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特許7114734ケイ素系合金、その製造方法、及びこのような合金の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ケイ素系合金、その製造方法、及びこのような合金の使用
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220801BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20220801BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20220801BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20220801BHJP
   C01B 33/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/14
C22C1/02 503N
C22C33/04 C
C01B33/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020554237
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 NO2019050067
(87)【国際公開番号】W WO2019194681
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】20180441
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520239883
【氏名又は名称】エルケム エーエスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デュカンプ, アメリ―
(72)【発明者】
【氏名】クレヴァン, オーレ スヴェイン
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03075869(EP,A1)
【文献】特表2018-513921(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107012384(CN,A)
【文献】特開昭51-054024(JP,A)
【文献】特公昭39-009058(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 - 49/14
C01B 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成:
45~95量%のSi、
最大0.05量%のC、
0.01~10量%のAl、
0.01~0.3量%のCa、
最大0.10量%のTi、
1~25量%のMn、
0.005~0.07量%のP、
0.001~0.005量%のS、
残部Fe及び不可避的不純物
有する、ケイ素系合金。
【請求項2】
50~80量%のSiを含む、請求項1に記載のケイ素系合金。
【請求項3】
64~78量%のSiを含む、請求項2に記載のケイ素系合金。
【請求項4】
最大0.03量%のCを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のケイ素系合金。
【請求項5】
0.01~0.1量%のCaを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のケイ素系合金。
【請求項6】
最大0.06量%のTiを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のケイ素系合金。
【請求項7】
1~20量%のMnを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のケイ素系合金。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のケイ素系合金の製造方法であって、
以下の組成:
Si:45~95量%、
C:最大0.5量%、
Al:最大2量%、
Ca:最大1.5量%、
Ti:0.01~0.1量%、
Mn:最大0.5量%、
P:最大0.02量%、
S:最大0.005量%、
残部Fe及び不可避的不純物
有する液体ベースのフェロシリコン合金を準備することと、高炭素フェロマンガン合金、中炭素フェロマンガン合金、低炭素フェロマンガン合金、Mn金属、又はこれらの混合物の形態であるMn源を前記液体のフェロシリコンに添加し、それによって溶融物を得ることと、前記得られた溶融物を精錬することと、を含み、前記精錬することが、前記溶融物の鋳造前及び/又は鋳造中に、形成された炭化ケイ素粒子を取り出すこと、を含む、方法。
【請求項9】
Alを添加して、Al含有量を0.01~10量%の範囲に調整する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
鋼の生産における添加剤としての、請求項1~7のいずれか一項に記載のケイ素系合金の使用。
