(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】飛翔害虫防除製品
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20220801BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20220801BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A01M1/20 C
A01N25/06
A01P7/04
(21)【出願番号】P 2020555713
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044302
(87)【国際公開番号】W WO2020100882
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2018215037
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】浮田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-022206(JP,A)
【文献】特開2001-151605(JP,A)
【文献】特表2016-507254(JP,A)
【文献】特表2009-531093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
A01N 25/06
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防除成分を揮散させて飛翔害虫を防除する飛翔害虫防除製品であって、
前記防除成分を担持させた担持体と、
前記担持体を収容するとともに、当該担持体から前記防除成分を外部に放出する開口部が形成された筐体と、
使用状態に応じて、前記開口部を開閉する開閉手段と
を備え
、
前記筐体は、前記開口部が正面側及び/又は背面側に形成された折畳み可能な板状体として構成され、
前記開閉手段は、前記筐体を折畳んだ状態で収納する収納ケースとして構成され、
前記収納ケースに前記筐体を収納すると、前記収納ケースの内面が前記筐体と密着し、前記防除成分が放出されないように構成されている飛翔害虫防除製品。
【請求項2】
前記筐体の前記開口部は、桟によって複数個に分割されており、前記桟は、前記筐体の一端から他端まで連続しないように設けられている
請求項1に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項3】
前記筐体の正面側及び背面側において、前記担持体を挟んで対称な位置に開口部のない領域が設けられている
請求項1又は2に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項4】
前記筐体の端部に吊り下げ部が設けられ、前記開口部のない領域は、前記吊り下げ部が設けられた端部と逆側の端部近傍に設けられている
請求項3に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項5】
前記収納ケースから筐体の一部がはみ出した状態で使用可能に構成されている
請求項1~4の何れか一項に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項6】
前記筐体の側面側にも前記開口部が形成されている
請求項1~5の何れか一項に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項7】
前記板状体は、凹部が形成された第一部位と凸部が形成された第二部位とを有し、
前記板状体を折畳んだとき、前記凹部と前記凸部とが嵌合するように構成されている
請求項1~6の何れか一項に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項8】
前記板状体を折畳んだ状態で前記収納ケースに収納したとき、前記収納ケースは、厚み方向に弾性変形するように構成されている
請求項7に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項9】
前記筐体は、その内部に収容する前記担持体を交換可能に構成されている
請求項1~8の何れか一項に記載の飛翔害虫防除製品。
【請求項10】
前記防除成分は、25℃における蒸気圧が0.001~0.1Paであり、
前記筐体の前記開口部の面積と非開口部の面積との合計である全表面積において、前記開口部の面積が占める割合は、20~60%である
請求項1~9の何れか一項に記載の飛翔害虫防除製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防除成分を揮散させて飛翔害虫を防除する飛翔害虫防除製品に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間への蚊類等の飛翔害虫の侵入を抑制する目的で、種々の製品が市販されている。例えば、住宅では、窓や玄関等が飛翔害虫の侵入口となるため、これらの場所に吊り下げて使用される製品が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の製品は、薬剤を保持させた揮散体を、正面、背面、及び両側面に開口部を有する容器に収容したものであり、開口部から薬剤を放出させることにより、製品が吊り下げられた窓や玄関等からの飛翔害虫の侵入を長期間に亘って抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
