(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】電気化学的容器のためのクロージャ、電気化学的容器および実験室装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20220801BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B01J19/08 A
G01N27/28 R
(21)【出願番号】P 2019540617
(86)(22)【出願日】2018-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2018052583
(87)【国際公開番号】W WO2018141881
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-18
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594184816
【氏名又は名称】イカーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】IKA-Werke GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Janke und Kunkel Strasse 10,D-79219 Staufen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィル エス. バラン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ヴァルトマン
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0316500(US,A1)
【文献】特開2011-033599(JP,A)
【文献】特開昭61-213657(JP,A)
【文献】特開2016-080425(JP,A)
【文献】特開2011-103804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
G01N 27/00-27/10、
27/14-27/24
G01R 31/00、31/24-31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応容
器のためのクロージャであって、該クロージャは、
該クロージャが反応容器に取り付けられたときに、ホルダによって保持された電極が前記反応容器の内部空間および前記反応容器に収容された電解質内へ延びるように、前記クロージャの内側に配置された電極を保持するためのホルダと、
前記電極との電気的接触を提供するための、前記クロージャの外側に配置された複数のコンタクトと、を備
え、
前記コンタクトは、前記クロージャの外周面に配置され、
前記クロージャは、前記クロージャの外周面に配置され、前記反応容器を実験室装置の反応容器ホルダまたは支持部に取り付けるための磁石を有し、
前記磁石は、前記コンタクトの周方向両側に配置されている、
電気化学反応容
器のためのクロージャ。
【請求項2】
前記クロージャを前記反応容器に固定するためのファスナをさらに備える、請求項1記載のクロージャ。
【請求項3】
前記反応容器における対応するねじ山付きコネク
タと係合するための、コネク
タをさらに備える、請求項1記載のクロージャ。
【請求項4】
前記ホルダは、前記電極を前記クロージャに取外し可能に取り付けるための、複数の保持エレメン
トを有する、請求項1
から3までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項5】
前記クロージャにホースを接続するためのコネクタ、および/または前記反応容器の内部空間に流体を供給しかつ/または前記反応容器の前記内部空間に収容された流体のサンプルを回収するためのチャネルをさらに備える、請求項1
から4までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項6】
実験室装置の対応する保持手段と係合するための取付け手段を備え、これにより、前記クロージャによって閉鎖された前記反応容器は、前記実験室装置に取付け可能である、請求項1
から5までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項7】
前記クロージャを含む前記反応容器を保持するための実験室装置の