【請求項11】
非方向性電磁鋼の生産における、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素系合金、その製造方法、及びこのような合金の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フェロシリコン(FeSi)は、ケイ素及び鉄の合金であり、鋼製品の生産において重要な添加剤である。このような合金は、一般に、フェロシリコン合金と呼ばれているが、ケイ素含有量が高い場合、及び/又は合金元素の含有量が高い場合には、合金中に非常に少量の鉄が存在し、したがって、用語「ケイ素(Si)合金」もまた、このような合金を表記するために使用される。フェロシリコンの形態のケイ素は、鋼から酸素を除去するために、及び合金元素として使用され、鋼の最終品質が改善される。ケイ素により、つまり、強度及び耐摩耗性、弾性(ばね鋼)、耐スケール性(耐熱鋼)が向上し、電気伝導性及び磁歪(電磁鋼)が低下する。Elkemにより製造された従来技術におけるフェロシリコンの品質の例を表1にて参照されたい。LAI(低アルミニウム)、HP/SHP(高純度/準高純度)及びLC(低炭素)フェロシリコンのような特殊フェロシリコンが、電磁鋼、ステンレス鋼、ベアリング鋼、ばね鋼、及びタイヤコード鋼などの特殊な鋼質を生み出すのに使用されている。
【表1】
【0003】
非方向性電磁鋼(NGOES)は、モータ、発電機、及び変圧器などの電気機械の磁心を生産するのに必須である。NGOESは、通常、製造業者及び品質に応じて0.1~3.7重量%(wt%)の範囲でケイ素と合金化されるが、より高いSi濃度もまた見出すことができる。低濃度のSi(典型的には<1.5重量%のSi)を有するグレードは、本明細書では低グレードと称され、他方、高濃度のケイ素(>2/2.5重量%)を有するグレードは、多くの場合、高グレードと呼ばれる。高グレードのNGOESに対する需要は世界中で増加しており、電化(電気動力など)及びCO排出量の低減がそれを推し進めている。したがって、新規なNGOESグレードを開発する必要があり、次に、このようなグレードを製造又は開発を可能にするより良好な解決策が要求される。
【0004】
NGOESには、可能な限り低い炭素含有量(典型的にはC<0.005重量%)を有することが必要とされる。NGOESの製造では、鋼中の炭素汚染を可能な限り最小限に抑えるために、低炭素合金を使用する必要がある。添加された合金からの汚染に起因して、鋼溶融物中の炭素濃度が高すぎる場合、必要とされる低炭素濃度を得るには、追加の高価なプロセス工程が必要となる。これは、低炭素フェロシリコン/ケイ素合金が、LC、LAl、又はHP/SHPのFeSiの形態のいずれかでNGOESの作製に依然として広く使用されている理由である。
【0005】
近年、マンガンは、高グレードNGOESにおける合金元素としてますます使用されている。ケイ素合金に加えて、このような鋼グレードの製造における炭素汚染の主要な源の1つは、使用されるマンガン合金である。添加された炭素を低く維持するために、低炭素フェロマンガン(LCFeMn)又はマンガン金属のような高価なグレードのマンガンが多くの場合使用される。現在の実施には、LC、LAl、若しくはHP/SHPのFeSiのような低炭素ケイ素系合金、及び低炭素フェロマンガン(LC FeMn)のような低炭素マンガン系合金、又はマンガン金属の添加を別個に用い、鋼中の炭素を可能な限り低く維持するとともに、鋼中の所望のSi及びMn濃度を得ること、が伴う。低炭素ケイ素合金及び低炭素フェロマンガン合金は両方とも製造するのに高価であり、これらの合金を鋼に別個に添加することが必要とされる。
【0006】
マンガン系合金中の主な汚染元素は、炭素であり、これは0.04~8重量%の場合がある。市販Mn合金の例は、典型的には6~8重量%の炭素含有量を有する高炭素フェロマンガン(HC FeMn)、典型的には1~2重量%のCを有する中炭素フェロマンガン(MC FeMn)、及び約0.5重量%のCを有する低炭素フェロマンガン(LCFeMn)である。また、最大0.04重量まで下がったCを有する電解マンガンも利用可能である。最大8%の異なる炭素含有量を有する他の合金を使用してもよい。また、Mn合金中の最小の炭素含有量は電解マンガン中に見られ、その製造プロセスは環境問題を生じさせることが知られており、製造するのに非常に高価になることにも注目すべきである。以下の表2に、市販のマンガン合金の例を示す。
【表2】
【0007】
ケイ素合金及びマンガン合金を別個に添加することによる加工時間、コスト及び品質、並びに大量の合金を添加する必要があることなど、Mnを含有するNGOESの現在の製造方法にはいくつかの課題が存在する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、低炭素含有量及び特定のマンガン含有量が必要とされるNGOESなどの鋼質への単一合金添加として使用することができる、低炭素含有量を有し、マンガンを含有する、新規な費用効率の良いケイ素系合金を提供することである。
【0009】
別の目的は、上記Si系合金の製造方法を提供することである。
【0010】
