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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/503 20210101AFI20220801BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20220801BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20220801BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20220801BHJP
   H01M 50/526 20210101ALI20220801BHJP
   H01M 50/507 20210101ALN20220801BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/516
H01M50/569
H01M50/522
H01M50/526
H01M50/507
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020553771
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040849
(87)【国際公開番号】W WO2020090492
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018205189
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 和昭
(72)【発明者】
【氏名】増田 洋昭
(72)【発明者】
【氏名】川崎 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0100761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有する複数の電池と、
前記電池の端子同士を繋ぐバスバーと、を有し、
前記バスバーは、繋がれる前記端子のそれぞれに接続される複数の接続面部と、前記複数の接続面部のそれぞれから立ち上がった複数の立ち上がり部と、前記複数の立ち上がり部を接続する接続部とを有すると共に、銅を含む銅部分と、アルミニウムを有するアルミニウム部分とから構成されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分は接合されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分との接合部は、前記接続面部に形成されており、
前記複数の接続面部は、互いに隣接して平面状に並んで配置される一対の接続面部を有しており、
該一対の接続面部の一方の接続面部は、前記アルミニウム部分と前記銅部分が重なって接合された異種金属接合部位であり、
該一方の接続面部は、
前記銅部分と前記アルミニウム部分のいずれか一方からなり前記電池の端子に接合される平板部と、
前記銅部分と前記アルミニウム部分のいずれか他方からなり前記立ち上がり部から対をなして互いに平行に突出して前記平板部に重なって接合される一対の腕部を有することを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記平板部には、該平板部を前記電池の端子にレーザ溶接で接合するための位置合わせ孔が前記一対の腕部の間から露出する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記平板部は、前記腕部に対して重なり方向一方側と他方側においてそれぞれ対向する基部と爪部を有しており、
前記接合部は、前記腕部と前記平板部の爪部との重なり部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記一方の接続面部は、電池の電圧を検出するための検出導体を有し
前記検出導体は、前記接続面部のうち、前記接合部、及び、前記バスバーと前記端子との接合部位を避けた部位に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項5】
端子を有する複数の電池と、
前記電池の端子同士を繋ぐバスバーと、を有し、
前記バスバーは、
繋がれる前記端子のそれぞれに接続される複数の接続面部と、前記複数の接続面部のそれぞれから立ち上がった複数の立ち上がり部と、前記複数の立ち上がり部を接続する接続部とを有すると共に、銅を含む銅部分と、アルミニウムを有するアルミニウム部分とから構成されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分は接合されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分との接合部は、前記立ち上がり部に形成されていると共に、前記銅部分の一部の面と前記アルミニウム部分との一部の面とが、鉤状に折れ曲がって互いの内面側が相対して接合されており、
前記複数の立ち上がり部は、対峙する一対の立ち上がり部を有しており、
前記一対の立ち上がり部のうちの一方の立ち上がり部は、前記アルミニウム部分と前記銅部分が重なって接合された異種金属接合部位であり、
前記一方の立ち上がり部は、
前記銅部分と前記アルミニウム部分のいずれか一方からなり前記接続面部に連続して形成される第1の平板矩形状部位と、
前記銅部分と前記アルミニウム部分のいずれか他方からなり前記接続部に連続して形成され、前記他方の立ち上がり部と対向する側面が、前記第1の平板矩形状部位の前記接続面部側の側面に重なって接合される第2の平板矩形状部位と、を有することを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
前記他方の立ち上がり部及び前記接続部には、前記第1の平板矩形状部位を露出させる切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記接合部には錫メッキ又はニッケルメッキが施されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
端子を有する複数の電池と、
前記電池の端子同士を繋ぐバスバーと、を有し、
前記バスバーは、繋がれる前記端子のそれぞれに接続される複数の接続面部と、前記複数の接続面部のそれぞれから立ち上がった複数の立ち上がり部と、前記複数の立ち上がり部を接続する接続部とを有すると共に、銅を含む銅部分と、アルミニウムを有するアルミニウム部分とから構成されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分は接合されており、
