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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】半導体放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
G01T1/24
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019557677
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018050334
(87)【国際公開番号】W WO2018130487
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】17150780.9
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519249033
【氏名又は名称】オックスフォード インストゥルメンツ テクノロジーズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンス アンデルッソン
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092448(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021171(WO,A1)
【文献】特開2014-239215(JP,A)
【文献】特開2006-276016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体放射線検出器アセンブリであって、
放射線を受け取るための前面と後面とを有する検出器チップであって、シリコンドリフト検出器(SDD)を備える、検出器チップと、
可撓性基板であって、前記検出器チップの前記後面に取り付けられている前面を有する中央部分と、該中央部分から延びており且つ前記検出器チップから離れて突き出るように曲げられている複数のストリップと、を有する可撓性基板と、を備え、
前記複数のストリップ全体が可撓性であり、
前記可撓性基板は、複数の接触ピンの1つに対する電気的結合と機械的取り付けのための、前記中央部分から前記ストリップの遠位端部に向かって前記ストリップの表面上を延びる複数の導電性トラックを備え、
前記検出器チップは前記導電性トラックの少なくとも1つに電気的に結合されている、半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項2】
更にベースプレートを備え、該ベースプレートは前記検出器チップに向かってベースプレートから突き出す複数の前記複数の接触ピンを有する、請求項1に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項3】
導電性トラックと接触ピンとの間の電気的結合は、
はんだ付け接続部と、
溶接接続部と、
ワイヤーボンディング接続部と、
導電性接着剤による接続部と、の内の1つを含む、請求項1又は2に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項4】
複数の導電性トラックは、
前記中央部分から前記ストリップの側方端部に向かって前記可撓性基板の後部表面上を延びる第1の導電性トラックと、
前記複数の接触ピンに対する電気的結合のための、前記ストリップの遠位端部において又は前記側方端部の付近において前記可撓性基板の前部表面上に備えられている第2の導電性トラックと、
各々のストリップ内における、前記第1の導電性トラックと前記第2の導電性トラックのそれぞれ1つの間の電気接続部のための、前記可撓性基板を通る導電性ビアと、を備える請求項1~3の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項5】
前記検出器チップと前記導電性トラックの少なくとも1つとの間の電気的結合は、前記可撓性基板の前記中央部分内の開口部を通して設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項6】
前記可撓性基板は、ポリマー層の上に配置されている可撓性金属層を備える可撓性プリント回路基板(PCB)を備え、前記可撓性金属層は前記導電性トラックを形成するためにパターン形成されている、請求項1~5の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項7】
前記可撓性基板は、該可撓性基板と前記検出器チップとの間の距離を増大させるために、スペーサーを介して前記検出器チップに取り付けられている、請求項1~6の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項8】
前記スペーサーは、零個以上の金属層と零個以上のセラミック層とを有する少なくとも1つの層を備える、請求項7に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項9】
前記可撓性基板は、前記中央部分の少なくとも一部を構成する硬質部分を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項10】
前記半導体放射線検出器アセンブリの外方側に位置する前記ストリップの遠位端部の一部分が前記半導体放射線検出器アセンブリの内方側に位置する前記接触ピンの一部分に接触するように、前記ストリップが湾曲されている、請求項1~9の何れか一項に記載の半導体放射線検出器アセンブリ。
【請求項11】
半導体放射線検出器アセンブリを提供する方法であって、
可撓性基板材料の一片の少なくとも1つの表面の所望の位置に導電性トラックを配置するステップと、
