(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】VEGF及びIL-1ベータに結合する抗体と使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220801BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220801BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20220801BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220801BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220801BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220801BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C07K16/22
C07K16/24
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2021535578
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086529
(87)【国際公開番号】W WO2020127873
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】デングル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ガスナー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,グイド
(72)【発明者】
【氏名】ヒュールスマン,ペーター・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】インホフ-ユング,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ケッテンベルガー,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】モルケン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ムンディグル,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クリスチャン・ホボルト
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516542(JP,A)
【文献】特表2017-534646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、VEGFパラトープが前記抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、IL-1ベータパラトープが前記抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含み、
配列番号11のVH配列と配列番号12のVL配列とを含む、抗体。
【請求項2】
配列番号11のVH配列及び配列番号12のVL配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体。
【請求項3】
配列番号20の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の抗体であって、前記抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴により測定して10pM未満のK
DでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴により測定して30pM未満のK
DでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の抗体であって、前記抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の抗体であって、前記抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
【請求項7】
二重特異性抗体断片である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項9】
請求項
8に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項10】
請求項
8に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項11】
抗体が産生されるように請求項
9に記載の宿主細胞を培養することを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-1ベータ及びVEGFに結合する二重特異性抗体は、既に報告されており、眼血管疾患の治療用に提案されている(国際公開第2016/075034号、抗体「0032」)。二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体0032は、1つの結合アームにおけるVH/VLドメイン交換を有する完全長IgG様抗体であり(国際公開第2009/080252号、Schaefer, W. et al, PNAS, 108 (2011) 11187-1191)、ここで、野生型抗体のドメイン配置の結合アームはIL-1ベータに特異的に結合し、VH/VLドメインクロスオーバーを含む結合アームはVEGFに特異的に結合する。VEGF結合アームは、抗VEGF抗体ラニビズマブのVH及びVLドメインを含む。
【0003】
一対の可変重鎖ドメイン(VH)と可変軽鎖ドメイン(VL)に2つのパラトープを含む多重特異性抗体は、国際公開第2008/027236号;国際公開第2010/108127号及びBostrom,J.,ら,Science 323(2009)1610-1614、並びに国際公開第2012/163520号に記載されている。
【0004】
国際公開第2012/163520号は、一対のVHドメインとVLドメインに2つの非重複パラトープを含む二重特異性抗体(「DutaFab」)を開示している。国際公開第2012/163520号の二重特異性抗体の各パラトープは、重鎖及び軽鎖CDRからのアミノ酸を含み、重鎖CDR-H1及びCDR-H3と軽鎖CDR-L2は、第1のパラトープに寄与し、軽鎖CDR-L1及びCDR-L3と重鎖CDR-H2は、第2のパラトープに寄与する。個々のパラトープを含む単一特異性抗体は、異なるFabライブラリーから独立して単離され、第1又は第2のパラトープのいずれかが多様化される。上記単一特異性抗体のアミノ酸配列は、特定され、融合され、二重パラトープVH及びVL対になる。VEGF及びIL-6に特異的に結合する1つの例示的Fab断片は、国際公開第2012/163520号に開示されている。
【0005】
VEGF及びIL-1ベータに結合する改善された治療用抗体へのニーズがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体及びその使用方法に関する。
【0007】
一態様では、本発明は、可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、VEGFパラトープは抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、IL-1ベータパラトープは抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含む。
【0008】
一態様では、本発明は、VLドメインとVHドメインの1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインのこの対は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに同時に結合する。
【0009】
一態様では、本発明は、VLドメインとVHドメインの1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、VEGFパラトープに含まれるアミノ酸のいずれもIL-1ベータパラトープに含まれない。
【0010】
一態様では、本発明は、VLドメインとVHドメインの1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体は、配列番号11の可変重鎖ドメインと配列番号12の可変軽鎖ドメインとを有する抗体が結合するのと同じ、ヒトVEGF上のエピトープ及びヒトIL-1ベータ上のエピトープに結合する。
【0011】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体の抗体Fab断片は、(i)表面プラズモン共鳴によって測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴によって測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する。
【0012】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体の抗体Fab断片は、70℃超の凝集開始温度を呈する。
【0013】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体の抗体Fab断片は、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈する。
【0014】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体の抗体Fab断片のヒトVEGFへの結合は、表面プラズモン共鳴によって測定して50nM未満のIC50でVEGFのVEGFR2への結合を阻害し;該抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合は、表面プラズモン共鳴によって測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する。
【0015】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。
【0016】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる。
【0017】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる抗体を提供する。一実施態様では、該抗体は、VHドメインにD55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66及びR83のアミノ酸残基、並びにVLドメインにI2、Y27、W27a、S27c、S27d、E67、D68、Q69、R92、Y93、H94及びY96のアミノ酸残基を含むVEGFパラトープと、VHドメインにE2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、K94、D95、V96、F98及びD101のアミノ酸残基、並びにVLドメインにL32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、Y91のアミノ酸残基を含むIL-1ベータパラトープとを含む。
【0018】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、S67、H68、E69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる抗体を提供する。一実施態様では、該抗体は、VHドメインにD55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66及びR83のアミノ酸残基、並びにVLドメインにI2、Y27、W27a、S27c、S27d、S67、H68、E69、R92、Y93、H94及びY96のアミノ酸残基を含むVEGFパラトープと、VHドメインにE2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、K94、D95、V96、F98及びD101のアミノ酸残基、並びにVLドメインにL32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、Y91のアミノ酸残基を含むIL-1ベータパラトープとを含む。
【0019】
一態様では、本発明は、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。
【0020】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインと(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、抗体を提供する。
【0021】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体において、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、R66、R83及びK94を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、アミノ酸残基I2、Y49、G57、E67、D68及びQ69を含むVLドメインとを含み;VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体を提供する。
【0022】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体であって、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0023】
一態様では、本発明は、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。一実施態様では、該抗体は、(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸置換が配列番号11の3~25、36~49、97~82c、84~93又は103~113位に位置するVHドメインと、(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインであって、アミノ酸置換が配列番号12の1、4、6、8~23、35~48、58~66、70~88又は98~107位に位置する可変軽鎖ドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる。
【0024】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって(a)VHドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0025】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体であって、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、配列番号11のVH配列及び配列番号12のVL配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。
【0027】
一態様では、本発明は、配列番号20の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。
【0028】
一態様では、本発明は、配列番号18の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。
【0029】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供し、該抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み;VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;該抗体の抗体Fab断片は、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する。
【0030】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片は、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体を提供する。
【0031】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片は70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体を提供する。
【0032】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片は、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体を提供する。
【0033】
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合が、表面プラズモン共鳴で測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体を提供する。
【0034】
本発明の一実施態様は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体断片に関する。本発明の一実施態様は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する二重特異性抗体断片に関する。本発明の一実施態様では、抗体断片は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2又はそれらに由来する単鎖抗体から選択される。本発明の一実施態様は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合するFab断片に関する。本発明の一実施態様は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合するFv断片に関する。
【0035】
本発明の一実施態様は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合す完全長IgG抗体に関する。
【0036】
一態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0037】
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0038】
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0039】
一態様では、本発明は、抗体が産生されるように本発明の宿主細胞を培養することを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を製造する方法を提供する。
【0040】
一態様では、本発明は、本発明の方法によって産生された抗体を提供する。
【0041】
一態様では、本発明は、本発明の抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的製剤を提供する。
【0042】
本発明は、一態様においては医薬としての使用のための、一態様においては血管疾患の治療における使用のための本発明の抗体を提供する。
【0043】
本発明は、一態様においては医薬の製造における、一態様においては血管疾患の治療のための医薬の製造における本発明の抗体又は本発明の薬学的組成物の使用を提供する。
【0044】
一態様において、本発明は、有効量の本発明の抗体又は本発明の薬学的組成物を血管疾患を有する個体に投与することを含む、個体を治療する方法を提供する。
【0045】
一態様では、本発明は、血管新生を阻害するために、本発明の抗体又は本発明の薬学的組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体における血管新生を阻害する方法を提供する。
本発明によれば、二重特異性Fab断片として提供された場合であっても、同時にその標的抗原に結合することができる治療用抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体が提供される。更に、本発明の抗体は、高い親和性、親水性、及び高い安定性のような、その治療適用を可能にする複数の貴重な特性を提供する。本発明の抗体は、眼への適用に適した粘度を有する高濃度の液体製剤中に提供することができる。本発明の抗体は、眼血管疾患の治療に適している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体のFab断片の模式図。CDRアミノ酸の配置を含む同族VH/VL対の上から見た図を示す(上段の画像)。VHドメインは灰色で、VLドメインは白で示す。更に、CDR領域の空間配置を示す。本発明の抗体のパラトープ領域がハイライトされており、VEGFパラトープはH-CDR2、L-CDR1及びL-CDR2の領域に配置され、IL-1ベータパラトープはH-CDR1、H-CDR3及びL-CDR2の領域に配置されている(下の画像)。
【
図2】本発明の例示的な抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体のVHドメインのアミノ酸性配列。アミノ酸位置のカバット番号付け、並びにCDR及びFR領域を示す。VEGFパラトープ、並びに実施例8で特定されたIL-1ベータパラトープに寄与するアミノ酸位置がハイライトされている。
【
図3】本発明の例示的な抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体のVLドメインのアミノ酸性配列。アミノ酸位置のカバット番号付け、並びにCDR及びFR領域を示す。VEGFパラトープ、並びに実施例8で特定されたIL-1ベータパラトープに寄与するアミノ酸位置がハイライトされている。
【
図4】実施例5に従いSPRにより評価した、抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体1HVL12.85のVEGF及びIL-1ベータへの同時抗原結合。
【
図5】実施例5に従いSPRにより評価した、抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体RO7200394のVEGF及びIL-1ベータへの同時抗原結合。
【
図6】実施例5に従いSPRにより評価した、先行技術の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体0032のVEGF及びIL-1ベータへの同時抗原結合。
【
図7A】実施例6で評価した、抗体RO7200394(Fab断片)存在下でのVEGFのhVEGFR2への結合の阻害。受容体結合阻害は、二重特異性抗体の一方の標的抗原であるIL-1ベータの存在下及び非存在下で評価された。
【
図7B】実施例6で評価された、先行技術の抗体0032(完全長IgG)の存在下におけるVEGFのhVEGFR2への結合の阻害。受容体結合阻害は、二重特異性抗体の一方の標的抗原であるIL-1ベータの存在下及び非存在下で評価された。
【
図8A】実施例6で評価された、抗体RO7200394(Fab断片)の存在下でのIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合の阻害。受容体結合阻害は、二重特異性抗体の一方の標的抗原であるVEGFの存在下及び非存在下で評価された。
【
図8B】実施例6で評価された、先行技術の抗体0032(完全長IgG)の存在下におけるIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合の阻害。受容体結合阻害は、二重特異性抗体の一方の標的抗原であるVEGFの存在下及び非存在下で評価された。
【
図9】実施例6で評価された、示された抗体の存在下でのVEGF121のVEGF-R1への結合を評価する競合ELISA。
【
図10】実施例6で評価された、示された抗体の存在下でのVEGF165のVEGF-R1への結合を評価する競合ELISA。
【
図11】実施例7で評価された、本発明の抗体の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の結果。
【
図12】先行技術の抗体0032(実施例7)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の結果。
【
図13】実施例8で評価された、抗体1HVL12.85の粘度。
【
図14】実施例8で評価された、抗体RO7200394の粘度。
【発明を実施するための形態】
【0047】
1.定義
本発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、ここで特に規定しない限り、当業者に共通に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。本開示の方法及び技術は通常、当技術分野で周知の従来の方法に従って行われる。概して、本明細書に記載される生化学、酵素学、分子細胞生物学、微生物学、遺伝学、及びタンパク質・核酸化学、並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及び技術は、当技術分野でよく知られており一般的に使用されている。
【0048】
本明細書中で特に定義されていない限り、「~を含む(comprising of)」という用語は、「~からなる(consisting of)」という用語を包含するものとする。
【0049】
特定の値(例:温度、濃度、時間、その他)に関連して本明細書中で使用される「約」という用語は、「約」という用語が指す特定の値の±1%の変動幅を指す。
【0050】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例:二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0051】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)法により決定されるように、95%又は99%を上回る純度に精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatmanら,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照のこと。