前記銅部分と前記アルミニウム部分との接合部は、前記接続面部に形成されており、
前記接合部は、前記アルミニウム部分と前記銅部分の一部が上下に重なり合って挟み込むように形成されていることを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池を備えた電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールを構成する複数の電池は、バスバーと呼ばれる接続導体によって端子同士が繋がれている。このバスバーに関する背景技術としては、例えば特許文献1に開示された技術が挙げられる。特許文献1には、銅材料で製作され、負極群に対してレーザ溶接される銅部分(701)と、アルミニウム材料で製作され、セル正極群に対してレーザ溶接されるアルミニウム部分(702)とを有し、この2種類の金属で成る2つの部分同士を、超音波ローラ・シーム溶接法を採用して線形溶接(705)するバスバーが記載されている(段落0064、0067、図15参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-515418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池の端子同士を繋ぐバスバーには、電池モジュールに加わる振動や電池の充放電による膨れなどによって応力が作用する。このため、特許文献1の技術のように、異材金属を接合したバスバーでは、異材金属間の接合部に応力が作用しても、異材金属間の接合部が剥がれないように、高い接合強度を確保する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の代表的な課題の一つは、バスバーの異材金属間の接合部において高い接合強度を確保することにある。
【0006】
上記課題を解決する本願の代表的な発明の一つは、端子を有する複数の電池と、いくつかの電池の端子同士を繋ぐバスバーとを有し、バスバーが、電池の端子に接続された複数の接続面部と、この複数の接続面部のそれぞれから立ち上がった複数の立ち上がり部と、この複数の立ち上がり部の間を接続する接続部とを有すると共に、銅を含む銅部分とアルミニウムを有するアルミニウム部分とから構成されており、銅部分とアルミニウム部分との接合部が、電池の端子に接続された接続面部に形成された電池モジュールであることを特徴とする。銅部分とアルミニウム部分との接合部が形成された接続面部は、強度部材である電池の端子に接続されている。これにより、銅部分とアルミニウム部分との接合部の剛性が上がって固有振動数が高くなるので、銅部分とアルミニウム部分との接合部に作用する応力が低減する。従って、銅部分とアルミニウム部分との接合部において高い接合強度を確保することができる。
【0007】
上記課題を解決する本願の代表的な発明の他の一つは、銅部分とアルミニウム部分との接合部が、接続面部から立ち上がった立ち上がり部に形成され、かつ立ち上がり部を形成する銅部分の一部の面とアルミニウム部分の一部の面とが、鉤状に折れ曲がって互いの内面側が相対して接合された電池モジュールであることを特徴とする。立ち上がり部を形成する銅部分の一部の面とアルミニウム部分の一部分の面とが、鉤状に折れ曲がって互いの内面側が相対して接合されると、銅部分とアルミニウム部分との接合部に作用する応力の方向とは反対の方向の反力を銅部分とアルミニウム部分との接合部に作用させるので、銅部分とアルミニウム部分との接合部に作用する応力が低減する。従って、銅部分とアルミニウム部分との接合部において高い接合強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
本願の代表的な発明によれば、銅部分とアルミニウム部分からなる異材金属間の接合部において高い接合強度を確保することができるので、振動などに対する電池モジュールの耐性を向上させることができ、耐性に優れた信頼性の高い電池モジュールを提供することができる。
【0009】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る電池モジュールの外観斜視図。
図2図1に示す電池モジュールの分解斜視図。
図3図1に示す電池モジュールの要部の断面を拡大して示す断面図。
図4図3に示すバスバーの斜視図。
図5図3に示すバスバーの平面図。
図6図1に示す電池モジュールのモジュール端子の拡大斜視図。
図7図6のVII-VII線に沿うモジュール端子の拡大断面図。
図8図6に示すモジュール端子の一方に接続されたヒューズ付きバスバーの斜視図。
図9図6に示すモジュール端子とは異なる他方のモジュール端子に接続されたバスバーの斜視図。
図10】本発明の実施形態2に係る電池モジュールの単電池間を接続するバスバーの斜視図。
図11図10に示すバスバーの平面図。
図12図10に示すバスバーの側面図。
図13】本発明の実施形態3に係る電池モジュールの単電池間を接続するバスバーの斜視図。
図14図13に示すバスバーの平面図。
図15図13に示すバスバーの側面図。
図16】セル端子上に設置されたバスバーの斜視図。
図17】接続面部を構成する銅部分に電圧検出線接合部が設けられた構造を有するバスバーの斜視図。
図18】接続面部を構成するアルミニウム部分に電圧検出線接合部が設けられた構造を有するバスバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
各図面を用いて電池モジュールの各部の構成を説明する場合、図示のx軸、y軸、z軸の直交座標系を用いたり、上下左右前後の各方向を用いたりするが、これらの軸や方向は、図示された状態を説明する上で便宜的に使用するものであって、電池モジュールの姿勢や配置を限定するものではない。
【0013】
[実施形態1]
図1から図9は、本発明の実施形態1を示す図である。
まず、図1および2を用いて電池モジュール100の構成を説明する。ここで、図1は電池モジュール100の外観斜視図、図2は、電池モジュール100の分解斜視図である。
【0014】
電池モジュール100は、主に、外部端子であるモジュール端子101P,101Nと、複数の単電池1を含む電池群10と、この電池群10の複数の単電池1を電気的かつ機械的に接続すると共に、電池群10とモジュール端子101P,101Nとを電気的かつ機械的に接続するバスバー2とを備えている。詳細な構成は後述するが、本実施形態では、複数の単電池1を電気的かつ機械的に接続するバスバー2に最大の特徴がある。さらに、電池モジュール100は、前述の構成要素に加えて、筐体20や、図示省略した電子回路基板などを備えている。
