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特許7114624エスカレータまたは動く歩道の機械的状態の監視
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】エスカレータまたは動く歩道の機械的状態の監視
(51)【国際特許分類】
   B66B 27/00 20060101AFI20220801BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B66B27/00 C
B66B29/00 D
B66B29/00 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019553394
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018055671
(87)【国際公開番号】W WO2018177708
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17163204.5
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノバツェク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブリ,ユルグ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098114(JP,A)
【文献】特開2012-180187(JP,A)
【文献】特開2010-269884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00- 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの回転バンド(5,10)と少なくとも1つの検出装置(20)とを備えたエスカレータ(1)または動く歩道の機械的状態を検出および監視する方法であって、検出装置(20)によって、少なくとも以下の方法ステップ、すなわち、
・回転バンド(5,10)の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの空間画像(40)を作成する方法ステップ、
・空間画像(40)のうちの少なくとも1つの領域(27’,31’)を選択する方法ステップ、
・選択された領域(27’,31’)と少なくとも1つの比較領域(27’’,31’’)とを比較する方法ステップであって、この比較領域(27’’,31’’)が、3次元座標(x’’,y’’,z’’)によって定義され、選択された領域(27’,31’)に明確に割り当てることができる仮想空間(40)を表している、当該比較する方法ステップ、および
・選択された領域(27’,31’)が、所定の限界を超えているために比較領域(27’’,31’’)と異なる場合、アラーム信号を発生させる方法ステップが実行され、
選択された領域(27’,31’)に対する比較領域(27’’,31’’)の割り当ては、基準マーク(30’,30’’)を介して実行されており、基準マークは、エスカレータ(1)または動く歩道の固定部品(12)に割り当てられたものであり、かつ、基準マーク(30’,30’’)は、空間画像(40)内ならびに対応する比較領域(27’’,31’’)内で識別されうる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
トレッド要素(9)の少なくとも1つの特徴的な表面もしくは特徴的な縁部(27,31)、または手すり(5)の一部の少なくとも1つの特徴的な表面もしくは特徴的な縁部(27,31)が、回転バンドの選択された領域(27’,31’)として選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択された領域(27’,31’)が仮想空間(41)を越えて少なくとも1つの位置で突出している場合、および/または選択された領域(27’,31’)に縁部(27)または表面(31)が欠落している場合、および/または選択された領域(27’,31’)の縁部または表面が、所定の角度許容限界を超えているために、仮想空間(41)の対応する縁部または表面に平行に配置されていない場合、比較領域(27’’,31’’)の所定の限界が超えられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
回転バンド(5,10)の部分の一連の空間画像(40)が捕捉され、少なくとも1つの基準マーク画像(30’)に対する画像(40)上に捕捉された表面および縁部の距離を比較することにより、割り当てられた比較領域(27’’,31’’)およびその仮想基準マーク(30’’)に最もよく一致する空間画像(40)が選択され、この空間画像(40)の少なくとも1つの選択された領域(27’,31’)と比較領域(27’’,31’’)とが比較される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
エスカレータ(1)または動く歩道の固定部品(12)上に配置され、トレッド要素(9)の特徴的な表面、縁部(27)もしくはマーク、または回転バンド(5)の手すり部分の特徴的な表面、縁部(27)もしくはマークを検出し、位置決定装置(42)に対する検出された表面、縁部(27,31)またはマークの現在の位置に応じて、検出装置(20)の画像捕捉装置(21)をトリガするトリガを生成する位置決定装置(41)が設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
解析ユニット(38)により、比較領域(27’’,31’’)の限界に対する選択された領域(27’,31’)の表面または縁部の位置が解析され、位置予約部(ψ)が決定され、決定された位置予約部(ψ)に基づいて、および/または以前に決定され保存された複数の位置予約部(ψ)の履歴を解析することにより、次の保守日が決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
解析ユニット(38)によって保守関連であると分類された位置予約部(ψ)から、実行される可能性が高い作業ステップと、保守に必要となる可能性が高い保守材料とが決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
比較領域(27’’,31’’)を生成し保存するために、最大の許容可能なズレを表す境界体積要素(32)を用いた学習動作が実行され、その空間画像(40)がデータ記憶装置(39)に保存される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