前記反応容器ホルダに対する前記クロージャの位置を調節またはセンタリングするための少なくとも1つの突出部を備
える、請求項1
から6までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項8】
電極を収容するためのチャネルを備え、該チャネルは前記クロージャの内側から外側まで延
びる、請求項1
から7までのいずれか1項記載のクロージャ。
【請求項9】
請求項1
から8までのいずれか1項記載のクロージャを備える、実験室装
置のための電気化学反応容器。
【請求項10】
実験室装置であって、
請求項
9記載の少なくとも1つの電気化学反応容器と、
該反応容器を収容するための
前記反応容器ホルダまたは支持部と、を備える、
実験室装置。
【請求項11】
前記反応容器ホルダまたは支持部は、異なる寸法の反応容器を保持するために調節可能である、請求項
10記載の実験室装置。
【請求項12】
前記反応容器ホルダまたは支持部は、複数の保持エレメントを有し、各保持エレメントは、異なる寸法の反応容器を保持するために調節可能である、請求項
10記載の実験室装置。
【請求項13】
前記反応容器ホルダまたは支持部は、前記反応容器の前記コンタクトと電気的に接触するた
めのばね荷重がかけられたコンタクトを有する、請求項
10から12までのいずれか1項記載の実験室装置。
【請求項14】
前記反応容器ホルダまたは支持部は、前記
反応容器の前記コンタクトと電気的に接触するためのコンタクトを含む折畳み可能な部材を有し、前記
反応容器の前記コンタクトと電気的に接触するためのコンタクトは、前記折畳み可能な部材を作動位置へ折り畳むことによって前記反応容器の前記コンタクトと電気的に接触できるように前記折畳み可能な部材内に配置されている、請求項
13記載の実験室装置。
【請求項15】
前記反応容器ホルダまたは支持部は、該反応容器ホルダまたは支持部に前記反応容器を取り付けるための1つまたは複数の磁石を有する、請求項
10から14までのいずれか1項記載の実験室装置。
【請求項16】
前記反応容器に収容された電解質を混合するための磁気撹拌機をさらに備え、該磁気撹拌機は、前記反応容器ホルダまたは支持部に含まれていてもよい、請求項
10から15までのいずれか1項記載の実験室装置。
【請求項17】
前記コンタクトを介して前記電極に接続されたまたは接続可能な制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記実験室装置の作動中、前記反応容器内の電気化学的プロセスまたは反応を制御する、請求項
10から16までのいずれか1項記載の実験室装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的容器のためのクロージャ、電気化学的容器および実験室装置に関する。
【0002】
背景
化学分析を行うために電気化学反応装置を使用することが公知である。このような装置は、正確な測定を可能にすることが要求され、このことが装置を複雑かつ高価にしている。
【0003】
また、化学反応を行うために電気化学反応装置を使用することが公知である。従来の装置では、化学反応は、触媒、反応開始剤および反応停止剤などの添加剤を使用することによって制御される。このような従来の装置は廃棄物を発生し、廃棄物は廃棄される必要がある。
【0004】
従来の装置はしばしば、操作しにくい。特に、従来の装置は、通常、外部PCに接続され、外部PCによって制御される。装置を自律的に操作することはできない。制御ソフトウェアの操作はしばしば複雑である。
【0005】
さらに、操作のために従来の装置をセットアップすることは、不便であるまたは面倒でさえある可能性がある。例えば、従来の電気化学反応容器の電極を接続することは、ワニ口クリップまたは同様のものを必要とすることがある。
【0006】
本発明は、実験室環境における化学反応の実施を容易にすることを目的とする。
【0007】
発明の概要
本発明は、独立請求項に記述されている。選択的な特徴は、従属請求項に記述されている。
【0008】
発明の1つの態様によれば、電気化学反応容器、特にポテンシオスタットのためのクロージャであって、クロージャは、クロージャが反応容器に取り付けられたときに、ホルダによって保持された電極が反応容器の内部空間および反応容器に収容された電解質内へ延びるように、クロージャの内側に配置された電極を保持するためのホルダと、電極との電気的接触を提供するための、クロージャの外側に配置された複数のコンタクトと、を備える、電気化学反応容器、特にポテンシオスタットのためのクロージャが提供される。
