(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】スポーツ用品を製造する方法およびスポーツ用品
(51)【国際特許分類】
B29D 35/10 20100101AFI20220801BHJP
【FI】
B29D35/10
(21)【出願番号】P 2020100568
(22)【出願日】2020-06-10
(62)【分割の表示】P 2017226892の分割
【原出願日】2017-11-27
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】10 2016 223 567.2
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ピーター ニュルンベルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー ナイルス ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】フランク プリソク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ローナー
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー クラウス ドラマー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク フェッター
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム ルフト
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ホヘンシナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ノーバート スターク
(72)【発明者】
【氏名】ウィンフリッド シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マークス ホヘンバーガー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン リントナー
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド タウシフ
(72)【発明者】
【氏名】トム オー ヘアー
(72)【発明者】
【氏名】パリークシット ゴスワーミー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジョン ラッセル
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-084901(JP,A)
【文献】特開昭59-011231(JP,A)
【文献】特開平06-261802(JP,A)
【文献】実開平05-046303(JP,U)
【文献】特開平06-178702(JP,A)
【文献】実開昭49-064151(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0035966(US,A1)
【文献】中国実用新案第2822277(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 35/00- 35/14
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ
靴の少なくとも一部を製造する方法であって、
a.型の中に、前記スポーツ
靴のための第1の材料を堆積させるステップと、
b.前記型を移動させ、前記型内の前記第1の材料の分布を変更するステップであって、当該型を移動させることは、前記型を前後に移動させること、および/または、前記型を上下に移動させることを含む、ステップと、
c.前記第1の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融させてから凝固させるステップ
であって、前記第1の材料は前記スポーツ靴の甲革の中間層を形成する、ステップと、
d.前記型内の前記第1の材料の凝固した部分の上に、前記スポーツ
靴のための第2の材料を堆積させるステップと、
e.前記型を移動させ、前記型内の前記第2の材料の分布を変更するステップであって、当該型を移動させることは、前記型を前後に移動させること、および/または、前記型を上下に移動させることを含む、ステップと、
f.前記第2の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融させてから凝固させるステップ
であって、前記第2の材料は前記スポーツ靴の前記甲革の外側層を形成する、ステップと
を含み、
前記型は、前記スポーツ靴の
前記甲革の
前記外側層の構造を決定するようになされている構造内壁を備え
、前記構造は前記中間層と同じ構造である、前記方法。
【請求項2】
ステップc.の前記溶融させてから凝固させるステップは、前記型の局所的な熱源および冷却源を用いることによって、前記第1の材料の選択部分を選択的に溶融させてから凝固させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型の局所的な熱源および冷却源を用いることによって、選択的に溶融させてから凝固させる前記ステップは、前記型を2次元または3次元的に移動させつつ行われる、請求項2に記載の方法
【請求項4】
ステップa.の前記型の中に前記第1の材料を堆積させるステップは、前記型の選択領域の中に前記第1の材料を選択的に堆積させるステップを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の材料を選択的に堆積させるステップは、前記型が移動した後に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択的に堆積させるステップは、3cm未満の堆積の精度で実行される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の材料および/または前記第2の材料を堆積させる前および/または後に、前記型内に1つまたは複数のインサートを位置付けするステップをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記型は、完成したスポーツ靴の雌型である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記型は、ロボットアームによって移動させられ、このロボットアームは、前記型の3次元移動を実行することができる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記型は、多軸取付け式の型である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記第1の材料および前記第2の材料は、発泡粒子および/もしくは繊維である、または(ii)前記第1の材料および前記第2の材料は、5mm未満の直径を有する顆粒、微細顆粒、もしくは粉末である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(i)前記第1の材料および前記第2の材料は、発泡粒子である、または(ii)前記第1の材料および前記第2の材料は、5mm未満の直径を有する顆粒、微細顆粒、もしくは粉末である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1の材料および第2の材料は、熱可塑性エラストマ製の発泡粒子である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマ、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、および熱可塑性ブタジエンブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願をもたらすプロジェクトは、合意書第645987号の下で欧州連合のホライズン2020研究イノベーションプログラムの資金助成を受けたものである。本発明は、スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造する方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法によって製作されるスポーツ用品に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、スポーツ靴などのスポーツ用品の構成部品を製作するための確立された製造方法である。射出成形は、広範なプラスチック材料から多種多様なパーツを形成することを可能にする。一般に知られているように、射出成形は、1つまたは複数の加熱されたバレルの中に1つまたは複数のプラスチック材料を供給するステップと、混合するステップと、溶融した材料を型キャビティに押し込むステップとを含み、その後冷却しキャビティの形状に硬化させるようになっている。