【0015】
電池群10は、扁平角形の単電池1、すなわち厚さ寸法が幅寸法と高さ寸法よりも小さい薄型の六面体または直方体形状の単電池1を、厚さ方向(x軸方向)に積層させて構成されている。単電池1は、角形リチウムイオン二次電池であり、扁平角形の電池容器1aと、この電池容器1aの内部に収容された図示省略する電極群および電解液と、この電極群に接続されて電池容器1aの高さ方向の上端面に配置された一対のセル端子1p,1nとを備えている。ここで、セル端子1pは正極の端子であり、セル端子1nは負極の端子である。
【0016】
単電池1のセル端子1p,1nは、電池容器1aの上端面から高さ方向に突出したおおむね直方体の立体的な形状を有している。セル端子1p,1nと電池容器1aとの間、および、電池容器1aと電極群との間は、それぞれ、樹脂製の絶縁部材によって電気的に絶縁されている。電池群10を構成する複数の単電池1は、互いに隣接する一方の単電池1の正極のセル端子1pと、他方の単電池1の負極のセル端子1nとが、積層方向(x軸方向)に隣り合うように交互に180°反転させて積層されている。
【0017】
筐体20は、長さ方向(x軸方向)の寸法が、幅方向(y軸方向)および高さ方向(z軸方向)の寸法よりも大きいおおむね直方体の形状を有し、電池群10を構成する複数の単電池1を保持している。より具体的には、筐体20は、複数のセルホルダ21と、一対のエンドプレート22と、一対のサイドプレート23と、インシュレーションカバー24と、モジュールカバー25とを有している。
【0018】
セルホルダ21は、樹脂材料、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene terephthalate)によって構成されている。セルホルダ21は、厚さ方向(x軸方向)に積層された複数の単電池1の互いに隣接する単電池1の間に介在され、個々の単電池1を厚さ方向(x軸方向)の両側から挟み込むように保持している。電池群10を構成する複数の単電池1の積層方向(x軸方向)において、電池群10の両側に配置された一対のセルホルダ21に、電池モジュール100の外部端子であるモジュール端子101P,101Nが設けられている。ここで、モジュール端子101Pは正極の端子であり、モジュール端子101Nは負極の端子である。
【0019】
一対のエンドプレート22は金属製の板状の部材である。一対のエンドプレート22は、電池群10を構成する複数の単電池1の積層方向(x軸方向)において、電池群10の両側に配置された一対のセルホルダ21を介して、電池群10の両側に配置されている。一対のエンドプレート22は、一方の面がセルホルダ21に保持された複数の単電池1を挟み込むように対向し、電池群10と反対側の外側を向く他方の面に固定部22aが設けられている。
【0020】
一対のエンドプレート22に設けられた固定部22aは、おおむね円筒状に形成され、円筒面の一部がエンドプレート22の外側の面から、外側へ向けて突出している。円筒状の固定部22aは、エンドプレート22の高さ方向(z軸方向)に平行な中心軸に沿って穿孔されたボルト孔を有している。このエンドプレート22の固定部22aは、車両やその他の機械などの外部機構に対して、電池モジュール100を固定するための部分である。このエンドプレート22の固定部22aの下端面は、上記のような外部機構によって支持される筐体20の支持面20aである。
【0021】
すなわち電池モジュール100は、エンドプレート22の固定部22aの底面である筐体20の支持面20aを外部機構によって支持し、固定部22aのボルト孔に挿通させたボルトを、外部機構の雌ねじまたはナットに螺合させて締結することで、外部機構に固定することができる。換言すると、電池モジュール100は、ボルトによって外部機構に固定された状態で、エンドプレート22の固定部22aの下端面である筐体20の支持面20aが、外部機構に支持された状態になる。
【0022】
電池モジュール100が電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される場合、電池モジュール100が固定される外部機構は、これらの車両の車体である。特に限定はされないが、電池モジュール100が固定される車両が水平な路面上に置かれた状態で、電池モジュール100の筐体20の長さ方向(x軸方向)および幅方向(y軸方向)は、水平方向におおむね平行であり、電池モジュール100の筐体20の高さ方向(z軸方向)は、鉛直方向におおむね平行である。また、この状態で、筐体20の支持面20aは、おおむね水平面と平行になる。
【0023】
一対のサイドプレート23は、電池群10を構成する複数の単電池1の幅方向(y軸方向)の両側にセルホルダ21を介して配置されている。一対のサイドプレート23は、おおむね矩形板状の金属製の部材であり、筐体20の幅方向(y軸方向)の両側に互いに対向するように配置されている。一対のサイドプレート23は、おおむね長方形であり、電池群10を構成する複数の単電池1の積層方向(x軸方向)が長辺方向すなわち長手方向とされ、電池群10を構成する複数の単電池1の高さ方向(z軸方向)が短辺方向すなわち短手方向とされている。一対のサイドプレート23の長手方向の両端部は、リベットやボルトなどの締結部材によって一対のエンドプレート22に締結されている。一対のサイドプレート23の短手方向の両端部はそれぞれ、セルホルダ21に設けられた凹状の溝部に係合している。
【0024】
インシュレーションカバー24は、PBT等の電気絶縁性を有する樹脂製の板状の部材であり、単電池1のセル端子1p,1nが設けられた電池容器1aの上端面に対向して配置されている。インシュレーションカバー24は、複数の単電池1のセル端子1p,1nの上端面を露出させる開口部と、互いに隣接する単電池1のセル端子1p,1nの間および互いに隣接するバスバー2の間を絶縁する隔壁とを有している。インシュレーションカバー24の隔壁は、単電池1のセル端子1p,1nおよびバスバー2の周囲を囲むように設けられている。また、インシュレーションカバー24には、電池群10および電子回路基板に接続される各種の電気配線が配置される。
【0025】
図示省略した電子回路基板は、インシュレーションカバー24とモジュールカバー25との間、すなわち筐体20の高さ方向において、インシュレーションカバー24の電池群10と反対側に配置され、リード線やプリント配線などの接続導体を介して複数のバスバー2や、単電池1の温度を検出するための温度センサ(サーミスタ)と電気的に接続されている。
