(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
H02K5/16 A
(21)【出願番号】P 2018067989
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】398061810
【氏名又は名称】日本電産テクノモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】地村 保彦
(72)【発明者】
【氏名】稲木 勇介
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132818(JP,A)
【文献】特開2015-126583(JP,A)
【文献】特開2014-226028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸回りに回転するロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
前記ロータの少なくとも一部を収容し、前記ステータの少なくとも一部を覆い、軸方向に開口を有するケーシングと、
軸方向上下に一対で配置され、前記ロータの回転軸を前記中心軸回りに回転可能に支持する軸受と、
一対の前記軸受それぞれを個別に保持する導電性の軸受保持部と、
前記ケーシングの前記開口を覆い、前記軸受保持部の一方が配置される導電性のブラケットと、
軸方向上下一対の前記軸受保持部を導通させ、前記ケーシングの外周面に配置される導通部材と、
を有し、
前記導通部材は、一方の端部側において、前記ケーシングと前記ブラケットとの間で前記ブラケットと接触し、
他方の端部側において、前記ケーシングに配置される他方の前記軸受保持部と接触し、
前記導通部材と前記ブラケットとが接触する接触領域の互いの接触面は、軸方向において対向
し、
前記導通部材は、前記ブラケットとの前記接触領域の径方向内側に第1折り返し部を有し、
前記導通部材は、前記ケーシングの外周面の軸方向一端部から前記ケーシングの軸方向端面に沿って径方向内側に向かって延び、さらに前記第1折り返し部で前記ブラケットの前記接触面側に折り返して径方向外側に向かって延び、前記接触領域に至る、モータ。
【請求項2】
前記一方の前記軸受保持部と、前記一方の前記軸受保持部が結合される前記ブラケットとは、単一の部材である、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ケーシングの外周部は、軸方向に向かうにつれて径方向に傾く傾斜部を有し、
前記導通部材の一部は、前記傾斜部に対向して配置される、請求項1または請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記接触領域は、前記ケーシングの内周面よりも径方向外側に配置される、請求項1から請求項3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記導通部材の端部側の一部は、前記ブラケットの径方向外端よりも径方向外側に配置される、請求項
1から請求項4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記導通部材は、前記ブラケットとの前記接触領域の径方向外側に第2折り返し部を有し、
前記導通部材は、前記第2折り返し部において、前記ブラケットの径方向外端面に沿って軸方向に延び、さらに前記ブラケットの軸方向端面に沿って径方向内側に向かって延びる、請求項
5に記載のモータ。
【請求項7】
前記ケーシングの外周部は、径方向内側に向かって窪む凹部を有し、
前記導通部材の一部は、前記凹部に配置され、
前記凹部の周方向の幅は、前記導通部材の周方向の幅以上である、請求項1から請求項
6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記ケーシングの軸方向端部は、軸方向内側に向かって窪む陥没部を有し、
前記導通部材の一部は、前記陥没部に配置され、
前記陥没部の周方向の幅は、前記導通部材の周方向の幅以上である、請求項1から請求項
6のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
当該モータの軸方向両端部のうち少なくとも一端部に配置され、軸方向外側から前記導通部材に接触する押さえ部材を有する、請求項1から請求項
7のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
前記導通部材は、前記ケーシングとの対向面が導通性を有し、当該対向面の反対側の面が非導通性を有する、請求項1から請求項
9のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
前記導通部材は、粘着テープであって、
前記導通部材の粘着面は、導電性を有する、請求項