前記可撓性基板材料の一片を切断するステップであって、第1の面の上の検出器チップの取り付けのための中央部分と、該中央部分から延びており、且つ、該中央部分からストリップの遠位端部に向かって延びる少なくとも1つの表面上にそれぞれの導電性トラックを有する複数のストリップとを含む形状を有する、可撓性基板の形にする、ステップと、
前記複数のストリップ全体が可撓性であり、
前記可撓性基板の第1の面から離れて突き出るように前記ストリップを曲げることと、
前記可撓性基板の前記中央部分の第1の面に検出器チップを取り付け、前記検出器チップと少なくとも1つの前記導電性トラックとの間の電気接続部を生じさせるステップと、を含み、
前記検出器チップはシリコンドリフト検出器(SDD)を備える、方法。
【請求項12】
複数の接触ピンのそれぞれ1つに対して前記ストリップの遠位端部内の前記導電性トラックを取り付けるステップを更に含み、前記複数の接触ピンの前記導電性トラックと前記ストリップとの間の機械的取り付けと電気的結合とを実現する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記半導体放射線検出器アセンブリの外方側に位置する前記ストリップの遠位端部の一部分が前記半導体放射線検出器アセンブリの内方側に位置する前記接触ピンの一部分に接触するように、前記ストリップを湾曲するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体放射線検出器のための構造及び製造方法に関する。特に、本発明の様々な具体例は、良好な検出性能を提供し、且つ、構造的に堅牢で信頼性があるが、製造が依然として容易である、半導体放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体放射線検出器は、その直ぐ近くの放射線を示す1つ又は複数の電気信号を発生させるために適用されることが可能である装置である。典型的な用途では、半導体放射線検出器は、信頼性が高い形で入射放射線を検出するように、可能な限り自由に放射線が放射線検出器の前面(又は前側)に入射することを可能にする形で、放射線検出装置内に配置されている放射線検出器アセンブリの一部分として備えられており、及び、この放射線検出器アセンブリの後面が、検出された放射線の分析のための1つ又は複数の電気信号を中継するために、放射線検出器具に機械的に連結され且つ電気的に接続されている。
【0003】
半導体放射線検出器を使用する器具の一例が、例えば、物体が含む1つ又は複数の材料に応じてその物体を認識し分類するための、現場で使用されることが可能である手持ち式又は他の形の携帯可能な分析器装置である。幾つかの例として、携帯可能な分析器装置は、くず鉄置き場、廃棄場、及び、リサイクリングセンターのような場所で使用されるだろう。こうした分析器装置では、放射線検出器は、典型的には、分析対象のサンプルに対して接近するか又は直接的に接触するように、分析器装置のユーザーが放射線検出器を含む分析器装置の一部分を運ぶことを可能にするために、分析器装置の前端部内に配置されている。
【0004】
こうした用途に適している半導体放射線検出器の非限定的な例が、PINダイオードとシリコンドリフト検出器(SDD)とを含む。半導体放射線検出器の効果的な動作が、検出器缶によって気密性筐体の中に封入されている検出器ヘッドとして、放射線検出器と、これに隣接した電気接点とを備えることから利益を得る。典型的には、この検出器缶の前面が放射線窓を備え、この放射線窓を通過して放射線がその筐体の内側の放射線検出器の中に入ることが可能であり、且つ、これと同時に、この放射線窓は、その装置の作動環境からの例えば湿気、空気、可視光、及び、紫外(UV)光が放射線検出器に到達することを防止する。検出器ヘッドの裏面が、検出器ヘッドを、機械的に、電気的に、及び、熱的に、放射線検出器具に対して連結することを可能にする、取り付け手段と接触ピンとを提供する。典型的には、ペルチェ素子のような熱電クーラーも検出器ヘッド内に収容されている。
【0005】
図1は、検出器ヘッドとヘッダーとの幾つかの構造要素を示すために、放射線検出器具に検出器ヘッドをさらに連結するいわゆるヘッダーに対して連結されている検出器ヘッドの断面図を示し、及び、この検出器ヘッドとヘッダーは全体として「放射線検出器アセンブリ」と呼ばれることがある。しかし、図1の図面は、図解の明瞭性を向上させるための単純化された図面であり、及び、想定可能な中間遮蔽層と、本発明の背景的情報を理解する上で必ずしも必要不可欠ではない他の構成要素又は特徴とが省略されている。
【0006】
図1の具体例では、検出器ヘッドは、検出器チップ101と、セラミック基板102と、熱電クーラー103とを備える。検出器チップ101は、セラミック基板102の片方の(第1の)面の上に取り付けられており、一方、セラミック基板102の反対側の(第2の)面は熱電クーラー103に取り付けられている。ヘッダー上にアセンブリされる時には、検出器ヘッドは、突出取付ボルト105を有し且つ検出器缶106によって覆われている金属ベースプレート104によって支持されており、及び、したがって、ベースプレート104と検出器缶106は検出器ヘッドの周囲に気密性の筐体を実現する。検出器缶106の前面は、入射放射線が検出器チップ101の中に入ることを可能にする放射線窓107によって覆われている開口部を有する。
【0007】
図1は、さらに、ベースプレート104内の穴の中を通る接触ピン108を示し、及び、この接触ピン108は、それぞれの絶縁体スリーブ109によってベースプレート104から電気的に絶縁されている。ベースプレート104と、取り付けボルト195と、接触ピン108と、絶縁体スリーブ109は、ヘッダーの構成要素と見なされてもよい。それぞれのボンディングワイヤー110が、各々の接触ピン108の上端部をセラミック基板102の頂部表面上のボンディングパッド111に接続する。さらに別のボンディングワイヤー(図示されていない)が、基板102の区域と検出器チップ101上のそれぞれの接触パッドとの間の電気接続部を実現するために加えられてもよい。電気接続部を実現するための方法としてワイヤーボンディングを使用するという選択が、低い熱伝導率という本来的な利点を含み、及び、こうした低い熱伝導率は、接触ピン108からセラミック基板102への熱伝導と、さらには検出器チップ101への熱伝導とを回避する上で、有益である。
