(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】導体部捩り治具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20220801BHJP
H02G 1/12 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G1/12 004
H02G1/12 092
(21)【出願番号】P 2021137820
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】菅 邦和
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-100250(JP,A)
【文献】特開2004-103396(JP,A)
【文献】特開2013-247190(JP,A)
【文献】特開2012-18876(JP,A)
【文献】特開昭61-164412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 1/12
H01B 13/02
H01B 11/02
H01R 43/28
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導体部を捩り合わせる導体部捩り治具において、筒状体の一端側が複数本の導体部を挿入可能な開口部となっており、当該開口部は、略扁平に形成され、開口部の長手方向寸法は捩り合わせるべき複数本の導体部を横並びにした状態で挿入可能に設定され、開口部の短手方向寸法は一本の導体部の直径より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部の直径の和より小さく設定されており、複数本の導体部を挿入した状態で導体部に対して相対的に回転させると、導体部同士が捩り合わされることを特徴とする導体部捩り治具。
【請求項2】
前記開口部は、短手方向は挿入側に向かって徐々に拡大されていることを特徴とする請求項1記載の導体部捩り治具。
【請求項3】
開口部の反対側は、回転工具の回転軸に連結可能となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の導体部捩り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体部から露出された導体部を複数本捩り合わせる導体部捩り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気工事やDIYにおいて電線の導体部を捩り合わせる必要がある。例えば、2本の導体部を捩り合わせた後、閉端接続子で圧着する場合等である。
かかる場合、一般には導体部を指先で摘んで捩るため、指先を傷めるおそれがある。指先の傷が気になって捩り合わせが弱くなることもある。
導体部を捩り合わせる作業が大量にある工場等であれば、電気式やエアー式の自動電線捩り機(特開2018-099015号公報参照)を使用することもできるが工事現場やDIY等の場面ではそのような機械器具を用いることもできない。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線の導体部を捩り合わせる機械器具は、工場で使用するようなものはまだしも、小型で素人でも簡単に取り扱えるような機器は存在しないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、電線の導体部を簡単に捩り合わせることができる小型かつ扱いやすい導体部捩り治具を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る導体部捩り治具は、複数本の導体部を捩り合わせる導体部捩り治具であって、筒状体の一端側が複数本の導体部を挿入可能な開口部となっており、当該開口部は、略扁平に形成され、開口部の長手方向寸法は捩り合わせるべき複数本の導体部を横並びにした状態で挿入可能に設定され、開口部の短手方向寸法は一本の導体部の直径より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部の直径の和より小さく設定されており、複数本の導体部を挿入した状態で導体部に対して相対的に回転させると、導体部同士が捩り合わされるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る導体部捩り治具によると、複数本の導体部を挿入し、回転させるだけで自然と導体部が捩り合わされる。このため、従来のような大がかりな機械器具を使用することなく、素人でも簡単に取り扱える。しかも指先等傷めることなく手動で導体部を捩り合わせることができるという大きなメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具の概略的斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具の開口部の概略的正面図であって、同図(A)は2本の導体部を捩り合わせるタイプの概略的正面図、同部(B)は3本の導体部を捩り合わせるタイプの概略的正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具による導体部の捩り合わせの手順を説明する概略的斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具による導体部の捩り合わせを説明する概略的説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具による手動での導体部の捩り合わせを説明する概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具100によって捩り合わされる導体部220を有する電線200について説明する。
この電線200は、導体部210を絶縁体部210で被覆することで構成される一般的なものである。導体部220には1本の導体からなる単線タイプや、複数本の導体を縒り合わせて構成されたより線タイプがあるが、本発明に係る導体部捩り治具100は、より線タイプの電線に対応している。
なお、導体部220を捩り合わせる際には、絶縁体部210を除去して導体部220を露出させた状態で行うことはいうまでもない。
【0010】