動作を目的とする回転バンド(5,10)を用いて学習動作が実行され、回転バンド(5,10)の一部の空間画像(40)が作成され、空間画像(40)の特徴的な縁部および表面に3次元座標の形で限界値を加えることによって、この空間画像(40)から比較領域(27’’,31’’)が生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
検出装置(20)の機能をチェックするために、少なくとも1つのテスト要素を用いたテスト動作が実行され、テスト要素が、比較領域(27’’,31’’)を越えて少なくとも1つの位置で突出するように寸法決めされる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
回転式に配置されたバンド(5,10)と、エスカレータ(1)または動く歩道の機械的状態を検出および監視する少なくとも1つの検出装置(20)とを備えたエスカレータ(1)または動く歩道であって、検出装置(20)が、空間画像(40)を生成することができる少なくとも1つの画像捕捉装置(21)を備え、回転バンド(5,10)の一部の少なくとも1つの空間画像(40)が生成されるという点で、検出装置(20)によって、回転バンド(5,10)の状態および/またはエスカレータ(1)または動く歩道の固定部品(12)に対するバンド(5,10)の部分の配置を検出することができ、この画像(40)上に捕捉された部分の特徴的な表面または縁部(27’,31’)が、検出装置(20)の処理ユニット(22)によって選択可能であり、データ記憶装置(39)に保存された3次元比較領域(27’’,31’’)と比較可能であり、基準マーク(30’,30’’)を介して、選択された領域(27’,31’)に比較領域(27’’,31’’)を割り当てることができ、基準マーク(30’,30’’)は、エスカレータ(1)または動く歩道の固定部品(12)に割り当てられたものであり、基準マーク(30’,30’’)は、空間画像(40)内ならびに対応する比較領域(27’’,31’’)内で識別されうる、ことを特徴とする、エスカレータ(1)または動く歩道。
【請求項12】
エスカレータ(1)または動く歩道が位置決定装置(42)を含み、該位置決定装置(42)がエスカレータ(1)または動く歩道の固定部品(12)上に配置され、トレッド要素(9)の特徴的な表面、縁部(27,31)もしくはマーク、または回転バンド(5,10)の手すり部分の特徴的な表面、縁部(27,31)もしくはマークを検出することができ、位置決定装置(42)に対する検出された表面、縁部(27、31)またはマークの現在の位置に応じて、画像捕捉装置(21)をトリガするトリガを生成することができる、請求項11に記載のエスカレータ(1)または動く歩道。
【請求項13】
検出装置(20)が、回転バンド(5,10)の前進移動経路(14)と回転バンド(5,10)の戻り移動経路との間に配置される、請求項11または12に記載のエスカレータまたは動く歩道。
【請求項14】
画像捕捉装置(21)が透明保護カバー(23)を備え、検出装置(2)が、透明保護カバー(23)の少なくとも一部の表面を定期的に清掃する清掃装置(18)を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載のエスカレータまたは動く歩道。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータまたは動く歩道の機械的状態を検出および監視する方法、ならびに機械的状態を検出および監視する少なくとも1つの検出装置を有するエスカレータまたは動く歩道に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータおよび動く歩道には、機械的状態を検出および監視する検出装置が設けられていて、これらの旅客輸送設備の安全な運転を確保していることが一般に知られている。例えば、中国実用新案第201132723号明細書は、ステップバンドがセンサによって監視されるエスカレータを開示している。ステップがステップバンドから外れた場合、間隙が生じ、センサがこれを検出し、対応する信号をエスカレータ制御装置に出力する。エスカレータ制御装置は、信号を受信するとすぐにステップバンドを停止させる。
【0003】
また、特開2010-269884号公報は、ステップバンドの機械的状態を検出および監視する検出装置を有するエスカレータを開示している。ここでは、エスカレータのステップの画像が2台のカメラによって捕捉され、評価されている。
【0004】
特開2009-190818号公報では、ステップバンドとベーススカートパネルとの間の間隙が、複数のセンサによって監視されている。
【0005】
ただし、高い監視密度には、さらに正確には、エスカレータまたは動く歩道の重要な位置をできるだけ多く監視するには、多数のセンサが必要である。これには、そのような検出装置が非常に高価であり、特に各追加のセンサによって、高い監視密度を有するシステム全体の、またはエスカレータもしくは動く歩道の感受性が高まるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国実用新案第201132723号明細書
【文献】特開2010-269884号公報
【文献】特開2009-190818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、高い監視密度を可能にする、エスカレータまたは動く歩道の機械的状態を検出および監視する方法および検出装置を提供することである。検出装置は依然として費用対効果が高く、エスカレータまたは動く歩道の高い動作安全性および可用性を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、少なくとも1つの回転バンドと少なくとも1つの検出装置とを備えたエスカレータまたは動く歩道の機械的状態を検出および監視する方法により達成される。方法は、検出装置によって実行される少なくとも以下の方法ステップを含む:
・回転バンドの少なくとも1つの部分の少なくとも1つの空間画像を作成する方法ステップ、
・空間画像の少なくとも1つの領域を選択する方法ステップ、
・選択された領域と少なくとも1つの比較領域とを比較する方法ステップであって、この比較領域が、3次元座標によって定義され、選択された領域に明確に割り当てることができる仮想空間を表す方法ステップ、および
・選択された領域が、所定の限界を超えているために比較領域と異なる場合、アラーム信号を発生させる方法ステップ。
【0009】