【0052】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体集団、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、一般に少量で存在し得るバリアント抗体(例えば自然発生の変異を含むもの、又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生するもの)を除いて、同一であり、且つ/又は同じエピトープに結合する集団から得られる抗体を指す。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0053】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0054】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMがあり、これらのいくつかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2に分けられる。特定の実施態様において、抗体は、IgG1アイソタイプのものである。特定の実施態様において、抗体は、Fc領域エフェクター機能を低下させるP329G、L234A及びL235Aの変異を有する、IgG1アイソタイプのものである。他の実施態様では、抗体はIgG2アイソタイプのものである。特定の実施態様では、抗体は、IgG4抗体の安定性を改善するS228P変異をヒンジ領域に有する、IgG4アイソタイプのものである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ?、?、?、?、?と呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる2つの型のうちのいずれかに割り当てることができる。
【0055】
本明細書において用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然配列Fc領域とバリアントFc領域とを含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。本明細書において別段の定めがない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載のEU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0056】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;並びにB細胞の活性化が含まれる。
【0057】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。通常、天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH、VL)は、各々が4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)とを含む類似構造を有する(例えば、Kindt, T.J. ら., Kuby Immunology, 第5版., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), 91頁参照)。本発明の抗体において、VHドメインとVLドメインの単一対、すなわち同族VH/VL対は、その2つの標的、VEGF及びIL-1ベータに特異的に結合する。
【0058】
「DutaFab」は、国際公開第2012/163520号に開示されているような二重特異性抗体である。DutaFabでは、VHドメイン及びVLドメインの単一対が2つの異なるエピトープに特異的に結合し、1つのパラトープはCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、もう1つのパラトープはCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ残基を含む。DutaFabは、同族VH/VL対内に2つの非重複パラトープを含み、同時に2つの異なるエピトープに結合することができる。DutaFabと、単一特異性Fab断片を含むライブラリーのスクリーニングによるそれらの生成方法は、国際公開第2012/163520号に開示されている。
【0059】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体の、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、或いは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0060】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において、最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからなされる。一般に、配列のサブグループは、Kabatら.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),1-3巻にあるようなサブグループである。一実施態様において、VLについて、サブグループは上掲のKabatらのサブグループカッパIである。一実施態様において、VHについて、サブグループは上掲のKabatらのサブグループIIIである。
【0061】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体以外の分子であって、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例:scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で互換的に使用される「パラトープ」又は「抗原結合部位」とは、抗原を認識して結合する抗体の一部を指す。パラトープは、抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインからの複数の個別のアミノ酸残基によって形成され、それらはFv領域の三次構造において空間的に近接して配置される。本発明の抗体は、1つの同族VH/VL対に2つの「非重複」パラトープを含む。「非重複」とは、2つのパラトープの一方に含まれるアミノ酸のいずれも、もう一方のパラトープに含まれないことを意味する。
【0063】
本明細書で使用される「VEGFパラトープ」は、VEGFに結合するパラトープ又は抗原結合部位である。本発明の抗体のVEGFパラトープは、該抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「IL-1ベータパラトープ」は、IL-1ベータに結合するパラトープ又は抗原結合部位である。本発明の抗体のIL-1ベータパラトープは、該抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含む。
【0065】
用語「VEGF」は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、霊長類(例:ヒト)及びげっ歯類(例:マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然VEGFを指す。この用語は、「完全長」の未処理のVEGFだけでなく、細胞内でのプロセシングの結果生じる任意の形態のVEGFを包含する。この用語は、天然に存在するVEGFのバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトVEGFのアミノ酸配列は、配列番号26に示される。
【0066】
用語「抗VEGF抗体」及び「VEGFに結合する抗体」とは、それがVEGFを標的とする際の診断及び/又は治療薬として有用であるような十分な親和性でVEGFと結合することができる抗体を意味する。一実施態様において、抗VEGF抗体の、無関係な非VEGFタンパク質への結合の程度は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して、抗体のVEGFへの結合の約10%未満である。特定の実施態様において、VEGFに結合する抗体は、≦1nM、≦0.1nM又は≦0.01nMの解離定数(KD)を有する。抗体が1μM以下のKDを有する場合、抗体はVEGFに「特異的に結合する」という。
【0067】
用語「IL-1ベータ」は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、霊長類(例:ヒト)及びげっ歯類(例:マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然IL-1ベータを指す。この用語は、「完全長」の未処理のIL-1ベータだけでなく、細胞内でのプロセシングの結果生じる任意の形態のIL-1ベータを包含する。この用語は、天然に存在するIL-1ベータのバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子多型も包含する。例示的なヒトIL-1ベータのアミノ酸配列は、配列番号27に示される。
【0068】
用語「抗IL-1ベータ抗体」及び「抗IL-1ベータに結合する抗体」とは、それが抗IL-1ベータを標的とする際の診断及び/又は治療薬として有用であるような十分な親和性で抗IL-1ベータと結合することができる抗体を意味する。一実施態様において、抗IL-1ベータ抗体の、無関係な非IL-1ベータタンパク質への結合の程度は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して、抗体の抗IL-1ベータへの結合の約10%未満である。特定の実施態様において、IL-1ベータに結合する抗体は、≦1nM、≦0.1nM又は≦0.03nMの解離定数(KD)を有する。抗体が1μM以下のKDを有する場合、抗体は抗IL-1ベータに「特異的に結合する」という。
【0069】
本発明の抗体が「ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに同時に結合する」とは、(a)ヒトIL-1ベータに結合している本発明の抗体Fab断片が、(同様に)ヒトVEGFにも特異的に結合し、且つ、(b)ヒトVEGFに結合している本発明の抗体Fab断片が、(同様に)ヒトIL-1ベータにも特異的に結合することを意味する。同時結合は、当技術分野で既知の方法、例えば本明細書に記載されているような表面プラズモン共鳴によって評価することができる。
【0070】
本明細書で使用される用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、配列が超可変であり、抗原接触残基を含む抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は6つのCDR:VHドメインに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)及びVLドメインに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含む。特に指定のない限り、CDR残基及び可変ドメインの他の残基(例:FR残基)は、本明細書ではカバット番号付けシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991)に従って番号付けされている。
【0071】
本明細書で使用される「フレームワーク」又は「FR」は、CDR残基以外の可変ドメインアミノ酸残基を指す。可変ドメインのフレームワークは、一般に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4で構成される。したがって、CDR及びFRアミノ酸配列は、一般に、(a)VHドメイン内にFR1-CDR-H1-FR2-CDR-H2-FR3-CDR-H3-FR4;及び(b)VLドメイン内にFR1-CDR-L1-FR2-CDR-L2-FR3-CDR-L3-FR4で現れる。
【0072】
本明細書で使用されるカバット番号付けシステムによれば、フレームワーク及びCDR領域は、可変ドメインの以下の領域に位置する。
【0073】
【0074】
本明細書で言及されているカバット番号付けシステムによるアミノ酸位置は、本発明の抗体のアミノ酸配列とのアライメントで
図2に示されている。アミノ酸配列内の特定の位置のアミノ酸への言及は、本明細書では、当技術分野で周知のように、アミノ酸とアミノ酸位置を記載することによってなされ、例えば「E2」は、抗体ドメインそれぞれのアミノ酸配列のカバット位置2に位置するグルタミン酸残基を指す。
【0075】
「親和性」とは、分子(例:抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例:抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度をいう。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例:抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含め、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的且つ例示的な実施態様が、本明細書に記載される。
【0076】
用語「エピトープ」とは、抗体が結合する抗原上のタンパク性又は非タンパク性の部位をいう。エピトープは、連続したアミノ酸ストレッチから形成される場合(線形エピトープ)も、又は、例えば抗原の折り畳みによって(すなわちタンパク性抗原の三次折り畳みによって)空間的に近接している不連続なアミノ酸を含む場合(構造的エピトープ)もある。線形エピトープは通常、タンパク性抗原を変性剤にさらした後も抗体によって結合されているが、一方、構造的エピトープは通常、変性剤で処理すると破壊される。エピトープは、特有の空間的立体構造で少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、又は少なくとも8~10のアミノ酸を含む。
【0077】
特定のエピトープに結合する抗体(すなわち同じエピトープに結合する抗体)のスクリーニングは、例えば、非限定的に、アラニンスキャニング、ペプチドブロット(Meth. Mol. Biol. 248 (2004) 443-463参照)、ペプチド切断解析、エピトープ切除、エピトープ抽出、抗原の化学修飾(Prot. Sci. 9 (2000) 487-496参照)、及びクロスブロッキング(「Antibodies」, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY参照)等、当技術分野で日常的な方法を使用して行うことができる。
【0078】
修飾支援プロファイリング(Modification-Assisted Profiling)(MAP)としても知られる、抗原構造ベースの抗体プロファイリング(Antigen Structure-based Antibody Profiling)(ASAP)は、多数の抗体の中の各抗体の、化学的又は酵素的に修飾された抗原表面に対する結合プロファイルに基づいて、VEGF又はIL-1ベータに特異的に結合する多数のモノクローナル抗体をグループ(bin)に分けることを可能にする(例えば米国特許出願公開第2004/0101920号参照)。各グループの複数の抗体は、同じエピトープに結合するが、このエピトープは、別のビンで表されるエピトープと明確に異なっているか又は部分的に重複する固有のエピトープであってよい。
【0079】
また、競合結合を用いて、抗体がVEGF又はIL-1ベータの同一エピトープに結合するか、又は本発明の参照抗体と結合するのに競合するかを容易に決定することができる。例えば、参照抗体と「同じVEGF及びIL-1ベータ上のエピトープに結合する抗体」は、それぞれの競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする抗体を指し、逆に参照抗体は、それぞれの競合アッセイにおいて上記抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする。また、例えば、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でVEGF又はIL-1ベータに結合させることができる。過剰の参照抗体を除去した後、問題の抗体がVEGF又はIL-1ベータに結合する能力を評価する。問題の抗体が参照抗体の飽和結合後にVEGF又はIL-1ベータに結合することができるならば、問題の抗体は参照抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。しかし、問題の抗体が参照抗体の飽和結合後にVEGF又はIL-1ベータに結合できなければ、問題の抗体は参照抗体が結合したエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。問題の抗体が同じエピトープに結合するのか、それとも立体上の理由により結合が妨げられているだけなのかを確認するのに、日常的な実験を用いることができる(例えば、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能なその他任意の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイ)。このアッセイは、2つのセットアップ、すなわち両方の抗体が飽和抗体である状態で、実行する必要がある。両方のセットアップで、第1の(飽和)抗体のみがVEGF又はIL-1ベータに結合できれば、問題の抗体及び参照抗体がVEGF又はIL-1ベータへの結合に関して競合すると結論付けることができる。
【0080】
いくつかの実施態様では、2つの抗体は、1、5、10、20又は100倍過剰の一方の抗体がもう一方の抗体の結合を、競合結合アッセイで測定して少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%又は99%以上阻害する場合、同じエピトープか又は重複するエピトープに結合するとみなされる(例えばJunghans et al., Cancer Res. 50 (1990) 1495-1502参照)。
【0081】
いくつかの実施態様では、一方の抗体の結合を減少させるか又は排除する、抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が他方の結合も減少させるか又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。2つの抗体は、一方の抗体の結合を減少させるか又は排除するアミノ酸変異のサブセットが他方の抗体の結合を減少させるか又は排除しさえすれば、「重複するエピトープ」を有するとみなされる。
【0082】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならばギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセントと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアライメントは、例えばBLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージのような一般に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当分野の技術範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。或いは、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して、パーセント同一性値を生成することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムはジェネンテック社によって作成されたもので、そのソースコードは、ユーザー文書と共に米国著作権庁(ワシントンD.C.,20559)に提出されており、ここで米国著作権登録番号TXU510087として登録されており、且つ、国際公開第2000/005319号にも記載されている。
【0083】
但し、別途指示がない限り、本明細書において、%アミノ酸配列同一性値は、BLOSUM50比較マトリックスを備えたFASTAパッケージ バージョン36.3.8c以降のggsearchプログラムを使用して生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson及びD.J.Lipman(1988),[Improved Tools for Biological Sequence Analysis」,PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)「Effective protein sequence comparison」 Meth.Enzymol.266:227-258;並びにPearsonら(1997)Genomics 46:24-36によって作成され、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml又はwww.ebi.ac.uk/Tools/sss/fastaから一般に入手可能である。或いは、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能なパブリックサーバーを使い、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して(ローカルではなく)グローバルアライメントを実行することで、これらの配列を比較することも可能である。パーセントアミノ酸同一性は、出力アライメントヘッダーに与えられる。
【0084】
用語「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基、具体的にはプリン又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基から構成される。しばしば、核酸分子は、塩基の配列によって記述され、それによって、前記塩基は核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には5’から3’まで表される。本明細書において、核酸分子という用語は、例えば、相補的DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを含むデオキシリボ核酸(DNA)を包含する。核酸分子は、直鎖状又は環状であってよい。更に、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方、並びに一本鎖及び二本鎖形態を含む。更に、本明細書に記載される核酸分子は、天然又は非天然ヌクレオチドを含むことができる。非天然ヌクレオチドの例には、誘導体化糖又はリン酸骨格結合を有する修飾ヌクレオチド塩基、又は化学修飾残基が含まれる。核酸分子はまた、in vitro及び/又はin vivoで、例えば宿主又は患者において本発明の抗体の直接発現のためのベクターとして適しているDNA及びRNA分子を包含する。そのようなDNA(例:cDNA)又はRNA(例:mRNA)ベクターは、改変されていてもいなくてもよい。例えば、mRNAを化学的に改変してRNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を増強し、mRNAを対象に注入してin vivoで抗体を生成することができる(例えば、Stadler et al, Nature Medicine 2017、2017年6月12日付オンライン版、doi:10.1038/nm.4356又はEP第2101823号 B1を参照)。
【0085】
「単離された」核酸は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0086】
抗体を「コードする単離された核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖をコードする1又は複数の核酸分子(又はその断片)を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中の当該核酸分子(複数可)及び宿主細胞の1又は複数の位置に存在する当該核酸分子が含まれる。
【0087】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターだけではなく、自己複製核酸構造としてのベクターも含む。ある種のベクターは、それが作動可能に連結されている核酸の発現を指示することができる。このようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」という。
【0088】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これには、継代数に関係なく、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、親細胞と核酸含量が完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。本明細書には、最初に形質転換された細胞でスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。
【0089】
用語「薬学的組成物」又は「薬学的製剤」とは、中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形態の調製物であり、且つ、薬学的組成物が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0090】
「薬学的に許容される担体」は、薬学的組成物又は製剤中の活性成分以外の成分であって、対象に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、バッファー、賦形剤、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0091】
薬剤、例えば薬学的組成物の「有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を得るのに必要な用量及び期間での有効な量を指す。
【0092】
「個体」又は「対象」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)が含まれる。特定の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
【0093】
本明細書で用いられる場合、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体の疾患の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程において実行できる。治療の望ましい作用には、限定されないが、疾患の発生又は再発の防止、症候の緩和、疾患のいずれかの直接的又は間接的病理学的帰結の縮小、転移の防止、疾患進行速度の低下、病態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を疾患の進行を遅くするために使用される。
【0094】
