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特許7114621カバン物品のための二軸配向熱可塑性ポリマーラミネートフィルム、及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】カバン物品のための二軸配向熱可塑性ポリマーラミネートフィルム、及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   A45C 5/02 20060101AFI20220801BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20220801BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220801BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220801BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A45C5/02 W
B32B27/08
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
B32B7/027
B32B27/12
A45C5/02 Q
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019551381
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018056586
(87)【国際公開番号】W WO2018167233
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】17161218.7
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511214071
【氏名又は名称】サムソナイト アイピー ホールディングス エス.エー.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】コスロフスキー、ポリーヌ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヒラート、リック
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502503(JP,A)
【文献】特表2008-517802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0068453(US,A1)
【文献】特開2016-083374(JP,A)
【文献】特開2004-148749(JP,A)
【文献】特開2006-111305(JP,A)
【文献】特表平10-504250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/02
B32B 27/08
B32B 27/32
B32B 7/027
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の共押出しされたフィルム(100)のラミネート体(110)から形成された外殻を含むカバン外殻(120)であって、
前記複数の共押出しされたフィルム(100)は、二軸配向熱可塑性ポリマーのコア(102)と、少なくとも1層の熱可塑性ポリマーの外層(104)と、を含み、
前記外層(104)は、フィルム(100)の厚さの0.5%~25%の厚さを有する、
カバン外殻(120)。
【請求項2】
前記フィルム(100)が、10μm±5%~100μm±5%の厚さを有する、請求項1に記載のカバン外殻。
【請求項3】
前記コア(102)が、10μm±5%~100μm±5%の厚さを有する、請求項1又は請求項2に記載のカバン外殻。
【請求項4】
前記外層(104)が、0.6μm±5%~2.5μm±5%の厚さを有する、又は、前記フィルム(100)の厚さの2%~7%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項5】
前記複数のフィルム(100)のうち、少なくとも2つの隣接するフィルム(100)からすべてのフィルム(100)が、同じ方向に配向している、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項6】
前記二軸配向熱可塑性ポリマーが、二軸配向ポリプロピレンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項7】
前記外層(104)が、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーを含む、又は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項8】
前記コア(102)の融点が、前記外層(104)の融点よりも高い、請求項1~7のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項9】
前記コア(102)の融点が、前記外層(104)の融点よりも少なくとも10℃高い、請求項8に記載のカバン外殻。
【請求項10】
前記フィルム(100)が、延伸されており、横方向及び長手方向のうちの一方の方向において、横方向及び長手方向のうちの他方の方向におけるよりも大きい度合いで延伸されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項11】
前記フィルム(100)が、長手方向において60~190MPaの引張強度を有する、又は、横方向において150~300MPaの引張強度を有する、請求項10に記載のカバン外殻。
【請求項12】
前記フィルム(100)が、横方向において3.5~5GPaの剛性を有する、又は、長手方向において1.5~3GPaの剛性を有する、請求項10又は請求項11に記載のカバン外殻。
【請求項13】
前記ラミネート体が、10~50のフィルム、又は、22若しくは23のフィルムを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項14】
前記ラミネート体の厚さが、0.25mm~2.5mm、又は、0.5mm~1mm未満である、請求項1~13のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項15】
前記ラミネート体(110)が、前記コア(102)の前記熱可塑性ポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーから構築された少なくとも1つの補助材料(118)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項16】
前記補助材料(118)が、フィルム(100)である、請求項15に記載のカバン外殻。
【請求項17】
前記補助材料(118)が、ラミネート体(110)の内部に、又は、ラミネート体(110)に隣接してラミネート体(110)の外部に配置されている、請求項15又は16に記載のカバン外殻。
【請求項18】
前記ラミネート体(110)の上側(114)に配置されている布裏張り層又はトップ層をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項19】
前記カバン外殻が、メッシュテキスタイルシートを含む布裏張り層を含む、又は、二軸配向ポリエステルを含むトップ層を含む、請求項18に記載のカバン外殻。
【請求項20】
前記ラミネート体(110)が、加圧下で前記複数のフィルム(100)を一緒に加熱し圧縮することによって形成される、請求項1~19のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項21】
前記複数の共押出しされたフィルム(100)が、不織フィルムである、請求項1~20のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項22】
前記フィルム(100)が、不織平面連続シート要素を含む構造である、請求項1~21のいずれか一項に記載のカバン外殻。
【請求項23】
二軸配向熱可塑性ポリマーのコア(102)と、
前記コア(102)の上側(103)及び下側(105)のうちの少なくとも一方にあり、前記コア(102)の前記熱可塑性ポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーから構築された外層(104)と、
を含むフィルム(100)を提供することと、
約130℃以下の温度、及び、約10バール未満の圧力又は約40kN/m未満の圧力で複数のフィルム(100)を一緒にラミネートしてラミネート体(110)を形成することと、
前記ラミネート体(110)を成形してカバン外殻(120)を形成することと、
を含む、カバン外殻(120)を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバン物品全般に関し、詳細には、カバンケースの外殻構造の構築におけるラミネートされた二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードサイドカバンケースは、前記ケースの外側の作製に成形可能な比較的硬い材料を用いることによって、耐久性及び支持を提供する。これらの材料の1つの欠点は、製造及び成形が困難であることであり、製造及び成形のプロセスにおいて、僅かな変動に対しての低い許容度を示す。前記材料の許容されない性質は、深絞り成形物品の製造時に特に顕著である。前記材料から製造されたカバン外殻又はケースは、所望される強度を実現するために、比較的厚い、及び/又は比較的重い必要があり得る。前記材料、さらには前記製造及び成形のプロセスは、高価でもあり得、前記プロセスは、時間が掛かるものであり得る。
【0003】
カバン物品のための材料に対する様々なアプローチを含むという意味で本開示に関連し得る文書としては、欧州特許第1763430号、英国特許第1386953号、米国特許第4061817号、インド特許第256542号、及びインド特許第257341号が挙げられる。しかし、これらの提案は、改善され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、カバン外殻などのカバン物品のための改善された材料、特に軽量で耐久性のある材料を提供すること、さらには、比較的容易で、速く、許容され、安価である、前記材料及び前記カバン物品の作製方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明によると、以下に記載される通りの、及び/又は添付の請求項に定められる通りの、カバン外殻を作製するための材料、前記材料で構築されたカバン外殻、前記材料の作製方法、前記カバン外殻の作製方法、及び前記材料から構築された少なくとも1つの外殻を含むカバンケースが提供される。
【0006】
本開示は、特に、軽量で耐衝撃性を有する改善されたプラスチックラミネート材料を提供する。前記材料は、多用途であり、カバン外殻などの物品への深絞り成形を受けるのに適している。前記ラミネート体から構築されたカバン外殻は、軽量であり、薄く、耐久性があり、変形に対する耐性を有し、取り扱い時の非常に優れた耐衝撃性を有する。
【0007】
必要とされる熱及び圧力が比較的少なく、並びに比較的速く、安価である、前記プラスチックラミネート体の作製方法が提供される。カバン外殻などの深絞り成形された物品の作製方法が提供される。前記方法は、比較的容易で、速く、安価である。
【0008】
