(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】流水殺菌装置および流水殺菌方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2020215693
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河崎 涼太
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-30078(JP,A)
【文献】特開2019-37450(JP,A)
【文献】特開2011-189282(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046014(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084244(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/008807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が供給される直管と、
前記直管の端部と対向する光源窓と、
前記光源窓越しに前記直管の内部に紫外光を照射する光源と、
前記直管の鉛直方向下側の第1位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定可能であり、前記直管の鉛直方向上側の第2位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定可能である測定装置と、
前記第1強度および前記第2強度に基づいて前記直管の内部のエア溜まりを検出する制御装置と、備える流水殺菌装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2強度が前記第1強度よりも所定割合以上大きい場合、前記直管の内部のエア溜まりを検出する、請求項1に記載の流水殺菌装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2強度が前記第1強度よりも10%以上大きい場合、前記直管の内部のエア溜まりを検出する、請求項2に記載の流水殺菌装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記第1位置にて前記第1強度を測定する第1測定部と、前記第2位置にて前記第2強度を測定する第2測定部とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の流水殺菌装置。
【請求項5】
前記測定装置は、前記第1位置と前記第2位置の間で変位可能な測定部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の流水殺菌装置。
【請求項6】
前記直管は、前記直管の中心軸まわりに回動可能であり、
前記測定装置は、前記直管の外面に取り付けられ、前記直管とともに回動可能な測定部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の流水殺菌装置。
【請求項7】
前記直管の長手方向と交差する方向に延びる流通口を有し、前記直管の前記端部の外周を包囲して前記流通口と前記直管の内部を接続する連通室を区画する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記連通室の内部のエアを除去するためのエア抜き弁と、をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の流水殺菌装置。
【請求項8】
直管内に被処理水を供給するステップと、
前記直管の端部から前記直管の内部に紫外光を照射するステップと、
前記直管の鉛直方向下側の第1位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定するステップと、
前記直管の鉛直方向上側の第2位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定するステップと、
前記第1強度および前記第2強度に基づいて前記直管の内部のエア溜まりを検出するステップと、を備える流水殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
容器内で水などの流体に紫外光を照射して殺菌処理をする流水殺菌装置が知られている。容器内部に空気が溜まると処理効率が低下しうることから、容器にエア抜きが設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流水殺菌装置の動作時にエア抜きが十分であるかを確認できることが好ましい。しかしながら、流水殺菌装置の動作時に内部を直接確認してエア溜まりの有無を検出することは困難である。