更なる目的は、上記Si系合金の使用を提供することである。
【0011】
本発明のこれら及び他の利点は、以下の説明において明らかとなる。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、本発明は、
45~95重量%のSi、
最大0.05重量%のC、
0.01~10重量%のAl、
0.01~0.3重量%のCa、
最大0.10重量%のTi、
0.5~25重量%のMn、
0.005~0.07重量%のP、
0.001~0.005重量%のS、
Feである残部、及び通常量の付随的不純物を含む、ケイ素系合金に関する。
【0013】
一実施形態では、ケイ素系合金は、50~80重量%のSiを含む。
【0014】
別の実施形態では、ケイ素系合金は、64~78重量%のSiを含む。
【0015】
一実施形態では、ケイ素系合金は、最大0.03重量%のCを含む。
【0016】
一実施形態では、ケイ素系合金は、0.01~0.1重量%のCaを含む。
【0017】
一実施形態では、ケイ素系合金は、最大0.06重量%のTiを含む。
【0018】
一実施形態では、ケイ素系合金は、1~20重量%のMnを含む。
【0019】
第2の態様では、本発明は、上記に定義したケイ素系合金の製造方法であって、液体ベースのフェロシリコン合金を準備することと、合金元素として又は不純物元素として炭素を含むMn源を上記液体のフェロシリコンに添加し、それによって溶融物を得ることと、上記得られた溶融物を精錬することと、を含み、当該精錬することが、上記溶融物の鋳造前及び/又は鋳造中に、形成された炭化ケイ素粒子を取り出すこと、を含む、方法に関する。
【0020】
一実施形態では、添加されたMnは、高炭素フェロマンガン合金、中炭素フェロマンガン合金、低炭素フェロマンガン合金、Mn金属、又はこれらの混合物の形態である。
【0021】
一実施形態では、液体ベースのフェロシリコン合金は、
Si:45~95重量%、
C:最大0.5重量%、
Al:最大2重量%、
Ca:最大1.5重量%、
Ti:0.01~0.1重量%、
Mn:最大0.5重量%、
P:最大0.02重量%、
S:最大0.005重量%、
Feである残部、及び通常量の付随的不純物を含む。
【0022】
一実施形態では、Alを添加して、Al含有量を0.1~10重量%の範囲に調整する。
【0023】
別の態様では、本発明は、鋼の生産における添加剤としての、上記で定義されたケイ素系合金の使用に関する。
【0024】
ある態様では、本発明は、非方向性電磁鋼の生産における添加剤としての、上記で定義されたケイ素系合金の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明により、低炭素であり、マンガン含有量が最大25重量%である、新規なケイ素系合金が提供される。
【0026】
本発明による合金は、以下の組成:
Si:45~95重量%、
C:最大0.05重量%、
Al:0.01~10重量%、
Ca:0.01~0.3重量%、
Ti:最大0.10重量%、
Mn:0.5~25重量%、
P:0.005~0.07重量%、
S:0.001~0.005重量%、
Feである残部、及び通常量の付随的不純物を有する。
【0027】
本出願では、用語ケイ素系合金及びフェロシリコン系合金は、互換的に使用される。Siは、鋼溶融物に添加されるこの合金中の主元素である。従来から、75重量%のSi又は65重量%のSiが使用されている。75重量%のSiを有するフェロシリコンにより、添加したときの鋼溶融物の温度上昇が、ほぼ温度に中立である65重量%のSiの場合よりも高まる。50重量%未満のSiを有するフェロシリコンは、今日の鋼産業ではまれにしか使用されておらず、これは、大量の合金を、鋼中の目標Si含有量を得るために添加する必要があり、製鋼中に困難が生じることを意味する。今日では、Si系合金中のケイ素含有量が増加すると、ケイ素単位当たりの製造コストが増加するので、80%より高いものは滅多に使用されていない。このことから、好ましいSi範囲は50~80重量%である。別の好ましいSi範囲は64~78重量%である。
【0028】
炭素は、NGOES中の主な望ましくない元素であり、本発明によるこの新規な合金中で可能な限り低くする必要がある。上記合金中の炭素の最大含有量は、0.05重量%である。好ましい含有量は、上記鋼の作製に使用される現在の低炭素フェロシリコングレードにおける場合と同様に、最大0.03重量%、又は更に最大0.02重量%とする必要がある。炭素を全部除去することは困難な場合があるので、通常0.003重量%のCが本発明による合金中で存在する場合がある。炭素含有量自体よりも、炭素対マンガンの比は、重要なパラメータの1つである。合金中でマンガンが増加すると、本発明による新規なケイ素系合金中の炭素含有量は、最大0.05重量%になり得る。
【0029】
アルミニウムは、ケイ素系合金の製造における不純物であり、典型的には標準グレードで炉外にて約1重量%である。これを、最大で0.01重量%まで下げて精錬することができるが、NGOESについては、最大で0.03重量、又は更に最大0.1重量%でも良い解決策である。しかし、NGOESでは、Alは、多くの場合、小量又は大量で添加される。したがって、本発明による合金中に最大5重量%、又は更に最大10重量%のアルミニウムを添加することが、いくつかの場合では好ましいことがある。