1つの例では、カバン外殻は、複数の共押出しされたフィルムのラミネート体から形成されている。前記フィルムは、二軸配向熱可塑性ポリマーのコア、及び熱可塑性ポリマーの少なくとも1つの外層を含む。前記外層は、前記フィルムの厚さの0.5%~25%の厚さを有する。
【0009】
いくつかの例では、前記フィルムは、約10μm±5%~約100μm±5%の厚さを有する。
【0010】
いくつかの例では、前記コアは、約10μm±5%~約100μm±5%の厚さを有する。
【0011】
いくつかの例では、前記外層は、約0.6μm±5%~約2.5μm±5%の厚さを有する。
【0012】
1つの例では、前記外層は、前記フィルムの厚さの約2%~約7%である。前記外層は、前記フィルムの厚さの約5%未満であってもよく、又は前記フィルムの厚さの約2.5%であってもよい。
【0013】
別の例では、少なくとも2つの隣接するフィルムは、同じ方向に配向している。
【0014】
さらなる例では、すべてのフィルムが同じ方向に配向している。
【0015】
1つの例では、前記コアの前記二軸配向熱可塑性ポリマーは、二軸配向ポリプロピレンである。
【0016】
1つの例では、前記外層は、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーを含む。
【0017】
別の例では、前記外層は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーを含む。
【0018】
いくつかの例では、前記コアの融点は、前記外層の融点よりも高い。この融点は、前記外層の融点よりも少なくとも約10℃高くてもよい。
【0019】
いくつかの例では、前記フィルムは、延伸されており、横方向及び長手方向のうちの一方の方向において、横方向及び長手方向のうちの他方の方向におけるよりも大きい度合いで延伸されている。
【0020】
いくつかの例では、前記フィルムは、長手方向において、約60~約190MPaの引張強度を有する。
【0021】
いくつかの例では、前記フィルムは、横方向において、約150~約300MPaの引張強度を有する。
【0022】
いくつかの例では、前記フィルムは、横方向において、約3.5~5GPaの剛性を有する。
【0023】
いくつかの例では、前記フィルムは、長手方向において、約1.5~3GPaの剛性を有する。
【0024】
いくつかの例では、前記ラミネート体は、10~50のフィルムを含む。フィルムの数は、22又は23のフィルムであり得る。
【0025】
1つの例では、前記ラミネート体の厚さは、約0.25mm~約2.5mmである。前記ラミネート体の厚さは、約0.5mm~約1mm以下であってもよい。
【0026】
いくつかの例では、前記ラミネート体は、前記コアの熱可塑性ポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーから構築された少なくとも1つのフィルムを含んでいてもよい。
【0027】
いくつかの例では、前記ラミネート体は、トップ層を含む。前記トップ層は、二軸配向ポリエステルを含んでいてもよい。
【0028】
いくつかの例では、前記カバン外殻は、布裏張り層を含む。前記布裏張り層は、メッシュテキスタイルシートを含んでいてもよい。
【0029】
1つの例では、カバン外殻を作製する方法は、フィルムを提供すること、複数のフィルムを一緒にラミネートしてラミネート体を形成すること、及び前記ラミネート体を成形してカバン外殻を形成すること、を含む。前記フィルムは、熱可塑性ポリマーのコアを、並びに前記コアの上側及び下側の各々に外層を有する。前記フィルムは、130℃以下の温度、及び10バール以下の、又はいくつかの例では10バール未満の圧力でラミネートされる。
【0030】
1つの例では、前記コア及び前記外層は、共押出しされて前記フィルムを形成する。
【0031】
いくつかの例では、前記フィルムは、10μm±5%~100μm±5%の厚さを有する。
【0032】
いくつかの例では、前記コアは、10μm±5%~100μm±5%の厚さを有する。
【0033】
いくつかの例では、前記外層は、0.6μm±5%~2.5μm±5%の厚さを有する。
【0034】
いくつかの例では、前記外層は、前記フィルムの厚さの0.5%~25%の厚さを有する。前記外層の厚さは、前記フィルムの厚さの2%~7%であってもよい。
【0035】
別の例では、少なくとも2つの隣接するフィルムは、同じ方向に配向している。
【0036】
さらなる例では、すべてのフィルムが同じ方向に配向している。
【0037】
1つの例では、前記コアの前記二軸配向熱可塑性ポリマーは、二軸配向ポリプロピレンである。
【0038】
1つの例では、前記外層は、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーを含む。
【0039】
別の例では、前記外層は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーを含む。
【0040】
いくつかの例では、前記コアの融点は、前記外層の融点よりも高い。この融点は、前記外層の融点よりも少なくとも10℃高くてもよい。
【0041】
いくつかの例では、前記フィルムは、延伸されており、横方向及び長手方向のうちの一方の方向において、横方向及び長手方向のうちの他方の方向におけるよりも大きい度合いで延伸されている。
【0042】
いくつかの例では、前記フィルムは、長手方向において、60~190MPaの引張強度を有する。
【0043】
いくつかの例では、前記フィルムは、横方向において、150~300MPaの引張強度を有する。
【0044】
いくつかの例では、前記フィルムは、横方向において、3.5~5GPaの剛性を有する。
【0045】
いくつかの例では、前記フィルムは、長手方向において、1.5~3GPaの剛性を有する。
【0046】
いくつかの例では、前記ラミネート体は、10~50のフィルムを含む。フィルムの数は、22又は23のフィルムであり得る。
【0047】
1つの例では、前記ラミネート体の厚さは、0.25mm~2.5mmである。前記ラミネート体の厚さは、0.5mm~1mm未満であってもよい。
【0048】
いくつかの例では、前記ラミネート体は、前記コアの熱可塑性ポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーから構築された少なくとも1つのフィルムを含んでいてもよい。
【0049】
別の例では、前記フィルムは、110℃~130℃の温度でラミネートされる。
【0050】
さらなる例では、前記フィルムは、5kN/m~35kN/mの圧力でラミネートされる。
【0051】
いくつかの例では、前記フィルムは、10kN/m~30kN/mの圧力でラミネートされる。
【0052】
いくつかの例では、前記フィルムは、連続プロセスでラミネートされる。
【0053】
1つの例では、前記フィルムのラミネートは、等積プレス(isochoric press)で行われる。別の例では、前記フィルムのラミネートは、等圧プレスで行われる。
【0054】
別の例では、前記ラミネート体は、大気圧下で冷却される。
【0055】
いくつかの例では、前記カバン外殻の成形は、140℃~180℃の温度で行われる。
【0056】
1つの例では、カバン外殻を作製する方法は、フィルムを提供すること、複数のフィルムを一緒にラミネートしてラミネート体を形成すること、及び前記ラミネート体を成形してカバン外殻を形成すること、を含む。前記フィルムは、二軸配向ポリプロピレンのコアを、並びに前記コアの上側及び下側の各々に外層を有する。前記フィルムは、130℃以下の温度、及び10バール未満の圧力でラミネートされる。
【0057】
いくつかの例では、前記ラミネートの温度は、110℃~130℃である。
【0058】
いくつかの例では、前記圧力は、1バール~9バールである。前記圧力は、1バール~5バールであってもよい。他の例では、前記圧力は、10バール未満、又は10バール以下である。
【0059】
1つの例では、前記ラミネートは、連続プロセスである。
【0060】
1つの例では、前記ラミネートは、等積プレスで行われる。別の例では、前記フィルムのラミネートは、等圧プレスで行われる。
【0061】
別の例では、少なくとも2つの隣接するフィルムは、同じ方向に配向している。
【0062】
さらなる例では、すべてのフィルムが同じ方向に配向している。
【0063】
いくつかの例では、前記成形は、約140℃~約165℃の温度で行われる。
【0064】
1つの例では、フィルムを提供すること、複数のフィルムを一緒にラミネートしてラミネート体を形成すること、及び前記ラミネート体を成形してカバン外殻を形成すること、を含む方法によって作製されるカバン外殻が提供される。前記フィルムは、熱可塑性ポリマーのコアを、並びに前記コアの上側及び下側の各々に外層を有し、前記フィルムは、一緒にラミネートされる。前記フィルムがポリプロピレンフィルムである場合、前記フィルムは、約130℃以下の温度、及び約40kN/m未満の圧力、又は別の選択肢としての例では、約10バール未満の圧力で、ラミネートされる。別の例では、前記圧力は、約40kN/m以下である。さらなる例では、前記圧力は、約10バール以下である。
【0065】
1つの例では、少なくとも1つの上述したカバン外殻を含むカバンケースが提供される。前記カバン外殻は、フィルムを提供すること、複数のフィルムを一緒にラミネートしてラミネート体を形成すること、及び前記ラミネート体を成形して前記カバン外殻を形成すること、を含む方法によって作製される。前記フィルムは、熱可塑性ポリマーのコアを有し、前記コアの上側及び下側の各々に、又は前記上側及び前記下側のうちの一方のみに外層を含んでいてもよく、並びに前記フィルムは、一緒にラミネートされる。前記フィルムがポリプロピレンフィルムである場合、前記フィルムは、約130℃以下の温度、及び約40kN/m未満の圧力、又は別の選択肢としての例では、約10バール未満の圧力で、ラミネートされる。別の例では、前記圧力は、約40kN/m以下である。さらなる例では、前記圧力は、約10バール以下である。さらなる例では、前記カバンケースは、フタ外殻及びベース外殻を含み、これらのいずれか一方又は両方は、上述した方法によって製造される。
【0066】
さらなる実施形態及び特徴は、以下の記述に部分的に示されており、当業者であれば、本明細書を吟味することによって明らかとなる、又は開示される主題の実践によって知ることができる。本開示の本質及び利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分、及び本開示の一部を成す図面を参照することによって実現することができる。当業者であれば、本開示の様々な態様及び特徴の各々が、有利には、別々に用いることができる場合がある、又は本開示の他の態様及び特徴と組み合わせて用いることができる場合があることは理解される。
【0067】
本明細書は、構成要素が縮尺を合わせて描かれているわけではない以下の図面を参照することでより充分に理解されるが、前記図面は、本開示の様々な実施形態として提示されるものであり、本開示の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、1つの例に従う二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムの各部を示す図である。
【0069】
図2A図2Aは、1つの例に従う二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体を示す図である。
【0070】
図2B図2Bは、図2Aのラミネート体中のフィルムの層を示す図である。
【0071】
図3A図3Aは、1つの例に従う図2A及び2Bの二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体を作製するためのシステムを示す図である。
【0072】
図3B図3Bは、図3Aのプロセスの過程での前記フィルムの温度及び圧力の変化を示す図である。