本方法では、空間画像の点、領域および縁部の位置が仮想空間と比較されるため、正確でフェールセーフな監視は、画像と比較領域とがどのように互いに空間的な関係にあるかに依存する。
【0010】
本発明によれば、選択された領域に対する比較領域の単純かつ正確な割り当てが、基準マークを介して実行される。基準マークは、エスカレータまたは動く歩道の固定部品に割り当てられる。したがって、基準マークは、空間画像内の基準マーク画像として識別され得る。実際には、トラス上、または回転バンドのガイドレール上などの固定領域上にマークが配置されるか、この領域が著しく突出したねじ頭などの構造関連の独特な特徴を有する。例えば、比較領域には、空間座標によって定義される基準マーク(以下、仮想基準マークと呼ぶ)も提供される。仮想基準マークおよび基準マーク画像は、画像および比較領域の空間座標系のゼロ点として使用することができるため、割り当ては非常に簡単である。
【0011】
現在の実際の状態の空間画像を生成し、それと割り当てられた仮想空間とを比較し、それを解析するこの方法のために、単一の検出装置によって、多数の重要な位置を同時に監視することができる。
【0012】
本発明は、エスカレータまたは動く歩道に関する安全上重大な事故または損傷に関連する事故のほとんどが、意図された移動方向または移動経路からの移動部品の空間的変位に伴って起こるという知識に基づいている。具体的には、これは特に、エスカレータの回転ステップバンドまたは動く歩道の回転パレットバンド、ならびにそれぞれステップバンドまたはパレットバンドの側方に配置され、かつ、これと平行な回転手すりおよび手すりベルトまたは連結手すりバンドに関する。読みやすさを考慮して、エスカレータまたは動く歩道の固定部分に対して回転するように移動可能なこれらの構成要素は、以下、回転バンドと称する。
【0013】
エスカレータまたは動く歩道の固定部分は、例えば、それぞれ、支持構造およびトラス、ならびにその中に固定的に配置された構成要素、例えば、フレーム、ガイドレール、欄干ベースのトリム部分などを備える。
【0014】
以下は、意図された移動方向からの可動部品の空間的変位により、差し迫った安全上重大な事象および/または差し迫った損傷事象が検出され得るいくつかの例である。これらの事象は、決定的な列挙として理解されるべきではない。意図された移動方向からの可動部品の空間的変位をもたらし得る複数の他の理由がなお存在する。
【0015】
第1の起こり得る事象は、例えば、ステップまたはパレットのトレッドの右側に対する左側の下降または上昇に関する。言い換えれば、トレッドは、進行方向に対して横方向に傾斜する。この傾斜の理由には、例えば、ステップ軸の破損、摩耗による直径の減少、またはドラッグローラもしくはチェーンローラの破損、ステップチークもしくはパレットチークの破損、ステップブッシュの損傷、パレットもしくはステップとステップバンドもしくはパレットバンドのチェーンとの接続の破損、またはトレッド上の汚れの蓄積によるチェーンローラもしくはドラッグローラの拡張を挙げることができる。ただし、ガイドレールが下降している可能性もある。
【0016】
トレッドの過度の傾斜は、エスカレータまたは動く歩道の使用者にとって邪魔なだけでなく、トレッドと櫛板との衝突をもたらしたり、ガイドレールおよびベーススカートパネルに損傷を引き起こす可能性がある。
【0017】
トレッドの傾斜を検出するために、ステップおよびパレットのサイドチークの下縁の空間位置を監視することができる。ここでは、これらの下縁は空間画像から選択され、比較領域と比較される。厳密に言えば、空間画像の選択された領域の捕捉点の空間座標が、電子データ記憶装置から検索することができる空間座標と比較される。比較により、互いの空間的なズレが判定される。この場合、選択された領域に比較領域を明確に割り当てることができることが重要である。この割り当てについては、以下で詳細に説明される。
【0018】
選択された領域の空間的なズレが、それぞれ限界値によって定義された特定の仮想空間を超えるか、選択された領域がこの仮想空間を越えて突出するとすぐに、監視対象の事象、本例ではトレッドの傾斜が生じたと仮定することができる。これは、限界値を超える過度の傾斜が検出され、アラーム信号が検出装置によって発生していることを意味する。このアラーム信号は、様々なアクションをトリガすることができる。アラーム信号をエスカレータの制御装置に送信することができ、次いで、これにより、エスカレータが回転バンドを停止させる。検出装置は、例えば、使用者に警告する光学および/または音響出力装置を有してもよい。
【0019】
トレッド要素全体が欠落している場合、選択される領域も空間画像上で欠落しており、したがって、選択された領域の空間座標も欠落しており、これにより、比較領域と比較すると、最大のズレがもたらされるか、限界値を超える結果となる。この場合、エスカレータまたは動く歩道の制御装置は、直ちに非常制動を開始し、ステップバンドまたはパレットバンドを停止させなければならない。
【0020】
ステップバンドまたはパレットバンドのドラッグローラまたはチェーンローラも、空間画像から選択し、それに応じて監視することができる。ドラッグローラまたはチェーンローラが欠落しているか、その外径が大きすぎる場合、この選択された領域(例えば、円筒状に規定された仮想空間)は、データ記憶装置から検索され、選択された領域に明確に割り当てられている比較領域と一致しない。
【0021】
したがって、これらの領域は、好ましくは、監視対象の事象中に、対応する比較領域からの特に大きなズレを有する空間画像から選択されるため、この起こり得る事象の特徴的な表面または縁部を表す。
【0022】
第2の起こり得る事象は、トレッド面の傾斜に関する。この事象では、トレッド要素のトレッド面は水平に配置されているが、パレットまたはステップのサイドチークが、欄干ベースおよびそのベーススカートパネルに平行ではないか、トレッド面の前縁および後縁がそれぞれ、ベーススカートパネルに垂直ではない。この傾斜の理由は、左または右のステップブッシュの欠陥である可能性がある。コンベヤチェーンのうちの1つのチェーンの長さが、非対称の摩耗により、ステップバンドまたはパレットバンドの一方の側で他方の側よりも長くなる可能性もある。また、ステップもしくはパレットとコンベヤチェーンとの間の接続(ステップ軸)の破損、またはステップバンドもしくはパレットバンドをベーススカートパネルに対して規定された距離に維持する摺動ブロックの欠陥が、同様に、トレッド面の傾斜を生じさせることがある。
【0023】
トレッド面を検出するために、例えば、サイドチークの空間位置、またはステップおよびパレットのトレッド面の前縁もしくは後縁の空間位置を監視することができる。その際、これらの領域は空間画像から選択され、割り当て可能な比較領域と比較される。
