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特許7114803パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置
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  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図1a
  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図1b
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  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図8b
  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図8c
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  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図9b
  • 特許-パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置 図9c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリ、およびこのような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20220801BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20220801BHJP
   F16H 57/027 20120101ALI20220801BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H57/04 P
F16H57/04 Z
F16H57/027
B60T1/06 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021518851
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2018067720
(87)【国際公開番号】W WO2020001794
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ ミーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュミット
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン ツィラギ
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-528406(JP,A)
【文献】特開2017-115965(JP,A)
【文献】特開2012-017825(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010051041(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
F16H 57/04
F16H 57/027
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の電気駆動装置用の伝動装置アセンブリであって、
駆動軸(7)、
減速伝動装置(45)であって、前記駆動軸(7)によって回転駆動可能であり、導入された回転運動を高速から低速に減速するように構成されている減速伝動装置(45)、
出力分岐ユニット(15)であって、前記減速伝動装置(45)に駆動連結されていて、導入された回転運動を2つの出力部分(44,44’)に伝達するように構成されている出力分岐ユニット(15)、および
パーキングロックユニットであって、前記駆動軸(7)と前記出力部分(44,44’)との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材に回動不能に結合されているパーキング歯車(20)と、前記パーキング歯車(20)に選択的に係合することができる制御可能なロック要素(21)とを備えたパーキングロックユニット
を含む伝動装置アセンブリにおいて、
前記パーキングロックユニットは、パーキングロックハウジング(4,5)内に配置されていて、該パーキングロックハウジング(4,5)は、内部に前記減速伝動装置(45)および前記出力分岐ユニット(15)の少なくとも一部が配置されている伝動装置ハウジング(3,4)に対して液密にシールされており、これによって前記伝動装置ハウジング(3,4)内における第1のオイル浴(46)が前記パーキングロックハウジング(4,5)内における第2のオイル浴(47)から切り離されている
ことを特徴とする、伝動装置アセンブリ。
【請求項2】
前記ロック要素(21)はスピンドル駆動装置(48)によって制御可能であり、前記スピンドル駆動装置(48)は、回転軸線(X4)を中心にして回転するように支持されていて遠心ディスク(25,25’,25’’)を備えたスピンドル(24)を有しており、前記遠心ディスク(25,25’,25’’)は、前記スピンドル(24)の回転時に前記第2のオイル浴(47)のオイルを、前記パーキング歯車(20)と前記ロック要素(21)との間の接触領域に向けて供給する、請求項1記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項3】
