(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】熱交換器用レシーバタンク
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20220802BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F25B43/00 U
F25B43/00 T
F25B43/00 W
F25B39/04 S
F25B39/04 C
(21)【出願番号】P 2019067089
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390000158
【氏名又は名称】日軽熱交株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 崇雄
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-47634(JP,A)
【文献】特開平11-264634(JP,A)
【文献】特開昭61-62771(JP,A)
【文献】特開2003-336938(JP,A)
【文献】特開2008-286475(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0132679(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがアルミニウム製の一対のヘッダーパイプと、これらヘッダーパイプ間に互いに平行に架設される複数の熱交換チューブとを具備するパラレルフロー型熱交換器における上記ヘッダーパイプの一方に冷媒の流入路及び流出路を介してろう付け接合される熱交換器用レシーバタンクであって、
上記冷媒の水分を除去する乾燥剤を収容する、上端が閉塞し、下端が開口する筒状の合成樹脂製の上部タンクと、
上記冷媒中の上記乾燥剤を含む不純物を除去するフィルタを収容し、側部にタンク流入口及びタンク流出口を有する、上端が開口し、下端が閉塞する筒状のアルミニウム製の下部タンクと、を具備し、
上記上部タンクは、下端に水平段部を介して筒状開口部が設けられると共に、該筒状開口部の外周に雄ねじ部が形成され、
上記下部タンクの上端開口部の内周に雌ねじ部が形成され、
上記上部タンクの上記水平段部と上記下部タンクの上端開口部の上端との間にシール部材を介在して、上記上部タンクと上記下部タンクとをねじ結合により連結してなる、
ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器用レシーバタンクにおいて、
上記上部タンク内に、袋入り乾燥剤が収容され、
上記フィルタは、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片と、上記垂直仕切片の上下端部からそれぞれ外方に向かって延在する、上記下部タンク内に嵌挿される上部鍔部及び下部鍔部と、上記垂直仕切片の中心部から下方に延在し、上記下部タンクの下端閉塞部との接触により弾性変形可能なフィルタ押え片と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体と、上記側部開口、上記上部鍔部に設けられた上部開口及び上記下部鍔部に設けられた下部開口のうちの少なくとも上記側部開口に張設される合成樹脂製のフィルタメッシュと、を具備してなる、ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器用レシーバタンクにおいて、
上記上部タンク内に、乾燥剤が充填され、
上記フィルタは、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片と、上記垂直仕切片の側端部から外方に向かって延在する、上記下部タンク内に嵌挿される上部鍔部と、上記垂直仕切片の中心部から下方に延在し、上記下部タンクの下端閉塞部との接触により弾性変形可能なフィルタ押え片と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体と、上記上部鍔部に設けられた上部開口に張設されるフィルタメッシュと、を具備してなる、ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器用レシーバタンクにおいて、
上記上部タンクは、該上部タンクの内面の少なくとも2箇所を連結する補強リブが長手通しに形成されている、ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器用レシーバタンクにおいて、