【0008】
セラミック基板102は、典型的には、酸化アルミニウム(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ベリリウム(BeO)、又は、類似したセラミック材料で作られている。セラミック基板102は、典型的には、上述したボンディングワイヤーによって実現される電気接続部によって、検出器チップ101とこれに連結されている構成要素との間の電気接続部を生じさせるために、パターン形成されている導電性層によってさらに覆われている。検出器チップ101に加えて、増幅器、前置増幅器、アナログデジタル変換器(ADC)、温度センサー、湿度センサー、及び/又は、圧力センサーのようなさらに別の構成要素が、セラミック基板102上に配置されてもよい。
【0009】
典型的に検出器ヘッド内に含まれているが図1には示されていない追加的な構成要素の一例として、スペーサーが、セラミック基板102と熱電クーラー103との間に含まれてもよい。言い換えると、セラミック基板102は、スペーサーを介して熱電クーラー103に取り付けられてよい。このスペーサーは、所望の厚さの適切なセラミック材料(例えば、Al23、AlN、BeO)の層として実現されてもよく、及び、このスペーサーは、別の構成要素(例えば、増幅器、前置増幅器、アナログデジタル変換器(ADC)、温度センサー、湿度センサー、及び、圧力センサーのうちの1つ又は複数)を、スペーサー内の開口部又は凹みの位置に位置合わせされている位置においてセラミック基板102の第2の面の上に取り付けることと、こうした構成要素とセラミック基板102との間の(例えばワイヤーボンディングによる)電気接続部を実現することを可能にする、1つ又は複数の開口部又は凹みを含む。セラミック基板102から離れている構成要素として、この例では説明されているが、他の例では、セラミック基板102の第2の面が、上述した形で、スペーサーとしての役割を果たす部分を実現するように形成されてもよい。
【0010】
これらのタイプのセラミック基板を生産するために使用される技術が、一般的に、厚膜、薄膜、低温同時焼成セラミック(LTCC)、又は、高温同時焼成セラミック(HTCC)と呼ばれている。セラミック基板102のために使用されるセラミック材料(例えば、Al23、AlN、BeO)が、相対的に高い熱コンダクタンス(言い換えると、相対的に低い熱抵抗)を有する点と、検出器チップ101のための材料として一般的に使用されるシリコンの熱膨張率(CTE)に近い熱膨張率を有する点とにおいて、良好な熱性能を有する。
【0011】
良好であり且つ信頼性が高い放射線検出性能が、本来的に、あらゆる検出器ヘッド、及び/又は、検出器ヘッドを使用するあらゆる放射線検出器アセンブリにとっての重要な側面であるが、他の重要な側面が、検出器ヘッドの製造、及び/又は、放射線検出器アセンブリの中への検出器ヘッドの組み込みに関する、低コスト性及び簡易性を含む。一般的に、良好な検出感度のために、及び、したがって検出器ヘッドの良好な性能のために、可能な限り大きい検出器チップ面積を実現することが有益である。検出器チップの表面が大きければ大きいほど、より多くの放射線が収集でき、したがって、入射放射線に対するより広範囲の露出によって、検出性能を向上させる。この点に関して、例えば図1の検出器ヘッド構造では、セラミック基板102と、したがって、さらに検出器チップ101とが、接触ピン108によって画定される区域よりも面積が小さくなければならないが、これは、ボンディングウェッジが、検出器ヘッドの接触ピン108とセラミック基板102と検出器チップ101の相互間の電気接続部をボンディングワイヤーによって生じさせることを可能にするように、接触ピン108の頂部端部と、セラミック基板102上と検出器チップ101上とのボンディングパッドとに対して、上方から接触することが可能でなければならないからである。
【0012】
検出器チップ101の面積の増大のための簡単な解決策が、増大した表面積を有する検出器チップを実現するために検出器ヘッドのサイズを増大させること(例えば、円形の検出器チップの場合の直径の増大)であるだろうが、しかし、検出器ヘッドの増大したサイズは、例えば、現場条件において手持ち式の分析器装置内の放射線検出器アセンブリを使用する場合に、分析中のサンプルに十分に接近した形で放射線検出器アセンブリを配置することを、より困難なものにする恐れがあるので、こうしたアプローチは実際的な制約に必然的に遭遇することになる。さらに、実際的な構成では、接触ピン108によって画定される面積が、常にベースプレートの面積(例えば、直径)よりも著しく小さくなければならない。ベースプレート104から接触ピン108を気密封止することと電気的に絶縁することが、それぞれの接触ピン108を完全に取り囲み且つ特定の最小壁厚さを有する絶縁体スリーブ109の使用を必要とし、これと同時に、ベースプレート104を貫通する穴とベースプレート104の端縁との間に特定の厚さの縁が必要とされる。
【0013】
検出器ヘッドの全体的サイズに比べて検出器チップの面積を増大させるための既知の解決策が図2に示されており、この図では、図1の具体例に対する相違点を示す要素だけが、それぞれの参照番号で示されている。図2の具体例では、それぞれのボンディングワイヤー210が、接触ピン208とセラミック基板202との間の電気接続部を実現するために、各々の接触ピン208の側方表面を、セラミック基板202の側方表面上に配置されているそれぞれのボンディングパッド211に接続する。したがって、前部表面からのボンディングパッド211(即ち、図1のボンディングパッド111)をセラミック基板202の側方表面に移動させることが、より大きな面積の検出器チップ201を使用することを可能にする。このアプローチは、接触ピン208によって画定される面積よりも僅かに小さいだけの面積を検出器チップ201が有することを可能にする。さらに、図2の検出器ヘッドは、図1に関して上述したスペーサーを備えてもよい。