10に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータでは、ロータを回転可能に支持する一対の軸受に電流が流れることで発生する軸受の電食を抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1で開示されたモールドモータは、モータの出力側と反出力側の両方に配置された、ベアリングを収める導電性のブラケットと、これら2つのブラケットを導通する導電性の導通板と、を有する。これにより、ベアリングの電食を発生し難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された従来のモータは、ブラケットをステータの外郭であるモールド樹脂に取り付ける際に、導通板とブラケットとの接合面で、導通板とブラケットとが軸方向に擦れる。これにより、導通板と、ブラケットとの接触状態を一定に保持することができなくなることが懸念された。すなわち、導通板と、ブラケットとの導通状態が不安定になる虞があることが課題であった。
【0005】
上記の点に鑑み、本発明は、ロータを回転可能に支持する一対の軸受間の導通状態を安定させることが可能なモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、上下に延びる中心軸回りに回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ロータの少なくとも一部を収容し、前記ステータの少なくとも一部を覆い、軸方向に開口を有するケーシングと、軸方向上下に一対で配置され、前記ロータの回転軸を前記中心軸回りに回転可能に支持する軸受と、一対の前記軸受それぞれを個別に保持する導電性の軸受保持部と、前記ケーシングの前記開口を覆い、前記軸受保持部の一方が配置される導電性のブラケットと、軸方向上下一対の前記軸受保持部を導通させ、前記ケーシングの外周面に配置される導通部材と、を有し、前記導通部材は、一方の端部側において、前記ケーシングと前記ブラケットとの間で前記ブラケットと接触し、他方の端部側において、前記ケーシングに配置される他方の前記軸受保持部と接触し、前記導通部材と前記ブラケットとが接触する接触領域の互いの接触面は、軸方向において対向する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的なモータによれば、ブラケットをケーシングに取り付ける際に、導通部材とブラケットとの接触領域で、導通部材とブラケットとが擦れない。これにより、導通部材と、ブラケットとの導通状態を安定させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るモータの一例の全体斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るモータの縦断面図である。
【
図3】
図3は、モータの縦断面を示す上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、モータの縦断面を示す下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、モータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、モータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す径方向外側から見た部分斜視図である。
【
図7】
図7は、モータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す径方向内側から見た部分斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例1のモータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す部分縦断面図である。
【
図9】
図9は、変形例2のモータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す部分縦断面図である。
【
図10】
図10は、変形例3のモータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す部分縦断面図である。
【
図11】
図11は、変形例4のモータの導通部材とブラケットとの接触領域周辺を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本書では、モータの中心軸が延びる方向を単に「軸方向」と呼び、モータの中心軸を中心として中心軸と直交する方向を単に「径方向」と呼び、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を単に「周方向」と呼ぶ。また、本書では、説明の便宜上、軸方向を上下方向とし、
図1及び
図2における上下方向をモータの上下方向として各部の形状及び位置関係を説明する。なお、この上下方向の定義は、モータの使用時の向き及び位置関係を限定するものではない。また、本書では、軸方向に平行な断面を「縦断面」と呼ぶ。また、本書で用いる「平行」、「垂直」、「直交」は、厳密な意味で平行、垂直、直交を表すものではなく、略平行、略垂直、略直交を含む。
