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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】接触端子、検査治具、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20220802BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017178752
(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2019052996
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141200(JP,A)
【文献】特開2007-024664(JP,A)
【文献】特開2008-275399(JP,A)
【文献】特開2002-303638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26-31/28
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、
導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体とを備え、
当該中心導体は、前記筒状体に挿入された状態で設置される棒状本体と、前記筒状体の外部に突出した状態で設置される先端側接続部とを有し、
当該先端側接続部の基端部には、前記筒状体の内径よりも大きな幅寸法を有する広幅部が形成され、
前記筒状体の一端部には、左右一対のスリットが形成され、
当該スリットに前記広幅部の両側辺部が挿入され
前記スリットは、前記筒状体の一端側に至るほどスリット幅が大きくなるよう傾斜したテーパ状部を有し、
前記テーパ状部の、前記一端側とは逆側の端部における前記スリット幅は、前記広幅部の板厚よりも小さく、
前記スリットの、前記テーパ状部よりも前記一端側の逆側には、一定のスリット幅を有するスリット本体部が形成され、
前記テーパ状部と前記スリット本体部との間には、当該スリット本体部及び前記広幅部の板厚に比べてスリット幅が小さく形成された抜け止め部が形成され、
前記スリットの前記一端側とは逆側の端部である基端部には、スリット幅が大きくなるように切り欠かれた切欠部が設けられ、
前記両側辺部は、前記スリット本体部に位置している接触端子。
【請求項2】
前記筒状体は、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部を有している請求項1記載の接触端子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接触端子と、
前記接触端子を支持する支持部材とを備える検査治具。
【請求項4】
請求項記載の検査治具と、
前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査に使用される接触端子、この接触端子を検査対象に接触させるための検査治具、及びその検査治具を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中間位置にばね部が形成された筒状体(円筒部材)に円柱状の中心導体(棒状部材)が挿通された検査装置用の接触端子、及びこの接触端子を用いた検査治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この接触端子は、筒状体から中心導体の先端部を突出させた状態で、筒状体の一端付近に中心導体の本体部が溶着、又はカシメ加工される等により固着されている。これにより、筒状体の他端部が電極部に接触し、中心導体の先端部が検査対象に当接した状態となると、ばね部の弾性復元力に応じて、筒状体の他端部が電極部側に付勢されるとともに、中心導体の先端部が検査対象側に付勢されて、電極部及び検査対象に対する接触端子の接触状態が安定化されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-53931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の検査治具には、極細径の接触端子が多数設置され、この接触端子を構成する中心導体(小径の導電部)が、ばね部を有する筒状体に溶着、又はカシメ加工される等により、固着されるように構成されているため、この固着作業が極めて煩雑である。すなわち、ユーザーが、例えば1mm以下の直径を有する極細径の筒状体内に中心導体の本体部を挿入した後、筒状体の軸部を圧縮してカシメ加工する等の煩雑な固着作業を行わなければならないため、接触端子を容易かつ適正に製造することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、容易かつ適正に製造することが可能な接触端子、検査治具、及び検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接触端子は、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体とを備え、当該中心導体は、前記筒状体に挿入された状態で設置される棒状本体と、前記筒状体の外部に突出した状態で設置される先端側接続部とを有し、当該先端側接続部の基端部には、前記筒状体の内径よりも大きな幅寸法を有する広幅部が形成され、前記筒状体の一端部には、左右一対のスリットが形成され、当該スリットに前記広幅部の両側辺部が挿入されている。