【0004】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、エア溜まりを検出できる流水殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様の流水殺菌装置は、被処理水が供給される直管と、直管の端部と対向する光源窓と、光源窓越しに直管の内部に紫外光を照射する光源と、直管の鉛直方向下側の第1位置にて直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定可能であり、直管の鉛直方向上側の第2位置にて直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定可能である測定装置と、第1強度および第2強度に基づいて直管の内部のエア溜まりを検出する制御装置と、備える。
【0006】
本発明の別の態様は、流水殺菌方法である。この方法は、直管内に被処理水を供給するステップと、直管の端部から直管の内部に紫外光を照射するステップと、直管の鉛直方向下側の第1位置にて直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定するステップと、直管の鉛直方向上側の第2位置にて直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定するステップと、第1強度および第2強度に基づいて直管の内部のエア溜まりを検出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流水殺菌装置の動作時にエア溜まりを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る流水殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、直管の内部のエア溜まりの有無を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施の形態に係る流水殺菌方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る流水殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る流水殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の寸法比と一致しない。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、実施の形態に係る流水殺菌装置10の構成を概略的に示す図である。流水殺菌装置10は、矢印Xで示されるように直管12の内部を通過する被処理水に対して紫外光UVを照射して殺菌処理を施す。流水殺菌装置10は、直管12と、第1筐体14と、第2筐体16と、第1光源窓18と、第2光源窓20と、第1光源22と、第2光源24と、第1エア抜き弁26と、第2エア抜き弁28と、測定装置30と、制御装置32とを備える。
【0011】
直管12は、被処理水が供給される処理流路34を区画する。処理流路34は、直管12の内部の空間である。直管12は、第1端部36および第2端部38を有する。第1端部36には第1筐体14が設けられ、第2端部38には第2筐体16が設けられる。直管12は、紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料から構成される。直管12は、直管12の内部から外部に向けて紫外光を透過する材料から構成される。このような材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの白色のフッ素樹脂が挙げられる。直管12は、例えば、側壁40の厚さが3mm以上のPTFEから構成される。
【0012】
図面の理解を助けるため、直管12の第1端部36から第2端部38に向かう方向を「長手方向」または「軸方向」ともいう。また、直管12の中心軸から離れる方向を「径方向」ともいい、直管12の中心軸周りの方向を「周方向」ともいう。
【0013】
第1筐体14は、直管12の外側に設けられる第1連通室44および第1光源室46を区画する。第1連通室44と第1光源室46の間は、第1光源窓18により仕切られる。第1筐体14は、第1流通口48を有する。第1流通口48は、直管12の長手方向と交差する方向に開いており、例えば径方向に開口している。第1流通口48には第1流通管50が接続されている。第1流通管50は、第1流通口48から径方向外側に延びている。第1連通室44は、処理流路34と第1流通口48の間をつなぐ。第1連通室44は、直管12の第1端部36と、第1端部36に対向する第1光源窓18との間の第1隙間52を通じて処理流路34と連通する。第1連通室44は、直管12の外側の全周にわたって設けられる。
【0014】