【0003】
射出成形を用いる様々な方法は、例えば、米国特許第3,915,608号、日本国出願公開第11-75803号、日本国出願公開第11-39002号、および米国特許第8840825号によって知られている。さらなる先行技術は、米国特許第4,671,755号、米国特許第5,894,023号、独国特許出願公開第102005003074号、および欧州特許第2176059号に開示されている。
【0004】
多数のプラスチック材料が、先行技術において知られており、その中からスポーツ用品
用の部品を製造することができる。例えば、スポーツ靴用の靴底は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ゴム、ポリプロピレン(PP)、またはポリスチレン(PS)から製造することができる。これらの異なる材料の各々は、それぞれのタイプのスポーツ靴の特定の要求に応じて、特定のタイプのスポーツ靴の靴底に多かれ少なかれよく適している異なる特性の特定の組み合わせをもたらす。例えば、TPUは、大変耐摩耗性があるとともに引裂き抵抗があり、発泡EVAは、大きな緩衝性をもたらす。
【0005】
射出成形は、一般に、注入中に溶融状態にある材料を用いて行うが、先行技術の中には個別の粒子などがキャビティに注入される他の技法も存在する。例えば、出願人は、欧州特許出願公開第2786670号明細書、欧州特許出願公開第2767183号明細書、欧州特許出願公開第2767181号明細書、欧州特許出願公開第2845504号明細書において、複数種のランダムに配置された粒子で構成されている靴底用の変形要素を開示した。また、国際公開第2016/077221号パンフレットは、ジェット押出成形による履物およびその構成部品の構造体の製造を開示する。ここでは、繊維として凝固させる材料のジェットまたは流れが使用され、この繊維はそれらが集められるときに2次元または3次元のウェブを形成する。このウェブは、フィルム、膜、またはマットの性質であり得る。
【0006】
先行技術から知られる他の例は、独国特許出願公開第3916874号明細書、独国特許出願公開第4006648号明細書、および独国特許出願公開第4107454号明細書に開示されるようなスラッシュプロセス、または独国特許出願公開第102007019862号明細書に開示されるような回転成形であり、成形部品は、高温の金属金型の壁へ粉末材料を施すことによって粉末材料から成形することができる。したがって、金属金型は、粉末材料がともに焼結できるように粉末材料の融点まで加熱される。その後、金属金型は、粉末材料を凝固させるために急激に冷却され、成形部品は、金属金型から取り外すことができるようになっている。このようにして、金属金型は、次の成形部品を成形するために加熱される。特に、回転成形では、主に、均一の厚さを有する金属金型全体を覆う材料層が製造される。
【0007】
しかしながら、知られている方法の共通の欠点は、典型的には、最初に別々に製作され、次いで相互接続されなければならないいくつかの異なる構成部品が必要とされることである。後者のステップは、一般に、大量の手動作業を伴うとともに、潜在的に有害な溶剤および/または接着剤の使用を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第3,915,608号明細書
【文献】日本国出願公開第11-75803号明細書
【文献】日本国出願公開第11-39002号明細書
【文献】米国特許第8840825号明細書
【文献】米国特許第4,671,755号明細書
【文献】米国特許第5,894,023号明細書
【文献】独国特許出願公開第102005003074号明細書
【文献】欧州特許第2176059号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2786670号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2767183号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2767181号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2845504号明細書
【文献】国際公開第2016/077221号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第3916874号明細書
【文献】独国特許出願公開第4006648号明細書
【文献】独国特許出願公開第4107454号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007019862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の根底にある課題は、従来の製造方法の上記欠陥のいくつかを少なくとも一部克服することが可能であるスポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の方法によって少なくとも一部解決される。一実施形態では、スポーツ用品の少なくとも一部を製造する方法は、(a)型の中に第1の材料を堆積させるステップと、(b)型内の第1の材料の分布を変更するように型を振動させるステップとを含む。
【0011】
本発明者らは、型内の第1の材料について所望の分布を得るために振動移動が有益であると気づいた。これは、溶融した第1の材料に当てはまり得るが、特に粒状物質に当てはまる。型の振動は、例えば、大きい加速等で、型を揺さぶることによって、(例えば、1つまたは複数の軸周りに)型振り回すことによって、前後移動することによって、および上下移動することによって実現することができ、それによって平衡点を中心にして発振が起こる。これらの振動は、周期的またはランダムであり得るとともに、ロボットアームによって実行することができる。したがって、振動移動は、不良の本底をもたらすいかなる望ましくないキャビティも防ぐのに有益でもある。ロボットアームに代わって、別の振動構成要素、例えば人間の作業者によって操作される機械的加振機が、振動を実行してもよいとも考えられる。したがって、容易に自動化され得る振動によって、短時間に型のほぼ全ての空洞の中への粒子の信頼できる分布を改善することができる。結果として、処理サイクルの時間が減少する。また、振動によって最終的なスポーツ用品の不良のリスクを減少させることができるので、最終的なスポーツ用品の品質が改善される。
【0012】
