(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】スピーカユニット、及びスピーカ湾曲振動板
(51)【国際特許分類】
H04R 7/12 20060101AFI20220802BHJP
H04R 9/06 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H04R7/12 Z
H04R9/06 Z
(21)【出願番号】P 2021120071
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2022-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514093028
【氏名又は名称】株式会社サウンドファン
(74)【代理人】
【識別番号】100139239
【氏名又は名称】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】田中宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木政博
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特許第6586702(JP,B1)
【文献】特許第5668233(JP,B1)
【文献】特開2016-015702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーン状をした第一の振動板と、
湾曲した振動面を形成するシート状をした第二の振動板と、
前記第一の振動板と前記第二の振動板とを共に駆動するドライバユニットと、
を少なくとも備え、
前記ドライバユニットは、前記第一の振動板の径小側と前記第二の振動板の一端側とに接続され、
前記第二の振動板は、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっている、
ことを特徴とするスピーカユニット。
【請求項2】
前記第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が変化することにより、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項3】
前記第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の厚みが変化することにより、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の硬さが変化することにより、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の重量が変化することにより、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記第二の振動板は、所定の領域もしくは所定の領域を除く他の領域にシート材を貼付する手段が講じられていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載のスピーカユニット。
【請求項7】
前記第二の振動板は、所定の領域もしくは所定の領域を除く他の領域にコーティング剤を塗布する手段が講じられていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載のスピーカユニット。
【請求項8】
前記所定の領域は、第二の振動板の一端側から他端側へ向かうにしたがって幅方向の寸法が小さくなる先細り形状をした他の領域との境界を有することを特徴とする請求項6又は7の何れかに記載のスピーカユニット。
【請求項9】
前記第二の振動板は、前記ドライバユニットのボイスコイルボビンの先端に取り付けられた板状をしたブレード片を介して前記ドライバユニットに接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のスピーカユニット。
【請求項10】
前記請求項1乃至9に記載のスピーカユニットの何れかを筐体に装着してなることを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲振動板を用いたスピーカユニットと、これを用いたスピーカに係り、詳しくは、難聴者が補聴器をつけることなく健聴者と共に聞き取ることができ、かつ、再生周波数帯域が拡大して音質が改善された高性能、且つ、高品質な湾曲振動板スピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢が原因とする老人性難聴や、外耳や中耳、内耳、蝸牛神経等に障害を有する器質性難聴、ストレスを要因とした機能性難聴、といった聴覚障害者が増えてきている。難聴の場合、音が聞こえなくなるだけでなく、聞こえた音であっても鮮明に聞き分けることが難しくなる。そのため、会話の内容がよくわかっていないのに返事をしてしまって相手に誤解を与えたり、途中で何度も聞き返すことで会話が弾まなくなってしまったりすることがある。
【0003】
また、難聴が原因でスムーズなコミュニケーションができなくなり、知らず知らずのうちに話をするのが億劫になって人と会う機会が減ったり、外出しないで家に引きこもりがちになったりという現象が起き、社会からの孤立・疎外という問題が起きるおそれがあると言われている。
【0004】
このような難聴の不便さを軽減する手段として、一般的に補聴器の使用がある。また、テレビを視聴する場合には、テレビのイヤホンジャックに接続して音声をFM電波で飛ばし、これを手持ちのFMラジオで受信してテレビの音声を取得するFMトランスミッタがある。
【0005】