前記遠心ディスク(25,25’,25’’)は少なくとも1つの放出区分(42,42’,42’’)を有しており、該放出区分(42,42’,42’’ )は、前記スピンドル(24)の前記回転軸線(X4)に対して放出角度(α1,α2)を成して方向付けられており、前記放出角度(α1,α2)は、90°以下であり、かつ25°よりも大き
前記遠心ディスク(25,25’,25’’)は、前記スピンドル(24)の前記回転軸線(X4)の軸線方向において前記パーキング歯車(20)とオーバラップして配置されている、請求項2記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項4】
前記第2のオイル浴(47)のレベル(L2)が、当該伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、鉛直方向において前記スピンドル(24)の前記回転軸線(X4)の下方に位置している、請求項2又は3記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項5】
前記スピンドル駆動装置(48)は制御円錐体(28)を有しており、該制御円錐体(28)によって前記ロック要素(21)は可逆式に、前記パーキング歯車(20)が前記ロック要素(21)に対して自由に回転することができる解放位置から、長手方向軸線(X2)を中心にした前記パーキング歯車(20)の回転が前記ロック要素(21)によってロックされているロック位置に移行可能であり、
前記制御円錐体(28)は、前記第2のオイル浴(47)内に、当該伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、最大で前記制御円錐体(28)の最大の外側半径(Ra)の2/3だけが浸漬している、請求項2から4までのいずれか1項記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項6】
当該伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、前記第1のオイル浴(46)のレベル(L1)が前記第2のオイル浴(47)のレベル(L2)とは異なっており
前記第2のオイル浴(47)のレベル(L2)が、当該伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、鉛直方向において前記パーキング歯車(20)の作用領域の下方に位置している、請求項1からまでのいずれか1項記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項7】
前記パーキング歯車(20)は、前記駆動軸(7)と前記出力部分(44,44’)との間の動力伝達路における前記トルク伝達部材の自由な軸端部(49)に回動不能に結合されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項8】
前記伝動装置ハウジングは、少なくとも1つの第1のハウジング部分(3)と第2のハウジング部分(4)とを含んでいて、内部に前記減速伝動装置および前記出力分岐ユニット(15)が少なくとも部分的に配置されている伝動装置室を取り囲んでおり、かつ
前記パーキングロックハウジングは、少なくとも前記第2のハウジング部分(4)と第3のハウジング部分(5)とによって形成され、内部に前記パーキングロックユニットが少なくとも部分的に配置されているパーキングロック室を取り囲んでいる、請求項1からまでのいずれか1項記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項9】
前記伝動装置室と前記パーキングロック室とは、圧力補償通路(32)によって接続されており、前記圧力補償通路(32)の第1の入口(35)が前記伝動装置室内に、前記圧力補償通路(32)の第2の入口(36)が前記パーキングロック室内に配置されており
前記第1の入口(35)は、前記第2の入口(36)の上方に配置されており、
前記圧力補償通路(32)の前記第1の入口(35)に隣接して、噴射オイルの流れを阻止するラビリンス室(38)が配置されており、
前記伝動装置ハウジング(3,4)および前記パーキングロックハウジング(4,5)の少なくとも一方のハウジング内に、空気抜き要素が収容されており、該空気抜き要素を通して前記伝動装置室および/または前記パーキングロック室は、周囲環境に対して空気抜き可能である、請求項記載の伝動装置アセンブリ。
【請求項10】
電気駆動装置であって、
請求項1からまでのいずれか1項記載の伝動装置アセンブリ、および
伝動装置ハウジング(3,4)に結合されている駆動ユニット(31)を含んでおり、前記伝動装置アセンブリの駆動軸(7)が前記駆動ユニット(31)によって回転駆動可能である、電気駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車の電気駆動装置用の、パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリに関する。電気駆動装置は、自動車のためのただ1つの駆動装置として設けられていてよい。択一的にハイブリッドの駆動コンセプトでは、電動駆動装置に加えて、内燃機関が設けられていてよい。このとき電動駆動装置と内燃機関とは、それぞれ単独で、車両の駆動のために働くことができる、または一緒に重畳されて自動車を駆動することができる。電気駆動装置の電気機械は、通常、高回転数時に作動させられる。電気駆動装置の伝動装置アセンブリは、電気機械の高回転数と、車輪の通常比較的ゆっくりとした回転数との間の回転数適合の機能を引き受けている。さらに伝動装置アセンブリを介して個々の車輪の間の回転数補償が行われる。
【0002】