【0026】
バスバー2は、電池群10の複数の単電池1を電気的かつ機械的に接続すると共に、電池群10とモジュール端子101P,101Nとを電気的かつ機械的に接続する接続導体である。
【0027】
電池群10の複数の単電池1を電気的かつ機械的に接続するバスバー2は、単電池1間を電気的かつ機械的に接続する複数のバスバー2Aであり、インシュレーションカバー24の開口に露出した電池群10の複数の単電池1のセル端子1p,1nの上端面に溶接により接合されている。積層方向に互いに隣接する一対の単電池1のうち、一方の単電池1のセル端子1pと、他方の単電池1のセル端子1nとをバスバー2Aによって電気的に接続することにより、すべての単電池1が電気的に直列に接続された電池群10を構成することができる。
【0028】
電池群10をモジュール端子101P,101Nに接続するバスバー2は、電池群10の単電池積層方向の両端に配置された一対のバスバー2Bである。一対のバスバー2Bの一方は、複数の単電池1の積層方向の両端に配置された一対の単電池1のうち、一方の単電池1のセル端子1pに電気的かつ機械的に接続されている。一対のバスバー2Bの他方は、複数の単電池1の積層方向の両端に配置された一対の単電池1のうち、他方の単電池1のセル端子1nに電気的かつ機械的に接続されている。
【0029】
一対のバスバー2Bの一方の一端は単電池1のセル端子1pの上端面に溶接により接合され、他端は、電池群10の単電池積層方向の一方側に配置されたモジュール端子101Pにリベットやボルトなどの締結部材によって締結されている。一対のバスバー2Bの他方の一端は単電池1のセル端子1nの上端面に溶接により接合され、他端は、電池群10の単電池積層方向の他方側に配置されたモジュール端子101Nにリベットやボルトなどの締結部材によって締結されている。
【0030】
モジュールカバー25は、PBT等の電気絶縁性を有する樹脂製の板状の部材であり、筐体20の高さ方向(z軸方向)において、電池群10と反対側の筐体20の上端に、インシュレーションカバー24および電子回路基板を覆うように配置されている。モジュールカバー25のモジュール端子101P,101Nに対応する位置には、モジュール端子101P,101Nの上部を覆うように、端子カバー25aを設けている。モジュールカバー25は、インシュレーションカバー24の枠部24aに設けられた係合爪24bを側縁に係合させることによって、インシュレーションカバー24の上部に固定されている。
【0031】
以上のように構成された電池モジュール100は、モジュール端子101P,101Nが、電力変換装置であるインバータ装置を介して外部の発電機や電動機に電気的に接続されることにより、インバータ装置を介して外部の発電機や電動機との間で電力の授受を行うことができる。
【0032】
次に、バスバー2の構成について詳細に説明する。
【0033】
まず、図3乃至5を用いてバスバー2Aの構成を詳細に説明する。ここで、図3は電池モジュール100の拡大断面図、図4はバスバー2Aの斜視図、図5はバスバー2Aの平面図である。前述のように、本実施形態の電池モジュール100では、バスバー2Aの構造に最大の特徴がある。
【0034】
図3に示すように、バスバー2Aは、単電池積層方向に隣接する単電池1の一方のセル端子1pと他方のセル端子1nとを電気的かつ機械的に接続する接続導体であると共に、銅を含む銅部分2eとアルミニウムを有するアルミニウム部分2fとを接合して形成した異種金属接合構造体である。
【0035】
バスバー2Aは、一対の接続面部2c1,2c2と、この一対の接続面部2c1,2c2の間を繋ぐブリッジ部2dとを有してなる。
【0036】
一対の接続面部2c1,2c2のうち、セル端子1pと接合された接続面部2c1は、アルミニウム部分2fのみによって形成された平板矩形状の部位であり、セル端子1pの頂部表面に配置されてレーザ溶接により接合されている。レーザ溶接では、接続面部2c1のセル端子1pとの位置合わせ孔2z(図4及び5を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c1の表面に当ててセル端子1pと接続面部2c1とを接合する。
【0037】
一方、負極のセル端子1nと接合された接続面部2c2は、銅部分2eとアルミニウム部分2fとがセル端子1nとの重なり方向(z軸方向)に重なり合って形成されたほぼ平板矩形状の部位であり、セル端子1nに銅部分2eがレーザ溶接により接合されている。そして、銅部分2eは、平板矩形状の平板部を構成しており、立ち上がり部である平板部2gから対をなして互いに平行に突出する一対の腕部2f1が、平板部に重なって接合されている。接続面部2c2は、銅部分2eからなる平板矩形状の部位上(セル端子1n側とは反対側)、つまり平板部の上に、アルミニウム部分2fからなる一対の腕部2f1が重なって接合された異種金属接合部位である。
【0038】
一対の腕部2f1は、ブリッジ部2dから接続面部2c2側に向かって突出するアルミニウム部分2fの短手方向(y軸方向)中央部分を突出端部からブリッジ部2d側に向かって切り欠くことによって形成されている。一対の腕部2f1の間には、位置合わせ孔2zを含む銅部分2eを露出させるように、ブリッジ部2d側に窪んだ平板凹形状の部位である窪み部2f2が形成されている。
【0039】
ここで、接続面部2c2のアルミニウム部分2fは、矩形平板がブリッジ部2d側に窪んだ平板凹形状の成形体であり、平板矩形状の銅部分2eの短手方向(y軸方向)の両端部の一部及び平板矩形状の銅部分2eのブリッジ部2d側端部のみが銅部分2eと重なり、他の銅部分2eを露出させている。このため、接続面部2c2の銅部分2eをセル端子1nにレーザ溶接により接合することが可能となる。レーザ溶接では、接続面部2c2の銅部分2eにおけるセル端子1nとの位置合わせ孔2z(図4及び5を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c2の銅部分2eの表面に当ててセル端子1nと接続面部2c2の銅部分2eとを接合する。
【0040】