ところが補聴器は、「わずらわしい」「装着が恥ずかしい」といった理由であまり好んで使われておらず、仕方なく使っている場合が多い。また、補聴器には雑音も拾ってしまうものも少なくなく、却ってストレスが大きいものとなってしまう場合がある。
一方、FMトランスミッタを用いる場合、FMトランスミッタを準備し、テレビを視聴するたびに設置しなければならないといった煩わしさがある。また、FMトランスミッタをイヤホンジャックに接続することで音声の出力先が切り替り、難聴者と健聴者とが共に不自由なくテレビを視聴することができないという問題がある。
【0006】
そこで、全ての難聴者ではないが、多くの難聴者が聞き取ることができる音声を発生するスピーカとして、中空構造の筐体と、筐体に収容したドライブユニットと、筐体の表面に配された湾曲振動板とを具備し、ドライブユニットの振動を湾曲振動板の端縁部へ伝えて放音するようにしたスピーカが本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1,2を参照)。
【0007】
このような湾曲振動板を用いたスピーカ(以下、単に「湾曲振動板スピーカ」という。)は、難聴者が補聴器をつけることなく聞き取ることができると共に、健聴者も違和感なく聞き取ることができるものである。
しかも、特許文献1,2に記載された発明に係る湾曲振動板スピーカは、その後の実証実験において、近くは勿論のこと、遠くでも明瞭に聞き取れることが確認できている。すなわち、音量を上げ過ぎたときのような音割れがなく、かつ、近くでもうるさ過ぎることなく聞き取ることがきるものとなっている。
【0008】
この湾曲振動板スピーカは、基本的性能が実用に耐え得るレベルにあることが確認されているが、再生周波数帯域の拡大、とりわけ400~500Hz以下の低音帯域(以下、「低域」という。)において、再生性能が向上した音質改善が求められている。
【0009】
ここで、湾曲振動板スピーカは、一般的に湾曲振動板をムービングコイル、いわゆるボイスコイルにて駆動して発音せしめる手法である。この手法に於いて低域側の再生能力を増すには、能力に見合ったボイスコイル振幅(移動)量を増し、それに見合った振動板及び構造、並びにパワーアップが必要である。
【0010】
しかしながら、低域側の再生能力を増すために強引にボイスコイルの振幅量を増すと、湾曲振動板自体が異常音を発する。そのため、従来型スピーカと同等の低域再生を行うには、湾曲振動板の長さをより長くする等面積を拡大しなければならず、その寸法は実用的な寸法とは言えないものとなる。
【0011】
そこで、低域側の再生能力を増すため、湾曲振動板スピーカユニットが装着された筐体に、コーン状振動板を備えるダイナミック型スピーカユニットをさらに装着し、両方のスピーカユニットを駆動してそれぞれ放音することが考えられる。これにより、低域側が出にくいという湾曲振動板の音質がコーン状振動板による放音によって補正され、湾曲振動板とコーン状振動板を用いた複合型のフルレンジスピーカとすることができる。
【0012】
ところが、このような複合型のスピーカシステムでは、スピーカユニットを装着する筐体を共有することができるものの、再生周波数帯域に応じた二つのスピーカユニット(湾曲振動板スピーカユニットとダイナミック型スピーカユニット)を必要とするため、コスト高になるものであった。
【0013】
また、二つのスピーカから放音された好ましい音圧感を確保するため、湾曲振動板とコーン状振動板の放音方向が同じとなるように、筐体に対してそれぞれのスピーカユニットを装着しようとすると、より大きな設置面積を必要とし、筐体が巨大化したものとなってしまう。一方、設置面積を考慮して、湾曲振動板とコーン状振動板の放音方向を異なるものとすると、何れかのスピーカにおいて十分な音圧感が得られないものとなってしまう。
【0014】
そのため本出願人は、コーン状をした第一の振動板と、湾曲したシート状の第二の振動板と、これら第一の振動板と第二の振動板とを共に駆動するドライバユニットとを備え、ドライバユニットが、第一の振動板の径小側と第二の振動板の一端側とに共に接続されたスピーカユニットと、このスピーカユニットを筐体に装着してなるスピーカを提案している(特許文献3を参照)。
【0015】
本出願人により提案されたスピーカユニットは、ドライバユニットが一つで済むことで製造コストと重量が低減されると共に、小さくまとめてコンパクト化されたものとすることができる。また、このスピーカユニットを用いたスピーカは、コーン状振動板を備えるダイナミック型の第一のスピーカと、湾曲振動板を備える第二のスピーカとが組み合わされることでより広帯域の音の再生が可能なものとなっている。
【0016】
ゆえに、第二のスピーカ(湾曲振動板スピーカ)の及ばない低域側の再生帯域を、第一のスピーカ(ダイナミック型スピーカ)によって補うものとし、より広帯域の音の再生が可能な、難聴者に極めて有効なスピーカと、健聴者向けのスピーカとを備えたハイブリッド型のスピーカシステムとすることができる。
【0017】
このように本出願人が提案したハイブリッド型スピーカシステムは、難聴者並びに健聴者に対して不足の無い湾曲振動板スピーカシステムと言えるものであるが、コンパクト化され、より広帯域の音の再生が可能になると、さらに音質が改善された高性能、且つ、高品質な湾曲振動板スピーカシステムの提案が求められている。
【0018】
なお、圧電物質を平面振動板の駆動部に用いた圧電型スピーカにおいて、広帯域の音の再生が可能となるように、湾曲した振動面を形成する振動板を二枚(一対)備えるスピーカが提案されている(特許文献4を参照)。