本発明の実施の形態に係る導体部捩り治具100は、複数本の導体部220を捩り合わせる導体部捩り治具であって、筒状体の一端側が複数本の導体部220を挿入可能な開口部110となっており、当該開口部110は、略扁平に形成され、開口部110の長手方向寸法は捩り合わせるべき複数本の導体部220を横並びにした状態で挿入可能に設定され、開口部110の短手方向寸法は一本の導体部220の直径より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径の和より小さく設定されており、複数本の導体部220を挿入した状態で導体部220に対して相対的に回転させると、導体部220同士が捩り合わされるようにはなっている。
【0011】
この導体部捩り治具100は、例えば金属製の筒状体の一端側を略扁平、詳しくは長方形の短辺側を外側に向かって突出させたように押しつぶしたものであって、この押しつぶした側を導体部220を挿入する開口部110としている。
この開口部110は、捩り合わせるべき複数本の導体部220が挿入可能になっている。具体的には、開口部110の長手方向寸法は捩り合わせるべき複数本の導体部220を横並びにした状態で挿入可能に設定されている。
この長手方向寸法は、単に捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径の和より大きく設定されているのではない。すなわち、
図5等に示すように、複数本の導体部220を開口部111に挿入する際、電線200の絶縁体部210同士を接触させた状態で行われるので、導体部220を被覆した絶縁体部210は除去されてはいるが導体部220同士は接触しない状態となっている。開口部110の長手方向寸法は、捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径の和ではなく、複数本の導体部220を横並びにした状態で挿入可能となるような寸法に設定されることになる。
【0012】
一方、開口部110の短手方向寸法は、一本の導体部220の直径より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径の和より小さく設定されている。
【0013】
すなわち、2本の導体部220を捩り合わせるのであれば、
図2(A)に示すように、開口部110の長手方向寸法は2本の導体部220が横並びで挿入可能に設定され、しかも短手方向寸法は2本の導体部220の直径よりは大きくかつ2本の導体部220の直径の和より小さく設定される必要がある。
3本の導体部220を捩り合わせるのであれば、
図2(B)に示すようになる。
【0014】
かかる開口部110は、
図1に示すように、短手方向は挿入側に向かって徐々に拡大されている。すなわち、開口部110への複数本の導体部220の挿入をより容易にするために、開口部110は短手方向においてより広く形成されているのである。
【0015】
なお、開口部110は、上述の説明では、長方形の短辺側を外側に向かって突出させたように押しつぶしたものとしたが、単に長方形状であってもよいことはいうまでもない。
【0016】
さらに、この導体部捩り治具100は、開口部110の反対側には滑り止めのチューブ120が嵌め込まれている。
図5に示すように、このチューブ120に親指、人指し指、中指をかけて導体部捩り治具100を回転させることで複数本の導体部220を捩り合わせるのである。
【0017】
このように構成された導体部捩り治具100の使用手順を説明する。
まず、捩り合わせるべき電線200の絶縁体部210を除去して導体部220を露出させる。導体部220が露出された電線200を横並びにする。その際、除去されていない絶縁体部210は接触させておく。
この状態で導体部220を導体部捩り治具100の開口部110に挿入する。なお、絶縁体部210までは開口部110に挿入しない(
図3(A)及び
図4(A)参照)。
【0018】
この状態で横並びの電線200の絶縁体部210を一方の手で抑えておき、もう一方の手で導体部捩り治具100を導体部220の反対方向に抜きながら回転させる(
図3(B)及び
図4(B)参照)。
【0019】
導体部捩り治具100を回転させると、
図2に示すように、導体部捩り治具100の開口部110の短手方向寸法が、一本の導体部220の直径寸法より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径寸法の和より小さく設定されているため、導体部捩り治具100の内部で導体部220が横並びを維持することにより導体部220が自然と捩り合わせられる(
図3(C)及び
図4(C)参照)。
【0020】
導体部捩り治具100を回転させると、根元側、すなわち絶縁体210に近い側の導体部220は絶縁体部210が手で押さえられているため横並び状態を維持しようとするが、先端側の導体部220は導体部捩り治具100の内部での横並び状態を維持し、しかも導体部捩り治具100が抜きながら回転されるため、先端側の導体部220から捩り合わせられることになる。
【0021】
なお、一度に捩り合わされる導体部220の本数は、開口部110の寸法を適宜設定することにより調整することができる。
【0022】
また、上述の説明では導体部捩り治具100を手で回転させたが、開口部の反対側に、例えば既存の電動ドライバーのような回転工具の回転軸に連結して使用することも可能である。
回転工具を使用すれば、より早くかつ簡単に導体部220を捩り合わせることができる。しかも、既存の電動ドライバーであれば工事現場やDIYの場面でも簡単に使用することができる。
【0023】
なお、上述の説明では、導体部捩り治具100は、金属製の筒状体を変形させているとしたが、金属製に限定されることはなく、合成樹脂、セラミック等の他の素材から構成されてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
100 導体部捩り治具
110 開口部
200 電線
210 絶縁体部
220 導体部
【要約】
【課題】電線の導体部を簡単に捩り合わせることができる小型かつ扱いやすい導体部捩り治具を提供する。
【解決手段】複数本の導体部220を捩り合わせる導体部捩り治具であって、筒状体の一端側が複数本の導体部220を挿入可能な開口部110となっており、当該開口部110は、略扁平に形成され、開口部110の長手方向寸法は捩り合わせるべき複数本の導体部220を横並びにした状態で挿入可能に設定され、開口部110の短手方向寸法は一本の導体部220の直径より大きくかつ捩り合わせるべき複数本の導体部220の直径の和より小さく設定されており、複数本の導体部220を挿入した状態で導体部220に対して相対的に回転させると、導体部220同士が捩り合わされるようになっている。
【選択図】
図5