本明細書で使用される用語「眼疾患」は、病理学的血管新生及び/又は萎縮に関連する任意の眼疾患を含む。眼疾患は、網膜又は角膜などの眼組織の構造物への新しい血管の変化した又は無秩序な増殖及び/又は侵入によって特徴づけることができる。眼疾患は、網膜組織(光受容体及びその下にある網膜色素上皮(RPE)及び脈絡毛細管)の萎縮によって特徴づけることができる。非限定的な眼疾患には、例えば、AMD(例:湿性AMD、乾性AMD、中間AMD、進行性AMD、及び地図状委縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(例:中心窩を含まない限局性DME及び中心窩を含むびまん性DME)、網膜症、糖尿病網膜症(DR)(例:増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高地DR)、その他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例:網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜静脈分枝閉塞症(BRVO))、CNV(例:近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連する疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連する疾患、中心性漿液性網膜症(CSR)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、目のヒストプラスマ症、FEVR、コート病、ノリエ病、骨粗鬆症・偽神経膠腫症候群(OPPG)に関連する網膜異常、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生性疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧網膜症、網膜血管腫の増殖、黄斑毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、CMV網膜炎を含むがこれに限定されない網膜炎、眼内黒色腫、網膜芽腫、結膜炎(例:伝染性結膜炎及び非伝染性(例えばアレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障(レーバーの先天性黒内障又はLCAとしても知られる)、ぶどう膜炎(伝染性及び非伝染性ぶどう膜炎を含む)、脈絡膜炎(例:多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラスマ症、眼瞼炎、ドライアイ、外傷性の目の損傷、シェーグレン病、並びに疾患又は障害が眼の血管新生、血管漏出及び/若しくは網膜浮腫又は網膜委縮に関連するその他の眼疾患が含まれる。更なる例示的な眼疾患には、網膜分離症(網膜神経感覚層の異常な分裂)、皮膚潮紅(隅角の血管新生)に関連する疾患、及び増殖性硝子体網膜症の全ての形態を含む、血管結合組織又は線維組織の異常な増殖によって引き起こされる疾患が含まれる。角膜血管新生に関連する例示的な疾患には、限定されないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過剰装着、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎(superior limbic keratitis)、翼状片乾性角膜炎、シェーグレン症候群、酒さ性ざ瘡、フリクテン症、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂肪変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹感染症、原虫症、カポジ肉腫、モーレン角膜潰瘍、テリエン周辺角膜変性症、辺縁角膜融解、関節リウマチ、全身性狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナー肉芽腫症、強膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、放射状角膜切開術、及び角膜移植片拒絶反応が含まれる。脈絡膜新生血管と、血管漏出の増加、動脈瘤及び毛細血管脱落などの網膜血管系の欠陥とに関連する例示的な疾患には、限定されないが、糖尿病性網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、皮疹、梅毒、弾力線維性仮性黄色腫、ページェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ぶどう膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性紅斑性狼瘡、未熟児網膜症、網膜浮腫(黄斑浮腫を含む)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を引き起こす感染症(例:多病巣性脈絡膜炎)、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病(卵黄様黄斑変性)、近視、視窩、毛様体扁平部炎、網膜剥離(例:慢性網膜剥離)、過粘稠血症候群、トキソプラズマ症、外傷、及びレーザー後の合併症が含まれる。網膜組織(光受容体及びその下のRPE)の萎縮に関連する例示的な疾患には、萎縮性又は非滲出性AMD(例:地図状萎縮又は進行性乾性AMD)、黄斑萎縮症(例:新血管形成及び/又は地図状萎縮に関連する萎縮症)、糖尿病性網膜症、シュタルガルト病、Sorsby眼底ジストロフィー(Sorsby Fundus Dystrophy)、網膜分離症、及び網膜色素変性症が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、用量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0096】
2.本発明の実施態様の詳細な説明
一態様では、本発明は、部分的には、治療用途の二重特異性抗体の提供に基づく。特定の態様において、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば血管疾患、例えば眼血管疾患の診断又は治療に有用である。
【0097】
ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する例示的な抗体
一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。一態様では、提供されるのは、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する単離された抗体である。一態様では、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体を提供する。
【0098】
特定の態様において、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供され、抗体は、VLドメインとVHドメインの1つの同族対内にIVEGFパラトープ(すなわち、VEGFに結合する抗原結合部位)及びL-1ベータパラトープ(すなわち、IL-1ベータに結合する抗原結合部位)を含み、
・ VEGFパラトープは、上記抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、IL-1ベータパラトープは、上記抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含み;且つ/又は
・ 可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインの対は、同時にヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し;且つ/又は
・ VEGFパラトープに含まれるアミノ酸のうち、IL-1ベータパラトープに含まれるものはなく;且つ/又は
・ IL-1ベータパラトープに含まれるアミノ酸のうち、VEGFパラトープに含まれるものはなく;且つ/又は
・ 上記抗体は、配列番号11の可変重鎖ドメイン及び配列番号12の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同じ、ヒトVEGF上のエピトープ及びヒトIL-1ベータ上のエピトープに結合し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、(i)表面プラズモン共鳴により測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴により測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、70℃以上の凝集開始温度を呈し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片のヒトVEGFへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して50nM未満のIC50でVEGFのVEGFR2への結合を阻害し、上記抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、
抗体。
【0099】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体を提供する。
【0100】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる抗体を提供する。
【0101】
別の態様では、本発明は、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる抗体を提供する。一実施態様では、該抗体は、VHドメインにアミノ酸残基D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66及びR83を、VLドメインにアミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、E67、D68、Q69、R92、Y93、H94及びY96を含むVEGFパラトープと、VHドメインにアミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、K94、D95、V96、F98及びD101を、VLドメインにアミノ酸残基L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、Y91を含むIL-1ベータパラトープとを含む。
【0102】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む抗体を提供する。
【0103】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインと(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、抗体を提供する。
【0105】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体において、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、R66、R83及びK94を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、アミノ酸残基I2、Y49、G57、E67、D68及びQ69を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体を提供する。
【0106】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体を提供し、ここで、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0107】
別の態様において、本発明は、(a)1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む抗体を提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、(a)1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸置換が配列番号11の3~25、36~49、97~82c、84~93又は103~113位に位置するVHドメインと、(b)1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインであって、アミノ酸置換が配列番号12の1、4、6、8~23、35~48、58~66、70~88又は98~107位に位置する可変軽鎖ドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体を提供する。
【0109】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは、1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは、1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0110】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体であって、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは1~15、1~10又は1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体を提供する。
【0111】
ある態様において、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVHドメインを含む抗体を提供する。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対する置換(例:保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含んでいる、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する能力を保持する。特定の態様では、配列番号11において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の態様において、置換、挿入又は欠失は、CDR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。特定の態様において、VHは、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0112】
ある態様において、本発明は、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVLドメインを含む抗体を提供する。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対する置換(例:保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含んでいる、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する能力を保持する。特定の態様では、配列番号12において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の態様において、置換、挿入又は欠失は、CDR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。特定の態様において、VLは、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0113】
別の態様において、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供され、ここで、抗体は、上で提供される態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上で提供される態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一態様では、該抗体は、配列番号11及び配列番号12のそれぞれVH及びVL配列を、これらの配列の翻訳後修飾も含め、含む。
【0114】
別の態様において、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供され、ここで、抗体は、配列番号20の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0115】
別の態様において、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供され、ここで、抗体は、配列番号18の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0116】
本発明の更なる態様において、上記態様のいずれかによるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、モノクローナル抗体である。一態様では、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、抗体断片、例えばFv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)2断片である。別の態様では、抗体は、完全長抗体である。
【0117】
更なる態様において、上記態様のいずれかによるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、以下のセクション1~7に記載されるような特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0118】
1.抗体親和性
特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1nM、≦0.1nM又は≦0.01nMの解離定数(KD)でVEGFに結合する。特定の実施態様において、IL-1ベータに結合する抗体は、≦1nM、≦0.1nM又は≦0.03nMの解離定数(KD)を有する。
【0119】
ある態様では、KDは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。
【0120】
例えば、VEGFに結合する抗体のKDは、約10応答単位(RU)のC1チップに固定化されたVEGF121を用いて25℃で実施される、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用するアッセイで測定される。動力学測定のために、Fabの2倍段階希釈液(1.2~100nM)をHBS‐P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)に25℃、約30μl/minの流量で注入する。会合率(kon)と解離率(koff)は、会合センサーグラムと解離センサーグラムを同時に当てはめることにより、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェア バージョン3.2)を用いて計算される。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chenら,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照。
【0121】
例えば、IL-1ベータに結合する抗体のKDは、約20応答単位(RU)のC1チップに固定化された二重特異性抗体を用いて25℃で実施される、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用するアッセイで測定される。動力学測定のために、ヒトIL-1ベータの2倍段階希釈液(0.74~60nM)をHBS‐P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)に25℃、約30μl/分の流量で注入する。会合率(kon)と解離率(koff)は、会合センサーグラムと解離センサーグラムを同時に当てはめることにより、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェア バージョン3.2)を用いて計算される。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chenら,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照。
【0122】
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。
【0123】
一態様では、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH又はF(ab’)2断片、特にFab断片である。インタクトな抗体のパパイン消化は、各々が重鎖及び軽鎖可変ドメイン(それぞれVH、VL)と、更には軽鎖の定常ドメイン(CL)と重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とを含む、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。したがって、用語「Fab断片」とは、VLドメイン及びCLドメインを含む軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメインを含む重鎖断片を含む抗体断片を指す。「Fab’断片」は、抗体ヒンジ領域からの1又は複数のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端での残基の付加によりFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’断片である。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)とFc領域の一部とを有するF(ab’)2断片を生成する。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、且つ増加したin vivo半減期を有するFab及びF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。
【0124】
抗体断片は、本明細書に記載のように、限定されないが、インタクトな抗体のタンパク質消化、並びに組換え宿主細胞(例えば大腸菌、CHO)による組換え生産を含む様々な技術によって作製され得る。
【0125】
3.熱安定性
本明細書で提供される抗体は、優れた熱安定性を呈する。特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体のFab断片は、70℃超の凝集開始温度を呈する。特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体のFab断片は、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈する。
【0126】
4.ライブラリー由来の抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ライブラリーに由来する。本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法は、例えばLernerら、Nature Reviews 16:498-508(2016)で概説されている。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作成し、所望の結合特性を有する抗体のこのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が、当技術分野で知られている。このような方法は、例えばFrenzelら,mAbs 8:1177-1194(2016);Bazanら,Human Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828(2012)及びZhaoら,Critical Reviews in Biotechnology 36:276-289(2016)、並びにHoogenboomら,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)、及びMarks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)で概説されている。
【0127】
特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングされ、ファージライブラリー中でランダムに再結合され、このライブラリーはその後、WinterらのAnnual Review of Immunology 12:433-455(1994)に記載のように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは通常、抗体断片を、単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片のいずれかとして表示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、GriffithsらがEMBO Journal 12:725-734(1993)に記載のように、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングして、全く免疫化せずに、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供することもできる。更に、Hoogenboom及びWinterがJournal of Molecular Biology 227:381-388(1992)に記載のように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを用いて可変性に富むCDR3領域をコードし、in vitroでの再配列を達成することにより、ナイーブライブラリーを人工的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公報には、例えば、米国特許第5750373号、同第7985840号、同第7785903号及び同第8679490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号及び同第2007/0292936号が含まれる。
【0128】
所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための当技術分野で既知の方法の更なる例には、リボソーム及びmRNAディスプレイ、並びに細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞での抗体ディスプレイ及び選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイのための方法は、例えば、SchollerらのMethods in Molecular Biology 503:135-56(2012)及びCherfらのMethods in Molecular biology 1319:155-175(2015)、並びにZhaoらのMethods in Molecular Biology 889:73-84(2012)で概説されている。リボソームディスプレイの方法は、例えば、HeらのNucleic Acids Research 25:5132-5134(1997)に、HanesらのPNAS 94:4937-4942(1997)に記載されている。