【0014】
検出器ヘッドの全体的サイズに比べて検出器チップの面積を増大させるための別の既知の解決策が図3に示されており、この図では、図1又は図2の具体例に対する相違点を示す要素だけが、それぞれの参照番号で示されている。図3の具体例では、セラミック基板が、検出器チップ301が一方の面においてフリップチップボンディングされている第1のセラミック基板302を備え、これと同時に、第2のセラミック基板312が第1のセラミック基板302の反対側の面の上に取り付けられている。第2のセラミック基板312の外側端縁が、ボンディングパッド(図3には示されていない)が中に配置されている空洞を備えており、及び、それぞれのボンディングワイヤー310が各々の接触ピン308の頂部をそのボンディングパッドの1つに接続する。このアプローチでは、実際には、第2のセラミック基板312によって覆われている面積が、(頂部からのワイヤーボンディングを可能にするために)接触ピン308によって画定されている面積よりも僅かに小さく、一方、検出器チップ301は、第2のセラミック基板312の面積よりも大きいか又はこの面積に等しい面積を有し、且つ、さらには、接触ピン308によって画定されている面積よりも大きいか又はこの面積に等しい面積を有するだろう。図3の具体例では、第2の基板312は、図1に関して上述したスペーサーとしてその第2の基板312を追加的に機能させるように、適切に配置された開口部を備えてもよい。
【0015】
検出器チップのサイズの増大を可能にすることによって検出性能の側面に対処するが、これと同時に、図2図3の両方の具体例は、製造の複雑性が増大した検出器ヘッド構造を結果的にもたらす。この点に関して、検出器ヘッドの全体的サイズに比べて検出器チップ面積を増大させるためのさらに別の既知の解決策が、幾つかの具体例によって特許文献1に詳細に述べられているが、この特許文献で説明されている構造は、さらに、利便性が高い製造プロセスも可能にする。この特許文献において示されている具体例では、面積が増大した検出器チップを実現することを可能にする構造的特徴が継ぎ板(joint plate)の使用を含み、この継ぎ板は、検出器ヘッドの構成要素を含むサブアセンブリを、ヘッダーの構成要素を含む別のサブアセンブリに対して互いに機械的に連結する働きをし、且つ、これらのサブアセンブリの組立形態において放射線検出器アセンブリを構成するサブアセンブリの相互間の電気接続部を実現する。
【0016】
しかし、良好な放射線検出性能を有すると同時に、低コストで簡単な製造プロセスを容易に実現する構造を有する、検出器ヘッドが必要とされ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第2881995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的が、検出器ヘッドの全体的なサイズ及び/又は面積に対して相対的に大きな検出器チップ面積を実現することを可能にし、且つ、容易な製造と使用時の高信頼性とを可能にする、検出器ヘッド構造を提供することである。
【0019】
次では、本発明の幾つかの実施態様の単純化した概要が、本発明の様々な実施態様による携帯用の分析器の基本的な理解を容易にするために示されている。しかし、この概要は、本発明の広範な概説ではない。この概要は、本発明の基本的な要素又は決定的に重要な要素を示すものでもなく、本発明の範囲を叙述するものでもない。次に示す要約は、本発明の例示的な実施態様のより詳細な説明に対する前置きとして、単に本発明の幾つかの着想を単純な形で示すにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
例示的な一実施形態では、半導体放射線検出器アセンブリが提供され、この半導体放射線検出器アセンブリは、放射線を受け取るための前面と後面とを有する検出器チップと、可撓性基板であって、検出器チップの後面に取り付けられているその前面を有する中央部分と、中央部分から延びており且つ検出器チップから離れて突き出るように曲げられている複数のストリップとを備える可撓性基板と、を備え、可撓性基板は、複数の接触ピンの1つに対する電気的結合と機械的取り付けのための、中央部分からストリップの側方端部に向かってストリップの表面上を延びる複数の導電性トラックを備え、検出器チップは、導電性トラックの少なくとも1つに電気的に結合されている。
【0021】
別の例示的な実施態様では、半導体放射線検出器を製造する方法が提供され、この方法は、可撓性基板材料の一片の少なくとも1つの表面の所望の位置に導電性トラックを配置することと、第1の面上の検出器チップの取り付けのための中央部分と、この中央部分から延びており且つ中央部分からそのストリップの側方端部に向かって延びる少なくとも1つの表面上にそれぞれの導電性トラックを有する、複数のストリップとを含む形状を有する、可撓性基板の形に、可撓性基板材料の一片を切断することと、可撓性基板の第1の面から遠ざかるように突き出る形に、ストリップを曲げることと、可撓性基板の中央部分の第1の面に検出器チップを取り付けて、検出器チップと少なくとも1つの導電性トラックとの間の電気接続部を生じさせることとを含む。
【0022】
本発明の特質として認識される新規の特徴が、特に添付されている特許請求の範囲で説明されている。しかし、本発明自体は、その構成と動作方法との両方に関して、本発明の追加的な目的及び利点と共に、以下の特定の実施形態の説明から、添付図面を参照しながら理解される時に、最良の形で了解されるだろう。
