(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】電子負荷装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20200101AFI20220801BHJP
【FI】
G01R31/34 E
(21)【出願番号】P 2020188147
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2020-11-11
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】505441638
【氏名又は名称】致茂電子股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chroma Ate Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ホン チュンション
(72)【発明者】
【氏名】ウ シャンユィ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ツチアオ
(72)【発明者】
【氏名】ファン チェンシン
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0319663(US,A1)
【文献】特開平11-235015(JP,A)
【文献】特開平08-029469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ループと下部ループとの間をカップリングする分圧回路と、前記上部ループと前記下部ループとの間をカップリングし、かつ順次直
列に接続される複数の出力素子および電流検出回路と、
第2出力素子として定義される前記出力素子のいずれか
にカップリングし、かつ前記電流検出回路にカップリングする制御回路と、を含み、前記上部ループおよび前記下部ループを介して被試験電源装置にカップリングするための電子負荷装置であって、
前記出力素子内の前記制御回路にカップリングされていない出力素子の各々と前記分圧回路との間にエンハンスメント型駆動回路がカップリングされ、前記エンハンスメント型駆動回路は前段領域において前記分圧回路から受信され
た前段電流および前記エンハンスメント型駆動回路に入力した外部電源を介して前記前段電流を後段電流に増幅し、そして前記エンハンスメント型駆動回路の後段領域において前記後段電流によって生成された電圧を
前記エンハンスメント型駆動回路にカップリングされる前記出力素子に印加
し、
前記エンハンスメント型駆動回路は、電圧クランプユニットをさらに含み、前記エンハンスメント型駆動回路の入力側が第1電圧レベルポイントで定義され、前記エンハンスメント型駆動回路の出力側が第2電圧レベルポイントで定義され、前記電圧クランプユニットが前記第1電圧レベルポイントと前記第2電圧レベルポイントとの間をカップリングし、前記第2電圧レベルポイントの電圧レベルが前記第1電圧レベルポイントの電圧レベルに等しく維持するために用いられることを特徴とする、電子負荷装置。
【請求項2】
前記エンハンスメント型駆動回路の前記前段領域は、電流利得ユニットを含み、前記後段領域が前記電流利得ユニットと
前記出力素子との間をカップリングするインピーダンスユニットを含み、前記電流利得ユニットが前記前段電流を前記後段電流に増幅するために用いられ、前記インピーダンスユニットが前記後段電流に基づいて
前記出力素子を駆動する制御電圧を生成するために用いられる、請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項3】
前記電圧クランプユニットは、前記第2電圧レベルポイントの電圧レベルが前記第1電圧レベルポイントの電圧レベルよりも閾値だけ高いときに、前記第2電圧レベルポイント
の接地経路を
導通する、請求項
1に記載の電子負荷装置。
【請求項4】
前記
第2出力素
子と前記制御回路との間に
第2エンハンスメント型駆動回路がカップリングされ、
前記第2エンハンスメント型駆動回路は、前記制御回路によって伝送された電流を増幅して前記
第2出力素
子に印加される電圧を生成するために用いられる、請求項
3に記載の電子負荷装置。
【請求項5】