【0009】
クロージャは、実験室反応容器を閉鎖しかつ電極を反応容器の内部へ挿入するために使用することができる。電極は、反応容器内の電気化学的プロセスを制御するために使用することができる。言い換えれば、クロージャは、電気化学反応のための実験室反応容器の使用を可能にする。反応容器は、クロージャによって閉鎖されかつ電解質が充填されたとき、実験室環境における適用のための電気化学反応容器を形成する。1つの実施の形態では、3つの電極、すなわち、基準電極、作用電極および対電極が設けられている。
【0010】
1つの実施の形態では、クロージャは、クロージャを反応容器に固定するための、特に反応容器を液密および/または気密形式でシールするためのファスナを有する。ファスナを、反応容器を開閉するために操作することができる。容器内の反応室が環境から液密および/または気密形式でシールされ、これにより、電気化学反応に対する環境的影響を回避または低減するように、ファスナおよび/またはクロージャを配置することができる。容器をシールすることによって、所定の大気圧、例えば不活性ガス雰囲気において反応を行うことができる。
【0011】
1つの実施の形態では、クロージャは、反応容器において対応するねじ山付きコネクタ、特に雄ねじ山と係合するための、コネクタ、特に雌ねじ山を備えるコネクタを有する。この実施の形態では、クロージャは、容易に開閉することができるスクリュクロージャとして実施されており、これにより、ユーザフレンドリな操作を提供する。
【0012】
1つの実施の形態では、クロージャは、別々の第1および第2の部分、特に半径方向内側および外側の部分を有し、第1の部分は、ホルダと、複数のコンタクトとを有し、第2の部分は、ファスナを有し、第2の部分は、反応容器に固定されたとき、反応容器に対する第1の部分の位置を中央に位置させる。この実施の形態では、第1の部分は、円筒状の内側部分を形成することができ、内側部分の軸線は、クロージャが反応容器に固定されたとき、反応容器の長手方向軸線と一致させられる。第2の部分は、内側部分の周囲に沿って延びる、リング状の外側部分を形成していることができる。例えば、第2の部分は、ユニオンナットである。クロージャは、第2の部分(例えば、ユニオンナット)を反応容器に固定する(例えば、螺合させる)ことによって反応容器に固定される。これにより、第1の部分は、反応容器に対して所定の位置に固定される。特に、第1の部分は、反応容器に対してセンタリングされ、これにより、電極が、容器によって形成された反応室内の所定の位置に配置されることを保証する。
【0013】
別の実施の形態では、クロージャは、ワンピースで形成されている。
【0014】
1つの実施の形態では、ホルダは、電極をクロージャに取外し可能に取り付けるために、複数の保持エレメント、特にねじ山付きコネクタまたはプラグインコンタクトを有する。この実施の形態では、電極をプラグインコンタクト内へ螺合させるまたは単に差し込むことによって電極をホルダに容易にかつ確実に取り付けることができる。これは、電極の交換を容易にする。
【0015】
1つの実施の形態では、クロージャは、さらに、反応容器の内部空間へ流体を供給しかつ/または反応容器の内部空間に含まれた流体のサンプルを回収するためのチャネルを有する。チャネルは、クロージャを開閉させることによる反応容器の開閉から独立して開閉させることができる。この実施の形態では、操作中、すなわち電気化学反応が反応室内で生じている間、反応物を反応室に供給することができる。また、容器の内容物のサンプルは、試験のために、操作を中断する必要なく回収することができる。
【0016】
1つの実施の形態では、クロージャは、実験室装置の対応する保持手段と係合するための取付け手段を有し、これにより、クロージャによって閉鎖された反応容器は、実験室装置に取付け可能である。したがって、反応容器を実験室装置に取付けるための手段は、クロージャにおいて一体化される。これにより、既存の(従来の)反応容器を電気化学反応容器に変換しかつ電気化学反応容器を対応する実験室装置に取り付けるために、クロージャを使用することができる。
【0017】
1つの実施の形態では、クロージャは、クロージャを含む反応容器を保持するための実験室装置のホルダに対するクロージャの位置を調節またはセンタリングするための少なくとも1つの突出部を有し、少なくとも1つの突出部は、好ましくは、クロージャの外側から軸方向に延びている。実験室装置の対応するホルダによって、突出部を収容することができる。突出部は、実験室装置への、クロージャを備える反応容器の取付けを容易にする。同時に、突出部は、反応容器が実験室装置に対して所定の位置に配置されることを保証する。