【0129】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書中ではヒト抗体又はヒト抗体断片と考えられる。
【0130】
5.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多特異性抗体である。「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる部位、すなわち異なる抗原上の異なるエピトープ又は同じ抗原上の異なるエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様において、多重特異性抗体は、3つ以上の結合特異性を有する。
【0131】
本明細書で提供される抗体を含む3つ以上の結合特異性を有する多重特異性抗体は、同じ抗原特異性の1又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを持つ非対称の形態で、すなわちVH/VLドメインを(例えば国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号参照)、CH1/CLドメインを(例えば国際公開第2009/080253号参照)、又は完全なFabアームを(例えば国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号、並びにSchaefer et al, PNAS, 108 (2011) 1187-1191及びKlein at al., MAbs 8 (2016) 1010-20参照)を交換することによって提供され得る。多重特異性抗体の様々な更なる分子フォーマットが当技術分野で既知であり、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al., Mol Immunol 67 (2015) 95-106参照)。
【0132】
6.抗体バリアント
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を変化させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って、最終コンストラクトに到達することができるが、但し、これは最終コンストラクトが所望の特性、例えば抗原結合を有する場合に限る。
【0133】
特定の態様では、1又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発性の対象部位には、CDR及びFRが含まれる。保存的置換は、以下の表の「好ましい置換基」の見出しの下に示されている。より実質的な変更を、表Bの「例示的置換」の見出しの下に示し、アミノ酸側鎖のクラスに従って下記に更に説明する。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、その生成物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0134】
【0135】
アミノ酸は以下の共通の側鎖特性に従ってグループ化することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向性に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0136】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの要素を別のクラスの要素と交換することを必然的に伴うものである。
【0137】
あるタイプの置換バリアントは、親抗体(例:ヒト化又はヒト抗体)の1又は複数の超可変領域残基を置換することを要する。一般に、更なる研究のために選択された結果として生じるバリアントは、親抗体と比較して、特定の生物学的特性(例えば親和性の向上、免疫原性の低下)の改変(例えば向上)を有する、且つ/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を用いて、簡便に生成することができる。簡潔に言えば、1又は複数のHVR残基が変異し、バリアント抗体がファージ上に表示されて、特定の生物学的活性(例:結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0138】
CDRにおいて、例えば、抗体親和性を改善するために、変更(例:置換)を行ってもよい。このような変更は、CDR内の「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟過程中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされた残基(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照)内及び/又は抗原に接する残基内で行うことができ、結果として生じるバリアントVH又はVLの結合親和性が試験される。二次ライブラリーから構築し選択し直すことによる親和性成熟が、例えばHoogenboomらのMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの態様において、多様性が、様々な方法(例えばエラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド特異的変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリーが作成される。その後、該ライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、複数のCDR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるCDR特異的アプローチ(CDR-directed approach)を伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えばアラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを用いて、具体的に特定することができる。特に、CDR-H3及びCDR-L3が多くの場合標的とされる。
【0139】
特定の態様では、置換、挿入又は欠失は、これらの変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1又は複数のCDR内で生じ得る。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的変更(例えば本明細書において提供される保存的置換)をCDR内で行うことができる。このような変更は、例えば、CDR内の残基に接する抗原の外側にあってもよい。上で提供されている特定のバリアントVH及びVL配列において、各CDRは変更されないか、又はわずか1つ、2つ若しくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0140】
変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を特定するための有用な方法は、Cunningham及びWells(1989)Science,244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的となる残基又は残基群(例えばarg、asp、his、lys及びglu等の荷電残基)を特定し、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置き換えて、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを判定する。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替的に又は追加的には、抗体と抗原の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造が使用され得る。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされてもよいし、又は排除されてもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうか判定することができる。
【0141】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100又はそれ以上の残基を有するポリペプチドまでの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入物の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体の血清半減期を増加させる、抗体のN若しくはC末端と酵素(例えばADEPT(抗体指向酵素プロドラッグ療法)のためのもの)又はポリペプチドとの融合体が含まれる。
【0142】
a)グリコシル化バリアント
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増大又は低下させるように変更される。グリコシル化部位の抗体への付加又は欠失は、1又は複数のグリコシル化部位が作成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変更することにより、簡便に達成され得る。
【0143】
抗体がFc領域を含む場合には、それに付着するオリゴ糖を変更することができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合により一般に付着した分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えばWrightらTIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸の他、二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに付着したフコースが含まれ得る。いくつかの態様において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するためになされ得る。
【0144】
一態様において、非フコシル化オリゴ糖、すなわちFc領域に(直接又は間接的に)付着したフコースを欠くオリゴ糖構造を有する抗体バリアントが提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は、特に、二分岐オリゴ糖構造の幹における最初のGlcNAcに付着しているフコース残基を欠くN結合型オリゴ糖である。ある態様においては、天然抗体又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加している抗体バリアントが提供される。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は約100%でさえあり得る(すなわち、フコシル化オリゴ糖は存在しない)。非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、例えば国際公開第2006/082515号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法で測定される、Asn297に付着した全ての糖構造(例えば複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造体)の合計に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297とは、Fc領域内のおよそ297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体の軽微な配列変動に起因して、297位から上流又は下流に約±3アミノ酸、すなわち294位から300位の間に位置する場合もある。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加したこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合及び/又改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。
【0145】
フコシル化が低下した抗体を産生できる細胞株の例には、タンパク質のフコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えばYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)、又はGDP-フコース合成若しくは輸送タンパク質の活性が低下若しくは停止されている細胞(例えば米国特許第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号参照)が含まれる。
【0146】
更なる実施態様では、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアント、例えば、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている抗体バリアントが提供される。このような抗体バリアントは、上述のように、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えばUmanaら,Nat Biotechnol 17,176-180(1999);Ferraraら,Biotechn Bioeng 93,851-861(2006);国際公開第99/54342号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2003/011878号に記載されている。
【0147】
Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1のガラクトース残基を持つ抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号;国際公開第1998/58964号;及び国際公開第1999/22764号に記載されている。
【0148】
b)Fc領域バリアント
特定の態様において、1又は複数のアミノ酸改変を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1又は複数のアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾(例:置換)を含むヒトFc領域配列(例:ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0149】
特定の態様では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有し、それにより、in vivoでの抗体の半減期が重要であるにもかかわらず、特定のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害性(CDC)及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC))が不要であったり有害であったりする場合の用途のための望ましい候補となる、抗体バリアントを企図している。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認するために実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠く(したがって恐らくはADCC活性を欠く)が、FcRn結合能を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えばHellstrom, I et al. Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照)及びHellstrom, I et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985); 5,821,337 (Bruggemann, M. et al.,J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology社、カリフォルニア州マウンテンビュー;及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、ClynesrらProc.Nat’l.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルで、評価され得る。C1q結合アッセイはまた、抗体がC1qに結合できないこと、それ故CDC活性を欠くことを確認するために行うこともできる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)、Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003)、及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。また、FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定も、当分野で既知の方法を用いて行うことができる(例えばPetkova, S.B. et al., Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006);国際公開第2013/120929号参照)。
【0150】
エフェクター機能が低下した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有する抗体が含まれる(米国特許第6737056号)。このようなFc突然変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含め、アミノ酸265、269、270、297及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0151】
FcRへの結合が向上又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照)。
特定の態様では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1又は複数のアミノ酸置換、例えばFc領域の298、333及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0152】
特定の態様では、抗体バリアントは、FcγR結合を縮小する1又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の234位及び235位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。一態様において、置換はL234AとL235A(LALA)である。特定の態様では、抗体バリアントは、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内にD265A及び/又はP329Gを更に含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のL234A、L235A、及びP329G(LALA-PG)である。(例えば、国際公開第2012/130831号を参照のこと。)別の態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のL234A、L235A、及びD265A(LALA-DA)である。
【0153】
いくつかの態様では、Fc領域において、例えば米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogieらのJ.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載のような、変更された(すなわち向上したか減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす変更がなされる。
【0154】
増加した半減期を持ち、胎児への母性IgGの輸送を担う(Guyerら、J. Immunol. 117:587 (1976)及びKimら、J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hintonら)に記載されている。このような抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1又は複数の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントには、Fc領域残基238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1又は複数における置換を有するものが含まれる(例えば米国特許第7371826号;Dall’Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524参照)。
【0155】
マウスFc-マウスFcRn相互作用に重要なFc領域残基は、部位特異的変異誘発によって特定されている(例えばDall’Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169 (2002) 5171-5180参照)。この相互作用には、残基I253、H310、H433、N434及びH435(EU番号付け)が関与している(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26 (1996) 2533; Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993; Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24 (1994) 542)。残基I253、H310及びH435は、ヒトFcとマウスFcRnの相互作用に重要であることが判明した(Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999 ; 2819)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の研究により、この相互作用には残基I253、S254、H435及びY436が重要であることが示されている(Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。Yeung,Y.A.らのJ.Immunol.182(2009)7667-7671では、残基248~259及び301~317及び376~382及び424~437の様々な変異体が報告及び調査されている。
【0156】
特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を低減させる1又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の253位及び/又は310位及び/又は435位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。特定の態様では、抗体バリアントは、253位、310位、及び435位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のI253A、H310A、及びH435Aである。例えばGrevys,A.らJ.Immunol.194(2015)5497-5508を参照されたい。
【0157】
特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を低減させる1又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の310位及び/又は433位及び/又は436位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。特定の態様では、抗体バリアントは、310位、433位、及び436位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のH310A、H433A、及びY436Aである。(例えば国際公開第2014/177460号参照)
【0158】
特定の態様では、抗体バリアントは、FcRn結合を増大させる1又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の252位及び/又は254位及び/又は256位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。特定の態様において、抗体バリアントは、252位、254位、及び256位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のM252Y、S254T、及びT256Eである。Fc領域のバリアントのその他の例に関しては、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5648260号、米国特許第5624821号、及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0159】
本明細書で報告される抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終端する完全なC末端とすることができる。重鎖のC末端は、C末端のアミノ酸残基のうちの1つ又は2つが除去されている、短縮されたC末端とすることができる。好ましい一態様では、重鎖のC末端は、PGで終端する短縮されたC末端である。本明細書で報告される全ての態様のうちの一態様において、本明細書に明記されているC末端CH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、アミノ酸位置のEUインデックス番号付け)を含む。本明細書で報告される全ての態様のうちの一態様において、本明細書に明記されているC末端CH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン残基(G446、アミノ酸位置のEUインデックス番号付け)を含む。
【0160】
c)システイン操作抗体バリアント