【0007】
この構成によれば、ユーザーが、棒状本体を筒状体内に挿入するとともに、広幅部の両側辺部を筒状体のスリット内に挿入するだけで、筒状体を中心導体とを一体に連結することができる。したがって、極細径の筒状体に中心導体を溶着、又はカシメ加工する等の煩雑な等の煩雑な固着作業を要することなく、接触端子を容易かつ適正に製造することができる。
【0008】
また、前記筒状体は、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、前記接触端子を用いて基板等の検査を行う際に、筒状体のばね部を弾性変形させることにより、その復元力に応じて、接触端子の一端部を検査対象の被検査点に適正圧で圧接させることができる。また、接触端子の他端部を電極に適正圧で圧接させることができるという利点がある。
【0010】
また、前記スリットの基端部には、スリット幅が大きくなるように切り欠かれた切欠部が設けられている構成とすることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ユーザーが、中心導体の広幅部をスリットに挿入する際に、前記切欠部を起点として筒状体の周壁部を揺動変位させて筒状体の一端部を広げることにより、前記挿入操作を容易に行うことができるという利点がある。
【0012】
また、前記スリットは、前記筒状体の一端側に至るほどスリット幅が大きくなるよう傾斜したテーパ状部を有した構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、ユーザーが、中心導体の広幅部をスリット内に挿入する際に、テーパ状部を案内面として利用することにより、スリットに対する広幅部の挿入操作をスムーズに行うことができる。しかも、テーパ状部の基端部におけるスリット幅を、広幅部の板厚よりも小さな値に設定することにより、棒状本体が筒状体内に挿入された際に、広幅部の両側辺部にテーパ状部の基端部を強固に圧着させて、中心導体と筒状体とを確実に導通接触させることができる。
【0014】
また、前記スリットの先端部には、当該スリットの基端部に比べてスリット幅が小さく形成された抜け止め部が設けられている構成とすることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、広幅部の両側辺部がスリット内に挿入されることにより、筒状体と中心導体とが一体に連結された状態を、簡単な構成で安定して維持することができるという利点がある。
【0016】
また、前記スリットの先端部側には、スリット幅が前記筒状体の一端側に至るほど大きくなるよう傾斜したテーパ状部が形成され、当該スリットの基端部側には、一定のスリット幅を有するスリット本体部が形成され、前記テーパ状部と前記スリット本体部との間には、当該スリット本体部に比べてスリット幅が小さく形成された抜け止め部が形成された構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、ユーザーが、中心導体の広幅部をスリット内に挿入する際に、テーパ状部を案内面として利用することにより、前記挿入操作をスムーズに行うことができる。そして、広幅部の両側辺部が抜け止め部を乗り越えてスリット本体部内に挿入されることにより、筒状体と中心導体との連結状態が安定して維持されるという利点がある。
【0018】
また、本発明に係る検査治具は、上述の接触端子と、これを支持する支持部材とを備える。
【0019】
この構成によれば、半導体素子等からなる検査対象の検査に使用する検査治具を容易かつ適正に製造することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る検査装置は、上述の検査治具と、前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える。
【0021】
この構成によれば、検査対象の検査に使用する検査装置を容易かつ適正に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
このような構成の接触端子、検査治具及び検査装置は、これらを容易かつ適正に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示す検査装置に設けられた検査部の別の一例を示す斜視図である。
図3図1図2に示す検査治具の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図4】接触端子の具体的構成を示す斜視図である。
図5】接触端子を筒状体と中心導体とに分解した構成を示す側面図である。
図6図5に示す中心導体に設けられた広幅部の構造を示す平面図である。