【0018】
1つの実施の形態では、クロージャは、さらに、電極を収容するためのチャネルを有し、チャネルは、クロージャの内側から外側まで延びており、特に、チャネルを通って延びかつ内側および外側においてクロージャから突出した電極を有する。作動時、すなわちクロージャが反応容器に取り付けられているとき、電極は、反応室内から反応容器の外側へ延びている。クロージャの外側から突出した電極の部分は、クロージャ(および反応容器)を実験室装置に取り付けるために使用することができる。この部分は、センタリング突出部としても機能することができ、これにより、別個のセンタリング突出部は必要とされない。クロージャの内側から突出した電極の部分は、反応容器に収容された電解質と接触する。
【0019】
1つの実施の形態では、コンタクトは、側面に、特にクロージャの外周面に配置されている。この実施の形態では、実験室装置と反応容器との間の電気接続は、反応容器を備えるクロージャが実験室装置のホルダに取り付けられたときに互いに係合する、クロージャおよび実験室装置のそれぞれの側面を介して確立される。
【0020】
発明の別の態様によれば、実験室装置、特にポテンシオスタットのための電気化学反応容器が提供され、反応容器は、上述の実施の形態のうちのいずれかによるクロージャを有する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、実験室装置、特にポテンシオスタットのための電気化学反応容器であって、反応容器は、反応容器の内部空間内へ延びる複数の電極と、反応容器の外側における電極との電気的接触を提供するための、反応容器の外側に配置された複数のコンタクトとを有する、電気化学反応容器が提供される。
【0022】
したがって、電気化学反応容器は、容器によって形成された電気化学反応室内での電気化学的プロセスの制御を可能にする一体化された電極を有する。この実施の形態では、容器のクロージャに電極およびコンタクトを配置する必要はない。
【0023】
この実施の形態は、使い捨て可能または一回利用の反応容器の提供を可能にする。全ての必要な電気エレメントは、容器に一体化されていてもよい。
【0024】
1つの実施の形態では、電極は、反応容器の底部に配置されており、コンタクトは、反応容器の底部外側に配置されている。この実施の形態では、反応容器は、支持面に一体化された対応するカウンターコンタクトを有する実験室装置の支持面に配置されるように適応されている。すなわち、反応容器は、対応して適応させられる電気化学的な実験室装置に容易に挿入しかつ実験室装置から容易に取り出すことができる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、実験室装置であって、上述の実施の形態のうちのいずれかによる少なくとも1つの電気化学反応容器と、反応容器を収容するためのホルダまたは支持部とを有する、実験室装置が提供される。発明の実施の形態において、複数のこのような電気化学反応容器が提供されてもよく、これにより、同じまたは異なる電気化学的条件下で実験室環境において複数の電気化学反応の同時実施を可能にする。
【0026】
1つの実施の形態において、ホルダまたは支持部は、異なる寸法の反応容器を保持するように調節可能である。ホルダまたは支持部は、クロージャのサイズに合わせて自動的に調節されるファスナまたはクランプとして実施されてもよい。ホルダまたは支持部は、トップダウンホルダとして実施されてもよい。
【0027】
1つの実施の形態では、ホルダまたは支持部は、複数の保持エレメントを有し、各保持エレメントは、異なる寸法の反応容器を保持するために調節可能である。したがって、実験室装置は、同時に異なる反応容器を収容し、異なる電気化学的プロセスを行ってもよい。
【0028】
1つの実施の形態では、ホルダまたは支持部は、反応容器のコンタクトと電気的に接触するためのコンタクト、特にばね荷重がかけられたコンタクトを有する。ホルダまたは支持部におけるコンタクトは、反応容器と、実験室装置に含まれることがある制御装置との間の電気接続を確立するために機能する。ばね荷重がかけられたコンタクトを提供することによって、確実な電気接続が提供される。
【0029】
1つの実施の形態では、電気コンタクトは、クロージャの、前記側面に配置されたコンタクトと係合するように、ホルダまたは支持部の側面に配置されている。この実施の形態では、反応容器を備えるクロージャを、ホルダまたは支持部に側面において取り付けることができ、実験室装置と反応容器との間の電気接続は、クロージャとホルダまたは支持部との接合部を介して確立することができる。