接続面部2c2における銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合、つまり、銅部分2eの平板部とアルミニウム部分2fの一対の腕部2f1との接合には、超音波接合を用いている。本実施形態では、平板矩形状の銅部分2eの短手方向(y軸方向)の両端部におけるアルミニウム部分2fとの重なり部分を超音波接合による接合部2xとしている。超音波接合では、銅部分2eのアルミニウム部分2f側とは反対側をアンビル上に配置し、アルミニウム部分2fの銅部分2e側とは反対側の表面にホーンを当てて超音波振動を銅部分2eとアルミニウム部分2fとの重なり部分に加えることにより銅部分2eとアルミニウム部分2fとを接合することができる。超音波接合される銅部分2e或いはアルミニウム部分2f又はその両方の表面には錫メッキ或いはニッケルメッキなどの被膜処理を施している。
【0041】
このように本実施形態では、接続面部2c2に、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xを形成している。セル端子1nは強度部材であるので、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xを接続面部2c2に形成するということは、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xの剛性を上げて固有振動数を高くできるということである。従って、本実施形態では、電池モジュール100の振動などによって銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xに作用する応力を低減することができ、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xにおいて高い接合強度を確保することができる。これにより、本実施形態では、振動などに対する電池モジュール100の耐性を向上させることができ、信頼性の高い電池モジュール100を提供できる。
【0042】
ブリッジ部2dは、アルミニウム部分2fのみによって形成された逆U字形状の部位であり、接続面部2c1,2c2のそれぞれを構成するアルミニウム部分2fのブリッジ部2d側端部から上方に垂直或いは急峻な角度で立ち上がった一対の平板部2g(立ち上がり部という場合もある)と、この一対の平板部2gの間を繋ぐ折り返し部2h(接続部という場合もある)とを有してなる。折り返し部2hはアーチ状に湾曲している。
【0043】
接続面部2c2を構成する銅部分2eのアルミニウム部分2fから露出した部分のうち、平板矩形状の銅部分2eのブリッジ部2d側とは反対側に向かって突出する端部は、電圧を検出するための検出導体を構成するものであり、電圧検出用のリード配線(図示省略)がろう付や超音波溶接などにより接合される電圧検出線接合部2yとして設けられている。なお、電圧検出線接合部2yは、接続面部2c1を構成するアルミニウム部分2fに設けてもよい。
【0044】
また、例えば図17及び図18に示すように、接続面部2c1を構成するアルミニウム部分2f、又は、接続面部2c2を構成する銅部分2eから、電圧検出線接合部2yとして電圧検出線接合用端子を引き出し、この引き出し端子に電圧検出用のリード配線(図示省略)をろう付や超音波溶接などにより接合してもよい。さらには、引き出し端子とリード配線とを弾性部材により圧接する端子を用いて接続してもよい。
【0045】
次に、図6乃至9を用いてバスバー2Bの構成を詳細に説明する。ここで、図6は、図1に示す電池モジュール100の拡大斜視図、図7は、図6に示すVII-VII線に沿う拡大断面図、図8は、図6に示すモジュール端子101Nに接続されたバスバー2Bの斜視図、図9はモジュール端子101Pに接続されたバスバー2Bの斜視図である。なお、図6では、モジュールカバー25の一部である端子カバーを切除した状態を示す。本実施形態では、モジュール端子101Nに接続されたバスバー2Bに、電流経路における体積の最小の部分であるヒューズ部2aを設け、このバスバー2Bのヒューズ部2aの下方に、溶融したヒューズ2aを落下させるための空隙Sを有することに特徴がある。ここで、下方とは、筐体20の支持面20aが水平になるように電池モジュール100を設置したときの鉛直方向の下方を意味する。なお、ヒューズ部2aは、モジュール端子101Pに接続されたバスバー2Bに設けてもよい。
【0046】
まず、図6乃至8を用いて、モジュール端子101Nに接続されたバスバー2B1の構成を詳細に説明する。
【0047】
バスバー2B1は、x軸方向に並置された一対の接続面部2c1,2c2と、この一対の接続面部2c1,2c2の間をy軸方向に迂回するような形で繋ぐブリッジ部2dを有してなる。
【0048】
接続面部2c1,2c2は平板矩形状の部位である。モジュール端子101Nに接続された接続面部2c1と、セル端子1nに接続された接続面部2c2はz軸方向において高さ位置が異なっており、本実施形態では、接続面部2c1が接続面部2c2よりも高い位置に配置されている。なお、接続面部2c1と接続面部2c2との高さ位置は同じでもよく、或いは、逆の高さ位置の関係にあってもよい。
【0049】
ブリッジ部2dは、接続面部2c1,2c2に交差する方向(y軸方向)に屈曲した部位である。より詳細には、ブリッジ部2dは、U字形状の第1ブリッジ部2d1と、第1ブリッジ部2d1に対してx軸方向に並置されたU字形状の第2ブリッジ部2d2と、これらの間をx軸方向において接続するヒューズ部2aとを有してなる。第1ブリッジ部2d1と第2ブリッジ部2d2は単電池1の高さ方向(z軸方向)において高さ位置が同じである。
【0050】
第1ブリッジ部2d1は、z軸方向に対して水平配置された一対の平板部2g1と、この一対の平板部2g1の間を繋ぐ折り返し部2h1(接続部という場合もある)とを有してなる。折り返し部2h1はアーチ状に湾曲している。接続面部2c1に接続された平板部2g1と、ヒューズ部2aに接続された平板部2g1はZ軸方向に対向しており、接続面部2c1側とは反対側の端部において折り返し部2h1により接続されている。接続面部2c1のブリッジ部2d側端部と、一対の平板部2g1のうち、z軸方向において下側に位置する平板部2g1の接続面部2c1側端部は、z軸方向に延びる(立ち上がった)平板状のブリッジ部2w(立ち上がり部という場合もある)によって接続されている。
【0051】
第2ブリッジ部2d2は、z軸方向に対して水平配置された一対の平板部2g2と、この一対の平板部2g2の間を繋ぐ折り返し部2h2(接続部という場合もある)とを有してなる。折り返し部2h2はアーチ状に湾曲している。接続面部2c2に接続された平板部2g2と、ヒューズ部2aに接続された平板部2g2はz軸方向に対向しており、接続面部2c2側とは反対側の端部において折り返し部2h2により接続されている。一対の平板部2g2のうち、z軸方向において下側に位置する平板部2g2の接続面部2c2側端部は、接続面部2c2側端部がy軸方向を接続面部2c2に向かって水平に延伸するような形で、接続面部2c2のブリッジ部2d側端部に接続されている。