【0024】
ただし、回転バンドの領域だけでなく、ベーススカートパネルまたはガイドレールの一部などの静止部分も空間画像上に画像化される。チェックのために、これらの静止部分に関して、サイドチークの距離および角度位置もしくは平行度、またはステップおよびパレットのトレッド面の前縁もしくは後縁の距離および角度位置もしくは平行度を測定することができ、データ記憶装置から検索することができる比較領域に基づいて評価することができる。
【0025】
韓国登録実用新案第920007689号公報で詳細に説明されているように、第3の起こり得る事象は、いわゆるステップの傾斜に関する。何らかの欠陥により、ガイドレールとステップとの間のガタが増大する。使用者は、ステップバンドを離れて櫛板に乗る前に、一歩踏み込む必要がある。その際、使用者はステップの前縁(トレッド面と立ち上がり面との間の縁部)に乗り込み、これにより、システムのガタが大きくなることに起因して後縁が立ち上がり得て、次いで櫛板に当接する。通常、大きなガタは、ステップチェーン、チェーンピン、ステップ軸、ステップブッシュ、およびステップのステップアイの摩耗の結果である。
【0026】
トレッド面の上方への傾斜を検出するために、例えば、トレッドおよびパレットのトレッド面の前縁または後縁の空間位置を監視することができる。その際、これらの領域は空間画像から選択され、割り当て可能な比較領域と比較される。
【0027】
第4の起こり得る事象は、ステップまたはパレットとベーススカートパネルとの間の間隙の拡大の検出に関する。靴、指、衣服などが捕捉されるために多くの事故が発生するこの重要な領域は、固定された欄干ベースと移動するステップまたはパレットとの間に位置する。具体的には、エスカレータの場合、傾斜領域から水平領域への移行領域では、ステップが互いに対して上下方向に移動することに加えて、例えば、PCCR(Proprietary closed-cell resin)などの軟質発泡材料から製造された靴などの物体が引き込まれる可能性がある。ステップとベーススカートパネルとの間の間隙は、理想的には3mmでなければならない。靴/衣服/指が捕捉されると、間隙は拡大する。間隙の拡大、および/または異物(靴、衣服など)、ならびにステップバンドまたはパレットバンドの左側から乗車側への変位(またはその逆)およびベーススカートパネルの曲げを空間画像上で見ることができる。この起こり得る事象は、例えば、ステップおよびパレットのトレッド面の側縁の空間位置を監視することによって捕捉することができる。その際、これらの領域は空間画像から選択され、割り当て可能な比較領域と比較される。ズレが検出されると直ちに、例えば、アラーム信号がエスカレータ制御装置に出力され、エスカレータ制御装置は、櫛板で物体の一部がさらに引き込まれるか分離が生じる前に、直ちにエスカレータを停止させる。
【0028】
第5の起こり得る事象は、トレッド面からトレッド面への移行(2つのトレッド面の間の間隙)に関する。衣服または他のものがトレッド面の間の間隙に位置すると直ちに、それらは空間画像上で画像化される。トレッド面の縁部領域の表面を選択すると、空間画像のこの選択された領域は、形状および位置に関して、割り当てられた比較領域からズレが生じ、問題が特定される。
【0029】
第6の起こり得る事象は、回転手すりの手すり張力またはこの回転バンドの手すり張力に関する。ここで、手すりの戻り移動経路の一部も捕捉されるように、検出装置が配置される。手すりを監視する場合、例えばエスカレータの場合、上部移行領域内の手すり駆動装置の重力および配置に起因して、水平部分から傾斜部分までの下部移行領域で回転バンドのたるみが最初に発生するため、そこに検出装置が配置されることが好ましい。たるみがないと回転バンドに過度の張力がかかり、摩耗が大きくなるため、わずかなたるみが必要である。張力が低すぎ、それに応じてたるみが大きくなると、手すりと回転バンドとの間の摩擦が低くなりすぎるリスクがある。空間画像上に捕捉されたたるみは、例えば、比較領域よって事前に決定された限界内になければならない手すりベルトの選択されたアーチ状の長手方向縁部に基づいて評価される。
【0030】
検出装置を好適に配置して、対応する領域を選択し、それらと割り当て可能な比較領域とを比較することにより、検出装置の単一の空間画像によって、上述の起こり得る事象をいずれも監視時に検出または監視することができる。その際、個々の選択された領域または個々の特徴的な領域および縁部、例えば、ステップチークの下縁などが、これらと比較領域とを比較することによって複数の起こり得る事象をチェックすることができるため、複数の利点を有する。
【0031】
選択された領域として適しているのは、トレッド要素の特徴的な表面もしくは特徴的な縁部、または回転バンドの手すり部分の特徴的な表面もしくは特徴的な縁部である。空間画像のゼロ点に対するそれらの空間位置は、比較領域のゼロ点を介して、それらの目標位置の所定の限界と比較される。所定の限界(許容可能なズレ)のために、比較領域は常に、空間画像の点、縁部または表面の空間的配置または位置が判定される仮想空間である。
【0032】
選択された領域が比較領域の仮想空間を越えて少なくとも1つの位置で突出している場合、比較領域の所定の限界が超えられている。選択された領域に縁部または表面が欠落している場合、これも所定の限界を超えていると見なされる。所定の角度許容限界を超えているために、仮想空間の対応する縁部または表面に平行に配置されていない選択された領域の縁部または表面にも、同じことが当てはまる。
【0033】
言うまでもなく、エスカレータまたは動く歩道の動作中に、十分な動作監視を達成するために、前述の検出装置によって、空間画像が繰り返し捕捉され評価される。個々の画像の時系列と、単位時間当たりの画像の数とは、立法府の規則および基準、運転者のニーズならびに監視目的に適合している。したがって、例えば、エスカレータまたは動く歩道のダウンタイム中には、画像を撮影し評価することができず、いわゆるサイレントランニング(無積載、低速)中には、1時間に4枚の画像を撮影し評価することができ、正規速度では、1分に1枚の画像を撮影し評価することができる。好ましくは、検出装置は、回転バンドの完全な回転中にバンド全体が画像上に画像化されるように制御される。選択と比較とは、画像の個々の領域で大きく異なっていてもよい。したがって、例えば、100番目の画像毎にのみ手すりベルトのたるみをチェックしながら、各画像毎にトレッド要素の位置と比較領域とを比較してもよい。
【0034】