【0073】
図4A図4Aは、別の例に従う図2A及び2Bの二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体を作製するためのシステムを示す図である。
【0074】
図4B図4Bは、別の例に従う図2A及び2Bの二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体を作製するためのシステムを示す図である。
【0075】
図5図5は、1つの例に従う図2A及び2Bの二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体を作製する方法の工程のブロック図である。
【0076】
図6A図6Aは、図3A又は3Cのプロセスによって形成されたカバン外殻の前右側の等角投影図である。
【0077】
図6B図6Bは、図6Aのカバン外殻の後ろ左側の等角投影図である。
【0078】
図7A図7Aは、図5Aのカバン外殻を含むカバンケースの前側の等角投影図である。
【0079】
図7B図7Bは、図7Aのカバンの後ろ側の等角投影図である。
【0080】
図8図8は、1つの例に従う成形装置である。
【0081】
図9図9は、1つの例に従う図2A及び2Bのラミネート体から物品を作製する方法の工程のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示は、カバン外殻のための改善された材料、及び前記材料から構築された改善されたカバン外殻を提供する。特に、本開示は、軽量、耐衝撃性、多用途であり、深絞り成形を受けるのに適している材料を提供する。一般に、前記材料は、一緒にラミネートされた複数のプラスチックフィルムから構築される。前記材料から構築された前記カバン外殻は、軽量であり、薄く、耐久性があり、変形に対する耐性を有する。前記材料が深絞り成形プロセスに適していることは、コーナー領域を含めて実質的にシワのないカバン外殻を製造する手助けとなり、及びそれとは別に、又はそれと合わせて、高品質の表面仕上げ面を製造する手助けとなる。本明細書で用いられる場合、「から構築される」の用語は、「を含む」又は「を含んでいる」を意味し得る。
【0083】
本開示はまた、比較的少ない熱及び圧力を必要とする改善された材料を作製する方法も提供し得る。前記方法はまた、比較的速く及び/又は安価でもあり得る。特に、複数のプラスチックフィルムが、穏和な熱及び低圧力の条件下でラミネートされる。
【0084】
前記改善された材料からカバン外殻を作製する、比較的容易で速く、安価である方法も提供される。前記材料は、加熱され、張力が掛けられ、及び深絞り成形されて、カバン外殻が製造され得る。
【0085】
ポリマーフィルム
図1を参照すると、ポリマーフィルム100は、コア102及び少なくとも1つの外層104を含む。本明細書で用いられる場合、「フィルム」は、不織平面連続シート要素を含む構造である。前記外層104は、前記コア102の上側103、下側105、又は両側103、105に配置されていてもよい。前記コア102は、熱可塑性ポリマーから構築される。熱可塑性ポリマーは、二軸配向していてもよい。本明細書で用いられる場合、「二軸配向」フィルムは、2つの異なる方向に延伸されたフィルムであり、限定されない例として、以下でより詳細に述べるように、横方向及び長手方向に延伸されたフィルムを含む。二軸配向熱可塑性ポリマーの例としては、二軸配向したポリプロピレンホモポリマー(BOPP)、ポリアミド(BOPA)、ポリエステル(BOPET)、ポリビニルアルコール(BOPVA)、ポリ乳酸(BOPLA)、及びポリエチレン(BOPE)が挙げられる。1つの実施形態では、前記コア102は、BOPPから構築される。
【0086】
前記外層104は、配向した又は配向していないヒートシール性材料から構築される。1つの例では、前記外層104は、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)とのコポリマーから構築される。ポリエチレンは、前記コポリマーの約5%までを構成していてもよい。別の例では、前記外層104は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテン(PB)とのターポリマーから構築される。ポリエチレン及びポリブテンは、合わせて、前記ターポリマーの約5%までを構成していてもよい。
【0087】
前記コア102及び外層104は、前記コア102及び外層104が共押出し可能であるように、相溶性ポリマーから構築されていてもよい。いくつかの例では、前記コア102及び外層104は、同じポリマーファミリーのポリマーから構築される。1つの例では、前記コア102は、配向ポリプロピレンホモポリマー(OPP)から構築され、前記外層104は、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーから構築される。別の例では、前記コア102は、配向ポリプロピレンホモポリマーから構築され、前記外層104は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーから構築される。
【0088】
前記コア102は、約10μm±5%~約100μm±5%の厚さを有してもよく、約30μm±5%~約50μm±5%、又は約13μm±5%~約40μm±5%、又は約40μm±5%などである。前記コア102は、約150℃~約190℃の融点を有していてもよい。1つの例では、前記コア102は、約170℃の融点を有する。
【0089】
前記外層104は、約0.6μm±5%~約2.5μm±5%の厚さを有していてもよい。1つの例では、外層104は、約1μm±5%の厚さを有する。前記外層104は、約110℃~約135℃の融点を有していてもよい。1つの例では、前記融点は、約130℃である。
【0090】
前記外層104は、前記コア102よりも低い融点を有する。前記コア102の融点と前記外層104の融点との間の差異は、約10℃~約60℃、又は約10℃~約50℃、又は約10℃~約40℃、又は約10℃~約30℃、又は約10℃~約20℃であってもよい。フィルム100の構築及び設計において、前記コア102と前記外層104との間の融点の差異が大きくなると(例:5℃の代わりに60℃)、改善された機械的特性及び/又は物理的特性を有する以下で述べるラミネート体110を製造する補助となり得る。いかなる機構又は作用モードにも限定されるものではないが、融点の差異が大きくなると、前記外層104は溶融するが前記コア102は溶融しない温度でのラミネートが可能となり得る。加工温度が前記コア102の融点に近づくと、前記コア102は、軟化を開始する可能性があり、前記コア102の分子は、配向を喪失する可能性があり、そしてそのことは、得られるラミネート体110の物理的及び機械的特性を、前記コア102が溶融又は軟化していないラミネート体110と比較して劣化させ得る。
【0091】
フィルム100の構築及び設計において、前記コア102と前記外層104との間の融点の差異が少なくとも約10℃である場合、複数のフィルム100を一緒にラミネートするプロセスがより容易となり得る。前記加工温度が、前記外層104を溶融する又は部分的に溶融するのに充分に高いが、前記コア102は溶融しない場合、ラミネート体110を形成する際に、フィルム100の前記層は、互いの上を摺動し得る、又は隣接するフィルム100は、互いの上を摺動し得る。前記ラミネート体110の機械的特性は、前記ラミネートシートの製造時に前記コア102を溶融しないことによって最も良好に維持されるが、別の選択肢としての例において、前記ラミネート体110の製造時に前記コア102が軟化される、又は部分的に溶融される場合、機械的特性は、低下され得るが、それでも、以降での使用に適し得る。融点の前記差異はまた、ラミネート体110の成形のプロセスをより容易とし得るものであり、それは、前記外層104の溶融又は部分的溶融、及び前記コア102の溶融、部分的溶融、又は軟化によって前記ラミネート体110が展性とされるからである。
【0092】
1つの例では、前記外層104は、前記フィルム100に隣接し、前記フィルム100と結合する外面106及び内面108を定める。前記外面106は、コロナ処理されていてもよく、このことは、続いての前記フィルム100の印刷、ラミネート、又はコーティングのための前記フィルム100に対する充分な濡れ性及び接着性を提供する補助となり得る。1つの例では、前記外層104は、前記外面106上がコロナ処理されていてもよい。
【0093】
コア102及び少なくとも1つの外層104は、共押出しされてフィルム100を形成してもよい。糸又はテープが2方向(経糸及び緯糸)に織られてプラスチック布を形成する織布とは対照的に、共押出しフィルム100は、複数層の同時押出しによって製造される。前記フィルム100は、約10μm±5%~約100μm±5%の厚さを有していてもよい。1つの例では、前記フィルム100は、約30μm±5%~約50μm±5%の厚さを有する。別の例では、前記フィルム100は、約40μm±5%の厚さを有する。前記フィルム100は、約13g/m±5%~約37g/m±5%の坪量(square weight)を有していてもよい。前記フィルム100は、透明性、半透明性、又は不透明性であってもよい。
【0094】
外層104の厚さは、フィルム100の厚さの約0.5~25%であってもよい。いくつかの例では、前記外層は、前記フィルム100の厚さの約2~7%である。1つの例では、前記外層104は、前記フィルム100の厚さの約2.5%である。別の例では、前記外層104は、前記フィルム100の厚さの約5%、又は約5%未満である。
【0095】
前記フィルム100は、横方向及び長手方向の一方又は両方に延伸されていてもよい。1つの例では、横方向Tは、コア102又は外層104の材料のロールの幅として定められ、1つの例では、図3Aのローラー226a、b、又はcの方向であり得る。長手方向Lは、横方向に対して直交する方向に延びるコア102又は外層104の材料のロールの材料長さとして定められ、1つの例では、図3Aに示されるように、流れ方向であり得る。別の選択肢として、横方向T及び長手方向Lは、上記で述べられ、図3Aに示される方向の逆であってもよい。前記フィルム100は、共押出しされた後に延伸されてもよい。一方の方向への延伸の量は、他方の方向への延伸の量と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。いくつかの例では、フィルム100は、横方向に、約4~15倍(すなわち、約400%~1500%)、約5~14倍、約6~13倍、又は約7~12倍延伸される。1つの例では、フィルム100は、横方向に、約9倍延伸される。いくつかの例では、フィルム100は、長手方向に、約3~10倍、約4~8倍、又は約4~6倍延伸される。1つの例では、フィルム100は、長手方向に、約5倍延伸される。可変の延伸によって、異方性フィルム100が製造され得る。一般的な留意事項として、全体を通して言及される横方向及び長手方向の配向は、交換可能であり得る。また、一般に、前記フィルム100は、横方向又は長手方向のうちの一方の方向において、横方向又は長手方向のうちの他方の方向におけるよりも高い度合いで延伸される。
【0096】
前記異方性フィルム100は、横方向及び長手方向の各々に引張強度を有する。一方の方向の引張強度は、他方の方向の引張強度と異なっていてもよい。いくつかの例では、前記フィルム100は、長手方向よりも横方向の方が引張強度が大きい。いくつかの例では、前記フィルム100は、横方向よりも長手方向の方が引張強度が大きい。前記フィルム100は、約150~300MPaの横方向の引張強度を有し得る。1つの例では、前記フィルム100は、約250MPaの横方向の引張強度を有する。別の例では、前記フィルム100は、約207MPaの横方向の引張強度を有する。前記フィルム100は、約60~190MPaの長手方向の引張強度を有し得る。1つの例では、前記フィルム100は、約130MPaの長手方向の引張強度を有する。別の例では、前記フィルム100は、約91MPaの長手方向の引張強度を有する。