【0052】
一対の平板部2g1のうち、z軸方向において上側に位置する平板部2g1のヒューズ部2a側端部と、一対の平板部2g2のうち、z軸方向において上側に位置する平板部2g2のヒューズ部2a側端部はヒューズ部2aによって接続されている。第1ブリッジ部2d1と第2ブリッジ部2d2との間の電流経路は、第1ブリッジ部2d1および第2ブリッジ部2d2の通電面積よりも小さい通電面積を有するヒューズ部2aによってのみ構成されており、バスバー2B1の中で最小体積の電流経路になっている。このため、バスバー2B1に過大な電流が流れると、ヒューズ部2aにおける電流密度及び発熱による温度がバスバー2B1の中で最大となる。そして、発熱による温度がヒューズ部2aの材質の融点温度を超えると、ヒューズ部2aがバスバー2B1の中で最も早く溶断する。これにより、バスバー2B1の電流経路を遮断することができる。
【0053】
バスバー2B1は、銅を含む銅部分2eとアルミニウムを有するアルミニウム部分2fとを接合して形成した異種金属接合構造体である。異種金属の接合にはクラッド接合を用いていることから、バスバー2B1をクラッドバスバーと呼ぶ場合もある。本実施形態では、接続面部2c1,2c2と、ブリッジ部2wとが銅部分2eであり、ブリッジ部2dがアルミニウム部分2fである。ブリッジ部2dの一部、例えば一対の平板部2g1のうち、z軸方向において上側に位置する平板部2g1、一対の平板部2g2のうち、z軸方向において上側に位置する平板部2g2およびヒューズ部2aをアルミニウム部分2fとし、残りの部分を銅部分2eとしてもよい。
【0054】
なお、本実施形態では、インシュレーションカバー24のバスバー収納スペースの関係で折り返し部2hを設けているが、バスバー収納スペースが大きくとれる場合には、折り返し部2hは省略してもよい。
また、モジュール端子101Nとセル端子1nとの高さ位置が同じになるように設計される場合には、ブリッジ部2wも省略できる。
【0055】
溶融したヒューズ部2aを落下させるための空隙Sは、単電池1と筐体20によって画定されている。具体的には、ヒューズ部2aの下方の空隙Sは、単電池1のセル端子1p,1nおよび電池容器1aと、筐体20のセルホルダ21とによって画定された筐体20の内部の空間であり、単電池1に対向するバスバー2B1の下面に臨み、筐体20の支持面20aに垂直な方向(z軸方向)において、セル端子1nの高さ以上の深さを有し、ヒューズ部2aの体積よりも十分に大きい容積を有する。バスバー2B1に過大な電流が流れて、ヒューズ部2aを構成する金属材料が溶融すると、ヒューズ部2aが重力の作用によって、溶融した金属材料がヒューズ部2aの下方の空隙Sに落下する。これにより、溶融した金属材料によって単電池1の正極のセル端子1pと負極のセル端子1nとの間に新たな電流経路が形成されるのを防止でき、電池モジュール100の安全性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態のバスバー2B1の構成によれば、ヒューズ部2aの位置をセル端子1nから遠い位置に配置することができるので、溶融した金属材料によって単電池1の正極のセル端子1pと負極のセル端子1nとの間に新たな電流経路が形成されるのをより確実に防止でき、電池モジュール100の安全性をさらに向上させることができる。
【0057】
次に、図9を用いて、モジュール端子101Pに接続されたバスバー2B2の構成を詳細に説明する。
【0058】
バスバー2B2は、x軸方向に並置された一対の接続面部2c1,2c2と、この一対の接続面部2c1,2c2の間を繋ぐブリッジ部2dを有してなる。
【0059】
接続面部2c1,2c2は平板矩形状の部位である。モジュール端子101Pに接続された接続面部2c1と、セル端子1pに接続された接続面部2c2はz軸方向において高さ位置が異なっており、本実施形態では、接続面部2c1が接続面部2c2よりも高い位置に配置されている。なお、接続面部2c1と接続面部2c2との高さ位置は同じでもよく、或いは、逆の高さ位置の関係にあってもよい。
【0060】
ブリッジ部2dは、接続面部2c1,2c2に交差する方向(z軸方向)に屈曲した(立ち上がった)平板矩形状の部位であり、立ち上がり部と呼ぶ場合もある。
【0061】
バスバー2B2は、銅を含む銅部分2eとアルミニウムを有するアルミニウム部分2fとを接合して形成した異種金属接合構造体である。異種金属の接合にはクラッド接合を用いていることから、バスバー2B2をクラッドバスバーと呼ぶ場合もある。本実施形態では、接続面部2c1からブリッジ部2dの途中に至るまでが銅部分2eであり、接続面部2c2からブリッジ部2dの途中に至るまでがアルミニウム部分2fである。
【0062】
[実施形態2]
図10乃至12は本発明の実施形態2を示す図である。
本実施形態は、実施形態1と同様に、バスバー2Aの銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xにおいて高い接合強度を確保するためのものであるが、実施形態1とはその構造が異なっている。ここで、図10はバスバー2Aの斜視図、図11はバスバー2Aの平面図、図12はバスバー2Aの側面図である。なお、バスバー2A以外の電池モジュールの構成は実施形態1と同じであるので、以下では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0063】
バスバー2Aは、単電池積層方向に隣接する単電池1の一方のセル端子1pと他方のセル端子1nとを電気的かつ機械的に接続する接続導体であると共に、銅を含む銅部分2eとアルミニウムを有するアルミニウム部分2fとを接合して形成した異種金属接合構造体である。
【0064】
バスバー2Aは、図10に示すように、一対の接続面部2c1,2c2と、この一対の接続面部2c1,2c2の間を繋ぐブリッジ部2dとを有してなる。
【0065】
一対の接続面部2c1,2c2のうち、セル端子1pと接合される接続面部2c1は、アルミニウム部分2fのみによって形成された平板矩形状の部位であり、セル端子1pの頂部表面に配置されてレーザ溶接により接合される。レーザ溶接では、接続面部2c1のセル端子1pとの位置合わせ孔2z(図10及び11を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c1の表面に当ててセル端子1pと接続面部2c1とを接合する。