国際公開第2018/001476号に基づいて、パーキングロックを備えた電気駆動アセンブリが公知であり、この電気駆動アセンブリは、電気機械、減速伝動装置、およびディファレンシャル伝動装置を有していて、電気機械、減速伝動装置、およびディファレンシャル伝動装置は、ハウジングアセンブリ内に収容されている。減速伝動装置は、平歯車ユニットと後置された遊星歯車ユニットとから成っており、遊星歯車ユニットの遊星キャリアは、ディファレンシャル伝動装置のディファレンシャルハウジングに回動不能に結合されている。平歯車ユニットは、電気機械によって回転するように駆動可能なモータ軸に駆動ピニオンを有しており、この駆動ピニオンは、駆動歯車と係合している。駆動歯車は、遊星歯車段の太陽歯車をも含む伝動装置軸に回動不能に結合されている。モータ軸は、突出する自由な軸端部を有しており、この軸端部は、パーキングロックハウジング内に進入させられていて、この軸端部にはパーキングロック歯車が回動不能に結合されている。パーキングロックハウジングは、ハウジングアセンブリと一緒に、内部に伝動装置要素が収容されている共通の室を形成している。
【0003】
本発明の根底を成す課題は、パーキングロックの一定の係止速度を可能にしかつ長持ちで保守しやすい、パーキングロックを備えた伝動装置アセンブリを提供することである。さらに本発明の課題は、このような伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置を提供することである。
【0004】
課題を解決するために、自動車の電気駆動装置用の伝動装置アセンブリであって、駆動軸、減速伝動装置であって、駆動軸によって回転駆動可能であり、導入された回転運動を高速から低速に減速するように構成されている減速伝動装置、出力分岐ユニットであって、減速伝動装置に駆動結合されていて、導入された回転運動を2つの出力部分に伝達するように構成されている出力分岐ユニット、およびパーキングロックユニットであって、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材に回動不能に結合されているパーキング歯車と、パーキング歯車に選択的に係合若しくは噛合することができる制御可能なロック要素とを備えたパーキングロックユニットを含む伝動装置アセンブリにおいて、パーキングロックユニットは、パーキングロックハウジング内に配置されていて、該パーキングロックハウジングは、内部に減速伝動装置および出力分岐ユニットの少なくとも一部が配置されている伝動装置ハウジングに対して液密にシールされており、これによって伝動装置ハウジング内における第1のオイル浴がパーキングロックハウジング内における第2のオイル浴から切り離されている、伝動装置アセンブリが提案されている。
【0005】
本発明に係る伝動装置アセンブリには、パーキング歯車およびロック要素を、別体の第2のオイル浴によって潤滑することができるという利点がある。これによってパーキングロックの導入時に、パーキング歯車とロック要素との間の接触領域への確定されたオイル供給を実現することができ、これによって係止速度を、伝動装置アセンブリの広い作動領域にわたってほぼ一定に保つことができる。さらに第2のオイル浴のために、第1のオイル浴のオイルとは異なったオイルの種類を使用することができ、第2のオイル浴のオイルの種類の特性は、パーキング歯車とロック要素との間の潤滑の要求に適合されている。さらに、パーキングロックの係止時に、特にラチェッティング時にパーキング歯車およびロック要素から削り取られた摩耗屑が、第2のオイル浴内において集められ、これによって第1のオイル浴のオイルを汚染せず、このことは、第1のオイル浴からオイルが供給される、減速伝動装置および出力分岐ユニットの要素の耐用寿命を延ばす。さらに別体のパーキングロックハウジング内にパーキングロックが配置されていることによって、高い摩耗時におけるメンテナンス時に、第2のオイル浴のオイルならびにパーキング歯車およびロック要素の所望の交換が可能になる。
【0006】
パーキングロックハウジングと伝動装置ハウジングとの間の液密なシールは、両ハウジングの間にそれぞれ適宜なシール要素が配置されていることによって得ることができる。シール要素は例えば、ラジアル軸シールリングのような回転式シール部材として、またはラビリンスシールのような無接触式シール部材として形成されていてよい。
【0007】
もちろん、本発明に係る伝動装置アセンブリでは、パーキングロックハウジング内にパーキングロックユニットの複数の要素が配置されていればよく、これらの要素によってロック作用が直接、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材、特にパーキング歯車およびロック要素に加えられる。パーキングロックユニットの他の要素、例えばアクチュエータまたはロック要素の支持装置に対応配置されねばならない要素は、パーキングロックハウジングの内部に配置されていても、またはパーキングロックハウジングの外部に配置されていてもよい。
【0008】
駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材は、例えば駆動軸、伝動装置軸、または出力分岐ユニットのハウジングであってよいが、これらの例示に限定されるものではない。
【0009】
出力分岐ユニットとは、少なくとも1つの駆動要素の出力を少なくとも2つの被動軸に分割し、特に被動軸の間の回転数補償を可能にする、すべてのアセンブリであると理解すべきである。出力分岐ユニットは、例えばディファレンシャル伝動装置として、またはデュアル摩擦クラッチユニット(eTwinster)として形成されていてよい。
【0010】
