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特許7114703圧力パルスを用いる微細加工されたセルソータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】圧力パルスを用いる微細加工されたセルソータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20220801BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220801BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20220801BHJP
【FI】
G01N15/14 A
G01N37/00 101
G01N15/14 K
G01N15/14 C
C12M1/34 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020523402
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018014798
(87)【国際公開番号】W WO2018151906
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】514249968
【氏名又は名称】アウル バイオメディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OWL BIOMEDICAL, INC.
【住所又は居所原語表記】75 Robin Hill Road, Santa Barbara, CA 93117, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フォスター
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ミルテニー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン シールズ
(72)【発明者】
【氏名】メーラン フーンジャーニ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057309(JP,A)
【文献】特表2016-527502(JP,A)
【文献】特開2015-072272(JP,A)
【文献】特開昭61-137062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328637(US,A1)
【文献】特表2016-503489(JP,A)
【文献】特表2017-535764(JP,A)
【文献】特表2008-516251(JP,A)
【文献】特表2010-525325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 37/00
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れ内を流れる非目標材料から目標粒子を分離する、基板上に製造された、微細加工された粒子選別装置であって、粒子分離装置は、
前記非目標材料から前記目標粒子を区別する信号を生成する検出領域と、
やはり同じ前記基板上に製造された試料入口チャネルと、選別チャネルと、廃棄チャネルとを有しており、前記目標粒子は、流体圧力の瞬間的なパルスによって、前記廃棄チャネルでなく前記選別チャネル内へ送り込まれ、圧力のパルスは、前記試料入口チャネルと同じ前記基板に製造されたアクチュエータによって発生され
前記アクチュエータは、外部電磁石と、可動部材に埋め込まれた透過性材料との間に生じる電磁力によって作動され、
前記可動部材は、前記外部電磁石の励磁に応答して移動し、前記試料入口チャネルおよび前記選別チャネルをも含む平面内で移動し、前記外部電磁石と、前記可動部材に埋め込まれた透過性材料との間に生じる電磁力によって作動される、微細加工された粒子選別装置。
【請求項2】
前記瞬間的パルスは、周囲流体より高い圧力を有しており、該より高い圧力は、前記目標粒子を前記選別チャネルへ押し込む、請求項1記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項3】
前記瞬間的パルスは、周囲流体より低い圧力を有しており、該より低い圧力は、前記目標粒子を前記選別チャネルへ引き込む、請求項1記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項4】
前記瞬間的パルスは、周囲流体よりも、1つの位置におけるより高い圧力および別の位置におけるより低い圧力を有しており、前記より高い圧力および前記より低い圧力は、前記目標粒子を選別チャネルへ方向付ける、請求項1記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項5】
前記瞬間的パルスは、前記基板に形成されたテーパしたノズルの先端部で発生し、前記テーパしたノズルおよび前記選別チャネルは、前記廃棄チャネルに対して非直交角度で配置されており、かつレーザ呼びかけ領域の下流に、互いに対して前記廃棄チャネルを横切って配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項6】
前記非直交角度は、30~60度である、請求項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、静電力、電磁力および圧電力のうちの少なくとも1つに基づいて作動する、請求項1から6までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項8】
前記廃棄チャネルは、前記選別チャネルおよび前記試料入口チャネルを含む平面に対して実質的に直交して配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項9】
前記テーパしたノズルの幅は、3ミクロン~15ミクロンである、請求項5記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項10】
前記流体流れは、前記アクチュエータが休止状態へ解放されながら通常はオンである前記選別チャネルへ短時間で逸らされる、請求項1から9までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項11】
前記流体流れは、前記アクチュエータが休止状態から作動状態へ駆動されながら通常はオフである前記選別チャネルへ短時間で逸らされる、請求項1から9までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項12】
前記流体流れは、前記アクチュエータが休止状態において通常はオンである前記選別チャネルへ流れる、請求項1から9までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項13】
前記可動部材は、該可動部材の形成後に残留する基板材料の峡部によって、前記基板に接続されており、この基板材料の峡部は、前記電磁石が消磁されたときに前記可動部材を元の位置へ戻すための復元力を提供する、請求項1から12までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項14】
前記可動部材は、その移動の少なくとも一部にわたって、前記廃棄チャネル上に配置されており、これにより、通路は、前記可動部材が平面内の所定の位置に位置したまま前記目標粒子が前記試料入口チャネルから前記廃棄チャネルへ流れるために存在する、請求項1記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項15】
前記検出領域は、レーザ放射が前記流体流れへ提供されるレーザ呼びかけ領域である、請求項1から14までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項16】
前記流体流れは、識別光学信号を送信するために、前記レーザ放射と相互作用する蛍光タグがタグ付けされた、浮遊した目標粒子を含む、請求項1記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項17】