【0010】
<1.モータの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るモータ1の一例の全体斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るモータ1の縦断面図である。モータ1は、シャフト10と、ロータ20と、ステータ30と、ケーシング40と、軸受50と、軸受保持部60と、ブラケット70と、を有する。
【0011】
シャフト10は、上下に延びる中心軸Cに沿って配置される。シャフト10は、例えば金属で構成される上下に延びる柱状の部材である。シャフト10は、軸受50によって、ケーシング40及びブラケット70に対して中心軸C回りに回転可能に支持される。すなわち、シャフト10は、ロータ20の回転軸である。
【0012】
ロータ20は、シャフト10に固定される。ロータ20は、上下に延びる中心軸C回りに回転する。ロータ20は、マグネット21を有する。マグネット21は、円筒状であり、内側に挿入されたシャフト10に固定される。
【0013】
ステータ30は、ロータ20の径方向外側、且つケーシング40の径方向内側に配置される。ステータ30は、ロータ20と径方向に対向する。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、コイル33と、を有する。
【0014】
ステータコア31は、中心軸Cを中心とする環状である。ステータコア31は、複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して形成される。ステータコア31は、コアバック311と、複数のティース312と、を有する。コアバック311は、中心軸Cを中心とする環状である。複数のティース312は、コアバック311の内周面から径方向内側に向かって延びる。複数のティース312は、周方向に所定間隔で配列される。
【0015】
インシュレータ32は、ステータコア31に配置される。インシュレータ32は、ティース312の外面を囲んで設けられる。インシュレータ32は、ステータコア31と、コイル33との間に配置される。インシュレータ32は、例えば樹脂等の絶縁部材で構成される。
【0016】
コイル33は、ティース312に巻かれる。コイル33は、インシュレータ32を介してティース312の周囲に巻き回された導線で構成される。複数のコイル33は、周方向に所定間隔で配列される。
【0017】
ケーシング40は、ステータ30の径方向外側に配置される。ケーシング40は、中心軸Cを中心として軸方向に延びる円筒部を有し、軸方向上端部で開口する。ケーシング40は、ステータ30のコアバック311と、インシュレータ32と、コイル33と、を覆う。ティース312は、少なくとも、ロータ20と径方向に対向する径方向内周部がケーシング40から露出する。ロータ20は、ケーシング40の中央部に収容される。ロータ20の軸方向上面は、ケーシング40に対して露出する。すなわち、ケーシング40は、ロータ20の少なくとも一部を収容し、ステータ30の少なくとも一部を覆い、軸方向に開口を有する。ケーシング40は、軸方向下面の中心部に、軸方向に貫通する孔部40aを有する。
【0018】
ケーシング40の材料には、例えば熱硬化性の不飽和ポリエステル樹脂が用いられる。ケーシング40は、ステータ30が収容された金型内の空洞に、樹脂を流し込んで硬化させることにより得られる。
【0019】
軸受50は、軸方向上下に一対で配置される。軸方向上側の軸受50は、ブラケット70の軸受保持部60に保持される。軸方向下側の軸受50は、ケーシング40に配置された軸受保持部60に保持される。軸受50は、例えばボールベアリングで構成される。軸方向上下一対の軸受50は、シャフト10を、ケーシング40に対して中心軸C回りに回転可能に支持する。すなわち、軸受50は、軸方向上下に一対で配置され、ロータ20の回転軸(シャフト10)を中心軸C回りに回転可能に支持する。
【0020】
軸受保持部60は、軸方向上下に一対で配置される。軸方向上側の軸受保持部60は、ブラケット70の中心部に配置される。軸方向上側の軸受保持部60は、軸方向上側に向かって突出するカップ形状であり、軸方向下側且つ径方向内側に軸方向上側の軸受50を保持する。軸方向下側の軸受保持部60は、ケーシング40の中心部の孔部40aに配置される。軸方向下側の軸受保持部60は、樹脂製のケーシング40の成形時に、インサート成形によって固定される。軸方向下側の軸受保持部60は、軸方向下側に向かって突出するカップ形状であり、軸方向上側且つ径方向内側に軸方向下側の軸受50を保持する。軸方向上下一対の軸受保持部60は、例えば金属等の導電性部材で構成される。すなわち、導電性の軸受保持部60は、一対の軸受50それぞれを個別に保持する。
【0021】
ブラケット70は、ケーシング40の開口に配置され、当該開口を覆う。ブラケット70は、ケーシング40の軸方向上方から軸方向に沿って、ケーシング40の軸方向上端部に固定される。ブラケット70は、中心軸Cを中心として径方向に拡がる円板形状である。ブラケット70の中心部には、軸方向上側の軸受保持部60が配置される。ブラケット70は、例えば金属等の導電性部材で構成される。すなわち、導電性のブラケット70は、ケーシング40の開口を覆い、軸受保持部60の一方が配置される。