上記下部タンクは、円筒状基部の一側に水平断面が凹円弧状の接合面を有する肉厚部が形成された形材にて形成される下部タンク本体と、該下部タンク本体の下端開口部内にろう付け接合されるアルミニウム製の下端閉塞キャップとを具備し、上記肉厚部に上記冷媒の流入路及び冷媒流出路を形成するタンク流通口及びタンク流出口が形成されている、ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器用レシーバタンクにおいて、
上記下部タンクは、下端閉塞部を有する有底筒状に形成され、上記下部タンクの側壁に穿設された冷媒流入口及び冷媒流出口に、上記冷媒の流入路及び流出路を形成するアルミニウム製のタンク流入管及びタンク流出管をろう付け接合してなる、ことを特徴とする熱交換器用レシーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器用レシーバタンクに関するもので、更に詳細には、例えば、自動車や家屋等に設置する空調設備に組み込まれるオールアルミニウム製の熱交換器用レシーバタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれがアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製の一対のヘッダーパイプと、これらヘッダーパイプ間に互いに平行に架設される複数の熱交換チューブとを具備する、特に過冷却部を併設するオールアルミニウム製のパラレルフロー型熱交換器には、冷媒を気液分離し、余剰の冷媒を備蓄するためのレシーバタンクが取り付けられている。このレシーバタンクは、通常、冷媒回路内の不純物を除去するためのフィルタ及び冷媒回路内の水分を除去するための乾燥剤が封入されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の熱交換器用レシーバタンクは、上端開口部がエンドキャップにて閉塞された上部筒部材(上部タンク)と下部筒状部材(下部タンク)とをアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製部材にて形成し、ろう付け接合されている。
また、下部筒状部材(下部タンク)の挿入口にフィルタを支持する栓体をシール部材(Oリング)を介して挿入して円筒面シールによってシールする構造が採用されている。
【0004】
特許文献2に記載のリキッドタンク(レシーバタンク)は、乾燥剤充填部が設けられた上端が閉塞する有底筒状のアルミニウム製のタンク本体と、冷媒入口部及び冷媒出口部が設けられたアルミニウム製のブロック部とを溶接接合してなる。
また、乾燥剤充填部は、上記タンク本体の底面に設けられたフィルタと、蓋部材と、該蓋部材の上面に設けられたフィルタと、上記両フィルタ間に充填される乾燥剤とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-162189号公報
【文献】特許第4257027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のレシーバタンクは、いずれもアルミニウム製であるため、自動車用に使用された場合、燃費面や耐振面を考慮すると重量を軽量化する必要がある。タンク全体がアルミニウムであると、使用環境が厳しい場合、腐食が懸念される。
【0007】
また、特許文献1に記載のレシーバタンクにおいては、Oリングとレシーバタンクの寸法変動により圧縮率が変化するため、シール性が不安定となり、シール不良により液の浸入等の懸念があった。また、Oリングをタンク内に挿入する際、Oリングへの油の均一塗布が必要であり、油塗布量が不足の場合、挿入時にOリングが捩れてシール不良が発生する虞がある。
【0008】
また、レシーバタンク内のメンテナンス(乾燥剤の交換)のために、栓体を外して対応する必要があり、乾燥剤の交換に手間を要する懸念がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載のレシーバタンクにおいては、タンク本体の底面に設けられたフィルタと、蓋部材の上面に設けられたフィルタとの間に乾燥剤を充填する構造であるため、レシーバタンク内への乾燥剤の取付が面倒である上、乾燥剤のみを取り出し交換することができないため、レシーバタンクごと交換するしかなく、非効率である。