室内空間への侵入口に吊り下げて使用される製品は、一カ月以上の有効期間の間、連続使用されるものが多い。しかしながら、住宅において窓や玄関は、常に開放されているとは限らず、使用者の生活サイクルに応じて、例えば、外出等の理由で日中の時間帯は窓や玄関等が開放されることがなく、その期間は、飛翔害虫の侵入の虞がない場合もある。
【0006】
特許文献1の製品は、このような使用者の生活サイクルによっては飛翔害虫の侵入を防ぐ必要のない時間帯が生じ得ることを考慮したものではなく、使用を開始すると薬剤が常時放出され続けるものであった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の生活サイクル等に応じて防除成分の放出をコントロールすることが可能であり、防除成分の使用量を増大することなく、有効期間を延長することができる飛翔害虫防除製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る飛翔害虫防除製品の特徴構成は、
防除成分を揮散させて飛翔害虫を防除する飛翔害虫防除製品であって、
前記防除成分を担持させた担持体と、
前記担持体を収容するとともに、当該担持体から前記防除成分を外部に放出する開口部が形成された筐体と、
使用状態に応じて、前記開口部を開閉する開閉手段と
を備えたことにある。
【0009】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、防除成分を担持させた担持体と、担持体を収容するとともに、当該担持体から防除成分を外部に放出する開口部が形成された筐体と、使用状態に応じて、開口部を開閉する開閉手段とを備えるため、使用者の生活サイクル等に応じて飛翔害虫の侵入を防ぐ必要のない時間帯が生じた場合、この時間帯は開口部を閉じて防除成分の無駄な放出を防ぐことができる。そのため、製品における防除成分の使用量を増大することなく、使用者の生活サイクル等に応じて製品の有効期間を延長することができる。
【0010】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体は、前記開口部が正面側及び/又は背面側に形成された板状体として構成され、
前記開閉手段は、前記板状体を収納する収納ケースとして構成されていることが好ましい。
【0011】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、筐体が板状体として構成され、開閉手段が板状体を収納する収納ケースとして構成されているため、開口部が板状体の正面側及び背面側の何れに形成されていても、板状体を収納ケースに収納するだけで、開口部を確実に閉じて、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0012】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記板状体は、折畳み可能に構成され、
前記収納ケースは、前記板状体を折畳んだ状態で収納可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、板状体が折畳み可能に構成され、収納ケースが板状体を折畳んだ状態で収納可能に構成されているため、板状体を折畳んだ状態で板状体の正面及び背面の何れか一方の面が内側に折り込まれる場合に、板状体の他方の面側に形成された開口部を収納ケースによって確実に閉じて、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0014】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体の前記開口部は、桟によって複数個に分割されており、前記桟は、前記筐体の一端から他端まで連続しないように設けられていることが好ましい。
【0015】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、担持体に担持させた防除成分の揮散に必要な開口面積を確保しつつ、桟による開口部の分割数に応じて、筐体のサイズを容易に変更することができる。例えば、筐体を大型化した場合、それに伴って開口部も大きくなるが、開口部を桟によって複数個に分割することで、開口部の剛性が高まり、筐体全体としての強度を維持することができる。また、桟を筐体の一端から他端まで連続しないように設けることで、どのようなサイズの筐体であっても、強度を落とすことなく、必要な大きさの開口面積を容易に確保することができる。
【0016】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体の正面側及び背面側において、前記担持体を挟んで対称な位置に開口部のない領域が設けられていることが好ましい。