【0066】
一方、負極のセル端子1nと接合される接続面部2c2は、銅部分2eのみによって形成された平板矩形状の部位であり、セル端子1nの頂部表面に配置されてレーザ溶接により接合されている。レーザ溶接では、接続面部2c2のセル端子1nとの位置合わせ孔2z(図10及び11を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c2の表面に当ててセル端子1nと接続面部2c2とを接合する。
【0067】
ブリッジ部2dは、銅部分2eとアルミニウム部分2fとによって形成された逆U字形状の部位であり、接続面部2c1を構成するアルミニウム部分2fのブリッジ部2d側端部から上方に垂直或いは急峻な角度で立ち上がった平板部2g(立ち上がり部という場合もある)と、x軸方向において平板部2gと対向する平板部2vと、平板部2gと平板部2vとの間を繋ぐ折り返し部2h(接続部という場合もある)とを有してなる。
【0068】
折り返し部2hはアーチ状に湾曲している。平板部2g及び折り返し部2hはアルミニウム部分2fによって構成され、平板部2vは銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合によって構成されている。平板部2vは、銅部分2eとアルミニウム部分2fとが重なって接合された異種金属接合部位である。なお、本実施形態の平板部2vは特許請求の範囲に記載された一方の立ち上がり部に相当し、平板部2gは特許請求の範囲に記載された他方の立ち上がり部に相当する。
【0069】
平板部2gは、矩形平板をy軸方向の中央部において切り欠いた形状になっており、接続面部2c1のブリッジ部2d側端部から、y軸方向の両端部に二股に分かれてz軸方向を上方に延びている。折り返し部2hも同様に、y軸方向の中央部が切り欠かれ、y軸方向の両端部が平板部2vに向かって延びている。これにより、ブリッジ部2dの内側、特にy軸方向の中央部の内側が露出する。つまり、平板部2gと折返し部2hには、平板矩形状部位2e1を露出させる切り欠き部が設けられている。
【0070】
平板部2vは、接続面部2c2を構成する銅部分2eのブリッジ部2d側端部から上方に垂直或いは急峻な角度で立ち上がった平板矩形状部位2e1(第1の平板矩形状部位)と、折り返し部2hからz軸方向を下方に向かって延びた平板矩形状部位2f3(第2の平板矩形状部位)との内面同士がx軸方向に重なり合った部位である。すなわち鉤状に屈曲した2つの部材の内面同士が重なり合った部位である。平板矩形状部位2f3は、折返し部2hに連続して形成されており、平板部2gと対向する側面が、平板矩形状部位2e1の接続面部2c2側の側面に重なって接合される。
【0071】
本実施形態では、立ち上がった平板矩形状部位2e1に対して、平板矩形状部位2f3が平板矩形状部位2e1の上端を乗り越えて立ち下がり、x軸方向に重なり合うようにしている。この構成は、平板部2g側に設けてもよく、この場合、アルミニウム部分2f側の立ち上がった平板矩形状部位に対して、銅部分2e側の平板矩形状部位が、アルミニウム部分の平板矩形状部位の上端を乗り越えて立ち下がり、x軸方向に重なり合うような形状となる。
【0072】
銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合には、実施形態1と同様に、超音波接合を用いている。本実施形態では、平板矩形状部位2e1と平板矩形状部位2f3との重なり部分のy軸方向中央部を銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xとしている。超音波接合では、平板矩形状部位2e1の平板矩形状部位2f3側とは反対側のy軸方向中央部、平板矩形状部位2f3の平板矩形状部位2e1側とは反対側のy軸方向中央部のうち、その一方の表面にアンビルを当て、他方の表面にホーンを当てて、超音波振動を平板矩形状部位2e1と平板矩形状部位2f3との重なり部分に加えることにより銅部分2eとアルミニウム部分2fとを接合することができる。超音波接合される銅部分2e或いはアルミニウム部分2f又はその両方の表面には錫メッキ或いはニッケルメッキなどの被膜処理を施している。
【0073】
このように本実施形態では、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xをブリッジ部2dに形成している。ブリッジ部2dでは、平板矩形状部位2e1と平板矩形状部位2f3とが鉤状に屈曲し、お互いの内面同士が相対して接合されている。このような接合構造によれば、銅部分2eとアルミニウム部分2fとを引き剥がす方向に応力が働いた場合に、接合部2xは接合が圧接する方向になると共にお互いの部品の屈曲部分の曲げ弾性力を、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xに作用する応力の方向とは反対の方向の反力として銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xに作用させることができるので、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xに作用する応力が低減する。
【0074】
従って、例えば、接続面部2c1と2c2をx軸方向に離間させる方向に応力が作用した場合に、銅部分2eの平板矩形状部位2e1とアルミニウム部分2fの平板矩形状部位2f3とを互いに圧接させる方向の力を作用させることができる。従って、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xにおいて高い接合強度を確保することができる。これにより、本実施形態では、実施形態1と同様に、振動などに対する電池モジュールの耐性を向上させることができ、信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0075】
電圧検出線接合部は、接続面部2c1,2c2のいずれかの表面に設けてもよい。また、接続面部2c1,2c2のいずれかから、電圧検出線接合用端子を引き出し、この引き出し端子に電圧検出用のリード配線(図示省略)をろう付や超音波溶接などにより接合してもよい。さらには、引き出し端子とリード配線とを弾性部材により圧接する端子を用いて接続してもよい。
【0076】
[実施形態3]
図13乃至16は、本発明の実施形態3を示す図である。