【0023】
本発明の実施形態が、具体例によって、添付図面の各図において、非限定的に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】既知の放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図2】別の既知の放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図3】さらに別の既知の放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図4】例示的な一実施形態による放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図5】例示的な一実施形態による放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図6】例示的な一実施形態による可撓性基板を概略的に示す図である。
図7】例示的な一実施形態による可撓性基板を概略的に示す図である。
図8】例示的な一実施形態による、ヘッダー上にアセンブリされた可撓性基板を概略的に示す図である。
図9】例示的な一実施形態による、放射線検出器アセンブリの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。
図10】例示的な一実施形態による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図4が、放射線検出器アセンブリを実現するためにヘッダー上に配置されている、例示的な一実施形態による検出器ヘッドの幾つかの要素を概略的に示す。この例では、検出器ヘッドは、検出対象の放射線を受け入れるための前面と、検出器ヘッドの他の構成要素に対する取り付けのための後面とを有する、検出器チップ401を備える。検出器チップ401の前面は、さらに、前部表面、第1の面、又は、第1の表面と呼ばれることがあり、一方、後面は、さらに、後部表面、後面、又は、後部表面と呼ばれることがある。検出器チップ401は、動作上において検出器チップ101、201、301に類似しており、及び、したがって、例えばSDD又はPINダイオードのような、所望のタイプの既知の検出器チップが使用されてもよい。
【0026】
図4に示されているように、検出器チップの後面は、可撓性基板402の第1の面の上に取り付けられており、及び、この第1の面は、さらに、図4の検出器ヘッド構造のアセンブリ形態において可撓性基板402の前面と呼ばれることもある。検出器チップ401は、さらに、検出器チップ401によって検出される放射線を表す電気信号を、ヘッダーに対して、及び、さらには、検出器ヘッドとヘッダーとによって実現される放射線検出アセンブリが取り付けられている放射線検出器具に対して提供することを可能にするように、可撓性基板402に電気的に結合されている。
【0027】
可撓性基板402の第2の面、即ち、第1の面に対して反対側に位置している面は、熱電クーラー403に取り付けられる。可撓性基板402の第2の面は、さらに、検出器ヘッド構造のアセンブリ形態において、可撓性基板402の後面と呼ばれることがある。熱電クーラー403は、図1から図3の既知の放射線検出器アセンブリに関連して示されている熱電クーラー103に動作的に類似していてもよく、及び、例えばペルチェ素子のような、所望のタイプの熱電クーラーが使用されてもよい。
【0028】
図1に関連して説明されているように、ヘッダー上にアセンブリされる時に、検出器ヘッドは、検出器缶406によって覆われているベースプレート404によって支持され、及び、したがって、ベースプレート404と検出器缶406とが、検出器ヘッドの周りに気密性の筐体を実現する。ベースプレート404は、典型的には金属で作られており、及び、検出器ヘッドから離れて突き出る取り付けボルト405を有する。検出器缶406の前面は、検出器チップ401の前面に入射放射線が入ることを可能にするように、放射線窓407によって覆われている開口部を有し、一方、この開口部は、例えば空気、湿気、可視光、及び、紫外光が検出器ヘッドの周りの筐体の中に入ることを防止する。図4は、さらに、ベースプレート404内の穴を通る接触ピン408を示し、この接触ピン408は、それぞれの絶縁体スリーブ409によってベースプレート404から電気的に絶縁されている。ベースプレート404と、取り付けボルト405と、接触ピン408と、絶縁体スリーブ409は、ヘッダーの構成要素と見なされてもよい。
【0029】
可撓性基板402は、その可撓性基板402の第1の面(前面)上に取り付けられている検出器チップ401と、ヘッダーとの間の電気接続部を可能にするように、その可撓性基板402の表面の少なくとも1つの上の導電性トラックを備えている。可撓性基板402は、その中央部分から外方に延びる複数のストリップを有するように形成されており、及び、これらのストリップの各々は、その表面上にそれぞれの導電性トラックを備えており、及び、これらのストリップは、検出器チップ401から離れて突き出るように、及び、したがって可撓性基板402の第1の面(前面)から離れて突き出るように、曲げられている。これらのストリップは、互いに同一であるか又は概ね同一である長さを有す。この曲げられたストリップは、検出器ヘッドとヘッダーとの間の電気的結合を可能にし、且つ、検出器ヘッドとヘッダーとの間の機械的取り付けを可能にするか又は補助する。特に、例えば、ストリップの遠位端部に位置するか又は遠位端部に近接している導電性トラックが接触ピン408の面に接触させられるように、突出ストリップ内の導電性トラックが接触ピン408のそれぞれ1つに接触するように配置されている。突出ストリップ上の導電性トラックと接触ピン408との間の機械的取り付けと電気的結合とが、例えば、はんだ付け、溶接、導電性接着剤、又は、ワイヤーボンディングによって、実現されてもよい。