【0097】
前記フィルム100は、横方向及び長手方向の各々に剛性を有する。剛性は、曲げ軸線が延伸方向に対して概略直交している曲げ剛性の尺度であり得る。一方の方向の剛性は、別の他方の方向の剛性と異なっていてもよい。いくつかの例では、前記フィルム100は、長手方向よりも横方向の方が剛性が大きい。いくつかの例では、前記フィルム100は、横方向よりも長手方向の方が剛性が大きい。前記フィルム100は、より多く延伸された方向においてより大きい剛性を有し得る。例えば、長手方向よりも横方向により多く延伸されたフィルムは、長手方向よりも横方向においてより大きい剛性を有し得る。同様に、横方向よりも長手方向により多く延伸されたフィルムは、横方向よりも長手方向においてより大きい剛性を有し得る。
【0098】
一方の方向において、前記フィルム100は、約3.5~5.5GPa又は約4~4.8GPaの剛性を有し得る。他方の方向において、前記フィルム100は、約1.5~3GPa又は約1.9~2.3GPaの剛性を有し得る。1つの例では、前記フィルム100は、横方向により多く延伸され、横方向において約3.5~5.5GPaの剛性を、長手方向において約1.5~3GPaの剛性を有する。
【0099】
いくつかの例示的な例では、前記フィルム100は、配向したポリプロピレンのコア102、並びに前記コア102の両側に1層ずつのポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーから構築された外層104が共押出しされて構築される。いくつかの例示的な例では、前記フィルム100は、配向したポリプロピレンのコア102、並びに前記コア102の両側に1層ずつのポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーから構築された外層104が共押出しされて構築される。限定するためではなく便宜上、前記フィルム100は、本明細書において[PP-BOPP-PP]と称される場合がある。前記コア102は、約38μm±5%の厚さを有し得、各外層104は、約1μm±5%の厚さを有し得る。前記フィルム100は、約36.4g/m±5%の坪量を有し得る。前記フィルム100は、約169.2±0.4℃の融点を有し得る。前記フィルム100は、約207.2±5.4MPaの横方向の引張強度を有し得る。前記フィルム100は、約91.2±18.7MPaの長手方向の引張強度を有し得る。前記フィルム100は、Tatrafan KXE(登録商標)(Terichem Ltd.,Svit,Slovakia)であってもよい。Tatrafan KXE(登録商標)は、食料製品、菓子、肉製品、テキスタイル、及び他の商品の包装用に設計されている。
【0100】
別の例では、前記フィルム100は、配向したポリプロピレンのコア102、並びにポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマー又はポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーから構築された1つの外層104が共押出しされて構築されていてもよい。限定するためではなく便宜上、前記フィルム100は、本明細書において[PP-BOPP]又は[BOPP-PP]と称される場合がある。前記フィルム100は、約20μm±5%の厚さを有し得、約22.8g/m±5%の坪量を有し得る。前記フィルム100は、Tatrafan ONXE(登録商標)(Terichem Ltd.,Svit,Slovakia)であってもよい。Tatrafan ONXE(登録商標)は、食料製品、菓子、肉製品、テキスタイル、及び他の商品の包装用に設計されている。
【0101】
図2Aを参照すると、複数のフィルム100が、ラミネート体110を形成している。ラミネート体110中のフィルム100の数は、約3~約50のフィルム100、約5~約50、約10~約50、約15~約50、約20~約50、約25~約50、約30~約50、約35~約50、約3~約40、約3~約35、約3~約30、約3~約25、約3~約20、又は約3~約15のフィルム100であってもよい。1つの例では、ラミネート体110は、約10~約50のフィルムを含む。別の例では、ラミネート体110は、約22~約35のフィルム100を含む。別の例では、ラミネート体110は、約3~約23のフィルム100を含む。さらなる例では、ラミネート体110は、約24~約28のフィルム100を含む。別の限定されない例では、ラミネート体110は、1つのTatrafan ONXEのフィルム層を各外側に有する22~26のTatrafan KXEのフィルム層から、合計で24~28のフィルム100から形成されていてもよい。なお別の例では、ラミネート体110は、22又は23のフィルム100を含む。
【0102】
前記ラミネート体110は、中央部112、第一の側又は部分114、及び第二の側又は部分116を含み得る。ラミネート体110は、前記中央部112、第一の側114、及び第二の側116の各々に同じ数のフィルム100を含んでいてもよく、又は前記数は、異なっていてもよい。前記第一の側114及び前記第二の側116におけるフィルム100の数は、同じであっても、又は異なっていてもよい。1つの例では、前記第一の側114及び第二の側116は、同じ数のフィルム100を有し、その数は、前記中央部112のフィルム100の数よりも少ない。1つの例では、前記第一の側114及び第二の側116の各々は、1つのフィルム100を有し、前記中央部は、10~50のフィルム100を有する。
【0103】
前記ラミネート体110の前記フィルム100は、同じ種類であっても、又は異なる種類であってもよい。1つの例では、ラミネート体110は、1つの種類のフィルム100の中央部112、第二の種類のフィルム100の第一の側114、及び第三の種類のフィルム100の第二の側116を含む。別の例では、ラミネート体110は、1つの種類のフィルム100の中央部112、並びに、各々が第二の種類のフィルム100の第一の側114及び第二の側116を含む。
【0104】
1つの例では、前記中央部112は、複数の[PP-BOPP-PP]フィルム100から構築される。複数の[PP-BOPP-PP]フィルム100が一緒にラミネートされる場合、上記で述べたようにPP/PEコポリマー又はPP/PE/PBターポリマーであってもよい2つのPP層は、互いに隣接して配置される。
【0105】
1つの例では、前記第一の側114及び第二の側116の各々は、少なくとも1つの[PP-BOPP]又は[BOPP-PP]フィルム100から構築されていてもよい。[PP-BOPP]又は[BOPP-PP]フィルム100が[PP-BOPP-PP]フィルム100とラミネートされる場合、上記で述べたようにPP/PEコポリマー又はPP/PE/PBターポリマーであってもよい2つのPP層は、互いに隣接して配置されていてもよい。
【0106】
1つの例では、前記ラミネート体110の前記第一の側114及び第二の側116の一方又は両方は、少なくとも1つのBOPET-BOPP、BOPP-BOPET、又はBOPET-BOPP-BOPETフィルム100から構築されていてもよい。1つの例では、前記フィルム100の前記BOPET部分は、前記第一の側114又は第二の側116の最外面上に配置されていてもよい。第一の側114又は第二の側116の前記最外面上にBOPETを配置することは、前記ラミネート体110の、又は前記ラミネート体110から形成された物品の改善された耐スクラッチ性を実現する補助となり得る。
【0107】
1つの例では、及び図2Bを参照すると、前記ラミネート体110は、[BOPP-PP]-[PP-BOPP-PP]-[PP-BOPP]で表され、nはフィルム100の数であるフィルム100の配列を有する。前記[PP-BOPP-PP]フィルム100は、Tatrafan KXE(登録商標)であってもよい。前記[PP-BOPP]及び[BOPP-PP]フィルム100は、Tatrafan ONXE(登録商標)であってもよい。
【0108】
上記で述べたように、フィルム100は、横方向及び長手方向の一方又は両方に延伸されていてもよい。前記ラミネート体において、前記フィルム100は、直接隣接するフィルム100と同じ方向に配向していてもよい。例えば、長手方向よりも横方向においてより多く延伸されている2つのフィルム100は、互いに直接隣接していてもよい。言い換えると、2つの直接隣接するフィルム100は、延伸の度合いに関して、互いに対する回転が0°であってもよい。別の選択肢として、2つの直接隣接するフィルム100は、互いに対して90°回転していてもよい。例えば、長手方向よりも横方向においてより多く延伸されたフィルム100は、横方向よりも長手方向においてより多く延伸されたフィルム100に直接隣接していてもよい。前記ラミネート体110中の少なくとも2つのフィルム100が、同じ方向に配向していてもよい。1つの例では、前記ラミネート体110の少なくとも前記中央部112にあるすべてのフィルム100が、同じ方向に配向している。別の例では、前記ラミネート体110中のすべてのフィルム100が、同じ方向に配向している。
【0109】
前記ラミネート体110は、約0.25~約2.5mm、約0.3~約2.5mm、約0.5~約2.5mm、約0.75~約2.5mm、約1.0~約2.5mm、約1.25~約2.5mm、約1.5~約2.5mm、約0.25~約2.25mm、約0.25~約2.0mm、約0.25~約1.75mm、約0.25~約1.5mm、約0.25~約1.25mm、又は約0.25~約1.00mmの厚さを有し得る。1つの例では、前記ラミネート体110は、約0.5~約2mmの厚さを有する。別の例では、前記ラミネート体110は、約0.9~約1.5mmの厚さを有する。なお別の例では、前記ラミネート体110は、約0.5mm~約1.0mm未満の厚さを有する。
【0110】
前記第一の側114は、前記第二の側116と同じ厚さを有していてよく、又は異なる厚さを有していてもよい。前記中央部112の厚さは、前記第一の側114の厚さ又は前記第二の側116の厚さ又は前記第一の側114及び第二の側116の各々の厚さよりも厚くてもよい。前記中央部112の厚さは、前記第一の側114及び第二の側116を合わせた厚さよりも厚くてもよい。
【0111】
前記フィルム100の異方性は、前記フィルム100が組み込まれた前記ラミネート体110に付与され得る。例えば、前記ラミネート体110の一方の方向の引張強度は、他方の方向の引張強度と異なっている。いくつかの例では、前記ラミネート体110は、長手方向よりも横方向の方が引張強度が大きい。いくつかの例では、前記ラミネート体110は、横方向よりも長手方向の方が引張強度が大きい。前記ラミネート体110は、約100~250MPa又は約150~200MPaの横方向の引張強度を有し得る。前記ラミネート体110は、約50~150MPa又は約70~100MPaの長手方向の引張強度を有し得る。
【0112】
1つの例では、前記ラミネート体110は、無色透過性で、透明、半透明、又は不透明である。別の例では、少なくとも1つのフィルム100の前記コア102は、前記ラミネート体110に色を導入するPP、BOPP、又は他の種類のフィルム100等の着色されたフィルム100から構築される。
【0113】