しかしながら、対となる二つの振動板(振動面)の大きさや形状が互いに同じであると、共振帯域が同じ音声が近接した位置で異なる振動面から再生されることになり、互いに発せられる音声が相互に共鳴し、又は歪んでしまい、難聴者・健聴者の聞こえに違和感のある不明瞭な音声となってしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特許第5668233号公報
【文献】特開2016-140060号公報
【文献】特許第6586702号公報
【文献】実開昭59-59096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、湾曲振動板を用いたハイブリッド型のスピーカシステムにおいて、複数の帯域の音の再生を可能とすることで再生周波数帯域が拡大して音質が改善された、高性能、且つ、高品質な湾曲振動板スピーカシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るスピーカユニットは、コーン状をした第一の振動板と、 湾曲した振動面を形成するシート状をした第二の振動板と、第一の振動板と第二の振動板とを共に駆動するドライバユニットとを少なくとも備え、ドライバユニットは、第一の振動板の径小側と第二の振動板の一端側とに接続され、第二の振動板は、共振特性が相違する複数の領域を有していることを特徴とする。
【0022】
すなわち、第二の振動板は、一枚の振動板上において共振帯域が異なる複数の湾曲した振動面が設けられたものとなっている。
共振特性が相違するこれらの領域は、振動板における一端側から湾曲方向に沿って対向する他端側へ向かう長さ方向に配されていると望ましい。
【0023】
この第二の振動板は、たとえば、一端側から湾曲方向に沿って対向する他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が変化するよう曲げられることにより、共振特性が相違する複数の領域を有しているものとすることができる。
具体的には、一端側の湾曲振動面の曲率を小さくし、他端側の湾曲振動面の曲率を大きくした、二つの領域が組み合わされたものとする。
【0024】
このように、一端側の湾曲振動面の曲率を小さくすることで、共振帯域を下げた音を再生し、一端側に比して他端側の湾曲振動面の曲率を大きくすることで、共振帯域を上げた音を再生させるものとすることができる。
【0025】
また、第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の厚みが変化する形体とすることにより、共振特性が相違する複数の領域を有しているものとすることができる。
すなわち、第二の振動板は、一枚の湾曲振動板上において厚みが異なる領域が設けられるよう所定の手段が講じられたものとなっている。
【0026】
ここで所定の手段とは、たとえば、所定の領域もしくは所定の領域を除く他の領域の何れか一方に、シート材を貼付したり、コーティング剤を塗布したりすることをいう。
ゆえに、このような所定の手段を講じることで、たとえば、振動面における所定の領域の厚みを大きく(厚く)し、他の領域の厚みを所定の領域に比して小さく(薄く)した、二つの領域が組み合わされた振動板とすることができる。
【0027】
このように、振動面における所定の領域の厚みを大きくすることで、共振帯域を下げた音を再生し、所定の領域を除いた他の領域の厚みを小さくすることで、共振帯域を上げた音を再生させるものとすることができる。
【0028】
また、第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の硬さが変化する形体とすることにより、共振特性が相違する複数の領域を有しているものとなっているものとすることができる。
すなわち、第二の振動板は、一枚の湾曲振動板上において硬さが異なる領域が設けられるように所定の手段が講じられたものとなっている。
【0029】
具体的には、上述した所定の手段を講じることで、湾曲振動板における所定の領域を硬くし、他の領域を所定の領域に比して柔らかくした、二つの領域が組み合わされたものとすることができる。
【0030】
このように、湾曲振動面における所定の領域を硬くすることで、共振帯域を上げた音を再生し、所定の領域を除いた他の領域を柔らかくすることで、共振帯域を下げた音を再生させるものとすることができる。
【0031】
また、第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の重量が変化する形体とすることにより、共振特性が相違する複数の領域を有しているものとなっているものとすることができる。
すなわち、第二の振動板は、一枚の湾曲振動板上において重さが異なる領域が設けられるように所定の手段が講じられたものとなっている。
【0032】
具体的には、上述した所定の手段を講じることで、湾曲振動板における所定の領域の重量を大きく(重く)し、所定の領域を除く他の領域の重量を小さく(軽く)した、二つの領域が組み合わされたものとすることができる。
【0033】
このように、湾曲振動面における所定の領域の重量を大きくすることで、共振帯域を下げた音を再生し、所定の領域を除いた他の領域の重量を小さくすることで、共振帯域を上げた音を再生させるものとすることができる。
【0034】
また、本発明に係るスピーカユニットにおいて、第二の振動板における所定の領域は、第二の振動板の一端側から他端側へ向かうにしたがって幅方向の寸法が小さくなる先細り形状をした他の領域との境界を有するものとすると望ましい。
すなわち、所定の領域と他の領域との境界がローマ文字の「V」字状となるように設けられたものとなっている。
【0035】
