(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】表示装置のための光導波体
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220801BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20220801BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B6/00 301
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2020569814
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2019065498
(87)【国際公開番号】W WO2019238823
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】102018209622.8
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン アレクサンダー ケアン
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523434(JP,A)
【文献】特開2005-234134(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016115938(DE,A1)
【文献】特表2017-531840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0212348(US,A1)
【文献】特開2011-180541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 6/00
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる波長に整合された2つ以上の部分光導波体(5R、5G、5B)を備えた、表示装置のための
射出瞳を拡開する光導波体(5)において、
前記部分光導波体(5R、5G、5B)の各々は、入射ホログラム(53)と、折り返しホログラム(51)と、出射ホログラム(52)とを有し、
前記部分光導波体(5R、5G、5B)のうちの少なくとも1つは、
その上面に、前記光導波体(5)への妨害光源(64)の妨害光の入射をフィルタリングするための光学フィルタ(70、70R、70G、70B)を有
し、
前記光学フィルタ(70、70R、70G、70B)は、前記表示装置の光源(14R、14G、14B)のスペクトラムに整合された少なくとも1つの狭帯域の透過帯域を有する、
光導波体(5)。
【請求項2】
前記光学フィルタ(70、70R、70G、70B)は誘電体フィルタである、請求項1記載の光導波体(5)。
【請求項3】
当該光導波体(5)は、関連する3つの波長(λR、λG、λB)のために3つの部分光導波体(5R、5G、5B)を有する、請求項1または2記載の光導波体(5)。
【請求項4】
第1の部分光導波体(5R)は、前記3つの波長(λR、λG、λB)に対し透過性である光学フィルタ(70R)を有し、第2の部分光導波体(5G)は、前記3つの波長のうち2つの波長(λG、λB)に対し透過性である光学フィルタ(70G)を有し、第3の部分光導波体(5B)は、前記3つの波長のうち1つの波長(λB)に対し透過性である光学フィルタ(70B)を有する、請求項3記載の光導波体(5)。
【請求項5】
前記部分光導波体(5R、5G、5B)は平面的に形成されており、1つの積層体を成している、請求項1から4までのいずれか1項記載の光導波体(5)。
【請求項6】
少なくとも1つの光学フィルタ(70、70R、70G、70B)が前記積層体に集積されている、請求項5記載の光導波体(5)。
【請求項7】
前記光学フィルタ(70、70R、70G、70B)は、部分光導波体(5R、5G、5B)の界面に被着されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の光導波体(5)。
【請求項8】
部分光導波体(5R、5G、5B)の界面への前記光学フィルタ(70、70R、70G、70B)の被着は、蒸着またはスパッタリングにより行われる、請求項1から7までのいずれか1項記載の光導波体(5)。
【請求項9】
画像を生成する画像生成ユニット(1)と、
虚像(VB)を生成するためにミラーユニット(3)に向けて前記画像を投影する光学ユニット(2)と、
射出瞳を拡開するために、請求項1から8までのいずれか1項記載の少なくとも1つの光導波体(5)と、
を有する、虚像(VB)を生成する装置。
【請求項10】
移動手段の操作者に対し虚像(VB)を生成するために、請求項9記載の装置を備えた移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置のための光導波体、およびかかる光導波体を使用する虚像を生成する装置に関する。
【0002】
HUDとも呼ばれるヘッドアップディスプレイとは、表示すべき内容が観察者の視野内に挿入されることから、観察者が自身の視線を維持できる表示システムのことであると解される。かかるシステムはそれらの複雑さおよびコストゆえに、元々は主として航空分野において利用されてきたが、いまでは自動車分野においても量産でそれらのシステムが組み込まれるようになってきている。
【0003】