第2筐体16は、直管12の外側に設けられる第2連通室54および第2光源室56を区画する。第2連通室54と第2光源室56の間は、第2光源窓20により仕切られる。第2筐体16は、第2流通口58を有する。第2流通口58は、直管12の長手方向と交差する方向に開いており、例えば径方向に開口している。第2流通口58には第2流通管60が接続されている。第2流通管60は、第2流通口58から径方向外側に延びている。第2連通室54は、処理流路34と第2流通口58の間をつなぐ。第2連通室54は、直管12の第2端部38と、第2端部38に対向する第2光源窓20との間の第2隙間62を通じて処理流路34と連通する。第2連通室54は、直管12の外側の全周にわたって設けられる。
【0015】
第1筐体14および第2筐体16は、紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料で構成されることが好ましく、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂で構成することができる。第1筐体14および第2筐体16の材料として、PTFEよりも紫外光反射率の低いPVDFを用いることで、第1連通室44および第2連通室54の内面にて紫外光が反射され、第1流通口48および第2流通口58を通じて第1筐体14および第2筐体16の外部に向かう紫外光の強度を低減できる。
【0016】
図1の構成では、第1筐体14を被処理水の流入側とし、第2筐体16を被処理水の流出側としている。つまり、第1流通口48を流入口とし、第1流通管50を流入管とし、第2流通口58を流出口とし、第2流通管60を流出管としている。別の実施の形態では、流入側と流出側を逆にしてもよい。つまり、第1流通口48を流出口とし、第1流通管50を流出管とし、第2流通口58を流入口とし、第2流通管60を流入管としてもよい。
【0017】
第1光源22は、第1光源室46に設けられる。第1光源22は、複数の第1発光素子64と、第1基板66とを含む。第1光源22は、複数の第1発光素子64を冷却するためのヒートシンク(不図示)をさらに含んでもよい。第1光源22は、第1光源窓18越しに処理流路34に向けて軸方向に紫外光UVを照射するよう構成される。つまり、第1光源22は、第1端部36から第2端部38に向けて直管12の内部に紫外光UVを照射する。
【0018】
第1発光素子64は、いわゆるUV-LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)である。第1発光素子64は、発光のピーク波長が300nm以下であり、殺菌効率の高い波長である260nm~290nm付近の紫外光を発する。複数の第1発光素子64は、第1基板66の実装面上にアレイ状に並べられ、軸方向に紫外光UVを照射するように配置される。複数の第1発光素子64は、例えば円形や矩形状の第1基板66の実装面上に等間隔となるように二次元アレイ状に配置される。
【0019】
第2光源24は、第2光源室56に設けられる。第2光源24は、複数の第2発光素子68と、第2基板70とを含む。第2光源24は、第1光源22と同様に構成される。第2光源24は、第2光源窓20越しに処理流路34に向けて軸方向に紫外光を照射するよう構成される。つまり、第2光源24は、第2端部38から第1端部36に向けて直管12の内部に紫外光UVを照射する。
【0020】
第1光源窓18は、第1光源22と第1端部36の間に設けられ、第1隙間52を挟んで第1端部36と対向するように配置される。第2光源窓20は、第2光源24と第2端部38の間に設けられ、第2隙間62を挟んで第2端部38と対向するように配置される。第1光源窓18および第2光源窓20は、紫外光の透過率が高い材料で構成され、例えば石英ガラス(SiO2)やサファイア(Al2O3)などで構成される。
【0021】
第1エア抜き弁26は、第1筐体14に設けられる。第1エア抜き弁26は、例えば、直管12の中心軸を挟んで第1流通口48および第1流通管50とは反対側に配置される。第1エア抜き弁26は、流水殺菌装置10の動作時に直管12よりも鉛直方向上側に位置するように配置される。第1エア抜き弁26は、流水殺菌装置10の動作時に閉鎖されている。第1エア抜き弁26を開放すると、第1連通室44に溜まる空気を第1エア抜き弁26を通じて外部に除去できる。第1エア抜き弁26を通じて、直管12の内部に溜まる空気を外部に除去することも可能である。
【0022】
第2エア抜き弁28は、第2筐体16に設けられる。第2エア抜き弁28は、例えば、直管12の中心軸を挟んで第1流通口48および第1流通管50とは反対側に配置される。第2エア抜き弁28は、流水殺菌装置10の動作時に直管12よりも鉛直方向上側に位置するように配置される。第2エア抜き弁28は、流水殺菌装置10の動作時に閉鎖されている。第2エア抜き弁28を開放すると、第2連通室54に溜まる空気を第2エア抜き弁28を通じて外部に除去できる。第2エア抜き弁28を通じて、直管12の内部に溜まる空気を外部に除去することも可能である。
【0023】