しかしながら、振動は、第1の材料の特定の非均一な分布を成すように働くこともできる。例えば、型の振動移動が型を特定の方向に概して方向付けることと組み合わされる場合、靴用型のかかと部品だけに粒子が蓄積するような型内の第1の材料の選択的な分布が得られ得る。知られている回転式の成形過程と比較して、本発明による方法は、第1の材料の選択的分布による型の特定の領域の局所的カバーリングにより、はるかに有利であり得る。したがって、第1の材料の厚さは、機能化された性能特性を有するスポーツ用品が製造され得るように局所的に変わり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、型の振動は、型の2次元または3次元の移動を含むことができる。そのような一実施形態は、型が空間内で4つまたは6つの異なる方向に移動させられ得るとき、型内の第1の材料の分布の変更をさらに改善することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融するおよび/または凝固させるステップをさらに含むことができる。また、溶融するおよび/または凝固させるステップは、第1の材料の選択部分を好ましくは型の局所的な熱源および/または冷却源を用いることによって、または型に局所的に作用を及ぼすことによって、選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップを含むことができる。さらに、選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップは、型の2次元または3次元の移動を含むことができる。さらに、材料全体は、型表面の特定の部分だけが第1の材料
に接触している場合に一部加熱および/または冷却、あるいは調整された型の移動によって成すことができる型表面の定められた領域で溶融および凝固され得るとも考えられる。したがって、厚さを局所的に変更する上述の態様は、機能化された性能特性を有するスポーツ用品を製造するためにさらなる改善がされ得る。
【0015】
溶融するステップは、一部であってもよい可能性もある。例えば、第1の材料および/または第2の材料として発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)粒子を用いるときに、粒子の表面を溶融することだけが可能であり得る。
【0016】
また、例えば、局所的な熱源および/または冷却源が型の選択領域内で型の外側または型の内側に配置されている場合、第1の材料、例えば粉末または顆粒は、型の選択領域内で選択的に溶融されおよび/または凝固されることができる。型の外側に配置された局所的な熱源および/または冷却源については、型を2次元または全3次元で移動させることによって、選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップを実行することができる。これは、規則的な射出成形または回転成形との比較で基本的に異なる製造手法であり、型の全部は、材料で満たされ、型全体にわたって均一に溶融および/または凝固されている。本発明者らは、そのような選択的な溶融および/または凝固がスポーツ靴などのスポーツ用品の製造に特に役立ち、最終的な製品は複数の異なる材料から作製されるとともに、第1の材料の選択的な処理が望ましいことを発見した。また、局所的な加熱は、製造プロセスの電力消費を減少させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、型の中に材料堆積させるステップは、型の選択領域の中に第1の材料を選択的に堆積させることを含み得る。また、第1の材料を選択的に堆積させるステップは、型の移動を伴い得る。さらに、選択的に堆積させるステップは、3cm未満、好ましくは2cm未満、より好ましくは1cm未満の精度で実行することがえきる。これらの実施形態の全部は、正確に投与された量でかつ型の所望の領域内で第1の材料を与えることによって製造プロセス全体を改善するための同じ思想に従っている。本発明者らは、製造プロセスのサイクル時間全体をかなり減少させるために、堆積の精度について示された数値は、前堆積させるステップの十分な精度と高い製造速度との間の良好な折り合いをもたらし得ることを見出した。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記の材料を堆積させる方法は、開いた型の中になされ、良好なアクセス性を与えている。型は、加熱されおよび/または冷却され、堆積中に移動させられ、それによって材料の定められた位置付けを可能にする。材料の堆積および付着後、型は、閉じることができ、さらなる材料層を以下に説明されるように生成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、(c)型の中に第2の材料を堆積させるステップと、(d)型内の第2の材料の分布を変更するように型を振動させるステップと、(e)第2の材料の少なくとも一部を溶融するおよび/または凝固させるステップとをさらに備えることができ、また、第2の材料は、第1の材料の少なくとも部分的に溶融および/または凝固した部分の上へ少なくとも部分的に堆積させることができる。型を振動させるステップは、例えば、上述した通りの同じやり方で実現することができる。
【0020】
本発明者らは、1つの単一型内で合成するときに、第1の材料の後に第2の材料を堆積させることによって完全なスポーツ用品、例えばスポーツ靴を製造することが可能になると気づいた。例えば、第1の材料が本底の一部または完全な本底であるように成形されている場合、第2の材料は、スポーツ靴の中底の一部または完全な中底であるように成形することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の材料は、型の中に堆積させることができる。そして、第1の材料は、少なくとも部分的に溶融することができ、その後に第1の材料は、一部凝固される。型の壁に近い第1の材料の一部だけが凝固され、第1の材料の残りは、溶融状態および/または粒状状態にとどまっている可能性があり得る。次のステップでは、型は移動させることができ、第1の材料の溶融部分および/または粒状部分は、型内で別の領域へ移動させることができ、少なくとも部分的に溶融および/または凝固される。この手順によって、第1の材料は、プロセスの始めに型の中に第1の材料を堆積させることだけによって、型内に連続的に分布することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の材料および/または第2の材料は、発泡粒子および/または繊維で構成することができる。例えば、第1の材料および/または第2の材料は、処理中に、定められた部分領域の発泡をもたらす化学発泡剤を含むことができる。また、第1の材料および第2の材料は、同じ材料クラス、特に熱可塑性エラストマからのものであり得る。さらに、熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマ、好ましくはポリエーテルエステル、および/またはポリエステル/エステル、熱可塑性コポリアミド、好ましくは熱可塑性スチレン、および/またはブタジエンスブロックコポリマーからなる群から選択することができる。特に、TPUに基づくエラストマについては、熱可塑性エラストマは、30Aから83Dのショア硬さを有することができる。
【0023】
発泡粒子は、優れた緩衝特性をもたらし、大変軽量である。TPUは、比較的協働が容易である。さらに、TPUは、形状が安定しており、張力および圧縮応力の下で変形するが、応力のない状態ではその元の形状に大抵戻るエラストマである。したがって、TPUは、スポーツ靴用の底などの圧力を受けるスポーツ用品の作製にとてもよく適している。TPUは、固体材料または発泡粒子の形態であっても、サッカー選手用の脛当などの衝撃に規則的にさらされるスポーツ用品に同様に適している。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の材料および/または第2の材料は、好ましくは5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満の直径を有する顆粒、微細顆粒、または粉末とすることができる。そのような実施形態は、上記材料の選択的分布あるいは選択的溶融および/または凝固にとってさらに有利であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の材料および/または第2の材料を堆積させる前および/または後に、型内に1つまたは複数のインサートを位置付けるステップをさらに含むことができる。そのような実施形態は、1つまたは複数の要素、例えば中底用の支持要素が、型内に位置付けられ得ることを可能にし、それによって、底の特定の部分に特定の性能特性を与えるスポーツ用品の製造をさらに改善することができる。例えば、支持要素は、着用者の移動中にねじり力に対してスポーツ靴を支持することができる。特定の部分、例えばヒールキャップが靴の甲革の表面に直接成形できるように、第1の材料および/または第2の材料を堆積させる前に靴の甲革を挿入できることも可能になる。結果として、スポーツ用品を製造するための全サイクル時間は、そのようなさらなる方法ステップを用いてさらに短縮することができる。