前記検出領域において、前記目標粒子を前記非目標材料から識別するために、前記目標粒子の機械的、光学的、電気的、磁気的または化学的特性のうちの少なくとも1つ測定される、請求項1から16までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【請求項18】
前記外部電磁石は、N極およびS極を有する1つの透過性コアの周囲に巻き付けられたコイルを有しており、磁束は、前記N極から出て、空間を通過し、前記透過性コアの前記S極へ戻る、請求項1から17までのいずれか1項記載の微細加工された粒子選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
該当なし
連邦政府から援助を受けた研究に関する申告
該当なし
マイクロフィッシュ付録に関する申告
該当なし
背景
本発明は、微細加工された流体チャネル内で小さな粒子を操作するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)は、半導体デバイスを製造するために使用されるような、表面またはバルクリソグラフィ処理技術を使用して基板に形成された非常に小さな、しばしば可動な構造である。MEMSデバイスは、例えば、数ミクロン~数百ミクロンの特徴寸法を備える、可動なアクチュエータ、センサ、弁、ピストンまたはスイッチであってもよい。可動なMEMSスイッチは、例えば、全て基板上に微細加工された1つまたは複数の入力端子を1つまたは複数の出力端子に接続するために使用されてもよい。可動なスイッチのための作動手段は、例えば、熱式、圧電式、静電式または磁気式であってもよい。MEMSデバイスは、流体流れ内でMEMSデバイスを通過する粒子を操作してもよい半導体基板に製造されていてもよい。
【0003】
別の例では、MEMSデバイスは、血液または生理食塩水内の細胞などの様々な粒子を流体流れから選別するための選別機構として使用される可動な弁であってもよい。粒子は、圧力下で流れる、マイクロチャネルに閉じ込められた流体流れ内で選別装置へ搬送されてもよい。MEMS選別装置に到達すると、選別装置は、血液幹細胞などの目的の粒子を別個の容器へ方向付け、残りの流体流れを廃棄容器へ方向付ける。
【0004】
MEMSベースのセルソータシステムは、フローサイトメータとして知られる既存の蛍光活性化細胞選別システム(FACS)よりも実質的な利点を有することがある。フローサイトメータは、目的の細胞に固定されたタグからの蛍光信号に基づき細胞を選別する通常は大型で高価なシステムである。細胞は、シース流体内で希釈されかつ浮遊し、次いで、ノズルを通じた急速な減圧により個々の液滴に分離される。ノズルから排出された後、液滴は、タグからの蛍光信号に基づき、それぞれ異なる容器内へ静電的に分離される。特に、これらのシステムの問題は、減圧による細胞損傷または機能の損失、試料ごとの困難かつコストのかかる滅菌作業、異なるパラメータに沿って部分母集団を再選別することができないこと、および機器のこれらの大型で高価な部品を所有、操作および維持するために必要な実質的なトレーニングである。少なくともこれらの理由から、フローサイトメータの使用は、大きな病院および研究室に限られており、技術は、より小さな存在にはアクセス可能ではなかった。
【0005】
MEMSベースの粒子選別装置に関連する多数の特許が認められている。例えば、米国特許第6838056号明細書(’056特許)は、MEMSベースの細胞選別装置に関し、米国特許第7264972号明細書(’972特許)は、MEMSベースの細胞選別装置のためのマイクロメカニカルアクチュエータに関する。米国特許第7220594号明細書(’594特許)は、MEMS細胞選別装置によって製造された光学構造に関し、米国特許第7229838号明細書(’838特許)は、MEMSベースの粒子選別システムを操作するための作動機構に関する。加えて、米国特許出願第13/374899号明細書(’899出願)および第13/374898号明細書(’898出願)は、その他のMEMS設計の別の詳細を提供している。各特許(’056,’972,’594および’838)および特許出願(’898および’899)は、引用したことにより本明細書に組み込まれる。
【0006】
これらの装置の複雑さおよび製造の困難さにより、MEMSベースの粒子選別装置は、市場に出現するのが遅かった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、自然に微細加工される粒子選別構造が開示される。
【0008】
微細加工された粒子選別装置は、目標粒子を逸らせるために流体圧力の瞬間的なパルスを利用してもよい。瞬間的なパルスは、微細加工された(MEMS)アクチュエータによって発生されてもよい。幾つかの実施形態では、微細加工された粒子選別装置は、電磁式に作動される。その他の実施形態では、微細加工された粒子選別装置は、一平面内で移動してもよく、同じ平面に選別チャネルおよび試料入口チャネルを有するが、別の平面に廃棄チャネルを有していてもよい。幾つかの実施形態では、微細加工された粒子選別装置は、目標粒子を選別チャネルに引き込むために負圧パルスを利用してもよい。幾つかの実施形態では、微細加工された粒子選別装置は、目標粒子を選別チャネルに押し込むために正圧パルスを利用してもよい。別の実施形態では、微細加工された粒子選別装置は、目標粒子を選別チャネルに押し込みかつ引き込むために正圧パルスおよび負圧パルスの両方を利用してもよい。
【0009】
加圧された流体の短時間のパルスは、狭いオリフィスのノズルから排出されてもよい。流体圧力パルスは、基板に微細加工された構造の動きの結果であってもよい。強制または作動手段も、基板に製造されていてもよい。作動力は、例えば、静電力、圧電力または電磁力であってもよい。従来の装置とは対照的に、力発生および移動機構は、微細加工された手段を用いて、半導体基板に直接的に形成される。したがって、強制構造は、一体的部分であってもよく、試料流が通流するマイクロ流体チャネルと同じ製造基板に直接的に形成されてもよい。また、選別は、機械式ではなく、流体力学的に行われ、その場合、機械的な分流器ではなく流体圧力パルスが粒子を選別チャネル内へ移動させる。流体力学的な力は、機械式選別よりも穏やかでかつより信頼性が高いことが多い。
【0010】
より一般的に、微細加工された粒子選別装置は、基板上に製造されてもよく、微細加工された粒子選別装置は、流体流れ内を流れる非目標材料から目標粒子を分離させる。粒子選別装置は、やはり同じ基板上に製造された、非目標材料から目標粒子を区別する信号を生成する検出領域と、試料入口チャネルと、選別チャネルと、廃棄チャネルとを有していてもよく、目標粒子は、流体圧力の瞬間的なパルスによって、廃棄チャネルでなく選別チャネル内へ送り込まれ、圧力のパルスは、試料入口チャネルと同じ基板に製造されたアクチュエータによって発生される。
【0011】
以下の図面を参照しながら様々な典型的な詳細が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1aは、休止位置における微細加工された圧力パルス発生選別装置の概略図であり、図1bは、作動位置における微細加工された粒子選別装置の概略図である。
図2】アクチュエータが解放されたときに加えられる流体圧力の正のパルスを利用して粒子を選別する粒子選別システムの一実施形態である。
図3】装置が作動されたときに流体圧力の正のパルスを利用して粒子を選別する粒子選別システムの一実施形態である。
図4】正圧および負圧を利用して、流体圧力のパルスを利用して粒子を選別する粒子選別システムの一実施形態である。
図5】死容積の量が減らされた、流体圧力のパルスを利用して粒子を選別する粒子選別システムの一実施形態である。
図6】廃棄チャネルが、鉛直方向に開放したキャビティであり、かつ具備される必要がない、粒子操作構造の概略図である。
図7】流体圧力のパルスを利用して粒子を選別する別の粒子選別システムの詳細図である。
図8図7に示した実施形態の付加的な詳細を示している。
図9図9a~図9cは、アクチュエータが移動するときの試料チャネルを通る流れの流線を示している。
図10図10aは、ノズル角度に関する入口流量の逸脱のプロットであり、図10bは、性能とノズル角度との機能的依存を示している。