【0017】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、使用者は、開口部から露出している担持体に手指を接触させることなく、筐体の担持体を挟んで対称な位置に設けられた開口部のない領域を摘まんで容易に取り扱うことができる。
【0018】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体の端部に吊り下げ部が設けられ、前記開口部のない領域は、前記吊り下げ部が設けられた端部と逆側の端部近傍に設けられていることが好ましい。
【0019】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、このような位置に開口部のない領域が設けられていることで、使用者は、この領域を摘まんで吊り下げ部を上方へ向けることで、吊り下げ部をカーテンレール等の高所に容易にかけることが可能となる。
【0020】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記収納ケースから筐体の一部がはみ出した状態で使用可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、比較的狭い空間で使用する場合には、収納ケースから筐体の一部がはみ出した状態で使用することで、防除成分の揮散量が少なくても十分な防除効果が期待できる。また、防除成分の過剰な揮散が防止されるので、必要十分な防除効果が得られながら、製品有効期間を長期化することができ、コストの低減にもつながる。
【0022】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体の側面側にも前記開口部が形成されていることが好ましい。
【0023】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、使用時には、筐体の正面及び背面だけではなく、側面からも防除成分を放出して、より効果的に飛翔害虫を防除することができる。また、不使用時でも、筐体の側面に設けられた開口部から防除成分を少量ずつ放出し続けることが可能となるため、不使用時に防除成分が大きく減少することを抑制しつつ、少量放出された防除成分によって最低限の防除効果を得ることができる。
【0024】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記板状体は、凹部が形成された第一部位と凸部が形成された第二部位とを有し、
前記板状体を折畳んだとき、前記凹部と前記凸部とが嵌合するように構成されていることが好ましい。
【0025】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、板状体を折畳んだ状態では、第一部位の凹部と第二部位の凸部とが嵌合し、第一部位と第二部位との密着性が高まる。これにより、飛翔害虫防除製品を使用しない場合は、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0026】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記板状体を折畳んだ状態で前記収納ケースに収納したとき、前記収納ケースは、厚み方向に弾性変形するように構成されていることが好ましい。
【0027】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、弾性変形で生じた応力によって、収納ケースが板状体を押圧することにより、第一部位の凹部の底面と、第二部位の凸部の頂面との密着性がより向上する。これにより、板状体の開口部をより確実に閉じて、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0028】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記筐体は、その内部に収容する前記担持体を交換可能に構成されていることが好ましい。
【0029】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、防除成分が担持体から全て揮散された後に、筐体に収容されている担持体を新しいものに交換することで、飛翔害虫防除製品を繰り返し使用することができる。
【0030】
本発明に係る飛翔害虫防除製品において、
前記防除成分は、25℃における蒸気圧が0.001~0.1Paであり、
前記筐体の前記開口部の面積と非開口部の面積との合計である全表面積において、前記開口部の面積が占める割合は、20~60%であることが好ましい。
【0031】