特定の態様において、抗体の1又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えばチオMAbTMを作製することが望ましい場合がある。特定の態様において、置換残基は、抗体のアクセス可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書中で詳述されるように、イムノコンジュゲートを生成するために、例えば薬物部分又はリンカー-薬剤部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートするために使用され得る。システイン操作抗体は、例えば米国特許第7521541号、同第830930号、同第7855275号、同第9000130号又は国際公開第2016040856号に記載されているように生成することができる。
【0161】
7.イムノコンジュゲート
本発明はまた、細胞傷害性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素活性毒素又はこれらの断片)又は放射性同位体などの1種以上の治療剤にコンジュゲート(化学結合)している、本明細書に開示のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0162】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が上述の1種以上の治療剤にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。該抗体は、典型的には、リンカーを用いて1種以上の治療剤に結合される。治療剤及び治療薬、並びにリンカーの例を含むADC技術の概要は、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に明記されている。
【0163】
組換え方法及び組成物
例えば米国特許第4816567号に記載されているような組換え方法及び組成物を用いて抗体を製造することができる。このような方法のために、抗体をコードする1又は複数の単離された核酸が提供される。
【0164】
一態様では、本発明の抗体をコードする単離された核酸が提供される。
【0165】
一態様では、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を作製する方法であって、該抗体の発現に適した条件下で、上述のような、該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することとを含む方法が提供される。
【0166】
ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の組換え生産のために、例えば上述のような、該抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1又は複数のベクターに挿入される。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定することができ、又は組換え法で生産したり、化学合成で得ることができる。
【0167】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載の原核生物細胞又は真核細胞を含む。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合には、抗体は、細菌内で生産され得る。細菌内での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば米国特許第5648237号、同第5789199号、及び同第5840523号を参照。(また、大腸菌における抗体断片の発現を記載しているCharlton, K.A., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), p. 245-254も参照)。発現後、抗体を、可溶性画分において細菌の細胞ペーストから単離し、更に精製することができる。
【0168】
脊椎動物細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(例えば、Graham, F.L.ら, J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74に記載の293細胞又は293T細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスのセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252に記載のTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);TRI細胞(例えばMather, J.Pら, Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68に記載のもの);MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220);並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki,P.及びWu,A.M.,Methods in Molecular Biology,第248巻,Lo,B.K.C.(編),Humana Press,Totowa,NJ(2004),255-268頁を参照。
【0169】
一態様では、宿主細胞は、真核生物であり、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。
【0170】
薬学的組成物
更なる態様において、本明細書で提供される抗体のいずれかを含む薬学的組成物が、例えば下記の治療方法のいずれかにおける使用のために提供される。一態様において、薬学的組成物は、本明細書に提供される抗体のいずれか及び薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、薬学的組成物は、本明細書に提供される抗体のいずれかと、例えば後述の少なくとも1種の追加の治療剤とを含む。
【0171】
本明細書に記載のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の薬学的組成物は、所望の純度を有する当該抗体を1種以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合することによって、凍結乾燥組成物又は水溶液の形態で調製される。通常、薬学的に許容される担体は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、限定されるものではないが、ヒスチジン、リン酸、クエン酸、酢酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及びその他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの介在性薬物分散剤、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Halozyme社)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が更に含まれる。rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGP及び使用法については、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1種以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0172】
例示的な凍結乾燥抗体組成物は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体組成物には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の組成物はヒスチジン-酢酸バッファーを含む。
【0173】
本明細書に記載の薬学的組成物はまた、治療される特定の適応症に必要な、1種より多い活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものも含有し得る。そのような活性成分は、好適には、意図する目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0174】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに、封入することができる。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0175】
徐放性の薬学的組成物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0176】
in vivo投与に用いる薬学的組成物は、一般に滅菌である。滅菌状態は、例えば滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成することができる。
【0177】
治療方法及び投与経路
本明細書に提供される、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する任意の抗体を、治療方法において使用することができる。
【0178】
ある態様において、医薬としての使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供される。更なる態様において、血管疾患の治療における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供される。特定の態様において、治療の方法における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の有効量を血管疾患を有する個体に投与することを含む、該個体を治療する方法における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。このような一態様において、該方法は、例えば後述の少なくとも1種の追加の治療剤(例:1、2、3、4、5又は6種の追加の治療剤)の有効量を該個体に投与することを更に含む。更なる態様において、本発明は、血管新生の阻害における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、血管新生を阻害するために、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の有効量を個体に投与することを含む、個体の血管新生を阻害する方法における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を提供する。上記の態様のいずれによる「個体」も、好ましくはヒトである。
【0179】
更なる態様において、眼疾患の治療における使用のための、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体が提供される。一実施態様では、眼疾患は、AMD(一実施態様では湿性AMD、乾性AMD、中間AMD、進行性AMD、及び地図状委縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(一実施態様では中心窩を含まない限局性DME及び中心窩を含むびまん性DME)、網膜症、糖尿病網膜症(DR)(一実施態様では増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高地DR)、その他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(一実施態様では網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜静脈分枝閉塞症(BRVO))、CNV(一実施態様では近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連する疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連する疾患、中心性漿液性網膜症(CSR)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、目のヒストプラスマ症、FEVR、コート病、ノリエ病、骨粗鬆症・偽神経膠腫症候群(OPPG)に関連する網膜異常、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生性疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧網膜症、網膜血管腫の増殖、黄斑毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、CMV網膜炎を含むがこれに限定されない網膜炎、眼内黒色腫、網膜芽腫、結膜炎(一実施態様では伝染性結膜炎及び非伝染性(一実施態様ではアレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障(レーバーの先天性黒内障又はLCAとしても知られる)、ぶどう膜炎(伝染性及び非伝染性ぶどう膜炎を含む)、脈絡膜炎(一実施態様では多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラスマ症、眼瞼炎、ドライアイ、外傷性の目の損傷、シェーグレン病、並びに疾患又は障害が眼の血管新生、血管漏出及び/若しくは網膜浮腫又は網膜委縮に関連するその他の眼疾患から選択される。一実施態様において、眼疾患は、AMD(一実施態様では湿性AMD、乾性AMD、中間AMD、進行性AMD、及び地図状委縮(GA))、黄斑変性、黄斑浮腫、DME(一実施態様では中心窩を含まない限局性DME及び中心窩を含むびまん性DME)、網膜症、糖尿病網膜症(DR)(一実施態様では増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高地DR)から選択される。
【0180】
更なる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製におけるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の使用を提供する。一態様において、医薬は、血管疾患の治療のためのものである。更なる態様において、医薬は、その有効量を血管疾患を有する個体に投与することを含む、血管疾患を治療する方法における使用のためのものである。このような一態様では、本発明の方法は、例えば後述の少なくとも1種の追加の治療剤の有効量を上記個体に投与することを更に含む。
【0181】
ある態様において、医薬は、眼疾患の治療のためのものである。更なる態様において、医薬は、その有効量を眼疾患を有する個体に投与することを含む眼疾患を治療する方法における使用のためのものである。このような一態様では、本発明の方法は、例えば後述の少なくとも1種の追加の治療剤の有効量を上記個体に投与することを更に含む。
【0182】
更なる態様において、本発明は、血管疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、この方法は、上記血管疾患を有する個体に、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の有効量を投与することを含む。このような一態様では、本方法は、後述するような少なくとも1種の追加の治療剤の有効量を上記個体に投与することを更に含む。
【0183】
更なる態様において、本発明は、眼疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、この方法は、上記眼疾患を有する個体に、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の有効量を投与することを含む。このような一態様では、本方法は、後述するような少なくとも1種の追加の治療剤の有効量を上記個体に投与することを更に含む。
【0184】
上記の態様のいずれによる「個体」も、ヒトであってよい。
【0185】
更なる態様において、本発明は、例えば上記の治療法のいずれかにおける使用のための、本明細書に提供される、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合するいずれかの抗体を含む薬学的組成物を提供する。一態様では、薬学的組成物は、本明細書に提供される、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的組成物は、本明細書に提供される、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体のいずれかと、例えば後述の少なくとも1種の追加の治療剤とを含む。
【0186】
本発明の抗体は、単独で投与するか、又は併用療法で用いることができる。例えば、併用療法は、本発明の抗体を投与することと、少なくとも1種の追加の治療薬(例えば、1、2、3、4、5又は6種の追加の治療剤)を投与することとを含む。
【0187】
例えば、特定の実施態様では、上記方法のいずれもが、1種以上の追加の化合物を更に含む。特定の実施態様では、本明細書に提供される、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、追加の化合物と同時に投与される。特定の実施態様では、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、追加の化合物(複数可)の前又は後に投与される。特定の実施態様では、追加の化合物は、IL-6;IL-6R;IL-13;IL-13R;PDGF;アンジオポエチン;Ang2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体因子D;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST-2受容体;及びAMDのリスクに遺伝的に関連するタンパク質、例えば補体経路成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;インターロイキン-8(IL-8);CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC、COL10A1;並びにTNFRSF10Aからなる群より選択される、第2の生体分子に結合する。特定の実施態様では、追加の化合物は、抗体又はその抗原結合断片である。
【0188】
上記実施態様のいずれかによる(又はそれらのいずれかに適用される)特定の実施態様では、眼の障害は、増殖性網膜症、脈絡膜新生血管(CNV)、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性及びその他虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、目のヒストプラスマ症、CRVO及びBRVOを含む網膜静脈閉塞症(RVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、並びに未熟児網膜症(ROP)からなる群より選択される眼内血管新生性疾患である。
【0189】
場合によって、本明細書に提供されるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害、例えば本明細書に記載の眼の障害(例:AMD(例:湿性AMD)、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、少なくとも1種の追加治療剤と組み合わせて投与され得る。眼の障害の治療のための併用療法用の例示的な追加の治療剤には、限定されないが、例えば抗VEGF抗体(例:抗VEGF Fabルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ))、可溶性受容体融合タンパク質(例:組換え可溶性受容体融合タンパク質アイリーア(登録商標)(VEGF Trap Eyeとしても知られるアフリベルセプト;Regeneron/Aventis))、アプタマー(例:抗VEGFペグ化アプタマー マクジェン(登録商標)(ペガプタニブ-ナトリウム;NeXstar Pharmaceuticals/OSI Pharmaceuticals))、及びVEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(例:4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(1-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4-(4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3-ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)、セマクサニブ(SU5416;SUGEN)、及びスーテント(登録商標)(スニチニブ))を含むVEGFアンタゴニスト;トリプトファニル-tRNAシンテターゼ(TrpRS);スクアラミン;RETAANE(登録商標)(デポ懸濁液用の酢酸アネコルタブ;Alcon社);コンブレタスチンA4プロドラッグ(CA4P);MIFEPREX(登録商標)(ミフェプリストン-ru486);サブテノントリアムシノロンアセトニド;硝子体内結晶質トリアムシノロンアセトニド;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例:Prinomastat(AG3340;ファイザー));フルオシノロンアセトニド(フルオシノロン眼内レンズを含む;Bausch & Lomb/Control Delivery Systems);リノミド;インテグリンβ3機能の阻害剤;アンギオスタチン等の抗血管新生剤、並びにこれらの組み合わせが含まれる。ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する本発明の抗体と組み合わせて投与することのできる上記及びその他の治療剤は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0017244号に記載されている。
【0190】
眼の障害(例:AMD、DME、DR又はGA)の治療のために、本明細書で提供されるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて使用することのできる追加の治療剤の更なる例には、限定されないが、ビスダイン(登録商標)(ベルテポルフィン;典型的には非熱レーザーを用いる光力学療法と組み合わせて使用される光活性化薬)、PKC412、Endovion(NS 3728;NeuroSearch社)、神経栄養因子(例:グリア由来神経栄養因子(GDNF)及び毛様神経栄養因子(CNTF))、ジルチアゼム、ドルゾラミド、PHOTOTROP(登録商標)、9-シス-網膜、目薬(例:ヨウ化ホスホリン、エコチオフェート又は炭酸脱水酵素阻害剤)、ネオバスタット(AE-941;AEterna Laboratories社)、Sirna-027(AGF-745;Sima Therapeutics社)、ニューロトロフィン(例示のみを目的として、NT-4/5、ジェネンテック)を含む)、Cand5(Acuity Pharmaceuticals)、INS-37217(Inspire Pharmaceuticals)、インテグリンアンタゴニスト(Jerini社及びAbbott Laboratoriesのものを含む)、EG-3306(Ark Therapeutics社)、BDM-E(BioDiem社)、サリドマイド(例えばEntreMed社が使用)、カルジオトロフィン-1(ジェネンテック)、2-メトキシエストラジオール(アラガン/Oculex)、DL-8234(東レ)、NTC-200(Neurotech)、テトラチオモリブデート(ミシガン大学)、LYN-002(Lynkeus Biotech)、微細藻類化合物(Aquasearch/Albany、Mera Pharmaceuticals)、D-9120 (セルテックグループ)、ATX-S10 (浜松ホトニクス)、TGF-ベータ2 (Genzyme/Celtrix)、チロシンキナーゼ阻害剤(例:アラガン、SUGEN又はファイザーのもの)、NX-278-L(NeXstar Pharmaceuticals/ギリアド・サイエンシズ)、Opt-24(フランスOPTIS社)、網膜細胞ガングリオン神経保護物質(Cogent Neurosciences)、N-ニトロピラゾール誘導体(テキサスA&M大学システム)、KP-102(Krenitsky Pharmaceuticals)、シクロスポリンA、光力学療法に使用される治療剤(例:ビスダイン(登録商標);受容体標的化PDT、ブリストル・マイヤーズスクイブ社;PDTによる注射のためのポルフィマーナトリウム;ベルテポルフィン、QLT社;PDTによるロスタポルフィン、Miravent Medical Technologies;PDTによるタラポルフィンナトリウム、日本ペトロリアム;及びモテキサフィンルテチウム、Pharmacyclics社)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例として、Novagali Pharma社により試験済みの製品及びISIS-13650、アイオニス・ファーマシューティカルズを含む)、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0191】
本明細書で提供されるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、療法又は外科手技と組み合わせて投与することができ、そのような療法又は外科手技には、例えば、レーザー光凝固(例:汎網膜光凝固(PRP))、ドルーゼンレーザー治療(drusen lasering)、黄斑円孔の手術、黄斑移動術、移植式超小型テレスコープ、PHI-モーション血管造影法(マイクロレーザー療法及びフィーダー血管治療としても知られる)、陽子線治療、微小刺激療法、網膜剥離及び硝子体手術、胸膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱療法、光化学系I療法、RNA干渉(RNAi)の使用、体外循環式レオフェレーシス(extracorporeal rheopheresis)(膜差濾過(membrane differential filtration)及びレオセラピーとしても知られる)、マイクロチップ移植、幹細胞療法、遺伝子置換療法、リボザイム遺伝子療法(低酸素応答エレメントに対する遺伝子療法、Oxford Biomedica;Lentipak、Genetix;及びPDEF遺伝子療法、GenVecを含む)、光受容体/網膜細胞移植(移植可能な網膜上皮細胞(Diacrin社);網膜細胞移植(例えば米国アステラス製薬社)、ReNeuron(CHA Biotech)を含む)、鍼療法、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0192】