前記出力素子、前記電流検出回路、前記制御回路および各前記エンハンスメント型駆動回路がパワーステージ(Power Stage)を構成し、各前記エンハンスメント型駆動回路と前記分圧回路との間にパラレル駆動回路がカップリングされ、前記パラレル駆動回路は複数の前記パワーステージの並列接続に供し、前記電子負荷装置の負荷電流を増加させるために用いられる、請求項
4に記載の電子負荷装置。
【請求項6】
前記パラレル駆動回路は、前述電流利得ユニットと同じ回路構成を備えることができ、前記分圧回路によって伝送された電流を増幅して
カップリングされる前記パワーステージの各々に供給するために用いられる、請求項
5に記載の電子負荷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験に用いられる装置に関し、特に、電源装置を試験するための電子負荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の様々な機器において、電源装置は欠かせない部分であり、機器内の各種回路ユニットの駆動や電圧レベルの維持に用いられ、電源装置の信頼性が機器の安定性に関係する。
【0003】
電子負荷装置は、エネルギー消費状態をシミュレートする機器であり、電源試験の分野では、様々な試験モードを提供することができ、電源装置の開発と製造にとって必要不可欠な試験装置である。電子負荷の原理は、主に内部出力素子の導通量を制御し、出力素子を介して電力を散逸することで、電気エネルギーを消費して電気使用環境のシミュレーションを実現することである。
【0004】
従来の電子負荷装置内のパワーステージ回路は、単一のパワートランジスタが使用されることにより電子負荷装置の最大動作電圧がこのパワートランジスタ自体の耐電圧クラスによって制限され、耐電圧のより高いパワートランジスタが用いられた場合、往々にして単一のパワートランジスタを備えることで電子負荷装置のコストの大幅な増加につながっていた。
【0005】
もう1つのアプローチは、直列に接続されたパワートランジスタを用いて耐電圧性の向上を実現することである。
図1は、デュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムを示す。電子負荷装置10内において、第1出力素子12aと第2出力要素12bの直列接続を介して、電子負荷の電圧動作の上限を上げる。例えば耐電圧クラスAの第1出力素子12aと耐電圧クラスBの第2出力素子12bを用いて、直列接続後、電子負荷の耐電圧設計を最高A+Bの耐電圧クラスまで上げることができる。
【0006】
図1に示すように、被試験電源装置20および電子負荷装置10が作動している場合、分圧回路11は、前記被試験電源装置20から供給される電圧に基づいて、前記第1出力素子12aに印加する両端間電圧を生成し、第2出力素子12bが制御回路14により制御され、内部導通量(デューティ比)が制御される。制御回路14は、調整制御信号S1および電流検出回路13のフィードバック信号に基づいて、第2の出力素子12bの制御に対応する信号が生成されることで、第1出力素子12a、第2出力素子12bおよび電流検出回路13の負荷電流の大きさを設定することができる。
【0007】
しかしながら、電子負荷装置10全体の耐電圧は、直列に接続された各出力素子で分担されるため、すなわち、直列に接続された各出力素子がオンされる時点に非常に重要となる。一部の出力素子が完全にオンになっていないが一部がオンになっている場合、完全にオンになっていない出力素子は、被試験電源装置20が出力する電圧に先に耐える必要があるが、出力素子に損傷を与える可能性がある。
【0008】
例えば、
図1に示す第2出力素子12bのゲートは、制御回路14により制御され、第1出力素子12aが分圧回路11から分圧された電圧が第1出力素子12aのゲートに供給される。被試験電源装置20の電圧が変動すると、負荷回路の過渡応答時間も長くなり、分圧回路11を介して前記第1出力素子12aのゲートに供給するオン電圧の速度が遅くなることで、前記制御回路14の変動速度および駆動能力が分圧回路11の駆動時間よりも速くなり、前記第1出力素子12aと前記第2出力素子12bのオン状態とを同期させることができないという問題が派生し、したがって完全にオンにされていない前記第1出力素子12aが、前記被試験電源装置20によって出力される電圧に先に耐えなければならない状況が生じる。このような状況では、前記第1出力素子12aがダメージリスクに晒され、前記被試験電源装置20から出力される電圧が第1出力素子12aが耐えられる耐電圧よりも高くなると、ダメージが発生し、デュアル出力素子の電子負荷システムの故障を招いてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、電子負荷装置における過渡応答時間が長いすぎる問題点を解決することである。