測定装置30は、直管12の外部に設けられる。測定装置30は、直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の強度を測定する。測定装置30は、第1測定部72と、第2測定部74とを含む。第1測定部72は、直管12の外面42に形成される第1凹部76に設けられる。第2測定部74は、直管12の外面42に形成される第2凹部78に設けられる。
【0024】
第1凹部76は、直管12の鉛直方向下側の第1位置に設けられる。第2凹部78は、直管12の鉛直方向上側の第2位置に設けられる。第1凹部76および第2凹部78では、直管12の側壁40の厚さが他の箇所に比べて小さい。第1凹部76および第2凹部78における直管12の側壁40の厚さは、例えば1mm~2mm程度である。第1凹部76および第2凹部78は、直管12の内部の紫外光を外部に透過させる測定窓として機能する。
【0025】
第1測定部72は、第1凹部76にて側壁40を透過した紫外光の第1強度を測定する。第2測定部74は、第2凹部78にて側壁40を透過した紫外光の第2強度を測定する。したがって、第1測定部72は、第1位置にて紫外光の第1強度を測定し、第2測定部74は、第2位置にて紫外光の第2強度を測定する。第1測定部72および第2測定部74のそれぞれは、例えば、紫外光を検出可能なフォトダイオードを含む。第1測定部72および第2測定部74が測定した第1強度および第2強度は、制御装置32に送信される。
【0026】
第1凹部76および第2凹部78は、例えば直管12の長手方向の位置が同じであり、例えば直管12の中央付近に設けられる。第1凹部76および第2凹部78は、直管12の周方向の位置が互いに異なる。第1凹部76は、例えば直管12の真下の位置に設けられる。第1凹部76は、直管12の真下の位置から周方向にずれた位置に設けられてもよい。例えば、直管12の周方向の位置を角度で表し、直管12の真下を0°とし、直管12の真上を180°とする場合、第1凹部76は、0°~45°の範囲内に設けられてもよい。一方、第2凹部78は、例えば直管12の真上の位置に設けられる。第2凹部78は、直管12の真上の位置から周方向にずれた位置に設けられてもよく、例えば165°~180°の範囲内に設けられてもよい。
【0027】
制御装置32は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)などの集積回路を含む。制御装置32は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現できる。制御装置32は、ハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
制御装置32は、第1光源22および第2光源24の動作を制御する。制御装置32は、流水殺菌装置10の動作時、つまり、処理流路34に被処理水が供給されている場合、第1測定部72により測定された第1強度が一定となるように第1光源22および第2光源24を駆動する。これにより、処理流路34内の被処理水に所望の強度の紫外光が照射されるようにする。
【0029】
制御装置32は、第1測定部72により測定された第1強度および第2測定部74により測定された第2強度に基づいて、直管12の内部のエア溜まりを検出する。制御装置32は、エア溜まりを検出した場合、エア溜まりの検出信号を出力する。
【0030】
図2(a)、(b)は、直管12の内部のエア溜まりの有無を模式的に示す断面図であり、直管12の長手方向に直交する断面を示す。
図2(a)は、エア溜まりがない状態を示す。エア溜まりがない場合、直管12の内部の処理流路34の全体が被処理水Wで満たされている。この場合、第2測定部74により測定される第2強度は、第1測定部72により測定される第1強度と同程度となる。つまり、第1強度と第2強度の差は、第1強度の所定割合未満の範囲内となり、例えば、第1強度の10%未満の範囲内となる。
【0031】
図2(b)は、エア溜まりがある状態を示す。エア溜まりがある場合、直管12の内部の鉛直方向上側に空気Aが存在し、直管12の内部の鉛直方向下側に被処理水Wが存在する。この場合、第2測定部74により測定される第2強度は、第1測定部72により測定される第1強度よりも有意に大きくなる。つまり、第2強度は、第1強度よりも所定割合以上大きくなる。本発明者の知見によれば、第2強度は、第1強度よりも10%以上大きくなり、例えば、10%~20%程度大きくなる。このような差異が生じる明確なメカニズムは分からないが、例えば、空気Aの屈折率と被処理水Wの屈折率の違いにより、直管12の内部での紫外光の強度分布が不均一となる影響が考えられる。その他、直管12と空気Aの界面での紫外光の透過率と、直管12と被処理水Wの界面での紫外光の透過率との間に差異が生じる影響が考えられる。
【0032】
つづいて、流水殺菌装置10の動作について説明する。殺菌処理の対象となる被処理水は、第1流通管50、第1流通口48、第1連通室44、第1隙間52、処理流路34、第2隙間62、第2連通室54、第2流通口58および第2流通管60の順に通過する。処理流路34を流れる被処理水は、第1連通室44および第2連通室54のそれぞれよりも通水断面積の小さい第1隙間52および第2隙間62を通過することで整流化される。