【0030】
1つの実施の形態では、ホルダまたは支持部は、コンタクトを含む折畳み可能な部材を有し、折畳み可能な部材に配置されたコンタクトは、折畳み可能な部材を作動位置へ折り畳むことによって、反応容器のコンタクトと電気的に接触する。折畳み可能な部材は、実験室装置への反応容器の固定から独立して、反応容器と実験室装置との間の電気接続の確立を可能にする。
【0031】
1つの実施の形態では、ホルダまたは支持部は、反応容器を収容するための支持面を有し、支持面は、反応容器のコンタクト、特に反応容器の下側におけるコンタクトと電気的に接触するためのコンタクトを有する、かつ/または反応容器を支持面に取付けるための手段、特に支持面における対応するまたは相補的な第2の取付け手段と係合するための、反応容器の下側における第1の取付け手段を有する。この実施の形態では、電気接続は、単に反応容器を支持面に配置することによって確立することができる。
【0032】
1つの実施の形態では、ホルダまたは支持部および/またはクロージャは、反応容器をホルダまたは支持部に取付けるための1つまたは複数の磁石を有する。したがって、反応容器は、実験室装置のホルダに容易に取り付けかつ実験室装置のホルダから容易に取り外すことができる。
【0033】
1つの実施の形態では、実験室装置は、反応容器に収容された電解質を混合するための磁気撹拌機を有し、磁気撹拌機は、ホルダまたは支持部に含まれていてもよい。この実施の形態は、作動中、反応室の内容物の混合を可能にする。
【0034】
1つの実施の形態では、実験室装置は、コンタクトを介して電極に接続されたまたは接続可能な制御装置を有し、制御装置は、実験室装置の作動中、反応容器内の電気化学的プロセスまたは反応を制御する。制御装置は、電極に加えられる電位を制御することによって電気化学的チャンバ内の電気化学反応の制御を可能にする。化学的な添加剤は不要である。例えば、電極に供給される電圧および/または電流を制御することができ、これにより、反応容器における反応物に提供される電荷を制御する。加えて、制御装置は、回転、特に磁気撹拌機の回転速度などのその他のパラメータの制御を可能にする。制御装置は、電気化学反応に関するパラメータ値を表示するためのディスプレイを有してもよい。
【0035】
実験室装置は、分析データを得るための電気化学的分析を行うために使用されてもよい。例えば、実験室装置は、周期的なボルタンメトリーを行うために使用されてもよい。
【0036】
実験室装置に一体化された制御装置を提供することによって、実験室装置を外部PCに接続する必要なく(しかしながら、これは付加的に可能にされてもよい)、実験室装置を自律的に操作することができる。
【0037】
制御装置は、制御ソフトウェアを有しかつ制御ソフトウェアによって制御されてもよい。制御装置は、制御ソフトウェアをアップデートするための複数のインターフェースのうちの1つまたは複数を有してもよい。特に、インターフェースは、USBポート、ブルートゥース接続および/またはWi-Fi接続を含んでもよい。インターフェースは、既存の制御ソフトウェアをアップデートするためにかつ/または異なる電気化学的プロセスまたは分析を制御しかつ実施するための新たなソフトウェアをアップロードするために、使用されてもよい。
【0038】
1つの実施の形態では、実験室は、それぞれの反応容器またはマルチバイアルアダプタをそれぞれが収容するための複数の支持面を有する。この実施の形態では、多数、例えば50個以下または50個以上の反応容器を同時に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の1つの実施の形態による電気化学反応容器を示している。
【
図2】
図2a~
図2dは、本発明の実施の形態による異なる電気化学反応容器を示している。
【
図3】
図3aおよび
図3bは、本発明の1つの実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図4】本発明の1つの実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図5】本発明の別の実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図6】
図6aおよび