場合によって、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、抗血管新生剤と組み合わせて投与され得る。CarmelietらNature 407:249-257,2000によってリスト化されているものを含むがこれらに限定されない任意の適切な抗血管新生剤を、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する本発明の抗体と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施態様では、抗血管新生剤はVEGFアンタゴニストであり、これには、限定されないが、抗VEGF抗体(例:抗VEGF Fab ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、RTH-258(旧ESBA-1008、抗VEGF単鎖抗体断片;ノバルティス)又は二重特異性抗VEGF抗体(例:ファリシマブなどの抗VEGF/抗アンジオポエチン2二重特異性抗体;ロッシュ)、可溶性組換え受容体融合タンパク質(例:アイリーア(登録商標)(アフリベルセプト))、VEGFバリアント、可溶性VEGFR断片、VEGFを遮断することのできるアプタマー(例:ペガプタニブ)又はVEGFRを遮断することのできるアプタマー、中和性抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子阻害剤、抗VEGF DARPin(登録商標)(例:アビシパルぺゴル;Molecular Partners社/アラガン社)、VEGF又はVEGFRの発現を阻害する低分子干渉RNA、VEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(例:4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(1-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4-(4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3-ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)、セマクサニブ(SU5416;SUGEN)及びスーテント(登録商標)(スニチニブ))、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0193】
眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、本明細書で提供されるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて投与することのできる他の適切な抗血管新生剤には、コルチコステロイド、抗血管新生ステロイド、酢酸アネコルタブ、アンギオスタチン、エンドスタチン、チロシンキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)、間質由来因子(SDF-1)アンタゴニスト(例:抗SDF-1抗体)、色素上皮由来因子(PEDF)、ガンマセクレターゼ、Delta様リガンド4、インテグリンアンタゴニスト、低酸素誘導因子(HIF)-1αアンタゴニスト、プロテインキナーゼCK2アンタゴニスト、血管新生の部位への幹細胞(例:内皮前駆細胞)のホーミングを阻害する薬剤(例:抗血管内皮カドヘリン(CD-144)抗体及び/又は抗SDF-1抗体)、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0194】
更なる例では、場合によって、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体及び/又はその高分子製剤(polymeric formulation)は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、血管新生に対する活性を有する薬剤と組み合わせて投与することができ、そのような薬剤は、例えば、抗炎症薬、哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)阻害剤(例:ラパマイシン、アフィニトール(登録商標)(エベロリムス)及びトーリセル(登録商標)(テムシロリムス))、シクロスポリン、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト(例:抗TNFα抗体又はその抗原結合断片(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、及びゴリムマブ)又は可溶性受容体融合タンパク質(例:エタネルセプト))、抗補体剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、或いはこれらの組み合わせである。
【0195】
また更なる例では、場合によって、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、神経保護性で、乾性AMDから湿性AMDへの進行を低減させ得る薬剤、例えば「神経ステロイド」と呼ばれる種類の薬物と組み合わせて投与することができ、そのような薬物には、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(商標名:PRASTERATM及びFIDELIN(登録商標))、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩、及びプレグネノロン硫酸塩などが含まれる。
【0196】
眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、本明細書で提供されるヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて投与することのできる適切なAMD治療剤には、限定されないが、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例:ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、RTH-258(旧ESBA-1008、抗VEGF単鎖抗体断片;ノバルティス)又は二重特異性抗VEGF抗体(例:抗VEGF/抗アンジオポエチン2二重特異性抗体、例えばファリシマブ;ロッシュ))、可溶性VEGF受容体融合タンパク質(例:アイリーア(登録商標)(アフリベルセプト))、抗VEGF DARPin(登録商標)(例:アビシパルぺゴル);Molecular Partnerss社/アラガン)又は抗VEGFアプタマー(例:マクジェン(登録商標)(ペガプタニブ‐ナトリウム));血小板由来成長因子(PDGF)アンタゴニスト、例えば抗PDGF抗体、抗PDGFR抗体(例:REGN2176-3)、抗PDGF-BBペグ化アプタマー(例:フォビスタ(登録商標);オフソテック/ノバルティス)、可溶性PDGFR受容体融合タンパク質又は二重PDGF/VEGFアンタゴニスト(例:低分子阻害剤(例:DE-120(参天)又はX-82(TyrogeneX))又は二重特異性抗PDGF/抗VEGF抗体));ビスダイン(登録商標)(ベルテポルフィン)と光力学療法の組み合わせ;抗酸化剤;補体系アンタゴニスト、例えば補体因子C5アンタゴニスト(例;低分子阻害剤(例:ARC-1905;Opthotech)又は抗C5抗体(例:LFG-316;ノバルティス)、プロパジンアンタゴニスト(例:抗プロパジン抗体、例えばCLG-561;アルコン)又は補体因子Dアンタゴニスト(例:抗補体因子D抗体、例えばランパリズマブ;ロッシュ));C3ブロッキングペプチド(例:APL-2、Appellis);視覚サイクル調節剤(例:エミクススタット塩酸塩);スクアラミン(例:OHR-102;Ohr Pharmaceutical);ビタミン及びミネラルのサプリメント(例:加齢性眼疾患研究1(AREDS1)に記載のもの;亜鉛及び/又は抗酸化剤)、並びに同研究2(AREDS2)に記載のもの;亜鉛、抗酸化剤、ルテイン、ゼアキサンチン、及び/又はオメガ-3脂肪酸));細胞療法、例えばNT-501(Renexus);PH-05206388(ファイザー)、huCNS-SC細胞移植(StemCells)、CNTO-2476(ヤンセン)、OpRegen(Cell Cure Neurosciences)又はMA09-hRPE細胞移植(Ocata Therapeutics);組織因子アンタゴニスト(例:hI-con1;Iconic Therapeutics);アルファ-アドレナリン受容体アゴニスト(例:酒石酸ブリモニジン;アラガン);ペプチドワクチン(例:S-646240;シオノギ);アミロイドベータアンタゴニスト(例:抗ベータアミロイドモノクローナル抗体、例えばGSK-933776);S1Pアンタゴニスト(例:抗S1P抗体、例えばiSONEPTM;Lpath社);ROBO4アンタゴニスト(例:抗ROBO4抗体、例えばDS-7080a;第一三共);レンチウイルスベクター発現エンドスタチン及びアンギオスタチン(例:RetinoStat);並びにこれらの任意の組み合わせが含まれる。場合によって、AMD治療剤(前述のAMD治療剤のいずれかを含む)を共製剤化することができる。例えば、抗PDGFR抗体REGN2176-3は、アフリベルセプト(アイリーア(登録商標))と共製剤化することができる。場合によって、このような共製剤は、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて投与することができる。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。
【0197】
ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)と組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0198】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、ルセンティス(登録商標)(アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0199】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、マクジェン(登録商標)(ペガプタニブ‐ナトリウム)と組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0200】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、ビスダイン(登録商標)(ベルテポルフィン)及び光力学療法を組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0201】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、PDGFアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて使用され得る例示的なPDGFアンタゴニストには、抗PDGF抗体、抗PDGFR抗体、低分子阻害剤(例:スクアラミン)、抗PDGF-Bペグ化アプタマー(例えばフォビスタ(登録商標)(E10030;オフソテック/ノバルティス))又は二重PDGF/VEGFアンタゴニスト(例:低分子阻害剤(例:DE-120(参天)又はX-82(TyrogeneX))又は二重特異性抗PDGF/抗VEGF抗体が含まれる。例えば、フォビスタ(登録商標)は、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体に対する補助療法として投与され得る。OHR-102は、ルセンティス(登録商標)又はアイリーア(登録商標)などのVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施態様において、ヒトVEGF及び本発明のヒトIL-1ベータに結合する抗体は、OHR-102、ルセンティス(登録商標)、及び/又はアイリーア(登録商標)と組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0202】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、RTH-258と組み合わせて投与され得る。RTH-258は、例えば、硝子体内注射又は眼点滴によって投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0203】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、アビシパルぺゴルと組み合わせて投与され得る。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0204】
眼の障害(例:AMD、DME、DR、RVO又はGA)の治療のために、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体と組み合わせて任意の適切なDME及び/又はDR治療剤を投与することができ、これには、限定されはないが、VEGFアンタゴニスト(例:ルセンティス(登録商標)又はアイリーア(登録商標))、コルチコステロイド(例:コルチコステロイドインプラント(例:オズルデックス(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)又はILUVIEN(登録商標)(フルオシノロンアセトニド硝子体内インプラント))又は硝子体内注射(例:トリアムシノロンアセトニド)による投与のため製剤化されたコルチコステロイド、或いはこれらの組み合わせが含まれる。場合によっては、眼の障害は、DME及び/又はDRである。
【0205】
本発明のヒトVEGF及び本発明のヒトIL-1ベータに結合する抗体は、DME及び/又はDR(例:NPDR又はPDR)の治療のために、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)と組み合わせて投与され得る。
【0206】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、DME及び/又はDR(例:NPDR又はPDR)の治療のために、アイリーア(登録商標)(アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。
【0207】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、DME及び/又はDRの治療のために、オズルデックス(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)と組み合わせて投与され得る。
【0208】
本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体は、DME及び/又はDRの治療のために、ILUVIEN(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)と組み合わせて投与され得る。
【0209】
場合によっては、TAO/PRN治療レジメン又はTAE治療レジメンを用いて、AMD治療薬剤(例:ラニビズマブ又はアフリベルセプト)を、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体、並びに/又はその高分子製剤と組み合わせて投与してもよい。場合によって、眼の障害は、AMD(例:湿性AMD)である。場合によって、眼の障害は、GAである。
【0210】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2種以上の治療剤が同一又は別々の製剤に含まれている)と、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の投与が追加の治療剤(複数可)の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こる個別投与とを包含する。一実施態様では、本発明のヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体の投与と追加の治療剤の投与は、約1、2、3、4若しくは5カ月以内に、又は約1、2若しくは3週間以内に、又は約1、2、3、4、5若しくは6日以内の間隔で起こる。
【0211】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内を含む任意の適切な手段によって投与することができ、また、局所治療が望まれる場合は、病巣内投与であってもよい。非経口点滴は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を含む。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路で、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。
【0212】
本発明の抗体は、医療実施基準に一致した様式で製剤化、調薬及び投与される。この観点において考慮すべき要素には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程、及び医療従事者が知るその他の要素が含まれる。本発明の抗体は、必ずしも必須ではないが任意選択的に、問題の障害を予防若しくは治療するのに目下使用されている1種以上の薬剤と共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、薬学的組成物中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類、その他上述の要素に依存する。このような他の薬剤は一般に、本明細書に記載されているのと同じ用量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量及び経路で使用される。
【0213】
疾患の予防又は治療に関し、本発明の抗体の(単独での使用又は1種以上の他の追加的治療剤との併用の際の)適切な投与量は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防又は治療のどちらの目的で投与されるか、従前の治療、患者の病歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量によって決定されるであろう。本発明の抗体は、単回又は一連の治療にわたって患者へ適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば単回又は複数回の別個の投与によるか、持続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が患者への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な1日の投与量は、上記要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日以上にわたる反復投与に関しては、病状に応じて、治療は一般に疾患症状の望まれる抑制が起こるまで継続されるであろう。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の1又は複数の用量を患者に投与することができる。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば、約2から約20又は例えば約6投与量の抗体を患者が受けるように)投与してもよい。初回の高負荷用量の後、それより低い用量を1以上投与してもよい。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0214】
製造品
本発明の別の態様では、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に貼られているか又は付随しているラベル又は添付文書とを備える。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、病状の治療、予防、及び/又は診断に有効な組成物を単独で又は別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、本発明の抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が選択された状態の治療のために使用されることを示している。更に、製造品は、(a)本発明の抗体を含む組成物をその中に収容する第1の容器と、(b)更なる細胞傷害性剤又はその他の治療剤含む組成物を中に収容する第2の容器を含んでもよい。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するために使用できることを示す添付文書を更に備えてもよい。代替的に又は追加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー(例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液)を含む第2(又は第3)の容器を更に備えてもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の物質を更に備えてもよい。
【0215】
3.本発明の特定の実施態様
本発明の特定の実施態様を以下に列挙する。
1.可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、VEGFパラトープは抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、IL-1ベータパラトープは抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含む、抗体。
2.可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインのこの対が、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに同時に結合する、抗体。
3.可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、VEGFパラトープに含まれるアミノ酸のいずれもIL-1ベータパラトープに含まれない、抗体。
4.可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)と可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内にVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、該抗体が、配列番号11の可変重鎖ドメインと配列番号12の可変軽鎖ドメインとを有する抗体が結合するのと同じ、ヒトVEGF上のエピトープ及びヒトIL-1ベータ上のエピトープに結合する、抗体。
5.可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)及び可変重鎖ドメイン(VHドメイン)の1つの同族対内のVEGFパラトープ及びIL-1ベータパラトープを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体であって、
・ VEGFパラトープは、上記抗体のCDR-H2、CDR-L1及びCDR-L3からのアミノ酸残基を含み、IL-1ベータパラトープは、上記抗体のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2からのアミノ酸残基を含み;且つ/又は
・ 可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインの対は、同時にヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合し;且つ/又は
・ VEGFパラトープに含まれるアミノ酸のうち、IL-1ベータパラトープに含まれるものはなく;且つ/又は
・ 上記抗体は、配列番号11の可変重鎖ドメイン及び配列番号12の可変軽鎖ドメインを有する抗体と同じ、ヒトVEGF上のエピトープ及びヒトIL-1ベータ上のエピトープに結合し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、(i)表面プラズモン共鳴により測定して10pM未満のKDでヒトVEGF12に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴により測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、70℃以上の凝集開始温度を呈し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片は、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈し;且つ/又は
・ 上記抗体の抗体Fab断片のヒトVEGFへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して50nM未満のIC50でVEGFのVEGFR2への結合を阻害し、上記抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、
抗体。
6.(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、実施態様1から5のいずれか1つの抗体。
7.(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体。
8.(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、実施態様1から7のいずれか1つの抗体。
9.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体。
10.アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、実施態様1から9のいずれか1つの抗体。
11.
- VHドメインにアミノ酸残基D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66及びR83を、VLドメインにアミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、E67、D68、Q69、R92、Y93、H94及びY96
を含むVEGFパラトープと、
- VHドメインにアミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、K94、D95、V96、F98及びD101を、VLドメインにアミノ酸残基L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、Y91を含むIL-1ベータパラトープ
とを含む、実施態様10の抗体。
12.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、一対のVLドメインとVHドメインに(i)アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(ii)アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体。
13.