可能な実施形態では、ロック要素はスピンドル駆動装置によって制御可能であってよく、スピンドル駆動装置は、回転軸線を中心にして回転するように支持されていて遠心ディスクを備えたスピンドルを有しており、遠心ディスクは、スピンドルの回転時に第2のオイル浴のオイルを、パーキング歯車とロック要素との間の接触領域の方向に搬送する。このように構成されていると、ロック要素がパーキング歯車に係止している間に、パーキング歯車とロック要素との接触領域に、第2のオイル浴からのオイルを所望のように供給することができる。そのためにスピンドル駆動装置は、スピンドルを両回転方向に駆動することができる電動機を有していてよい。スピンドルの回転によって制御円錐体を、スピンドルナットを介して軸線方向に沿って一方の方向に、かつ戻しばねの荷重によって逆方向に移動させることができる。制御円錐体は、その表面にガイド輪郭を有していてよく、このガイド輪郭によってロック要素は、制御円錐体との接触位置に応じてパーキング歯車の方向に押し出されるか、またはパーキング歯車から離される。ロック要素を作動させるためのスピンドルの回転によって、第2のオイル浴内に浸漬させられた遠心ディスクも回転させられる。摩擦と発生する遠心力とによって、オイルは半径方向外側に向かって放出され、パーキング歯車とロック要素との接触領域に供給される。
【0011】
可能な実施形態では、遠心ディスクは少なくとも1つの放出区分を有しており、該放出区分は、スピンドルの回転軸線に対して放出角度をもって方向付けられており、放出角度は、90°以下であり、かつ/または25°よりも大きい、特に45°よりも大きい。このように構成されていると、遠心力によって半径方向外側に向かって放出されたオイルを、所望のように1つの方向に供給することができ、例えばパーキング歯車とロック要素との接触領域に直接供給することができる。したがって90°未満の放出角度の選択によって、遠心ディスクの直ぐ上に位置しているのでない領域にもオイルを供給することができる。したがって特に遠心ディスクを、オイルを供給することが望まれている領域に対して横方向にずらして配置することが可能であり、このことは、伝動装置アセンブリの構造空間におけるフレキシビリティを高める。遠心ディスクはまた複数の放出区分を含んでいてよく、これらの放出区分は互いに異なった放出角度を有しており、これによって複数の領域にオイルを所望のように供給することができる。遠心ディスクは例えば、90°の放出角度を有する1つまたは複数の第1の放出区分と、例えば75°の放出角度を有する1つまたは複数の第2の放出区分とを有することができる。第1の放出区分によってオイルは、真っ直ぐ半径方向外側に向かって供給され、例えばパーキング歯車の、パーキング歯車とロック要素との接触領域内にちょうど進入する凹部に、オイルを供給することができ、これに対して第2の区分によってオイルは、斜めの方向に半径方向外側に向かって供給され、例えばパーキング歯車とロック要素との接触領域に直接オイルが供給される。可能な実施形態では、遠心ディスクは、スピンドルの回転軸線の軸線方向においてパーキング歯車とオーバラップして配置されている。このように構成されていると、直接半径方向外側に向かって供給されたオイルが、少なくともパーキング歯車を介してパーキング歯車とロック要素との接触領域内に達することを保証することができる。
【0012】
可能な実施形態では、伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、第1のオイル浴のレベル(液面)が第2のオイル浴のレベル(液面)とは異なっていてよい。このように構成されていると、伝動装置ハウジングおよびパーキングロックハウジングの、構造空間に最適化された配置形態を得ることができる。利用可能な構造空間によって必要な場合には、第1のオイル浴のレベルと第2のオイル浴のレベルとが、等しい公称レベルを有していることも考えられる。
【0013】
別の実施形態では、第2のオイル浴のレベルが、伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、鉛直方向においてパーキング歯車の作用領域の下方に位置していてよい。作用領域というのは、パーキング歯車が、パーキング歯車の回転軸線を中心にした完全な1回転によって通過する部分(容積)であると理解すべきである。これによってパーキング歯車が第2のオイル浴内のオイルをはね飛ばすことが回避される。これによって一方では伝動装置アセンブリの効率が高められ、他方では同時にパーキング歯車とロック要素との接触領域に、確定された量のオイルを供給することができ、この確定された量のオイルは、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路における、パーキング歯車と回動不能に結合されたトルク伝達部材の回転数とは無関係である。
【0014】
別の実施形態では、第2のオイル浴のレベルが、伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、鉛直方向においてスピンドルの回転軸線の下方に位置していてよい。このように構成されていると、第2のオイル浴におけるスピンドルの回転時のスプラッシュ(オイルのはね飛ばし)損失が減じられ、スピンドルの回転の制御が容易になる。別の実施形態では、スピンドル駆動装置は制御円錐体を有しており、該制御円錐体によってロック要素は可逆式に、パーキング歯車がロック要素に対して自由回転することができる解放位置から、長手方向軸線を中心にしたパーキング歯車の回転がロック要素によってロックされているロック位置に移行可能であり、さらに制御円錐体は、第2のオイル浴内に、伝動装置アセンブリの取付け位置において静止状態では、最大で制御円錐体の最大の外側半径の2/3だけ、特に最大で制御円錐体の最大の外側半径の1/3だけが浸漬されている。制御円錐体は、この実施形態では単に部分的にしか、第2のオイル浴内におけるオイルの慣性に抗して軸線方向において運動させられないので、パーキングロックの比較的迅速な作動もしくは解除が可能になる。第2のオイル浴のレベルは、特に、スピンドル駆動装置のスピンドル軸受が少なくとも部分的に第2のオイル浴内に浸漬するように選択されてもよい。