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、軽量化、耐食性の向上が図れ、気密性を確実にする組み付けを容易にすると共に、乾燥剤の交換を容易にした熱交換器用レシーバタンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、この発明は、それぞれがアルミニウム製の一対のヘッダーパイプと、これらヘッダーパイプ間に互いに平行に架設される複数の熱交換チューブとを具備するパラレルフロー型熱交換器における上記ヘッダーパイプの一方に冷媒の流入路及び流出路を介してろう付け接合される熱交換器用レシーバタンクであって、上記冷媒の水分を除去する乾燥剤を収容する、上端が閉塞し、下端が開口する筒状の合成樹脂製の上部タンクと、上記冷媒中の上記乾燥剤を含む不純物を除去するフィルタを収容し、側部にタンク流入口及びタンク流出口を有する、上端が開口し、下端が閉塞する筒状のアルミニウム製の下部タンクと、を具備し、上記上部タンクは、下端に水平段部を介して筒状開口部が設けられると共に、該筒状開口部の外周に雄ねじ部が形成され、上記下部タンクの上端開口部の内周に雌ねじ部が形成され、上記上部タンクの上記水平段部と上記下部タンクの上端開口部の上端との間にシール部材を介在して、上記上部タンクと上記下部タンクとをねじ結合により連結してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
このように構成することにより、レシーバタンクを構成する上部タンクを合成樹脂で成形することで、軽量化が図れると共に、耐食性が図れる。
また、ヘッダーパイプにろう付け接合されたアルミニウム製の下部タンクと、合成樹脂製の上部タンクとを、上部タンクの水平段部と下部タンクの上端開口部の上端との間にシール部材を介在して、上部タンクと下部タンクとをねじ結合により連結することができる。したがって、平面固定シールとすることで、気密性を確実にして連結することができると共に、上部タンクと下部タンクの組付けを容易にし、取り外しを容易にすることができる。
【0013】
この発明において、上記上部タンク内に、袋入り乾燥剤を収容することができ、この場合は、上記フィルタは、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片と、上記垂直仕切片の上下端部からそれぞれ外方に向かって延在する、上記下部タンク内に嵌挿される上部鍔部及び下部鍔部と、上記垂直仕切片の中心部から下方に延在し、上記下部タンクの下端閉塞部との接触により弾性変形可能なフィルタ押え片と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体と、上記側部開口、上記上部鍔部に設けられた上部開口及び上記下部鍔部に設けられた下部開口のうちの少なくとも上記側部開口に張設される合成樹脂製のフィルタメッシュと、を具備してなるのが好ましい(請求項2)。
【0014】
このように構成することにより、乾燥剤の上部タンク内への収容を容易にし、交換を更に容易にすることができると共に、冷媒中の不純物を除去するフィルタの取付を容易かつ確実にすることができる。
【0015】
また、この発明において、上記上部タンク内に、乾燥剤を充填することができ、この場合は、上記フィルタは、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片と、上記垂直仕切片の側端部から外方に向かって延在する、上記下部タンク内に嵌挿される上部鍔部と、上記垂直仕切片の中心部から下方に延在し、上記下部タンクの下端閉塞部との接触により弾性変形可能なフィルタ押え片と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体と、上記上部鍔部に設けられた上部開口に張設されるフィルタメッシュと、を具備してなるのが好ましい(請求項3)。この場合、上記上部タンクは、該上部タンクの内面の少なくとも2箇所を連結する補強リブが長手通しに形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0016】
このように構成することにより、乾燥剤の上部タンク内への収容を容易にし、交換を容易にすることができると共に、乾燥剤の粉化及び粉化に伴う冷媒中の不純物を除去するフィルタの取付を容易かつ確実にすることができる。
この場合、上部タンクの内面の少なくとも2箇所を連結する補強リブが長手通しに形成することにより、上部タンクの強度を高めることができる(請求項4)。
【0017】