ヘッドアップディスプレイは一般に、画像生成器と光学ユニットとミラーユニットとから成る。画像生成器は画像を生成する。光学ユニットはその画像をミラーユニットへ導く。画像生成器は、しばしば画像生成ユニットまたはPGU(Picture Generating Unit)とも呼ばれる。ミラーユニットは、部分的に反射性である光透過性のガラス板である。したがって観察者は、画像生成器により表示された内容を虚像として見ると同時に、ガラス板背後の実世界も見る。ミラーユニットとして、自動車分野ではしばしばフロントガラスが用いられ、その湾曲形状を表示にあたり考慮する必要がある。光学ユニットとミラーユニットとの共働によって、虚像は画像生成器により生成された画像の拡大表示となる。
【0004】
観察者は、いわゆるアイボックスのポジションだけからしか、虚像を観察できない。理論上の観察窓に相応する高さおよび幅を有する領域が、アイボックスと呼ばれる。観察者の目がアイボックス内に位置しているかぎりは、虚像のすべての要素を目で見ることができる。これに対し目がアイボックスの外側に位置していると、虚像は観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。したがってアイボックスが大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0005】
慣用のヘッドアップディスプレイの虚像のサイズは、光学ユニットのサイズによって制限される。虚像を拡大するための1つのアプローチは、画像生成ユニットから到来する光を光導波体に入射させるというものである。画像情報を担持し光導波体に入射された光は、光導波体の界面で全反射させられ、そのようにして光導波体内部を案内される。これに加え、伝播方向に沿った多数のポジションでそれぞれ光の一部が出射され、その結果、画像情報が光導波体の面全体にわたり分散されて出射される。このようにして光導波体によって、射出瞳の拡開が行われる。この場合、実効射出瞳は、画像生成システムの開口の像から合成される。
【0006】
このような背景のもとで、米国特許出願公開第2016/0124223号明細書は、虚像表示装置について記載している。この表示装置は、以下のように作用する光導波体を含む。すなわちこの光導波体は、画像生成ユニットから到来し第1の光入射面を通して入射する光を繰り返し内面反射させて、第1の光入射面から離れる第1の方向で進行させる。さらにこの光導波体は、光導波体内を案内される光の一部が、第1の方向に延在する第1の光出射面の領域を通って外部に出射するように作用する。この表示装置はさらに、当射光を回折させ、回折させられた光が光導波体に入射するように作用する、第1の光入射側回折格子と、光導波体から入射する光を回折させる第1の光出射側回折格子とを含む。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0124223号明細書において使用される光導波体は、光の波長に合わせて最適化されている。カラーの虚像を表示しようという場合には、それぞれ波長に合わせて最適化された2つ以上の部分光導波体を設ける必要がある。その際に各色に対し通常、1つの部分光導波体が配属される。ただし2つの色を、1つの部分光導波体において組み合わせて搬送することもできる。これらの部分光導波体は、配属された個々の色で光源によって照射される。ホログラフィック光導波体に依拠するヘッドアップディスプレイの場合には、有効光のほか、個々の部分光導波体のガラス板のところでの太陽光の鏡面反射およびホログラフィック反射も、ミラーユニットを介して目に向けて反射させられる。その結果として通常、少なくとも画像の識別が損なわれることになるけれども、じかにシステムのユーザの安全に関わる眩惑を引き起こすことも多い。
【0008】
本発明の課題は、妨害光による眩惑のリスクが低減された光導波体および虚像生成装置を提供することにある。
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を備えた光導波体および請求項9の特徴を備えた虚像生成装置によって解決される。従属請求項には本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、表示装置のための光導波体は、それぞれ異なる波長に整合された2つ以上の部分光導波体を含み、その際にこれらの部分光導波体のうちの少なくとも1つは、光学フィルタを有する。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、虚像を生成する装置は、
画像を生成する画像生成ユニットと、
虚像を生成するためにミラーユニットに向けて画像を投影する光学ユニットと、
射出瞳を拡開するための本発明による光導波体と
を有する。
【0012】
レーザ光を使用した場合、光源のサポート波長に対し著しく狭帯域のスペクトルだけしか用いられない。使用される波長に整合された適切な光学フィルタを使用することによって、妨害光のうちこれらの狭帯域波長領域だけしか部分光導波体まで進めない、ということが達成される。これによって、場合によっては反射させられる太陽光の成分が著しく低減される。その理由は、太陽光のうち光学フィルタの透過領域内にある波長を有する構成部分だけしか、部分光導波体内に侵入できないからである。このようにすれば、透過に必要とされる光学フィルタの透過率の最小値まで、後方反射の低減が達成される。
【0013】