図11】選別経路と廃棄経路との相対的な流体抵抗の重要性の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は必ずしも実寸ではなく、同じ参照符号は同じ特徴を表すことが理解されるべきである。
【0014】
目標粒子に瞬間的な圧力パルスを加え、その軌道を廃棄チャネルから選別チャネル内へ逸らせることによって、試料流内の非目標材料から目標粒子を分離する粒子操作システムが説明される。以下に説明される典型的な実施形態では、基板に形成されたアクチュエータは、アクチュエータに力を加えることによって動かされる。この動きは流体コラムに加わり、流体に瞬間的な圧力パルスを発生させる。正圧パルスまたは負圧パルスであるこの圧力パルスは、試料流内でアクチュエータを通流する目標粒子の軌道を変化させてもよい。瞬間的な圧力パルスを発生させるための機構は、試料流体が流れるチャネルと同じ基板上に製造されてもよい。
【0015】
少なくとも1つの目標粒子および非目標材料を含む試料流が、試料リザーバから試料入口チャネルへ、装置に導入されてもよい。試料入口チャネルは、クエリ(query)ゾーンを通過してもよく、ここで、検出器が、目標粒子の存在を検出してもよい。クエリゾーンにおいて目標粒子を検出すると、制御装置は、力発生構造を、アクチュエータの可動部材を動かすための力を発生させるように方向付けてもよい。アクチュエータの動きは、瞬間的な圧力パルスを発生させてもよく、瞬間的な圧力パルスは、目標粒子を廃棄流から選別流内へ、次いで、選別リザーバへ方向付ける。幾つかの実施形態では、瞬間的な圧力パルスは、目標粒子を選別チャネルへ押し込むように正であってもよい。その他の実施形態では、瞬間的な圧力パルスは、目標粒子を選別チャネルへ引き込むように負であってもよい。幾つかの実施形態では、目標粒子は、アクチュエータを作動させながら(通常は閉鎖されている)選別される。その他の実施形態では、目標粒子は、アクチュエータを作動から解放させながら(通常は開放している)選別される。
【0016】
幾つかの実施形態では、瞬間的な圧力パルスは、試料流の中心線に対して所定の角度で加えられる。角度は、試料流の中心線に対して約30度~60度であってもよいが、略90度未満(実質的に直交未満)である。瞬間的な圧力パルスは、チャネルの中心線に対して所定の角度で配置されたノズルによって形成されてもよい。
【0017】
作動手段は、電磁式であってもよく、その場合、流体チャネルおよびアクチュエータを支持する基板とは別個の、基板の外部における電磁石が、アクチュエータの近くに磁束を発生させる。基板およびアクチュエータにおける透磁性特徴が、電磁石と相互作用し、アクチュエータを動かしてもよい。アクチュエータの動きは、瞬間的な圧力パルスを発生させてもよく、この瞬間的な圧力パルスは、流体を、チャネル内で流れさせ、公称経路から廃棄リザーバへの目標粒子を、別の選別チャネル経路および選別リザーバへ逸らせる。
【0018】
以下の説明は、新規の粒子操作システムの複数の典型的な実施形態を示している。以下の参照符号が、添付の図面内で使用される。
100~106 圧力選別装置の実施形態
5 目標粒子
10 試料リザーバ
15 試料チャネル
20 レーザクエリ領域
30 選別リザーバ
35 選別チャネル
60 廃棄チャネル/リザーバ
65 廃棄出口チャネル
50 透過性特徴
55 透過性特徴
40 磁極
45 極
85 瞬間的圧力領域/圧力チャネル
70 復元ばね
75 復元ばね
80 可動部材
82 可動部材
90 レバーアーム
95 ピストン
97 ピストン圧力チャネル
120 ノズル
2 ノズル(図8
3 角度ピストン/入口チャネル
130 透過性特徴
400 電磁石/力発生装置
【0019】
図1aは、休止(非作動)位置における微細加工された流体圧力選別装置100の平面図である。圧力選別装置100は、微細加工された可動部材80と、複数の微細加工された流体チャネル15,35および65とを有していてもよい。可動部材80および微細加工された流体チャネル15,35および65は、以下でより詳細に説明されるMEMSリソグラフィ製造技術を用いて、シリコン基板などの適切な基板に形成されてもよい。製造基板は製造平面を有していてもよく、この製造平面にデバイスが形成されかつ可動部材80が動く。以下でさらに説明するように、微細加工された流体チャネル15および選別チャネル35もこの平面に位置してもよい。
【0020】
試料流は、試料リザーバ10から通じた試料入口チャネル15によって圧力選別装置100へ導入されてもよい。試料流は、粒子の混合物を含んでもよく、この粒子の混合物は、少なくとも1つの所望の目標粒子5と、複数のその他の望ましくない、非目標粒子とを含んでいる。粒子は、流体に浮遊していてもよい。例えば、目標粒子5は、例えば、生理食塩水などのバッファ流体に浮遊した、幹細胞、がん細胞、接合体、たんぱく質、T細胞、細菌、血液成分、DNA断片などの生物学的材料であってもよい。
【0021】
入口チャネル15は、可動部材80と同じ製造平面に形成されてもよく、これにより、流体の流れは実質的にその平面にある。可動部材80の動きも、この製造平面内で生じてもよい。
【0022】
任意の粒子を選別する/残存させるまたは処分/廃棄するための決定は、あらゆる数の識別信号に基づいてもよい。1つの典型的な実施形態では、この決定は、粒子によって発射される蛍光信号に基づき、粒子に固定されかつ照明レーザによって励起される蛍光タグに基づく。この検出機構に関する詳細は、文献において周知である。しかしながら、その他の種類の識別信号が使用されてもよく、この識別信号は、粒子の形態に基づくことがある散乱光または側方散乱光、または粒子を目標粒子5として、ひいては選別されまたは残存されるものとしてまたは非目標粒子として、ひいては排除またはさもなければ処分されるものとして識別することができるあらゆる数の機械的、化学的、電気的または磁気的効果を含む。
【0023】
可動部材80が、動かず、図1aに示された位置にあるとき、流入した流れは、妨げられることなく出口チャネル65および廃棄リザーバ60それぞれへ移動してもよい。廃棄リザーバ60は、入口チャネル15の平面、ひいては圧力選別装置100の製造平面から外れていてもよい。すなわち、流れは、入口チャネル15から出口チャネル65へ生じ、出口チャネル65から、流れは、廃棄出口リザーバ60へ実質的に鉛直方向に流入する。これにより、入口チャネル15から廃棄リザーバ60への流れは、実質的に直交方向である。言い換えれば、この短い出口または廃棄チャネル65は、図1aの紙面に対して垂直であってもよい、平面から外れた廃棄チャネルリザーバ60へ通じていてもよい。幾つかの実施形態では、廃棄チャネル65は、極端に短く、これにより、入口チャネル15は鉛直方向廃棄リザーバ60へほぼ直接に流入する。より一般的には、出口チャネル65は、入口チャネル15または選別チャネル35の平面または可動部材80の製造平面または可動部材80の運動平面に対して平行でなくてもよい。
【0024】
出口または廃棄チャネルリザーバ60は、製造基板、または製造基板に結合されたカバー基板に形成された孔であってもよい。廃棄チャネル65と廃棄チャネルリザーバ60との間のオリフィスの輪郭は、入口チャネル15および選別チャネル35のうちの全てではないが幾つかと重なり合うようになっていてもよい。鉛直方向の孔の輪郭を入口チャネルと重ね合わせることによって、可動部材80が動かないときには、流入した流れが廃棄オリフィス60へ直接に流入するためのルートが存在してもよい。
【0025】
図1bは、作動位置における微細加工された圧力選別装置100の平面図である。この位置では、可動部材80は、図1bに示された位置へたわまされている。選別出口チャネル35は、入口チャネル15と実質的に同じ平面にあってもよく、これにより、選別チャネル35内の流れも、入口チャネル15内の流れと実質的に同じ平面にある。しかしながら、以下でさらに説明するように、選別チャネル35は、試料入口チャネル15に対して非直交角度で配置されていてもよい。
【0026】
可動部材80の作動は、図1bに概略的に示された力発生装置400からの力により生じてもよい。幾つかの実施形態では、力発生装置400は、電磁石であってもよいが、力発生装置は、可動部材80を第1の位置(図1a)から第2の位置(図1b)へ移動させる力を可動部材80に加えるための静電手段、圧電手段またはその他の手段であってもよいことが理解されるべきである。