また、この発明において、上記下部タンクは、円筒状基部の一側に水平断面が凹円弧状の接合面を有する肉厚部が形成された形材にて形成される下部タンク本体と、該下部タンク本体の下端開口部内にろう付け接合されるアルミニウム製の下端閉塞キャップとを具備し、上記肉厚部に上記冷媒の流入路及び冷媒流出路を形成するタンク流通口及びタンク流出口が形成されているのがよい(請求項5)。
【0018】
このように構成することにより、下部タンク本体と一体に形成された凹円弧状の接合面をヘッダーパイプに容易に接合することができると共に、強固に接合することができる。
【0019】
また、この発明において、上記下部タンクは、下端閉塞部を有する有底筒状に形成し、上記下部タンクの側壁に穿設された冷媒流入口及び冷媒流出口に、上記冷媒の流入路及び流出路を形成するアルミニウム製のタンク流入管及びタンク流出管をろう付け接合するのがよい(請求項6)。
【0020】
このように構成することにより、下部タンクを下端閉塞部を有する有底筒状の一体成形とすることができ、下部タンクの側壁に穿設された冷媒流入口及び冷媒流出口に接合されたタンク流入管及びタンク流出管を介してヘッダーパイプに接合することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0022】
(1)請求項1に記載の発明によれば、レシーバタンクを構成する上部タンクを合成樹脂で成形することで、レシーバタンクの軽量化が図れると共に、耐食性が図れる。
また、上部タンクの水平段部と下部タンクの上端開口部の上端との間にシール部材を介在して、上部タンクと下部タンクとをねじ結合により連結することができるので、平面固定シールとすることで、気密性を確実にして連結することができると共に、上部タンクと下部タンクの組付けを容易にし、取り外しを容易にすることができる。
【0023】
(2)請求項2に記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に乾燥剤の上部タンク内への収容を容易にし、交換を更に容易にすることができると共に、冷媒中の不純物を除去するフィルタの取付を容易かつ確実にすることができる。
【0024】
(3)請求項3に記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に乾燥剤の上部タンク内への収容を容易にし、交換を容易にすることができると共に、乾燥剤の粉化及び粉化に伴う冷媒中の不純物を除去するフィルタの取付を容易かつ確実にすることができる。
この場合、上部タンクの内面の少なくとも2箇所を連結する補強リブが長手通しに形成することにより、上部タンクの強度を高めることができる(請求項4)。
【0025】
(4)請求項5に記載の発明によれば、下部タンク本体と一体に形成された凹円弧状の接合面をヘッダーパイプに容易に接合することができると共に、強固に接合することができるので、上記(1)~(3)に加えて、更にヘッダーパイプとレシーバタンクのろう付け接合を容易かつ強固にすることができる。
【0026】
(5)請求項6に記載の発明によれば、下部タンクを下端閉塞部を有する有底筒状の一体成形とすることができ、下部タンクの側壁に穿設された冷媒流入口及び冷媒流出口に接合された冷媒流入管及び冷媒流出管を介してヘッダーパイプに接合することができるので、上記(1)~(3)に加えて、更にレシーバタンクの軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明に係る熱交換器用レシーバタンクの一例の使用状態を示す概略正面図である。
【
図2】この発明におけるヘッダーパイプと袋入り乾燥剤を収容したレシーバタンクの接合部を示す断面図(a)、(a)のI-I線に沿う拡大断面図(b)及び(a)のII部拡大断面図(c)である。
【
図3】この発明におけるフィルタの正面図(a)、平面図(b)、底面図(c)及び(a)のIII-III線に沿う断面図(d)である。
【
図4】この発明における上部タンク、下部タンク及びシール部材を示す分解斜視図である。
【
図5】この発明におけるヘッダーパイプと乾燥剤を充填したレシーバタンクの接合部を示す断面図(a)、(a)のIV-IV線に沿う拡大断面図(b)及び(a)のV部拡大断面図(c)である。
【
図6】この発明における別のフィルタの正面図(a)、平面図(b)及び底面図(c)である。
【
図7】この発明における別の上部タンクの一部を断面で示す正面図(a)、底面図(b)、(a)のVI-VI線に沿う断面図(c)及び更に別の上部タンクの断面図(d)である。
【
図8】この発明における別の下部タンクとヘッダーパイプの接合部を示す断面図である。
【