【0026】
1つまたは複数のインサートを有することは、上述した振動ステップとの相乗効果ももたらす。振動は、第1の材料および/または第2の材料がインサートの周りに所望の通りに分布し、したがって最終製品の品質を改善することを保証する。
【0027】
型は、本質的に完成したスポーツ用品、特に脛当、ボール、またはスポーツ靴の雌型であり得る。型は、構造内壁、特にスポーツ靴の甲革および/または底の外観を決定するようになされている構造内壁を備えることができる。したがって、前述の製作方法は、数種
類の材料から作製されるスポーツ用品を提供するだけでなく、スポーツ用品のデザインを調整するオプションも与えることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、型は、ロボットアームによって移動することができ、ロボットアームは、型の3次元移動を実行することができる。そのようなロボットアームは、異なる処理ステーションの間で型を簡単に移送することができるだけでなく、型に上記の振動をかけることもでき、したがって本発明の態様を有効に実施する。
【0029】
いくつかの実施形態では、型は、多軸取付け式の型とすることができる。好ましくは、型は、6自由度の動きを有することができる。
【0030】
さらなる態様によれば、本発明は、スポーツ用品、特にスポーツ靴に関するものであり、スポーツ用品の少なくとも一部は、上記の方法のうち1つによって製造される。
【0031】
本発明は、以下の各実施形態を含む。
【0032】
[1]スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部(400)を製造する方法であって、
a.型(105;205;305;405)の中に第1の材料を堆積させるステップと、
b.型(105;205;305;405)を振動させ、型(105;205;305;405)内の第1の材料の分布を変更するステップとを含む方法。
【0033】
[2]型(105;205;305;405)を振動させるステップは、型(105;205;305;405)の2次元または3次元の移動を含む、[1]に記載の方法。
【0034】
[3]第1の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融するおよび/または凝固させるステップをさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
【0035】
[4]溶融するおよび/または凝固させるステップは、好ましくは型(105;205;305;405)の局所的な熱源および/または冷却源を用いることによって、または型(105;205;305;405)に局所的に作用を及ぼすことによって、第1の材料の選択部分を選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップを含む、請求項[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【0036】
[5]スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造する方法であって、
a.型(105;205;305;405)の中に第1の材料を堆積させるステップと、
b.好ましくは型の局所的な熱源および/または冷却源を用いることによって、または型に局所的に作用を及ぼすことによって、第1の材料の選択部分を選択的に少なくとも一部溶融するおよび/または凝固させるステップとを含む方法。
【0037】
[6]好ましくは型の局所的な熱源および/または冷却源を用いることによって、または型に局所的に作用を及ぼすことによって、選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップは、型の2次元または3次元の移動を含む、[4]または[5]に記載の方法
【0038】
[7]型(105;205;305;405)の中に材料を堆積させるステップは、型(105;205;305;405)の選択領域の中に第1の材料を選択的に堆積させるステップを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
【0039】
[8]第1の材料を選択的に堆積させるステップは、型(105;205;305;405)の移動を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
【0040】
[9]選択的に堆積させるステップは、3cm未満、好ましくは2cm未満、より好ましくは1cm未満の精度で実行される、[7]または[8]に記載の方法。
【0041】
[10]c.型(105;205;305;405)の中に第2の材料を堆積させるステップと、
d.型を振動させ、型(105;205;305;405)内の第2の材料の分布を変更するステップと、
e.第2の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融するおよび/または凝固させるステップと
をさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
【0042】
[11]第2の材料は、第1の材料の少なくとも部分的に溶融および/または凝固した部分の上へ少なくとも部分的に堆積させられる、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
【0043】
[12]第1の材料および/または第2の材料は、発泡粒子および/または繊維で構成される、[10]または[11]に記載の方法。
【0044】
[13]第1の材料および第2の材料は、同じ材料クラス、特に熱可塑性エラストマ製である、[10]~[12]の1つに記載の方法。
【0045】
[14]熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマ、好ましくはポリエーテルエステルおよび/またはポリエステル、熱可塑性コポリアミド、好ましくは熱可塑性スチレンおよび/またはブタジエンブロックコポリマーからなる群から選択される、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
【0046】
[15]第1の材料および/または第2の材料は、好ましくは5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満の直径を有する顆粒、微細顆粒、または粉末である、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
【0047】
[16]第1の材料および/または第2の材料を堆積させる前および/または後に、型内に1つまたは複数のインサートを位置付けするステップをさらに含む、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
【0048】
