもよく、前記減光レンズは、屈折要素と、屈折要素の光学軸に沿った光を遮断するように配置された遮光オブスキュレーション(obscuration)要素とを備えていてもよい。前記屈折要素は、平凸レンズまたは両凹レンズ等のレンズであってもよい。前記オブスキュレーション要素は、前記レンズの表面に配置されたマスク、コーティング、またはステッカー、または前記レンズに隣接して配置された物理的な物であってもよい。材料が、例えば接着、噴霧、めっき加工、または蒸着によって、レンズの表面にコーティングされていてもよい。前記オブスキュレーション要素は、銅等の金属を備えていてもよい。前記オブスキュレーション要素は、前記光源によって照射された波長の光を80~100%通さなくてもよく、好ましくはそのような波長の光を95~100%通さなくてもよい。前記オブスキュレーション要素の大きさは、減光レンズの直径を基準に決められてもよい。前記オブスキュレーション要素は、前記減光レンズの0.01~0.7倍、または前記減光レンズの直径の0.1~0.4倍の直径を有していてもよい。
【0022】
前記減光レンズは、前記サンプルセル内で/前記サンプル位置において前記光が集束し、前記サンプルセル内で/前記サンプル位置において、エアリーディスクのプロファイルに近似する強度プロファイルを備える有効ビームを形成するように、かつ、前記サンプルセル/前記サンプル位置から離れていく前記修正ビームが、前記照射軸を中心としたリングを形成し、前記リングの内側に前記暗領域を有するように、前記光源からの光を修正してもよい。
【0023】
前記オブスキュレーション要素は、例えば、前記検出器、または後方散乱光を検出するように配置された第2検出器等の、検出器であってもよい。
いくつかの例において、前記レンズはその中心を貫く開口部を備えていてもよく、前記検出器または後方散乱光を検出するように配置された前記第2検出器は、前記開口部内に配置されていてもよい。
【0024】
いくつかの例において、前記光学素子は、前記光源からの光を第1部分と第2部分とに分割するように構成されたビームスプリッタと、前記第1部分と前記第2部分を受光するように配置された少なくとも1枚のレンズとを備えていてもよい。前記少なくとも1枚のレンズは、前記第1部分および前記第2部分を前記サンプルセルの表面/前記サンプル位置に向けるよう構成されていてもよい。その代わりに、前記光源は第1光源であってもよく、前記装置は、第1光源の光と干渉関係にある光を生成するように構成された、第2光源を備えていてもよい。前記第1の光源からの光は、前記第1部分として作用してもよく、前記第2光源からの光は、前記第2部分として作用してもよい。
【0025】
このような配置において、前記少なくとも1枚のレンズは、光の前記第1部分および第2部分を前記サンプルセルの表面/前記サンプル位置に集束させ、エアリーディスクのプロファイルに近似する強度プロファイルを備える有効ビームを、前記サンプルセル内に/前記サンプル位置において形成することによって、前記1つまたは複数の光源からの光を修正してもよい。前記第1部分および前記第2部分は前記サンプルセル/前記サンプル位置から離れた場所で発散し、前記2つの部分の間に暗領域を生成する。
【0026】
前記光学素子は、少なくとも1枚のミラーをさらに備えていてもよく、前記少なくとも1枚のミラーは、前記第1部分および前記第2部分が入射するとき、前記第1部分および前記第2部分が並行方向に沿って進むよう、前記第1部分または前記第2部分を方向転換させるように配置されていてもよい。
【0027】
前記ビームスプリッタは、前記第1部分および/または前記第2部分の強度が、前記光源によって照射される光の強度の40~60%になるように構成されていてもよい。前記第1部分の強度は、前記第2部分の強度と同じ、または前記第2部分の強度の5%以内であることが好ましい。
【0028】
いくつかの例において、前記少なくとも1枚のレンズは、2枚のレンズを備えていてもよく、各レンズは、前記第1部分および前記第2部分の一方のみを受光するように、かつ、受光した部分を前記サンプルセルの表面/前記サンプル位置に向けるように配置されていてもよい。
【0029】
代替的な例において、1枚のレンズが前記光源からの光の両部分を受光するように配置されていてもよく、前記1枚のレンズは、光の両部分を前記サンプルセルの表面/前記サンプル位置に導くように構成されていてもよい。
【0030】
このような例において、前記1枚のレンズは、前記第1部分および第2部分が前記レンズの光軸に対して前記レンズの対向する位置に入射するように配置されていてもよい。例えば、前記1枚のレンズは、前記レンズの中心と前記レンズの焦点とを通過する中心光軸を備えていてもよい。前記1枚のレンズは、前記レンズによる屈折の後、光の2つの部分うちの第1部分のポインティングベクトルが、前記レンズの光軸に垂直な第1の要素を有し、光の2つの部分のうちの第2部分のポインティングベクトルが、前記レンズの光軸に垂直な第2の要素を有し、前記第1の要素および第2の要素の和がゼロになるように構成されていてもよい。
【0031】
いくつかの例において、前記装置は、光の2つ部分のうちの1つを遮断するように動作可能な、ビームダンプ等の遮光装置をさらに備えていてもよい。その場合、遮断されていない光の部分は、従来の高角度(すなわち前記照射軸から10°未満)での散乱の測定が可能となるように、前記サンプルセル/前記サンプル位置を照光するために使用されてもよい。
【0032】
前述したどの例示的な装置においても、前記装置は、前記散乱軸に沿って散乱した光を前記検出器に向かって偏向するように構成された偏光要素、例えばミラー、をさらに備えていてもよい。
【0033】
例えば、前記検出器は、前記照射(ゼロ)軸から離れた位置に配置されていてもよい。前記偏光要素は、0~10°の範囲の角度で散乱した光を、前記検出器に向かって偏向させるために用いることが可能である。特定の例においては、前記検出器は、前記照射軸に対して15~20°の間の角度で配置されていてもよい。前記偏光要素は、ゼロ度または低角度の散乱をこのような検出器に向かって偏向させるように用いることが可能である。前記検出器自体は、前記修正ビームに囲まれた暗領域に配置されてもよく、または、前記修正ビームの先の領域に配置されていてもよい。
【0034】
前述した例示的な装置はいずれも、ロータリーアッテネータを備えていてもよい。前記ロータリーアッテネータは、前記光源と前記サンプルキャリアとの間、例えば前記光源と前記光学素子との間、または前記光学素子と前記サンプルキャリアとの間に、配置されていてもよい。前記ロータリーアッテネータは、前記サンプルキャリアと前記検出器、または前記1つまたは複数の検出器との間に配置されていてもよい。
【0035】
本発明の第1局面は、照射軸に対してゼロ度で散乱した光を検出するように装置を適応させるための光学アセンブリを備えており、前記光学アセンブリは、
キュベットホルダに収容されるように構成されてもよいボディであって、液体サンプルを収容するように構成され、前記ボディの外側からの照明光を前記サンプルに伝送させ、散乱光を前記サンプルから前記ボディの外側へ伝送させるように構成されたボディと、
前記ボディに取り付けられた光学素子(例えばアキシコンレンズ、または減光レンズ)であって、前記光学素子は光源からの光を修正し、修正ビームを生成するように構成され、前記修正ビームは、a)前記修正ビーム自身に干渉して、前記ボディにおいて、照射軸に沿って伝搬する有効ビームを生成し、b)遠視野において発散し、実質的に照光されない暗領域を、前記照射軸に沿って前記サンプルセル/前記サンプル位置から離れた位置に生成する光学素子とを備える、光学アセンブリを備える。
【0036】
偏光要素が、前記ボディに取り付けられ、前記暗領域に配置されるように設けられていてもよい。前記偏光要素は、前記液体サンプルから前記照射軸の方向に散乱した光を、前記照射軸に対してゼロではない角度の軸に沿って逸らすように構成されていてもよい。
【0037】
前記ボディは、光源と(例えば他の実施例に関して記載されているような)検出器とを備える光学装置に収容されるように、構成されていてもよい。前記ボディは、少なくとも部分的に透明であってもよい。前記ボディは、前記光学素子、前記サンプルセル(または前記サンプルキャリア)、および前記偏光要素を含めて、前記光学装置から取り外されても、前記光学装置に入れ替えられてもよい。前記ボディは、キュベットホルダ等の、前記光学装置のサンプルホルダに収容されるように構成されていてもよい。前記装置は、同じサンプルホルダに収容されるように構成されたキュベットをさらに備えていてもよい。
【0038】
前記ボディは、液体を保持するためのサンプルホルダとして構成されてもよい。前記ボディは、毛細管、またはキュベット等の、前記ボディよりも小さな外形寸法を有するサンプルホルダを保持するように、構成されてもよい。前記ボディは、サンプルホルダを前記ボディに正確に整列させるための整列機能を備えていてもよい。