このように、境界部分の形状がローマ文字の「V」字状となるように所定の領域と他の領域とを設けることで、第二の振動板の一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において共振領域が重なるようにし、相違する複数の共振特性の音が馴染んで再生されるものとすることができる。
【0036】
さらに、本発明に係るスピーカユニットにおいて、第二の振動板は、ドライバユニットのボイスコイルボビンの先端に取り付けられた板状をしたブレード片を介してドライバユニットに接続されているものとすることができる。
このブレード片は、たとえば、ボイスコイルボビンの先端に切込みを設けるなどして直接取り付けるものとしても良いし、ボイスコイルボビンの先端にセンターキャップを取り付け、このセンターキャップに対して取り付けられるものとしても良い。
【0037】
この際、ブレード片は、センターキャップと別体でも良いが、センターキャップと一体とすることが望ましい。すなわち、ブレード片を既存のセンターキャップへ取り付けるものとしても良いが、そうするとボイスコイル先端へのセンターキャップの取り付けと、センターキャップへのブレード片の取り付けといった二つの作業を要することになる。
ところが、ブレード片とセンターキャップとを予め一体としておけば、ボイスコイル先端へのセンターキャップの取り付ける一つの作業によって効率良くブレード片を取り付けることができる。しかも、ブレード片とセンターキャップを一体とすることで、ボイスコイルの振動によってブレード片がセンターキャップから剥がれ落ちてしまうといったおそれも回避することができる。
【0038】
そして、本発明に係るスピーカは、上述したスピーカユニットの何れかを筐体に装着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明のスピーカユニットは、コーン状をした第一の振動板と、 湾曲した振動面を形成するシート状をした第二の振動板を備え、第二の振動板は、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっている。ゆえに、一枚の湾曲振動板において、一方の領域と他方の領域から異なる共振帯域の音声を再生させることで、幅広い(拡大した)再生周波数帯域が得られ、音質の改善を図ることができる。
【0040】
また、本発明のスピーカは、上述した本発明のスピーカユニットを筐体に装着(収容)することで、コーン状振動板を備えるダイナミック型の第一のスピーカと、一つの湾曲振動板を分けて形成した第一の湾曲振動面(一方の領域)を備える第二のスピーカ及び第二の湾曲振動面(他方の領域)を備える第三のスピーカとが組み合わされたハイブリッド型スピーカシステムとなっている。ゆえに、第一のスピーカ(ダイナミック型スピーカ)によって、第二のスピーカ及び第三のスピーカ(共に、湾曲振動板スピーカ)の及ばない低域側の再生帯域を補うと共に、第二のスピーカ及び第三のスピーカの各湾曲振動面(領域)で再生される共振帯域が異なる音声を組み合わせることで、再生周波数帯域が拡大して音質が改善された、難聴者に極めて有効なスピーカと健聴者向けのスピーカとを備えたスピーカシステムとすることができる。
【0041】
したがって、湾曲振動板を用いた複合型のスピーカシステムにおいて、複数の帯域の音の再生を可能とすることで再生周波数帯域が拡大して音質が改善されると共に、コストが低減し、さらに、筐体が巨大化することなく好ましい音圧感が確保された、より一層好ましい高性能、且つ、高品質な湾曲振動板スピーカシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係るスピーカユニットを示す正面斜視図である。
【
図2】本発明に係るスピーカユニットの構造を説明する分解図である。
【
図3】本発明に係るスピーカユニットに用いる湾曲振動板を説明する正面図である。
【
図4】本発明に係るスピーカユニットに用いる湾曲振動板の構造を説明する側面図である。
【
図5】本発明に係るスピーカユニットに用いるドライバユニットを構成するボイスコイルを説明する正面斜視図である。
【
図6】本発明に係るスピーカユニットに用いるドライバユニットを構成する磁気回路を説明する、(A)分解斜視図、(B)組み立て完成斜視図である。
【
図7】本発明に係るスピーカユニットにおいて、湾曲振動板を取り付ける前の状態を示す正面斜視図である。
【
図8】本発明に係るスピーカユニットを筐体に装着したスピーカを示す正面斜視図である。
【
図10】
図8に示すスピーカにおいて、ドライバユニットを除いた部分の正面中央縦断面である。
【
図11】
図8に示す第一のスピーカの構造を説明する分解図である。
【
図12】本発明に係るスピーカユニットに用いる他の湾曲振動板を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るスピーカユニットと、このスピーカユニットを用いたハイブリッド型スピーカシステムの実施の形態について、一例として、一枚の振動板上において共振帯域が異なる複数の湾曲した振動面が設けられた構成について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0045】
本実施の形態に係る第一のスピーカユニット10は、
図1及び
図2に示すように、コーン状をした第一の振動板(以下、「コーン状振動板」という。)1と、湾曲したシート状の第二の振動板(以下、「湾曲振動板」という。)2と、これらコーン状振動板1と湾曲振動板2を共に駆動するドライバユニット4と、湾曲振動板2の一端側に取り付けてドライバユニット4に接続する板状をしたブレード片5とを少なくとも備える。
【0046】