- VHドメインにアミノ酸残基D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66及びR83を、VLドメインにアミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、E67、D68、Q69、R92、Y93、H94及びY96を含むVEGFパラトープと、
- VHドメインにアミノ酸残基:E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、K94、D95、V96、F98及びD101を、VLドメインにアミノ酸残基:L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、Y91を含むIL-1ベータパラトープ
とを含む、実施態様12の抗体。
14.(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、実施態様1から13のいずれか1つの抗体。
15.(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、実施態様1から14のいずれか1つの抗体。
16.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインと(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、抗体。
17.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体において、(a)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、R66、R83及びK94を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインであって、アミノ酸残基I2、Y49、G57、E67、D68及びQ69を含むVLドメインとを含み;VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、抗体。
18.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体であって、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、抗体。
19.(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、実施態様1から18のいずれか1つの抗体。
20.(a)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインであって、アミノ酸置換が配列番号11の3~25、36~49、97~82c、84~93又は103~113位に位置するVHドメインと、(b)15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインであって、アミノ酸置換が配列番号12の1、4、6、8~23、35~48、58~66、70~88又は98~107位に位置する可変軽鎖ドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムによる、実施態様1から19のいずれか1つの抗体。
21.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータ特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって(a)VHドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体。
22.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含む抗体であって、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;(a)VHドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含み、(b)可変軽鎖ドメインは15個までのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体。
23.配列番号11のVH配列と配列番号12のVL配列とを含む、実施態様1から22のいずれか1つの抗体。
24.配列番号11のVH配列及び配列番号12のVL配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体。
25.配列番号20の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、実施態様1から24のいずれか1つの抗体。
26.配列番号20の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体。
27.配列番号18の重鎖アミノ酸配列と配列番号19の軽鎖アミノ酸配列とを含む、実施態様1から26のいずれか1つの抗体。
28.配列番号18の重鎖アミノ酸配列及び配列番号19の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体。
29.実施態様1から28のいずれか1つの抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴により測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴により測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
30.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴によって測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴によって測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
31.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
32.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み;VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより;該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
33.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、一対のVLドメインとVHドメインに(i)アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(ii)アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
34.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合し、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片が、(i)表面プラズモン共鳴で測定して10pM未満のKDでヒトVEGF121に結合し、(ii)表面プラズモン共鳴で測定して30pM未満のKDでヒトIL-1ベータに結合する、抗体。
35.実施態様1から34のいずれか1つの抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
36.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
37.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含み、該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
38.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
39.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、一対のVLドメインとVHドメインに(i)アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(ii)アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
40.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含み、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片が70℃超の凝集開始温度を呈する、抗体。
41.実施態様1から40のいずれか1つの抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
42.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
43.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含み、該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
44.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
45.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、一対のVLドメインとVHドメインに(i)アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(ii)アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法で測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
46.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片が、動的光散乱法によって測定して80℃超の融解温度を呈する、抗体。
47.実施態様1から46のいずれか1つの抗体であって、該抗体の抗体Fab断片のヒトVEGFへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して50nM未満のIC50でVEGFのVEGFR2への結合を阻害し、該抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合は、表面プラズモン共鳴により測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体。
48.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、該抗体の抗体Fab断片のヒトVEGFへの結合は、表面プラズモン共鳴によって測定して50nM未満のIC50でVEGFのVEGFR2への結合を阻害し;該抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合は、表面プラズモン共鳴によって測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体。
49.ヒトVEGF及びヒトIL1-ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含み、該抗体の抗体Fab断片が、表面プラズモン共鳴で測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体。
50.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)(i)アミノ酸残基E2、G26、V28及びK30を含むFR1、(ii)アミノ酸残基R66、R83及びK94を含むFR3を有するヒト重鎖フレームワークを含むVHドメインと、(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(f)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(g)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに(h)(i)アミノ酸残基I2を含むFR1、(ii)アミノ酸残基Y49を含むFR2、(iii)アミノ酸残基G57、E67、D68及びQ69を含むFR3を有するヒト軽鎖フレームワークを含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が、表面プラズモン共鳴で測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体。
51.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、一対のVLドメインとVHドメインに(i)アミノ酸残基E2、G26、V28、K30、W31、N35b、D35c、K52a、D55、H56、Y58、T61、K62、F63、I64、R66、R83、K94、D95、V96、F98及びD101を含むVHドメインと、(ii)アミノ酸残基I2、Y27、W27a、S27c、S27d、L32、Y49、D50、Y53、K54、L56、G57、E67、D68、Q69、Y91、R92、Y93、H94及びY96を含むVLドメインとを含み、VH及びVLドメインの番号付けはカバット番号付けシステムにより、該抗体の抗体Fab断片が、表面プラズモン共鳴で測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1ベータR1への結合を阻害する、抗体。
52.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに特異的に結合する抗体であって、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む抗体であって、(a)VHドメインは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VLドメインは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;該抗体の抗体Fab断片のヒトIL-1ベータへの結合が、表面プラズモン共鳴で測定して30nM未満のIC50でIL-1ベータのIL-1べータR1への結合を阻害する、抗体。
53.モノクローナル抗体である、実施態様1から52のいずれか1つの抗体。
54.ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体断片である、実施態様1から53のいずれか1つの抗体。
55.二重特異性である、実施態様1から54のいずれか1つの抗体。
56.Fab断片である、実施態様1から55のいずれか1つの抗体。
57.二重特異性抗体断片である、実施態様1から56のいずれか1つの抗体。
58.多重特異性である、実施態様1から57のいずれか1つの抗体。
59.実施態様1から58のいずれか1つの抗体をコードする、単離された核酸。
60.実施態様59の核酸を含む宿主細胞。
61.実施態様61の核酸を含む発現ベクター。
62.抗体が産生されるように実施態様60の宿主細胞を培養することを含む、ヒトVEGF及びヒトIL-1ベータに結合する抗体を製造する方法。
63.宿主細胞から抗体を回収することを更に含む、実施態様62の方法。
64.実施態様62又は63の方法によって製造される抗体。
65.実施態様1から58のいずれか1つの抗体と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的製剤。
66.医薬としての使用のための、実施態様1から58のいずれか1つの抗体。
67.血管疾患の治療における使用のための、実施態様1から58のいずれか1つの抗体。
68.眼の血管疾患の治療における使用のための、実施態様1から58のいずれか1つの抗体。
69.医薬の製造における、実施態様1から58のいずれか1つの抗体又は実施態様65の薬学的組成物の使用。
70.血管新生を阻害するための医薬の製造における、実施態様1から58のいずれか1つの抗体又は実施態様65の薬学的組成物の使用。
71.血管疾患を有する個体を治療する方法であって、該個体に実施態様1から58のいずれか1つの抗体又は実施態様65の薬学的組成物の有効量を投与することを含む、方法。
72.眼の血管疾患を有する個体を治療する方法であって、該個体に実施態様1から58のいずれか1つの抗体又は実施態様65の薬学的組成物の有効量を投与することを含む、方法。
73.血管新生を阻害するために、個体に実施態様1から58のいずれか1つの抗体又は実施態様65の薬学的組成物の有効量を投与することを含む、個体における血管新生を阻害する方法。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【実施例】
【0220】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提示されるが、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【0221】
実施例1:
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の生成
前述の方法(例えば国際公開第2012/163520号に記載の方法)により、非重複パラトープを含み、VEGF及びIL-1ベータに結合する単一特異性抗体を独立にスクリーニングすることと、その後アミノ酸配列を融合させて、VEGF及びIL-1ベータに結合する二重パラトープVH/VL対にすることによって、二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片を生成した。
【0222】
合成Fab断片の2つの異なるファージディスプレイライブラリーが利用され、第1のファージディスプレイライブラリーでは、Fab断片のCDR-H1、CDR-H3及びCDR-L2領域内の残基が多様化され、第2のファージディスプレイライブラリーでは、Fab断片のCDR-L1、CDR-L3及びCDR-H2領域内の残基が多様化された。各ライブラリーでは、その他の3つのCDR領域は、不変のダミー配列として多様化されずに保たれた。両方のライブラリーで、ファージディスプレイを容易にするために、Fab断片のCH1ドメインはリンカーを介して切断型遺伝子IIIタンパク質に融合された。
【0223】
ファージライブラリーのパニングによって、第1のライブラリーではヒトIL-1ベータに対するバインダーを濃縮し、第2のライブラリーではヒトVEGF-Aに対するバインダーを濃縮した。パニング後、ファージミドベクターの両方の濃縮されたプールについてプラスミドミニプレップを調製した。ミニプレップを制限酵素で消化して、切断型遺伝子IIIタンパク質をコードする領域を切り出し、ライゲーションによって再環状化し、それぞれIL-1ベータバインダー又はVEGF-Aバインダーについて濃縮された可溶性Fab断片をコードする発現ベクターのプールを得た。これらのベクタープールをTG1大腸菌細胞に形質転換し、個々のコロニーを採取して培養し、個々のFabクローンをマイクロタイタープレートで可溶性発現させた。可溶性Fab断片を含む上清を、標準的なELISA法を用いてIL-1ベータ又はVEGF-Aへの結合についてスクリーニングし、特異的なバインダーを生成するTG1クローンをDNAプラスミド調製及び配列決定に供して、それぞれIL-1ベータ又はVEGF-Aのいずれかに特異的に結合するVH及びVL配列の対を得た。
【0224】
(1)IL-1ベータ特異的FabのVH配列の無関係なVH残基52b~65をVEGF-A特異的Fabの選択されたVH残基52b~65で置き換えることにより、VEGF-A特異的パラトープの一部である可能性のあるCDR-H2残基をIL-1ベータバインダー重鎖に置換することと、(2)VEGF-A特異的FabのVL配列中の無関係なVL残基49~57をIL-1ベータ特異的Fabの選択されたVL残基49~57で置き換えることにより、IL-1ベータ特異的パラトープの一部である可能性のあるCDR-L2残基をVEGF-Aバインダー軽鎖に置換することによって、二重特異性抗VEGF/IL-1ベータベータVH及びVL配列の対をin silicoで設計した。
【0225】
実施例2:
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL2.3の発現
得られた二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータVH及びVL配列の設計された対を合成し、CH1及びCカッパドメインをコードする遺伝子配列と共にインフレームで大腸菌発現ベクターにクローニングした。このベクターをTG1大腸菌細胞に形質転換し、二重特異性抗体Fab断片の可溶性発現のために個々のコロニーを培養した。アフィニティークロマトグラフィーによりTG1培養上清から二重特異性抗体を精製し、IL‐1ベータとVEGF‐Aの両方への特異的結合を確認した。
【0226】
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体「1HVL2.3」を選択し、配列番号9の重鎖及び配列番号10の軽鎖によって特徴づけた。
【0227】
更なる分析のために、本発明の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体を、標準的な組換え方法によってHEK293細胞に形質転換し、そしてそれから発現させた。
【0228】
実施例3:
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL2.3の特徴づけ
二重特異性抗体1HVL2.3の結合親和性、親水性及び熱安定性を以下のように評価した。
【0229】
表面プラズモン共鳴(SPR)で評価したVEGF結合反応速度:
抗His捕捉抗体(GEヘルスケア 28995056)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズSセンサーチップC1(GEヘルスケア 29104990)に固定化し、約500共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニング及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)を用いた。ヒトVEGF121-Hisを表面に捕捉し、それぞれ約10及び20RUのリガンド密度を得た。二重特異性抗VEGF/抗IL‐1ベータFab断片の希釈系列(1.2‐100nM、1:3希釈)をそれぞれ90秒間連続的に注入し、解離を30μl/minの流量で3600秒間モニターした(シングルサイクル法(single cycle kinetics)。10mMグリシンpH1.5を60秒間注入することにより、表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、且つ、捕捉されたヒトVEGF121を含まない対照フローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。Biacore評価ソフトウェア内の1:1ラングミュア結合モデルを使用してカーブフィッティングを行った。よりロバストなフィッティングを提供するために、両方のリガンド密度を用いるグローバルフィッティングにMultiple Rmaxオプションを選択した。
【0230】
IL-1b表面プラズモン共鳴(SPR)で評価した結合反応速度:
抗Fab捕捉抗体(GEヘルスケア 28958325)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズSセンサーチップC1(GEヘルスケア 29104990)に固定化し、約500共鳴単位(RU)の表面密度を得た。二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片が表面に捕捉され、約20RUの捕捉レベルが得られた。ヒトIL-1ベータ(PeproTech 200-01B)又はカニクイザルIL-1ベータ(Sino Biological 90010-CNAE)のいずれかの0.74~60nM(1:3希釈)の希釈系列を90秒間注入し、解離を30μl/minの流量で少なくとも600秒間モニターした。10mMグリシンpH2.1をそれぞれ60秒間2回連続して注入することにより、表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、且つ、捕捉された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片を含まない対照フローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。Biacore評価ソフトウェア内の1:1ラングミュア結合モデルを使用してカーブフィッティングを行った。