また、各空間画像を評価したり、あらゆる選択された領域と比較領域とを比較したりすることは必ずしも必要ではない。例えば、回転バンドの部分の一連の空間画像を作成し、少なくとも1つの基準マーク画像に対する空間画像上に捕捉された表面および縁部の距離を比較することにより、割り当てられた比較領域およびその仮想基準マークに最もよく一致する空間画像を選択し、比較領域と、この空間画像の少なくとも1つの選択された領域とを比較することも可能である。これにより、適用可能な場合、最もよく一致した空間画像から選択された領域は、基準マーク画像に対して、仮想基準マークに割り当てられた比較領域と少なくともほぼ同じ位置を有するため、空間画像の補正は必要ない。
【0035】
必要な演算能力をさらに削減できるようにするために、基準マーク画像が常に各空間画像のほぼ同じ位置で画像化されると有利である。これを達成するために、エスカレータまたは動く歩道の固定部品上に配置された位置決定装置を設けることができる。位置決定装置は、トレッド要素の特徴的な表面、縁部もしくはマーク、または回転バンドの手すり部分の特徴的な表面、縁部もしくはマークを検出する。位置決定装置は、検出が行われると直ちに、位置決定装置に対する検出された表面、縁部またはマークの現在の位置に応じて、撮像装置をトリガするトリガを生成する。それにより、例えば、回転バンドの捕捉対象のトレッド要素の画像が、エスカレータの固定部品に対して常に同じ位置に作成される。言い換えれば、画像は異なるトレッド要素を示すが、それらはいずれも、ともに画像化された固定部品に対してほぼ同じ位置で捕捉されている。このため、非常に小さな補正を行うだけでよいか、仮想基準マークと基準マーク画像との位置比較によって大きな位置ズレが判定された場合、比較領域との比較を直接行うことができる。したがって、位置ズレが大きい場合に必要とされる比較領域に対する空間画像のカメラ角度の差による歪みの補正を省略することができる。
【0036】
好ましくは、検出装置は電子処理ユニットを備える。電子処理ユニットにより、例えば、空間画像の領域の選択ならびに比較領域への割り当てを実行することができる。この処理ユニットはまた、解析ユニットを備えることができる。解析ユニットにより、比較領域の限界に対する選択された領域の表面または縁部の位置を解析することができ、位置予約部を決定することができる。決定された位置予約部に基づいて、および/または以前に決定され保存された複数の位置予約部の履歴を解析することにより、次の保守日を決定することができる。これにより、結果として生じる重大な損傷の原因となり得る差し迫った損傷が早期に検出され、その発生が監視される。
【0037】
解析ユニットによって保守関連であると分類された位置予約部から、実行される可能性が高い作業ステップと、保守に必要となる可能性が高い保守材料とを決定することができる。適用可能な場合、これは、例えば解析ユニットによって自動的に実行することができる。
【0038】
比較領域は、様々な方法で生成することができ、検出装置のデータ記憶装置に、またはエスカレータもしくは動く歩道の制御装置に保存することができる。ただし、比較領域は、外部データ記憶装置、例えば、USBスティック、外部ハードドライブ、携帯電話、インターネットを介して検索可能であるかワールドワイドウェブのクラウド内にあるデータベースなどに保存することもでき、必要に応じてこれらの記憶媒体から検索することができる。
【0039】
比較領域を生成し保存するために、例えば、最大の許容可能なズレを表す境界体積要素を用いた学習動作を実行することができ、その空間画像を前述のデータ記憶装置の1つに保存することができる。
【0040】
言うまでもなく、3D CADシステムを使用して、比較領域ならびにエスカレータまたは動く歩道の構成要素を設計し、データ記憶装置に保存することもできる。
【0041】
また、動作のために設けられた回転バンドを用いて学習動作を実行し、バンドの領域の空間画像を作成することも可能である。その後、空間画像の特徴的な縁部および表面に3次元座標の形で限界値を加えることによって、限界値だけ大きい仮想空間を比較領域として定義するという点で、この空間画像から比較領域を生成する。
【0042】
さらに、検出装置の機能をチェックするために、少なくとも1つのテスト要素を用いてテスト動作を実行することができる。テスト要素は、回転バンドの一部の代わりに(例えば、ステップの代わりに)取り付けることができるように構成されるか、回転バンドに一時的に取り付けるための取り付け部品として(例えば、手すりベルト用の取り付けスリーブとして)設計される。このテスト要素は、比較領域を越えて少なくとも1つの位置で突出するように寸法決めされる。したがって、検出装置は、テスト要素の空間画像が選択および比較によって評価された際にアラーム信号を出力しなければならない。
【0043】
この状態を検出するための上述の方法を実行するために、回転式に配置されたバンドと、機械的状態を検出および監視する少なくとも1つの検出装置とを備えたエスカレータまたは動く歩道が提供される。検出装置は、空間画像を生成することができる少なくとも1つの画像捕捉装置を備える。本文書による空間画像は、仮想3Dモデルとして理解されるべきである。さらに正確には、この空間画像は、可能な限り縮尺通りの捕捉された構造のデジタル形式の3次元表現であり、仮想空間内の空間画像の個々の点は、3次元の座標および/またはベクトル座標によって定義される。
【0044】
回転バンドの一部の少なくとも1つの空間画像が生成されるという点で、検出装置によって、回転バンドの状態および/またはエスカレータまたは動く歩道の固定部品に対するバンドの部分の配置を検出することができる。この画像上に捕捉された部分の特徴的な表面または縁部を検出装置の処理ユニットによって選択し、データ記憶装置に保存された3次元比較領域と比較することができる。選択された領域が、所定の限界を超えているために比較領域と異なる場合、検出装置によってアラーム信号が発生する。
【0045】
すでに述べたように、検出装置は、エスカレータまたは動く歩道の固定部品上に配置され、それを用いてトレッド要素の特徴的な表面、縁部もしくはマーク、または回転バンドの手すり部分の特徴的な表面、縁部もしくはマークを検出することができる位置決定装置を備えることができる。位置決定装置によって、位置決定装置に対する検出された表面、縁部またはマークの現在の位置に応じて、画像捕捉装置をトリガするトリガを生成することができる。
【0046】
検出装置または画像捕捉装置は、回転バンドの前進移動経路と回転バンドの戻り移動経路との間に配置することができる。検出装置はまた、エスカレータまたは動く歩道の長さにわたって、好ましくはエスカレータまたは動く歩道の神経学的な点の領域内に分散する複数の画像捕捉装置を含んでもよい。
【0047】