【0027】
可動部材80が、図1aに示された位置から図1bに示された位置へ移動するとき、可動部材80は、流体を圧力チャネル85から試料流15内へ押し込んでもよい。圧力チャネル85は、通常、正(または負)の瞬間的な流体圧力パルスを受け取る微細加工されたチャネルである。これは、チャネル85の出口において流体圧力の瞬間的な増大を生じてもよい。この瞬間的な圧力パルスは、目標粒子5を、試料廃棄流から試料選別チャネル35内へ方向転換させてもよい。
【0028】
チャネル35は「選別チャネル」と呼ばれ、オリフィス60は「廃棄オリフィス」と呼ばれているが、これらの用語は、普遍性のいかなる損失もなしに、試料流が廃棄チャネル65へ方向付けられかつ廃棄流が選別チャネル35へ方向付けられるように互いに入れ替えることができることが理解されるべきである。同様に、「入口チャネル」15と「選別チャネル」35とは入れ替えられてもよい。3つのチャネルを示すために使用される用語は任意であるが、入口流は、弁80によって2つの別々の方向のいずれかへ逸らされてもよく、3つのチャネルのうちの少なくとも1つは、他の2つと同じ平面にはない。角度方向に関して使用されるときの「実質的に」という用語、すなわち実質的に接線方向または実質的に鉛直方向という用語は、言及された方向の15度以内を意味すると理解されるべきである。例えば、ある線に対して「実質的に直交する」とは、その線に対して約75度~約105度を意味すると理解されるべきである。
【0029】
可動部材または弁80は、可撓性のばね70によって基板に取り付けられていてもよい。ばね70は、基板材料の狭い峡部であってもよい。本明細書に示す例では、基板材料は、強度、低い残留応力およびクリープ抵抗などの顕著な機械的特性により知られる、単結晶シリコンであってもよい。適切なドーピングにより、材料は、装置のあらゆる部分における電荷蓄積を回避するために十分に伝導性であるように形成することもできる。電荷蓄積は、さもなければ、装置の動きを妨げることがある。ばね70は、図2に示したように蛇行した形状を有していてもよく、約1ミクロン~約10ミクロンの幅と、約10N/m~100N/m、好ましくは約40N/mのばね定数とを有している。
【0030】
図1aおよび図1bの微細加工された実施形態では、可動部材80に埋め込まれてもよい透磁性特徴130も示されている。この透磁性特徴は、透過性特徴130に隣接してかつ透過性特徴130の近くで発生される磁束源と相互作用してもよい。透過性特徴130は、例えば、当業者に公知の十分に透過性の強磁性材料であるニッケル-鉄パーマロイであってもよい。パーマロイは、一般的に、約50~80%のニッケルと、40~20%の鉄とから成る。55%対45%が、一般的な透磁性合金である。Ni-Feは、スパッタリングによって堆積され、堆積後に平坦化されてもよい。この材料インレーは、可動部材80が基板から解放される前に行われてもよい。典型的な製造技術は、2016年6月21日に発行された米国特許第9372144号明細書に開示されており、これは、引用したことによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
多くの実施形態は、基板に埋め込まれた不動の透磁性特徴50も有している。透過性特徴50は、透過性特徴130とは別個である。なぜならば、透過性特徴50は、基板上で不動のままであるのに対し、透過性特徴130は、それが埋め込まれた可動部材と一緒に移動するからである。不動の磁気特徴50の目的は、電磁石400のN極から拡散する磁束線を収束させ、それらを可動部材80の領域に集中させることであってもよい。これは、磁界の勾配を高め、ひいては、可動部材80の磁力、ひいては速度を高めるために機能する。
【0032】
磁束源は、別の透磁性コアの周囲に巻き付けられた伝導性コイルであってもよい電磁石であってもよい。適切な電磁石の設計は、2015年3月2日に出願された米国特許出願第14/634909号明細書に開示されている。
【0033】
したがって、磁界磁束線の外部源は、圧力選別装置100の外側に設けられていてもよい。この外部源は、電磁石400であってもよい。電磁石400は、透過性コアを有していてもよく、透過性コアの周囲に導体が巻き付けられている。電磁気学から公知のように、巻き付けられた導体またはコイルと、コアとは磁界を発生させ、この磁界は、磁極から出て、拡散し、反対の極へ戻る。したがって、可動部材80は、通常、図1bに示したように電磁石400の極に向かって引き付けられる。
【0034】
電磁石400が休止しており、電流がコイルに供給されていないとき、ばね70の復元力は、可動部材80を図1aに示された位置へ戻す。この位置において、入口流は、廃棄チャネル65まで妨げられることなく装置を通過する。この位置は、図1aに示されている。電磁石400が作動し、電流がコイルに流されると、磁界がコアに生じ、コアの極から出る。これらの極は、図1図7を通じて、極に関連した参照符号40を有している。前述のように、可動部材80の透過性部分130は、電磁石400に向かって引き付けられ、これにより、可動部材80を移動させ、入口チャネル15における入口流は、瞬間的な流体圧力パルスによって選別チャネル35へ方向転換される。この位置は、図1bに示されている。
【0035】
特に、粒子圧力選別装置1の顕著な特徴は、選別チャネル35と試料入口チャネル15との間の非直交角度である。同様に、圧力チャネル85と試料入口チャネル15との間の鋭角であってもよい。
【0036】
別の顕著な特徴は、圧力パルスを生じるための手段が、基板に搭載された構造であることである。言い換えれば、可動部材およびアクチュエータ80は、基板上に微細加工されていてもよい。この可動部材またはアクチュエータ80を動かすための手段は、この同じ基板に搭載されて製造されていてもよい。
【0037】
別の顕著な特徴は、作動手段が電磁石であってもよく、動きが、透磁性特徴130と、この同じ基板に直接に取り付けられていない別個の電磁石400との静電的相互作用によって生じるということである。
【0038】
瞬間的な圧力パルスを用いる微細加工されたセルソータの別の顕著な特徴は、異なる平面にある廃棄チャネル60であり、これは、特に図6に関連して後述される利点を有している。
【0039】
しかしながら、これらの有利な特徴は全ての実施形態に見られなくてもよく、その存在または不存在は発明の範囲を規定しないことが理解されるべきである。その代わり、範囲は、添付の請求項によって規定される。
【0040】
図2は、圧力パルスを用いる微細加工された粒子選別装置101の概略図である。この実施形態では、瞬間的な正の圧力パルスは、可動部材が、作動されるのではなく解放されたとき、目標粒子を逸らせてもよい。
【0041】
図2において、図1aおよび図1bの実施形態の場合のように、および後続の実施形態に関する場合であることもあるが、試料流は、試料入口リザーバ10から進入し、入口チャネル15を流れ、レーザクエリゾーン20を通過する。前述のように、粒子は、レーザ放射によって問い合わせられてもよい。所望の目標粒子は、目標粒子に結合された蛍光タグの存在により、放射により蛍光を発してもよい。蛍光の存在または不存在から、目標粒子5または非目標材料のいずれが入口チャネル15を通過しているかが判定されてもよい。目標粒子5が検出された場合、コンピュータは、アクチュエータに選別パルスを送信してもよい。コンピュータは、電磁石400に通電してもよく、透過性材料130が電磁石400に引き付けられる。可動部材80の(作動時または作動からの解放時における)動きは、瞬間的な圧力パルスを圧力チャネル85に生じさせてもよい。圧力パルスは、目標粒子を、廃棄チャネル65および廃棄リザーバ60内ではなく、選別チャネル35内、最終的には選別リザーバ30内へ押し込んでもよい。
【0042】
特に、圧力選別機101の顕著な特徴は、可動部材が、作動されるのではなく解放されたとき、瞬間的な正の圧力パルスが目標粒子を逸らせてもよいということである。図1aおよび図1bに示したように、フラップタイプのアクチュエータ80ではなく、プランジャタイプのアクチュエータ81が概略的に示されている。上述のように、透磁性材料130が可動プランジャ81に埋め込まれていてもよく、基板上に製造された透過性特徴50に向かって引き付けられてもよい。