図6bは、本発明の別の実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図7】本発明の別の実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図8】
図8aおよび
図8bは、本発明の別の実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図9】
図9a~
図9cは、本発明の別の実施の形態による電気化学反応容器1を示している。
【
図10】
図10aおよび
図10bは、本発明の別の実施の形態による実験室装置の異なる図を示している。
【
図11】
図11a~
図11dは、発明の1つの実施の形態による、側面電気コンタクトを備えた反応容器の異なる図を示している。
【
図12】
図12aおよび
図12bは、発明の2つの代替的な実施の形態による実験室装置の平面図を示している。
【
図13】発明の1つの実施の形態による実験室装置の一部を概略的に示している。
【
図14】本発明の別の実施の形態による電気化学反応容器を示している。
【0040】
実施の形態の説明
図1は、本発明の1つの実施の形態による、クロージャ2を有する電気化学反応容器1を示している。容器1は、円筒状である。クロージャ2は、ねじ山接続によって容器1に取り付けられている。特に、ねじ山接続は、クロージャ2の内側における雌ねじ山3と、容器1における対応する雄ねじ山4とを含む。
【0041】
電極ホルダ5は、クロージャ2の内側8に配置されている。ホルダ5は、複数の保持エレメント6を有する。各保持エレメント6は、雄ねじ山を有し、この雄ねじ山により電極7がそれぞれの保持エレメント6に螺合させられる。
【0042】
保持エレメント6に螺合させられたときに電極7が容器1の内部9へ延びるように、保持エレメント6はクロージャ2の内側8に配置されている。容器に電解質が充填されておりかつクロージャ2が容器1に取付けられている作動状態において、電極7は電解質内へ延びている。
【0043】
クロージャ2を備える容器1、電極7および電解質は、電気化学セルを形成している。3つの電極7を備える例示された実施の形態では、容器1、クロージャ2、電極7および電解質が一緒にポテンシオスタットを形成している。
【0044】
電極7は、クロージャ2の外側12におけるコンタクト11と電気的に接続されている。加えて、クロージャ2は、流体、特に液体を容器1へ供給しかつ/または内容物を容器1から抽出するためのホースコネクタ13を有する。これは、反応前、反応中または反応後に行うことができる。ホースコネクタを、クロージャ、例えば蓋14によって閉鎖することができる。
【0045】
作動位置において、電極の端部と、容器1の底部との間には、撹拌エレメント(図示せず)、特に磁気撹拌機の撹拌バーを収容するために十分な大きさの間隙が設けられている。
【0046】
図2a~
図2dは、クロージャ2を備える電気化学反応容器1の異なる実施の形態を示している。各実施の形態において、3つの電極、すなわち1つの基準電極Rと、互いに隣接して配置された2つの作用電極Aとが設けられている。また、クロージャ2は、センタリング突出部16を有する。実施の形態は、容器1が、異なる容積、例えば、50ml(a)、20ml(b)、10ml(c)および5ml(d)を有するという点で互いに異なる。
【0047】
図3a、
図3bおよび
図4は、本発明の1つの実施の形態による実験室装置17を示している。
図3aは、上方から見た図を示しているのに対し、
図3bは、線A-Aに沿った実験室装置17の断面図を示している。実験室装置17の上面には、ユーザが実験室装置17の作動を制御することができるようにするための制御エレメント18が設けられている。加えて、容器1を配置することができる支持面19が設けられている。支持面19は、容器1またはホルダまたは容器1に関連したアダプタを固定するための保持またはラッチエレメント20と、3つの電極(基準電極Rおよび作用電極A)のためのコンタクトとを有する。
【0048】
実験室装置17は、撹拌磁石22を駆動するための駆動装置21を有する。撹拌磁石22自体は、容器1内に設けられた撹拌バー(図示せず)を駆動する。
【0049】
図4は、実験室装置の側面図を示している。この図に示したように、保持および/またはラッチエレメント20は、リング状であり、支持面19から鉛直方向に延びている。
【0050】
図5は、クロージャ2によって閉鎖された反応容器1を有する実験室装置17の別の実施の形態を示している。この実施の形態では、反応容器1は、ホルダ23によって支持面19の上方に保持されている。特に、反応容器2は、その長手方向軸線が撹拌磁石22の回転軸線と一致させられるように保持される。ホルダ23は、支持面19に取付けられている。