図7】検査対象に接触端子の端部が圧接された検査状態を示す断面図である。
図8】本発明に係る接触端子の第一変形例を示す側面図である。
図9】本発明に係る接触端子の第二変形例を示す側面図である。
図10】本発明に係る接触端子の第三変形例を示す側面図である。
図11】本発明に係る接触端子の第四変形例を示す側面図である。
図12】本発明に係る接触端子の第五変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置1の構成を概略的に示す概念図である。基板検査装置1は検査装置の一例に相当している。図1に示す基板検査装置1は、検査対象の一例である基板101に形成された回路パターンを検査するための装置である。
【0026】
基板101は、例えばプリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、半導体基板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板であってもよい。なお、検査対象は、基板に限らず、例えば半導体素子(IC:Integrated Circuit)等の電子部品であってもよく、その他にも電気的な検査を行う対象となるものであればよい。
【0027】
図1に示す基板検査装置1は、検査部4U,4Dと、基板固定装置6と、検査処理部8とを備えている。基板固定装置6は、検査対象の基板101を所定の位置に固定するように構成されている。検査部4U,4Dは、検査治具3U,3Dを備えている。検査部4U,4Dは、図略の駆動機構によって、検査治具3U,3Dを、互いに直交するX,Y,Zの三軸方向に移動可能に支持し、さらに検査治具3U,3Dを、Z軸を中心に回動可能に支持している。
【0028】
検査部4Uは、基板固定装置6に固定された基板101の上方に位置する。検査部4Dは、基板固定装置6に固定された基板101の下方に位置する。検査部4U,4Dには、基板101に形成された回路パターンを検査するための検査治具3U,3Dが着脱可能に配設されている。検査部4U,4Dは、それぞれ、検査治具3U,3Dと接続されるコネクタ41を備えている。以下、検査部4U,4Dを総称して検査部4と称する。
【0029】
検査治具3U,3Dは、それぞれ、複数のプローブ(接触端子)Prと、各プローブPrを支持する支持部材31と、ベースプレート321とを備えている。プローブPrは接触端子の一例に相当している。ベースプレート321には、各プローブPrの基端部と接触して導通する後述の電極が設けられている。検査部4U,4Dは、ベースプレート321に設けられた各電極を介して各プローブPrの後端を、検査処理部8と電気的に接続したり、その接続を切り替えたりする図略の接続回路を備えている。
【0030】
プローブPrは、全体として略棒状の形状を有し、その具体的な構成の詳細については後述する。支持部材31には、各プローブPrを支持する複数の貫通孔が形成されている。各貫通孔は、検査対象となる基板101の配線パターン上に設定された被検査点の位置と対応するように配置されることにより、各プローブPrの先端部が基板101の被検査点に接触するように構成されている。例えば、複数のプローブPrは、格子の交点位置に対応するように配設されている。当該格子の桟に相当する方向が、互いに直交するX軸方向及びY軸方向と一致するように向けられている。被検査点は、例えば基板101のはんだバンプ、配線パターン、接続端子等からなっている。
【0031】
検査治具3U,3Dは、プローブPrの配置が異なる点と、検査部4U,4Dへの取り付け方向が上下逆である点を除き、互いに同様に構成されている。以下、検査治具3U,3Dを総称して検査治具3と称する。検査治具3は、検査対象となる基板101の種類に応じて取り替え可能に構成されている。
【0032】
検査処理部8は、例えば電源回路、電圧計、電流計、及びマイクロコンピュータ等を備えている。検査処理部8は、図略の駆動機構を制御して検査部4U,4Dを移動、位置決めし、基板101の各被検査点に、各プローブPrを接触させる。これにより、各被検査点と、検査処理部8とが電気的に接続される。この状態で、検査処理部8は、検査治具3の各プローブPrを介して基板101の各被検査点に検査用の電流又は電圧を供給し、各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、例えば回路パターンの断線や短絡等の基板101の検査を実行する。あるいは、検査処理部8は、交流の電流又は電圧を各被検査点に供給することによって各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、検査対象のインピーダンスを測定するものであってもよい。
【0033】
図2は、図1に示す基板検査装置1に設けられた検査部4の別の一例を示す斜視図である。図2に示す検査部4aは、いわゆるICソケット35に検査治具3が組み込まれて構成されている。検査部4aは、検査部4のような駆動機構を備えず、ICソケット35に取り付けられたICのピン、バンプ、あるいは電極等にプローブPrが接触する構成とされている。図1に示す検査部4U,4Dの代わりに検査部4aを設けることで、検査対象を、例えば半導体素子(IC)とし、検査装置をIC検査装置として構成することができる。