【0033】
制御装置32は、処理流路34に被処理水が供給された場合、第1光源22および第2光源24を点灯させ、処理流路34の内部の被処理水に紫外光UVを照射する。測定装置30は、直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の強度を測定する。第1測定部72は、直管12の鉛直方向下側の第1位置にて第1強度を測定し、第2測定部74は、直管12の鉛直方向上側の第2位置にて第2強度を測定する。
【0034】
制御装置32は、第1強度と第2強度を取得して比較する。制御装置32は、第1強度と第2強度の差が第1強度の所定割合未満、例えば第1強度の10%未満である場合、エア溜まりを検出しない。制御装置32は、第1強度と第2強度の差が第1強度の所定割合未満である場合、エア抜きが十分であることを示す信号を出力してもよいし、動作が正常であることを示す信号を出力してもよい。
【0035】
制御装置32は、第2強度が第1強度よりも所定割合以上、例えば10%以上大きい場合、エア溜まりを検出し、エア溜まりの検出信号を出力する。この場合、流水殺菌装置10の使用者は、第1エア抜き弁26および第2エア抜き弁28の少なくとも一方を操作して直管12の内部のエア溜まりを除去する。制御装置32は、第2強度が第1強度よりも所定割合以上、例えば10%以上小さい場合、動作の異常を検出し、異常の検出信号を出力する。
【0036】
図3は、実施の形態に係る流水殺菌方法を示すフローチャートである。まず、直管12の内部に被処理水を供給し(S10)、第1光源22および第2光源24を点灯させて直管12の内部に紫外光を照射する(S12)。つづいて、第1測定部72を用いて直管12の鉛直方向下側にて直管12の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定する(S14)。また、第2測定部74を用いて直管12の鉛直方向上側にて直管12の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定する(S16)。第1強度と第2強度の差が所定割合以上であり(S18のY)、第2強度が第1強度よりも大きければ(S20のY)、直管12の内部のエア溜まりを検出する(S22)。S20にて第2強度が第1強度よりも小さければ(S20のN)、異常を検出する(S24)。S18にて第1強度と第2強度の差が所定割合未満であれば(S18のN)、S20~S24の処理をスキップする。
【0037】
本実施の形態によれば、直管12の外部に設けられる第1測定部72および第2測定部74にて測定される紫外光の強度に基づいて直管12の内部のエア溜まりを検出できる。その結果、直管12により区画される処理流路34の流れに影響を与えることなく、エア溜まりを検出できる。つまり、流水殺菌装置10の動作に影響を与えることなく、直管12の内部におけるエア溜まりの有無を判定できる。
【0038】
(第2の実施の形態)
図4(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る流水殺菌装置110の構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態では、測定装置130が単一の測定部172を含み、単一の測定部172が直管12の外部において周方向に変位可能となるように構成される。第2の実施の形態に係る流水殺菌装置110について、第1の実施の形態に係る流水殺菌装置10との相違点を中心に説明し、共通する内容は適宜省略する。
【0039】
流水殺菌装置110は、上述の第1の実施の形態と同様、直管12と、第1筐体14と、第2筐体16と、第1光源窓18と、第2光源窓20と、第1光源22と、第2光源24と、第1エア抜き弁26と、第2エア抜き弁28とを備える。流水殺菌装置110は、測定装置130と、制御装置132とをさらに備える。
【0040】
測定装置130は、測定部172と、支持機構174とを含む。測定部172は、直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の強度を測定する。測定部172は、支持機構174に取り付けられている。支持機構174は、測定部172の軸方向の変位を規制する一方、測定部172の周方向の変位を可能にする。支持機構174は、例えば、直管12の外周に沿って円弧状に延びるガイドレールを有する。
【0041】
測定部172は、直管12の鉛直方向下側の第1位置と、直管12の鉛直方向上側の第2位置との間で変位可能である。
図4(a)は、第1位置に配置される測定部172を示し、
図4(b)は、第2位置に配置される測定部172を示す。測定部172は、矢印Rで示されるように周方向に変位可能である。測定部172は、第1位置にて直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の第1強度を測定する。測定部172は、第2位置にて直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の第2強度を測定する。