通常、動作段階では、エスカレータおよび動く歩道に多くの汚れが蓄積する。汚れは、画像捕捉装置にも付着する場合がある。汚れの層が密になりすぎると、これは、送信装置、例えばレーザスキャナのレーザと、受信装置、例えばレーザスキャナの光電池の両方を覆い、影響を及ぼす可能性がある。したがって、画像捕捉装置には、送信装置と受信装置とに及ぶ透明保護カバーを設けることができる。さらに、検出装置は、透明保護カバーの少なくとも一部の表面を定期的に清掃する清掃装置を含んでもよい。
【0048】
本発明の可能な特徴および利点のいくつかが、様々な実施形態を参照して本明細書で説明されることに留意されたい。特に、いくつかの特徴は、本発明による方法を参照して説明され、他の特徴は、本発明による装置を参照して説明される。当業者であれば、本発明のさらなる実施形態に到達するように、特徴を好適に組み合わせ、適合させ、または交換することができることを理解するであろう。
【0049】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明するが、図面も説明も本発明を限定するものと解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の実施形態による、検出装置を備えるエスカレータを示す。
図2A】本発明の実施形態による方法の主要な方法ステップ、ならびに検出装置の動作原理を概略的に示す。
図2B】本発明の実施形態による方法の主要な方法ステップ、ならびに検出装置の動作原理を概略的に示す。
図2C】本発明の実施形態による方法の主要な方法ステップ、ならびに検出装置の動作原理を概略的に示す。
図3】回転バンドの一部としてエスカレータのステップを示し、これに基づいて、意図された位置に対する傾斜が示されている。
図4】学習動作に適した境界体積要素の可能な構成を示す。 図は単に概略的なものであり、縮尺通りではない。同じ参照符号は、同じまたは機能的に同一の特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、例えば2つのレベルE1,E2の間で人を輸送することができる例示的なエスカレータ1の側面図を示す。エスカレータ1は、トラスの形態の支持構造2を有し、支持構造2は、明確にするために、その輪郭線によってのみ示されている。支持構造2は、エスカレータ1の構成要素を収容し、建物内でそれらを支持する。これらの構成要素には、例えば、欄干3(側面図のために1つのみが示されている)が挙げられ、欄干3は回転式に配置された手すり5を備える。欄干3は、欄干ベース4を介して支持構造2に接続される。手すり5またはそれぞれこの回転バンド5は、エスカレータ1の駆動装置25と動作可能に接続された摩擦駆動装置6を介して駆動される。手すり5の正しい張力は、概略的に示された手すり張力付与装置7によって維持される。
【0052】
エスカレータ1は、2つの環状に閉じられた回転コンベヤチェーン11をさらに含み、ここでは側面図のため、そのうちの1つだけが示されている。2つのコンベヤチェーン11は、複数のチェーンリンクから構成される。2つのコンベヤチェーン11は、移動経路8に沿って移動方向に変位可能となっている。コンベヤチェーン11は、互いに平行に走り、移動方向を横断する方向に互いに間隔をおいて配置される。レベルE1、E2に隣接する端部領域では、コンベヤチェーン11は偏向スプロケット15、16によって偏向される。
【0053】
2つのコンベヤチェーン11の間には、移動経路8を横断してコンベヤチェーン11を互いに接続するトレッドステップの形態の複数のトレッド要素9が配置される。トレッドステップ9は、コンベヤチェーン11によって、移動経路8に沿って移動方向に移動可能となっている。コンベヤチェーン11上に案内されたトレッド要素9は、トレッド要素9が移動経路8に沿って前後に配置され、少なくとも1つの搬送領域19内で使用者が踏むことができるステップバンド10またはそれぞれ回転バンド10を形成する。回転バンド10は、概略的に示されたガイドレール12によって案内され、重力に逆らって支持される。これらのガイドレール12は、支持構造2内に静止して配置される。
【0054】
コンベヤチェーン11を変位させることができるようにするために、上位レベルE2のスプロケット16が駆動装置25に接続されている。駆動装置25は、制御装置24(図1にのみ概略的に示されている)によって制御される。回転バンド10は、駆動装置25および偏向ホイール15、16とともに、使用者および物体用のコンベヤシステムを形成し、そのトレッド要素9は、建物に静止して固定される支持構造2に対して変位させることができる。
【0055】
すでに述べたように、エスカレータ1または動く歩道に関する安全上重大な事象および/または損傷に関連する事象のほとんどは、意図された移動方向からの移動部品の空間的変位を伴う。これにより、特に、ステップバンド10または回転手すり5などの回転バンド5,10を監視することにより、差し迫った損傷を検出することができる。これを達成するために、本例では2つの画像捕捉装置21と処理ユニット22とを備える検出装置20がエスカレータ1に配置される。画像捕捉装置21は、レベルE1,E2に配置されたエスカレータ1の水平部分とエスカレータ1の傾斜した中央部分との間の移行領域に、構造2上に静止して配置される。特に、使用者が乗ったステップバンド10の前進移動経路が監視および解析されるため、画像捕捉装置21は、ステップバンド10またはそれぞれ回転バンド10の前進移動経路と戻り移動経路との間に配置される。画像捕捉装置21は、技術的理由により制限され、図1に点線および角度αによって概略的に示される検出フィールドαを含む。したがって、画像捕捉装置21は、回転バンド10の一部のみを検出することができる。
【0056】
下位レベルE1の移行領域に配置された画像捕捉装置21は、手すり5のたるみ28も検出することができる。たるみは、手すり張力付与装置7による手すり5の不十分な張力と、まさにこの位置での重力とから生じる。
【0057】
2つの画像捕捉装置21は、制御装置24の制御キャビネットに配置され、かつそれに接続されている処理ユニット22と通信する。言うまでもなく、検出装置20は、共通のハウジング内に配置された画像捕捉装置21および処理ユニット22を備えてもよい。処理装置22が、演算ユニットに、および制御装置24のデータ記憶装置に、純粋なソフトウェアアプリケーションとして実装されることも可能である。言うまでもなく、エスカレータ1内の検出装置20の個々の部品を分散方式で配置することもまた可能である。
【0058】
図2は、検出装置20によって実行することができる本発明の実施形態による方法の主要な方法ステップを図2Aから図2Cに詳細に概略的に示す。
【0059】