【0043】
この静電的相互作用により、電磁石400が作動すると、プランジャ81は透過性特徴50に向かって引き付けられ、これにより、流体をチャネル85へ吸い込み、試料チャネル内で瞬間的な負の圧力パルスを生じる。負の瞬間が終了すると、電磁石400は消磁されてもよく、復元ばね70によって提供される復元力によりプランジャ81が元の位置へ戻る。この動きは、圧力チャネル85に正の瞬間的な流体圧力を生じてもよく、この正の瞬間的な流体圧力は目標粒子5を選別チャネル35内へ逸らせてもよい。
【0044】
したがって、試料チャネル35内で目標粒子を検出すると、アクチュエータ400が作動されてもよく、極40において磁束を発生させることによってプランジャ81を引き付ける。粒子がレーザクエリ領域20を通過し、選別チャネル35と廃棄チャネル65との交差箇所に到達した後、プランジャ81は、瞬間的な正の圧力パルスによって目標粒子5を選別するように解放されてもよい。
【0045】
したがって、圧力選別機101の制御アルゴリズムは、目標粒子が圧力チャネル85の開口に現れるより十分に前に電流パルスを加え、選別するために電磁石を消磁させてもよい。代替的に、プランジャ81は、一般に電磁石に電流を提供することによって、基本的に後退した位置に保持されていてもよい。次いで、プランジャ81は、選別するために解放されてもよい。
【0046】
重要な設計的考慮は、選別チャネル35と廃棄チャネル65との間の相対的な流体抵抗であることがある。通常、選別経路35は、廃棄経路65の流体抵抗の約3倍の流体抵抗を有していてもよい。選別チャネルおよび廃棄チャネルの両方に沿った実質的な流体流れは、瞬間的な圧力パルスを、流体流れに沿って向けられたベクトル上で有効に作用させるために必要とされる。粒子は、入口チャネル内で中心に位置していてもよく、通常、選別装置が作動し、目標粒子を選別チャネルに向かって押し付けない限り、廃棄オリフィスへ流れる。この中心配置は、粒子を流体流れ内のある領域に集中させるために、微細加工された流体マニホールドによって達成されてもよい。マニホールドは、試料入口およびシース流体チャネルを有していてもよい。次いで、組み合わされた流れは、粒子を流れの中の特定の平面に集中させる傾向がある、入口チャネルに接続された集中エレメント、ここではz-集中チャネルの周囲を流れてもよい。次いで、組み合わされた流れは、「y-交差箇所」のような別の交差箇所を通過してもよく、これは、粒子の平面の上方および下方に付加的なシース流体を導入する。y-交差箇所において、2つの流れは、z-集中チャネル330に対して直交する実質的に逆平行方向からz-集中チャネル330に接続してもよい。この交差は、実質的に流れの中心において、粒子の平面を一点に圧縮してもよい。粒子をある体積に集中させることは、その位置における不確実性、ひいてはタイミングにおける不確実性を減らす傾向がある。したがって、このような流体力学的集中は、選別操作の速度および/または精度を改善することがある。
【0047】
図2から分かるように、廃棄チャネル65はかなり短くてもよく、過度に低い流体抵抗を有する、より大きな鉛直方向流れチャネルと流体連通していてもよい。これは、重要な設計的特徴であることがある。なぜならば、可動部材80の後側における流体圧力は、可動部材を作動させることができる速度、ひいては選別機の速度に対する制限要因であることがあるからである。この背圧を最小限にすることによって、装置の速度が高められることがある。低い流体抵抗で流体連通した可動部材80を有することにより、流体のこの大きな体積は、背圧を最小限に減らし、選別速度を最大限に高めてもよい。加えて、可動部材の後側への背圧を低下させることで、作動によって生じる入口流れに対する妨害を減らすことがある。流れ妨害の減少は、高い選別速度用途では特に重要である。
【0048】
廃棄オリフィス60は、製造平面に対して略直交して、すなわち試料チャネル15および選別チャネル35に対して直交して、かつ可動部材80および81の運動平面に対して直交して配置されていてもよい。これらの特徴は、発明の範囲にとって必要ではないが、発明は、これらの特徴に限定されると解釈されるべきではなく、これらの特徴は、ここで説明された実施形態の間で共通であってもよい。
【0049】
図3は、瞬間的圧力選別機の別の実施形態102を示している。図3に示した実施形態では、選別機は、図2の実施形態101におけるような作動からの解放ではなく、可動部材80の作動時に選別してもよい。
【0050】
図3に示した実施形態102では、試料流は、やはり、入口リザーバ10から進入し、入口チャネル15を流れ、レーザクエリゾーン20を通過してもよい。粒子は、粒子をレーザ放射することによって問い合わせられる。所望の目標粒子5は、目標粒子に結合された蛍光タグの存在により、放射により蛍光を発してもよい。蛍光の存在または不存在から、目標粒子または非目標材料のいずれが入口チャネル15を通過しているかが判定されてもよい。目標粒子が検出された場合、コンピュータは、やはり、アクチュエータに選別パルスを送信する。これにより、選別機能が行われる。
【0051】
実施形態102のための選別機能は、加圧された流体を圧力チャネル85に押し込む、可動部材80の後退であってもよい。圧力のこのパルスは、目標粒子5を試料チャネル15から選別チャネル35内へ方向転換してもよい。選別チャネル35から、目標粒子は選別リザーバ30に貯蔵されてもよい。やはり、作動手段は、電磁式であってもよく、可動部材80は、磁束の拡散源に静電的に引き付けられる。
【0052】
透過性特徴50は、基板に埋め込まれていてもよく、外部の電磁石400と相互作用してもよい。電磁石400が作動すると、コアから、次いで、透過性特徴50から出た磁束が、透過性の可動部材80を透過性特徴50に向かって引き付け、ばね70をたわませる。電磁石が休止しているとき、図1aおよび図1bに示したように、ばねが可動部材80を元の位置へ戻す。
【0053】
圧力チャネル85内の圧力パルスは、目標粒子5を、試料チャネル15の反対側に配置された選別チャネル35へ押し込んでもよい。
【0054】
図4は、瞬間的な圧力パルスを用いる粒子選別装置の別の実施形態103を示している。この実施形態の顕著な特徴は、瞬間的な圧力パルスが正および負の両方である、すなわち、一方の可動部材80が、正の圧力パルスによって目標粒子5を押し込む一方で、別の可動部材82は、負の圧力パルスによって目標粒子5を引き込む。
【0055】
図4に示した実施形態103では、試料流は、やはり、入口リザーバ10から進入し、入口チャネル15を流れ、レーザクエリゾーン20を通過してもよい。粒子は、粒子をレーザ放射することによって問い合わせられてもよい。所望の目標粒子5は、目標粒子5に結合された蛍光タグの存在により、放射により蛍光を発してもよい。蛍光の存在または不存在から、目標粒子5または非目標材料のいずれが入口チャネル15を通過しているかが判定されてもよい。目標粒子5が検出された場合、コンピュータは、やはり、アクチュエータに選別パルスを送信する。これにより、選別機能が行われる。
【0056】
信号に応じて、コンピュータは、目標粒子5がチャネル内に存在し、選別されるべきであることを判定してもよい。この場合、コンピュータは、電流発生装置に信号を送信してもよく、電流発生装置は、電磁石400のコイル(図示せず)に電流を流してもよい。電磁石コア40および45は、透過性特徴50および55に進入する磁束を生じる。次いで、磁束は、特徴50および55の先端から出て、遠くの磁界において電磁石のS極へ戻る。
【0057】
この磁束の発生の結果、可動部材80および82はそれぞれの透過性の極50および55に向かって引き付けられる。可動部材80および82により、圧力パルス(可動部材80の場合には正、可動部材82の場合には負)が試料流に加えられてもよく、可動部材80からの正圧パルスは流体および目標粒子5を押し込み、可動部材82からの負圧パルスは試料流体および目標粒子5を引き込む。しかしながら、両圧力パルスは、目標粒子5を選別チャネル35内へ、最終的には選別リザーバ30内へ促す傾向がある。瞬間的な圧力パルスを用いる粒子選別装置100~106は、目標粒子5を選別チャネル35へ押し込む、目標粒子5を選別チャネル35へ引き込むまたは目標粒子5を選別チャネル35内へ押し込みかつ引き込んでもよい。その他の実施形態のように、復元ばね70および75は、可動部材80および82を元の位置へ戻してもよい。