【0030】
カルシウムは、ケイ素系合金の製造における不純物であり、ノズル詰まりなどの、製鋼及び鋳造中の問題を回避するために低く維持する必要がある。本発明による合金中で、カルシウムの範囲は、0.01~0.3重量%である。好ましいカルシウムの範囲は、0.01~0.1重量%である。好ましい含有量は、最大0.05重量%である。本発明による合金を製造するための出発物質中のカルシウム含有量が、上記合金中の所望のカルシウム含有量よりも高い場合、酸素(空気及び/又は純酸素から)を吹き込み/撹拌することによりスラグとして除去することができる酸化カルシウムを形成することによって、製造中にカルシウムを容易に除去することができる。
【0031】
チタンは、ケイ素系合金の製造における不純物であり、典型的には75重量%のFeSi標準製造物中、炉外にて約0.08重量%であるが、これは原料混合物に依存する。しかし、NGOESでは、有害な含有物の形成を回避するために、低含有量のチタンが多くの場合有益である。したがって、本発明による新規な合金中、最大0.06重量%又は更に最大0.03重量%のTi濃度が好ましい。微量のTiが上記合金中に存在する場合があるので、Tiの最小濃度は0.005重量%になることがある。Tiを取鍋内で精錬することは困難なので、低いチタン含有量を得るために、良好な炉操業及び原料選択が必要とされる。
【0032】
マンガンは、典型的には、ケイ素系合金の製造における不純物である。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、ケイ素系合金を0.5~25%の範囲のマンガンと合金化するとともに、炭素含有量を低く維持することにより、NGOESなどの低い炭素含有量が必要とされる鋼質を生み出すのに使用することに特に優れた特性を有する、合金が得られることを見出した。他の可能なMnの範囲は、1~20%、又は1~15%、又は更に2~10%である。
【0033】
リンは、ケイ素系合金の製造における不純物である。特に、Mn添加なしのケイ素系合金では、P濃度は0.04%未満になる。しかし、Pは、Mn合金中で通常高くなり、したがってMnとの合金化により、最終製造物中でP含有量が高くなることがある。しかし、本発明のケイ素合金の添加に由来する鋼中のPは、ケイ素合金及びマンガン合金の別個の添加に由来する場合と同じであるか、又はわずかに低い。
【0034】
硫黄は、通常、ケイ素合金の製造において低い。しかし、Sは、Mn合金中で通常わずかに高くなるので、Mnとの合金化により、最終製造物中でSが高くなるのにつながることがある。しかし、本発明のケイ素合金の添加に由来する鋼中のSは、ケイ素合金及びマンガン合金の別個の添加に由来する場合と同じであるか、又はわずかに低い。
【0035】
本発明による合金の好ましい組成は、
Si:64~78重量%、
C:最大0.03重量%、
Al:0.1~10重量%、
Ca:0.01~0.05重量%、
Ti:最大0.06重量%、
Mn:1~20重量%、
P:0.005~0.05重量%、
S:0.001~0.005重量%、
Feである残部、及び通常量の付随的不純物である。
【0036】
本発明による合金は、合金元素として又は不純物元素として炭素を含むMn源を、液体のSi系合金に添加することによって作製される。Mn源は、マンガン合金若しくはマンガン金属又はこれらの混合物の形態で、固体又は液体マンガン単位の形態であってもよい。マンガン源は、通常の不純物/汚染物質を含む場合がある。マンガン合金は、例えば、高炭素フェロマンガン、中炭素フェロマンガン、低炭素フェロマンガン、又はこれらの混合物などの、フェロマンガン合金であってもよい。市販マンガン合金、例えば上記表2に示すもの、又はこのような合金の2つ以上の組み合わせは、本発明に使用するのに好適である。好ましくは、添加されたMnは、高炭素フェロマンガン又は中炭素フェロマンガンの形態である。
【0037】
マンガン源から添加された炭素は、ケイ素と反応し、それによって固体SiC(炭化ケイ素)粒子を形成し、これは、精錬中、溶融物から、取鍋の耐火物に、又は鋳造プロセスの前若しくは最中に形成されていた任意のスラグに、好ましくは取鍋内で撹拌しながら取り出される。形成されたSiC粒子のために十分に大きな受容体を有することが必要な場合、スラグ形成剤を添加することができる。これにより、本発明によるSi合金は、上記で示したような元素の範囲で、低炭素含有量を有し、マンガンを含有する。
【0038】
出発物質の組成物の例は、炉からの液体のFeSiであってもよいが、達成される最終仕様に応じて多くの他のものが可能である。標準フェロシリコン又は高純度フェロシリコンのような再溶融している任意の市販ケイ素系合金も、可能な出発物質であり得る。
【0039】
したがって、可能な出発物質は、
Si:45~95重量%、
C:最大0.5重量%、
Al:最大2重量%、
Ca:最大1.5重量%、
Ti:0.01~0.1重量%、
Mn:最大0.5重量%、
P:最大0.02重量%、
S:最大0.005重量%、
Feである残部、及び通常量の付随的不純物を含む、ケイ素系合金を含んでもよい。