【0010】
本発明の別の目的は、出力素子に十分な駆動力を迅速に供給する能力を電子負荷装置に持たせることである。
【0011】
本発明の更なる目的は、電子負荷装置の故障を避け、安定性および信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的および他の目的を達成するため、本発明は、上部ループおよび下部ループを介して被試験電源装置にカップリングするための電子負荷装置を提案する。前記電子負荷装置は、前記上部ループと前記下部ループとの間をカップリングする分圧回路と、前記上部ループと前記下部ループとの間をカップリングし、かつ順次直接に接続される複数の出力素子および電流検出回路と、これら出力素子のいずれかおよび前記電流検出回路にカップリングする制御回路と、を含み、残りのこれら出力素子のそれぞれと前記分圧回路との間にエンハンスメント型駆動回路がカップリングされ、前記エンハンスメント型駆動回路は前段領域において前記分圧回路から受信された一前段電流および前記エンハンスメント型駆動回路に入力した外部電源を介して前記前段電流を後段電流に増幅し、そして前記エンハンスメント型駆動回路の後段領域において前記後段電流によって生成された電圧を対応する出力素子に印加することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施例において、前記エンハンスメント型駆動回路の前記前段領域は、電流利得ユニットを含み、前記後段領域が前記電流利得ユニットと対応する出力素子との間をカップリングするインピーダンスユニットを含み、前記電流利得ユニットが前記前段電流を前記後段電流に増幅するために用いられ、前記インピーダンスユニットが前記後段電流に基づいて対応する出力素子を駆動する制御電圧を生成するために用いられる。
【0014】
本発明の一実施例において、前記エンハンスメント型駆動回路は、電圧クランプユニットをさらに含み、前記エンハンスメント型駆動回路の入力側が第1電圧レベルポイントで定義され、前記エンハンスメント型駆動回路の出力側が第2電圧レベルポイントで定義され、前記電圧クランプユニットが前記第1電圧レベルポイントと前記第2電圧レベルポイントとの間をカップリングし、前記第2電圧レベルポイントの電圧レベルを前記第1電圧レベルポイントの電圧レベルに等しく維持するために用いられる。
【0015】
本発明の一実施例において、前記電圧クランプユニットは、前記第2電圧レベルポイントの電圧レベルが前記第1電圧レベルポイントの電圧レベルよりも閾値だけ高いときに、前記第2電圧レベルポイントを接地させる経路を開状態にする。
【0016】
本発明の一実施例において、これら出力素子のいずれかと前記制御回路との間に前記エンハンスメント型駆動回路がカップリングされ、これら出力素子のいずれかと前記制御回路との間のエンハンスメント型駆動回路は、前記制御回路によって伝送された電流を増幅してこれら出力素子のいずれかに印加される電圧を生成するために用いられる。
【0017】
本発明の一実施例において、これら出力素子、前記電流検出回路、前記制御回路および各前記エンハンスメント型駆動回路がパワーステージ(Power Stage)を構成し、各前記エンハンスメント型駆動回路と前記分圧回路との間にパラレル駆動回路がカップリングされ、前記パラレル駆動回路は複数の前記パワーステージの並列接続に供し、前記電子負荷装置の負荷電流を増加させるために用いられる。前記パラレル駆動回路は、前述電流利得ユニットと同じ回路構成を備えることができ、前記分圧回路によって伝送された電流を増幅してバックエンドに接続された各前記エンハンスメント型駆動回路に供給するために用いられる。
【発明の効果】
【0018】