【0015】
別の実施形態では、パーキング歯車は、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材の自由な軸端部に回動不能に結合されていてよい。自由な軸端部というのは、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材の、軸受アセンブリから突出している、または張り出しているそれぞれの部分であると理解すべきである。このように構成されていると、パーキングロックハウジングのハウジング要素を、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材の取外しとは無関係に、取り外すことができる。これによって保守時におけるパーキングロックへのアクセスが良好になる。しかしながら基本的には、駆動軸と出力部分との間の動力伝達路におけるトルク伝達部材が、パーキングロックハウジングのハウジング要素において回転するように支持され、パーキング歯車が、所属の軸受アセンブリの軸受要素の間に配置されていることも考えられる。
【0016】
可能な実施形態では、伝動装置ハウジングは、少なくとも1つの第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含んでいて、内部に減速伝動装置および出力分岐ユニットが少なくとも部分的に配置されている伝動装置室を取り囲んでいてよく、かつパーキングロックハウジングは、少なくとも第2のハウジング部分と第3のハウジング部分とによって形成され、内部にパーキングロックユニットが少なくとも部分的に配置されているパーキングロック室を取り囲んでいてよい。別の実施形態では、伝動装置室とパーキングロック室とは、圧力補償通路によって接続されていてよく、圧力補償通路の第1の入口が伝動装置室内に、圧力補償通路の第2の入口がパーキングロック室内に配置されている。両室における圧力差が大きい場合に、伝動装置ハウジングとパーキングロックハウジングとの間に配置されているシール要素のシール作用は、少なくとも短期間機能しなくなるおそれがあり、これによって第1のオイル浴のオイルが、第2のオイル浴のオイルによって汚染される、または逆に、第2のオイル浴のオイルが、第1のオイル浴のオイルによって汚染される。圧力補償通路によって、伝動装置室における圧力とパーキングロック室における圧力とはほぼ同じであることが保証され、これによってシール要素は両室を互いに確実に切り離すことができる。
【0017】
圧力補償通路を介して第1のオイル浴のオイルが第2のオイル浴のオイルによって汚染されることを阻止するために、第1の入口は、第2の入口の上方に配置されていてよい。この場合、第2のオイル浴のオイルは、重力に抗して圧力補償通路を登る必要がある。このことは、圧力補償通路のために十分な長さ、立ち上がり高さ、および十分に大きな直径を選択することによって、ほぼ回避することができる。
【0018】
圧力補償通路を介して第2のオイル浴のオイルが第1のオイル浴のオイルによって汚染されることを阻止するために、圧力補償通路の第1の入口に隣接して、噴射オイルの流れを阻止するラビリンス室が配置されていてよい。このように構成されていると、第1の入口の領域に第1のオイル浴の噴射オイルが達し、重力によって圧力補償通路を通して第2のオイル浴内に搬送されることが阻止される。
【0019】
ラビリンス室は、少なくとも1つの絞り区分および少なくとも1つの集合区分を有していてよい。絞り区分というのは、ラビリンス室の、特にラビリンス室の入口に配置されていてもよい狭窄部であると理解すべきである。ラビリンス室の集合区分は、絞り区分を通って進入した噴射オイルを捕集し、捕集された噴射オイルを再びオイル浴に戻す。特に集合室は、この集合室が、内部に噴射オイルを持続的に集める可能性がある凹部を有しないように構成されている。ラビリンス室は、少なくとも部分的に第2のハウジング要素および/または第1のハウジング要素によって形成されてよい。ラビリンス室は、第1のハウジング要素および第2のハウジング要素の一方のハウジング要素に組み込まれていてよい、特に注型固定されていてよい。
【0020】
実施形態では、伝動装置ハウジングおよびパーキングロックハウジングの少なくとも一方のハウジング内に、空気抜き要素が収容されていてよく、該空気抜き要素を通して伝動装置室および/またはパーキングロック室は、周囲環境に対して空気抜き可能である。
【0021】
本発明に係る伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置は、上において伝動装置アセンブリとの関連において記載されたのと同様の利点を提供するので、これについては単に参照するに留める。
【0022】
次に図面を参照しながら好適な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】理解のために記載される、本発明に係る伝動装置アセンブリではない伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置を概略的に示す図である。
図1b】第1実施形態の本発明に係る伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置を概略的に示す図である。
図2】第2実施形態の本発明に係る伝動装置アセンブリを備えた電気駆動装置を示す斜視図である。
図3図2に示された電気駆動装置を断面II-IIに沿って断面して示す断面図である。
図4図2に示された電気駆動装置の第2のハウジング部分の一部を示す縦断面図である。
図5図4に示された電気駆動装置の第2のハウジング部分の一部を右から見て示す側面図である。
図6図3に示された電気駆動装置の一部を断面III-IIIに沿って断面して示す横断面図である。