【0039】
このような配置は、既存のシステムを改良してゼロ角測定機能を加えるときに、特に有用であるかもしれない。前記既存の装置は、従来の「低角度」散乱、例えば前記照射軸から約17°で散乱した光、を受光するように配置された検出器を有していてもよい。前記偏光要素を前記既存の装置に加えて、ゼロ度散乱光(または前記照射軸から0~10°の間で散乱した光)を前記既存の検出器に導くようにしてもよい。前記光学素子、前記サンプルセル(または前記サンプルキャリア)、および前記偏光要素を支持体に配置することによって、これらの要素は必要に応じて既存のシステムに挿入されたり、既存のシステムから取り外されたりすることが可能である。例えば、光源および検出器を備える既存のシステムを一時的に改良して、ゼロ度および低角度の散乱の測定を行うようにすることができる。
【0040】
代替的な例において、前記偏光要素を前記ボディから省いてもよい。その場合、ゼロ度散乱光および低角度散乱光は、上述のように、前記暗領域内に配置された検出器によって検出されてもよい。
【0041】
本発明の1局面は、光学装置を作動させるように構成されたコンピュータプログラムを備える非揮発性の機械可読媒体を備え、前記装置は、サンプル位置を照射軸に沿って照光するための光源と、前記サンプル位置におけるサンプルによって前記照射軸から離れるように散乱された光を検出するように構成された検出器とを備える。前記コンピュータプログラムは、光学アセンブリが前記装置に存在するか否かを判定するように構成されている。前記プログラムが前記光学アセンブリは存在しないと判定した場合、前記プログラムは軸外散乱測定を行うための第1モードで作動し、前記プログラムが前記光学アセンブリは存在すると判定した場合、前記プログラムはゼロ度散乱測定を行うための第2モードで作動する。
【0042】
前記光学装置が存在しない場合、前記コンピュータプログラムは前記光学装置を従来の方法で操作して、例えば前記光源を操作してサンプルを照光し、前記検出器を操作して前記照射軸に対して17°(または、測定計画に対応するその他の角度)で散乱した光を検出する。前記光学装置が存在する場合、前記コンピュータプログラムは、ゼロ度散乱測定を行うよう、前記光学装置の動作を修正する。実際には、前記第2モードにおいて、前記コンピュータプログラムは、上述の粒子特性測定装置であるかのように前記光学装置を操作する。例えば、前記コンピュータプログラムは、前記検出器から受信したどの測定も再定義して、ゼロ度で散乱した光として認識してもよい。
【0043】
本発明の1局面は、光学装置のサンプルセル内の(またはサンプル位置における)サンプルの物理的特性を計算するためのコンピュータプログラムを備え、前記装置は、照射軸に沿って前記サンプルを照光するための光源と、前記サンプルによって散乱された光を前記照射軸に対して第1の角度の軸に沿って検出するように配置された検出器とを備え、前記コンピュータプログラムは、光学アセンブリが前記装置に存在するかを判定するように構成され、前記プログラムが前記光学アセンブリは存在しないと判定した場合、前記プログラムは、前記第1の角度における散乱角に基づいて計算を行うことによって前記物理的特性を判定するように構成されており、前記プログラムが前記光学アセンブリは存在すると判定した場合、前記プログラムは、ゼロ度の散乱角度に基づいて計算を行うことによって前記物理的特性を判定するように構成されている。
【0044】
前記物理的特性を算出することは、電気泳動光散乱法による計算と、動的光散乱法による計算と、偏向解消動的光散乱法による計算と、および/または静的光散乱法による計算とを行うことを備えていてもよい。前記物理的特性は、粒子の形状、粒子の大きさ(例えば粒子径分布)、および分子量の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0045】
前記光学アセンブリが存在しない場合、前記検出器によって検出される光は、前記第1の角度で散乱した光である。よって、前記コンピュータプログラムは、前記物理的特性を算出する際に、前記第1の角度を前記散乱角として用いる。
【0046】
前記光学アセンブリが存在する場合、前記検出器によって検出される光は、前記アセンブリによって前記装置の前記軸外検出器に向けて方向転換された、前記ゼロ度での散乱光である。よって、前記コンピュータプログラムは、ゼロ度を前記散乱角度として用いて計算を行う。
【0047】
前記装置において光学アセンブリが存在するか否かを判定することは、前記光学アセンブリが使用されているかを示す、ユーザが制御可能な変数を確認することを備えていてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、センサからの出力を用いて、いつ前記光学アセンブリが使用されているかを検出してもよい。
【0048】
上述のコンピュータプログラムは、前記光学装置に関連付けされたハードウェアに備えられていてもよく、または任意のコンピュータ装置のメモリに保存されていてもよく、または、例えばディスクまたはメモリ装置等の物理的なコンピュータ可読媒体であってもよい、コンピュータ可読媒体に備えられていてもよく、または過渡信号として実施されてもよい。このような過渡信号は、インターネットダウンロードを含む、ネットワークダウンロードであってもよい。
【0049】
上記の例示的な装置のいずれにおいても、前記装置は、前記サンプルセル内のサンプル/前記サンプル位置におけるサンプル、によって前記有効ビームから散乱された光を検出するように構成された、追加の検出器をさらに備えていてもよい。例えば、前記追加の検出器は、前記照射軸から85~95°の角度の散乱軸に沿った散乱光(「測方散乱」光)を検出するように配置されていても、または配置可能であってもよい。その代わりに、前記追加の検出器は、その他の任意の角度で散乱した光を測定するように配置されていても、または配置可能であってもよい。前記追加の検出器によって、例えば側方散乱光の測定がゼロ度散乱光および/またはπ度の散乱光の測定と同時に、行うことが可能となってもよい。複数の角度で散乱した光を同時に測定することによって、特に2つの直交する方向に沿って散乱した光を同時に測定することによって、前記測定から粒子特性を抽出する際に、さらに高い性能または正確度がもたらされてもよい。複数の角度での測定は、連続して行われてもよい。
【0050】
上述した例示的な装置のいずれかのいくつかの例において、前記装置は、前記光源からの光のビーム幅を、光が前記光学素子に入射する前に拡大するように配置された、ビームエキスパンダをさらに備えていてもよい。前記ビームを拡大することは、十分な光が前記光学素子を通過して、前記サンプルセル/前記サンプル位置を正常に照光することが確実に行われるようにするために必要であるかもしれない。例えば、前記ビームは、前記オブスキュレーション要素の周囲を通過する入射光の割合が増加するように、拡大されてもよい。
【0051】
前記装置は、前記検出器の出力から粒子の特性を判定するように構成された、プロセッサを備えていてもよい。前記装置は電気泳動光散乱法の測定、動的光散乱法の測定、偏向解消動的光散乱法の測定、および/または静的光散乱法の測定を行うように構成されていてもよい。前記特性は、粒子の形状、粒子径分布、および分子量の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0052】
前記装置は、サンプルを前記サンプルセル/前記サンプルキャリアに流入させるための、サンプル流入システムを備えていてもよい。前記装置は、クロマトグラフィーシステム、自動滴定システム、自動投薬システムおよび/または自動サンプリングシステムを備えていてもよい。
【0053】
いくつかの例において、前記検出器は、光学フィルタリング装置を備え、前記光学フィルタリング装置は、レンズと開口部とを備えていてもよい。例えば、前記開口部は共焦点絞り、または視野絞り、またはその2つの組み合わせのいくつかであってもよい。前記装置が、例えば結像システムを備える場合、前記光学フィルタリング装置は、前記サンプルセル内/前記サンプル位置における像面中の像から散乱していない散乱光を、その光が光学センサに達する前にフィルタリングするために、用いられていてもよい。前記検出器は、光ファイバを備えていてもよい。散乱光は、前記光学フィルタリング装置によってフィルタリングされた後、前記光学ファイバへと結ばれてもよい。
【0054】