したがって、本発明の実施例は、出力素子と分圧回路との間に追加で増設されたエンハンスメント型駆動回路を介して制御回路にカップリングしていない出力素子の駆動能力を確保することで、応答電を迅速に調整し、応答期間を短くして全体的な応答速度を上げ、過渡変化を抑制し、負荷回路上で発生する遅延問題も解決し、被試験電源装置的電圧が変化しても、電子負荷装置内の各出力素子を迅速駆動させることができ、電子負荷装置の安定性および信頼性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、デュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る電子負荷システムの回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るエンハンスメント型駆動回路の回路図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施例に係るエンハンスメント型駆動回路の回路図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施例に係る電子負荷システムの回路図である。
【
図6】
図6は、本発明の更なる実施例の電子負荷システムの回路図である。
【
図7】
図7は、デュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムの外部電圧過渡応答時間の関係図である。
【
図8】
図8は、本発明の
図5の実施例に係る電子負荷システムの外部電圧過渡応答時間の関係図である。
【
図9】
図9は、デュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムのロードオン時の応答時間の関係図である。
【
図10】
図10は、本発明の
図5の実施例に係る電子負荷システムのロードオン時の応答時間の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、特徴、効果について充分に理解できるように、以下で具体的な実施例に添付の図面を組み合わせ、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本明細書において用いられるところ、用語「一」または「一個」は、ユニット、部材、構造、装置、回路、システム、部位または領域などを記載するために使用される。これは、単に便宜のために、および、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためになされるだけである。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むと読むべきであり、それが違うことを意味することが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0022】
本明細書において用いられるところ、用語「含む」、「包括(comprising)」、「有する」またはこれらの他のいかなる変形形態も、必ずしもそれらの構成要素だけに限定されず、このようなユニット、部材、構造、装置、回路、システム、部位または領域に対して明示的に列挙してない、あるいは固有の他の構成要素も含むことができる。
【0023】
本明細書において、「第1」または「第2」という用語、およびその他の類似の序数は、同一または類似の要素あるいは構造を区別または参照するために使用され、必ずしもこれらのユニット、部材、構造、装置、回路、システム、部位または領域の空間における順番を意味するものではない。ある状況または構成の下では、本発明の実施に影響を与えることなく、序数を交換可能に使用できることを理解されたい。
【0024】
本明細書において、トランジスタの動作を説明する時、使用される「オン」という用語は、トランジスタの導通モードを指し、ここで電流がドレイン端子とソース端子の間(或いはBJTのコレクタとエミッタの間)を流れることができる。「オン」は、トランジスタの飽和モード或いは線形/抵抗モードを指すことができる。「オン」状態の実例は、三極管、FETの線形、飽和またはアクティブモード或いはBJTの正のアクティブまたは飽和モードである。使用される「オフ」という用語は、トランジスタの非導通状態を指し、ここでドレイン端子とソース端子の間(或いはBJTのコレクタとエミッタの間)には電流が流れない。「オフ」状態の実例は、FETカットオフ、2次スレッショルド電圧、弱逆モードまたはBJTカットオフモードである。
【0025】
本明細書において、出力素子は、バイポーラトランジスタ(BJT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistors、IGBT)および類似の出力素子であり得る。