本発明による光導波体によって、妨害光による眩惑が低減されたヘッドアップディスプレイを実現することができる。したがって特に有利であるのは、太陽光が光導波体に入射する可能性がある環境において利用されるヘッドアップディスプレイにおいて使用することである。このことはたとえば、自動車において使用する場合に該当する。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、光学フィルタは誘電体フィルタである。誘電体フィルタは、透過特性を極めて正確に調整することができ、著しく狭帯域の透過帯域を実現することができる、という利点を有する。これに加え、数多くの適切な誘電体フィルタが市販されており、開発コストをかけずにそれらを活用することができる。
【0015】
本発明の1つの態様によれば、光導波体は、関連する(zugehoerig)3つの波長のために3つの部分光導波体を有する。このようにすれば、多色の虚像を表示するために光導波体を使用することができる。たとえば、フルカラー画像を表示させることのできる赤色、緑色および青色に対し、部分光導波体を最適化することができる。当業者には、フルカラー画像を実現させることのできるさらなる色の組み合わせが公知である。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、第1の部分光導波体は、3つの波長に対し透過性である光学フィルタを有する。第2の部分光導波体は、3つの波長のうち2つの波長に対し透過性である光学フィルタを有する。最後に第3の部分光導波体は、3つの波長のうち1つの波長に対し透過性である光学フィルタを有する。この実施形態によれば、部分光導波体ごとに1つの光学フィルタが設けられている。妨害光源から見て最初の部分光導波体は、3つの色すべてを透過させる第1の光学フィルタを表面に有する一方、これに続く部分光導波体の第2の光学フィルタは、2つの色に対してのみ透過性である。3番目の部分光導波体の第3の光学フィルタは、1つの色だけを通過させる。このようにすれば、場合によっては反射させられる太陽光の成分をさらに低減することができる。
【0017】
本発明の1つの態様によれば、部分光導波体は平面的に形成されており、1つの積層体を成している。部分光導波体の平面的な構成により、2次元で射出瞳を拡開するために光導波体を使用することができる。この場合、1つの積層体となるよう複数の部分光導波体を集積することによって、ヘッドアップディスプレイを組み立てている間の取り扱いおよび調節が容易になる。これに加え、そのようにすることで光導波体の安定性が高められることになり、このことは特に、たとえば走行中に自動車内で発生する揺れなどにより、外部の力の作用に晒されるヘッドアップディスプレイにとって重要なことである。
【0018】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも1つの光学フィルタが積層体に集積されている。積層体に光学フィルタを集積することによって、このフィルタは所定の範囲で外部の作用から保護されている。しかもこの構成であれば、光導波体を光学フィルタと共にただ1つの製造ステップで、ヘッドアップディスプレイに組み込むことができ、これによって製造時間が短縮される。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、光学フィルタは部分光導波体の界面に被着されている。このようにすれば、積層体内でのさらなる反射を阻止することができ、妨害光から搬送されてすべての界面全体に当射するエネルギーの量を、最小限に抑えることができる。
【0020】
本発明の1つの態様によれば、部分光導波体の界面への光学フィルタの被着は、蒸着またはスパッタリングにより行われる。蒸着によって、つまり蒸気による層の堆積によって、所望の光学フィルタを著しく低コストで製造することができる。カソードスパッタリングとも呼ばれるスパッタリングによる光学フィルタの被着は、あまり低コストではないけれども、精度に対し高い要求を伴う複雑なフィルタに特に適している。
【0021】
好ましくは本発明による装置は、移動手段の操作者のために虚像を生成する目的で、移動手段において虚像を生成するために用いられる。移動手段をたとえば、自動車または航空機とすることができる。当然ながら本発明による解決手段を、別の環境においても、または別の用途のためにも、用いることができ、たとえばトラック、鉄道技術および公共近距離旅客輸送、クレーンおよび工事機械などにおいても、用いることができる。
【0022】
以下の説明ならびに添付の特許請求の範囲に基づき図面を参照することで、本発明のさらなる特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図2】2次元で拡大された光導波体を示す図である。
【
図3】光導波体を備えたヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図4】光導波体を備えた自動車におけるヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図5】光学フィルタを備えた本発明による光導波体への妨害光の入射について示す図である。
【
図6】
図5による光学フィルタの透過特性曲線を概略的に示す図である。
【
図7】3つの光学フィルタを備えた本発明による光導波体への妨害光の入射について示す図である。
【
図8】
図7による光学フィルタの透過特性曲線を概略的に示す図である。
【0024】
発明を実施するための形態