[17]型(105;205;305;405)は、本質的に完成したスポーツ用品、特に脛当、ボール、またはスポーツ靴(400)の雌型(105;205;305;405)である、[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
【0049】
[18]型は、構造内壁、特にスポーツ靴(400)の甲革の外側層の構造を決定するようになされている構造内壁を備える、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
【0050】
[19]型(105;205;305;405)は、ロボットアーム(215;315;415)によって移動させられ、このロボットアームは、型(105;205;305;405)の3次元移動を実行することができる、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
【0051】
[20]型は、多軸取付け式の型である、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
【0052】
[21]スポーツ用品、特にスポーツ靴(400)であって、スポーツ用品の少なくとも一部が、[1]~[20]のいずれかに記載の方法によって製造される、スポーツ用品、特にスポーツ靴(400)。
【0053】
本発明の可能な実施形態については、以下の詳細な説明の中で下記図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明による型の可能な一実施形態を示す図である。
【
図2】スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造するシステムのための本発明の一実施形態の概略図である。図面の簡単な説明の部分
【
図3a】スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図である。
【
図3b】スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図である。
【
図3c】スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図である。
【
図3d】スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図である。
【
図3e】スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図である。
【
図4】スポーツ靴の少なくとも一部が本発明による方法によって製造される、スポーツ靴の可能な実施形態の概略図である。
【
図5a】少なくとも一部が本発明による方法によって製造される、スポーツ靴の可能な実施形態を示す図である。
【
図5b】少なくとも一部が本発明による方法によって製造される、スポーツ靴の可能な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の可能な実施形態および変形形態は、スポーツ用品、特にスポーツ靴を特に参照して以下に説明される。しかしながら、本発明の概念は、シャツ、パンツ、またはボール、ラケットなどのスポーツ用具のような任意のスポーツ用品であって、少なくとも一部が成形されるスポーツ用品に同一にまたは同様に適用することができる。また、任意の3次元部品を製造するために本発明の概念を使用することも考えられる。
【0056】
本発明の個々の実施形態が、以下により詳細に説明されることも留置されたい。しかしながら、これらの特定の実施形態に関連して記載されている解釈上の可能性および随意の特徴は本発明の範囲内の異なるやり方でさらに修正されたり互いに組み合わされたりしてもよく、個々のステップまたは特徴はそれらが当業者には不要であることが明らかである場合に省略することもできることは当業者には明らかである。冗長を防ぐために、先の章における説明の参照がなされ、これは以下の詳細な説明の各実施形態にも当てはまる。
【0057】
図1は、スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明による型105の可能な一実施形態を示す。型105は、(左から右へ)側部図、下部図、上部図といった3つの異なる図に示される。
【0058】
型105は、2つの主要部品、すなわち上部分110および下部分120を備える。例えば、上部分110は靴の甲革に対応し得るとともに、下部分120は靴底に対応し得る
。したがって、型105は、完成したスポーツ靴の雌型である。雌型105はスポーツ靴の一部、例えば靴底のためだけのものとすることができ、靴の甲革は例えば赤外線を用いた溶接によって別個の製造プロセスにおいて成形された靴底と接合されることも考えられる。
【0059】
また、雌型105の上部分110および下部分120は、ネジ、ナット、リベット、クランプ、磁石などの任意の適切な取付け手段によって互いに接続することができる。
図1に見られるように、雌型105の2つの部分110および120は、互いに接続するための一対の穴を備えることができ、この一対の穴は、上部分110と下部分120の間の接合を囲む雌型105のさらなる領域内に配置できるとともに、このさらなる領域に直交する領域内に配置することができる。例示の実施形態では、雌型105のかかと領域内に3つの穴があり、それぞれ側面かつ中央側で中足領域内に2つあり、雌型105の足指領域内に2つある。有利には、雌型105の上部分110および下部分120を取り付けるそのような手段は、上述したようにおよび以下より詳細に説明されるように、型内の第1の材料の所望の分布を得るために、成形過程の振動するステップについて高い安定性を与えることができる。
【0060】
図1中の右側に見ることができるように、雌型105の上部分110は、襟領域内に開口115を備える。この開口115は、雌型105の中に第1の材料および/または第2の材料を供給するために使用することができる。型105は、第1の材料および/または第2の材料を供給するために1つまたは複数の他の開口を備えることができるとも考えられる。さらにまたは代替として、第1の材料および/または第2の材料は、2つの部分110および120は、互いから分離させられているときに雌型105へ供給することができ、すなわち、開いた雌型105は、第1の材料および/または第2の材料で満足することができる。
【0061】
一実施形態では、雌型105は、付加製作法によって製作することができる。付加作製は、従来の型製造技法によって得ることができない、または製造するのが少なくとも困難であるまたは費用がかかる、とても細かい構造を生成することができる。したがって利点の1つは、雌型105の質量が、成形過程中に雌型の安定性を危うくすることなく、かなり減少させられ得ることである。結果として、雌型105のより低い熱容量を得ることができる。これは、雌型105を加熱するときにエネルギーの損失を減少させ、小さくなった熱容量がプロセスサイクルの終わりに雌型105の冷却を加速するので、より速い冷却プロセスももたらす。また、型の振動は、より容易に実施することができる。
【0062】
また、付加製作法は、レーザ焼結を含み得る。しかしながら、3Dプリンティング、光造形法(SLA)、選択的レーザ溶融法(SLM)または直接金属レーザ焼結法(DMLS)、選択的レーザ焼結法(SLS)、熱溶解積層法(FDM)などの他の付加製作法は、さらにまたは代替として雌型105を作製するために使用することができる。付加製作法は、雌型105がたった1つの主要部品からなることができるように使用され得るとも考えられる。
【0063】
さらに、雌型105は、ステンレス鋼合金、ステンレス熱間加工鋼、析出硬化型ステンレス鋼、工具鋼、アルミニウム合金、チタン合金、商業的な純チタン、熱間加工鋼、ブロンズ合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、特にコバルトクロムタングステン合金、銅合金、貴金属合金で構成することができる。さらにまたは代替として、耐久性および/または熱伝導性などの型についての適切な特性を材料が有するのであれば、任意の他の材料、または少なくとも2種類の材料の混合物が使用されてもよい。