前記ラミネート体110は、中央部112、第一の側114、及び第二の側116の前記フィルム100に加えて、1又は複数の補助材料118を含んでよい。前記ラミネート体110の構築及び設計において、補助材料118は、色、印刷、パターン、又はデザインを前記ラミネート体110に導入し得る。いくつかの例では、前記補助材料118は、前記外層104と同じポリマーから構築されていてもよいポリプロピレンキャストフィルムなどの中実フィルムから構築される。いくつかの例では、前記補助材料118は、コア102及び少なくとも1つの外層104を含む。上記で述べたように、この外層104は、このコア102よりも低い溶融温度を有し得る。前記補助材料は、又は存在する場合はこの外層104は、約130℃以下の溶融温度を有し得る。
【0114】
前記補助材料118は、前記中央部112、第一の側114、又は第二の側116の複数のフィルム100内に導入されていてもよい。別の選択肢として、前記補助材料118は、前記中央部112と第一の側114との間、又は前記中央部112と第二の側116との間に導入されていてもよい。さらに別の選択肢として、前記補助材料118は、前記第一の側114の外面、又は前記第二の側116の外部に、前記ラミネート体110の最外層(トップフィルム)として導入されていてもよい。前記補助材料118は、前記ラミネート体110の前記フィルム100と共押出しされていてもよい。補助材料118の例としては、熱可塑性オレフィンフィルム、印刷されたフィルム、着色されたポリプロピレン及び/又はポリエチレンフィルム、白色又は着色されたBOPPフィルム、金属化BOPPフィルム、短又はチョップドポリプロピレン繊維、短又はチョップドバイコンポーネント(BICO)繊維、編布、織布、不織布、ポリプロピレン及び/又はポリエチレン粉末、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0115】
ラミネート体110は、所定の圧力、温度、及び/又は時間の条件下で複数のフィルム100をラミネートすることによって形成され得る。前記ラミネート体110は、ラミネート装置で形成され得る。前記ラミネート装置は、等積プレス又は等圧プレスであってもよい。前記ラミネート装置は、固定ローラー又は循環ローラー(circulating roller)であってもよい少なくとも1つのローラー、を含んでよい。等積プレスでは、1つの例では固定された距離で間隔が空けられた対向するローラーなど、圧力付与体間のギャップ距離を一定に維持することなどによって一定体積が維持される。等積プレスでは、例えば、循環ローラー圧力モジュールを用いる場合、一定体積及び一定均一圧力の組み合わせが、維持される、又は維持されるように試みられる。等積プレスの前記ローラーは、前記ラミネート装置に対して適切な位置に固定されていてもよい、又は循環ローラー圧力モジュールの場合など、前記ラミネート装置に対して移動してもよい。固定ローラーを有する等積プレスによって適用される圧力は、一般的に、「線圧力」と称され、kN/mで測定される。圧力は、例えば少なくとも1つのローラーによって適用され、少なくとも1つの他の例では、線圧力は、成形されるべき材料に対して、それが対向する固定ローラー間のギャップを通過する際に適用される。循環ローラー圧力モジュールを用いる等積プレスでは、圧力は、対向するローラー間に、前記ローラーが前記圧力モジュール内を循環する際に適用される。典型的には、固定ローラープレスで用いられるローラー(1つの例では、およそ100mm)は、循環ローラー圧力モジュールで用いられるローラー(1つの例では、およそ25~40mm)と比較して大きいことから、隣接するローラー間の圧力低下は小さくなる。循環ローラー圧力モジュールで適用される圧力は、隣接するローラー間の圧力低下が小さくなることから、成形されるべき材料の領域全体に適用される圧力として見なされ得る、又は推定され得る。その結果、循環ローラー圧力モジュールによって適用される圧力は、「バール」として測定されることが多い。
【0116】
等圧プレスでは、圧力付与体間のギャップ距離が、送り込み材料によって定められるようにすることなどによって、一定均一圧力が維持される。等圧プレスによって適用される圧力は、一般的に、面圧力であり、kN/m又はバールで測定され、例えば、少なくとも1つのオイルクッションによって適用される。他の例では、圧力付与体は、あるギャップによって間隔が空けられた対向するオイルクッションである。本明細書で用いられる場合、「バール」とは、限定的ではなく一般的に、等圧プレス又は循環ローラーを含む等積プレスによって発生される面圧力を意味する。本明細書で用いられる場合、「kN/m」とは、限定的ではなく一般的に、固定ローラーを有する等積プレスによって発生される線圧力を意味する。等積若しくは等圧のいずれかであるこの種類の成形法のために、又は両方法の組み合わせを実施するために用いられ得るラミネートプレス装置の例は、Sandvik ThermoPress CB(CombiPress)など、Sandvikによって製造されているであろう(http://processsystems.sandvik.com参照)。
【0117】
いくつかの例では、前記ラミネート装置は、等圧プレスである。他の例では、図3Aを参照すると、前記ラミネート装置は、固定ローラーを有するダブルベルト等積プレス220であってもよい。前記プレス220は、上側ベルト222、下側ベルト224、複数の上側ローラー226、及び複数の下側ローラー228を含む。前記ローラー226、228のいくつか又はすべては、スプリング234に操作可能に接続されていてよく、そのことは、前記ローラー226、228の間を通る材料に対して前記ローラー226、228によって適用される圧力を調節する補助となる。前記プレス220は、少なくとも1つの一体化された加熱ゾーン230、及び少なくとも1つの一体化された冷却ゾーン232も含んでよい。
【0118】
前記ベルト222、224は、Teflon又はスチールから構築されていてもよい。前記ベルト222、224は、コンベアベルトであってもよい。前記上側ベルト222は、4つの上側ローラー226a、226b、226c、及び226dなどの少なくとも2つの上側ローラー226を操作可能に接続している。前記下側ベルト224は、5つの下側ローラー228a、228b、228c、228d、及び228eなどの少なくとも2つの下側ローラー228を操作可能に接続している。上側ローラー226a、226b、226c、226d並びに対応する下側ローラー228a、228b、228c、228dは、それぞれ、ラミネートされているフィルム100の両側に互いに対向して配置されていてもよい。
【0119】
上側ローラー226と対応する下側ローラー228との間の距離又はギャップ高さhは、調節可能であってもよい。前記ギャップ高さは、各ローラー対226a、228a、226b、228b、226c、228c、226d、228dの間で同じであっても、又は異なっていてもよい。前記ギャップ高さを調節することは、前記ローラー226、228によって適用される圧力を調節又は維持する補助となり得、前記ローラー226、228の間の材料の均一な体積を維持する補助となり得、前記ラミネート体110の厚さを制御する補助となり得る。1つの例では、前記ギャップ高さは、約0.7mm~約1.2mmである。別の例では、前記ギャップ高さは、約0.95mm~約1.0mmである。
【0120】
前記ベルト222、224、及びローラー226、228は、複数のフィルム100を前記プレス220中に進める補助となり得る。前記複数のフィルム100は、一定速度又は可変速度で前記プレス中を移動してもよい。前記速度を調節することにより、様々な時間量にわたって前記フィルム100に圧力又は温度を適用することを可能とすることができる。前記速度は、約1m/分~約8m/分、約2m/分~約8m/分、約3m/分~約8m/分、約4m/分~約8m/分、約5m/分~約8m/分、約1m/分~約7m/分、約1m/分~約6m/分、約1m/分~約5m/分、約1m/分~約4m/分、約1m/分~約3m/分、又は約2m/分~約6m/分であってもよい。1つの例では、前記速度は、約2m/分である。別の例では、前記速度は、約6m/分である。
【0121】
1つの例では、前記プレス220は、Flatbed Laminator System(Meyer,Roetz,Germany)である。
【0122】
図4Aは、固定ローラーを有するダブルベルト等積プレス220であるラミネート装置の別の例を示す。前記プレス220は、上側ベルト222、下側ベルト224、複数の上側ローラー226、及び複数の下側ローラー228を含む。前記プレス220は、少なくとも1つの一体化された加熱ゾーン230、及び少なくとも1つの一体化された冷却ゾーン232も含んでよい。
【0123】
前記ベルト222、224は、Teflon又はスチールから構築されていてもよい。前記ベルト222、224は、コンベアベルトであってもよい。前記上側ベルト222は、7つの上側圧力モジュール227a、227b、227c、227d、227e、227f、及び227gなどの少なくとも2つの上側圧力モジュール227を操作可能に接続している。前記下側ベルト224は、7つの下側圧力モジュール229a、229b、229c、229d、229e、229f、及び229gなどの少なくとも2つの下側圧力モジュール229を操作可能に接続している。上側圧力モジュール227a、227b、227c、227d、227e、227f、及び227g並びに対応する下側圧力モジュール229a、229b、229c、229d、229e、229f、及び229gは、それぞれ、ラミネートされているフィルム100の両側に互いに対向して配置されていてもよい。
【0124】
各圧力モジュール227、229は、同じ幅又は異なる幅を有していてもよい。1つの例では、各圧力モジュール227、229は、約1000mmの幅である。
【0125】
各上側圧力モジュール227a~227gは、1又は複数の上側ローラー226を含んでいてもよい。同様に、各下側圧力モジュール229a~229gは、1又は複数の下側ローラー228を含んでいてもよい。上側ローラー226の数は、各上側圧力モジュール227において、同じであっても、又は異なっていてもよい。下側ローラー228の数は、各下側圧力モジュール229において、同じであっても、又は異なっていてもよい。上側ローラー226の数は、下側ローラー228の数と同じであっても、又は異なっていてもよい。図4Aを参照すると、上側圧力モジュール227は、5つの上側ローラー226を含んでいてよく、下側圧力モジュール229は、5つの下側ローラー228を含んでいてもよい。プレス220の設計及び運転において、前記ローラー226、228は、前記上側ローラー226と下側ローラー228との間に位置するフィルム100又はラミネート体110などの材料に対して線圧力を発生させ得る。
【0126】
前記ベルト222、224、及び圧力モジュール227、229、又はローラー226、228は、複数のフィルム100を前記プレス220中に進める補助となり得る。前記複数のフィルム100は、一定速度又は可変速度で前記プレス中を移動してもよい。前記速度を調節することにより、様々な時間量にわたって前記フィルム100に圧力又は温度を適用することを可能とすることができる。前記速度は、約1m/分~約8m/分、約2m/分~約8m/分、約3m/分~約8m/分、約4m/分~約8m/分、約5m/分~約8m/分、約1m/分~約7m/分、約1m/分~約6m/分、約1m/分~約5m/分、約1m/分~約4m/分、約1m/分~約3m/分、又は約2m/分~約6m/分であってもよい。1つの例では、前記速度は、約2m/分である。別の例では、前記速度は、約6m/分である。
【0127】
1つの例では、前記プレス220は、ダブルスチールベルト等積サーモプレス(Sandvik Process Systems,Sandviken,Sweden)である。
【0128】