コーン状振動板1は、すり鉢状をしたシート状部材であって、径小側1aがドライバユニット4に接続されると共に、径大側1bがコーン支持枠9に取り付けられるものとなっている。このコーン状振動板1は、スピーカとする際、後述する筐体50にコーン支持枠9を取り付けるものであり、コーン状振動板1の径大側1bは、コーン支持枠9を介して筐体50に装着されることで、スピーカを構成するものとなる。
【0047】
湾曲振動板2は、所望の曲率で湾曲する複数の領域(湾曲した振動面)を有するように予め成形されたものとなっている。
また、湾曲振動板2は、弾性的に曲げて湾曲する振動面を形成することが可能な柔軟性を有するシート状部材であって、所望の曲率を維持して複数の領域を有するように加工できるものであっても良い。
【0048】
すなわち、湾曲振動板2は、一端側2aから湾曲方向に沿って対向する他端側2bへ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が変化することにより、それぞれの曲率で構成される振動面から共振帯域の異なる音声を再生させるものとなっている。
【0049】
湾曲振動板2の材料としては、カーボン紙などの紙、ポリイミドやポリエステルなどの可撓性を有するプラスチック、バルサ材などの木材、アルミやベリリウム、ボロンなどの金属を用いることができる。
【0050】
また、湾曲振動板2の材料としては、たとえば、発泡シート材としても良い。具体的には、積水化学工業社の「ソフトロンS」と称される、ポリエチレンに電子線を照射して、5倍から50倍まで加熱発泡させた、厚さ1mm程度のシート状高発泡体とすることができる。
【0051】
湾曲振動板2は、
図3に示すように、ドライバユニット4に接続される一端側2aへ向かうにしたがって途中から幅方向の寸法が、徐々に小さく(狭く)なる形状をしたものとなっている。
ここで幅方向とは、一端側2aから湾曲方向に沿って対向する他端側2bへ向かう湾曲した振動面の長さ方向と直交する方向をいい、幅方向の寸法は、長さ方向に沿う両側縁部間の距離(長さ)をいう。
【0052】
図3において、湾曲振動板2は、幅方向の形状が、他端側2bから一端側2aへ向かう途中で徐々に小さく(狭く)なるものとして示され、他端側2bから変わらない幅方向の寸法w1より一端側2aの幅方向の寸法w2が小さくなっている(w1>w2)。
【0053】
ゆえに、湾曲振動板2における一端側2aの形状は、コーン状振動板1のすり鉢形状に適合した略同形となっており、コーン状振動板1の径小側1aが接続された同じドライバユニット4に湾曲振動板2の一端側2aをそれぞれ接続しても、コーン状振動板1と湾曲振動板2とは互いに接触せず干渉しないようになっている。
【0054】
また、湾曲振動板2は、
図4に示すように、一端側2aから他端側2bへ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が変化するものとなっている。
すなわち、湾曲振動板2は、複数の曲率を組み合わせた曲げ方をしたものとなっている。
【0055】
図4において、湾曲振動板2は、一端側2aに位置する領域での振動面(以下、「第一の湾曲振動面」という。)21と、他端側2bに位置する領域での振動面(以下、「第二の湾曲振動面」という。)22に分けられ、第一の湾曲振動面21が有する曲率と、第二の湾曲振動面22が有する曲率が組み合わされた曲げ方をしたものとして示されている。
【0056】
具体的には、たとえば、第一の湾曲振動面21における曲率半径R1が51.40mmであり、第二の湾曲振動面22における曲率半径R2が83.00mmである場合、第一の湾曲振動面21の曲率の方が第二の湾曲振動面22曲率より大きく、湾曲振動板2は、一端側2aから他端側2bへ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が小さく(緩く)変化するものとなっている。
【0057】
ドライバユニット4は、入力(通電)された電気信号(音声信号)に応じてコーン振動板1とブレード片5とを共に振動させるアクチュエータである。
ここで、湾曲振動板2がドライバユニット4によって駆動される方向は、湾曲振動板2の表面上での拡がり方向、すなわち、湾曲振動板2の一端側2aから対向する他端側2b(もしくは他端側2bから対向する一端側2a)へ向かうにしたがって振動面が拡がる湾曲方向をいう。
【0058】
このドライバユニット4としては、たとえば、ムービングコイル方式もしくはムービングマグネット方式の電磁式アクチュエータを挙げることができる。これらのドライバユニット4は、コイルの占積率が高いゆえ、磁気効率が高いものとなっている。ゆえに、音量が高く鮮明な放音が期待できる。
【0059】
ムービングコイル方式のアクチュエータは、磁気回路が構成する磁気ギャップ中にボイスコイルを挿入配置し、このボイスコイルに電気信号等を印加することで印加信号に伴った振動を起し、ボイスコイルと接続された振動板に振動を伝達して駆動するものとなっている。すなわち、ボイスコイルの一端は磁気回路(磁界)の中に収まっており、他端は振動板に接続されていることから、入力された電気信号がボイスコイルを動かし、その動きが振動板に伝わって音響エネルギー(音)に変換されるものとなる。
【0060】
本実施の形態においてドライバユニット4は、
図2に示すように、ボイスコイル41の一端が磁気回路42の磁気ギャップ中に挿入され、電気信号を印加することでボイスコイル41を駆動するムービングコイル方式のアクチュエータとして説明する。
なお、ドライバユニット4に入力される電気信号は、たとえば、テレビやラジオ、オーディオプレイヤー、パーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス、等より出力した音声信号を挙げることができる。
【0061】
ボイスコイル41は、