本発明の原理について理解を深めるために、以下では図面に基づき本発明の実施形態を詳しく説明する。図中、同じ構成要素または同じ働きをする構成要素に対し同じ参照符号が用いられ、それらについては必ずしも図面ごとに新たに説明しない。自明のとおり、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではなく、ここで説明する特徴を、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の保護範囲から逸脱することなく、組み合わせることもできるし、または変形することもできる。
【0025】
最初に
図1~
図4に基づき、光導波体を備えたヘッドアップディスプレイの基本的着想について説明する。
【0026】
図1には、従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイの原理図が示されている。このヘッドアップディスプレイは、画像生成器1と光学ユニット2とミラーユニット3とを有する。表示素子11からビーム束SB1が発せられ、これは折り返しミラー21により湾曲ミラー22に向けて反射させられ、湾曲ミラー22はビーム束SB1をミラーユニット3の方向に反射させる。ミラーユニット3はここでは、自動車のフロントガラス31として示されている。そこからビーム束SB2は、観察者の目61の方向に達する。
【0027】
観察者は、自動車の外側でボンネット上方またはそれどころか自動車前方に位置する虚像VBを見る。光学ユニット2とミラーユニット3との共働により、虚像VBは表示素子11により表示された画像の拡大表示である。ここでは速度制限、目下の車両速度ならびにナビゲーション指示がシンボルで表示されている。矩形により示唆されたアイボックス62内に目61が位置しているかぎり、虚像のすべての要素を目61で見ることができる。目61がアイボックス62の外側に位置していると、虚像VBは観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。アイボックス62が大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0028】
湾曲ミラー22の湾曲はフロントガラス31の湾曲に整合されており、これにより画像のゆがみがアイボックス62全体にわたり安定するよう配慮される。湾曲ミラー22は、支承部221により旋回可能に支承されている。これにより湾曲ミラー22が回転可能になることで、アイボックス62をシフトさせることができるようになり、したがってアイボックス62のポジションを目61のポジションに整合させることができるようになる。折り返しミラー21の役割は、表示素子11と湾曲ミラー22との間でビーム束SB1が辿る経路が長くなるようにし、同時に光学ユニット2が結果としてコンパクトになるようにすることである。光学ユニット2は、透明なカバー23によって周囲に対し仕切られている。したがって光学ユニット2の光学素子は、たとえば車両の内部空間に存在する埃から保護されている。さらにカバー23の上には、光学シートもしくは偏光子24が設けられている。表示素子11は一般に偏光されており、ミラーユニット3は検光子のように作用する。したがって偏光子24の目的は、有効光の均等な可視性を達成するように偏光に作用を及ぼすことである。防眩素子25の役割は、カバー23の界面を介して反射させられる光を確実に吸収して、観察者の眩惑が引き起こされないようにすることである。太陽光SL以外に、他の妨害光源64の光も表示素子11に到達する可能性がある。偏光フィルタと組み合わせて、入射する太陽光SLをカットするために偏光子24を付加的に利用することもできる。
【0029】
図2には、2次元で拡大された光導波体5が立体表示で概略的に示されている。左下の領域に入射ホログラム53が示されており、これを用いることで、図示されていない画像生成ユニットから到来する光L1が光導波体5に入射される。この光導波体5において図面では右上に向かって、矢印L2に従い光が伝播する。光導波体5のこの領域には折り返しホログラム51が設けられており、これは相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、Y方向に拡がりX方向に伝播する光束を生成する。このことは3つの矢印L3によって示唆されている。図面では右に向かって延びている光導波体5の部分に出射ホログラム52が設けられており、これもやはり相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、矢印L4で示唆された光をZ方向で上方に向けて光導波体5から出射させる。この場合、入射した元々の光束L1が、2次元で拡大された光束L4として光導波体5から離れるように、X方向での拡がりが発生する。
【0030】
図3には、3つの光導波体5R、5G、5Bを備えたヘッドアップディスプレイが、立体表示で概略的に示されており、これらの光導波体は上下に位置するように配置されており、赤色、緑色および青色というそれぞれ1つの基本色のために設けられている。これらの光導波体が合わさって光導波体5を成している。光導波体5内に設けられているホログラム51、52、53は波長依存性であり、したがってそれぞれ1つの光導波体5R、5G、5Bが基本色のうちの1つのために用いられる。光導波体5の上方に、画像生成器1および光学ユニット2が示されている。光学ユニット2はミラー20を有しており、このミラー20によって、画像生成器1により生成され光学ユニット2により成形された光が、個々の入射ホログラム53の方向に偏向される。画像生成器1は、3つの基本色のための3つの光源14R、14G、14Bを有する。ここでわかるのは、図示されているユニット全体はその光放射面に比べて僅かな構造全高を有する、ということである。