【0058】
したがって、図4に示した実施形態103は、「プッシュ-プル」タイプであってもよく、一方の可動部材80が流体をチャネル35へ押し込む一方で、他方の可動部材82は流体をチャネル35へ引き込む。図4に示した実施形態を用いて、押し込み可動部材80および引き込み可動部材82の両方は、1つの電磁コイル(図4には示されていない)によって作動されてもよい。したがって、幾つかの実施形態では、可動部材80および82の両方が、装置103の一方の側に配置された1つの電磁コイルによって作動されてもよい。電磁石400は、基板自体の境界部の外側に配置されていてもよく、基板は、透磁性の極50および55を含む、構造の残りを含んでいる。したがって、幾つかの実施形態では電磁石モータであると理解されてもよい力発生手段400は、機構の残りを支持する基板に機械的に取り付けられていなくてもよい。
【0059】
図4に見られるように、プッシュ-プル構成は、閉じ込められたチャネル内で所定の体積の流体を前後に移動させるように構成されていてもよい。これは、より小さな体積の流体が移動されるという点で利点を有していてもよく、これにより、流体抵抗は最小限に減少し、選別速度が最大化される。また、入口流れの妨害が減少することがある。
【0060】
図5は、瞬間的な圧力パルスを用いる粒子選別装置の別の実施形態104を示している。この実施形態の顕著な特徴は、押し込み可動部材(80)と引き込み可動部材(82)とによって交換される流体の体積が、図4に示した前の実施形態よりも実質的に小さいということである。
【0061】
図5に示した実施形態104は、これもプッシュ-プルタイプの作動機構であるという点で、図4に示した実施形態と類似である。上記のように、図4に示した実施形態では、試料流は、入口リザーバ10から進入し、入口チャネル15を流れ、レーザクエリゾーン20を通過してもよい。粒子は、粒子をレーザ放射することによって問い合わせられる。所望の目標粒子5は、目標粒子5に結合された蛍光タグの存在により、放射により蛍光を発してもよい。蛍光の存在または不存在から、目標粒子5または非目標材料のいずれが入口チャネル15を通過しているかが判定されてもよい。目標粒子5が検出された場合、コンピュータは、やはり、アクチュエータに選別パルスを送信する。これにより、選別機能が行われる。
【0062】
選別パルスが電磁石に加えられると、可動部材80は、透過性特徴50に向かって引き付けられてもよく、流体を右へ押し付け、選別チャネルへの入口において高圧の瞬間的な流体圧力領域85を形成する。この高圧パルスは、目標粒子5を選別チャネル35へ押し込む傾向がある。同時に、引き込み可動部材82は、透過性特徴55と相互作用してもよく、それにより、透過性の極55に向かって引き付けられ、これが、流体をさらに選別チャネル35に沿って吸い込む。この低圧パルスは、目標粒子5を選別チャネル35へ引き込む傾向がある。流れは継続するので、目標粒子5は、最終的に選別リザーバ30へ流入する。
【0063】
図4に示した実施形態103と比較した、図5に示した実施形態104の1つの異なる態様は、透過性特徴50および52において磁界を駆動する電磁石が、チップの互いに反対側にあることが要求されることがあるということである。すなわち、一方の電磁石が、図の底部に配置されてもよく、他方の電磁石が、図の上部に配置される必要があることがある。これは、困難な製造問題を生じることがある。しかしながら、流体圧力チャネルにおける「死」容積は、80と82との間のより短い経路により、図4に示した実施形態103よりも、この実施形態104においてより小さいことがある。
【0064】
図6は、圧力選別装置の別の実施形態105の概略平面図である。実施形態105の顕著な特徴は、可動部材80が、流体の大きなリザーバと直接に流体連通しており、これにより、その移動に対して比較的小さな流体力学的抵抗があるということである。
【0065】
図6では、試料流は、やはり、入口リザーバ10において進入し、入口チャネル15に沿って、レーザクエリ領域20へ移動する。試料流は、目標粒子5および非目標材料を含んでもよい。クエリステーション20において、目標粒子5に対応する信号が検出されると、コンピュータは、その粒子5を選別するために信号を提供する。信号に基づき、電磁石(図示せず)が励磁され、磁束が極40から出て透過性特徴50に進入する。明らかに示されていないが、図1aおよび図1bに関して前に説明したように、可動部材80は、部材80に埋め込まれた透過性磁気材料130を有していてもよく、部材80を磁束に応答させる。透過性特徴50に存在する磁化により、可動部材80は透過性特徴50に向かって引き付けられ、これは、所定の体積の流体が圧力チャネル85から可動部材80によって選別チャネル35内へ押し込まれることを強制する。より高圧の流体のこのパルスにより、目標粒子5が選別チャネル35内へ、最終的に選別リザーバ30内へ逸らされてもよい。可動部材80が逸らされないとき、目標粒子は、妨げられることなく廃棄チャネル60まで通過する。
【0066】
この実施形態105では、廃棄チャネル60は、選別チャネル35および入口チャネル15の平面から外れて配置されていてもよい。可動部材80は、廃棄チャネル60とすぐに流体連通していてもよい。なぜならば、構造およびその動きは、図6に示したように、開口60の範囲と重なっていてもよいからである。したがって、廃棄チャネルは、チャネルの出口に取り付けられた大きな鉛直方向チャネルであるので、流れに対して過度に低い抵抗を有することがある。可動部材80は廃棄チャネル60と流体連通しているので、可動部材80の動きに対するその抵抗は、最小限であってもよい。廃棄チャネル60の寸法および配置を強調するために、廃棄チャネル60は、図6および図7に破線で示されている。
【0067】
図6に示した実施形態105は、可動部材80が透過性特徴50に向かって引き付けられたとき、高圧流体のパルスが入口チャネル15内へ押し込まれる、通常開放装置である。したがって、目標粒子5がレーザクエリ領域20において検出されると、選別チャネル35と廃棄チャネル65との交差箇所までの所定の時間のインターバルが考慮された後、電磁石400が励磁されてもよく、瞬間的な高圧の流体パルスがこの交差箇所で発生する。この圧力パルスは、目標粒子5を選別チャネル35内へ駆動することがある。
【0068】
図7は、この新規の装置の別の典型的な実施形態106の平面図における概略図である。実施形態106の顕著な特徴は、可動部材80の可動領域を増大させ、したがって、目標粒子における作用力を増大させるための、レバー、またはアームおよびジェット形成ノズルの使用である。
【0069】
図7においてもやはり、入口リザーバは10、選別リザーバは30、廃棄リザーバは60である。入口流は、入口オリフィス10で進入し、入口チャネル15に沿ってレーザクエリゾーン20を通過する。目標粒子5および流れは、廃棄チャネル65を介して廃棄チャネル60に向かって継続する。目標粒子5がレーザクエリゾーン20内で検出されると、コンピュータは、その粒子5を選別するために信号を提供する。信号に基づき、電磁石(図示せず)が消磁されてもよく、磁束は、透過性極片50から消失する。極片50の消磁により、可動部材80は、極50から解放され、製造されたときの位置へ戻り、所定の体積の流体が、ピストン領域から入口チャネル15へ押し込まれる。より高圧の流体のこのパルスにより、目標粒子5が選別チャネル35内へ、最終的に選別リザーバ30内へ逸らされる。可動部材80が逸らされないとき、目標粒子は、妨げられることなく廃棄チャネル60まで通過する。装置は、代替的に、アクチュエータが励磁または消磁されたときのいずれかに圧力パルスを発生させるように設計されてもよいことが明らかであるべきである。
【0070】
実施形態106の電磁アクチュエータ機構は、可動構造80に埋め込まれた透過性特徴130から成っていてもよい。可動構造80は、アーム90によって可動構造80に接続されたピストン状構造95を有していてもよい。このアーム90は、前の実施形態よりも、ピストン95に、より大きな可動範囲もしくは運動範囲を提供することがある。この付加的な可動範囲は、圧力チャネル85内へ噴射される加圧された流体の強さまたは体積を増大させてもよく、したがって、発生するジェットの速度を高める。
【0071】