【0231】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC):
見掛け上の疎水性を、25mMリン酸Na、1.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で平衡化したHIC-Ether-5PW(東ソー)カラムに20μgの二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片を注入することにより決定した。溶出は、0から100%のバッファーB(25mMリン酸Na、pH7.0)の直線勾配で60分以内に実施した。保持時間を、既知の疎水性を有するタンパク質標準と比較した。
【0232】
熱安定性:
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の試料を、20mMヒスチジン/ヒスチジンクロリド、140mM NaCl、pH6.0中に1mg/mLの濃度で調製し、0.4μmのフィルタープレートに通す遠心分離により384ウェルオプティカルプレートに移し、パラフィンオイルで覆った。試料を25℃から80℃まで0.05℃/minの速度で加熱しながら、DynaPro Plate Reader(Wyatt)で動的光散乱法により流体力学的半径を繰り返し測定する。或いは、試料を10μLのマイクロキュベットアレイに移し、25℃から90℃まで0.1℃/minの速度で加熱しながら、266nmレーザーによる励起時の蛍光データと静的光散乱データをOptim1000装置(Avacta社)で記録した。
【0233】
凝集開始温度は、流体力学的半径(DLS)又は散乱光強度(Optim1000)が増加し始めた時の温度と定義される。融解温度は、蛍光強度対波長グラフにおける変曲点と定義される。
【0234】
結果を表1及び2に示す。
【0235】
【0236】
【0237】
実施例4:
二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL2.3の改善
上述のように、二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL2.3は、非常に安定であるが、ナノモル範囲のIL-1ベータへの親和性及び顕著な疎水性を呈する。眼への治療薬の注射を必要とする眼の血管疾患の治療の場合、治療効果の持続性を高め、且つ患者の不便さを最小限にするために、標的抗原に対する親和性が高く、且つ非常に高い濃度の治療薬を提供することが望ましい。したがって、この意図した目的のために、抗体の親和性を高め、且つ疎水性を減少させて、高濃度における等張バッファーへの可溶性を確保することが望まれる。
【0238】
そのため、臨床応用のためには、抗体は、例えばIL-1ベータの結合に関する改善(特にオフレートの改善による)及び疎水性の低減など、更なる改善が必要であった。VH及びVLドメインに異なるアミノ酸置換を導入することにより、数ラウンドの成熟化を行った。成熟化の間、抗体1HVL2.3に由来する候補抗体は、収率、親和性、同時抗原結合、親水性、安定性、粘度及びその他のパラメーターに関する所望の特性に基づいてスクリーニングされ、選択された。
【0239】
改善された候補抗体1HVL5.15、1HVL12.85及びRO7200394を複数の試験候補抗体分子から選択した。これらの改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片のアミノ酸配列は、表3で明らかにされる。
【0240】
【0241】
図2及び3は、生成された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインのアライメントを例示している。VH及びVLドメイン内のアミノ酸位置の番号付けは、カバット番号付けシステムに従っている。簡略化のため、番号付けは図に含まれており、フレームワークとCDRアミノ酸の位置を更に示している。
【0242】
実施例5:
改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の抗原結合反応速度
候補抗体のVEGF及びIL-1ベータへの結合反応速度を、示された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片(表3に示されたようなアミノ酸配列)を使用して、実施例3に記載されているように評価した。比較のために、国際公開第2016/075034号に開示されているような、完全長IgG抗体である先行技術の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体0032の抗原結合反応速度を示す。
【0243】
IL-1ベータの結合反応速度の結果を表4及び表5に示す。
【0244】
【0245】
【0246】
抗体1HVL5.15及び1HVL12.85について、他の種及び関連タンパク質のIL-1ベータに対する結合反応速度を、実施例3に記載したのと同じ実験設定を用いてSPRで評価した。ラットIL-1ベータ、ブタIL-1ベータ、ヒトIL-1アルファ及びヒトIL-1RAに対する結合は観察されなかった。マウス及びウサギのIL1-ベータに対する弱い結合が観察された。
【0247】
VEGF結合反応速度の結果を表6に示す。
【0248】
【0249】
候補抗体のVEGF及びIL-1ベータに対する同時抗原結合を以下のように評価した。
【0250】
抗His捕捉抗体(GEヘルスケア 28995056)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズSセンサーチップC1(GEヘルスケア 29104990)に固定化し、約500共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニング及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)を用いた。ヒトVEGF121-Hisを表面に捕捉し、続いて候補抗体及びIL-1ベータを連続して注入した。10mMグリシンpH1.5を60秒間注入することにより、表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、且つ、捕捉されたヒトVEGF121を含まない対照フローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。
【0251】
全ての改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片、すなわち1HVL5.15、1HVL12.85及びRO7200394について、VEGF及びIL-1ベータへの候補抗体の同時結合が確認された。
図4は、抗VEGF/抗IL-1ベータ1HVL12.85の同時結合を示している。
図5は、抗VEGF/抗IL-1ベータRO7200394の同時結合を示している。
【0252】
完全長IgG先行技術抗体0032(国際公開第2016/075034号)の同時抗原結合も、同じ実験設定を用いて評価された。その結果を
図6に示す。
【0253】
実施例6:
VEGF及びIL-1ベータのそれぞれの受容体への結合の阻害
受容体阻害アッセイ
候補抗体RO7200394(Fab断片)の存在下での、VEGF及びIL-1ベータのそれぞれの受容体、hVEGFR2、IL-1ベータR1への結合の阻害を、以下に記載のように評価した。比較のために、国際公開第2016/075034号に開示されているような、先行技術の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体0032(完全長IgG)の反応速度も評価した。
【0254】
hVEGFR2(R&D Systems 357-KD)及びIL-1bR1(Sino Biological社 10126-H02H)を異なるフローセル上で、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズSセンサーチップCM5(GEヘルスケア 29104988)に固定化し、それぞれ約8000、20000共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニング及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)を用いた。
【0255】
VEGF-受容体結合阻害を評価するために、最終濃度200nMのRO7200394又は400nMの抗体0032を50nMのVEGF121とプレインキュベートした。IL-1ベータ-受容体結合阻害を評価するために、最終濃度200nMのRO7200394又は200nMの抗体0032を50nMのIL-1ベータとプレインキュベートした。試料を、対応する50nMのVEGF121又はIL-1ベータ溶液で希釈(1:2)した。
【0256】
この抗体/リガンド混合物を、流量5μl/minで60秒間、VEGFR2又はIL-1R1表面に注入した。60秒間の解離相の後、VEGFR2表面は5mMのNaOHを60秒間注入することにより再生されたが、IL‐1R1表面は10mMグリシンpH3.0に続いて5mMのNaOHをそれぞれ60秒間注入することにより再生された。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、且つ、ブランク対照フローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。評価のために、注入終了から5秒後の結合応答を取得した。RUで得られた応答は、抗体を含まないリガンドに対応する初期シグナルに対する結合応答(binding response)に変換された。IC50値を、4パラメーターロジスティックモデル(XLfit、ID Business Solutions社)を使用して計算した。
結果を表7及び表8、並びに
図7A(抗体RO7200394存在下でのVEGFR2阻害)、
図7B(抗体0032存在下でのVEGFR2阻害)、
図8A(抗体RO7200394存在下でのIL-1R1阻害)及び
図8B(抗体0032存在下でのIL-1R1阻害)に示す。
【0257】
【0258】
【0259】
本発明の二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片へのIL-1ベータの結合はVEGF/VEGFR2相互作用の阻害を妨げないことが実証される。また、本発明の二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片へのVEGFの結合は、IL-1ベータ/IL-1ベータR1相互作用の阻害を妨げない。
【0260】
VEGF競合ELISA
以下のバッファーを使用した:PBS(1xPBS pH7.4);PBST(0.1%v/vTween-20を補充した1xPBST);PBST 1%BSA(1%BSAを補充したPBST(シグマアルドリッチ、A336のウシ血清アルブミン溶液30%);NaHCO3(pH9.4のNaHCO3溶液、BupH Buffer Packs(ThermoScientific、28382)から作製);2%MPBST(2%(w/v)脱脂粉乳(Carl Roth、T145.3)を補充したPBST)。
【0261】
96ウェルプレート(Maxisorp Nunc‐Immoplates)を、200mM NaHC03(pH9.4)中に最終濃度1μg/mlのrhVEGFR‐1‐Fc(R&D #321‐FL‐050)50μL/ウェルで、室温で1時間コーティングした。
【0262】
一方、異なる濃度の抗体Fab断片をVEGFとプレインキュベートし、次のようにして抗体Fab-VEGFプレミックスを形成した:抗体Fab断片の希釈系列を、抗体Fab断片の溶液(PBST-1%BSA中409.6nM抗体)280μlを丸底96ウェルPSプレートの第1カラムのウェルに添加することによって、調製した。同じプレートのカラム2~12の個々のウェルに140μlのPBST-1%BSAを充填した。その後、抗体溶液140μlを次のカラムに移し、完全に混合して、この希釈した抗体溶液140μlを次のカラムに移すことにより、1:2希釈を行った。これをカラム11まで繰り返す。140μlを超えた量は廃棄して、全てのウェルが140μlを含むようにした。カラム12を対照(ブランク)とした。VEGFとのプレインキュベーションのために、丸底96ウェルPSプレートに、PBST-1%BSA中2nM VEGF121(Humanzyme、HZ-1206、ロット614-01)又は2nM VEGF165(Humanzyme、HZ-1153、ロット716-01)溶液を1ウェル当たり50μlずつ事前充填した。それぞれの抗体Fab断片の希釈系列50μlをVEGF121又はVEGF165にそれぞれ添加し、完全に混合し、室温で1.5時間インキュベートした。
【0263】
rhVEGFR-1-FcをコートしたプレートをPBSTで2回洗浄し、200μlの2%MPBSTで45分間ブロックした。MPBST溶液をPBSTで2回洗い落とした後、抗体Fab-VEGFプレミックス50μlをプレートに加え、室温で1.5時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで2回洗浄した。その後、ビオチン化抗VEGF抗体(R&D、BAF293;PBSTで1:2000希釈)及びSA-HRP(KPL、14-30-00;PBSTで1:2000希釈)を含む溶液50μlを加え、室温で30分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄後、50μlのTMB基質溶液(2成分HRP基質(KPL、34021);室温で使用)を加え、室温で30分間インキュベートした。50μlの1N H2SO4を加え、450nmで吸光度を読み取った。
【0264】
結果を
図9及び
図10に示すが、1HVL2.3よりも1HVL12.85及びRO7200394の方が、VEGF-R1結合阻害の改善を示している。
【0265】
実施例7:
改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の生物物理学的特性(安定性及び疎水性)
候補抗体の示された生物物理学的特性を、示された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片(表3に示されたようなアミノ酸配列)を使用して、実施例3に記載されているように評価した。
【0266】
表9は、分析した抗体の熱安定性及び疎水性を示している。比較のために、国際公開第2016/075034号に開示されているような、完全長IgG抗体である先行技術の抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体0032の熱安定性が含まれている。HICからのクロマトグラムを、二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片については
図11に、先行技術の抗VEGF/抗IL-1ベータIgG抗体0032については
図12に示す。
【0267】
【0268】
実施例8:
改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の生物物理学的特性(力学的粘度)
候補抗体の粘度を、示された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片(表3に図示されたようなアミノ酸配列)を使用して、以下のように評価した。
粘度を、前述のようにラテックスビーズDLS法(latex-bead DLS method)(He F et al.; Anal Biochem. 2010 Apr 1;399(1):141-3)で測定した。簡単に説明すると、遠心濃縮装置、例えばAmicon Ultra-0.5mL遠心フィルター、Ultracel-10K、カタログ番号UFC501096などの遠心濃縮装置を用いて、試料を>200mg/mLに濃縮した(材料の入手可能性に基づく)。
【0269】
約10mg/mlから最大実現可能濃度までの希釈系列を用意し、ポリソーベート20及びビーズ(Nanosphere Size Standards、呼び径:300nm、1%固形分、ThermoFisher カタログ番号3300A)を、それぞれ最終濃度0.02%(PS20)、0.03%(w/w、ビーズ)になるように添加した。
【0270】
これらの試料の少量のアリコートを最大速度で1分間遠心分離した後、タンパク質濃度をUV280吸収により決定した。
【0271】
残りの試料を384ウェルオプティカルプレートに移し、蒸発防止のためパラフィンオイルの層で覆い、示された温度でDLSデータを記録した。ラテックスビーズの見掛けの流体力学的半径のDLSデータから、溶液の粘度をHe Fらの前掲書に記載されているように計算した。測定した最高濃度での粘度を表10に報告する。結果は、
図13(1HVL12.85)及び
図14(RO7200394)にも示されている。
【0272】
【表10】
結果は、本発明の抗体が、注射針通過性のための許容される粘度限界(最大30cP)未満の粘度を含む高濃度で製剤化され得ることを示す。両方の試験で抗体が高い濃縮性を持つことが示されているが、その効果はRO7200394抗体でより顕著である。
【0273】
結果的に、本発明の抗体は、限られた注射量で高いモル用量を提供することができるため、眼適用に非常に適している。このことは、高力価と組み合わされた場合に高いい持続性をもたらし、その結果投与頻度を減少させ、これは、患者側の困難を減少させるために望ましい。
【0274】
実施例9:
改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片の化学的安定性
化学分解試験:
各抗体試料を20mM His/HisCl、140mM NaCl、pH6.0に配合し、3つのアリコートに分割した:1つのアリコートはそれぞれPBSに再緩衝化し、2つのアリコートは元の配合で保存した。PBSアリコートと1つのHis/HisClアリコートを1mg/mlで40℃(His/NaCl)又は37℃(PBS)で2週間(2w)インキュベートし、PBS試料は更に合計4週間(4w)インキュベートした。3番目の対照アリコート試料は-80℃で保存した。インキュベーション終了後、試料の相対活性濃度(Biacore;各バインダーのストレスをかけた両アリコートの活性濃度を、ストレスをかけていない4℃のアリコートに対して正規化)、凝集(SEC)、及び断片化(キャピラリー電気泳動又はSDS-PAGE)について分析し、未処理対照と比較した。
【0275】
ストレス後の結合活性を以下のように評価した。
抗Fab捕捉抗体(GEヘルスケア 28958325)を、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズSセンサーチップCM5(GEヘルスケア 29104988)上に固定化し、4000~6000共鳴単位(RU)の表面密度を得た。ランニング及び希釈バッファーとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)を用いた。2μg/mlの濃度を有する抗体抗VEGF/抗IL-1ベータ抗体1HVL12.85を5μl/minの流量で60秒間注入した。HuVEGF121(インハウス調製)又はhuIL‐1ベータ(Peprotech 200‐01B)をそれぞれ2μg/mlの濃度で60秒間注入し、解離を5μl/minの流量で60秒間モニターした。10mMグリシンpH2.1をそれぞれ60秒間2回連続して注入することにより、表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、且つ、ブランク対照フローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。評価のために、注入終了から5秒後の結合応答を取得した。結合シグナルを正規化するために、VEGF又はIL-1ベータ結合応答を抗Fab応答で除した。相対活性濃度は、各温度ストレス試料の基準を対応する非ストレス試料にすることにより計算した。
【0276】
結果を表11及び表12に示す。
【0277】
【0278】
【0279】
実施例10:
改善された二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL5.15の構造解析
抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL5.15の構造解析を、以下の通りX線結晶解析により行った。
【0280】
三元複合体IL1ベータ‐VEGF121‐Fab 1HVL5.15の複合体形成と結晶化
複合体形成のために、1:1.1モル比で、1HVL5.15Fab断片とヒトIL1ベータ(Peprotech)を混合した。4℃で一晩16時間インキュベートした後、ヒトVEGF121(インハウス調製)を加えて、10mg/mlに濃縮した三元複合体を得た。初期結晶化試験は、21℃のシッティングドロップ蒸気拡散設定で行った。最初の微結晶は、1.4Mマロン酸ナトリウムから4日以内に出現した。その後の播種実験では、0.1Mカコジル酸ナトリウムpH5.5、0.1M酢酸カルシウム、12%PEG8000から結晶が得られた。これらの結晶は、更なる最適化工程なしに、スクリーニングプレートから直接採取した。
【0281】
データ収集と構造決定
データ収集のために、結晶を、抗凍結剤としてエチレングリコールを15%添加した沈殿剤溶液中で100Kでフラッシュ冷却した。回折データは、Swiss Light Source(スイス、ビリゲン)のビームラインX10SAでPILATUS 6M検出器を用いて、波長1.0000Åで収集した。データは、XDSで処理し(Kabsch, W. Acta Cryst. D66, 133-144 (2010))、SADABS(BRUKER)でスケーリングした。結晶は、空間群C2221に属し、セル軸はa=177.97Å、b=286.70Å、c=105.39Å、α=?=90°で、2.97Å分解能まで回折した。構造は、関連するインハウス構造であるFab断片、IL1β、及びVEGFのpdb entry 1MKKの座標を探索モデルとして使用して、PHASERでの分子置換により決定した(McCoy, A.J. et al. J. Appl. Cryst. 40, 658-674 (2007))。CCP4スイート(Collaborative Computational Project, Number 4 Acta Cryst. D50, 760-763 (1994))及びBuster(Bricogne, G., et al. (2011). Buster バージョン2.9.5 英国、ケンブリッジ:Global Phasing社)のプログラムを使用して、構造の精密化を行った。差電子密度(difference electron density)を用いるタンパク質の手動再構築を、COOTで行った(Emsley, P., et al. Acta Cryst D66, 486-501 (2010))。データ収集及び精密化統計値を表13に要約する。グラフィック表現は全て、PYMOL(DeLano Scientific, Palo Alto, CA, 2002)を用いて作成した。CCP4スイート(Collaborative Computational Project, Number4 Acta Cryst.D50,760-763(1994))のプログラムCONTACTで構造を解析し、最大4Åの接触距離を用いてパラトープ残基とエピトープ残基を特定した。
【0282】
【0283】
それぞれの抗原、VEGF及びIL-1ベータに接触しているアミノ酸残基は、複合体中の二重特異性抗VEGF/抗IL-1ベータFab断片1HVL5.15の結晶構造から特定された。VHドメイン及びVLドメイン内のパラトープアミノ酸残基の位置を
図2と
図3に示す。
【0284】
軽鎖CDR1、CDR3及び重鎖CDR2からのアミノ酸は、VEGFパラトープに寄与する。VEGFパラトープは、軽鎖CDR2、重鎖CDR1及び重鎖CDR3からのアミノ酸を含まない。IL-1ベータパラトープは、軽鎖CDR2からのアミノ酸を含まない。
【0285】
抗原結合に寄与すると特定されたアミノ酸残基を表14(可変重鎖ドメインアミノ酸残基の場合)及び表15(可変軽鎖ドメインアミノ酸残基の場合)に明らかにする。アミノ酸位置は、カバット番号付けシステムに従って番号付けされている(
図2及び
図3では同じ番号付けを使用)。抗原結合に関与するアミノ酸位置は、VH又はVLドメインのカバット位置によって特定される(
図2と3の番号付けも参照)。
【0286】
【0287】
【配列表】