【0042】
制御装置132は、測定装置130から第1強度および第2強度を取得する。制御装置132は、測定装置130から測定部172の位置を示す情報を取得してもよい。制御装置132は、測定部172に設けられる加速度センサの値に基づいて、鉛直方向に対する測定部172の向きを検出してもよい。制御装置132は、支持機構174から測定部172が第1位置または第2位置のいずれに配置されているかを示す情報を取得してもよい。制御装置132は、測定部172の位置を示す情報に基づいて、測定部172から取得する紫外光の強度が第1強度および第2強度のいずれであるかを判別してもよい。
【0043】
支持機構174は、測定部172の位置を変化させるための駆動部(不図示)を有してもよい。制御装置132は、支持機構174の駆動部の動作を制御することで、測定部172の位置を変化させてもよい。制御装置132は、支持機構174の駆動部の動作に基づいて、測定部172の位置を判別してもよい。つまり、測定部172が第1位置または第2位置のいずれに配置されているかを判別してもよい。
【0044】
本実施の形態においても、第1強度と第2強度に基づいて直管12の内部のエア溜まりを検出できる。本実施の形態によれば、単一の測定部172を第1位置および第2位置の測定に共用するため、二つの測定部を設ける場合に比べてコストを低減できる。
【0045】
(第3の実施の形態)
図5(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る流水殺菌装置210の構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態では、測定装置230が単一の測定部272を含み、測定部272が直管12の外部に固定されている。本実施の形態では、第1筐体14および第2筐体16によって、直管12が周方向に回動可能に支持され、測定部272が直管12とともに周方向に変位可能となるように構成される。直管12は、例えば、第1筐体14および第2筐体16を固定した状態において、第1筐体14および第2筐体16に対して回動可能である。第3の実施の形態に係る流水殺菌装置210について、第2の実施の形態に係る流水殺菌装置110との相違点を中心に説明し、共通する内容は適宜省略する。
【0046】
流水殺菌装置210は、上述の第1の実施の形態と同様、直管12と、第1筐体14と、第2筐体16と、第1光源窓18と、第2光源窓20と、第1光源22と、第2光源24と、第1エア抜き弁26と、第2エア抜き弁28とを備える。流水殺菌装置210は、測定装置230と、制御装置232とをさらに備える。
【0047】
直管12は、第1筐体14および第2筐体16に対して周方向に回動可能となるよう構成される。測定部272は、直管12の外面42に取り付けられ、直管12とともに周方向に回動する。その結果、測定部272は、直管12の鉛直方向下側の第1位置と、直管12の鉛直方向上側の第2位置との間で変位可能となるよう構成される。
【0048】
図5(a)は、第1位置に配置される測定部272を示し、
図5(b)は、第2位置に配置される測定部272を示す。直管12および測定部272は、矢印Rで示されるように周方向に変位可能である。測定部272は、第1位置にて直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の第1強度を測定する。測定部272は、第2位置にて直管12の内部から外部に向けて側壁40を透過する紫外光の第2強度を測定する。
【0049】
制御装置232は、測定装置230から第1強度および第2強度を取得する。制御装置232は、測定装置230から測定部272の位置を示す情報を取得してもよい。制御装置232は、例えば、測定部272に設けられる加速度センサの値に基づいて、鉛直方向に対する測定部272の向きを検出し、測定部272が第1位置と第2位置のいずれにあるかを判別してもよい。
【0050】
本実施の形態においても、第1強度と第2強度に基づいて直管12の内部のエア溜まりを検出できる。本実施の形態によれば、単一の測定部272を第1位置および第2位置の測定に共用するため、二つの測定部を設ける場合に比べてコストを低減できる。
【0051】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0052】
上述の実施の形態では、流水殺菌装置10,110,210が第1光源22および第2光源24を備える場合を示した。別の実施の形態では、流水殺菌装置10,110,210が第1光源22および第2光源24の一方のみを備え、他方を備えなくてもよい。
【0053】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0054】