図9】上記下部タンクの一部を断面で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
この発明に係る熱交換器用レシーバタンク(以下に、熱交換器という)は、
図1及び
図2に示すように、それぞれがアルミニウム製の一対の略円筒状のヘッダーパイプ2a,2bと、これらヘッダーパイプ2a,2b間に架設される互いに平行な複数の熱交換チューブ3と、隣接する熱交換チューブ3間に介在されるコルゲートフィン4とを具備する熱交換器本体1と、冷媒中の水分を除去する袋入り乾燥剤20と冷媒中の不純物を除去するフィルタ30を具備するアルミニュウム製の略円筒状のレシーバタンク10と、を具備し、ヘッダーパイプ2a,2bのうちの一方2bとレシーバタンク10をろう付けにより一体接合してなる。
なお、乾燥剤には例えばモレキュラシーブが使用され、ポリエチレン-テレフタレート(PET)製の袋内に収容されている。
【0030】
上記ヘッダーパイプ2a,2bは、例えばアルミニウム製の押出形材にて略円筒状に形成されており、その上下端部にはキヤップ部材2cが被着固定されている。また、一方のヘッダーパイプ2a(
図1において左側)の例えば外方側上端付近には、冷媒流入管6aが接続されており、外方側下端付近には、冷媒流出管6bが接続されている。
【0031】
また、ヘッダーパイプ2bの側壁には、
図2に示すように、レシーバタンク10と連通するために、冷媒流出口7及び冷媒流入口8が上下の2箇所に穿設されており、これらの冷媒流出口7及び冷媒流入口8と連通するようにして、冷媒の流入路及び流出路を介してレシーバタンク10がヘッダーパイプ2bに一体的にろう付されている。
【0032】
ヘッダーパイプ2bの下部側には、冷媒流出口7側と、冷媒流入口8側とを区切る仕切板2dが設けられており、他方のヘッダーパイプ2aの下部側の仕切板2dと同位置に設けられる仕切板2eとで区画される下段側の熱交換チューブ3によって過冷却部(過冷却域)が形成されている。なお、ヘッダーパイプ2bには、ヘッダーパイプ2bの上端側と冷媒流出口7側とを区切る仕切板2fが設けられ、ヘッダーパイプ2aには、仕切板2fより上方に位置して冷媒流入管6a側と仕切板2e側とを仕切る仕切板2gが設けられている。
【0033】
また、熱交換チューブ3は、アルミニウム製の押出形材にて例えば扁平な板状に形成されており、その内部には長手方向に向かって貫通する複数に区画された冷媒の流路(図示せず)が形成されている。このように形成される熱交換チューブ3の両端部は、両ヘッダーパイプ2a,2b側面の対向する側に、適宜間隔をおいて互いに平行に配列される複数のスリット(図示せず)に挿入固着されている。
【0034】
コルゲートフィン4は、
図1に示すように、アルミニウム製の板材を屈曲することにより連続波形状に形成されており、各熱交換チューブ3の間に介設されてろう付されている。この場合、最上段及び最下段に配設された熱交換チューブ3の外方側にもコルゲートフィン4がろう付接合されており、これらの両コルゲートフィン4を保護するために、両コルゲートフィン4の更に外方側にはサイドプレート5がろう付接合されている。
【0035】
レシーバタンク10は、冷媒の水分を除去する袋入り乾燥剤20を収容する、上端が閉塞し、下端が開口する筒状の合成樹脂製の上部タンク11と、冷媒中の乾燥剤を含む不純物を除去するフィルタ30を収容し、側部に冷媒の流入路及び冷媒流出路を形成するタンク流入口13及びタンク流出口14を有する、上端が開口し、下端が閉塞する筒状のアルミニウム製の下部タンク12と、を具備している。
【0036】
上部タンク11は、
図4に示すように、下端に水平段部11aを介して筒状開口部11bが設けられると共に、該筒状開口部11bの外周に雄ねじ部11cが形成されている。
【0037】
一方、下部タンク12は、
図4に示すように、円筒状基部12aの一側に水平断面が凹円弧状の接合面12bを有する肉厚部12dが形成された押出形材にて形成される下部タンク本体12eと、該下部タンク本体12eの下端開口部内にろう付け接合されるアルミニウム製の下端閉塞キャップ12fとを具備し、肉厚部12dにタンク流入口13及びタンク流出口14が形成されている。なお、下部タンク12の上端開口部の内周には、筒状開口部11bに設けられた雄ねじ部11cとねじ結合可能な雌ねじ部12cが形成されている。
【0038】
上部タンク11の水平段部11aと下部タンク12の上端開口部の上端との間にシール部材であるパッキン40を介在して、上部タンク11と下部タンク12とをねじ結合により連結することで、レシーバタンク10が形成される。なお、ここではシール部材がパッキン40である場合について説明したが、パッキン40以外にOリングを用いてもよい。