可動構造80は、アーム90、およびかなりきつく嵌っているチャネルまたは管97内のピストン95として構成されていてもよい(図8参照)。ピストン95は、液体を、きつく嵌っているチャネルまたは管97の端部に配置されたノズル120へ押し込む。流体はピストン95によって圧縮されるので、流体の圧力が高まり、流体はノズル120へ押し込まれ、圧力チャネル85内への高圧流体の噴射となる。この圧力により、入口流に浮かぶ目標粒子5は、選別チャネル35内へ、次いで、選別リザーバ30内へ押し込まれることがある。
【0072】
図7に示した実施形態106は、廃棄チャネル60が、下にある基板に形成された鉛直方向チャネルであるという点で、図5に示した実施形態と同様である。この直交ジオメトリの付加的な詳細は、引用したことによりその全体が本明細書に組み込まれる、2016年6月21日に発行された米国特許第9372144号明細書に示されている。
【0073】
図8は、図7の実施形態106をより詳細に示している。図8では、入口チャネルは10、選別チャネルは30、廃棄チャネルリザーバは60である。入口流は、入口オリフィス10において進入し、入口チャネル15に沿ってレーザクエリゾーン20を通過する。目標粒子5および流れは、廃棄チャネル65を介して廃棄チャネルリザーバ60に向かって継続する。目標粒子5がレーザクエリゾーン20内で検出されると、コンピュータは、その粒子5を選別するために信号を提供する。信号に基づき、電磁石(図示せず)は消磁され、磁束は、透過性極片50から消失する。明らかに示されていないが、図1aおよび図1bに関して前に説明したように、可動部材80は、部材80に埋め込まれた透過性磁気材料130を有していてもよく、部材80を磁束に応答させる。極片50からの磁化消失により、可動部材80が極50から解放され、これにより、所定の体積の流体がノズル領域2から選別チャネル35内へ押し込まれる。より高圧の流体のこのパルスにより、目標粒子5が選別チャネル35内へ、最終的に選別リザーバ30内へ逸らされる。可動構造80が逸らされないとき、目標粒子は、妨げられることなく廃棄チャネル65まで通過する。
【0074】
多くの実施形態では、復元ばね70は、可動部材80を非作動位置へ戻すために使用されてもよい。すなわち、作動力または作動機構が休止しているとき、可動部材80を元の位置へ戻すための力が必要とされることがある。復元ばね70は、可動部材の形成後に残された基板材料の峡部であってもよい。基板材料が単結晶シリコンであるならば、復元ばね70も単結晶シリコンであることができる。その結果、ばねは、さらに、この材料の顕著な機械的特性により、かなり狭く、しかしながら剛性に形成されてもよい。しかしながら、その他のタイプの復元ばねが使用されてもよい、または可動部材は、反対方向に力発生機構によって力を加えることによって元の位置へ戻されてもよい。
【0075】
やはり、電磁アクチュエータ機構は、可動構造80に埋め込まれた透過性特徴130を有していてもよい。可動構造80は、かなりきつく嵌っているチャネルまたは管97内のピストン95として構成されていてもよく、ピストン95はアーム90によって可動部材80に接続されている。ピストン95は、液体を、きつく嵌っているチャネルまたは管97の端部に配置されたノズル120へ押し込んでもよい。流体はピストン95によって圧縮されるので、流体の圧力が高まり、高圧流体のパルスにおいてノズル120から押し出される。流体は、入口チャネル15内へ排出されてもよい。この圧力は、入口流に浮かぶ目標粒子5を、選別チャネル35内へ、次いで、選別リザーバ30内へ押し込んでもよい。
【0076】
図8に示したように、ピストン95の軸線と入口チャネル15の中心線との間に所定の角度が存在してもよい。この角度は、参照符号3として図示されている。この角度は、性能に対して決定的な効果を有することがあり、図9を参照して後述する。したがって、この新規の装置における通路は、試料入口チャネルおよび/または廃棄チャネルに対して略直交していないことに留意すべきである。以下に説明するように、この非直交角度は、重要な設計的選択であってもよく、以下でさらに説明するように、装置の全体的な作動に有利な形式で影響することがある。
【0077】
別の重要なパラメータは、ノズル120のための開口寸法である。より大きな開口は、加圧流体の体積を増大させることがあるが、圧力を減らし、かつ発生するジェットの狭さを減らすことがある。微細加工された入口チャネルおよび選別チャネルは、通常1つのファイル内に細胞サイズの粒子を受け入れるために十分な幅の、約20ミクロン~約50ミクロンのオーダであってもよい。
【0078】
典型的な実施形態では、ピストン幅1は約30ミクロン、ノズル幅2は約4ミクロン、ノズル角度3は約45度、チャネル幅(入口チャネルおよび選別チャネル)は約50ミクロンである。
【0079】
図9は、ノズル120が圧力の瞬間的なパルスを発生させるときの圧力チャネル内の流れのモデル化された詳細を示している。図9aでは、ピストンは、ちょうど流体をノズル120から押し出し始めている。図9bでは、最大の瞬間的な圧力が発生し、目標粒子5を選別チャネル35の開口に向かって押し付けている。図9cでは、圧力パルスはほとんど消失しており、目標粒子5は十分に選別チャネル35内へ入っている。図9cにおいておよびその後、流れは、比較的妨げられない状態に戻り、次に説明するように、試料流の80%は廃棄チャネルへ流入し、約20%は選別チャネルへ流入する。
【0080】
瞬間的圧力選別機において観察される効果のうちの1つは、アクチュエータからの圧力の提供が、加圧された流体を選別チャネル内へ噴射するということである。この流体圧力は、選別チャネル、試料チャネルおよび廃棄チャネルにわたって伝わり、入口チャネルにおける流速を減速させる。なぜならば、この流体圧力は、通常この流れに逆らうように作用するからである。この瞬間的効果は、チャネルに沿って流れる流量の不確実性を生じ、このことは、いつ目標粒子5が選別領域に到達するかのタイミングに影響し、したがって、瞬間的効果は、選別における不確実性を生じる。したがって、瞬間的圧力パルスの作用(あらゆる発生源からの)は、それによって装置が作動されてもよい選別装置または選別速度の純度または歩留まりの低下を生じることがある。
【0081】
図10aおよび図10bはこの効果を示している。図10aは、ノズル角度に関する入口流量の逸れのプロットを示している。高流量ジェットがノズルから出るとき、圧力がチャネル内の流れに抵抗することがあり、レーザクエリゾーン20およびノズル領域120内の流速を減速させる。言い換えれば、入口流量は、ジェットが作動すると減少することがあり、減少の大きさは、ノズル角度に依存することがある。流量のこの変化により、試料チャネル15内の目標粒子5の速度はより不確実性を有している。これは、後続の粒子のタイミングに不確実性を付加し、これにより、粒子を選別することができる速度を制限する。図10aに見ることができるように、摂動の大きさは、ノズルがチャネルに対して形成する角度に依存する。90度の角度(直交)では、摂動は深刻である。45度では、摂動は、約3~5倍減じられる。より小さなノズル角度は、入口流をより摂動させない。したがって、次に選別される細胞のための速度測定は、より正確になる。しかしながら、0°では、目標粒子5を選別することは不可能である。なぜならば、選別された粒子が進入することができる特有の流れチャネルが存在しないからである。言い換えれば、選別チャネルは廃棄チャネルと同じであり、それにより、選別は不可能であり、または少なくとも選別純度が、角度がより浅くなるほど著しく悪化することがある。プッシュ-プル構成を用いることにより、入口流体流量の摂動をほぼゼロに減らすことが可能である場合があることに留意すべきである。なぜならば、押付け部材による減速が、引き付け部材による加速によって相殺されることがあるからである。
【0082】
最適化研究は、最適性能が約45度のノズル角度で達成されることを明らかにしている。より大きな角度では、流量摂動はより大きくなり、選別精度を低下させる。より小さな角度では、目標粒子を選別チャネルへ駆動する有効な力が減少する。また、選別精度も低下する。なぜならば、意図しない粒子が不意に選別チャネルへ流入する可能性があるからである。図10bは、選別チャネルと、試料入口および廃棄チャネルとの間の角度への機能的依存を示している。図10bに示したように、約45度の最適角度が存在し、流れチャネルの圧力摂動が最小限に減少し、これにより、圧力パルスの有効性が最大化される。有効範囲は、約30~約60度であってもよいが、約45度が最適である。