図7】遠心ディスクと制御円錐体との間の領域における、図6に示された部分の一部を拡大して示す図である。
図8a】第1実施形態の遠心ディスクを示す図である。
図8b】第2実施形態の遠心ディスクを示す図である。
図8c】第3実施形態の遠心ディスクを示す図である。
図9a】第1実施形態の遠心ディスクを断面VIIIa-VIIIaに沿って断面して示す縦断面図である。
図9b】第2実施形態の遠心ディスクを断面VIIIb-VIIIbに沿って断面して示す縦断面図である。
図9c】第3実施形態の遠心ディスクを断面VIIIc-VIIIcに沿って断面して示す縦断面図である。
【0024】
図1aには電気駆動装置1’が示されており、この電気駆動装置1’では、第1のハウジング要素3と第2のハウジング要素4とを含むハウジングアセンブリ2が、伝動装置室33を取り囲んでおり、この伝動装置室33内には、減速伝動装置45とディファレンシャルアセンブリ15とが互いに伝動的に連結されて配置されている。減速伝動装置45は、電気機械31によって回転軸線X1を中心にして回転するように駆動可能でかつ駆動ピニオン8を備えたモータ軸7を有しており、駆動ピニオン8は、対応歯車10と噛合している。対応歯車10は、中間軸13に回動不能に配置されており、この中間軸13は、軸受18を用いて第1のハウジング要素3内に、かつ軸受19を用いて第2のハウジング要素4内に回転可能に支持されている。さらに中間軸13には、パーキング歯車20が回動不能に結合されており、このパーキング歯車20の、回転軸線X2を中心にした回転自由度は、パーキングラチェット21の係合によって拘束することができるので、電気駆動装置はロックされる。中間軸13の駆動ピニオン14は、リング歯車16と噛合しており、このリング歯車16は、ディファレンシャルアセンブリ15のディファレンシャルハウジング17と不動に結合されている。リング歯車16は、第1のオイル浴46内に浸漬しており、この第1のオイル浴46は、伝動装置室33内に収容されていて、レベルL1を有している。リング歯車16の回転時に第1のオイル浴46のオイルは、伝動装置室33内において分配され、特にパーキング歯車20およびパーキングラチェット21を潤滑する。リング歯車16の回転数に応じて多少なりともオイルが、パーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域内に達する。一方ではこのことは、場合によってはゆっくりとした運転状態において潤滑不足を引き起こし、他方ではパーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域の不安定な潤滑が、臨界的な係止若しくは噛合速度の変動を引き起こし、このような変動時にパーキングラチェット21は、パーキング歯車20からもはや押し退けられることなく、パーキングラチェット21の歯がパーキング歯車20の凹部内に係止してしまうことがある。
【0025】
図1aとは異なり図1bには、本発明に係る伝動装置アセンブリ30もしくは本発明に係る電気駆動装置1の第1実施形態が概略的に示されており、この電気駆動装置1は、図1aの電気駆動装置1’もしくは伝動装置とは、パーキングロック室34内におけるパーキング歯車20およびパーキングラチェット21の配置形態において異なっている。それうえ、共通することに関しては、図1aに対する記載を参照するものとし、同じもしくは互いに相応する要素には、同じ符号が付されている。
【0026】
本発明に係る伝動装置アセンブリ30もしくは電気駆動装置1では、中間軸13は第2のハウジング要素4の壁を貫通して延ばされていて、軸受19に隣接して突出する自由な軸端部49を有している。自由な軸端部49は、パーキングロック室34内に進入しており、このパーキングロック室34は、第2のハウジング要素4と、ハウジングカバーとして形成されていてもよい第3のハウジング要素5とによって取り囲まれる。自由な軸端部49にはパーキング歯車20が回動不能に配置されており、このパーキング歯車20に、同様にパーキングロック室34内に配置されたパーキングラチェット21を選択的に係合させることができる。
【0027】
パーキングロック室34は、シール要素37によって伝動装置室33に対してシールされており、このシール要素37は本実施形態では、概略的に示されたラビリンスシールとして形成されている。しかしながらまた、例えば回転式シール部材または他の形式の無接触式シール部材のような他のすべてのシール要素も考えられる。パーキングロック室34内には、レベルL2を有する第2のオイル浴47が収容されており、第2のオイル浴47のレベルL2は、鉛直方向において第1のオイル浴46のレベルL1の上に位置している。電気駆動装置に対する構造空間要求に応じて、第2のオイル浴47のレベルL2が鉛直方向において第1のオイル浴46のレベルL1の下に位置していること、または両方のレベルL1,L2が共通の公称レベルを有していることも考えられる。第1のオイル浴46を第2のオイル浴47から切り離すことによって、第2のオイル浴47のレベルL2およびオイルの種類を、パーキングロックの要求に固有に適合させることができる。
【0028】
以下において一緒に記載する図2図7には、第2実施形態における本発明に係る伝動装置アセンブリ30もしくはこのような伝動装置を備えた本発明に係る電気駆動装置1が示される。
【0029】