図5に示すように、円筒状をしたコイルボビン411の外周において、高さ(長さ)方向の一端側に寄せて所望径のコイル線材412を所望のターン数にて巻き付けることにより構成される。
【0062】
一方、磁気回路42は、
図6に示すように、ボイスコイル41を駆動するのに対応した形状になっており、最も多用されている一般的な構造は、リング形状のフェライトマグネット421と、良好な磁性材たる鉄材からなる円板の中央部に所定寸法直径の穴424aを設けたプレート424と、同じく鉄材からなる円板の中央部に円柱状の凸部(以下、「ポール」と記す)423を設けたヨーク422等の磁気回路部品で構成される。
【0063】
磁気ギャップ43は、円筒状をしたフェライトマグネット421の上面にプレート424が配置装着されると共に、フェライトマグネット421の下面に、円柱状をしたポール423を備えるヨーク422の円板部が配置装着されることで形成される。すなわち、ポール423とプレート424は、ポール423の外径及びプレート穴424aの内径が芯合わせして装着されるため、ポール423の外面とプレート424中央部の穴424aの内面との間に、所定幅寸法を有したリング状の隙間、即ちギャップ43が構成される。
【0064】
また、磁気ギャップ43の奥行き方向の寸法は、プレート424の厚さ寸法にて決定される。ゆえに、フェライトマグネット421が有する磁気が、ヨーク422及びプレート424によってギャップ43に導かれ、収束されるため、該ギャップ43に磁束が発生し、磁気ギャップが構成されることとなる。そして、このリング状磁気ギャップ43の中心にボイスコイル41が配置される。
【0065】
したがって、
図2に示すように、コーン状振動板1は、径小側1aの中心部に設けた所定寸法の穴(以下、「ネック部」と記す。)内にボイスコイル41を挿入し、ネック部とコイルボビン411の外周部の接触部分に接着剤を塗布することで、ドライバユニット4に接続固定される。
【0066】
ブレード片5は、湾曲振動板2をドライバユニット4に効率良く接続するために用いるものであり、コーン状振動板1の径小側1aから径大側1bへ向かって突出するように、ドライバユニット4のボイスコイル41の先端に取り付けられる。
すなわち、湾曲振動板2の一端側2aは、ブレード片5を介してドライバユニット4に接続されるものとなっている
【0067】
このブレード片5は、ドライバユニット4に接続される基端側から先端側まで全体的に一枚の平片で構成されており、基端側がドライバユニット4に対して略垂直であり、先端側へ行くに従って湾曲振動板2の曲率に合わせて湾曲又は傾斜しているものとすると望ましい。
【0068】
つまり、湾曲振動板2のブレード片5への取り付け作業は、ブレード片5が先端側へ行くに従って湾曲振動板の曲率に合わせて湾曲(傾斜)していると行い易くなる。
しかも、ブレード片5が先端側へ行くに従って湾曲(傾斜)していると、ドライバユニット4による駆動時に、湾曲振動板2にストレスを与えるおそれがなく円滑に駆動させることができる。
【0069】
図1及び
図2において、一端側2aに位置する曲率が大きい第一の湾曲振動面21と、第一の湾曲振動面21に比して曲率が小さい第二の湾曲振動面22とを組み合わせた、共振特性が相違する二つの領域を有する湾曲振動板2を備える第一のスピーカユニット10が示されている。
【0070】
本実施の形態における第一のスピーカユニット10では、湾曲振動板2の一端側2aをドライバユニット4へ接続する場合、ボイスコイル41の先端に取り付けたセンターキャップ6と一体となっているブレード片5へ取り付けることで、湾曲振動板2とドライバユニット4(ボイスコイル41)とを接続することができる。
【0071】
すなわち、ブレード片5の一面側もしくは湾曲振動板2の一面側に接着剤を塗布した後、湾曲振動板2の一端側2aの一面をブレード片5の一面に重ねるように配することで、
図1に示すような第一のスピーカユニット10とすることができる。
【0072】
この手段は、ボイスコイル41の先端に切り込みを設け、湾曲振動板2の一端側2aを切り込みに挿入する従来の手段に比して、湾曲振動板2とドライバユニット4(ボイスコイル41)とを共に確実に接続することができる。
【0073】
図7において、ブレード片5は、センターキャップ6と一体となっており、先端側へ行くに従って湾曲振動板2の曲率に合わせて下方に湾曲している平片を備えるものとして示されている。
【0074】
なお、センターキャップ(ダストキャップ)6は、ボイスコイル41内に埃が入らないように取り付けられる部材であって、コーン紙と同じ材料を用いて音色の統一感を高めたり、金属系の材料を用いてドーム型ツイータの役割を持たせたりすることができる。
【0075】
このように構成された第一のスピーカユニット10では、コーン振動板1の径小側1aと、ブレード片5を介して取り付けられる湾曲振動板2の一端側2a端面とが、ドライバユニット4(ボイスコイル41)に共に接続されたものとなる。すなわち、コーン振動板1の径小側1aが直接ドライバユニット4(ボイスコイル41)に接続されると共に、湾曲振動板2の一端側2aがブレード片5を介して間接的にドライバユニット4(ボイスコイル41)に接続されたものとなっている。
【0076】
ゆえに、ドライバユニット4に電気信号等を印加することで、ボイスコイル41が印加信号に伴った振動を起し、このボイスコイル41に接続されたコーン振動板1と湾曲振動板2における第一の湾曲振動面21及び第二の湾曲振動面22とに振動を伝達して共に駆動することができる。
【0077】
詳しくは、ボイスコイル41の一端(基端部分)は磁気回路(磁界)42の中に収まっており、他端(先端部分)はコーン振動板1及びブレード片5を介して湾曲振動板2に接続されていることから、入力された電気信号がボイスコイル41を動かし、その動きがコーン振動板1と湾曲振動板2とに伝わって、音響エネルギー(音)に変換されるものとなる。