本構成の飛翔害虫防除製品によれば、防除成分の25℃における蒸気圧、及び開口部の面積が占める割合が上記の範囲となるように構成されていることにより、開口部から十分な量の防除成分が放出されるため、飛翔害虫を確実に防除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る飛翔害虫防除製品の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A´における飛翔害虫防除製品の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す飛翔害虫防除製品の不使用状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第二実施形態に係る飛翔害虫防除製品の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のB-B´における飛翔害虫防除製品の断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す飛翔害虫防除製品の不使用状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第三実施形態に係る飛翔害虫防除製品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の飛翔害虫防除製品に関する実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0034】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係る飛翔害虫防除製品100の斜視図である。
図2は、
図1中のA-A´線における飛翔害虫防除製品100の断面図である。
図3は、飛翔害虫防除製品100の不使用状態を示す断面図である。以下の説明では、
図2に示す断面図の上側を飛翔害虫防除製品100の正面X、下側を背面Yとする。
【0035】
飛翔害虫防除製品100は、室内空間への蚊類等の飛翔害虫の侵入を抑制するために、窓や玄関の近傍に吊り下げて使用される製品である。飛翔害虫防除製品100は、防除成分を担持させた担持体10と、担持体10を収容するとともに、担持体10から防除成分を外部に放出する開口部21が形成された筐体20と、製品の使用状態に応じて開口部21を開閉する開閉手段である収納ケース30とを備えている。
【0036】
〔担持体〕
担持体10は、防除成分を含む薬剤が染み込むように、液体吸収性を有する材料を用いて構成される。担持体10には、例えば、樹脂製の繊維から構成される繊維集合体を使用することができる。樹脂として、例えば、分岐低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂や、あるいは、これらとカルボン酸エステル(酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)とのポリオレフィン系共重合体等が挙げられる。また、担持体10には、樹脂製の繊維集合体の代わりに、パルプ不織布やフェルトを使用することができる。この場合、担体を肉厚にするために、薄手のパルプ不織布やフェルトを複数枚積層しても構わない。パルプ不織布やフェルトは、形状を保持しつつ、薬剤を効率良く吸収するために、スパンレース法で表面にウェブを形成したり、エンボス加工を施したりすることができる。さらに、担持体10には、パルプ不織布やフェルトの代わりに、液体を吸収可能なスポンジ、紙、繊維集合体等を使用しても構わない。
【0037】
担持体10に担持させる防除成分としては、常温で揮散性を有するピレスロイド系防虫成分が使用される。特に、25℃における蒸気圧が0.001~0.1Paであるピレスロイド系防虫成分を用いることが好ましい。そのようなピレスロイド系防虫成分として、例えば、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、及びエムペントリン等が挙げられる。これらのピレスロイド系防虫成分は、単独で使用可能であるが、二種以上の混合物の形態で使用しても構わない。なお、ピレスロイド系防虫成分には、酸部分やアルコール部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体を有するものが存在するが、その場合、異性体のうちの一種のみからなる単独物、又は任意の比率の異性体混合物の何れであっても使用可能である。このような防除成分を使用することで、担持体10から防除成分を徐々に揮散させることが可能になる。担持体10における防除成分の担持量は、製品1個当たり0.02~10.0gであることが好ましい。防除成分の担持量が上記の範囲にあれば、後述のように防除成分の1時間当たりの揮散量が0.01~5.0mg/hとなるように飛翔害虫防除製品100が設計されている場合、製品有効期間中、過不足なく防除成分が放出されるため、飛翔害虫を確実に防除することができる。
【0038】
〔筐体〕
筐体20は、担持体10を収容して固定する固定具であるとともに、担持体10から防除成分を外部に放出させる薬剤揮散具としての機能を有する。第一実施形態では、筐体20は、
図1に示すように、第一部位20aと第二部位20bとを連結した樹脂製の板状体として構成される。筐体20に担持体10を装着する方法としては、例えば、筐体20の第一部位20a及び第二部位20bを、夫々正面X側と背面Y側とに分割した二つの部材で構成し、第一部位20a及び第二部位20bの夫々で担持体10を正面X及び背面Yの両側の部材で挟み込んで固定する構成とすることができる。筐体20の背面Y側の部材は、