いくつかの例では、図4Bを参照すると、前記ラミネート装置は、循環ローラー236を含む少なくとも1つのモジュール235、及び固定ローラー238を含む少なくとも1つのモジュール237を有する等積プレスであってもよい。成形される材料は、この例では、左から右へ移動し、まず前記循環ローラー236を通り、次に固定ローラー238を通る。前記等積プレスの前記循環ローラー236は、バールで測定される面圧力を適用し得る。前記等積プレスの前記固定ローラー238は、kN/mで測定される線圧力を適用し得る。1つの例では、一体化された加熱ゾーン230(図3A参照)などの加熱ゾーン239は、複数の循環ローラー235を含み得る。1つの例では、一体化された冷却ゾーン232(図3A参照)などの冷却ゾーン241は、複数の固定ローラー238を含み得る。
【0129】
図5を参照すると、ラミネート体110を作製する方法200は、複数のフィルム100をラミネート装置に導入する工程202、前記フィルム100に第一の圧力を適用する工程204、前記フィルム100に第一の時間にわたって第一の温度を適用する工程206、前記フィルム100に第二の圧力を適用する工程212、前記フィルム100に第二の時間にわたって第二の温度を適用する工程214、及び前記装置から前記ラミネート体110を排出する工程218を含んでよい。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記フィルム100に第三の圧力を適用する工程208、前記フィルム100に第三の時間にわたって第三の温度を適用する工程210、及び前記フィルム100に第四の圧力を適用する工程216のうちの1又は複数を含む。前記方法200は、バッチプロセスとは対照的に連続プロセスであってもよい。
【0130】
工程206、210、214のうちのいずれか1又は複数において前記フィルム100に温度が適用される場合、前記温度は、前記外層104を溶融する又は部分的に溶融するのに充分に高くてもよいが、前記コア102を溶融するほどには高くなくてもよい。
【0131】
前記ラミネート体110を作製する前記方法200において、前記外層104は、溶融されてもよい。前記外層104を溶融するのに代わって、又は加えて、前記外層104及びコア102、又は前記外層104及びコア102の中又は間のフィルム100は、互いに架橋されてもよい、又はそうでなければ、化学結合、物理結合、若しくは接着結合などによって互いに結合されてもよい。フィルム100の溶融、架橋、及び/又はそれ以外での結合は、剛性、引張強度、及び破断時ひずみなどの物理的特性が改善されたラミネート体110を製造する補助となり得る。
【0132】
工程202では、複数のフィルム100がラミネート装置に導入される。前記ラミネート装置は、等積プレス又は等圧プレスなどの上記で述べたいずれの装置であってもよい。
【0133】
工程204では、前記複数のフィルム100が、第一の圧力Pに掛けられる。圧力を適用することは、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。図3Aを参照すると、前記圧力は、対応する下側ローラー228aとは前記フィルム100の反対側に配置された上側ローラー226aなどの1対のローラーによって適用されてもよい。前記圧力は、約2m/分などの上記で述べたいずれかの速度で前記フィルム100が前記ローラー226a、228aの間を移動するに従って、前記ローラー226a、228aの間に位置する前記フィルム100の部分に適用されてもよい。等圧プレスによる場合などの他の例では、前記圧力(面圧力)は、少なくとも1つのオイルクッションによって適用される。Pは、約1~約9バール、約1~約8バール、約1~約7バール、約1~約6バール、約1~約5バール、約1~約4バール、約1~約3バール、又は約1~約2バールなど、約10バール未満であってもよい。PがkN/mで測定される場合(線圧力)、Pは、約5~約35kN/m又は約10~約30KN/mなど、約40kN/m未満であってもよい。
【0134】
図3Bを参照すると、Pが前記ローラーによって前記フィルム100に適用される場合、前記フィルム100は、圧力のスパイクを受けることになり得る。図3Bに示されるように、前記対向するローラーの間にある空間では、前記フィルム100における前記圧力のレベルは、前記対向するローラーの次の対に到達するまで、低下する。
【0135】
図5を再度参照すると、工程206では、前記複数のフィルム100が、第一の時間tにわたって、第一の温度Tに加熱される。Tが周囲温度よりも高い場合、前記加熱は、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。Tが、前記フィルム100の前記外層104の融点である場合、又は前記融点に近い場合、前記外層104は、溶融を開始し得る、又は粘着性となり得る。Tが、前記コア102の融点である場合、又は前記融点に近い場合、前記コア102は、弛緩及び/又は収縮を開始し得る。図3Aを参照すると、前記温度は、加熱ゾーン230で制御され得る。Tは、約90℃~約150℃、約100℃~約150℃、約110℃~約150℃、約120℃~約150℃、約130℃~約150℃、約90℃~約140℃、約90℃~約130℃、約90℃~約120℃、又は約90℃~約110℃であってもよい。1つの例では、Tは、約130℃以下である。別の例では、Tは、約110℃~約140℃である。別の例では、Tは、約105℃~約135℃である。なお別の例では、Tは、約110℃~約130℃である。なお別の例では、Tは、約115℃~約120℃である。所望されるTを実現するために、前記フィルム100の加熱に用いられる加熱素子の温度は、より高い温度であってもよい。
【0136】
第一の時間tは、約15~120秒、約30~120秒、約45~120秒、約60~120秒、約75~120秒、約90~120秒、約15~90秒、約15~75秒、約15~60秒、約15~45秒、又は約15~30秒、又は約30~90秒であってもよい。1つの例では、tは、45~55秒である。
【0137】
図3Bを参照すると、前記複数のフィルム100がTに加熱される場合、前記フィルム100の前記温度は、時間tの間に上昇し得る。前記フィルム100が受ける圧力は、tの間、一定で、Pよりも低く維持され得る。
【0138】
図5に連続する工程として示されているが、いくつかの実施形態では、工程204及び206は、同時に行われてもよい。一般に、前記工程202、204、206、208(存在する場合)、210(存在する場合)、212、214、216(存在する場合)、及び218は、図5に示される順番で行われてもよく、又は異なる順番で行われてもよい。
【0139】
工程212では、図5に示されるように、前記複数のフィルム100が、第二の圧力Pに掛けられる。圧力を適用することは、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。いくつかの実行では、tにわたっての熱の適用に続く圧力の適用は、前記フィルムを一緒にプレスする補助となり得る、又は前記ラミネート体110の厚さを定める補助となり得る。図3Aを参照すると、前記圧力は、対応する下側ローラー228cとは前記フィルム100の反対側に配置された上側ローラー226cなどの1対のローラーによって適用されてもよい。前記圧力は、約2m/分などの上記で述べたいずれかの速度で前記フィルム100が前記ローラー226c、228cの間を移動するに従って、前記ローラー226c、228cの間に位置する前記フィルム100の部分に適用されてもよい。等圧プレスによる場合などの他の例では、前記圧力(面圧力)は、オイルクッションによって適用される。Pは、Pと同じあっても、又は異なっていてもよい。Pは、約1~約9バール、約1~約8バール、約1~約7バール、約1~約6バール、約1~約5バール、約1~約4バール、約1~約3バール、又は約1~約2バールなど、約10バール未満であってもよい。PがkN/mで測定される場合(線圧力)、Pは、約5~35kN/m又は約10~30KN/mなど、約40kN/m未満であってもよい。
【0140】
図3Bを参照すると、Pが前記複数のフィルム100に適用される場合、前記フィルム100は、圧力のスパイクを受けることになり得る。前記圧力は、Pとほぼ同じであってもよい。
【0141】
工程214では、図5に示されるように、前記複数のフィルム100が、第二の時間tにわたって、第二の温度Tに掛けられる。Tが周囲温度以下である場合、このより低い温度は、前記ラミネート体110を安定化させる補助となり得る。図3Aを参照すると、前記温度は、冷却ゾーン232で制御され得る。前記温度の制御は、例えば、前記冷却ゾーン232の管に水を循環させることによって、又は前記冷却ゾーン232の1又は複数のベルト222、224に水を散布することによって行われてもよい。Tは、約10℃~約30℃、約15℃~約30℃、約20℃~約30℃、約25℃~約30℃、約10℃~約25℃、約10℃~約20℃、又は約10℃~約15℃であってもよい。1つの例では、Tは、約15℃~約25℃である。
【0142】
第二の時間tは、約2~90秒、約5~90秒、約10~90秒、約20~90秒、約30~90秒、約40~90秒、約50~90秒、約60~90秒、約2~60秒、約2~50秒、約2~40秒、約2~30秒、約2~20秒、約2~10秒、又は約10~60秒であってもよい。
【0143】
図3Bを参照すると、Tが前記複数のフィルム100に適用される場合、前記フィルム100の温度は、時間tの間に低下し得る。前記フィルム100の温度は、tの開始時の開始温度未満にまで低下し得る。tの間、前記フィルム100が受ける圧力は、一定で、Pよりも低く維持され得る。前記圧力は、大気圧であってもよい。いくつかの実施形態では、前記複数のフィルム100は、圧力が適用されない状態で冷却される。
【0144】
図5に連続する工程として示されているが、いくつかの実施形態では、工程212及び214は、同時に行われてもよい。
【0145】
前記方法200の過程で適用される前記圧力及び温度は、前記複数のフィルム100を一緒にラミネートしてラミネート体110を形成するのに有効である。工程218では、図5に示されるように、前記ラミネート体110が、前記ラミネート装置から排出される。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記方法200は、前記複数のフィルム100を第三の圧力Pに掛ける工程208を含む。圧力を適用することは、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。いくつかの実行では、tにわたっての熱の適用に続く圧力の適用は、前記フィルムを一緒にプレスする補助となり得る、又は前記ラミネート体110の厚さを定める補助となり得る。図3Aを参照すると、前記圧力は、対応する下側ローラー228bとは前記フィルム100の反対側に配置された上側ローラー226bなどの1対のローラーによって適用されてもよい。前記圧力は、約2m/分などの上記で述べたいずれかの速度で前記フィルム100が前記ローラー226b、228bの間を移動するに従って、前記ローラー226b、228bの間に位置する前記フィルム100の部分に適用されてもよい。等圧プレスによる場合などの他の例では、前記圧力(面圧力)は、少なくとも1つのオイルクッションによって適用される。Pは、P又はPと同じあっても、又は異なっていてもよい。Pは、約1~約9バール、約1~約8バール、約1~約7バール、約1~約6バール、約1~約5バール、約1~約4バール、約1~約3バール、又は約1~約2バールなど、約10バール未満であってもよい。PがkN/mで測定される場合(線圧力)、Pは、約5~35kN/m又は約10~30KN/mなど、約40kN/m未満であってもよい。
【0147】