しかも、湾曲振動板2における第一の湾曲振動面21と第二の湾曲振動面22とは、曲率が互いに相違することから、それぞれの湾曲振動面で再生される共振帯域が異なるものとなっている。
【0078】
また、本実施の形態における第一のスピーカユニット10は、コーン振動板1の径小側1aと、湾曲振動板2の一端側2aとが、同じドライバユニット4に接続されることで、コーン振動板1を駆動するドライバユニット4と、湾曲振動板2における第一の湾曲振動面21及び第二の湾曲振動面22を駆動するドライバユニット4とが効率良く共有され、製造コストと重量が低減されると共に、小さくまとめてコンパクト化されたものとなっている。
【0079】
しかも、本実施の形態における第一のスピーカユニット10は、湾曲振動板2とドライバユニット4とを、ブレード片5を介して簡易にかつ確実に接続することができるものとなっているので、効率良く量産化することができるものとなっている。
【0080】
このように構成された第一のスピーカユニット10は、さらに、コーン振動板1の径大側1bと、湾曲振動板2の他端側2bを筐体50に固定することで、
図8及び
図9に示す、スピーカ100を構成するものとなっている。
【0081】
筐体50は、
図10及び
図11に示すように、支持枠51と、この支持枠51に連設された支持面52と、支持面52の終端部に設けられた固定手段54と、支持面52上にそれぞれ配された柔軟な弾性支持部材56と、一対の側板58,58とを含むことにより構成されている。
【0082】
支持枠51は、コーン状振動板1の径大側1bが露呈する大きさの開口を有する平枠状をした部材であって、コーン振動板1の径大側1bが接続されたコーン支持枠9を開口周縁に取り付けることで、コーン振動板1の径大側1bが支持枠51によって筐体50に接続されたものとなっている。
【0083】
支持面52は、湾曲振動板2における第一の湾曲振動面21及び第二の湾曲振動面22の湾曲と等しい曲面部を有する部位であって、湾曲振動板2の背面側において、曲面部が湾曲振動板2の背面と接することなく位置するものとなっている。この支持面52は、湾曲振動板2が前面側からの外力によって変形しないように補助するものとして機能する。
【0084】
固定手段54は、湾曲振動板2の他端側2bを筐体50の一端側に取り付けるものであって、たとえば、幅方向に沿って設けられた凹溝541と、この凹溝541内に配される固定杆542とから構成されたものとすることができる。すなわち、湾曲振動板2の他端側2bを凹溝541内に挿入すると共に、この凹溝541内に固定杆542を配することで湾曲振動板2の他端側2bを押さえるものとなっている。
【0085】
弾性支持部材56は、柔軟で弾性があり、湾曲振動板2が撓まないように支持することができる部材であって、たとえば、スポンジや糸状の繊維が絡み合った綿状部材からなるものとすることができる。すなわち、弾性支持部材56は、湾曲振動板2の一端側2aがブレード片5に接続され、同他端側2bが固定手段54によって筐体50に接続されることで、湾曲振動板2における曲面部の凹面側と支持面52との間に介在するように配されたものとなっている。
【0086】
図10において、弾性支持部材56は、湾曲振動板2における曲面部の凹面側と支持面52との間に全面的に介在するものとして示されている。
【0087】
この弾性支持部材は、湾曲振動板2における各曲面部の凹面側と支持面52との間に全面的に介在するものではなく、部分的に介在するものとしても良い。
弾性支持部材を部分的に配する手段として、たとえば、支持面52の湾曲方向に沿って延びる細長い弾性支持部材が、支持面52の中央部に一本配されたものや、支持面52に離間して複数本配されたものとすることができる。また、小片状をした弾性支持部材が、支持面52上に点在して配されものとしても良い。
【0088】
側板58は、湾曲振動板2(第一の湾曲振動面21及び第二の湾曲振動面22)と共に、支持枠51と、支持面52と、この支持面52上に配された柔軟な弾性支持部材56とを挟み込んで収容するように、その両側にそれぞれ配される一対の板状部材であって、たとえば、カタカナ文字「フ」の外縁に沿う形状に近似する形状をした一対の板状部材が互いに向かい合うように配されたものとなっている。
図11において、正面右側の側板は符号58Rで示し、正面左側の側板は符号58Lで示されている。
【0089】
なお、
図11中に示す符号91は、筐体50の支持枠51に第一のスピーカユニット10(コーン支持枠9)を取り付け固定するためのビスである。
また、図示しないが、筐体50の裏板部には、オーディオジャック、及びスイッチを装着するための穴が設けられている。
【0090】
したがって、第一のスピーカユニット10は、
図11に示すように、まず、筐体50の支持枠51にビス91・・91を用いてコーン支持枠9を固定する。次いで、筐体50の支持面52に弾性支持部材56を配すると共に、湾曲振動板2の他端側2bを凹溝541内に挿入した後、さらに固定杆542を配することで押さえる。これにより、湾曲振動板2の他端側2bは固定手段54によって筐体50に取り付けられたものとなる。
【0091】
このように構成されたスピーカ100は、湾曲振動板を備えるスピーカでは及ばない低域側の再生帯域をコーン振動板1で補うと共に、湾曲振動板2において一端側2aに位置する曲率が大きい第一の湾曲振動面21において共振帯域を上げた高域から中域の音を再生させ、一方、湾曲振動板2において他端側2bに位置する曲率が小さい第二の湾曲振動面22において共振帯域を下げた中域から低域の音を再生させることができる。
【0092】