すでに図1に示されているように、図2Aの検出装置20の画像捕捉装置21は、前進移動経路14と図示されていない戻り移動経路との間でガイドレール12に対して静止して配置される。画像捕捉装置21は、半球状の透明保護カバー23を有する。汚れおよびほこりから透明保護カバー23を定期的に清掃するために、本例では圧縮空気ブローガンとして示されている清掃装置18が設けられる。
【0060】
図2Aはさらに、回転バンド10の一部、さらに正確には、ステップバンド10の2つのトレッド要素9を示している。2つのトレッド要素9のうちの1つは、ドラッグローラ13を失い、それにより、そのトレッド面29の傾斜を引き起こしている。
【0061】
明確にするために、トレッド要素9の両側に配置されたコンベヤチェーン11、およびそれらを接続するステップ軸26、ならびにコンベヤローラ42を支持するガイドレール12の図は省略されている(これらの構成要素は図3に示されている)。トレッド要素9のドラッグローラ13は、図示された2つのガイドレール12上で案内される。ガイドレール12のうちの1つは基準マーク30を有し、これも画像捕捉装置21によって検出することができる。画像捕捉装置21は常に同じ位置に静止して配置されているため、基準マーク30と画像捕捉装置21との間の位置平衡化は必要ではない。しかし、空間画像を作成する場合、トレッド要素9はガイドレール12および画像捕捉装置21に対して移動するため、ここでは、それぞれ空間座標x,y,zによって表される位置平衡化および割り当てが必要となる。これは、以下で説明するように、基準マーク30を介して実行することができる。
【0062】
図2Bでは、図2Aに示されるステップバンド10の部分のトレッド要素9の空間画像40が、それぞれ点線および画像点によって概略的に示されている。さらに、対応する仮想空間41が一点鎖線によって示されている。空間画像40は、例えば、レーザスキャナまたは飛行時間カメラであり得る画像捕捉装置21によって作成される。デジタル画像40を生成するこれらの画像捕捉装置21は、仮想ゼロ点から延びる各画像点P’が空間画像座標x’,y’,z’およびベクトル座標によってそれぞれ定義される複数の画像点P’を介して、3次元構造ならびにその画像表面および縁部を検出する。
【0063】
静止構成要素も同時に画像化することができる。本例では、ガイドレール12の一部と、ガイドレール12上に基準マーク画像30’として設けられた基準マーク30とを同時に画像化した。前述の仮想ゼロ点は、例えば、基準マーク画像30’の中心とすることができる。
【0064】
空間画像40は、処理ユニット22に送信される(図1を参照)。処理ユニット22では、空間画像40の少なくとも1つの領域27’、例えばトレッド要素9の立ち上がり下縁27の画像が選択される。選択は、処理ユニット22に保存された基準に従って、例えば、摩耗または損傷の場合にその元からのまたは意図された位置からの最大のズレが予測される領域に基づいて行われる。
【0065】
処理ユニット22は、電子データ記憶装置39から、割り当てられた比較領域27’’を検索する。比較領域27’’は、例えば、データ記憶装置39から検索することができ、仮想座標x’’,y’’,z’’によって定義され、その表面および縁部が、元の位置の回転バンド10の一部の(限界値によって変更された)空間画像に対応する仮想空間41の一部である。元の位置と見なされることは、摩耗、損傷および汚染による位置の変化を示す前のこの部分の初期条件である。仮想空間41には、仮想基準マーク30’’が存在する。図2Bに示される仮想空間41は、比較領域27’’として機能し得るものの一例としてのみ機能する。したがって、例えば、図示された仮想空間41全体を比較領域27’’として使用することができる。ただし、限界値によって空間的に拡張されたトレッド要素9の個々の縁部27または表面のみが、比較領域27’’として仮想基準マーク30’’に関して保存される場合もあり得る。言うまでもなく、回転バンド10の他の構成要素も比較領域27’’内で画像化することができる。
【0066】
さらに、基準マーク画像30’と、明確に識別可能な点、例えば、立ち上がり下縁27の点P、またはそれぞれ選択された領域27’の検出された画像点P’との間の空間画像座標x’,y’,z’は、処理ユニット22で決定することができる。空間画像を作成する際に、トレッド要素9の点Pが基準マーク30に対して空間座標x,y,zを有する場合、論理的には、同様に画像化される、基準マーク30’に対する空間画像40上に画像化される画像点P’の空間画像座標x’,y’,z’は、空間距離座標x,y,zと同一である。理想的には、明確に識別可能な点Pが選択される。
【0067】
画像捕捉装置21によって任意の時点で空間画像40が作成される場合、空間画像40の選択された領域27’が、仮想基準マーク30’’に対して対応する比較領域27’’として、基準マーク画像30’に対して正確に同じ空間画像座標x’,y’,z’を有するならば、それは純粋に偶然である。したがって、第1のステップでは、対応する比較領域27’’に対する選択された領域27’の割り当てが行われる。
【0068】
さらに正確には、例えば、基準マーク画像30’および仮想基準マーク30’’を用いて、対応する比較領域27’’のそれに対応する仮想点P’’に対する画像点P’の空間位置差Δを算出しなければならず、算出された位置差Δを用いて、選択された領域27’の画像点P’の座標を変換しなければならない。点対称方式で作成された空間画像40に起因する可能性のある光学的歪みも考慮しなければならない。例えば、前述の割り当てによれば、新しい無積載のステップバンド10のトレッド要素9の空間画像40は、仮想空間41とほぼ一致し、選択された領域27’は、割り当てられた比較領域27’’とほぼ一致する。比較領域27’’は、割り当てられた選択された領域27’よりも常に限界値だけ大きいため、ほぼ一致している。
【0069】
第2のステップでは、選択された領域27’の画像点P’が、割り当てられた比較領域27’’内にまだあるかどうかを決定することができる。
【0070】
この比較を図2Cに概略的に示す。割り当てにより、比較領域27’’と選択された領域27’とが互いに重なり合い、最大のズレを決定できるようになる。本例では、トレッド要素9の空間画像40は、角度βおよびγによって示される許容不能な方式で仮想空間41からのズレを生じている。選択された領域27’として選択されたトレッド要素9の立ち上がり下縁27は許容不能な角度のズレβを有するため、検出装置20は制御装置24の注意を促すアラーム信号を発生し、制御装置24は回転バンド10を直ちに停止させ、所定の位置に維持する。明らかに分かるように、空間画像40のいくつかの領域、例えば空間画像40のサイドチーク31’の下縁は、割り当てられた比較領域31’’を越えて突出している。したがって、サイドチーク31’のこの下縁も選択され得ることとなる。空間画像40のさらに多くの領域27’,31’が選択され、明確に割り当て可能な比較領域27’’,31’’と比較されることは、それらの輪郭に関しては同等であるが、それらの位置に関しては必ずしも同等でないことを意味し、移動バンド10のズレ、ひいては技術的問題をさらに正確に検出することができる。