【0040】
アルミニウム含有量を最終製造物中で増加(最大10%)させる場合、固体又は液体アルミニウム単位の添加を取鍋内で行うことができる。あるいは、炉からのアルミニウムは、炉への原料の選択によって増加させることができる。Alを添加して、Al含有量を0.01~10重量%の範囲に調整することができる。
【0041】
本発明による合金を製造するために、全般的に既知の技術による、スラグの精錬、スキミング、及び/又は撹拌を伴う、追加の工程を行い、特に本発明によって特許請求される炭素の低濃度に到達させることができる。このような工程は、鋳造プロセスの前若しくは最中、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0042】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0043】
実施例1
2つの別個の試行では、フェロシリコンを、空気で底部撹拌しながら、タッピング取鍋(取鍋1及び取鍋2)に通常のとおりタッピングした。タッピングされたフェロシリコンの量は、取鍋1及び取鍋2の各々に約5900kgであった。表3に、使用した2つの取鍋における出発物質の組成を示す。
【表3】
【0044】
タッピング後、75.7重量%のMn及び6~8重量%のC、Feである残部、並びに通常量の付随的不純物を有する、塊の多いFeMnを、246kgのMn単位に等しい量で、各々の取鍋において液体のフェロシリコンに添加して、最終製造物中で4.5%のMnに達した。Mn収率が既知ではないため、FeMnを、20~25分間の期間にわたって、4.5%のMn目標に達するまで徐々に添加した。(添加は、より短い、又はより長い時間で行うことができる)。全添加プロセス中に底部撹拌を維持し、良好なMn溶解を確保し、並びに、形成されたSiC粒子を、Si合金溶融物から形成されたスラグ及び取鍋壁に取り出した。精錬工程後、取鍋を鋳造領域に搬送し、最終液体試料を採取した後、鋳鉄型に鋳造した。
【0045】
本発明によって製造した新規な合金の試料を、液体段階の終了時に、鋳造の直前に採取した。2つの取鍋の結果を表4に示す。
【0046】
全ての試料について、XRF(Malvern Panalytical製Zetium(登録商標))を使用して、Al、Si、P、Ca、Ti、Mn、及びCについて分析し、LECO(登録商標)CS-220(燃焼分析)を使用した。
【表4】
【0047】
実施例2
液体のフェロシリコンを、空気で底部撹拌しながら、タッピング取鍋に通常のとおりタッピングした。取鍋にタッピングされたフェロシリコンの量は、約6000kgであった。出発物質の組成を表5にて見ることができる。
【0048】
タッピング中、78.4重量%のMn及び6.85重量%のC、Feである残部、及び通常量の付随的不純物を有する、塊の多いFeMnを、950kgに等しい量で液体のフェロシリコンに添加した。FeMnと一緒に、100kgの石英を溶融物に添加して、受容体の大きさを増大させ、形成されたSiCの捕捉を支持した。全添加プロセス中に底部撹拌を維持し、良好なMn溶解を確保し、形成されたSiC粒子は、FeSi合金溶融物から取鍋壁に移動し、スラグを形成した。精錬工程後、取鍋を鋳造領域に搬送し、最終液体試料を採取した後、鋳鉄型に鋳造した。
【0049】
本発明によって製造した新規な合金の試料を、液体段階の終了時に、鋳造の直前に、及び鋳造後の最終製造物で採取した。結果を表5に示す。
【0050】
全ての試料について、XRF(Malvern Panalytical製Zetium(登録商標))を使用して、Al、Si、P、Ca、Ti、Mn、及びCについて分析し、LECO(登録商標)CS-220(燃焼分析)を使用した。
【表5】
【0051】
このような方法を適用することにより、本発明者らは、低炭素濃度を達成した。これは、高ケイ素合金中で炭素の溶解度が低いことによって説明することができる。しかし、現在の低炭素フェロシリコングレード(表1を参照されたい)と同じほどに低い炭素濃度に達することが可能であったことは、驚くべきことであった。
【0052】
本発明による合金は、加工時間及び品質を改善することによる、必要とされる合金元素Si及びMnを、別個に、フェロシリコン及びマンガン合金又はマンガン金属として添加するための費用効率の良い代替物である。また、上記合金は、NGOES製造業者が、鋼中の全炭素含有量を減少させるのを助けることもでき、並びに、フェロシリコン/Si系合金及び低炭素マンガン合金又はマンガン金属の形態のマンガンを別個に添加することによる場合よりも低い濃度に達するのを助けることもできる。更に、上記合金により、電磁鋼製造業者が、より高いMn濃度を有する新規なグレードを作製することを可能にし、同時に、1つの合金添加剤のみを使用して、鋼中の炭素含有量を低く維持することを可能にする。
【0053】
本発明の異なる実施形態を説明してきたが、概念を組み込んでいる他の実施形態が使用され得ることが、当業者には明らかであろう。上に例示した本発明のこれらの及び他の例は、例としてのみ意図されており、本発明の実際の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。