図2に示すように、第一部位20aと第二部位20bとで連続した一つの部材として構成することができる。あるいは、第一部位20a及び第二部位20bの側部に夫々スリットを設け、当該スリットから板状の担持体10を挿入することで、第一部位20a及び第二部位20bの内部に担持体10を固定する構成とすることができる。このような構成であれば、防除成分が担持体10から全て揮散された後に、スリットに挿入されている担持体10を新しいものに挿し替えることで、飛翔害虫防除製品100を繰り返し使用することができる。筐体20を構成する樹脂は、防除成分によって劣化し難い熱可塑性樹脂が用いられる。そのような樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が好適に用いられる。
【0039】
筐体20は、第一部位20aと第二部位20bとが正面X側を内側にして対向するように、折畳み可能に構成されている。ここで、第一部位20aの正面X側に凹部22が形成されており、第二部位20bの正面X側に凸部23が形成されている。このような凹部22及び凸部23を設けることで、
図3に示すように、筐体20を折畳んだ状態では、凹部22と凸部23とが嵌合し、第一部位20aと第二部位20bとの密着性が高まる。
【0040】
筐体20の正面X及び背面Yには、開口部21が設けられており、担持体10から揮散された防除成分が開口部21から筐体20の外部へと放出される。開口部21の開口面積は、筐体20の全表面積において占める割合が20~60%となるように形成されていることが好ましい。ここで、筐体20の全表面積とは、筐体20における開口部21の面積と、開口部21が形成されていない非開口部の面積との合計面積である。開口部21の開口面積の割合が上記の範囲にあれば、防除成分として25℃における蒸気圧が0.001~0.1Paであるピレスロイド系防虫成分を用いた場合、防除成分の1時間当たりの揮散量が0.01~5.0mg/hとなり、製品の使用時に開口部21から十分な量の防除成分が放出されるため、飛翔害虫を確実に防除することができる。開口部21の開口面積の割合が20%より小さいと、製品の使用時に開口部21から放出される防除成分の量が不足して、飛翔害虫を効果的に防除できなくなる虞がある。開口部21の開口面積の割合が60%より大きいと、製品の使用時に開口部21から放出される防除成分の量が過剰となることで、使用開始から早い時期に防除成分の有効な濃度を維持できなくなり、製品の有効期間が短くなる虞がある。開口部21は、正面X及び背面Yの夫々で一つとすることも可能であるが、筐体20の強度を維持するためには、
図1に示すように、正面X及び背面Yに桟を形成するように開口部21を複数個に分割して設けることが好ましい。これにより、筐体20のサイズを容易に変更することができる。例えば、筐体20を大型化した場合、それに伴って開口部21も大きくなるが、開口部21を桟によって複数個に分割することで、開口部21の剛性が高まり、筐体20全体としての強度を維持することができる。開口部21を複数個に分割して設ける場合、複数の開口部21の開口面積の合計が、筐体20の全表面積の20~60%を占めるように形成されていることが好ましい。開口部21は、任意の形状で形成可能であるが、桟を挟んで隣接する三角形、四角形等の多角形に形成することで、必要な開口面積を確保しつつ筐体20の小型化を図ることもできる。開口部21の形状を多角形にする場合、
図1に示すように、異なる大きさ及び形状の開口部21が隣接するように配置することで、筐体20の一端から他端まで連続していない桟を形成することができる。筐体20の一端から他端まで連続していない桟を設けることで、どのようなサイズの筐体20であっても、強度を落とすことなく、必要な大きさの開口面積を容易に確保することができる。また、開口部21を複数個に分割する場合、正面X側の開口部21X、及び背面Y側の開口部21Yは、担持体10を挟んで対称な位置及び形状で設けることが好ましい。開口部21X及び開口部21Yが担持体10を挟んで対称に設けられていれば、筐体20の通風性が向上し、防除成分を効率的に外部へ放出することができる。さらに、
図1に示すように、筐体20の正面X側において、第一部位20a及び第二部位20bの一部に開口部21のない領域を設ける場合、背面Y側にも担持体10を挟んで対称な位置に開口部21のない領域を設けることで、筐体20を取り扱うときに、開口部21から露出している担持体10に使用者の手指が接触することを防ぐことができる。これにより、筐体20の折畳みや、吊り下げ、取り外し等の操作性を向上させることができる。
【0041】
筐体20の正面X側に設けられた開口部21Xは、第一部位20aでは凹部22の底面に開口し、第二部位20bでは凸部23の頂面に開口している。これにより、筐体20を折畳むことで、凹部22に凸部23を嵌合させて、筐体20の正面X側に設けられた開口部21Xを閉じることができる。ここで、「開口部を閉じる」とは、開口部21を介して筐体20の内部と外部とが実質的に連通しなくなる状態であればよく、開口部21が厳密に密閉されている必要はない。また、開口部21Xは、
図1に示すように、第一部位20aと第二部位20bとの連結部分を軸として対称に形成されていることが好ましい。開口部21Xが連結部分を軸として対称に形成されていることで、筐体20を折畳んだときに、第一部位20aの凹部22に形成されている桟と、第二部位20bの凸部23に形成されている桟とが全て対向して密着することになる。これにより、筐体20を折畳んだときに、第一部位20a側の開口部21Xと、第二部位20b側の開口部21Xとを交互に繋ぐような流路が形成されることがなく、開口部21Xからの防除成分の放出をより確実に防止することができる。