【0064】
図1に見られるように、雌型105は、そのつま先領域内に保持手段130を備える。
そのような保持手段130は、雌型105内の第1の材料および/または第2の材料の分布を変更するために、例えば(
図1に示されていない)ロボットアームを振動させる装置と接続することができる。保持手段130は、ネジ、ナット、クランプ、磁石、または任意の他の適切な手段によってロボットアームと接続することができる。雌型105の一部分、例えば下部分120は、ロボットアームに永久的に固定することができ、またはロボットアームの一部であることさえもできるということも考えられる。保持手段130は、型105を振動させる装置の別の領域内、例えば、かかと領域内、中足領域内、雌型105の側面または中央側に配置することができるとも考えられる。さらにまたは代替として、複数の保持手段130を使用することもできる。
【0065】
一実施形態では、雌型105は、(
図1に示されていない)雌型105内の第1の材料の選択部分を選択的に溶融するおよび/または凝固させる方法ステップのための1つまたは複数の局所的な熱源および/または冷却源を備えることができる。そのような1つまたは複数の局所的な熱源および/または冷却源は、上述したように、例えば、雌型105の2つの部品を接続する手段の一対の穴内に配置することができる。それらは、例えば、抵抗加熱器、または炭素繊維ベースの加熱要素、あるいは熱を発生させる任意の他の手段を備え得る。他の加熱方法は、例えば、高周波加熱器、または蒸気加熱器であり得る。
【0066】
さらなる実施形態では、雌型105は、スポーツ用品が製造されるときにより柔軟性を有するようにより小さい部品に分割されるために、3つ以上の部品で構成することがきる。例えば、雌型105は、3つの雌型、例えばつま先部品、中足部品、およびかかと部品から構築することができる。他のオプションは、脛当を製造するためにそのような分割雌型を使用することもでき、それによって様々な雌型部品は、脚の様々な部分に適合されている。結果として、様々な雌型部品は、様々な脚のサイズおよび/または形状に適合するように交換可能であり得る。
【0067】
またさらなる実施形態では、雌型105は、上部分110内または任意の他の部品内に構造内壁を備えることができる。例えば、雌型105は、スポーツ靴の甲革の外側層の構造を決定するまたは少なくとも作用するためにその内面に溝および/または突出部を備えることができる。
【0068】
図2は、スポーツ用品、特にスポーツ靴の少なくとも一部を製造するシステム200についての本発明の一実施形態の概略図を示す。システム200は、型205の中に第1の材料および/または第2の材料を堆積させるステップと、型205内の第1の材料および/または第2の材料の分布を変更するように型205を振動させるステップと、第1の材料および/または第2の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融するおよび/または凝固させるステップといった前述の方法の1つまたは複数、特に一連の方法ステップを完全にまたは部分的に実行することができ、溶融するおよび/または凝固させるステップは、好ましくは型205局所的に作用を及ぼすことによって、第1の材料および/または第2の材料の選択部分を選択的に溶融するおよび/または凝固させるステップを含むことができる。以下には、本底および中底を含むスポーツ靴用の靴底を製造する方法が、さらに説明される。システム200は、好ましくは完全に自動的であることに留意されたい。しかしながら、方法ステップの一部またはさらには全部を実行するための人間の介在は除外されない。
【0069】
第1のステーション210では、本底のための第1の材料、例えばTPU粒子は、ロボットアーム215に接続されている型205に堆積させることができる。第1の材料および/または第2の材料は、粉末、顆粒、液体、または1つまたは複数の繊維、例えば、堆積の用意ができているTPUまたは任意の他の適切な材料、あるいは任意の他の形態で被覆されている繊維とすることができることも考えられる。プラズマ処理の適用などの適切
な技法によって繊維が機能化できるとも考えられる。さらにまたは代替として、型205は、2つ以上の部品を備えてもよく、および/または
図1中の雌型105を参照して説明されるような雌型としてもよい。さらに、第1の材料は、それが堆積できるように型205の中にハンドフィルすることができる。
【0070】
また、次いで、型205は、型205内の第1の材料の分布を変更するように第1のステーション210においてにおいて振動させることができる。型205を振動させることは、例えば、型205の揺さぶり、(例えば、1つまたは複数の軸周りに)型205の振り回し、非常に速い前後移動、および非常に速い上下移動などによって実現することができ、それによって平衡点を中心にして発振が起こる。これらの振動は、周期的またはランダムであり得るとともに、ロボットアーム215によって実行することができる。したがって、振動移動は、型205内の第1の材料の所望の均一な分布を得るとともに、不良の本底をもたらすいかなる望ましくないキャビティも防ぐのに有益である。別の振動構成要素、例えば第1のステーション210に設けられた人間の作業者によって操作される機械的加振機は、ロボットアーム215の代わりに振動を実行することができるとも考えられる。
【0071】
一実施形態では、第1の材料は、型205の選択領域の中に選択的に堆積させることができ、第1の材料を選択的に堆積させることは、型205の移動を伴い得る。例えば、ロボットアーム215は、本底用の第1の材料が型205の下部分に単に堆積できるように型205を位置付けることができる。さらに、例えば、成形される本底がつま先領域内よりもかかと領域内に厚い部分を備えるべきである場合、ロボットアーム215は、数度だけ、例えば10°だけ型205を傾けることができ、それによって第1の材料は、つま先領域内よりも型205のかかと領域内により多く堆積させることができる。結果として、最終的な本底は、つま先部分と比較してより厚いかかと部分を備える。また、第1の材料が型205のフル回転によって堆積できるように、型205は完全に閉じることができることも考えられる。
【0072】
別の実施形態では、第1の材料および第2の材料は、例えば異なる色、硬さ、または粒子サイズをある2つの異なる材料とすることができ、これは、この領域内の特定のデザインまたは機能特性を作り出すために、型の同じ領域内に堆積させることができる。
【0073】
さらにまたは代替として、先芯、ヒールキャップ、サイド補強要素、装飾要素、布地のソックス、特に不織物または編物のソックスなどの(
図2に示されていない)1つまたは複数のインサートは、スポーツ靴用の製造プロセス全体を加速させるように、および特定の技術特徴および/またはデザインを与えるように、第1の材料を堆積させる前および/または後に型205内に位置付けることができる。靴の甲革は、本底が靴の甲革へ直接成形することができるように、本底用の第1の材料が堆積させられる前に型205内に位置付けることができるとも考えられる。
【0074】
図2に概略的示されるように、次いで、ロボットアーム215は、加熱ステーション220へ第1の材料を閉じ込める型205を移送することができる。加熱ステーション220は、型205内の第1の材料を少なくとも部分的に溶融および/または融合するように働くことができる。例えば、熱は、赤外線「IR」源または同様のエネルギー源によって与えることができる。一実施形態では、第1の材料の選択部分を選択的に溶融できるように、型205の下部分だけが影響を受けるようにロボットアーム215を移動させることができる。これは、ロボットアーム215の移動を通じて調整された型205の移動によって成すことができる。熱は、1つまたは複数の局所的な熱源によって与えることができ、この熱源は、型205、例えば高温の空気または水蒸気のための開口の中に組み込まれるとも考えられる。