電気機械31は、ハウジングアセンブリ2の第1のハウジング要素3内に収容されていて、回転軸線X1を中心にして回転する駆動可能なモータ軸7を有している。モータ軸7は、一方の軸端部に駆動ピニオン8を有しており、この駆動ピニオン8は、歯列を備えた対応歯車10と共に第1の伝動装置段を形成している。対応歯車10は、例えばニードル軸受である軸受51を用いて、中間軸13に回転可能に支持されており、中間プレート6のクラッチ座12に軸線方向において支持されているクラッチアセンブリ11を介して、選択的に中間軸13にトルクを伝達するために接続されるか、または中間軸13から切り離される。中間軸13はさらに駆動ピニオン14を含んでおり、この駆動ピニオン14は、中間軸13の軸本体に一体に組み付けられていて、リング歯車16と共に第2の伝動装置段を形成している。リング歯車16は、ディファレンシャルアセンブリ15のディファレンシャルハウジング17に不動に結合されている。ディファレンシャルアセンブリ15は、さらにディファレンシャル歯車セット52を含んでおり、このディファレンシャル歯車セット52は、ディファレンシャルハウジング17の内部に配置されていて、図示されていない被動軸に結合可能である。
【0030】
駆動ピニオン8、対応歯車10、クラッチアセンブリ11、中間軸13、リング歯車16、およびディファレンシャルアセンブリ15を含む伝動装置アセンブリは、伝動装置室33内に配置されており、この伝動装置室33は、第1のハウジング要素3、中間プレート6、および第2のハウジング要素4によって形成される。第1の伝動装置段8,10と第2の伝動装置段14,16とは、中間プレート6の異なった側に配置されている。
【0031】
中間軸13は、第1のハウジング要素3内に収容されている第1の軸受18と、第2のハウジング要素4内に収容されている第2の軸受19とを用いて、回転軸線X2を中心にして回転可能に支持されている。回転軸線X2は、第1の伝動装置段の軸線間隔の値だけ、モータ軸7の回転軸線X1に対して平行にずらされて配置されている。中間軸13は、中間プレート6の開口9を貫いて延在している。
【0032】
ディファレンシャルアセンブリ15は、中間プレート6内に収容されている第1の軸受18’’と、第2のハウジング要素4内に収容されている第2の軸受19’’とを用いて、回転軸線X3を中心にして回転可能に支持されている。回転軸線X3は、モータ軸7の回転軸線X1と同軸に配置されている。
【0033】
伝動装置室33は、中間プレート6によって2つの部分領域に分割され、両部分領域は、クラッチアセンブリ11の領域における開口9を介して互いに接続されており、第1の部分領域内には第1の伝動装置段8,10が、第2の部分領域内には第2の伝動装置段14,16が配置されている。伝動装置室33内には、第1のレベルを有する第1のオイル浴46が収容されており、この第1のオイル浴46は、両部分領域内に延在している。中間プレート6の開口9内にシール要素を配置することも考えられ、これによって両部分領域は互いに切り離されている。これによって両部分領域内にはそれぞれ別体のオイル浴を設けることができ、それぞれのオイル浴のレベルおよび/またはオイルの種類は、それぞれの伝動装置段に適合させられている。
【0034】
中間軸13は、軸受19に隣接して、突出する自由な軸端部49を有しており、この軸端部49は、パーキングロック室34内に進入している。パーキングロック室34は、第2のハウジング要素4と、ハウジングカバーとして形成されている第3のハウジング要素5とによって取り囲まれる。パーキングロック室34内には、レベルL2を有する第2のオイル浴47が収容されている。例えばラジアル軸シールリングであるシール要素37によって、パーキングロック室34は伝動装置室33に対して液密にシールされている。シール要素37の確実なシール作用を保証するために、第2のハウジング要素4内には圧力補償通路32が配置されており、この圧力補償通路32は、伝動装置室33に向けて開口する第1の入口35と、パーキングロック室34に向けて開口する第2の入口36とを有している。圧力補償通路32によって、伝動装置室33とパーキングロック室34との間の、シール要素37を通過するオイル流を生ぜしめることがある圧力差を相殺することができる。圧力補償通路32を通ってオイルが浸入することを回避するために、第1の入口35は第2の入口36の上方に配置されている。これによってパーキングロック室34から伝動装置室33内へのオイル浸入を回避することができる。追加的に、第1の入口35に隣接してラビリンス室38が配置されており、このラビリンス室38は、第2のハウジング要素4における突出部と、中間プレート6とによって形成される。ラビリンス室38は、2つの絞り区分39,39’と2つの集合区分40,40’とを含んでおり、両絞り区分39,39’および両集合区分40,40’は一緒に、第1のオイル浴46から第1の入口35内への噴射オイルの浸入を阻止し、噴射オイルを第1のオイル浴46内に戻す。
【0035】
パーキングロック室34内にはさらにパーキングラチェット21が配置されており、このパーキングラチェット21は、スピンドル駆動装置48を介して可逆式に、パーキング歯車20が回転軸線X2を中心にして自由に回転することができる解放位置と、回転軸線Xを中心にしたパーキング歯車20の回転自由度を拘束して電気駆動装置をロックしているロック位置とに切り替えることができる。ロック位置においてパーキングラチェット21の歯54は、パーキング歯車20の凹部53内に係止している。スピンドル駆動装置48は、ガイド輪郭を有している制御円錐体28を含んでいる。ガイド輪郭におけるパーキングラチェット21の乗上げ位置に応じて、パーキングラチェット21はパーキング歯車20の作用領域内に旋回して進入させられるか、または作用領域から旋回して進出させられる。制御円錐体28は、軸線方向に可動に配置されていて、スピンドルナット26によって一方の方向に、図示の構成では解放位置の方向へ移動させることができる。そのためにスピンドルナット26は、調節モータ22を用いた回転軸線X4を中心にしたスピンドル24の回転によって、軸線方向に沿って移動させることができる。解放位置を起点としてスピンドルナット26を、図6および図7に示されたロック位置の方向に移動させることができる。この際に制御円錐体28は、戻しばね27によってスピンドルナット26に追従させられる。歯の上に歯が当接する位置(Zahn-auf-Zahn-Stellung)の場合またはラチェッティング時に、制御円錐体28は、まず解放位置に留まり、臨界的な係止速度を下回った場合に初めて、パーキングラチェット21の歯54を完全にパーキング歯車20の作用領域内へ内方旋回させる。ラチェッティング中に制御円錐体28は、パーキングラチェット21によって軸線方向に押し退けられ、戻しばね27に対抗して振動運動を実施する。