図3Bに示されるように、Pが前記複数のフィルム100に適用される場合、前記フィルム100は、圧力のスパイクを受けることになり得る。前記圧力は、P及びPの各々よりも小さくてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、前記方法200は、前記複数のフィルム100を第三の時間tにわたって第三の温度Tに掛ける工程210を含む。Tが周囲温度よりも高い場合、前記加熱は、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。図3Aを参照すると、前記温度は、加熱ゾーン230で制御され得る。Tは、約90℃~約150℃、約100℃~約150℃、約110℃~約150℃、約120℃~約150℃、約130℃~約150℃、約90℃~約140℃、約90℃~約130℃、約90℃~約120℃、又は約90℃~約110℃であってもよい。1つの例では、Tは、約130℃以下である。別の例では、Tは、約110℃~約140℃である。なお別の例では、Tは、約110℃~約130℃である。
【0149】
図3Bを参照すると、Tが前記複数のフィルム100に適用される場合、前記フィルム100の温度は、時間tの間に上昇し得る。tの間の前記フィルム100の温度は、t及びtの各々の間の前記フィルム100の温度よりも高くてもよい。tの間に前記フィルム100が受ける圧力は、一定で、P、P、及びPの各々よりも低く維持され得る。
【0150】
再度図5を参照すると、所望に応じて行われてもよい工程216では、前記複数のフィルム100が、第四の圧力Pに掛けられる。圧力を適用することは、前記フィルム100を一緒にラミネートする補助となり得、及び高い結合力のラミネート体110を製造する補助となり得る。図3Aを参照すると、前記圧力は、対応する下側ローラー228dとは前記フィルム100の反対側に配置された上側ローラー226dなどの1対のローラーによって適用されてもよい。前記圧力は、約2m/分などの上記で述べたいずれかの速度で前記フィルム100が前記ローラー226d、228dの間を移動するに従って、前記ローラー226d、228dの間に位置する前記フィルム100の部分に適用されてもよい。等圧プレスによる場合などの他の例では、前記圧力(面圧力)は、オイルクッションによって適用される。Pは、P、P、又はPのいずれかと同じあっても、又は異なっていてもよい。Pは、約1~約9バール、約1~約8バール、約1~約7バール、約1~約6バール、約1~約5バール、約1~約4バール、約1~約3バール、又は約1~約2バールなど、約10バール未満であってもよい。PがkN/mで測定される場合(線圧力)、Pは、約5~35kN/m又は約10~30KN/mなど、約40kN/m未満であってもよい。いくつかの実施形態では、圧力の適用は行われず、Pは、約1バール又は大気圧である。
【0151】
前記方法200によって製造された前記ラミネート体110は、収縮レベルの低減を呈し得、いくつかの例では、最小限の収縮を起こすだけであり得る。例えば、前記ラミネート体110は、110℃で約1%の収縮を呈し得る。
【0152】
二軸配向熱可塑性ポリマーフィルムのラミネート体から構築されたカバン物品
スーツケース外殻などのカバン外殻120が、本明細書で開示されるラミネート体110から構築され得る。図6A及び6Bを参照すると、カバン外殻120は、フタ外殻122(図6A)又はベース外殻134(図6B)の形態であってもよい。前記フタ外殻122は、後ろ側部124、フタ上側部126、フタ下側部128、フタ右側部130、フタ左側部132、及び1又は複数のコーナー部分146を含む。前記ベース外殻134は、前側部136、ベース上側部138、ベース下側部140、ベース右側部142、ベース左側部144、及び1又は複数のコーナー部分146を含む。各コーナー部分146は、前記外殻120がカバン物品として用いられる場合に車輪を受けるためのくぼみ部であってもよい。
【0153】
前記側部124、126、128、130、132、136、138、140、142、144、又はコーナー部分146のうちのいずれか1又は複数は、表面フィーチャ148を含んでいてもよい。前記フィーチャは、前記側部124、126、128、130、132、136、138、140、142、144、又はコーナー部分146の長さ方向に沿って、幅方向に沿って、又は角に配置されていてもよい。前記フィーチャ148は、溝部147などの凹領域及びリブ149などの凸領域であってよく、これらは交互であってもよい。前記フィーチャ148は、審美的に魅力的であり得る。前記フィーチャ148はまた、前記フィーチャ148に対して直交して作用する力など前記外殻120に対して作用する曲げ力若しくはねじれ力に対する剛性又は耐性を提供する補助となり得る。
【0154】
前記ベース外殻122及び前記フタ外殻134のうちの一方又は両方は、上記で述べた複数のフィルム100のラミネート体110から形成されていてもよい。簡潔に述べると、前記フィルム100は、共押出しされてよく、並びに配向したポリプロピレンのコア102及び前記コア102に隣接して配置される少なくとも1つの外層104を含んでいてもよい。
【0155】
前記外層104は、上記で述べたように構築され、設計されてもよい。1つの例では、前記外層104は、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーから構築される。別の例では、前記外層104は、ポリプロピレンとポリエチレンとポリブテンとのターポリマーから構築される。前記外層104は、フィルム100の厚さの約5%未満の厚さを有し得る。1つの例では、前記外層104は、フィルム100の厚さの約2.5%である。
【0156】
前記カバン外殻120を構築する前記ラミネート体110を形成する前記複数のフィルム100は、いかなる数の上記で述べたフィルム100であってもよい。約10~約50のフィルム、約22~約35のフィルム、22のフィルム、又は23のフィルムが、前記ラミネート体110を形成していてもよい。少なくとも2つの隣接するフィルム100は、同じ方向に配向している。1つの例では、すべてのフィルム100が、同じ方向に配向している。
【0157】
前記カバン外殻120を構築する前記ラミネート体110の厚さは、上記で述べたいかなる厚さであってもよい。例えば、前記ラミネート体110の厚さは、約0.5mm~約2mmであってよく、又は約0.5mm~約1mm未満であってもよい。
【0158】
前記ベース外殻122及び前記フタ外殻134のうちの一方又は両方は、前記ベース外殻122又は前記フタ外殻134の深さが、その長さ又は幅と比較して非常に大きくなるように深絞り成形されていてもよい。例えば、前記フタ上側部126及びフタ下側部128の深さは、前記後ろ側部124の長さの半分まで又は幅の半分までであってもよい。別の例として、前記ベース上側部138又はベース下側部140の深さは、前記前側部136の長さの半分まで又は幅の半分までであってもよい。
【0159】
上記で述べたいずれのカバン外殻120も、ハードサイドカバンケースなどのカバンケース150のボディを形成するために用いられてよい。図7A及び7Bを参照すると、ハードサイドカバンケース150は、操作可能に一緒に結合されて外部層154を有する筐体152を形成するフタ外殻122及びベース外殻134によって定められる。前記フタ外殻122及び前記ベース外殻134のうちの一方又は両方は、上述した方法のいずれによって製造されてもよい。前記外部層154は、テクスチャ付き面又は形状付き面を有していてもよい。
【0160】
前記カバンケース150は、フロントパネル156、リアパネル158、トップパネル160、ボトムパネル162、右サイドパネル164、及び左サイドパネル166を含む。コーナー領域168は、いずれか2つ又は3つの隣接するパネル156、158、160、162、164、及び166の交差によって定められる。例えば、前記カバンケース150は、4つの上側コーナー領域及び4つの下側コーナー領域を含み、各々は、3つの隣接するパネルの交差によって形成される。加えて、いずれか2つの隣接するパネルの交差によって形成されるエッジ部も、コーナー領域と見なされ得る。本明細書で述べる前記パネル156、158、160、162、164、166は、「側部」とも称され得る。したがって、前記カバンケース150の第一の側部、第二の側部、及び/又は第三の側部は、各々、本明細書で述べる前記様々なパネル156、158、160、162、164、166のいずれであってもよい。前記カバンケース150はさらに、前記サイドパネル164、166、及び前記トップ及びボトムパネル160、162の中央部分に沿って延び、前記カバンケース150を前記フタ外殻122と前記ベース外殻134とに分割する開閉線170を定める、ジッパーなどの開閉機構を含んでもよい。軸回転するように前記フタ外殻122とベース外殻134とを一緒に接続するためのヒンジ(図示せず)が、前記開閉線170に沿って配置される。前記ジッパーは、開いて、前記フタ外殻122とベース外殻134とを前記ヒンジ部分周りに軸回転させて内部にアクセス可能とすることができる。ラッチなどの様々な種類の開閉機構及びヒンジ構造が許容可能である。前記カバンケース150はまた、使用者が前記カバンケース150を傾けて引く若しくは牽引することを可能とするために、又は前記カバンケースを直立した体勢で誘導することを可能とするために、示されるように垂直軸周りに回転する4つの車輪172を含んでよい、又は他の車輪若しくは支持構造を含んでよい。前記カバンケース150は、前記トップパネル160にトップキャリーハンドル174を、及び前記サイドパネル164、166にサイドキャリーハンドル176を含んでよい。前記カバンケース150はまた、伸縮式のプルハンドル178を含んでいてもよい。前記プルハンドル178は、前記カバンケース150の前記リアパネル158の外側に沿って揃えられていてもよい。別の選択肢として、前記プルハンドル178はまた、前記リアパネル158に沿って揃えられているが、前記カバンケース150の内側に配置されていてもよい。
【0161】
ラミネート体110は、カバン外殻120などの物品に成形されてもよい。前記物品の構築において、前記物品の成形の前に、及び前記成形とは別に行われるプロセスで前記ラミネート体110を形成することは、1つの例では、前記フィルム100の間に気泡がまったく又は実質的にまったく形成されない物品を得ることなどによって、改善された物品を製造する補助となり得る。
【0162】
前記ラミネート体110は、上記で述べた方法200によって製造されてもよい。前記ラミネート体110は、所定の形状及びサイズに切断されて、ラミネート体110のピース又はシートが形成されてもよい。前記カバン外殻120は、プレス成形機又はプラグ成形機などの成形装置240で前記ラミネート体110を成形することによって形成されてもよい。前記ラミネート体は、限定されない例として欧州特許第1763430号、PCT/EP2014/055514号、又は独国特許第10259883号(さらには、米国特許出願公開第2004/0118504号)に記載の内容に類似の装置によって、及び/又はプロセスを用いることによって、成形されてもよい。欧州特許第1763430号に記載のプロセスに関して、前記ラミネート体110が成形される温度がより低い温度であり得ることから、前記ラミネート体110の前記成形プロセスにおいて、前記ラミネート体の把持がそれほど特別なことではないことは留意されるべきであり、このことは、利点であり、より高い成形温度で発生し得る材料収縮に起因する問題を軽減又は回避する。さらに、自己強化熱可塑性複合体薄層の約170℃での深絞り成形を開示する欧州特許第1763430号に記載のプロセスと比較して、前記ラミネート体110が成形される前記温度の範囲は、より広くてよく、このことは、成形条件により大きい柔軟性が可能となることから、利点である。
【0163】