【0075】
一実施形態では、
図3a~
図3eを参照して説明されるように、型205の表面全体は、第1の材料によって覆うことができ、第1の材料の厚さは、型205の定められた局所的に調整された加熱または調整された移動によって局所的に変わり得る。
【0076】
次いで、加熱された型205は、第1の材料の少なくとも一部が少なくとも部分的に凝固されるようにロボットアーム215によって凝固ステーション230へ移送されることができ、第1の材料の選択部分は、選択的に凝固させることができる。これは、ロボットアーム215の移動によって型205を移動させることによって成すことができる。繰り返しになるが、選択的な凝固と合わせた選択的な溶融は、型の全部が材料で満たされ、型全体を通じて多かれ少なかれ均一に溶融および/または凝固されるスポーツ用品の通常の射出成形または回転成形と比較して基本的に異なる製造手法である。
【0077】
第1の材料を凝固させた後、ロボットアーム215は、第1のステーション210へ戻ることができ、第2の材料、例えば中底用のTPUの発泡粒子が、型205の中に、例えば少なくとも部分的に第1の材料の凝固した部分の上へ堆積させることができるようになっており、型205は、型205内の第2の材料の分布を変更するように振動させることができ、第2の材料の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶融するおよび/または凝固させる。
【0078】
図3a~
図3eは、スポーツ靴の少なくとも一部を製造するための本発明の実施形態の概略説明図を示す。特に、各実施形態は、上述したように、
図2中の加熱ステーション220および/または凝固ステーション230で、および
図3eに説明されるようなジンバル内で、ロボットアーム215によって型205を振動させるまたは方向付けるような型205の可能な移動を示す。
【0079】
図3aは、型305と接続されるロボットアーム315の本発明の一実施形態を示す。型305は、上述したような型105および205と同様のものであり得る。本底用の第1の材料は、型305の中へ堆積させることができる。上述したように、中底用の第2の材料は、型305の中へ堆積させることができるということも可能である。ロボットアーム315は、第1の材料の選択部分を選択的に溶融するために、すなわち型305内の第1の材料に局所的に熱をかけるために、1つまたは複数の熱源、例えばIR熱源を装備した加熱ステーション320の内部へ型305を移動させることができる。例えば、IR熱源は、加熱ステーション320の左側壁にだけ配置されてもよい。ロボットアーム315は、第1の材料の選択部分を選択的に凝固させるために凝固ステーションの内側へ型305を移動させることができるとも考えられる。
【0080】
図3aに見られるように、移動、例えば型305の方向付けは、x-z平面内で実行することができる。型305の移動は、他の空間方向、またはさらには全ての空間方向に実行されてもよいとも考えられる。型305内で第1の材料を加熱しこれによって第1の材料を選択的に溶融するための可能な調整された移動は、
図3b~
図3dを参照して以下に説明される。さらにまたは代替として、型305は、型305内の第1の材料の分布を変更するために、任意の移動時間で振動させることができる。
【0081】
図3bに見られるように、移動は、ロボットアーム315がz軸に本質的に平行であるときに開始することができる。この位置は、0°として設定され得る。次いで、ロボットアーム315は、x-z平面内で時計回りに型305を移動させることができる。したがって、型305のかかと領域は、つま先領域よりもIR熱源に近くなることができ、すなわち、より加熱上昇することができ、したがってかかと領域内の第1の材料は、型305の移動によって選択的に溶融することができる。
【0082】
図3cでは、ロボットアーム315は、x軸に本質的に平行であり、90°だけの移動が実行されている。この位置で、型305の下部分および上部分の表面は、最小量のIR熱放射で影響を受け得る。
【0083】
図3dでは、ロボットアーム315は、型305を時計回りにさらに移動させることができ、上部分の表面は、型305の下部分よりも多く加熱上昇できるとともに、上部分における第1の材料は、選択的に溶融することができるようになっている。ロボットアーム315の移動の後、型は、凝固ステーションへ移送されるために加熱ステーション320から取り除くことができる。
【0084】
結果として、本発明による方法は、第1の材料のある部分が、型305の移動によって加熱プロセス中に2回加熱されることを防ぐことができる。
【0085】
図3eは、型を多軸取付け式の型306とすることができる、本発明の他の実施形態350a~350cを示す。例えば、型306は、ジンバル316、すなわち少なくとも2自由度を有する運動学的なシステム内に取り付けることができ、ロボットアーム315は、型306の中に第1の材料を堆積させる手段、例えば注入ノズル318または別の投与ユニットを備えることができる。型306は、上述したように、型205および305の1つまたは複数の態様を備えることもできることに留意しなければならない。また、型306は、1つまたは複数の局所的な熱源、例えば加熱要素を備えることができ、第1の局所的な熱源308は、つま先部品内に配置することができ、第2の局所的な熱源309は、型306の下部分内に配置することができる。代替としてまたはさらに、1つまたは複数の局所的な熱源は、型306のキャビティの中に挿入でき得る内側モジュール式加熱要素、例えば電気加熱式パトロンを有することができる。次いで、電気を誘導によって作り出すことができる。型306の外側に置くことができる可撓性の加熱用バンド、すなわち直接接触加熱を有することも可能である。電気加熱要素は、油ベースの加熱と比較して、例えば、油供給ラインの必要がなく、したがってプロセスは作業者にとってより安全になり得るという利点を有する。
【0086】
実施形態350aに見られるように、型306の選択領域の中への、例えば型306のつま先部品内での第1の材料の選択的堆積は、注入ノズル318を装備したロボットアーム315の移動によって実行することができる。そのような一実施形態は、注入ノズル318が回転していないので、ノズルへの材料供給をずっと簡単にさせることができる。材料供給を伴う注入ノズル318、すなわち投与ユニットが、型306へ直接取り付けられる場合、注入ノズル318は、必然的に同じように回転する。
【0087】
実施形態350bでは、型306は、(破線付き二重矢印で示されるように)例えばジンバル316のシーソー移動によって振動または移動させることができ、それによって第1の材料は堆積させることができ、型306のつま先部品内に配置された第1の局所的な熱源308は、第1の材料の加熱を開始することができる。次いで、第1の材料の加熱された選択部分は、例えば周囲空気を用いて型306を冷却することによって凝固することができる。
【0088】
実施形態350cに見られるように、第1の材料を凝固させた後、第2の材料は、注入ノズル318を装備したロボットアーム315を移動させることによって型306の下部分306の中に堆積させることができる。したがって、型306は、型306の下部分内に配置された第2の局所的な熱源309によって加熱された後に、型306内の第2の材料の分布を変更するように振動させ、第2の材料の少なくとも一部を溶融するおよび/または凝固させることができる。
【0089】
図4は、スポーツ靴400の少なくとも一部が本発明による方法によって製造される、スポーツ靴400の可能な実施形態の概略図を示す。
【0090】
実施形態400aに示されるように、中敷402aは、(
図4に示されていない)ラストの上に引っ張ることができ、
図1~