【0022】
なお、軸方向上側の軸受保持部60と、ブラケット70とは、単一の部材である。すなわち、一方の軸受保持部60と、一方の軸受保持部60が結合されるブラケット70とは、単一の部材である。この構成によれば、モータ1において、部品点数及び組立工数の低減を図ることができる。
【0023】
上記構成のモータ1において、コイル33に駆動電流が供給されると、ステータコア31に径方向の磁束が生じる。ステータ30の磁束によって生じる磁界と、マグネット21によって生じる磁界とが作用し、ロータ20の周方向にトルクが生じる。このトルクによって、ロータ20が、中心軸Cを中心として回転する。
【0024】
<2.モータの詳細構成>
図3は、モータ1の縦断面を示す上方から見た斜視図である。
図4は、モータ1の縦断面を示す下方から見た斜視図である。
図5は、モータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す部分縦断面図である。モータ1は、導通部材80を有する。すなわち、モータ1は、ロータ20と、ステータ30と、ケーシング40と、軸受50と、軸受保持部60と、ブラケット70と、導通部材80と、を有する。
【0025】
導通部材80は、ケーシング40の外周面に配置される。導通部材80は、ケーシング40の外周面において径方向及び軸方向に沿って延びる。導通部材80は、軸方向上下一対の軸受保持部60それぞれに接続される。導通部材80は、導電性を有する。すなわち、導通部材80は、軸方向上下一対の軸受保持部60を導通させ、ケーシング40の外周面に配置される。
【0026】
導通部材80は、例えばテープ等の帯状部材である。導通部材80の、ケーシング40との対向面は、導通性を有する。導通部材80の、ケーシング40との対向面の反対側の面は、非導通性を有する。すなわち、導通部材80は、ケーシング40との対向面が導通性を有し、当該対向面の反対側の面が非導通性を有する。この構成によれば、導通部材80を用いて、軸方向上下一対の軸受保持部60を導通させることができる。さらに、導通部材80の外面は、非導通性であるので、例えばモータ1の設置環境において他の部材に接触しても、電気的な影響を与えることを抑制することができる。
【0027】
導通部材80は、例えば粘着テープであり、ケーシング40の外面に貼付される。すなわち、導通部材80は、粘着テープであって、導通部材80の粘着面は、導電性を有する。この構成によれば、導通部材80は、ケーシング40に容易に取り付けることができる。そして、導通部材80を貼付することで、容易に軸方向上下一対の軸受保持部60を導通させることが可能である。また、導通部材80は、テープであるので、金属製の板状部材である場合と比較して、形を自由に変えてケーシング40の外面に取り付けることができる。具体的には、例えばケーシング40の外面に凹凸があるとき、金属製の板状部材の場合は、凹凸に対応することができず、取り付け難い。しかしながら一方、テープの場合は、凹凸に柔軟に対応することができ、凹凸を乗り越えて取り付けることが可能である。
【0028】
導通部材80の軸方向上側の端部81側は、ケーシング40の軸方向上端部まで延びる。導通部材80の軸方向上側の端部81側は、ブラケット70の、ケーシング40の軸方向上端部に対する固定領域91の近傍まで延び、ケーシング40とブラケット70との間に配置される。導通部材80の軸方向上側の端部81側は、ケーシング40とブラケット70との間において、ブラケット70と接触する。導通部材80の軸方向下側の端部82側は、軸方向下側の軸受保持部60まで延びる。導通部材80の軸方向下側の端部82側は、軸方向下側の軸受保持部60の下面に配置される。すなわち、導通部材80は、一方の端部81側において、ケーシング40とブラケット70との間でブラケット70と接触し、他方の端部82側において、ケーシング40に配置される他方の軸受保持部60と接触する。
【0029】
なお、導通部材80の軸方向下側の端部82側は、軸方向下側の軸受保持部60の下面まで延びず、当該軸受保持部60の側面まで延びることにしても良い。これにより、導通部材80の長さを短くすることができる。すなわち、使用材料の低減を図ることが可能である。
【0030】
導通部材80の軸方向上側の端部81側には、ケーシング40とブラケット70との間において、導通部材80とブラケット70とが接触する接触領域92が配置される。接触領域92において、導通部材80の、ブラケット70との接触面は、上側を向く。接触領域92において、ブラケット70の、導通部材80との接触面は、下側を向く。すなわち、導通部材80とブラケット70とが接触する接触領域92の互いの接触面は、軸方向において対向する。
【0031】