【0051】
ホルダ23は、クロージャ2および容器1における電極7を実験室装置17と接続するためのコンタクトを有する。
【0052】
図6aおよび
図6bは、それぞれ
図5の実験室装置17の側面図および平面図を示している。
図6aは、反応容器1がホルダ23によって支持および保持されていることを示している。ホルダ23は、クロージャ2と係合するためのファスナ、例えばクランプを有し、これにより、反応容器1を実験室装置17に取り付けている。ファスナは、異なるサイズのクロージャ2を収容するように調節可能であってもよい。
【0053】
ホルダ23は、センタリング突出部を収容するための凹所25を有し、これにより、実験室装置17に対して反応容器1をセンタリングする。1つの実施の形態において、ホルダ23は、反応容器1の底部と支持面との間に所定の距離が存在するように反応容器1を支持面19の僅かに上方に保持する。しかしながら、代替的な実施の形態では、容器1は支持面に載置される。
【0054】
ホルダは、クロージャ2の外側12におけるコンタクト11と電気的に接触するためのコンタクト(図示せず)を有する、折畳み可能な上部24を有する。作動時、センタリング突出部が凹所25に挿入されるとき、上部24が上方へ折り畳まれる。その後、上部24は下方へ折り返され、これにより、上部24のコンタクトがクロージャのコンタクト11と接触させられる。上部24のコンタクトは、コンタクト11との確実な電気接続が形成されることを保証するためにばね荷重がかけられていてもよい。
【0055】
図7、
図8aおよび
図8bは、実験室装置17の別の実施の形態を示している。
図7および
図8aの実施の形態では、複数の反応容器1が、マルチバイアルアダプタ26によって保持されている。アダプタ26は、下側部分27および上側部分28を有する。上側部分28において、反応容器1は、基本的にホルダ23と同じ形式で機能する保持手段を介して実験室装置17に取り付けられている。特に、各反応容器1のクロージャ2は、それぞれの保持エレメントに取り付けられている。また、上側アダプタ部分28は、反応容器1のセンタリング突出部を収容するための凹所25を有する。クロージャ2におけるコンタクト11は、上側部分28におけるそれぞれのカウンターコンタクト(図示せず)と接触する。カウンターコンタクトは、実験室装置17における制御装置と電気的に接続されている。
【0056】
アダプタの保持手段は、異なるサイズのクロージャを収容するために調節可能であってもよい。したがって、異なる寸法の反応容器を実験室装置17に取り付けることができる。
【0057】
図8bは、
図7および
図8aの実験室装置17の平面図を示している。アダプタ26は、6個の反応容器1を保持している。上側アダプタ部分28における凹所25は、クロージャ2のセンタリング突出部と係合し、実験室装置17に対する反応容器1の位置を確定する。
【0058】
反応容器1は、電気化学反応に適した材料、例えばガラスまたはプラスチック材料から形成されている。
【0059】
図9aは、別の実施の形態による電気化学反応容器1を示している。
図9bは、
図9aにおけるA-Aに沿った断面図を示しており、
図9cは、
図9aにおけるB-Bに沿った断面図を示している。
【0060】
この実施の形態では、クロージャ2は、電極7を収容するためのプラグイン(差込み)コンタクト29を有する。電極7は、単に電極7をプラグインコンタクト29内へ差し込むことによってクロージャ2に取り付けることができる。また、この実施の形態では、クロージャ2は、ワンピースで形成されている。
【0061】
図10aおよび
図10bは、本発明の別の実施の形態による実験室装置17を示している。この実施の形態では、反応容器1は、磁力によってホルダ23に取り付けられている。このために、磁石30は、ホルダ23の上側部分31および/またはクロージャ2の対向する上側部分32に配置されている。磁石30は、反応容器1を実験室装置17内に保持しかつ実験室装置17内での反応容器1の位置をセンタリングするために機能する。ホルダ23およびクロージャ2のそれぞれの上側部分31,32は、相補的な形状を有し、それぞれの周囲係合面33および34において互いに係合する。
【0062】