本発明の第1の態様は、被処理水が供給される直管と、前記直管の端部と対向する光源窓と、前記光源窓越しに前記直管の内部に紫外光を照射する光源と、前記直管の鉛直方向下側の第1位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定可能であり、前記直管の鉛直方向上側の第2位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定可能である測定装置と、前記第1強度および前記第2強度に基づいて前記直管の内部のエア溜まりを検出する制御装置と、備える流水殺菌装置である。第1の態様によれば、直管の外部にて測定される紫外光の第1強度と第2強度に基づいて直管の内部のエア溜まりを検出できる。そのため、流水殺菌装置の動作時であっても流水殺菌装置の動作に影響を与えることなく直管の内部のエア溜まりを検出できる。
【0055】
本発明の第2の態様は、前記制御装置は、前記第2強度が前記第1強度よりも所定割合以上大きい場合、前記直管の内部のエア溜まりを検出する、第1の態様に記載の流水殺菌装置である。第2の態様によれば、第1強度と第2強度の大きさの関係性に基づいて直管の内部のエア溜まりを適切に検出できる。
【0056】
本発明の第3の態様は、前記制御装置は、前記第2強度が前記第1強度よりも10%以上大きい場合、前記直管の内部のエア溜まりを検出する、第2の態様に記載の流水殺菌装置である。第3の態様によれば、第1強度と第2強度の大きさの関係性に基づいて直管の内部のエア溜まりを適切に検出できる。
【0057】
本発明の第4の態様は、前記測定装置は、前記第1位置にて前記第1強度を測定する第1測定部と、前記第2位置にて前記第2強度を測定する第2測定部とを含む、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の流水殺菌装置である。第4の態様によれば、第1測定部と第2測定部を用いて第1強度と第2強度を同時に測定することができるため、エア溜まりの有無を常時検出できる。
【0058】
本発明の第5の態様は、前記測定装置は、前記第1位置と前記第2位置の間で変位可能な測定部を含む、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の流水殺菌装置である。第5の態様によれば、単一の測定部を用いて第1強度と第2強度を測定できるため、複数の測定部を設けることによるコストを抑制できる。
【0059】
本発明の第6の態様は、前記直管は、前記直管の中心軸まわりに回動可能であり、前記測定装置は、前記直管の外面に取り付けられ、前記直管とともに回動可能な測定部を含む、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の流水殺菌装置である。第6の態様によれば、単一の測定部を用いて第1強度と第2強度を測定できるため、複数の測定部を設けることによるコストを抑制できる。
【0060】
本発明の第7の態様は、前記直管の長手方向と交差する方向に延びる流通口を有し、前記直管の前記端部の外周を包囲して前記流通口と前記直管の内部を接続する連通室を区画する筐体と、前記筐体に設けられ、前記連通室の内部のエアを除去するためのエア抜き弁と、をさらに備える、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の流水殺菌装置である。第7の態様によれば、エア溜まりの検出時にエア抜き弁を用いて、直管の内部に溜まるエアを除去できる。エア抜き弁を直管ではなく、直管の端部の外周を包囲する筐体に設けることで、直管の構造をシンプルにすることができる。これにより、直管の内部の被処理水の流れを均一化し、直管の内部の紫外光の照度分布を均一化することができ、被処理水に対する殺菌性能を向上できる。
【0061】
本発明の第8の態様は、直管内に被処理水を供給するステップと、前記直管の端部から前記直管の内部に紫外光を照射するステップと、前記直管の鉛直方向下側の第1位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第1強度を測定するステップと、前記直管の鉛直方向上側の第2位置にて前記直管の内部から外部に透過する紫外光の第2強度を測定するステップと、前記第1強度および前記第2強度に基づいて前記直管の内部のエア溜まりを検出するステップと、を備える流水殺菌方法である。第8の態様によれば、直管の外部にて測定される紫外光の第1強度と第2強度に基づいて直管の内部のエア溜まりを検出できる。そのため、被処理水に紫外光を照射する殺菌処理中であっても殺菌処理に影響を与えることなく直管の内部のエア溜まりを検出できる。
【符号の説明】
【0062】
10…流水殺菌装置、12…直管、14…第1筐体、16…第2筐体、18…第1光源窓、20…第2光源窓、22…第1光源、24…第2光源、26…第1エア抜き弁、28…第2エア抜き弁、30…測定装置、32…制御装置、34…処理流路、36…第1端部、38…第2端部、40…側壁、42…外面、72…第1測定部、74…第2測定部。