上述の例のいずれにおいても、前記光学素子(またはその一部)は、前記光学軸、または前記照射軸に沿って移動可能であってもよい。例えば、前記減光レンズまたはアキシコンレンズが、その光学軸に沿って移動可能であってもよい。その代わりにまたはそれに加えて、上記の例はいずれも、前記光学素子と前記サンプルセル/前記サンプル位置との間に追加のレンズ(例えば非接触後方散乱(NIBS)レンズ)を備えていてもよい。前記追加のレンズは、例えばその光軸または前記照射軸に沿って、移動可能であってもよい。前記移動可能な光学素子および/または別のレンズによって、前記サンプルセル内の/前記サンプル位置における前記修正ビームの焦点の位置が、調節可能になってもよい。例えば、測定されるサンプルが希釈されたもの、または小さな粒子を備えたものである場合、焦点は、理想的には前記サンプルセル/前記サンプル位置の中心付近に位置していてもよく、サンプルがより濃縮されたものである場合には、前記焦点は、理想的には前記サンプルセル/前記サンプル位置の端部により近い位置、すなわち前記光学素子に最も近い場所、にあってもよい。
【0055】
本発明のさらなる局面によると、サンプル中に分散した粒子特性を測定する方法が提供される。前記方法は、前記サンプルをサンプルセル中(またはサンプルキャリアのサンプル位置)に配置することと、光源を提供して、前記サンプル(またはサンプル位置)を照光することと、前記光源からの光を修正して修正ビームを生成することであって、前記修正ビームは自身に干渉して前記サンプル中に有効ビームを照射軸に沿って生成し、遠視野において発散して実質的に照光されない暗領域を照射軸に沿って前記サンプルセル(またはサンプル位置)から離れた位置に生成する、前記光源からの光を修正することと、前記照射軸から0~10°の角度の散乱軸に沿って、前記サンプルから前方または後方に散乱した光を検出することとを備える。
【0056】
前記光源からの光を修正することは、前記光源と前記サンプル(または前記サンプル位置)との間に配置された光学素子であって、前記光源からの光を修正し、前記修正ビームを生成するように構成された光学素子を、用いることを備えていてもよい。
光を検出することは、前記サンプル(または前記サンプル位置)から離れて配置された検出器を用いることを備えていてもよい。
【0057】
前記光学素子は、第1の局面および/または第2の局面に関して上述された光学素子のいずれかを備えていてもよい。いかなる局面のいかなる特徴も、他の任意の局面の任意の特徴と組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
いくつかの例において、前記検出器は、アクティブな検出領域を備えていてもよく、前記方法は、前記アクティブな検出領域を、完全に前記暗領域内に配置することを備えていてもよい。
【0059】
以下に、本発明の実施形態を図面とともにさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】従来の散乱実験を概略的に示した図である。
図2】ゼロ度の拡散を測定するための、本発明による散乱測定装置の概略図である。
図3図2に示した装置の、代替的な配置を示す図である。
図4図2に示した装置の、さらなる代替的な配置を示す図である。
図5a】光学素子の例の概略図である。
図5b図5aの光学素子によって生成された、修正ビームの強度プロファイルを示した図である。
図6a】代替的な光学素子の例を、概略的に示した図である。
図6b図6aの光学素子によって生成された、修正ビームの強度プロファイルを示した図である。
図6c図6bの光学素子の代替的な配置を示した図である。
図7】代替的な光学素子の例を、概略的に示した図である。
図8】代替的な装置を概略的に示した図である。
図9】サンプルウェル内の散乱からの散乱を検出するための装置の概略図である。
図10a】光学フィルタリングシステムの代替例を示す図である。
図10b】光学フィルタリングシステムの代替例を示す図である。
図11】低角度散乱を測定する実験の結果を示している。
図12】低角度散乱を測定する実験の結果を示している。
図13
図14A】サンプルの液滴の測定に用いる装置を概略的に示した図である。
図14B】サンプルの液滴の測定に用いる装置を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、従来の散乱測定装置100を示している。従来の装置100は、光源101と、サンプルセル102と、検出器103とを備えている。光源101は、照明光ビーム104を照射軸105に沿って発光するように構成されている。サンプルセル102は、照射軸105上に配置されている。光ビーム104はサンプルセル内のサンプルを照光する。光ビーム104の一部は、サンプル中の粒子から散乱される。検出器103は散乱光(図1中、矢印で示されている)を検出するように配置されている。
【0062】
他の実施例において、装置100は、液滴表面、キュベット、またはサンプル台等の、サンプルポイントを画定する任意のサンプルキャリアを備えていてもよい。以下の説明では、サンプルセルのみが説明されているが、説明されるいかなる例においても、サンプルセルは、そのサンプルキャリアのサンプルの位置を照光するために用いられる修正ビームを有する、任意の形状のサンプルキャリアと置き換えられてもよい、ということが理解されるべきである。
【0063】
ほとんどの場合、サンプルセル102およびサンプルは、実質的に入射光104を通し、わずかな光のみが散乱される。よって、光104の大部分は、サンプルセル102を通過した後、照射軸105に沿って進み続ける。光104の強度は、いかなる散乱光の強度よりもはるかに大きい。検出器103が照射軸105上(図1中、点線で示された検出器の位置)に配置された場合、検出信号は照明光ビーム104が占める。検出された信号のどの部分がゼロ度の散乱光によるものかを判断するのは、不可能ではないにしろ、非常に困難である。その結果、装置100等の従来の装置は、ゼロ度散乱光を測定せず、その代わりに、検出器103が照射軸105に対してできる限り低い角度で配置されて、照明光ビーム104を検出器で受光するのを避けてもよい。例えば、マルバーンインストゥルメンツ社製のゼータサイザー装置では、検出器は、照射軸105に対して17°の角度で配置されている。
【0064】
従来の装置では可能ではないが、ゼロ度に近い非常に低い角度、およびゼロ度自体で散乱した光を測定することが望ましい。低角度またはゼロ度における測定を、粒子の特性測定に用いる可能性について、以下に説明する。
【0065】
一般的な光の散乱モデルにおいて、コリメート光は、明確に画定された入射角からサンプルに入射し、サンプルによって明確に画定された射出角から散乱される。実験装置全体は、qベクトルで精密かつ簡潔に示される。
【数1】
また、λは 、空気中の照明光の波長である。
光散乱電気泳動法
ゼロに近い散乱において、拡散成分、D∞|q|は抑制されて、Φ=|q|μEという、非常に小さな粒子の電気泳動移動度のより正確な測定が可能となっている。これによって、特に多分散、または多様な形態をとるゼータ電位の分布[1]を計測するための、ゼータ電位測定の正確度および精度が向上する。これを応用する範囲は広く、たんぱく質、脂質、あらゆる種類のナノコロイドの応用範囲を含んでいてもよい。
動的光散乱法
特徴的な幅|q|xDを有する動的光散乱(DLS)信号の光学的拡大は、式(1)から明らかなように、角度に依存しており、これにより、多様なサンプルの形式を決定することが可能な解像度が制限される。ゼロ度またはゼロ度付近で測定することにより、NNLS(非負最小二乗)[2]等の、多様な形式のDLSが減少し、解像度を向上させてもよい。
【0066】
反対に、動的光散乱測定法では、相関曲線をキュムラント[3]およびNNLS等のモデルに正確に適合させるため、1本の散乱光を前提とすることが要求される。しかし、後方散乱角に近づくにつれて、高次の散乱の緩和時間が、単独の散乱光[4]の緩和時間に近づく。この近似の正確度は、照射レーザと検出経路との間の角度がゼロに近づき、サンプル濃度が希釈極限に近づき、サンプル中の検出位置(照射光の光路と検出された光の光路とが交差する位置)がサンプルセルの壁に近づくにつれて向上する。
静的光散乱法
一般的には、レーリー方程式が静的光散乱[1、5]を説明するのに用いられる。
【数2】
式中、Cはサンプル濃度であり、θは照射光の光路と検出された光の光路との間の測定角であって、該光路はそれぞれ単一の方向の空間を満たし、qを正確に定めることを可能にしていると仮定されている。Rθは測定角θ=0における入射光に対する散乱光のレーリー比であり、Mは分子量である。第2ビリアル係数A、およびK、およびPθは、以下の式を用いて定義される。
【数3】
【数4】
式中、nは屈折率、Rは回転半径、λはレーザ波長、Nはアボガドロ数、およびdn/dcは示差屈折率増分である。散乱の中心の異なる部分からのウェーブレット散乱の干渉効果により、大きな粒子からの散乱は異方性である。よって、散乱は角度に依存するようになる。しかし、θ=0で測定することが可能であれば、sin(θ/2)は0となり、1/Pθは1となる。結果として、以下の利点がもたらされる。
【0067】