上記実施形態の構成によれば、導通部材80とブラケット70とは軸方向に接触する。ブラケット70をケーシング40に取り付ける際、ブラケット70は、ケーシング40の軸方向上方から軸方向に沿って、ケーシング40の軸方向上端部に固定されるが、導通部材80とブラケット70との接触領域92で、導通部材80とブラケット70とは擦れない。これにより、導通部材80と、ブラケット70との導通状態を安定させることが可能である。
【0032】
ここで、
図5に示すように、ブラケット70は、ブラケット70の軸方向下側に配置され、径方向外側を向く接合周面71を有する。ブラケット70とケーシング40との固定領域91では、ブラケット70の接合周面71と、ケーシング40の軸方向上端部の内周面41とが接合する。固定領域91において、例えば、ブラケット70は、ケーシング40に圧入され、固定される。ブラケット70をケーシング40に取り付ける際、ブラケット70とケーシング40との固定領域91では、ブラケット70とケーシング40とが擦れる。
【0033】
図6は、モータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す径方向外側から見た部分斜視図である。
図7は、モータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す径方向内側から見た部分斜視図である。
【0034】
導通部材80は、ケーシング40の外周面42の軸方向上端部まで延び、径方向内側に向かって折り曲げられる。さらに、導通部材80は、ケーシング40の軸方向上端面43に沿って径方向内側に向かって延びる。さらに、導通部材80は、折り返し部(第1折り返し部)811でブラケット70の接触面側、すなわち軸方向上側に折り返して径方向外側に向かって延び、接触領域92に至る。
【0035】
折り返し部811は、ブラケット70の接合周面71に対して、径方向の微小な隙間を有する。これにより、折り返し部811は、ケーシング40の内周面41よりも径方向外側に配置される。すなわち、接触領域92は、ケーシング40の内周面41よりも径方向外側に配置される。この構成によれば、導通部材80は、ブラケット70とケーシング40との固定領域91に配置されることがない。すなわち、ブラケット70をケーシング40に取り付ける際、導通部材80は擦れない。これにより、導通部材80と、ブラケット70との導通状態を安定させることが可能である。また、導通部材80が、ケーシング40の内側のロータ20やステータ30に接触しないようにすることができる。これにより、ロータ20の回転性能に影響を及ぼすことを回避することが可能である。
【0036】
そして、導通部材80は、ブラケット70との接触領域92の径方向内側に第1折り返し部812を有する。導通部材80は、ケーシング40の外周面42の軸方向上端部からケーシング40の軸方向上端面43に沿って径方向内側に向かって延び、さらに折り返し部811でブラケット70の接触面側に折り返して径方向外側に向かって延び、接触領域92に至る。この構成によれば、導通部材80は、導通部材80とブラケット70との接触領域92において、軸方向に、導通部材80が存在する領域が大きくなる。これにより、例えばケーシング40とブラケット70との軸方向の間に隙間が生じた場合であっても、導通部材80とブラケット70とを容易に接触させることができる。
【0037】
ケーシング40の外周部は、凹部44と、傾斜部45と、を有する。
【0038】
凹部44は、ケーシング40の外周部の、軸方向上端部に配置される。凹部44は、ケーシング40の外周部から径方向内側に向かって窪む。導通部材80の軸方向上側の一部は、凹部44に配置される。
図6に示すように、凹部44の周方向の幅W1は、導通部材80の周方向の幅W2と同じか、若しくは幅W2よりも広い。
【0039】
導通部材80を凹部44に配置すれば、導通部材80の径方向位置は、ケーシング40の最も径方向外側の外周面よりも径方向内側になる。これにより、ブラケット70をケーシング40に取り付ける際に、ケーシング40の外周部の箇所において、導通部材80とブラケット70とが接触しないようにすることができる。したがって、ブラケット70をケーシング40に取り付ける際に、導通部材80とブラケット70とが擦れることを回避することが可能である。また、例えば、凹部44の周方向の幅W1が、導通部材80の周方向の幅W2と同じであれば、導通部材80の周方向への変位を防止することができる。
【0040】
傾斜部45は、ケーシング40の外周部の、軸方向上側に配置される。凹部44の軸方向下壁は、軸方向に対して傾斜した傾斜部45として構成される。すなわち、傾斜部45は、凹部44の軸方向下部に配置される。傾斜部45は、軸方向に向かうにつれて径方向に傾く。詳細に言えば、本実施形態において、傾斜部45は、軸方向下側に向かうにつれて径方向外側に向かって傾く。導通部材80の軸方向上側の一部は、傾斜部45に対向して配置される。
【0041】
すなわち、ケーシング40の外周部は、軸方向に向かうにつれて径方向に傾く傾斜部45を有する。導通部材80の一部は、傾斜部45に対向して配置される。この構成によれば、導通部材80をケーシング40の外周部に沿わせて径方向内側に導く場合に、傾斜部45によって滑らかに導くことができる。すなわち、ケーシング40の外周部において、導通部材80に大きく屈曲する箇所が生じることを回避することができる。これにより、導通部材80による導通状態を安定させることが可能である。