【0042】
〔収納ケース〕
収納ケース30は、筐体20の第一部位20a及び第二部位20bに夫々形成された開口部21を開閉する開閉手段としての機能を有する。
図1に示す例では、収納ケース30は、一側面に挿入口31を設けた箱体として構成される。なお、収納ケース30は、
図1に示すものに限らず、例えば、両側面に挿入口31を設けた箱体として構成してもよい。あるいは、一端又は両端が開放され、筐体20を被覆する状態で使用する袋状又は帯状のものとして構成することも可能である。収納ケース30の素材には、筐体20と同様の素材(熱可塑性樹脂)を用いることができる。
【0043】
図3に示すように、収納ケース30は、筐体20を折畳んだ状態で収納可能に構成されており、筐体20を収納した場合に、収納ケース30の内面が筐体20と密着する大きさ及び形状に形成されている。これにより、収納ケース30の内部に筐体20を折畳んで収納することで、筐体20の正面X側に開口する開口部21Xは第一部位20a及び第二部位20bが対向することによって閉じられた状態になるとともに、筐体20の背面Y側に開口する開口部21Yは収納ケース30によって閉じられた状態となり、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0044】
以上のように構成された飛翔害虫防除製品100では、使用時には、収納ケース30から筐体20を取り出すことで、筐体20の背面Yの開口部21Yが開放され、さらに、筐体20を開いた状態(
図2の状態)にすることで、筐体20の正面Xの開口部21Xが開放される。この状態で吊り下げ部16にフック等をかけて、筐体20を窓や玄関の近傍に吊り下げることによって、筐体20の開口部21から外部へと放出される防除成分により、窓や玄関を通って室内に侵入しようとする飛翔害虫を防除することができる。
【0045】
一方、使用者の外出等の理由で飛翔害虫の侵入を防ぐ必要のない時間帯が生じた場合、筐体20を折畳むことで筐体20の正面Xの開口部21Xを閉じ、さらに、筐体20を収納ケース30に収納することで筐体20の背面Yの開口部21Yを閉じる。これにより、防除成分の無駄な放出を防ぐことができる。このように、第一実施形態の飛翔害虫防除製品100では、防除成分の使用量を増大することなく、使用者の生活サイクル等に応じて製品の有効期間を延長することができる。
【0046】
<第二実施形態>
図4は、第二実施形態に係る飛翔害虫防除製品101の斜視図である。
図5は、
図4中のB-B´線における飛翔害虫防除製品101の断面図である。
図6は、飛翔害虫防除製品101の不使用状態を示す断面図である。以下の説明では、
図5に示す断面図の上側を飛翔害虫防除製品101の正面X、下側を背面Yとする。
【0047】
飛翔害虫防除製品101は、第一実施形態で説明した飛翔害虫防除製品100と同様に、窓や玄関の近傍に吊り下げて使用される製品である。飛翔害虫防除製品101は、担持体10、筐体20、及び収納ケース30に加えて、筐体20の背面Y側に取り付けられたカバー40を備えている。
【0048】
第二実施形態では、筐体20は、
図5に示すように、正面X側にのみ開口部21が設けられており、背面Y側には開口部21が設けられていない。しかしながら、飛翔害虫防除製品101は、正面X側で開口部21の開口比率を高めることによって、第一実施形態で説明した飛翔害虫防除製品100と比較してもそれほど遜色ない程度に、筐体20から防除成分を放出させることができる。筐体20のその他の構造は、第一実施形態で説明したものと同様である。
【0049】
カバー40は、収納ケース30とともに、筐体20の第一部位20a及び第二部位20bに夫々形成された開口部21を開閉する開閉手段としての機能を有する。カバー40は、筐体20に取り付けられたまま、筐体20とともに折畳み可能な薄板体として構成される。カバー40の素材には、筐体20と同様の素材(熱可塑性樹脂)を用いることができる。
【0050】
カバー40は、折畳んだ状態の筐体20に取り付けられたまま収納ケース30に収納された場合に、収納ケース30を厚み方向に弾性変形させる程度の大きさ及び形状に形成されている。この弾性変形で生じた応力によって、収納ケース30がカバー40を介して筐体20を押圧することにより、筐体20では、第一部位20aの凹部22の底面と、第二部位20bの凸部23の頂面との密着性がより向上することになる。この結果、凹部22の底面と凸部23の頂面とにおいて開口する開口部21をより確実に閉じて、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0051】
<第三実施形態>
図7は、第三実施形態に係る飛翔害虫防除製品102の斜視図である。
図8(a)は、
図7中のC-C´線における飛翔害虫防除製品102の断面図である。
図8(b)は、飛翔害虫防除製品102の不使用状態を示す断面図である。以下の説明では、
図8に示す断面図の上側を飛翔害虫防除製品102の正面X、下側を背面Yとする。
【0052】
飛翔害虫防除製品102は、第一実施形態で説明した飛翔害虫防除製品100と同様に、窓や玄関の近傍に吊り下げて使用される製品であり、担持体10と、筐体20と、収納ケース30とを備えている。
【0053】
第三実施形態では、筐体20は、