【0039】
フィルタ30は、
図3に示すように、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片31と、垂直仕切片31の上下端部からそれぞれ外方に向かって延在する、下部タンク12内に嵌挿される上部鍔部32及び下部鍔部33と、垂直仕切片31の中心部から下方に延在し、下部タンク12の下端閉塞キャップ12fとの接触により弾性変形可能なフィルタ押え片34と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体35と、側部開口に張設される合成樹脂製のフィルタメッシュ36とを具備している。
この場合、フィルタ押え片34は、弾性変形を持たせるため、円柱状に同径で製作して、フィルタ押え片34全体が、屈曲するようにしてもよいし、先端に細径部を設け、変形が特定部分に発生するようにしてもよい。
【0040】
なお、フィルタメッシュ36は、少なくとも側部開口に張設されていればよく、上部鍔部32に設けられた上部開口及び又は下部鍔部33に設けられた下部開口に張設してもよい。このように、フィルタメッシュ36を側部開口の他に上部鍔部32に設けられた上部開口及び又は下部鍔部33に設けられた下部開口に張設することにより、不純物の除去性能が向上する。
【0041】
上記のように形成されたフィルタ30は、上部タンク11と下部タンク12とを連結する際に、下部タンク12に挿入され、上部タンク11と下部タンク12とをねじ結合することによって下端閉塞キャップ12fがフィルタ押え片34を押圧し、フィルタ押え片34が弾性変形することによる弾発力が作用して上部鍔部32が上部タンク11の筒状開口部11bの先端面に密接する。
【0042】
次に、熱交換器を製造する手順について説明する。
まず、下部タンク12の接合面12bを冷媒流出口7及び冷媒流入口8の周囲の接合面に当接して仮組する。
【0043】
次に、ヘッダーパイプ2aにコルゲートフィン4、熱交換チューブ3と他方のヘッダーパイプ2bを組み付けて治具にて固定する。固定された熱交換器本体1、下部タンク12にフラックスを塗布した後、炉内に搬入して、所定温度例えば600℃の温度で加熱して、熱交換器本体1と下部タンク12を一体ろう付け接合する。
【0044】
熱交換器本体1に一体ろう付け接合された下部タンク12内に、フィルタ30を挿入する一方、上部タンク11内に袋入り乾燥剤20を収容した後、上部タンク11の水平段部11aと下部タンク12の上端開口部の上端との間にパッキン40を介在して、上部タンク11と下部タンク12とをねじ結合により連結して熱交換器用レシーバタンクの製造を終了する。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態のレシーバタンク10に代えて、上部タンク11内に乾燥剤20Aを充填し、下部タンク12内に乾燥剤20Aの粉化除去及び粉化に伴って冷媒中に混入する不純物の除去を行うフィルタ30Aを収容したレシーバタンク10Aである。
【0046】
第2実施形態におけるフィルタ30Aは、
図5及び
図6に示すように、周方向に等間隔の側部開口を形成すべく互いに交差する垂直仕切片31Aと、垂直仕切片の側端部から外方に向かって延在する、下部タンク12内に嵌挿される上部鍔部32と、垂直仕切片31Aの中心部から下方に延在し、下部タンク12の下端閉塞キャップ12fとの接触により弾性変形可能なフィルタ押え片34と、を具備する合成樹脂製のフィルタ本体35Aと、上部鍔部32に設けられた上部開口に張設されるフィルタメッシュ36と、を具備してなる。
【0047】
上記のように形成されたフィルタ30Aは、上部タンク11と下部タンク12とを連結する際に、下部タンク12に挿入され、天地逆に配置された下部側の上部タンク11と上部側の下部タンク12とをねじ結合することによって下端閉塞キャップ12fがフィルタ押え片34を押圧し、フィルタ押え片34が弾性変形することによる弾発力が作用して上部鍔部32が上部タンク11の筒状開口部11bの基端部に嵌挿されて乾燥剤20Aに密接する。これにより、乾燥剤20Aは上部タンク11内に固定されるので、乾燥剤20Aの粉化を抑制することがができる。僅かな粉化や粉化に伴う冷媒中の不純物はフィルタ30Aによって除去できる。
【0048】
上記第2実施形態のレシーバタンク10Aを有する熱交換器の製造手順は、上部タンク11と下部タンク12を連結する際の上部タンク11と下部タンク12の位置が天地逆、すなわち乾燥剤20Aを充填した上部タンク11を下方に位置し、フィルタ30Aを挿入した下部タンク12を上方に位置して連結する以外は同様であるので、説明は省略する。