【0083】
したがって、ノズル角度は、入口流摂動および選別効率の両方に影響することがある。角度がより小さくなるに従い、ジェットはより有効でなくなり、目標粒子5を選別チャネルに押し込むことができないことがある。その結果、約45度であってもよいノズル角度の場合に最適値があってもよい。
【0084】
図11は、選別機構の下流の出口チャネルの間の相対流量、すなわち流体の流れに対する経路の相対抵抗を示す概略図である。図11では、水平のチャネルは廃棄経路であり、傾斜したチャネルは選別経路である。見られるように、前に説明した、廃棄/入口経路と選別経路との間の角度が存在する。しかしながら、別の重要な設計的考慮は、他方に対する一方の経路の流体抵抗である。特に、選別経路の流体抵抗は、廃棄経路の流体抵抗の倍数であるべきである。実際、廃棄経路抵抗に対する選別経路流体抵抗の比は、5のオーダにおける数字であるべきであることが示されている。チャネル内への著しい流れにより、比較的穏やかな瞬間的圧力パルスが、目標粒子5を選別チャネルへ流入させることができる。すなわち、選別チャネル内の流れに対する抵抗は、廃棄経路内の流れに対する抵抗より5倍のオーダで大きくあるべきであり、これにより、選別経路よりも廃棄経路へ5倍多い流体が流入する。したがって、幾つかの実施形態では、流れの20%は選別チャネルへ流入してもよく、80%は、通常、廃棄チャネルへ進入する。選別チャネルへの流れが少なすぎると、圧力パルスは、目標粒子を選別チャネル内へ移動させることに対して有効でなくなる。
【0085】
選別経路流体工学抵抗Rsおよび廃棄Rwの正しい比を有することが重要であることがある。別の実施形態では、これらの量Rs/Rwのための比は、5のオーダであってもよい。選別経路に沿った多すぎる流れは、(作動さえなしに)選別リザーバへ移動する望ましくない粒子を結果として生じ、選別経路内の大きすぎる抵抗は、瞬間的圧力パルス選別を有効でなくする。
【0086】
選別装置10,100,101,102,103,104,105および106は全て、類似のリソグラフィプロセスを用いて形成されてもよい。透過性の埋め込まれた特徴は、例えば、基板の表面からエッチング除去された凹みにめっきされてもよいニッケル-鉄パーマロイ(50~80%Niおよび40~20%Fe)であってもよい。埋め込まれた材料130が、オーバーめっき(基板の表面のレベルより高くめっき)されているならば、埋め込まれた材料130は、例えば化学機械的研磨によって平坦に研磨されてもよい。
【0087】
可動部材80および82は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板のデバイス層を通じて深掘り反応性イオンエッチングによって形成されてもよい。可動構造は、エッチングされた輪郭の下の二酸化ケイ素層をエッチング除去することによって解放されてもよい。マイクロ流体チャネルも、DRIEを用いてデバイス層に形成されてもよい。チャネルは、光学的に透明な材料のルーフによってシールされてもよく、これにより、レーザ励起は、レーザクエリ領域20へ送られてもよい。ホウ珪酸塩ガラスは、微細加工された入口、選別および廃棄チャネルをカバーするための許容可能な透明材料であってもよい。
【0088】
可動部材80および82は、SOI基板のデバイス層から形成されていてもよいので、これらの構造は、著しく有利な機械的特性を有する単結晶シリコンを含んでもよい。これらの特徴には、極めて高い剛性、高いこわさおよび低いクリープが含まれる。この材料は、可動部材80を残りの基板に取り付けてもよい復元ばね70および75の形成のために特に有利であることがある。このばね70および75は、著しく薄くかつ可撓性に、ただし破壊およびクリープに対する抵抗の観点から極めて信頼できるように形成されてもよい。
【0089】
鉛直方向廃棄チャネル60は、付加的な基板に孔を形成し、付加的な基板をSOIウェハに接着することによって形成されてもよい。これらのデバイスの製造に関する付加的な詳細は、2016年6月21に発行された米国特許第9372144号明細書に見られることがある。
【0090】
基板に製造され、流体流れ内を流れる非目標材料から目標粒子を分離させてもよい微細加工された粒子選別装置が説明される。粒子分離装置は、やはり同じ基板上に製造された、非目標材料から目標粒子を区別する信号を生成する検出領域と、試料入口チャネルと、選別チャネルと、廃棄チャネルとを有していてもよく、目標粒子は、流体圧力の瞬間的なパルスによって、廃棄チャネルでなく選別チャネル内へ送り込まれ、圧力のパルスは、試料入口チャネルと同じ基板に製造されたアクチュエータによって発生される。
【0091】
瞬間的パルスは、周囲流体より高い圧力を有していてもよく、より高い圧力は目標粒子を選別チャネルへ押し込む。代替的に、瞬間的パルスは、周囲流体より低い圧力を有していてもよく、より低い圧力は目標粒子を選別チャネルへ引き込む。代替的に、瞬間的パルスは、周囲流体よりも、1つの位置におけるより高い圧力および別の位置におけるより低い圧力を有していてもよく、より高い圧力およびより低い圧力は目標粒子を選別チャネルへ方向付ける。瞬間的パルスは、基板に形成された、テーパしたノズルの先端部で発生してもよく、テーパしたノズルおよび選別チャネルは、廃棄チャネルに対して非直交角度で配置されており、かつレーザクエリ領域の下流に、互いに対して廃棄チャネルを横切って配置されている。角度は、30~60度であってもよい。
【0092】
アクチュエータは、静電力、電磁力および圧電力のうちの少なくとも1つに基づいて作動してもよい。廃棄チャネルは、選別および試料入口チャネルを含む平面に対して実質的に直交して配置されていてもよい。テーパしたノズルは、約3ミクロン~15ミクロンの幅を有していてもよい。流体流れは、アクチュエータが休止状態へ解放されながら(通常はオンである)選別チャネルへ逸らされてもよい。流体流れは、アクチュエータが休止状態から作動状態へ駆動されながら(通常はオフである)選別チャネルへ逸らされてもよく、試料入口流れは、アクチュエータが休止状態にあるとき(通常はオンである)選別チャネルへ流れてもよい。
【0093】
アクチュエータは、外部電磁石と、可動部材に埋め込まれた透過性材料との間に生じる電磁力によって作動される。可動部材は、外部電磁石の励磁に応答して移動してもよく、試料入口チャネルおよび選別チャネルをも含む平面内で移動し、外部電磁石と、可動部材に埋め込まれた透過性材料との間に生じる電磁力によって作動される。
【0094】
可動部材は、可動部材の形成後に残留する基板材料の峡部によって、基板にしっかりと接続されていてもよく、この基板材料の峡部は、電磁石が消磁されたときに可動部材を元の位置へ戻すための復元力を提供する。可動部材は、その移動の少なくとも一部にわたって、廃棄チャネル上に配置されていてもよく、これにより、通路は、可動部材が平面内の所定の位置に位置したまま目標粒子が試料入口チャネルから廃棄チャネルへ流れるために存在する。
【0095】
検出領域は、レーザ放射が試料流へ提供されるレーザ呼びかけ領域であってもよい。試料流は、識別光学信号を送信するために、レーザ放射と相互作用する蛍光タグがタグ付けされた、浮遊した目標粒子を含んでもよい。検出領域は、目標粒子を非目標材料から識別するために、目標粒子の機械的、光学的、電気的、磁気的または化学的特性のうちの少なくとも1つを測定してもよい。外部電磁石は、N極およびS極を有する1つの透過性コアの周囲に巻き付けられたコイルを有していてもよく、磁束は、N極から出て、空間を通過し、透過性コアのS極へ戻る。
【0096】
上記において概説した典型的な実施態様に関連して様々な詳細を説明してきたが、様々な代替例、変更例、変化例、改良および/または実質的な均等物が、既知であるか、現時点で予測されていないまたは現時点で予測されることがあるかにかかわらず、上記開示を検討することによって明らかになることがある。したがって、上記した典型的な実施形態は、例示的であり、限定的でないことが意図されている。
図1
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