図3の型105、205、305、および306と同様であり得る雌型405に挿入することができる。代替として、内側ライニングを作り出すために繊維が噴霧されており、除去され、プロセス後に再び再利用することができる、膨張可能なラストが使用されてもよい。第1の成形サイクルにおいて、例えば成形後により硬質な特性を与える第1の材料が、雌型405の内部で中敷402aの上へ堆積させられてもよく、雌型405は、第1の材料の粒子の蓄積がかかと部品においてだけ得ることができるようにロボットアーム415によって振動させるおよび/または方向付けすることができる。溶融し凝固させた後、第1の材料は、ヒールキャップおよび/またはケージインサート402bを形成することができる。
【0091】
第2の成形サイクルに対応する実施形態400bに示されるように、例えば成形後により可撓性の特性を与える第2の材料は、雌型405の内側の第1の材料の溶融および/または凝固した部分の上へ少なくとも部分的に堆積させることができる。次いで、ロボットアーム415を用いて、雌型405は、振動させおよび/または方向付けることができ、それによって第2の材料の粒子の蓄積が、成形されたヒールキャップおよび/またはケージインサート402bを含む中敷402aの表面全体にわたって得ることができ、すなわち、第2の材料は、スポーツ靴400の靴の甲革の中間層402cを形成することができる。有利には、雌型405は、構造内壁、特に層402cの構造を決定するようになされている構造内壁を備えることができる。構造内壁は、中敷402aの周りに360°延びることができる。
【0092】
図4に見られるように、2つのさらなる可能な実施形態400cおよび400dが可能である。実施形態400cは、第3の成形サイクルに対応することができ、例えば繊維に吹き付けられるまたはフロック加工するような成形後に別のセットの特性を与える第3の材料は、雌型405の内側で第2の材料の溶融および/または凝固した部分の上へ少なくとも部分的に堆積させることができる。次いで、ロボットアーム415を用いて、雌型405は、振動させおよび/または方向付けることができ、それによって第3の材料の粒子の蓄積が、成形されたヒールキャップおよび/またはケージインサート404を含む中間層402cの面の一部または表面全体にわたって得ることができ、すなわち、第3の材料は、スポーツ靴400の靴の甲革の柔軟な外側層402dまたはパッド層を形成することができる。有利には、雌型405は、構造内壁、特に、中間層402cと同じ構造であってもなくてもよい外側層402dの構造を決定するようになされている構造内壁を備えることができる。
【0093】
別の可能性として、実施形態400dは、製造ステップを用いて製造できるスポーツ靴に対応することができ、着用者の足の足首部分を覆う布地、特に不織物または編物の中敷402eは、柔軟な外側層402dの代わりにまたはそれに加えて、スポーツ靴400の中に挿入することができる。
【0094】
図5a~
図5bは、スポーツ靴500aおよび500bの可能な実施形態であって、その少なくとも一部が本発明による方法によって製造される、実施形態を示す。
【0095】
図5aは、角度の付いた前面図、中央側図、および底面図にスポーツ靴500aを示す。スポーツ靴500aは、4つの要素、すなわち、下部要素510と、つま先要素520と、中足要素530と、襟要素540とを備える。スポーツ靴の別の実施形態は、スポーツ靴500aよりも多い要素または少ない要素を備えてもよいとやはり考えられる。
【0096】
要素510、520、530、540の少なくとも1つの少なくとも一部は、上述したように本発明による方法によって製造することができる。したがって、4つの要素について4種類の材料の各々が、それぞれのステップにおいて型内に選択的に堆積させられ、それぞれの材料分布を変更するように振動させられ、選択的に溶融および/または凝固され得る。例えば、第1のステップでは、下部要素510のための第1の材料は、型、例えば型305の中に選択的に堆積させられ、第1の材料の分布を変更するように振動させられ、選択的に溶融され、選択的に凝固させられることができる。第2のステップでは、同じプロセスは、つま先要素520用の第2の材料、および中足要素530用の第3の材料に適用することができる。最後に、最終ステップにおいて、同じプロセスは、襟要素540用の第4の材料にも適用することができる。また、少なくとも1つの要素は、TPU材料で構成され得る。
【0097】
実施形態500aでは、下部要素510は、他の要素よりも高い硬さを有することができ、中足要素530は、つま先要素520および/または襟要素540よりも高い硬さを有することができる。一実施形態では、4つの要素は、60A~83Dのショア硬さ、好ましくは90A~60Dから硬さを有することができる。
【0098】
他の実施形態では、下部要素510は、底がより高い柔軟性および/またはより高いグリップ/トラクションを必要とされる場合に他の要素よりも低い硬さを有することができる。
【0099】
図5aに見られるように、スポーツ靴500aは、突出要素545、例えばスポーツ靴500aの周囲に360°延びるテクスチャを備える。これらの突出要素545は、スポーツ靴500aの甲革の外側層の構造を決定するようになされている構造内壁を備えた型を用いることによって成すことができる。普通の靴が有するように底の上にだけ突出要素を有するのではなく、そのような突出要素545を有することによって、スポーツ靴500aの特性、例えば曲げを、さらに改善することができる。
【0100】
別の実施形態では、例えばマスク、インサート、プレースホルダなどを配置する手段は、2つの異なる材料間、例えば下部要素510用の第1の材料とつま先要素520用の第2の材料との間の移行ゾーンを阻止するために、材料が堆積させられる前に雌型の中に置くことが出きる。配置する手段は、材料が振動ステップ中に分布されるにべきではない型の領域内に配置することができる。そのような配置する手段を用いることによって、2つの異なる材料間の鋭い外形は、
図5aに見られるように作り出すことができる。例えば、下部要素510が製造されるとき、マスクは、型の上側のつま先、中足、およびかかと領域を覆う型の中に挿入することができる。代替としてまたはさらに、配置するための上述の手段が使用されるときを除いて、材料層は、それら縁部で重ね合わされてもよいとも考えられる。
【0101】
図5bは、本発明による方法によって製造される甲革550を備えたスポーツ靴500bを示す。スポーツ靴500bの甲革550は、第1の材料で構成され、第1の材料は、型、例えば型305の中に堆積され、第1の材料の分布を変更するように振動させられ、
図3a~
図3eに示されたような方法の1に従って選択的に溶融および/または凝固させられる。
【0102】
さらに、スポーツ靴500bの中底560は、複数のランダムに配置された発泡粒子で構成することができる。これらの粒子は、発泡熱可塑性ポリウレタンなどの発泡材料から作製することができる。任意の他の適切な材料が使用されてもよいとやはり考えられる。
さらに、発泡粒子は、型の内側にランダムにまたはあるパターンで配置することができる。
【符号の説明】
【0103】
105 型
110 上部分、部分
115 開口
120 下部分、部分
130 保持手段
200 システム
205 型
210 第1のステーション
215 ロボットアーム
220 加熱ステーション
230 凝固ステーション
305 型
306 多軸取付け式の型、型、下部分
308 第1の局所的な熱源
309 第2の局所的な熱源
315 ロボットアーム
316 ジンバル
318 注入ノズル
320 加熱ステーション
350a~c 実施形態
400 スポーツ靴
400a~d 実施形態
402a 中敷
402b ケージインサート
402c 中間層、層
402d 柔軟な外側層、外側層
402e 中間層、布地、特に不織物または編物の中敷
404 成形されたヒールキャップおよび/またはケージインサート
405 雌型
415 ロボットアーム
500aおよび500b スポーツ靴
510 下部要素、要素
520 つま先要素、要素
530 中足要素、要素
540 襟要素、要素
545 突出要素
550 甲革
560 中底