【0031】
図4には、
図1と同様に自動車におけるヘッドアップディスプレイが、ただしここでは立体表示で光導波体5と共に示されている。この図からわかるように、ミラー面523を用いて光導波体5に入射される平行なビーム束SB1を生成する画像生成器1が概略的に示唆されている。簡略化するため、光学ユニットは図示されていない。複数のミラー面522によって、それらに当射する光のそれぞれ一部がフロントガラス31すなわちミラーユニット3の方向に反射させられる。そこから光は目61の方向に反射させられる。観察者は、ボンネット上方もしくは自動車前方のさらに隔たった距離のところで虚像VBを見る。この技術の場合にも、光学系全体が1つのハウジング内に組み込まれており、このハウジングは透明なカバーによって周囲に対し仕切られている。
図1のヘッドアップディスプレイにおいてすでに示したように、このカバーの上に位相子を配置することができる。
【0032】
図5には、光学フィルタ70を備えた本発明による光導波体5への妨害光の入射について示されている。
図6には、光学フィルタ70の透過特性曲線が概略的に示されている。光導波体5は、観察者61のために虚像VBを生成する装置の構成部分である。この実施例ではこの装置は、自動車のヘッドアップディスプレイである。光導波体5はこの場合、射出瞳を2次元で拡開する役割を果たす。自動車のフロントガラス31が、ミラーユニット3として機能する。妨害光源64はこの場合、太陽光である。
【0033】
光導波体5は図示の実施例の場合、それぞれ異なる波長λR、λG、λBに対して最適化された3つの部分光導波体5R、5G、5Bを有する。好ましくはこれらの波長は、赤色、緑色および青色に相応する。
図5の一番上の部分光導波体5Rは、光学フィルタ70たとえば誘電体フィルタを有する。波長λに対し透過係数Tが書き込まれた、
図6に概略的に示されている透過特性曲線から読み取れるように、光学フィルタ70は、使用される3つの波長λR、λG、λBに対応する3つの狭帯域の透過帯域を有する。部分光導波体5R、5G、5Bは、それぞれ配属された色を放出する光源14R、14G、14Bによって照射される。レーザ光を使用した場合、光源14R、14G、14Bのサポート波長λR、λG、λBに対し著しく狭帯域のスペクトルだけしか存在しない。
【0034】
ホログラフィック光導波体5に依拠するヘッドアップディスプレイの場合には、有効光のほか、個々の部分光導波体5R、5G、5Bのガラス板のところでの、妨害光源64としての太陽光の鏡面反射およびホログラフィック反射も、ミラーユニット3を介して目61に向けて反射させられる。その結果として通常、少なくとも画像の識別が損なわれることになるけれども、じかにシステムのユーザの安全に関わる眩惑を引き起こすことも多い。光学フィルタ70の使用によって達成されるのは、妨害光のうち狭帯域領域だけしか部分光導波体5R、5G、5Bまで進めない、ということである。これによって、場合によっては反射させられる太陽光の成分が著しく低減される。
【0035】
図7には、3つの光学フィルタ70R、70G、70Bを備えた本発明による光導波体5への妨害光の入射について示されている。
図8には、これらの光学フィルタ70R、70G、70Bの透過特性曲線が概略的に示されている。この場合、部分図(a)は、妨害光源64から見て1番目の光学フィルタ70Rの透過特性曲線を示し、部分図(b)は、2番目の光学フィルタ70Gの透過特性曲線を、さらに部分図(c)は、3番目の光学フィルタ70Bの透過特性曲線を示す。
図6にすでに示したように、これらの透過特性曲線では波長λに対し透過係数Tが書き込まれている。
【0036】
この変形実施形態の場合、部分光導波体5R、5G、5Bごとに1つの光学フィルタ70R、70G、70Bが設けられている。妨害光源64から見て最初の部分光導波体5Rは、3つの色すべてを透過させる第1の光学フィルタ70Rを表面に有する一方、これに続く部分光導波体5Gの第2の光学フィルタ70Gは、2つの色に対してのみ透過性である。第3の部分光導波体5Bの第3の光学フィルタ70Bは、1つの色だけを通過させる。製造プロセスの可能性次第では、これらの光学フィルタ70R、70G、70Bを、部分光導波体5R、5G、5Bの界面に直接、被着させることもでき、これによってさらなる反射が阻止され、すべての界面全体に向かうエネルギー量が最小限に抑えられる。
【符号の説明】
【0037】
1 画像生成器/画像生成ユニット
11 表示素子
14、14R、14G、14B 光源
2 光学ユニット
20 ミラー
21 折り返しミラー
22 湾曲ミラー
221 支承部
23 透明なカバー
24 光学シート/偏光子
25 防眩素子
3 ミラーユニット
31 フロントガラス
5、5R、5G、5B 光導波体
51 折り返しホログラム
52 出射ホログラム
522 ミラー面
523 ミラー面
53 入射ホログラム
54 基板
55 カバー層
56 ホログラム層
61 目/観察者
62 アイボックス
64 妨害光源
70、70R、70G、70G 光学フィルタ
L1~L4 光
λ、λR、λG、λB 波長
S1 表示すべき画像を受信する
S2 描画すべき画像内容が存在しない領域を特定する
S3 特定の領域に従い電極アレイをスイッチングする
SB1、SB2 ビーム束
SL 太陽光
T 透過係数
VB 虚像