【0030】
一例としては、可撓性基板402の少なくとも1つの表面の上の導電性トラックは、可撓性基板402の第2の表面(後部表面)上に備えられている。こうした配置では、可撓性基板402の中央部分が、可撓性基板402の後面と可撓性基板402の後部表面上の導電性トラックとの間の電気接続部が例えばワイヤーボンディングによって実現されることを可能にする開口部を有し、及び、これと同時に、ヘッダーに対する電気接続部が、例えば接触ピン408の側方表面における、接触ピン408のそれぞれ1つと接触する形に、ストリップの遠位端部に又はこの遠位端部の付近に第2の表面を配置することによって実現される。
【0031】
上述した具体例の変形では、中央部分において、及び、少なくともストリップの近位端部とおいて、導電性トラックが可撓性基板402の第2の表面(後部表面)内に備えられており、且つ、このストリップの遠位端部では導電性トラックが可撓性基板402の第1の表面(前部表面)内に備えられているように、可撓性基板402の第1及び第2の表面の両方の上に導電性トラックが存在している。各々のストリップでは、そのストリップの近位端部における第2の表面上の(第1の)導電性トラックと、そのストリップの遠位端部における第1の表面上の(第2の)導電性トラックとの間の電気接続部が、それぞれのストリップを通る導電性ビアによって実現される。さらに、この解決策は、可撓性基板402の中央部分内の開口部を通した、検出器チップ401の後面と可撓性基板402の後部表面上の導電性トラックとの間の(例えば、ワイヤーボンディングによる)電気接続部を可能にし、これと同時に、ストリップの遠位端部に位置しているか又はこの遠位端部に近接している第1の表面を、例えばそれぞれの接触ピン408の側方表面において、接触ピン408のそれぞれ1つと接触させるように配置することによって、ヘッダーに対する電気接続部が実現される。
【0032】
別の具体例では、検出器チップ401と可撓性基板402との間の電気接続部は、これらの第1の面(前面)の間に実現されてもよい。この点に関して、検出器チップ401の第1の面(前面)に対する電気接続部を実現することを可能にするために、専用の導電性トラックが、可撓性基板402の中央部分の第1の面(前面)の上に備えられてもよい。さらに、これらの電気接続部が例えばワイヤーボンディングによって実現されてもよい。この電気接続部を形成することを可能にするために、検出器チップ401が、別の導電性トラックを可撓性基板402の前面上に露出したままにする切り込み又は凹みを備えてもよく、又は、さもなければ、検出器チップ401は、可撓性基板402の前面上に別の導電性トラックを露出状態のままにする形状及び/又はサイズを有してもよい。この具体例では、可撓性基板402の中央部分内の開口部は必ずしも必要とはされないが、可撓性基板402の第1の表面(前部表面)上の専用の導電性トラックと、可撓性基板402の後部表面上の導電性トラックとの間の電気接続部は、可撓性基板402(の中央部分)を通る導電性ビアによって実現されてもよい。
【0033】
さらに別の具体例では、検出器チップ401と可撓性基板402との間の電気接続部は、可撓性基板402の中央部分から延びる別のストリップを使用することによって、実現されてもよい。さらに別の湾曲可能なストリップが、少なくともその遠位端部において又はその遠位端部の付近に、その第1の表面上の導電性トラックを有し、この導電性トラックは、さらに別のストリップを通る導電性ビアによって、可撓性基板402の第2の面の上の導電性トラックに対して電気的に接触させられている。さらに別のストリップが、そのストリップの遠位端部の導電性トラックが電気接続部を実現するために検出器チップ401の第1の表面(前部表面)上の所望の位置と接触させられるように、曲げられている。このような構成は、検出器チップ401の第1の表面(前部表面)に対する電気接続部を生じさせるために可撓性基板402の第1の表面上の導電性ストリップが露出した状態のままにされることを必要とはせず、これと同時に、可撓性基板402の中央部分内の開口部も必ずしも必要とされない。
【0034】
可撓性基板402の第2の表面(後部表面)上に導電性トラックを備えることが、図5に概略的に示されているように、可撓性基板402の(中央部分の)後面上の1つ又は複数の検出器ヘッド構成要素の簡便な取り付けを可能にする。この具体例は図4の具体例に類似しているが、しかし、可撓性基板402と熱電クーラー403との間の第1のスペーサー412と、可撓性基板402の中央部分の第2の面(後面)に取り付けられている構成要素413とを追加的に含む。この第1のスペーサー412は、熱電クーラー403に対する構成要素413(及び/又は構成要素413の電気接続部)の接触を防止する役割を果たす。
【0035】
この第1のスペーサー412は、所望の厚さの適切なセラミック材料(例えば、Al23、AlN、BeO)で作られていてもよく、さらに、この第1のスペーサー412は、第1のスペーサー412内の少なくとも1つの開口部又は凹みの位置に空間的に合致する位置において可撓性基板402の第2の面(後面)上に構成要素413(例えば、増幅器、前置増幅器、ADC、温度センサー、湿度センサー、及び、圧力センサー)を取り付けることと、構成要素413と、可撓性基板402の第2の面(後面)上の導電性トラックとの間の電気接続部を(例えば、ワイヤーボンディングによって)実現することを可能にする、少なくとも1つの開口部又は凹みを含む。一例として、単一の構成要素413と第1のスペーサー412内の単一の開口部又は凹みとを使用して本明細書で説明されているが、一般的に、第1のスペーサー412内の1つ又は複数の開口部又は凹みの位置に空間的に一致する可撓性基板402の第2の面(後面)に取り付けられている1つ又は複数の構成要素が存在してもよい。
【0036】