電気コンタクト35,36は、それぞれ周囲係合面33,34に配置されている。言い換えれば、電気コンタクトは、側方、すなわち円筒状の反応容器1の回転軸線に関して半径方向外方に面した、側面コンタクトとして配置されている。クロージャ2がホルダ23に取り付けられると、電気コンタクト35,36は互いに係合し、これにより、反応容器1の電極と、実験室装置17の電源との間に電気接続を提供する。
【0063】
図11は、
図10に関して説明したように、側面コンタクト33を備える実施の形態による反応容器を示している。
【0064】
図12aは、発明の1つの実施の形態による実験室装置17の平面図を示している。この実施の形態は、基本的に、
図3の実施の形態に対応し、1つの反応容器1を収容するための1つの支持面19を有する。代替的に、複数の反応容器1が、
図7および
図8に示したようなマルチバイアルアダプタ26によって支持されてもよい。特定の実施の形態において、6個以下の検査バイアルが配置されてもよい。
【0065】
図12bは、発明の代替的な実施の形態による実験室装置17の平面図を示している。この実施の形態では、複数の支持面19が設けられている。各支持面は、1つの反応容器1または
図7および
図8に示したようなマルチバイアルアダプタ26を収容することができる。示された例では、実験室装置は、30個以下のバイアル(各支持面において5個のバイアル)に対して作動させられるように配置構成されている。
【0066】
図13は、発明の1つの実施の形態による実験室装置17の一部を概略的に示している。この実施の形態では、支持面19は、反応容器1を収容しかつ支持するように配置されている。支持面は、反応容器1(図示せず)の下側における対応する電気コンタクトと係合するための電気コンタクト35を有し、これにより、実験室装置17の電源と反応容器1の電極との間の電気接続が確立される。これにより、本発明の幾つかの他の実施の形態とは対照的に、電力は、反応容器1の上部ではなく、底部から供給される。
【0067】
この実施の形態では、反応容器1は、反応容器1の底部を実験室装置に取り付けるための手段を有する。例えば、
図13に示したように、反応容器1は、1つまたは複数の半径方向突出部36を底端部に有し、半径方向突出部36は、支持面19における対応する凹所37に挿入することができる。挿入後、支持面19に対して反応容器1を回転させることによって、突出部36は、支持面19の下側の、半径方向に延びる凹部内へ移動させられ、これにより、支持面19に対して反応容器1を固定する。簡略にするために、
図13は、1つの突出部36および1つの対応する凹所37のみを示している。しかしながら、2つ以上のこのような突出部および凹所、および/または代替的な取付け手段が設けられてもよいと考えられる。
【0068】
図14は、本発明の別の実施の形態による電気化学反応容器1を示している。この実施の形態では、電気化学反応容器1は、ボトルネック39および雄ねじ山40を備えるボトル形レセプタクル(容器)38を有し、雄ねじ山40にクロージャ2を螺合させることができる。代替的な実施の形態では、ねじ山40は設けられず、クロージャ2はレセプタクル38に押し込まれる。
【0069】
レセプタクル38は、標準的な“既製の”レセプタクル(容器)によって実施されてもよい。
【0070】
電極6は、レセプタクル38の内部へクロージャ2を通って延びている。ハンドル部分41が、電極6の上端部に取り付けられている。ハンドル部分41は、電極6がレセプタクル38内の終端位置に達したときに電極6を停止させる。また、ハンドル部分41は、例えば電極6が交換されるときにユーザが電極6を掴むことを可能にする。さらに、各ハンドル部分は、電極6のための電源を接続することができる電気接続部、例えばソケットを有する。
【符号の説明】
【0071】
1 電気化学反応容器
2 クロージャ
3 雌ねじ山
4 雄ねじ山
5 電極ホルダ
6 保持エレメント
7 電極
8 クロージャの内側
9 容器の内部
10 ポテンシオスタット
11 コンタクト
12 クロージャの外側
13 ホースコネクタ
14 クロージャ
15 容器の底部
16 突出部
17 実験室装置
18 作動エレメント
19 支持面
20 保持およびラッチエレメント
21 駆動装置
22 撹拌磁石
23 ホルダ
24 ホルダの上部
25 凹所
26 アダプタ
27 アダプタの上側部分
28 アダプタの下側部分
29 プラグインコンタクト
30 磁石
31 ホルダの上部
32 クロージャの上部
33 クロージャの係合面
34 ホルダの係合面
35 電気コンタクト
36 半径方向突出部
37 凹所
38 レセプタクル
39 ボトルネック
40 雄ねじ山
41 ハンドル部分
A 作用電極
R 基準電極