図8を参照すると、成形装置240は、裏張り供給装置(lining dispenser)242、プレス244、及びヒーターアレイ246を含んでよい。いくつかの実施形態では、前記裏張り供給装置242は、ラミネート体110のシートと共に成形するためのメッシュ、編布、織布、又は不織布などのテキスタイルシートを受け、分配する。「メッシュ」は、経編オープンシート(warp knitted open sheet)など、貫通して形成された開口部を有するテキスタイルシートであってもよい。前記テキスタイルシートは、前記成形装置240で製造されたカバン外殻120の内部の裏張りとして働いてもよい。前記テキスタイルシートは、前記ラミネート体110に対してテクスチャ、色、印刷、パターン、又はデザインを導入してもよい。前記テキスタイルシートは、ラミネート体110のシートに分配される前に、トレー248で受けられ、及び保存されてもよい。別の選択肢として、前記テキスタイルシートは、前記ラミネート体110が前記成形装置240に投入される前に前記ラミネート体110に分配されてもよい。例えば、前記テキスタイルシートとしてメッシュを用いることによって、前記ラミネート体110の面にテクスチャ付きの性質を付与することができる。
【0164】
前記プレス244は、上側テーブル250及び下側テーブル252を含む。前記上側テーブル250は、深絞り成形冶具256の、雄型254であってもよい上側型を支持してもよい。図8では、前記雄型254をより明らかに示すために、上側テーブル250の一部分が取り除かれている。前記下側テーブル252は、前記深絞り成形冶具256の、雌型258であってもよい下側型を支持してもよい。前記テーブル250、252は、互いに対して移動可能である。例えば、前記上側テーブル250は、前記雌型258に向かって、カラムフレーム260によってガイドされながら下がってもよい。前記下側テーブル252は、前記雄型254に向かって上向きに移動してもよい。前記型254、258は、一方の型、例えば前記雄型254が、他方の型、例えば前記雌型258の内側に少なくとも部分的に嵌合するように、互いに相補的である。
【0165】
前記プレス244は、さらに、シートグリップラック(sheet gripping rack)264を含む。前記ラック264は、各ラミネート体110のシートを、前記雄型254と前記雌型258との間の位置に制御可能に保持するように構成される。前記ラック264はまた、前記ラミネート体110のシートを延伸する、又は前記シートに張力を適用するように構成されていてもよい。
【0166】
前記ヒーターアレイ246は、上側ヒーター266及び下側ヒーター268を含む。前記ヒーター266、268は、前記ヒーターアレイ246から、前記雄型及び雌型254、258の間の位置まで同時にスライドするように構成されていてもよい。
【0167】
図9を参照すると、カバン外殻120を作製する方法280は、ラミネート体110を予備加熱する工程282、前記ラミネート体110を成形装置240に導入する工程284、前記ラミネート体110を把持し、加熱する工程286、前記ラミネート体110を物品へ成形する工程288、及び前記成形装置240から前記物品を排出する工程290を含んでよい。
【0168】
工程282では、前記ラミネート体110は、所望される温度まで加熱される。前記温度は、前記外層104を溶融又は部分的に溶融し、前記コア102を溶融又は部分的に溶融するのに充分に高い。前記温度は、約120℃~約190℃、約125℃~約190℃、約130℃~約190℃、約135℃~約190℃、約140℃~約190℃、約145℃~約190℃、約150℃~約190℃、約120℃~約185℃、約120℃~約180℃、約120℃~約175℃、約120℃~約170℃、約120℃~約165℃、又は約120℃~約160℃であってもよい。1つの例では、前記温度は、約145℃~約170℃である。なお別の例では、前記温度は、約140℃~約165℃である。
【0169】
前記外層104及びコア102を溶融するのに代わって、又は加えて、前記外層104及びコア102、又は前記外層104及びコア102の中又は間のフィルム100は、互いに架橋されてもよい、又はそうでなければ、化学結合、物理結合、若しくは接着結合などによって互いに結合されてもよい。フィルム100の溶融、架橋、及び/又はそれ以外での結合は、耐久性、変形に対する耐性、及び耐衝撃性などの物理的特性が改善されたカバン外殻120を製造する補助となり得る。
【0170】
再度図9を参照すると、工程284では、前記ラミネート体110のシートが、成形装置240に導入される。前記ラミネート体110のシートは、前記プレス244の後ろ側(図8での視点として)にあるシート供給部から前記プレス244に導入されてよい。図8を参照すると、前記ラミネート体110は、前記シートグリップラック264によって、前記雄型254と前記雌型258との間に保持される。
【0171】
工程286では、前記ラミネート体110は、把持され、加熱される。シートのエッジ部など、前記ラミネート体110は、前記シートグリップラック264によって把持されてもよい。前記ラック264はまた、前記ラミネート体110のシートの延伸、又は前記シートへの張力の適用を行っても、又は行わなくてもよい。前記物品の構築において、張力又は圧力の適用は、前記ラミネート体110の前記フィルム100を一緒にさらに強固とする補助となり得る。前記ラミネート体110に適用される前記張力又は圧力は、約0.5~約4バール、約0.5~約3バール、約0.5~約3.5バール、約0.5~約3バール、約0.5~約2.5バール、約0.5~約2バール、又は約1.5~約2バールなど、約5バール未満であってもよい。
【0172】
図8を参照すると、ヒーター266、268は、前記ラミネート体110のシートを、前記シートが前記雄型及び雌型254、258の間に保持されている間に加熱してもよい。前記ラミネート体の上側及び/又は下側が、加熱されてもよい。前記ラミネート体は、前記シートグリップラック264によって把持されてもよい、又は把持及び延伸されてもよい。前記ラミネート体110は、前記外層104を溶融又は部分的に溶融し、前記コア102を溶融又は部分的に溶融するのに充分に高い温度まで加熱されてもよい。前記ラミネート体110は、約120℃~約190℃、約125℃~約190℃、約130℃~約190℃、約135℃~約190℃、約140℃~約190℃、約145℃~約190℃、約150℃~約190℃、約120℃~約185℃、約120℃~約180℃、約120℃~約175℃、約120℃~約170℃、約120℃~約165℃、又は約120℃~約160℃の温度まで加熱されてもよい。1つの例では、前記ラミネート体は、約145℃~約170℃の温度まで加熱される。別の例では、前記温度は、約140℃~約165℃である。
【0173】
いくつかの実行では、工程286は、前記ラミネート体110の上側又は下側にテキスタイルシートを導入することを含む。例えば、前記テキスタイルシートは、前記上側ヒーター266と前記雄型254との間に配置されてもよい。
【0174】
再度図9を参照すると、工程288では、前記ラミネート体110のシートが、カバン外殻120などの物品に成形される。前記ラミネート体110のシートは、成形されながら加熱されてもよい。前記ラミネート体110は、前記外層104を溶融又は部分的に溶融し、前記コア102を溶融又は部分的に溶融するのに充分に高い温度まで加熱されてもよい。前記ラミネート体110は、約120℃~約190℃、約125℃~約190℃、約130℃~約190℃、約135℃~約190℃、約140℃~約190℃、約145℃~約190℃、約150℃~約190℃、約120℃~約185℃、約120℃~約180℃、約120℃~約175℃、約120℃~約170℃、約120℃~約165℃、又は約120℃~約160℃の温度まで加熱されてもよい。1つの例では、前記ラミネート体110は、約140℃~約180℃の温度まで加熱される。別の例では、前記ラミネート体110は、約145℃~約170℃の温度まで加熱される。別の例では、前記温度は、約140℃~約165℃である。
【0175】
前記ラミネート体110は、約10秒~約40秒、約15秒~約40秒、約20秒~約40秒、約25秒~約40秒、約30秒~約40秒、約10秒~約35秒、約10秒~約30秒、約10秒~約25秒、又は約10秒~約20秒にわたって加熱されてもよい。1つの実施形態では、前記ラミネート体110は、約15秒~約35秒にわたって加熱される。
【0176】
成形の1つの例では、前記雌型258などの前記下側型は、上向きに移動して、加熱され延伸されたラミネート体110のシートの下側に接触する。この場合は前記雄型254である前記上側型は、下向きに移動し、そのことによって、前記ラミネート体110のシートを押し込んで、前記型254、258の面のほとんど又はすべてと接触させ、それによって、前記ラミネート体110のシートを成形する。存在する場合、前記テキスタイルシートは、前記ラミネート体110に同時に接着される。
【0177】
前記型254、258は、素早く嵌合してよく、又は閉じてよく、このことは、カバン外殻120などの深絞り成形された物品の前記コーナー部分146に発生するシワの数を低減する補助となり得る。前記型254、258は、約15~45秒、約15~40秒、約15~35秒、約15~30秒、約20~45秒、約25~45秒、又は約30~45秒にわたって閉じた位置に維持されてもよい。1つの例では、前記型254、258は、約30秒にわたって閉じた位置に維持される。
【0178】
工程290では、前記カバン外殻120は、前記成形装置240から排出される。前記ラミネート体110は、約60~120秒、約60~110秒、約60~100秒、約60~90秒、約70~120秒、約80~120秒、又は約90~120秒、加熱されてカバン外殻120に成形されてもよい。1つの例では、ラミネート体110は、約90秒加熱されてカバン外殻120に成形される。
【0179】
上記で述べた前記方法280によって製造されたカバン外殻120は、図7bに示されるカバンケース150に用いられてもよい。
【0180】
方向及び/又は寸法の言及はすべて(例:上側、下側、上向き、下向き、左、右、左向き、右向き、上、下、上に、下に、フロント、バック、リア、前方へ、後方へ、後ろへ、内側、外側、内側へ、外側へ、垂直、水平、時計回りに、反時計回りに、長さ、幅、高さ、深さ、及び相対的な向き)、単に、開示される本発明の実行を読者が理解する手助けとする識別の目的で用いられるだけであり、請求項に特に示されない限り、制限を加えるものではなく、特に、本発明の位置、向き、使用、相対的サイズ、又は形状に関して制限を加えるものではないことには留意されたい。
【0181】
接続の言及(例:取り付けられた、結合された、接続された、接合された、など)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続間の中間部材、及び要素間の相対的動きを含み得る。このため、接続の言及は、2つの要素が直接接続し、互いに固定された関係であることを必ずしも暗示するものではない。
【0182】
いくつかの例では、構成要素は、特定の特徴を有する及び/又は別のパーツと接続されている「末端」の言及と共に記載される。しかし、当業者であれば、開示される本発明が、他のパーツとの接続点を超えて直ちに終結する構成要素に限定されないことは認識される。したがって、「末端」の用語は、特定の要素、リンク、構成要素、パーツ、部材などの端部に対して隣接する、後ろの、前方の、又はそうでなければ近くの領域を含むように広く解釈されるべきである。本明細書において直接又は間接的に示される方法において、様々な工程及び操作が、操作の1つの考え得る順番で記載されるが、当業者であれば、工程及び操作は、本発明の趣旨及び範囲から必ずしも逸脱することなく、並べ替え、置き換え、又は削除がなされてもよいことは認識される。上記の記述に含まれる、又は添付の図面に示されるすべての事項は、限定するものではなく、単なる例示として解釈されるものとすることを意図している。添付の請求項の範囲内で、詳細事項又は構造に変更が成されてもよい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9