既知の解決策で使用されているセラミック基板102、202、302、312に置き換えるように可撓性基板402を使用することは、次に概説する幾つかの利点を提供する。
・可撓性基板402を含む検出器ヘッド構造は、セラミック基板102、202、302、312に依存する構造に比較して、製造がより低コストであり且つより迅速である。
・可撓性基板402の中央部分から延びるストリップを介した取り付けと電気接続部とが、既知の構造に比較して改善された信頼性と付加的な機械的強度とを実現する。
・X線蛍光分光法のために用いられる検出器ヘッド内で使用される時に、適正に設計される場合に、可撓性基板402の製造のために使用される材料の故に、セラミック基板102、202、302、312の使用に比較して、基板からの望ましくないX線蛍光の減少を実現する。
・可撓性基板402の中央部分から延びるストリップは、はんだ付けのような単純な技術を使用する、ヘッダーに検出器ヘッドを連結するための利便性と融通性が高い方法を実現すると同時に、検出器チップ401の大きな面積を実現する。
・可撓性基板402の中央部分から延びるストリップは、熱電クーラー403を可撓性基板402に取り付ける前に、及び/又は、検出器ヘッドをヘッダー上にアセンブリする前に、検出器チップ401と可撓性基板402とによって形成されるサブアセンブリをテストするための、利便性の高い手段を提供する。
【0037】
1つの具体例では、可撓性基板402は、少なくとも1つの面の上の可撓性金属層を有するポリマー層から成る、可撓性プリント回路基板(PCB)として提供される。可撓性PCB402の少なくとも1つの面の上の金属層は、可撓性PCB402の第1の面の上に取り付けられている検出器チップ401とヘッダーとの間の所望の電気接続部を可能にする導電性トラックを形成するように、パターン形成されている。1つの具体例では、可撓性PCB402のポリマー層はポリイミドから成ってもよく、及び、その厚さは8-100マイクロメートル(μm)の範囲内であってもよい。しかし、材料としてのポリイミドと、本明細書で示されている厚さの範囲とが非限定的な例であるにすぎず、他の適切な材料、及び/又は、例示している範囲の外の厚さが、代わりに使用されてもよいということに留意されたい。一例では、可撓性PCB402上の金属層は銅(Cu)で作られているか又は銅を含んでもよく、及び、9-70μmの範囲内の厚さを有してもよい。しかし、材料としてのCuと、本明細書に示されている厚さの範囲とが、非限定的な例としての役割を果たすだけであり、これらの代わりに、他の適切な導電性金属と、この例示されている範囲の外の厚さとが使用されてもよい。
【0038】
図6から図8は、非限定的な例による可撓性基板402の構造を示す。この点に関して、図6は、第1の面から離れて突き出るようにストリップを曲げる前の、可撓性基板402の第2の表面、即ち、可撓性基板402の後部表面を示す。これに関して、それぞれ3つのストリップは、可撓性基板402の中央部分から左方、下方、右方に延びる。これらのストリップの各々は、近位端部からその第2の表面上の遠位端部に延びるそれぞれの導電性トラック411を有し、及び、さらに、可撓性基板402とヘッダーの接触ピン408の1つとの間の電気接続部を可能にするように、ストリップ(図6には示されていない)の遠位端部において又は遠位端部の付近において、第1の表面上に配置されている導電性トラックに対して、ストリップを通る導電性ビアによって電気的に接続されている。
【0039】
図6は、さらに、可撓性基板402の中央部分内の開口部を示し、及び、さらには、それぞれのストリップ上の導電性トラック411の各々が可撓性基板402の中央部分の第2の面の上の区域を覆うように延び、これによって、例えば開口部を通るワイヤーボンディングによって、検出器チップ401の後面と可撓性基板402の第2の面(後面)との間の1つ又は複数の電気的接触部を実現するということを示す。
【0040】
図7は、可撓性基板の中央部分から延びるストリップが第1の面から離れて突き出し終わった後の可撓性基板402を示す。図6の説明図に見てとれるように、可撓性基板402の中央部分は可撓性基板402の第1の面として機能し、及び、この第1の面は、検出器ヘッドのアセンブリ形態において、検出器チップ401の後面が取り付けられる前面としての役割を果たす。この時点で、導電性トラック411の各々は、可撓性基板402の第1の面上に残る中央部分内に残留するその部分に対する電気接続部を実現し続けながら、それぞれのストリップの表面上の可撓性基板402の第1の面の上に取り付けられるように、可撓性基板の第1の面(前部面)から離れて延び、したがって、検出器チップ401から離れて延びる。
【0041】
図8は、ヘッダーに連結されている図7の可撓性基板402を示す。特に、ヘッダーに向かって可撓性基板402から突き出るストリップ上の導電性トラック411は、検出器ヘッドに向かってベースプレート404を通って突き出すそれぞれの接触ピン408の面に連結されている。図8は、さらに、可撓性基板402の中央部分内の開口部を通してその一部分が見てとれる、可撓性基板402の第2の面の上に取り付けられている第1のスペーサー412を示す。
【0042】
上述した検出器ヘッド構造の別の変形例では、可撓性基板402は、例えば、基板の中央部分又はその中央部分の一部分が基本的に剛直であるように、部分的に可撓性である基板によって置き換えられてもよく、これと同時に、ストリップを形成するその基板の少なくとも一部分が、基板の第1の表面から離れて突き出るようにストリップを曲げることを可能にするために、可撓性基板として備えられている。こうした部分的に可撓性である基板はいわゆるリジッドフレックスPCB(rigid-flex PCB)であり、この場合に、この基板の硬質部分は、グラスファイバーエポキシ積層物、又は、これに相当する剛性材料で作られているか、含むか、又は、構成されており、及び、約1ミリメートル(mm)又は1ミリメートル未満の厚さを有するだろう。