【0026】
図2を参照すると、本発明の一実施例に係る電子負荷システムの回路図である。電子負荷システムは、定電流モード、定電圧モード、定電力モード、および定抵抗モードなどの様々なモードで被試験電源装置200を試験するために用いられる。
図2の実施例の電子負載装置100は、上部ループL1および下部ループL2を介して前記被試験電源装置200にカップリングされる。
【0027】
前記電子負荷装置100は、分圧回路110と、電流検出回路130と、制御回路140と、を含む。前記分圧回路110は、前記上部ループL1と前記下部ループL2との間をカップリングする。前記電流検出回路130は、同様に前記上部ループL1と前記下部ループL2との間をカップリングし、第1出力素子120aおよび第2出力素子120bの後に順次直列に接続される。前記制御回路140は、前記第2出力素子120bと前記電流検出回路130との間をカップリングし、前記電流検出回路130によってフィードバックされる検知結果信号および操作される調整制御信号S1を介して、前記第1出力素子120aおよび前記第2出力素子120bを流れる負荷電流を調整する。
【0028】
図2に示されるように、前記第1出力素子120aと前記分圧回路110との間は、エンハンスメント型駆動回路150aをカップリングする。前記エンハンスメント型駆動回路150aは、前段領域と、後段領域と、を有する。前記前段領域は、前記分圧回路110から供給される前段電流を受け取る。前記前段領域は、前記エンハンスメント型駆動回路150aに入力される外部電源V1を介して、前記前段電流を後段電流に増幅する。前記エンハンスメント型駆動回路150aは、更に前記後段電流に基づいて前記後段領域内に電圧を生成し、それを前記第1出力素子120aに印加する。
【0029】
前記エンハンスメント型駆動回路150aの作用において、前記第1出力素子120aに印加される前記電圧は、電流の増幅利得効果に基づいて迅速に生成されることで、前記被試験電源装置200から電源を出力素子に送る瞬間に、出力素子を即座にオンにし、直列に接続された各出力素子がそれぞれの耐電圧能力を効果的に提供できることで、前記電子負荷装置100の全体的な耐電圧性が向上される効果を奏する。
【0030】
次に
図2および
図3を同時に参照すると、
図3は、本発明の一実施例に係るエンハンスメント型駆動回路の回路図である。前記エンハンスメント型駆動回路150aの前記前段領域は、電流利得ユニット1501を含み、前記後段領域がインピーダンスユニット1503を含む。前記インピーダンスユニット1503は、前記電流利得ユニット1501と対応する出力素子120aとの間をカップリングする。
【0031】
前記電流利得ユニット1501は、前記前段電流I1の入力に基づき前記後段電流I2を生成する。前記後段電流I2は、前記後段領域のインピーダンスユニット1503(例:抵抗器)を流れることで、前記第1出力素子120aに急激なターンオン効果を発生する電圧を生成し、前記第1出力素子120aのゲートに印加される。
【0032】
前記電流利得ユニット1501の作用において、前段電流I1が入力されると、この電流は迅速に生成および増幅されて前記後段電流I2となり、更に前記インピーダンスユニット1503の配置を通じて第2電圧レベルポイントVb上に前記第1出力素子120aをオンにするのに十分な電圧(前段電流I1が利得・増幅される程度は、前記インピーダンスユニット1503とマッチすることで、対応する出力素子に必要なオン電圧とマッチする)が迅速に生成される。
【0033】
前記電流利得ユニット1501は、例えばダーリントンペア(Darlington pair)の回路構成(出力電流は、直列接続されたトランジスタの電流増幅率の積を新しい電流増幅率として、それにより電流利得を高めることができる)、或いはその他の回路構成を介して配置でき、電流増幅に使用できる限り、本発明の実施例に適用可能である。
【0034】
次に
図4を参照すると、本発明の別の実施例に係るエンハンスメント型駆動回路の回路図である。
図3の実施例と比べると、
図4に示す例は、前記エンハンスメント型駆動回路150a内に電圧クランプユニット1505をさらに含む。前記エンハンスメント型駆動回路150aの入力側は、第1電圧レベルポイントVaで定義されることができ、前記エンハンスメント型駆動回路の150aの出力側が第2電圧レベルポイントVbで定義される。前記電圧クランプユニット1505は、前記第1電圧レベルポイントVaと前記第2電圧レベルポイントVbとの間をカップリングする。前記電圧クランプユニット1505は、前記第2電圧レベルポイントVbの電圧レベルを前記第1電圧レベルポイントVaの電圧レベルと同等に維持するために用いられる。