すなわち、このスピーカ100は、コーン振動板1を備えるダイナミック型の第一のスピーカと、第一の湾曲振動面21を備える第二のスピーカと、第一の湾曲振動面21とは共振帯域が異なる第二の湾曲振動面22を備える第三のスピーカとを備えるものとなり、ドライバユニット4に対して電気信号を入力すると、従来の難聴者及び健聴者向けスピーカシステムに比して、湾曲振動板において幅広い(拡大した)再生周波数帯域が得られ、音質の改善を図ることができるものとなっている。
しかも、軽量で、設置面積も少なく、運搬がし易いものなので、スピーカの万能性が向上した高性能、且つ、高品質なハイブリッド型スピーカシステムとなっている。
【0093】
なお、上述した実施の形態では、振動面の厚みや硬さ、重量が相違する場合について例示していないが、振動板として用いるシート状部材の表面に、別途シート材を貼付したり、コーティング剤を塗布したりすることで、厚みや硬さ、重量を適宜調整し、一枚の振動板上において共振特性が相違する複数の領域を有したものとすることもできる。
【0094】
すなわち、湾曲振動板は、湾曲する振動面を形成することが可能な柔軟性を有するシート状部材であって、所望の曲率を維持するように後から加工できないものであっても、振動面に、別途シート材を貼付したり、塗料を塗布したりすることで、一枚の振動板上において、厚みや硬さ、重量が相違する複数の領域を有したものとすることができる。
【0095】
湾曲振動板に対するシート材の貼付領域やコーティング剤の塗布領域は、特に限定されないが、たとえば、一方の領域と他方の領域との境界部分が、振動板の一端側から他端側へ向かうにしたがって幅方向の寸法が小さく(狭く)なる先細り形状となるように設けると望ましい。
具体的には、
図12に示すように、湾曲振動板12の一端側12aから他端側12bへ向かう長さ方向の途中において、一方の領域αと他方の領域βとの境界121部分が、ローマ文字の「V」字状となるように設けられるものとすると良い。
【0096】
このように一方の領域αと他方の領域βとの境界121部分の形状が、ローマ文字の「V」字状となるように設けられると、先細り形状となった境界部分において、双方の領域から再生される音が重なり馴染んだものとすることができる。
【0097】
湾曲振動板12では、たとえば、第一の湾曲振動面となる領域αの厚みが大きく(厚く)、第二の湾曲振動面となる領域βの厚みが小さい(薄い)ものであると、第一の湾曲振動面(領域α)から共振帯域が低い音を再生し、第二の湾曲振動面(領域β)から共振帯域が高い音を再生させることができる。
【0098】
また、湾曲振動板12において、第一の湾曲振動面となる領域αの硬さが大きく(硬く)、第二の湾曲振動面となる領域βの硬さが小さい(柔らかい)ものであると、第一の湾曲振動面(領域α)から共振帯域が高い音を再生し、第二の湾曲振動面(領域β)から共振帯域が低い音を再生させることができる。
【0099】
さらに、シート材の貼付やコーティング剤の塗布によって振動面の厚みが大きくなると、自ずと重量も大きく(重く)なり、湾曲振動板12において、第一の湾曲振動面となる領域αの重量が大きく、第二の湾曲振動面となる領域βの重量が小さい(軽い)ものであると、第一の湾曲振動面(領域α)から共振帯域が低い音を再生し、第二の湾曲振動面(領域β)から共振帯域が高い音を再生させることができる。
【0100】
このような湾曲振動板12は、起立した平板状態で一端側12aをドライバユニット4に接続した後、他端側12bを弾性的に曲げて変形させることで曲面を形成し、変形した湾曲凸面側を前方に向けて他端側12bを筐体50に接続させるものとする。
【0101】
なお、湾曲振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の厚みや硬さが変化する複数の領域を有するように予め成形された部材としても良い。
【0102】
したがって、本発明においては、一枚の振動板上において曲率が異なる複数の領域を有する構成のほか、一枚の振動板上において厚みが異なる複数の領域を有する構成、一枚の振動板上において硬さが異なる複数の領域を有する構成、及び一枚の振動板上において重量が異なる複数の領域を有する構成とすることで、共振帯域が相違する複数の振動面が設けられた湾曲振動板を備えるスピーカユニット、及びハイブリッド型スピーカシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 第一の振動板(コーン状振動板)、1a 径小側、1b 径大側、2,12 第二の振動板(湾曲振動板)、2a 一端側、2b 他端側、4 ドライバユニット、5 ブレード、6 センターキャップ(ダストキャップ)、9 コーン支持枠、10 スピーカユニット、21 第一の湾曲振動面、22 第二の湾曲振動面、41 ボイスコイル、42 磁気回路、50 筐体、51 支持枠、52 支持面、54 固定手段、56 弾性支持部材、58 側板、100 スピーカ(ハイブリッド型スピーカシステム)。
【要約】
【課題】複数の帯域の音の再生を可能とし、難聴者並びに健聴者に対して不足の無い性能を有する高性能、且つ、高品質な湾曲振動板スピーカシステムを提供する。
【解決手段】本発明のスピーカユニット10は、コーン状をした第一の振動板1と、湾曲したシート状の第二の振動板2と、第一の振動板と第二の振動板を共に駆動するドライバユニット4とを備えている。第一の振動板の径小側1aと第二の振動板の一端側2aは共に、ドライバユニットに接続されている。第二の振動板は、一端側から他端側へ向かう長さ方向の途中において振動面の曲率が変化することにより、共振特性が相違する複数の領域を有するものとなっている。このスピーカユニットは、筐体50に装着してスピーカ100とする。
【選択図】
図1