a)式(3)から、θ=0において、1/Pθ=1であり、小さい分子の場合にそうするように、散乱強度とMとの関係を保持させると、分子量の測定のための範囲の大きさが著しく大きくなる。
【0068】
b)式(2)および(3)を組み合わせ、ゼロ度で直接測定をすることによって、1/Mを直接求めることが可能である。これは1回の測定でMを求める方法であり、LALSまたは多角度光散乱検出(MALS)と比較すると、Mの測定回数が大きく削減される。また、例えばギニエプロットからゼロ度に適合させる必要がないため、Mの正確度も向上する。加えて、このことは、例えば結合研究等のための、オートサンプラに装填される複数のサンプルの分子量、または自動滴定装置による複数の濃度が、より簡単に求められ得るということである。
【0069】
c)ゼロ度および直角の光散乱検出を組み合わせることが可能である。直角散乱は、大きな汚染物質の非常に小さな破片が前角の信号を占めるであろう、非常に弱い散乱サンプルに対して用いることが可能である。
【0070】
d)適応光散乱方法を用いて、ノイズに対するゼロ度散乱信号を改善し、汚染物質の衝撃を緩和することが可能である。
e)ゼロ度とより高い角度の測定をギニエプロットまたはジムプロットにおいて組み合わせることによって、レーリープロットの傾きを切片で決定することができ、それによって回転半径Rを高い精度で直接、一括して測定することが可能になる。例えば、ゼロ度度およびより高い角度、例えば17°または90°の散乱角、における散乱の測定の組み合わせ、をとることができ得る。または0~17°の範囲で追加の検出測定を行うことができ得る。ピンホールによって画定された従来のシングルモードファイバ、またはコリメートされた検出経路を使用して、光を検出することができ得る。または本明細書に記載のゼロ度測定光学装置の軸外バージョンを使用することができ得る。当該軸外バージョンでは、検出器におけるオブスキュレーション(obscuration)要素の影が、軸外測定に対応するのに十分な大きさである。
偏向解消光散乱法
偏向解消光散乱法の目的は、コロイドの動作の移行要素および回転要素を、偏光された光を用いて測定することである。通常サンプルは、既知の様態に偏向された(例えば、垂直に偏向された)光を用いて励起される。入射光に平行に偏向された散乱光の要素、および入射光に垂直に偏向された散乱光の要素が検出される。
【0071】
それぞれ検出された偏向された状態の散乱光の相関関数Gは、以下の式(5)および(6)に付与される。式中、「V、H」は、入射光が垂直に偏向され、検出された散乱は水平に偏向されているということを示している。「V、V」は、入射光が垂直に偏向され、検出された散乱は垂直に偏向されているということを示している[1]
【数5】
【数6】
ΓTransおよびΓRotはそれぞれ、移行緩和率および回転緩和率であり、以下を考慮する。
【数7】
【数8】
ΘおよびDはそれぞれ、回転動作および移行動作の拡散係数であり、式(8)から、回転要素は検出角度に依存しないということが分かるということに注目されたい。さらに、式(1)においてθ=0の場合、すなわち、ゼロ度散乱である場合、Θを直接(Dを指し効く必要なく)、式(5)のVH構成を用いて測定することが可能である。Dは緩和データの長さおよび直径を減少させるため、依然として必要である。そのため、例えば両方の偏向状態を測定する必要が依然としてあるが、結果として生じる回転要素は、Dにおける不確定さに依存しないであろう。
【0072】
図2は、本発明の装置200の例を示している。装置200はゼロ度散乱光および低角度散乱光、例えば照射軸に対して0~10°の間の角度で散乱した光、を測定するために用いることが可能である。装置201は、レーザ等の光源と、サンプルセル202と、検出器203とを備えている。検出器203は、サンプルセル202から距離dの位置に配置されている。測定されるサンプルは、例えば粒子の懸濁液を備えるサンプルをサンプルセル202に配置することが可能である。
【0073】
装置200は、光を修正する光学素子204をさらに備えている。光学素子204は、光源201により発せられた光205を受光するように配置されている。光205は、例えば光のコリメートビームであってもよい。光学素子204は光205を修正し、修正ビーム207を生成する。当該修正は、例えば、光の屈折、回折、反射、集束、または減光、またはこれらの現象の組合せの一部を備えていてもよい。図示された例において、光205は、サンプルセル内のサンプルによって散乱された光の方向を画定することが可能な照射軸(またはゼロ軸)206に沿って、光学素子204に入射する。
【0074】
修正ビーム207は、修正ビーム207の強度の大部分が、サンプルセル202中に集束するように(例えばサンプルセル202は、照射軸206に沿った特定の距離の位置に配置され、その距離における修正ビームの強度の少なくとも90%がサンプルセル内に位置するように)、サンプルセル202の表面に導かれる。
【0075】
サンプルセル202において、修正ビーム207は自身に干渉し、有効ビーム208を生成する。有効ビーム208は、照射軸206に沿って進む光のビームの特性を有する。例えば、有効ビーム208は平面波、エアリーディスクの強度パターンを有する(光がノーマルレンズを通過したかのような)波、またはベッセルビームのように見えてもよい。サンプルが有効ビームを従来の装置100における入射光104と同様に、通常の照明ビームとして「みなす」ように、有効ビーム208は、サンプルセル202中のサンプルと相互に作用する。装置100における照明光ビーム104からの光を散乱させてもよいのと同じ様に、サンプルは、有効ビーム208からの光を散乱させてもよい。散乱した光は、検出器203で検出可能である。
【0076】
サンプルセル202を通過した後、修正ビーム207は発散して、修正ビーム207の明るい部分に囲まれた、または挟まれた暗領域209を生成する。暗領域209における修正ビーム207の強度は、実質的にゼロであり、例えば、検出器203が修正ビーム207からの有意な信号を測定しないようにするのに、十分な程度にわずかなものである。例えば、検出器203が配置された照射軸206に沿った特定の距離dにおいて、暗領域209における修正ビーム207の強度の、距離dにおける修正ビーム207の最も明るい領域における強度に対する比は、10-6未満であってもよい。
【0077】
よって、暗領域209において実質的に唯一の光は、サンプルセル202中のサンプルから散乱した光である。検出器203は、修正ビーム207からの光が(実質的に)ない状態で散乱光を受光することが可能な、暗領域209に配置され得る。図示の例において、検出器203は照射軸206上の暗領域209に配置されている。具体的には、検出器203は、暗領域209に位置するアクティブな検出領域を備えていてもよい。この位置において、検出器203は、サンプルからゼロ度で散乱した光(すなわち、照射軸206と一致する散乱軸に沿って散乱した光)を検出することが可能である。修正ビーム207によって生成された暗領域209によって、ゼロ度散乱光が、より明るい照明光と結合することなく検出可能になる。
【0078】
照射軸(例えばアクティブな検出領域の重心が照射軸と完全に一致した状態)に配置される代わりに、検出器203はサンプルから低角度、例えば0°より大きい角度、から散乱した光を検出するように配置されていてもよい。検出器203は0~10°の間の任意の角度で散乱した光を検出するよう配置されてもよい。その代わりに、検出器203は他の角度、例えば低角度、または他の任意の角度、において光を検出するように配置を換えることが可能であってもよい。いくつかの実施例において、複数の検出器、例えば、0°に配置された検出器、および暗領域209内のゼロではない角度(例えば10°以下)に配置された検出器、が用いられてもよい。
【0079】
図3は、低角度の散乱光を検出するように、ある位置に配置された検出器203を示している。この場合、検出器203は、照射軸206に対してある角度の散乱軸306に沿って散乱した光を測定するように配置されている。例えば、散乱軸306と照射軸206との間の角度は、0°より大きく、および/または10°未満であってもよい。
【0080】
サンプルセル202の後方に暗領域209を生成するのと同様に、修正ビーム207は、サンプルセル202の前方にも暗領域210を生成してもよい。暗領域210は、暗領域209についての上述の基準と同一の基準によって画定されてもよい。
【0081】
図4は、暗領域210における検出器403を示している。検出器403は、検出器203が新たな位置に配置を換えられたものであってもよく、または検出器403は、装置200に追加された検出器であってもよい。図示された例において、検出器403は照射軸206に沿って配置されている。この位置において、検出器403は、サンプルセル202内のサンプルから180°で照射軸206の前方向に後方に散乱した光(すなわちπ度散乱光)を検出可能である。検出器403は、検出器203と同様に、照射軸206から0~10°の間の散乱軸に沿って後方に散乱した光を、検出可能であっても、または検出するように配置を換えることが可能であってもよい。