【0035】
前記電圧クランプユニット1505は、わずかな圧力差を引き起こす可能性があるため、前記第1電圧レベルポイントVaと前記第2電圧レベルポイントVbとの間の電圧レベルの圧力差を閾値内にさせることでき、前記第2電圧レベルポイントVbの電圧レベルが前記第1電圧レベルポイントVaの電圧レベルより前記閥値だけ大きい場合、前記第2電圧レベルポイントVbの接地経路が前記電圧クランプユニット1505によって導通され;前記第1電圧レベルポイントVaと前記第2電圧レベルポイントVbとの間の電圧レベルがその他の圧力差の下にある場合、この接地経路(この経路が閉状態とする)。前記接地は、電子負荷装置100の装置接地を意味する。
【0036】
これにより、前記電圧クランプユニット1505は、スイッチングデバイスとして機能し、例えばトランジスタ等の電子素子または他の類似素子を用いることができる。また、前記電圧クランプユニット1505が圧力差現象を引き起こさない場合、前記閥値もゼロとすることができ、すなわち、前記第2電圧レベルポイントVbの電圧レベルが前記第1電圧レベルポイントVaの電圧レベルより大きい限り、この接地経路が導通される。
【0037】
被試験電源が電子負荷装置100に入力されると、出力素子のドレインとゲートとの間に望ましくない浮遊現象が発生することで、ゲートに増分電圧が生じる可能性がある。この増分電圧は、元々出力素子のゲートで制御することを目的とした電圧均等化または電圧分布に影響を及ぼし、出力素子のゲート電圧がプルアップされ、全体の整合度を破壊する可能性があるため、この電圧クランプユニット1505でこの現象の発生を防ぐことができる。
【0038】
したがって、増分電圧が生成された場合、接地経路の導通の有無および対応する閥値の設定を介して、増分電圧を効果的に除去させることで、出力素子のゲート電圧を望ましい制御レベルにクランプさせることができ、電圧均等化または電圧分配の設定は影響を受けず、安定性がさらに向上する。
【0039】
次に、
図5を参照すると、本発明の別の実施例に係る電子負荷システムの回路図である。
図5の実施例において、前記第2出力素子120bと前記制御回路140との間に、前記回路構造と同じエンハンスメント型駆動回路150bを配置し、前記エンハンスメント型駆動回路150bは前記制御回路140によって伝送された電流を増幅し、前記第2出力素子120bに印加する電圧を生成するために用いられる。前記エンハンスメント型駆動回路150bは、外部電源V2を受け取り、ここで前記外部電源V1が前記外部電源V2とは異なる。
図5の回路配置は、分圧回路110にカップリングされた各出力素子および前記制御回路140にカップリングされた出力素子が同じ回路構造を有するエンハンスメント型駆動回路によって駆動されることを可能にし、各出力素子が電圧均等化状態で動作され、電子負荷装置の安定性および信頼性を向上させることができる。その他の実施例において、前記第1出力素子120aと前記第2出力素子120bとの間にさらに多くの出力素子を直列に接続でき、直列に接続された追加のこれら出力素子と前記分圧回路110との間が前記エンハンスメント型駆動回路をカップリングし、電子負荷装置100により高い耐電圧性を持たせる以外に、故障を避けることもでき、安定性および信頼性を向上する。
【0040】
次に、
図6を参照すると、本発明の更なる実施例に係る電子負荷システムの回路図である。
図6の実施例において、前記エンハンスメント型駆動回路150aと前記分圧回路110との間はパラレル駆動回路160をカップリングする。これら出力素子(120a、120b)、前記電流検出回路130、前記制御回路140、および前記エンハンスメント型駆動回路150aは、1つのパワーステージ(Power Stage)、すなわち第1パワーステージを構成する。前記パラレル駆動回路160の配置を介して、電流をさらに増幅し、並列接続された各パワーステージ、例えば第2パワーステージPS2、第3パワーステージPS3~第nパワーステージPSnを効果的に駆動することができる。並列に接続されたこれらパワーステージは、前記電子負荷装置の負荷電流を増やすことができ、電子負荷装置により柔軟な配置方法を提供できる。