【0042】
図2、
図3及び
図4に示すように、モータ1は、押さえ部材100を有する。
【0043】
押さえ部材100は、ブラケット70の軸方向上側と、ケーシング40の軸方向下側と、に配置される。押さえ部材100は、中心軸Cを中心とする環状である。軸方向上側の押さえ部材100は、ブラケット70の中心部に配置される。軸方向上側の押さえ部材100は、軸方向上側の軸受保持部60の径方向外側に配置される。軸方向下側の押さえ部材100は、ケーシング40の中心部に配置される。軸方向下側の押さえ部材100は、軸方向下側の軸受保持部60の径方向外側に配置される。押さえ部材100は、例えば防振ゴムで構成され、軸受保持部60の径方向外側に嵌合して固定される。なお、押さえ部材100は、モータ1の内部の熱を外部に放出するための、例えば放熱用のフィン等を有していても良い。
【0044】
軸方向下側の押さえ部材100は、軸方向下側から導通部材80に接触する。すなわち、押さえ部材100は、モータ1の軸方向両端部のうち少なくとも一端部に配置され、軸方向外側から導通部材80に接触する。この構成によれば、導通部材80の軸方向下側の端部82が、モータ1本体から剥がれることを防止することが可能である。
【0045】
<3.モータの変形例>
図8は、変形例1のモータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す部分縦断面図である。変形例1のモータ1の、ケーシング40の外周面42は、導通部材80が配置された領域の軸方向全域にわたって、軸方向と平行に延びる。ブラケット70の固定領域91よりも径方向外側の領域は、径方向外端まで軸方向と直交して延びる。
【0046】
導通部材80は、第1折り返し部812と、第2折り返し部813と、を有する。
【0047】
第1折り返し部812は、導通部材80とブラケット70との接触領域92の径方向内側、且つケーシング40の内周面41よりも径方向外側に配置される。導通部材80は、ケーシング40の外周面42の軸方向上端部からケーシング40の軸方向上端面43に沿って径方向内側に向かって延び、さらに第1折り返し部812でブラケット70の接触面側に折り返して径方向外側に向かって延び、接触領域92に至る。
【0048】
第2折り返し部813は、導通部材80とブラケット70との接触領域92の径方向外側に配置される。導通部材80は、第2折り返し部813において、ブラケット70の径方向外端面72に沿って軸方向に延び、さらにブラケット70の軸方向上端面73に沿って径方向内側に向かって延びる。導通部材80の軸方向上側の端部81側の一部は、ブラケット70の径方向外端よりも径方向外側に配置される。
【0049】
図9は、変形例2のモータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す部分縦断面図である。変形例2のモータ1の、ケーシング40の外周部は、傾斜部46を有する。傾斜部46は、ケーシング40の外周部の、軸方向上端部に配置される。傾斜部46は、軸方向上側に向かうにつれて径方向内側に向かって傾く。ブラケット70の固定領域91よりも径方向外側の領域は、径方向外側に向かって軸方向と直交して延びる。ブラケット70の径方向外端部は、軸方向下側に向かって延びる。
【0050】
導通部材80の一部は、傾斜部46に対向して配置される。導通部材80の軸方向上側の端部81側の一部は、ブラケット70の径方向外端よりも径方向外側に配置される。導通部材80は、第1折り返し部812と、第2折り返し部813と、を有する。導通部材80の、接触領域92の径方向外側であって、接触領域92と第2折り返し部813との間の部分は、傾斜部46に対向して配置される。
【0051】
なお、ブラケット70は、傾斜部46と対向する領域に、傾斜部46と平行な斜面部を有していても良い。これにより、当該斜面部に対向する導通部材80の一部と、傾斜部46に対向する導通部材80の一部とが一緒に、ブラケット70によって軸方向下側に押し付けられる。したがって、導通部材80をケーシング40の外周面から剥がれ難くすることが可能である。
【0052】
図10は、変形例3のモータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す部分縦断面図である。変形例3のモータ1の、ケーシング40の外周部は、段部47を有する。
【0053】
段部47は、ケーシング40の外周部の、軸方向上側に配置される。段部47よりも軸方向上側のケーシング40の外周部の直径は、段部47よりも軸方向下側のケーシング40の外周部の直径よりも小さい。
【0054】
導通部材80の一部は、段部47に対向して配置される。導通部材80の軸方向上側の端部81側の一部は、ブラケット70の径方向外端よりも径方向外側に配置される。導通部材80は、第1折り返し部812と、第2折り返し部813と、を有する。第1折り返し部812は、ケーシング40の軸方向上端面43における径方向中央部に配置される。