【0082】
図2に示された装置200において、装置200は、光源201と光学素子204との間にビームエキスパンダ211をさらに備えている。ビームエキスパンダ211は任意の特徴であって、例えば、光205が光学素子204を満たすように、光205のビーム幅を広げるために用いられてもよい。ビームエキスパンダ211は、光源201が、ビーム幅が狭いコリメート光205を生成するレーザである場合に、特に用いられてもよい。ビームエキスパンダ211は、例えば、1組の反射光学素子または屈折光学素子を備える、伸縮式のビームエキスパンダであってもよい。
【0083】
上記の例において、照射軸206は便宜上、光学素子204に入射する光205の方向として説明されていた。より具体的には、照射軸206は有効ビーム208がサンプルセル202内を進む、見かけの方向によって画定される。それはこの方向が、サンプルによって光が散乱される方向であるためである。この方向は、概して、光学素子204に入射する光205の方向と一致するが、そうである必要はない。
【0084】
図5~7は、装置200において光学素子204として用いられてもよい、光学素子の例を示している。
一例において、光学素子204はアキシコンレンズを備えていてもよい。アキシコンレンズは、少なくとも1つの円錐面を有するレンズである。
【0085】
図5aは、ビームを修正する光学素子204として平凸アキシコンレンズ504を有する、装置500の一部を示している。装置500は装置200と同一のものであってもよいが、光学素子204として、アキシコンレンズ504を有する。
【0086】
アキシコンレンズ504は光源201(図5aでは図示なし)からの光505で照光される。光505は特に、照射軸506に沿って進む平面波またはガウシアンビームであってもよい。アキシコンレンズ504は光505を修正し、修正ビーム507を生成する。修正ビーム507は、まずサンプルセル502内に集束し、その後、サンプルセルの後方で発散して、照射軸を中心とし、その中に暗領域509を有するリングを形成する。
【0087】
サンプルセル502において、修正ビーム507は自身に干渉して、有効ビーム508を生成する。図5bに示された有効ビーム508を横切る例示的な線全体の位置関数として、強度の空間的な広がりが示されるように、有効ビーム508はベッセルビームに近似している。
【0088】
有効ビーム508は、サンプルセル502中、3~10mmの長さで存在していてもよい。有効ビームの長さは、例えば、アキシコンレンズ504のアキシコンレンズ角度を含む、光505のビーム幅および/またはアキシコンレンズ504の特性によって決定されてもよい。例えば、0.5°のアキシコンレンズ角度(α)および25μmの入射光505のビーム半径(r)に対して、有効ビームの長さ(zmax)は約6mmであってもよい。長さ(zmax)は、式zmax=r/tanθ、を用いて求められてもよい。式中、θ=α(n-1)、nは、入射光505の波長におけるアキシコンレンズの屈折率である。サンプルセル502中のサンプルの照射軸506に沿った長さは、有効ビーム508の長さ(zmax)未満であることが、好ましい。
【0089】
サンプルセル502を越えた場所で、修正ビーム507は発散し、装置200に関して上述したとおり、その中でゼロ度散乱光および低角度散乱光が測定可能な、暗領域509を形成している。この図からわかるように、修正ビーム507は、照射軸の周囲に光のリングを、暗領域509がその光のリングに囲まれるように形成する。
【0090】
別の例において、光学素子204は、減光レンズであってもよい。
図6aは、ビームを修正する光学素子204として減光レンズ604を有する、装置600を示している。装置600は装置200と同一のものであってもよいが、光学素子204として減光レンズ604を有する。
【0091】
減光レンズ604は、レンズ612と、遮光オブスキュレーション要素613とを備える。レンズ612はいかなる種類の集束レンズであっても、またはサンプルセル602に光を集束させる光学要素の集束用の配置であってもよい。その代わりに、中心にオブスキュレーション要素613を有し、光をサンプルセル602に反射、集束するように構成された曲面ミラー等の、反射光学装置を用いてもよい。
【0092】
図示された例において、オブスキュレーション要素613は、レンズ612の中心に取り付けられている。オブスキュレーション要素613は、例えばレンズ612に配置されたマスク、コーティング、またはステッカーであってもよい。材料が、例えば、接着、噴霧、めっき、または蒸着によってレンズ612にコーティングされていてもよい。オブスキュレーション要素613は、例えば銅等の金属を備えていてもよい。
【0093】
オブスキュレーション要素613は、光605のリングのみがレンズ612を通過するように、減光レンズ604に入射する光605の中心部分を遮断する。レンズ612は、この光のリングを集束することによって、リングを修正し、修正ビーム607を形成する。オブスキュレーション要素613は光源によって照射された波長の光を80~100%通さなくてもよく、好ましくはこのような波長の光を95~100%通さなくてもよい。
【0094】
修正ビーム607は、自身に干渉し、有効ビーム608を生成する、サンプルセル602内に集束する。有効ビーム608は、照射軸606に沿って進むエアリーディスクの強度プロファイルを有する波のように見える。
【0095】
修正ビーム607は、サンプルセル602の後方で発散し、その中に暗領域609が配置された光のリングを形成する。装置200に関して上述したとおり、検出器603等の検出器を暗領域609内に配置し、ゼロ度散乱光および低角度散乱光を測定することが可能である。修正ビーム607は、サンプルセル602の手前にも暗領域610を形成し、装置200に関して上述したとおり、適切に配置された検出器によるπ度散乱光、およびπ角度近くの散乱光の検出を可能にしている。
【0096】
有効ビーム608を横切る例示的な線の強度プロファイルが、図6bに示されている。有効ビーム608の強度は、図6bにおいて点線で表されている。実線は、ビーム608が非減光レンズを通過した後に有する強度プロファイルを表す。両プロファイルは、ビームの中心に明るい強度最高点と、ビームの中心から一定間隔離れた場所に複数のより低い強度最高点とを有するエアリーパターンである。複数の強度最高点の間には、強度最小点が存在する。非減光レンズを通過するビームと比べて、有効ビームの非中心位置における複数の強度最高点は、より強度であるが、それでも中心の強度最高点よりは、はるかに低い。以下でより詳細に述べられるように、各強度最小点にはπ相の不連続点があるが、当該相は焦点において平面であり、焦点から照射軸に沿ってわずかに離れた場所においては、おおよそ平面である。さらに、π相の不連続点は、検出器603で検出可能である速さよりも、はるかに速い局所光速で検出器603到達する可能性がある。このことは、相の不連続点は、検出された信号に変化をもたらす可能性が低いということである。
【0097】
遠視野において、サンプルセル602の先の修正ビーム607の強度プロファイルは、図5cに示された修正ビーム507の強度プロファイル、すなわち暗領域609を囲む光のリングに似ている。
【0098】
いずれの光も減光レンズ604を通過させるためには、光源601からの入射光605のビーム幅は、オブスキュレーション613の直径よりも広くなくてはならない。このようにするためには、光源601によって照射された光の幅を広げる必要があるかもしれない。図6aに示された装置600では、光605の幅がビームエキスパンダ611を用いて拡大されている。ビームエキスパンダ611は、上述したビームエキスパンダ211と同一または類似したものであってもよい。
【0099】
図6aにおいて、オブスキュレーション要素613は、レンズ612の表面に取り付けられた、または適用されたオブジェクトを備える。代替的な例において、オブスキュレーション要素613は、オブジェクトを(レンズ612の表面に適用されたオブジェクトの代わりに、または該オブジェクトに加えて)、光605の中心部分がサンプルセル602に届くのを妨げるように、レンズ612に隣接して配置された、オブジェクトを備えていてもよい。このようなオブジェクトは、レンズ612の手前、または後方に配置されていてもよい。
【0100】
具体的な例において、検出器は、オブスキュレーション要素として機能してもよい。具体的には、暗領域610に配置され、π角度散乱光を検出する検出器がオブスキュレーション要素として用いられてもよい。
【0101】