【0036】
制御円錐体28が第2のオイル浴47内に浸漬させられている場合、オイルの慣性はダンパのように振動運動に干渉し、これによって臨界的な係止速度に影響を及ぼす。臨界的な係止速度に対する第2のオイル浴47の影響を最小にするため、もしくはほぼ一定に保つために、第2のオイル浴47のレベルL2を、制御円錐体28の浸漬深さΔR2が、その外側半径Raの2/3未満となるように、特にその外側半径Raの1/3未満となるように選択することができる。第2のオイル浴47のレベルL2の選択は、追加的に、スピンドル24を回転するように支持するための軸受23が第2のオイル浴47内に浸漬されているように行うことができる。
【0037】
スピンドル24には遠心ディスク25が不動に結合されており、この遠心ディスク25は、浸漬深さΔR1をもって第2のオイル浴47内に浸漬されている。制御円錐体28を作動させるためのスピンドル24の回転時に、遠心力によってオイルは第2のオイル浴47から遠心ディスク25によって半径方向外側に向かって放出され、パーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域にオイルが供給される。そのために遠心ディスク25は、回転軸線X4の軸線方向においてパーキング歯車20とオーバラップするように配置されている。電気駆動装置1の第2実施形態において使用されている遠心ディスク25は、図8aにおいて斜視図で、図9aにおいて縦断面図で示されている。遠心ディスク25は環状の放出区分42を有しており、この放出区分42は、回転軸線X4に対して90°の放出角度α1_aを成して配置されている。この構成では、第2のオイル浴47のオイルは主として半径方向に放出される。図6から認識できるように、遠心ディスク25はパーキング歯車20にオイルを供給し、次いでパーキング歯車20はこのオイルをパーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域内に運ぶ。
【0038】
図8bおよび図9bには、遠心ディスク25’の可能な第2の構成が示されている。遠心ディスク25’は環状の放出区分42’を有しており、この放出区分42’は、回転軸線X4に対して例えば約70°の放出角度α1_bを成して配置されている。この構成では第2のオイル浴47のオイルは、半径方向および軸線方向の成分を有する方向に放出される。これによって軸線方向において遠心ディスク25’からずらされた領域に、オイルを所望のように供給することができる。図6に示された配置形態では、遠心ディスク25’によってオイルを直接、パーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域内に供給することができる。
【0039】
図8cおよび図9cには、遠心ディスク25’’の第3の構成が示されている。遠心ディスク25’’は6つの第1の放出区分42’’を有しており、これらの放出区分42’’は、回転軸線X4に対して90°の放出角度α1_cを成して配置されていて、第2のオイル浴47のオイルを主として半径方向に放出する。その他に遠心ディスク25’’は6つの第2の放出区分43を有しており、これらの放出区分43は、回転軸線X4に対して例えば約70°の放出角度α2_cを成して配置されていて、第2のオイル浴47のオイルを、半径方向と軸線方向の成分を有する方向に放出する。遠心ディスク25’’のこの第3の構成によって複数の領域に、遠心ディスク25’’によってオイルを所望のように供給することができる。図8cおよび図9cに示された配置形態では、遠心ディスク25’’によって、遅れてオイルをパーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域内に運ぶパーキング歯車20にオイルを供給すると共に、パーキング歯車20とパーキングラチェット21との間の接触領域にオイルを直接供給することができる。
【符号の説明】
【0040】
1;1’ 電気駆動装置
2 ハウジングアセンブリ
3 ハウジング要素
4 ハウジング要素
5 ハウジング要素
6 中間プレート
7 モータ軸
8 駆動ピニオン
9 開口
10 対応歯車
11 クラッチアセンブリ
12 クラッチ座
13 中間軸
14 駆動ピニオン
15 ディファレンシャルアセンブリ
16 リング歯車
17 ディファレンシャルハウジング
18,18’,18’’ 軸受
19,19’,19’’ 軸受
20 パーキング歯車
21 パーキングラチェット
22 調節モータ
23 軸受
24 スピンドル
25,25’,25’’ 遠心ディスク
26 スピンドルナット
27 戻しばね
28 制御円錐体
29 スリーブ
30 伝動装置アセンブリ
31 電気機械
32 圧力補償通路
33 伝動装置室
34 パーキングロック室
35 入口
36 入口
37 シール要素
38 ラビリンス室
39,39’ 絞り区分
40,40’ 集合区分
42,42’,42’’ 放出区分
43 放出区分
44,44’ サイド軸
45 減速伝動装置
46 オイル浴
47 オイル浴
48 スピンドル駆動装置
49 自由な軸端部
51 軸受
52 ディファレンシャル歯車セット
53 切欠き
54 歯
Ra 外半径
ΔR1 浸漬深さ 遠心ディスク
ΔR2 浸漬深さ 制御円錐体
L レベル
X 回転軸線
α 放出角度
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c