【0041】
ここで、前記パラレル駆動回路160は、前記分圧回路110によって伝送された電流を増幅してバックエンドに接続された各エンハンスメント型駆動回路に供給するための前記電流利得ユニット1501と同じ回路構成を有し得る。
【0042】
次に、
図7および
図8を同時に参照すると、
図7はデュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムの外部電圧過渡応答時間の関係図であり;
図8は、本発明の
図5の実施例に係る電子負荷システムの外部電圧過渡応答時間の関係図である。ここで曲線Vds1は、電子負荷装置における第1出力素子の両端間電圧の変化であり、曲線Vds2が電子負荷装置における第2出力素子の両端間電圧の変化であり、DC Sourceが被試験電圧源である。図内の縦軸は電圧、横軸が時間である。
図7および
図8から分かるように、外部電圧が変化すると、
図5の回路構成下では2個の出力素子を電圧均等化の状態に効果的に維持でき;
図7とは対照的に、従来の
図1の回路構成では、2個の出力素子のターンオン状態が対応しないことで(不平衡電圧によって制御される)、第1出力素子のターンオン速度が遅くなり、電子負荷装置の動作電圧が1個の出力素子の耐電圧を超えると、第1出力素子が毀損する。
【0043】
次に、
図9および
図10を同時に参照すると、
図9は、デュアル出力素子を備えた従来の電子負荷システムのロードオン時の応答時間の関係図であり;
図10は、本発明の
図5の実施例に係る電子負荷システムのロードオン時の応答時間の関係図である。図内の縦軸の上部は電流、下部が電圧、横軸が時間である。
図9および
図10から分かるように、従来の
図1の回路構成では、被試験電源装置が固定電圧を供給する時、ロードオン瞬間に、分圧回路は追加の電流を第1出力素子のゲートに供給して前記第1出力素子を駆動して導通させる必要があるが、分圧回路が電流を供給することにより、分圧回路を電圧ムラ状態にし、第1出力素子の両端間電圧Vds1と第2出力素子の両端間電圧Vds2が不平衡となり、電子負荷装置の動作電圧が1個の出力素子の耐電圧を超えると、出力素子に損傷リスクがある。対照的に本願の
図4の回路構成では、電圧ムラ現象が明らかに解消されている。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記をまとめると、出力素子と分圧回路との間に追加で増設されたエンハンスメント型駆動回路を介して制御回路にカップリングしていない出力素子の駆動能力を確保することで、応答電を迅速に調整し、応答期間を短くして全体的な応答速度を上げ、過渡変化を抑制し、負荷回路上で発生する遅延問題も解決し、電子負荷装置内の各出力素子が電圧を均等化することで迅速に駆動され、出力素子の損傷リスクが軽減され、電子負荷装置の安定性および信頼性を向上させる。
【0045】
本発明は上述で最良の実施例を開示したが、当業者であれば理解できるように、この実施例は単に本発明を説明するために用いたのみであり、本発明の範囲を限定すると理解されるべきではない。注意すべきは、この実施例と同等効果を有する変化および置換はすべて、本発明の範疇内に含まれることである。このため、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の定義に準じる。
【符号の説明】
【0046】
100 電子負荷装置
10 電子負荷装置
11 分圧回路
12a 第1出力素子
12b 第2出力素子
13 電流検出回路
14 制御回路
20 被試験電源装置
110 分圧回路
120a 第1出力素子
120b 第2出力素子
130 電流検出回路
140 制御回路
150a エンハンスメント型駆動回路
150b エンハンスメント型駆動回路
1501 電流利得ユニット
1503 インピーダンスユニット
1505 電圧クランプユニット
160 パラレル駆動回路
200 被試験電源装置
I1 前段電流
I2 後段電流
L1 上部ループ
L2 下部ループ
PS2 第2パワーステージ
PS3 第3パワーステージ
PSn 第nパワーステージ
V1 外部電源
V2 外部電源
Va 第1電圧レベルポイント
Vb 第2電圧レベルポイント
DC Source 被試験電圧源
Vds1 第1出力素子の両端間電圧変化の曲線
Vds2 第2出力素子の両端間電圧変化の曲線
S1 調整制御信号