検出器653がオブスキュレーション要素として用いられる装置600の一例が、図6cに示されている。この例において、レンズ611はその中心を貫く開口部614を備えている。検出器653は、少なくとも部分的に開口部614内に配置されている。検出器653のアクティブな検出領域は、π角度またはπ角度付近の後方散乱光が検出可能なように、サンプルセル602に対向している。アクティブな検出領域は入射光605とは反対の方向を向いており、光605からの有意な信号は検出しない。検出器653は物理的な遮断物を形成して、入射光605の中心部分が通過するのを防ぐ、オブスキュレーション要素として機能する。このような配置によって、π度散乱を測定するための、特にコンパクトなシステムが提供されてもよい。また、装置600は、ゼロ度散乱光および低角度の散乱光を検出するように配置された検出器603を備えていてもよい。
【0102】
別の例において、光学素子204は、2つのコヒーレント光源と、1枚または複数枚のレンズ、または、光をサンプルセルに導くように構成された他の光学装置を備えていてもよい。
【0103】
該2つのコヒーレント光源は、2つの異なる光源、例えば2つのコヒーレントな関係のレーザ、を備えていてもよい。その代わりに、2つのコヒーレント光源は、1つの光源と、ビームを第1部分と第2部分とに分割するように配置され、当該第1部分と第2部分とが2つのコヒーレント光源として機能する、ビームスプリッタとを備えていてもよい。
【0104】
図7は、ビームスプリッタ715とレンズ712とを備える、光を修正する光学素子704を有する装置700を示す。装置700は装置200と同一のものであってもよいが、光学素子704を光学素子204として有している。
【0105】
ビームスプリッタ715は、光源701からの光の2つの部分、すなわち、第1部分705aと第2部分705bとに分割する。図示の例において、ビームスプリッタ715は第1部分705aを反射し、第2部分705bを伝送する。具体的には、ビームスプリッタ715は、入射する光の50%(または49%~51%の間)を反射して、第1部分705aを形成してもよいが、その代わりに、反射する光源701からの入射光を他の任意の割合で反射してもよい。
【0106】
図示された例において、反射した第1部分705aはレンズ712の表面に導かれる。ミラー716を用いて、第2部分705bをレンズ712の表面に導く。ミラー716は、第1部分705aと第2部分705bとが、レンズ712の表面に入射するときに並行する方向に沿って進むように、第2部分705bを反射するように配置される。代替的な例において、追加の、または代替的な反射光学装置または屈折光学装置が、光の2つの部分705a、705bをレンズ712の表面に導くように用いられてもよい。
【0107】
レンズ712は、第1部分715aをサンプルセル702に向かって第1の方向に偏向する。レンズ712は第2部分715bを第2の方向にサンプルセル702に向かって偏向する。2つの偏向された部分が、修正ビーム707を形成する。第1の方向は、第2の方向とは反対の方向である。好適な例において、これは、第1部分715aと第2部分715bとがレンズ712の光軸(または中心)に対して向かい合う位置においてレンズ712に入射するように、レンズ712を配置することによって実現する。レンズ712は、その光学軸に対して対称である。
【0108】
偏向された第1部分705aおよび第2部分705bを備える修正ビーム707は、サンプルセル702にて集束する。当該2つの部分はサンプルセル702内で互いに干渉し、有効ビーム708を生成する。有効ビーム708は、照射軸706と直交する方向に、照射軸706から離れて位置する2次的な強度の縞を有する、前方に(すなわち、照射軸706に沿って)進む平面波であるように見える。2次的な強度の縞は、例えば、図示されたサンプルセル702とは別の毛細管セル内のサンプルを、2次的な強度の縞のうちの1本の軌跡に置くことによって、当該小さなサンプルを照光するために用いられてもよい。
【0109】
修正ビームは、照射軸に沿ってサンプルセル702から離れる両方向に、発散し、発散したビーム部分の間に暗領域709,710をそれぞれサンプルセル702の後方および手前に生成する。暗領域709、710に配置された検出器は、ゼロ度散乱、または低角度散乱を検出可能であり、暗領域710に配置された検出器は、装置200に関して上述したように、π度またはπ度付近の散乱光を検出可能である。
【0110】
装置700の図示された例において、1枚のレンズ712は、光の第1部分705aおよび第2部分705bを偏向するために用いられたが、他の例においては、2枚以上のレンズを用いることも可能である。いくつかの例において、第1部分705aおよび第2部分705bはそれぞれ、別のレンズに入射してもよい。該複数のレンズは、第12部分705aおよび第2部分705bをサンプルセル702における共通点へと偏向するよう配置され、有効ビーム708を生成すればよい。さらに、第1部分705aおよび第2部分705bにコヒーレントな追加の光源の光が、サンプルセル702へと偏向されてもよい。例えば、追加のビームスプリッタを用いて、光源701からの光をさらなる部分に分割してもよい。
【0111】
装置700のいくつかの例において、光の第1部分705aおよび第2部分705bの一方を、例えばビームダンプを用いて、遮断することが可能であってもよい。その場合、遮断されていない方の部分は、修正ビームを形成することなく、従来の方法でサンプルを照光するために用いられてもよい。従来の照明から散乱した光は、検出器703または追加の検出器を用いて検出されてもよい。このような方法で、装置700は容易に改良され、従来の高角度散乱測定法をとることが可能である。
【0112】
状況によっては、既存の散乱測定装置をゼロ度散乱または低角度散乱、またはπ度またはπ度付近での散乱が測定可能なようにアップグレードすることが望ましいかもしれない。例えば、既存の検出器を再利用することが望ましいかもしれない。
【0113】
図8は装置800の一部の例を示している。装置800は、実質的に装置500に類似しているが、検出器を暗領域809内に配置する代わりに、検出器を他の位置、この例では照射軸806から17°の位置、に配置する。これは、例えば、既存の装置における検出器の位置であってもよい。
【0114】
装置800は、暗領域809内であって、照射軸806上に配置されたプリズム816を備える。プリズム816は、ゼロ度散乱および低角度散乱を、照射軸806に対して別の角度に偏向するように構成されている。この場合、散乱光は照射軸806に対して17°の角度で偏向され、ゼロ度散乱光が散乱角度から17°の散乱軸に沿って配置された検出器によって検出可能になっている。プリズム816は、散乱光が検出器によって検出可能なように、散乱光をその他の任意の角度に偏向するように構成されていてもよい。
【0115】
修正ビーム807が確実に全く検出器に届かないように、またはわずかな量だけが検出器に届くようにするために、図8に示されるように(光を捕捉して光学的ノイズを防ぐ)1つまたは複数のビームダンプ817が任意で用いられてもよい。
【0116】
図8では、アキシコンレンズを光学素子804として用いる装置800が示されているが、偏向プリズム816および/または1つまたは複数のビームダンプ817が、その他の任意の光学素子を備える装置、特に装置200,500,600,700において用いられてもよい。プリズム816の代わりに、適切に配置されたミラー等の、その他の任意の偏光要素を用いて散乱光を検出器へと偏向させてもよい。
【0117】
既存の装置のさらなる改良を可能にするため、光学素子(例えばアキシコンレンズ)804、サンプルセル802、プリズム816、および任意で複数のビームダンプ817がボディ818上に支持され、ボディ818は既存の装置のサンプルホルダ内に配置されるように構成されていてもよい。ボディ818は、例えば、キュベットホルダと一緒に用いられてもよく、透明であってもよい(例えばガラス)。このことによって、大幅に改良を要することなく、既存の装置を容易に改良し、新たな構成要素が容易に取り外すことが可能になってもよい。例えば、既存の装置の大きなサンプルホルダは、12mmx12mmのキュベットホルダであってもよい。光学素子804、サンプルセル802(例えば毛細管セル)、プリズム816、および任意で複数のビームダンプ817は、例えば基板またはホルダに取り付けられ、その後、取り外し可能にキュベットホルダ内に配置して、既存の装置を改良してもよい。
【0118】