本実施形態は、実施形態1と同様に、バスバー2Aの銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xにおいて高い接合強度を確保するためのものであるが、実施形態1とはその構造が異なっている。ここで、図13はバスバー2Aの斜視図、図14はバスバー2Aの平面図、図15はバスバー2Aの側面図であり、図16はセル端子上に設置された2Aの斜視図である。なお、バスバー2A以外の電池モジュールの構成は実施形態1と同じであるので、以下では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0077】
バスバー2Aは、図16に示すように、単電池積層方向に隣接する単電池1の一方のセル端子1pと他方のセル端子1nとを電気的かつ機械的に接続する接続導体であると共に、銅を含む銅部分2eとアルミニウムを有するアルミニウム部分2fとを接合して形成した異種金属接合構造体である。
【0078】
バスバー2Aは、図13に示すように、一対の接続面部2c1,2c2と、この一対の接続面部2c1,2c2の間を繋ぐブリッジ部2dとを有してなる。
【0079】
一対の接続面部2c1,2c2のうち、セル端子1pと接合される接続面部2c1は、アルミニウム部分2fのみによって形成された平板矩形状の部位であり、セル端子1pの頂部表面に配置されてレーザ溶接により接合される。レーザ溶接では、接続面部2c1のセル端子1pとの位置合わせ孔2z(図13及び14を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c1の表面に当ててセル端子1pと接続面部2c1とを接合する。
【0080】
一方、負極のセル端子1nと接合される接続面部2c2は、銅部分2eの長手方向(x軸方向)の両端部の一部がコの字状に形成されており、アルミニウム部分2fが銅部分2eのコの字状に挟まるように重ねられ、さらにセル端子1nとの重なり方向(z軸方向)に重なり合って形成されたほぼ平板矩形状の部位であり、セル端子1nに銅部分2eがレーザ溶接により接合されている。すなわち接続面部2c2は、銅部分2eからなる平板矩形状の部位上(セル端子1n側とは反対側)に、アルミニウム部分2fのブリッジ部2d側に窪んだ平板凹形状の部位が重なった異種金属接合部位である。
【0081】
接続面部2c2のアルミニウム部分2fは、一対の腕部2f1を有している。一対の腕部2f1は、ブリッジ部2dから接続面部2c2側に向かって突出するアルミニウム部分2fの短手方向(y軸方向)中央部分を突出端部からブリッジ部2d側に向かって切り欠くことによって形成されている。一対の腕部2f1の間には、位置合わせ孔2zを含む銅部分2eを露出させるように、ブリッジ部2d側に窪んだ平板凹形状の部位である窪み部2f2が形成されている。
【0082】
接続面部2c2の銅部分2eは、一対の腕部2f1に対して重なり方向一方側と他方側においてそれぞれ対向する基部2e3と爪部2e2を有している。銅部分2eの基部2e3は、長手方向両側の端部において短手方向に互いに離間して対をなす位置に設けられている。そして、銅部分2eの爪部2e2は、長手方向両側の端部において短手方向中央部分を基部2e3よりも重なり方向一方側であるセル端子1nから離間する側に持ち上がる位置に配置して、基部2e3との間に腕部2f1を差し込み可能な間隔を有するように形成されている。
【0083】
ここで、接続面部2c2のアルミニウム部分2fは、矩形平板がブリッジ部2d側に窪んだ平板凹形状の成形体であり、平板矩形状の銅部分2eの短手方向(y軸方向)の両端部の一部及び平板矩形状の銅部分2eのブリッジ部2d側端部のみが銅部分2eと重なり、他の銅部分2eを露出させている。このため、接続面部2c2の銅部分2eをセル端子1nにレーザ溶接により接合することが可能となる。レーザ溶接では、接続面部2c2の銅部分2eにおけるセル端子1nとの位置合わせ孔2z(図13及び14を参照)に沿って位置合わせ孔2zの外側の中実部分を周回移動するようにレーザを接続面部2c2の銅部分2eの表面に当ててセル端子1nと接続面部2c2の銅部分2eとを接合する。
【0084】
接続面部2c2における銅部分2eとアルミニウム部分2f(一対の腕部2f1)との接合には超音波接合を用いている。本実施形態では、平板矩形状の銅部分2eの短手方向(y軸方向)の両端コの字状平板部におけるアルミニウム部分2fとの重なり部分、つまり、アルミニウム部分2fの腕部2f1と銅部分2eの爪部2e2との重なり部分を超音波接合による接合部2xとしている。超音波接合では、銅部分2eのアルミニウム部分2f側をアンビル上に配置し、アルミニウム部分2fの銅部分2e側とは反対側の表面にホーンを当てて超音波振動を銅部分2eとアルミニウム部分2fとの重なり部分に加えることにより銅部分2eとアルミニウム部分2fとを接合することができる。超音波接合される銅部分2e或いはアルミニウム部分2f又はその両方の表面には錫メッキ或いはニッケルメッキなどの被膜処理を施している。
【0085】
このように本実施形態では、銅部分2eの一部をコの字に形成してアルミニウム部分2fを上下に挟み込むように重ね合い、腕部2f1と爪部2e2との間に接合部2xを形成している。銅部分2eは同じ銅材であるセル端子1nとレーザにて接合されるが、銅同士の接合であることから強固な接合が可能である。よって、接合部2xはアルミニウム部分2fに上方向の外圧が掛かった時には接合がより強固になる方向となり、アルミニウム部分2fに下方向の外圧が掛かった時にはアルミニウム部分2fの下のセル端子1nが支えになることから接合部2xは下方向に撓むことはない。従って、銅部分2eとアルミニウム部分2fとの接合部2xにおいて高い接合強度を確保することができる。これにより、本実施形態では、実施形態1と同様に、振動などに対する電池モジュールの耐性を向上させることができ、信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 単電池
1p セル端子
1n セル端子
2 バスバー
2A バスバー
2B1(2B) バスバー
2B2(2B) バスバー
2a ヒューズ部
2c1 接続面部
2c2 接続面部
2d ブリッジ部
2d1 第1ブリッジ部
2d2 第2ブリッジ部
2e 銅部分
2f アルミニウム部分
2g 平板部
2h 折り返し部
2v 平板部
2w ブリッジ部
2x 接合部
2y 電圧検出線接合部
2z 位置合わせ孔
10 電池群
100 電池モジュール
20 筐体
20a 支持面
101P モジュール端子
101N モジュール端子
S 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18