図7に示すように、一枚のプレート状に形成された樹脂製の板状体として構成され、内部に一枚の担持体10が収容され固定されている。これにより、飛翔害虫防除製品102は、第一実施形態で説明した飛翔害虫防除製品100と比較して組み立てが容易なものとなり、製造コストが抑えられた製品となっている。
【0054】
筐体20の正面X及び背面Yには、担持体10を挟んで対称な位置に開口部21のない領域が設けられている。これにより、使用者は、開口部21から露出している担持体10に手指を接触させることなく、筐体20を摘まんで容易に取り扱うことができる。開口部21のない領域は、
図7に示すように、吊り下げ部16が設けられた端部と逆側の端部近傍に設けられていることが好ましい。このような位置に開口部21のない領域が設けられていれば、この領域を摘まんで吊り下げ部16を上方へ向けることで、吊り下げ部16をカーテンレール等の高所に容易にかけることが可能となる。筐体20のその他の構造は、第一実施形態で説明したものと同様である。
【0055】
第三実施形態では、収納ケース30は、筐体20の正面X側に開口する開口部21X、及び背面Y側に開口する開口部21Yを開閉する開閉手段としての機能を有する。収納ケース30は、一側面に挿入口31を設けた箱体として構成される。
図8(b)に示すように、収納ケース30は、筐体20を収納した場合に、収納ケース30の内面が筐体20の正面X及び背面Yに密着する大きさ及び形状に形成されている。これにより、収納ケース30の内部に筐体20を収納することで、筐体20の正面X側に開口する開口部21X、及び背面Y側に開口する開口部21Yは何れも収納ケース30によって閉じられた状態となり、防除成分の無駄な放出を防止することができる。
【0056】
第三実施形態では、収納ケース30から筐体20の一部がはみ出した状態で使用することも可能である。例えば、飛翔害虫防除製品102を比較的狭い空間で使用する場合には、防除成分の揮散量が少なくても十分な防除効果が期待できる。また、防除成分の過剰な揮散は、防除成分自体の安全性に問題が無くても消費者に敬遠される傾向があり、コストの無駄でもある。そこで、飛翔害虫防除製品102をトイレ、浴室、クローゼット等の比較的狭い空間に設置する場合には、収納ケース30から筐体20を1/3~2/3程度はみ出した状態で使用することが有効である。この場合、必要十分な防除効果が得られながら、製品有効期間を長期化することができる。
【0057】
<別実施形態>
本発明の飛翔害虫防除製品は、使用者の生活サイクル等に応じて防除成分の放出をコントロールすることが可能であり、防除成分の使用量を増大することなく、有効期間を延長することができるという本発明の趣旨を逸脱しない限り、様々な改変が可能である。以下、そのような改変例を別実施形態として説明する。
【0058】
〔別実施形態1〕
飛翔害虫防除製品100において、開口部21は筐体20の正面X及び背面Yに設けられているが、開口部21は、筐体20の他の面にも設けてもよい。例えば、開口部21は、筐体20を収納ケース30に収納したときに、収納ケース30に密着する筐体20の側面にも設けてもよい。このように筐体20を構成することにより、使用時には、筐体20の正面X及び背面Yだけではなく、側面からも防除成分を放出して、より効果的に飛翔害虫を防除することができる。
【0059】
あるいは、開口部21は、筐体20を収納ケース30に収納したときに、収納ケース30の挿入口31側に露出する筐体20の側面にも設けてもよい。このように筐体20を構成することにより、不使用時に筐体20を収納ケース30に収納した状態でも、挿入口31側に露出する筐体20の側面に設けられた開口部21から防除成分を少量ずつ放出し続けることが可能となる。これにより、不使用時に防除成分が大きく減少することを抑制しつつ、少量放出された防除成分によって最低限の防除効果を得ることができる。例えば、不使用時の飛翔害虫防除製品100の保管場所としてクローゼットを利用する場合、筐体20を収納ケース30に収納した状態でクローゼット内に載置すれば、筐体20の側面の開口部21から少量放出された防除成分によって、クローゼット内に飛翔害虫が侵入することを防止したり、クローゼット内に存在する衣料害虫の駆除を行うことができる。
【0060】
〔別実施形態2〕
飛翔害虫防除製品100~102において、収納ケース30は、挿入口31から挿入された筐体20を収納するものであるが、筐体20を収納することで開口部21を閉じることが可能なものであれば、他の構成であってもよい。例えば、収納ケース30を正面X側と背面Y側とに分割した二つの部材で構成し、筐体20を正面X及び背面Yの両側から挟み込んで、開口部21を閉じるよう構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の飛翔害虫防除製品は、住宅等の室内空間への蚊類の侵入を抑制するために利用可能であるが、ハエ、ユスリカ等の飛翔害虫の侵入抑制においても利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 担持体
16 吊り下げ部
20 筐体
20a 第一部位
20b 第二部位
21 開口部
22 凹部
23 凸部
30 収納ケース(開閉手段)
40 カバー(開閉手段)
100、101、102 飛翔害虫防除製品
X 正面
Y 背面