装置を制御するためのソフトウェアは、ボディ818(またはボディと光学素子とを備える光学アセンブリ)が装置内に設置されると、例えば付属品が存在する旨を示すユーザの入力に基づいて、認識するように構成されていてもよい。ボディ818が使用されると、当該ソフトウェアはゼロ度モードで作動し、従来の高角度散乱測定ではなく、ゼロ度散乱測定を行うように装置を作動させてもよい。ボディまたは光学アセンブリは、装置に設置されたときに、例えばボディに付されたバーコードを検出することによって、当該ソフトウェアおよび装置によって自動的に検出されてもよい。その代わりに、ソフトウェアのユーザが、ソフトウェアのゼロ度モードのオプションを選択してもよい。
【0119】
いくつかの例において、例えば上述の装置において、サンプルセルはウェルプレート、またはオートサンプルラーのトレイのウェルであってもよい。
従来の装置において、サンプルウェル内のサンプルから散乱した後方散乱光を測定するのは、特にサンプルウェルの体積が小さい場合には、困難であり得る。π度からわずかな角度しか離れていない場所でも、散乱光および/または照明光は、ウェルの壁によって遮断されやすい。
【0120】
このような問題は、本発明の光学素子を用いることによって解決することが可能である。照明光は、ウェルの壁に平行な光軸に沿って、サンプルウェルに直接入射可能であり、照明光が壁によって遮断させるのを防ぐ。π度、またはπ度に非常に近い角度で散乱した光路は、壁によって遮断されることがない。この後方散乱光は、上述したように、暗領域内の検出器を用いて検出可能である。
【0121】
ウェルプレートを使用した装置900の例が、図9に示されている。
装置900(図9には図示なし)は、光ビーム905a,905b,および905cを生成する複数の光源(他の数の光源も可能である)を備える。該複数の光源は、複数のレーザ、または、1本の光のビームを複数のビーム905a,905b,905cに分割する複数のビームスプリッタであってもよい。光のビーム905a,905b,905cはそれぞれ、ウェルプレート919の個別のウェル902a~902cを照光し、別々の光学素子904a~904cによって修正される。光学素子904a~904cは、上述の光学素子のうちの任意の光学素子を備えていてもよい。複数の照明ビームおよび対応する複数の検出装置を用いることによって、複数のウェルプレートの平行分析が容易になる。
【0122】
サンプルウェル902a~902c内のサンプルから複数の照射軸に沿って散乱した光(すなわち、ゼロ度散乱)、またはゼロに近い角度で散乱した光は、暗領域909a~909c内にそれぞれ配置された検出器903a~903cによって検出されてもよい。サンプルウェル902a~902cにおけるサンプルから照射軸906a~906cに沿って後方に散乱した光(すなわち、π度散乱)、またはπ度に近い角度で散乱した光は、暗領域910a~910cにそれぞれ配置された検出器953a~953cによって検出されてもよい。
【0123】
いくつかの例において、1つまたは複数の光学素子904a~904cは、減光レンズ604に類似した減光レンズを備えていてもよい。この場合、オブスキュレーション要素は、図6bに示した装置と同様に、それぞれ後方散乱検出器953a~953cであってもよい。検出器953a~953cは、例えば、光ファイバに光学的に連結されたGRIN(屈折率分布型)レンズを備えていてもよい。検出器953a~953cは、該レンズの後方、またはレンズの開口部(図9では図示なし)を貫通して配置されていてもよい。
【0124】
上記の装置の例のいずれにおいても、追加の検出器を用いて追加の角度で散乱した光を検出してもよい。具体的には、追加の検出器は、照射軸に対して90°の角度で散乱した光を検出するように配置されていてもよい。照射軸に対してゼロ度および90°に沿って散乱した光を同時に測定することは、サンプル中の粒子の特性を抽出するのに特に有用であるかもしれない。上記の検出器はいずれも、追加の角度で散乱した光を検出するために移動可能であってもよい。例えば、ゼロ度で散乱した光、および1つまたは複数のゼロではない角度で散乱した光は、ゼロ度の散乱角に対する散乱強度の変化率を予測するために測定されてもよい。このような測定は、例えば、サンプル中の粒子の回転半径を測定するために用いられてもよい。
【0125】
上記装置の例のいずれにおいても、装置は、UV検出器または屈折率検出器等の、1つまたは複数の独立した濃度検出器をさらに備えていてもよい。
上述の装置のいずれかにおける検出器によって収集されたデータは、有効ビームと光源からの光との差異を考慮して修正の必要がある場合がある。例えば、有効ビームの見かけの伝搬ベクトル(修正ビームにおける伝搬ベクトルの和によって与えられる)は、修正ビームの伝搬ベクトルの角度により、光源からの光の伝搬ベクトルよりも短くなる。このような短縮は、測定データを修正しなければ、屈折率の変化として間違って解釈をされてしまう場合がある。
【0126】
いくつかの例において、散乱光は、検出器システムの一部として、シングルモードファイバに結合されてもよい。例えば、GRINレンズを用いて、上述のように散乱光を光ファイバに結合してもよい。
【0127】
装置が結像システムを備える場合、すなわち、サンプルセル内に、例えば光源の像が形成される場合、軸外の散乱光をファイバに結合するのは困難な場合がある。このような光を結合するのは可能ではあるが、結合効率は、軸上の光と比べて低くなる場合がある。加えて、不鮮明な像から散乱した光を改善された態様で阻止することが望ましい、それはこのことが測定においてさらなる照射角度の測定が可能となることを明らかにしているためである。
【0128】
これらの現象を緩和するため、光学フィルタリング装置を用いて非合焦像からの散乱をフィルタにかけてもよい。図10aおよび10bは、このような2つの光学フィルタリング装置を示している。両方の代替例において、光学フィルタリングシステムは、サンプルセル1002からゼロ度および低角度で散乱した光を集光および集束するための、集光レンズ1051を備えている。両方の代替例は、さらに、光を光学ファイバ1053へと結合するように構成された1組のカップリングレンズ1052を備えるが、他の配置も想定される。少なくとも一方のレンズは、GRINレンズであってもよい。両方の例において、光源からの光はサンプルセル1002内の像面1054に、像を形成する。当該像からの光は、サンプルセル1002内のサンプルによって散乱される。
【0129】
図10aにおいて、光学フィルタリング装置は、共焦点絞り1055、すなわち、像面1054における像から散乱した光の焦点に配置された開口部を備えている。当該像から散乱した光は、レンズ1051により集光および集束される。共焦点絞り1055は、この像面散乱光の焦点に配置される。レンズ1051によって集光され、像面1054から散乱しなかった光は、異なる位置で集束される。よって、共焦点絞り1055において、実質的には像面1054からの光のみが集束され、開口部を通過することが可能になる。
【0130】
図10aにおいて、実線で示されたハッシュ化された光ビームが、像面1054における像から散乱された光を表しており、一方、破線で示された光ビームは非合焦像から散乱した光を表している。
【0131】
図10bにおいて、視野絞り1056が共焦点絞り1055の代わりに用いられている。視野絞り1056は、特定の軸、例えば光学軸、に沿って像面1054における像から散乱した光の焦点に配置された、開口部を備えている。異なる軸に沿って散乱した光はいずれも、該開口部から離れた場所で集束するため、開口部を通過しない。
【0132】
図10bにおいて、実線で示された斜線部分の光ビームは、像面1054における像から光学軸に沿って散乱した光を表しており、一方、破線で示された光ビームは、軸外に散乱された光を表している。
【0133】
初期のプロトタイプの減光レンズを光学素子として用いた装置による、例示的な実験の結果が図11および図12に示されている。
173°(後方散乱、非結像検知)、17°(前方散乱、非結像検知)、およびわずかゼロ度(結像光学装置)の角度で60nmのラテックス粒子の分散液から散乱した光が検出された。図11は、これらの検出角度それぞれの相関係数(線1201は173°での、線1202は17°での、線1203はゼロ度での相関係数)を遅延時間の関数として示している。
【0134】
60nmのラテックス粒子の散乱のさらなるデータが、図12に示されている。この図は、散乱角度12.8°(線1301)、3.8°(線1302)、およびゼロ度(線1303)における相関関数を遅延時間の関数として示している。
【0135】
図11および図12の両図において、プロトタイプのゼロ度散乱検出は、従来の低角度検出器の方法(17°および3.8°それぞれにおける)よりも、長い相関時間を有する。ゼロ度検出の相関曲線の指数形式は、1つの検出角度を示している。このことにより、サンプルの照光されている部分のうち検出された部分は、おおよそ平面な位相分布を有する像を実際に形成し、その後、当該像は、シングルモードファイバ検出経路によりサンプリングされることが証明されている。