【0049】
第2実施形態のレシーバタンク10Aを構成する上部タンク11に代えて、
図7に示すような補強リブ11dを一体形成した上部タンク11Aを用いてもよい。
この場合、上部タンク11Aの内面の4箇所を連結する補強リブ11dを長手通しに形成することで、上部タンク11Aに強度をもたせることができる(
図7(a),(b),(c)参照)。
なお、補強リブ11dは上部タンク11Aの内面の少なくとも2箇所を連結していればよく、
図7(d)のような構造であってもよい。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態は、下部タンク12Aは、下端閉塞部12gを有する有底筒状に形成した場合であり、下部タンク12Aの側壁に穿設されたタンク流入口13及びタンク流出口14に、冷媒の流入路及び流出路を形成するアルミニウム製のタンク流入管13A及びタンク流出管14Aをろう付け接合した場合である。この場合、下部タンク12Aのタンク流入口13及びタンク流出口14に、タンク流入管13A及びタンク流出管14Aをを挿入した状態で、タンク流入管13A及びタンク流出管14Aの端部をかしめ加工によって固定し、ろう付け接合する。
この場合、タンク流入管13A及びタンク流出管14Aをろう材層を有するクラッド材にて形成するか、又は、生地材に置きろうにて炉中ろう付けすることができる。
【0051】
上記のように形成される下部タンク12Aは、タンク流入管13A及びタンク流入管14Aを介してヘッダーパイプ2bにろう付け接合される。
【0052】
第3実施形態の下部タンク12Aと上部タンク11とを連結する場合、下部タンク12内にフィルタ30を挿入し、上部タンク11と下部タンク12とをねじ結合することによって下端閉塞部12gがフィルタ押え片34を押圧し、フィルタ押え片34が弾性変形することによる弾発力が作用して上部鍔部32が上部タンク11の筒状開口部11bの先端面に密接する。
なお、第3実施形態の下部タンク12Aと乾燥剤20Aを充填した上部タンク11とを連結する場合は、下端閉塞部12gがフィルタ押え片34を押圧し、フィルタ押え片34が弾性変形することによる弾発力が作用して上部鍔部32が上部タンク11の筒状開口部11bの基端部に嵌挿されて乾燥剤20Aに密接する。
【0053】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0054】
上記実施形態のレシーバタンク10,10Aによれば、上部タンク11,11Aが合成樹脂製であるので、レシーバタンク10,10Aの軽量化が図れると共に、耐食性が図れる。
また、上部タンク11,11Aの水平段部11aと下部タンク12,12Aの上端開口部の上端との間にパッキン40を介在して、上部タンク11,11Aと下部タンク12,12Aとをねじ結合により連結することができるので、平面固定シールとすることで、気密性を確実にして連結することができると共に、上部タンク11,11Aと下部タンク12,12Aの組付けを容易にし、取り外しを容易にすることができる。
【0055】
また、乾燥剤20,20Aの上部タンク11,11A内への収容を容易にし、交換を更に容易にすることができると共に、冷媒中の不純物を除去するフィルタ30,30Aの取付を容易かつ確実にすることができる。
【0056】
また、乾燥剤20,20Aの上部タンク11,11A内への収容を容易にし、交換を容易にすることができると共に、乾燥剤20,20Aの粉化及び粉化に伴う冷媒中の不純物を除去するフィルタ30,30Aの取付を容易かつ確実にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 熱交換器本体
2a,2b ヘッダーパイプ
3 熱交換チューブ
10,10A レシーバタンク
11,11A,11B 上部タンク
11a 水平段部
11b 筒状開口部
11c 雄ねじ部
11d 補強リブ
12,12A 下部タンク
12a 円筒状基部
12b 接合面
12c 雌ねじ部
12d 肉厚部
12e 下部タンク本体
12f 下端閉塞キャップ
12g 下端閉塞部
13 タンク流入口
13A タンク流入管
14 タンク流出口
14A タンク流出管
20 袋入り乾燥剤
20A 乾燥剤
30,30A フィルタ
31,31A 垂直仕切片
32 上部鍔部
33 下部鍔部
34 フィルタ押え片
35,35A フィルタ本体
36 フィルタメッシュ
40 パッキン(シール部材)