【0071】
図3は、回転バンド10の一部としてのトレッド要素9を示している。トレッド要素9のトレッド面29は水平に整列しているが、このトレッド面は、図3では誇張して示され、かつ角度ψによって示されている傾斜を有する。意図された移動方向に対するこの傾斜の考えられる原因は、異なる長さのコンベヤチェーン11をもたらすコンベヤチェーン11上の摩耗の不規則な兆候であり得る。トレッド要素9の傾斜は、隣接する欄干ベース4とトレッド面29の側縁36との間の間隙を拡大させ、それにより、物体または使用者の手足が容認できないほど捕捉されやすくなる可能性がある。傾斜を検出するために、空間画像40に捕捉されたトレッド面29の側縁36および横縁37を選択することができ、図示されていない基準点画像を介して、対応する比較領域36’を割り当てることができ、側縁および横縁と比較領域36’とを比較することができる。
【0072】
図1の例に基づいて、側縁36および横縁37と、それぞれ、これらの側縁36および横縁37の画像を含む選択された領域とは、比較領域36’’の所定の限界を越えてまだ拡がっていないことが明らかである。しかし、側縁36および横縁37のいくつかの位置は、比較領域36’’のこれらの限界にすでに近い。好ましくは、検出装置20は、解析ユニット38を備えた電子処理ユニット22を備える。解析ユニット38により、比較領域36’’の限界に対する選択された領域の表面または縁部の位置を解析することができ、位置予約部ψ、または本例では傾斜の角度ψを決定することができる。決定された位置予約部ψに基づいて、および/または以前に決定され保存された複数の位置予約部ψまたは角度ψの履歴を解析することにより、次の保守日を決定することができる。これにより、結果として生じる重大な損傷の原因となり得る差し迫った損傷が早期に検出され、その発生が監視される。
【0073】
解析ユニット38によって保守関連であると分類された位置予約部ψから、実行される可能性が高い作業ステップと、保守に必要となる可能性が高い保守材料、本例ではそれらのチェーンローラ17を含むコンベヤチェーン11とを決定することができる。場合により、これは、例えば解析ユニット38によって自動的に実行することもできる。
【0074】
図1に示す手すり5のたるみ28は、全く同じ方法で監視することができる。ここで、割り当てられた比較領域は管状の仮想空間であり、その中心縦軸は、動作の開始中に存在する手すり5のこの部分の曲げに対応する。過度に張力をかけられた手すり5は、割り当てられた比較領域の上限を越えて突出し、不十分な張力がかけられた手すり5は、下限を越えて突出する。
【0075】
すでに述べたように、エスカレータまたは動く歩道の固定部品に配置された位置決定装置42を設けることもできる。位置決定装置42は、トレッド要素9の特徴的な表面、縁部もしくはマーク、または回転バンド5、10の手すり部分の特徴的な表面、縁部もしくはマークを検出する。図3では、ガイドレール12の1つに位置決定装置42としてプッシュスイッチが配置されている。ドラッグローラ13の軸が位置決定装置42を通過すると直ちに、位置決定装置42は、該位置決定装置42に対する捕捉された表面、縁部またはマークの現在の位置に応じて、画像捕捉装置21をトリガするトリガを生成する。これにより、トレッド要素9の空間画像が、固定部品に対して、ガイドレール12とほぼ同じ位置に作成される。言い換えれば、空間画像は実際には異なるトレッド要素9を示している。ただし、それらはいずれも、周囲の固定部品との関係でほぼ正確に同じ位置で捕捉されている。したがって、適用可能な場合、空間画像の歪みの補正を省略することができ、基準マークを介した位置平衡化の完了直後に、比較領域との比較を直接実行することができる。
【0076】
基準マークを介して、必要な割り当ておよび補正をいつでも行うことができるため、位置決定装置42の起こり得る誤動作は実際には問題ではない。これにより、検出装置の可用性が大幅に向上するため、エスカレータまたは動く歩道の可用性も向上する。
【0077】
図4は、学習動作に適した境界体積要素32の可能な構成を示している。この境界体積要素32は、例えば、限界値を表す取り付け部品33,34,35が取り付けられる通常のトレッド要素9である。境界体積要素32は、回転バンド10に挿入され、画像捕捉装置21に向かって移動される。画像捕捉装置21によって作成された空間画像は、図2で説明した基準マーク画像30’も含み、例えば、画像捕捉装置21による点対称撮像に起因する歪みを補正することにより、処理ユニット22によって処理することができる。データ量を削減し、記憶資源を節約するために、この処理された空間画像の輪郭線のみを仮想空間41としてデータ記憶装置39に保存してもよい。次いで、この仮想空間41の個々の領域を選択し、割り当て可能な比較領域27’’,31’’として保存することができる。
【0078】
特定の例示的な実施形態を例示することによって本発明を説明してきたが、例えば、個々の例示的な実施形態の特徴を組み合わせること、および/または例示的な実施形態の個々の機能ユニットを交換することによって、本発明の知識において、多数のさらなる実施形態の変形例を作成することができることは明らかである。例えば、エスカレータのステップの本体の明確に識別可能な特徴的な部分が瞬間的に存在するかどうかに関して。空間の特定の位置を連続的に監視することなどによって、レーザスキャナ自体を位置決定装置としてもよい。捕捉時間は、手すりによってもトリガすることができる。ただし、手すりには、トリガをトリガする本体の特徴的な部分としてマークを設ける必要がある。分かりやすくするために、図1から図4では、信号送信手段、電源ラインなどの図はほとんど省略されている。しかし、それらは、本発明による監視装置を備えるエスカレータが誤動作なく使用されるために必然的に存在しなければならない。したがって、対応して構成されたエスカレータは、本特許請求の範囲に含まれる。
【0079】
最後に、「含む(including)」、「備える(comprising)」などの用語は他の要素またはステップを除外するものではなく、「a」または「one」などの用語は複数を除外するものではないことに留意されたい。特許請求の範囲中の参照符号は、限定として解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4