【0043】
上述した検出器ヘッド構造の別の変形例では、図9の具体例に示されているように、第2のスペーサー414が、検出器チップ401と可撓性基板402(又は、部分的に可撓性である基板)との間に備えられてもよい。第2のスペーサー414を含むことが、可撓性基板402上の導電性トラックと検出器チップ401との間のクロストークを原因とするノイズを排除するか又は減少させるために、可撓性基板402と検出器チップ401との間の距離を増大させるように、幾つかの配置において有益であるだろう。さらに、検出器ヘッドがX線蛍光分光法のために使用される時には、このスペーサーは、検出器ヘッドを使用して測定される放射線スペクトルに干渉することがある、可撓性基板402内の導電性(金属)トラックによって引き起こされる不要なX線蛍光発光を排除するか又は減少させる役割を果たすだろう。
【0044】
このスペーサーは、例えば、単一層のセラミック要素として、又は、純粋な金属の単一層として提供されてもよい。他の具体例では、このスペーサーは、複数層のセラミック要素として、複数の金属層の要素として、又は、1つ又は複数の金属層と共に1つ又は複数のセラミック層を含む要素として、提供されてもよい。適切なセラミック材料の非限定的な例が、Al23、AlN、BeOを含み、一方、適切な金属の非限定的な例が、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、及び、ベリリウム(Be)を含む。一例としては、接地電位に電気的に接続されている高導電性の第2のスペーサー414が使用されてもよい。第2のスペーサー414の構造及び材料の選択が、例えば、スペクトルから排除されるように、又は、スペクトルにおいて減衰させられるように、所望の蛍光線(例えば、波長)に依拠してもよい。
【0045】
以下では、図10に示す流れ図を参照して、上述した検出器ヘッドを製造するための方法を説明する。この点に関しては、次の諸段階が含まれるだろう。
・ブロック502に示されているように、可撓性基板材料の一片の少なくとも1つの表面の所望の位置に導電性トラックを配置する。これは、完成した可撓性基板402内に導電性トラックが備えられることになっている位置において、可撓性基板材料の少なくとも1つの表面を金属化することを含んでもよい。こうした位置の例が、幾つかの具体例によって上述されている。
・ブロック504に示されているように、第1の面の上の検出器チップ401の取り付けのための中央部分と、この中央部分から延びており且つ少なくとも1つの表面上にそれぞれの導電性トラックを有する複数のストリップとを含む、形状を有する可撓性基板402の形に、可撓性基板材料の一片を切断する。適切な形状の一例が図6に示されている。
・ブロック506に示されているように、可撓性基板402の第1の面から離れて突き出るように、可撓性基板402の中央部分から延びるストリップを曲げる。
・ブロック508に示されているように、検出器チップ401を可撓性基板402の第1の表面(の中央部分)に取り付けて、検出器チップ401と可撓性基板402の導電性トラック(の少なくとも1つ)との間の電気接続部を生じさせる。上述したように、検出器チップ401と可撓性基板402との間の電気接続部は、複数の方法の中の1つを使用することによって、例えば、検出器チップ401の第2の面(後面)と可撓性基板402(の中央部分)の第2の面(後面)との間のワイヤーボンディング接続部を実現することによって、実現される。
・ブロック510に示されているように、導電性トラックと接触ピンとの間の機械的取り付けと電気的結合とを実現するために、可撓性基板402の第1の表面から離れて突き出るストリップ内の導電性トラックを、ヘッダーのベースプレート404から反対方向に突き出る接触ピン408のそれぞれ1つに取り付ける。上述したように、ストリップの表面上の導電性トラックは、それぞれの接触ピン408の側方表面に接触するように配置されてもよく、及び/又は、導電性トラックと接触ピン408との間の接続が、例えば、はんだ付けによって、溶接によって、導電性接着剤によって、又は、ワイヤーボンディングによって、実現されてもよい。
【0046】
上記において概説した方法は、本発明の範囲から逸脱することなしに、幾つかの方法において変化させられるか又は補足されてもよい。この点に関する非限定的な一例として、ブロック508において、検出器チップ401は、例えば図9の具体例に関して説明されているように、検出器チップ401と可撓性基板402との間に配置されている第2のスペーサー414を介して可撓性基板に取り付けられてもよい。別の非限定的な具体例では、ブロック508とブロック510との間において、熱電クーラー403が、突き出るストリップの導電性トラックを接触ピン408に取り付ける前に、(互いに直接的に取り付けられているか、又は、第2のスペーサー414を介して互いに取り付けられている)検出器チップ401と可撓性基板402とのサブアセンブリに取り付けられてもよい。この例の変形として、ブロック508とブロック510との間において、少なくとも1つの構成要素413が、可撓性基板402に対してその可撓性基板の後面上において取り付けられ且つ電気的に結合され、その次に、第1のスペーサー412を介して可撓性基板402(の中央部分)の後面に対して熱電クーラー403の取り付けが実現される。
【0047】
上記の説明において述べられている特徴が、明示的に説明されている組み合わせ以外の組み合わせの形で使用されてもよい。機能が特定の特徴に関連して説明されているが、これらの機能は、説明されているか否かに係わらず、他の特徴によって行われることが可能であってもよい。特徴が特定の具体例に関連して説明されているが、これらの特徴は、さらに、説明されているか否かに係わらず、他の実施形態に存在してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10