上述した例においては、大量の液体サンプルの測定について説明したが、本発明の装置は、例えば装置のサンプル台に保持された固体のサンプルや、液体サンプルの液滴を含む、あらゆる形状のサンプルを調べるために用いられてもよい。例えば、サンプルセルは、調べるサンプルの液滴を保持するための液滴表面、またはウィッキング表面を備えていてもよい。このような装置は、図13に示されている。
【0136】
図13は、装置1300の一部を示しており、当該装置1300において、光ビーム1305は光学素子1304によって修正され、サンプルセルの液滴表面1302に保持されているサンプル1357の液滴に導かれる修正ビーム1307を生成する。修正ビーム1307は自身に干渉して有効ビーム1308を液滴1357内に生成する。修正ビーム1307は、暗領域1310を形成する。後方散乱光は、検出器1353を用いて検出される。光学素子1304は、上述したどの光学素子であってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、前記装置1300は、上述した例と同様に、液滴表面1302を通過する前方散乱光を検出してもよい。
【0137】
図示した例において、修正ビームは、液滴のわずかな部分のみを照光する。装置は、液滴のその同じわずかな部分から後方散乱光を検出することによって、表面の形状に基づくビームステアリングを避け、サンプルの屈折率に対する測定の感度を抑制する。
【0138】
液滴表面を備えるサンプルセルの例は、出願人の同時継続中の欧州特許出願公開番号第2404154に記載されており、当該欧州特許出願を本願に参照により援用される。
【0139】
図14Aおよび14Bは、光学素子、例えば光学素子204、によって生成された有効ビームが、どのようにサンプル位置における平面波に近似するかを図示している。図14Aは、単一波長を有する平面波によって照光された減光レンズ、例えば減光レンズ604、によって生成された有効ビームとして、サンプルセルにおける、有効ビームの強度プロファイルを示している。図14Aは、減光レンズの焦点面143の領域における強度の等照線141を示している。図6Bに示された強度プロファイルと同様に、図14は、極大ピークまたは光軸u144を中心にした中心ローブ145、および、焦点面vにおける光軸からオフセットしたより小さな極大ピークを示している。図14Bは、焦点面付近の位相変化を図示しており、y軸は光学軸からの横断距離、およびx軸は焦点面からの縦断距離であるグラフに示された定位相の線を示している。
【0140】
これらの図からわかるように、焦点面から~5以降の波長(すなわち、照明光の波長)では、有効ビームは平面波のように見える。焦点面から約5以内の波長では、位相面は光学軸に沿って進む平面波に対して予想されるものよりも、互いに対して近くなっている。しかし、検出容量の大きさ(検出光路と照明光路とが一致する量として定義されてもよい)は通常、長さがミリオーダーであるため、この領域の焦点面付近の特有な位相変化は、((5x633nm)/1mm)~3x10-3の小さな体積分率のみを構成し、従って、粒子測定の目的には、ごくわずかなものであると考えられ得る。
【0141】
しかし、いくつかの実施例において、粒子の特性を測定する際に、モデルを用いて平面波からの有効ビームのあらゆる偏差を補正してもよい。例えば、適切に変更された屈折率が偏差の領域(すなわち、焦点面の5~6以内の波長)に割り当てられてもよい。
【0142】
焦点面vの軸に沿った中心ローブ145の横方向の範囲が、以下の式を用いて計算されてもよい。
【数9】
焦点面vにおいてr=(x+y0。5である場合、直径10mm、波長633nmの照明光を有する100mmの焦点距離レンズの場合も同様であり、v=π(すなわち、中心の最高点からπ異なる層を有する焦点面に沿った点)の場合、|r|=3.5μmである。
【0143】
これは、検出光路142が分析するには、比較的小さなサイズである。しかし、検出光路が検出ビーム(図14Aにおいて点線で示された)と同じであるとみなすと、屈折率n(水の場合は=1.33)の媒体における焦点距離f=100mmのレンズに入射するレーザの直径xlaserの焦点におけるビームウェストは、以下の式により、求められる。
【数10】
よって、半径3.5μm以内の領域を検出するのに必要なレンズにおけるビームの大きさは、xlaser=(633nmx100mm)/(1.33xπx3.5μm)=4.3mmである。このビームの大きさは、容易に獲得可能であり、図14Aにおける中心ローブからの散乱を検出することは可能であるということを証明している。高品質、最良の形状、または対のレンズを用いて、焦点面の領域内の像を劣化させる場合がある結像収差を、低減させてもよい。
【0144】
検出経路が中心ローブを越えた領域を分析をする場合でも、例えば同等の検出ビームが図14Aに示されたものよりも広い場合、または10°未満の角度の光が検出された場合でも、照光する有効ビームは、まだ十分に平面波に近似している。図14Bに示されるように、有効ビームは、相の不連続点を示している。しかし、相の波面は局所光速でサンプルを通過して進む。よって、屈折率nの分散体において、相がφ=kxであり、k=2π/λである場合、不連続点πラジアンに対しては、x=π/2、およびδt=x/(c/n)=633nmx1.33/(cx2)~1.4x10-16倍である。言い換えると、各不連続点は検出領域を時間尺度~10-16倍で通過する。この時間尺度は従来の検出器が検出するのには速すぎるため、不連続点は検出器によって測定される信号に著しい影響を及ぼすことはない。
【0145】
例えば、自己相関検出方法を用いて信号を検出する場合、1つの検出器ではデッドタイムよりも早いイベントを検出することは不可能である。典型的な最新の、アバランシェフォトダイオード検出器は、12.5ナノ秒のデッドタイムを有するため、位相面における不連続点は検出不可能であり、既に述べたとおり、界は、検出量の大部分がごくわずかな領域を除いて、前進する平面波であるかのように焦点面の5~6波長内で作用する。
【0146】
他方で、相互関係検出方法では、デッドタイムは2つ以上の検出器間で無相関なため、ゼロ時間と互いに関係付けることが可能である。しかし、上で計算した時間尺度で、効果的に互いに関係付けるために、過度の高入力レーザなしで、十分な光子が捕捉されるということは起こりそうにない。このような高入力レーザは、焦点位置で不要なジュール加熱を引き起こすかもしれず、また、十分に高い出力は、分散体と分散相との両方において、非線形的な光学的効果を引き起こすかもしれない。
【0147】
したがって、上記の粒子特性測定装置の例において、光学素子によって生成された効果的な波は、平面波に近似している。全ての実際に検出可能な目的に対して、サンプルは、従来の平面波によって照光されているかのように照光されるが、ゼロ散乱光およびπ散乱光の検出を可能にするという利点を有する。
【0148】
他の実施例は、付属の請求項によって定義されるように、本発明の範囲内である。
[参考文献]
1) Dynamic Light Scattering, Berne and Pecora, Dover (2000)
2) Non-negative least-squares truncated singular value decomposition to particle size distribution inversion from dynamic light scattering data., Appl Opt. 2010 Dec 1;49(34):6591-6, Zhu X1, Shen J, Liu W, Sun X, Wang Y.
3) Koppel, Dennis E. (1972). "Analysis of Macromolecular Polydispersity in Intensity Correlation Spectroscopy: The Method of Cumulants". The Journal of Chemical Physics. 57 (11): 4814. Bibcode:1972JChPh..57.4814K. doi:10.1063/1.1678153.
4) G. Maret and P.E. Wolf, Z. Phys. B - Condensed Matter 65, 409-413 (1987
5) Static Light scattering technologies for SEC explained, https://theanalyticalscientist.com/fileadmin/tas/issues/App%20Notes/MRK1919-03_Static_light_scattering_technologies_for_GPC-SEC_explained.pdf
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14A
図14B