【0055】
上記の変形例1、変形例2、変形例3で示したように、導通部材80の端部側の一部は、ブラケット70の径方向外端よりも径方向外側に配置される。この構成によれば、導通部材80の軸方向上側の端部81が、ケーシング40の内部に入り込まないようにすることができる。これにより、ロータ20の回転性能に影響を及ぼすことを回避することが可能である。
【0056】
また、上記の変形例で示したように、導通部材80は、ブラケット70との接触領域92の径方向外側に第2折り返し部813を有する。導通部材80は、第2折り返し部813において、ブラケット70の径方向外端面72に沿って軸方向に延び、さらにブラケット70の軸方向上端面73に沿って径方向内側に向かって延びる。この構成によれば、導通部材80とブラケット70との接触領域92を増加させることができる。これにより、導通部材80とブラケット70との導通状態を安定させることが可能である。
【0057】
図11は、変形例4のモータ1の導通部材80とブラケット70との接触領域92周辺を示す部分縦断面図である。変形例4のモータ1の、ケーシング40の軸方向上端部は、陥没部48と、傾斜部49と、を有する。
【0058】
陥没部48は、ケーシング40の軸方向上端面43に配置される。陥没部48は、ケーシング40の軸方向上端面43から軸方向内側、すなわち軸方向下側に向かって窪む。導通部材80の軸方向上側の一部は、陥没部48に配置される。陥没部48の周方向の幅は、導通部材80の周方向の幅と同じか、若しくは幅W2よりも広い。また、陥没部48は、ケーシング40の軸方向上端面43の全周にわたって形成されても良い。陥没部48の軸方向の深さは、折り返し部811で折り返された導通部材80の厚みと同じか、若しくは当該厚みよりもやや浅い。この場合、導通部材80を圧縮させて、ブラケット70をケーシング40に取り付けることができる。
【0059】
すなわち、ケーシング40の軸方向端部は、軸方向内側に向かって窪む陥没部48を有する。導通部材80の一部は、陥没部48に配置される。陥没部48の周方向の幅は、導通部材80の周方向の幅以上である。導通部材80を陥没部48に配置すれば、導通部材80の軸方向位置は、ケーシング40の軸方向上端面43よりも軸方向下側になる。これにより、ブラケット70をケーシング40に取り付ける際、接触領域92において、導通部材80に必要以上に圧力がかかることを抑制することができる。また、この構成によれば、ブラケット70をケーシング40に取り付ける際に、ブラケット70が軸方向上側に浮く状態になることを抑制することができる。したがって、モータ1の組立精度を向上させることができる。
【0060】
傾斜部49は、ケーシング40の軸方向上端面43に配置される。陥没部48の径方向外壁は、軸方向上端面43に対して傾斜した傾斜部49として構成される。すなわち、傾斜部49は、陥没部48の径方向外側部に配置される。傾斜部49は、径方向に向かうにつれて軸方向に傾く。詳細に言えば、本実施形態において、傾斜部49は、径方向外側に向かうにつれて軸方向上側に向かって傾く。導通部材80の軸方向上側の一部は、傾斜部49に対向して配置される。
【0061】
すなわち、ケーシング40の軸方向端部は、径方向に向かうにつれて軸方向に傾く傾斜部49を有する。導通部材80の一部は、傾斜部49に対向して配置される。この構成によれば、導通部材80をケーシング40の軸方向端部に沿わせて軸方向下側に導く場合に、傾斜部49によって滑らかに導くことができる。すなわち、ケーシング40の軸方向端部において、導通部材80に大きく屈曲する箇所が生じることを回避することができる。これにより、導通部材80による導通状態を安定させることが可能である。
【0062】
<4.その他>
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態やその変形例は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えばモータにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・モータ、10・・・シャフト、20・・・ロータ、21・・・マグネット、30・・・ステータ、31・・・ステータコア、32・・・インシュレータ、33・・・コイル、40・・・ケーシング、40a・・・孔部、41・・・内周面、42・・・外周面、43・・・軸方向上端面、44・・・凹部、45・・・傾斜部、46・・・傾斜部、47・・・段部、48・・・陥没部、49・・・傾斜部、50・・・軸受、60・・・軸受保持部、70・・・ブラケット、71・・・接合周面、72・・・径方向外端面、73・・・軸方向上端面、80・・・導通部材、81・・・端部、82・・・端部、91・・・固定領域、92・・・接触領域、100・・・押さえ部材、311・・・コアバック、312・・・ティース、811・・・折り返し部(第1折り返し部)、812・・・第1折り返し部、813・・・第2折り返し部、C・・・中心軸、W1・・・幅、W2・・・幅