【0034】
図3は、図1に示す支持部材31及びベースプレート321を備えた検査治具3の構成の一例を示す断面図である。図3に示す支持部材31は、例えば板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されることにより構成されている。図3の上方側に位置する支持プレート31aが支持部材31の前端側となり、図3の下方側に位置する支持プレート31cが支持部材31の後端側となるように配設されている。そして、支持プレート31a,31b,31cを貫通するように、複数の貫通孔Hが形成されている。
【0035】
支持プレート31b及び支持プレート31cには、所定径の開口孔からなる挿通孔部Haがそれぞれ形成されている。また、支持プレート31aには、挿通孔部Haよりも小径の貫通孔からなる小径部Hbが、検査対象である基板101の被検査点と対向する部位に形成されている。そして、支持プレート31aの小径部Hbと、支持プレート31b及び支持プレート31cの挿通孔部Haとが連通されることにより、プローブPrの設置部となる貫通孔Hが形成されている。
【0036】
なお、支持部材31は、板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されて構成される例に限らず、例えば一体の部材に、小径部Hb及び挿通孔部Haからなる貫通孔Hが設けられた構成としてもよい。また、支持部材31の支持プレート31b,31cを互いに積層した例に代え、支持プレート31bと支持プレート31cとを互いに離間させた状態で、例えば支柱等により連結した構成としてもよい。
【0037】
支持プレート31cの後端側には、例えば絶縁性の樹脂材料により構成されたベースプレート321が取り付けられ、このベースプレート321により貫通孔Hの後端側開口部、つまり挿通孔部Haの後端面が閉塞されている。ベースプレート321には、貫通孔Hの後端側開口部に対向する位置において、ベースプレート321を貫通するように配線34が取り付けられている。支持プレート31cに対向するベースプレート321の前面と、配線34の端面とが面一になるように設定されている。この配線34の端面が、電極34aとされている。
【0038】
支持部材31の各貫通孔Hに挿入されて支持されるプローブPrは、導電性を有する素材により円筒状等に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により断面円形の棒状に形成された中心導体Pbとを備えている。
【0039】
図4は、プローブPrからなる接触端子の具体的構成を示す斜視図であり、図5は、プローブPrを筒状体Paと中心導体Pbとに分解して示す側面図であり、図6は、中心導体Pbに設けられた広幅部Pb3の具体的構造を示す平面図である。
【0040】
筒状体Paとしては、例えば約25~300μmの外径と、約10~250μmの内径とを有するニッケルあるいはニッケル合金のチューブを用いて形成することができる。例えば、筒状体Paの外径を約120μm、内径を約100μm、全長を約1700μmとすることができる。また、筒状体Paの内周には、金メッキ等のメッキ層を施し、かつ筒状体Paの周面を、必要に応じて絶縁被覆した構造としてもよい。
【0041】
支持部材31の前端側に配設される、筒状体Paの一端部には、後述するように中心導体Pbに設けられた広幅部Pb3の両側辺部が圧入される一対のスリットPa1が、筒状体Paの軸方向に延びるように形成されている。一方、支持部材31の後端側に配設される、筒状体Paの他端部には、筒状体Paの一端部と同様に筒状体Paの軸方向に延びる一対のスリットPa2が形成されている。
【0042】
また、筒状体Paの両端部を除く部分には、筒状体Paの軸方向に伸縮する螺旋状のばね部Pa3が所定長さに亘って形成されている。例えば、図示を省略したレーザ加工機から筒状体Paの周壁にレーザ光が照射されて、螺旋溝Pa4が形成されることにより、筒状体Paの周面に沿って螺旋状に延びる螺旋状体からなるばね部Pa3が構成される。
【0043】
なお、筒状体Paの周壁を例えばエッチングして螺旋溝Pa4を形成することにより、螺旋状体からなるばね部Pa3を設けてもよい。また、例えば電鋳により筒状体Paの周壁に螺旋溝Pa4を形成することによっても、ばね部Pa3を設けることができる。
【0044】
図4図6に示すように、中心導体Pbは、筒状体Pa内に挿入された状態で設置される断面円形の棒状本体Pb1と、筒状体Paの外部に突出した状態で設置される断面円形の先端側接続部Pb2とを有している。棒状本体Pb1は、その外径が筒状体Paの内径よりもやや小さい値に設定されることにより、筒状体Pa内に挿入可能に構成されている。
【0045】
先端側接続部Pb2の基端部、つまり棒状本体Pb1と先端側接続部Pb2との間には、筒状体Paの内径よりも大きな幅寸法を有する広幅部Pb3が形成されている。また、棒状本体Pb1と広幅部Pb3との軸方向長さの合計値は、筒状体Paの全長よりも短い値に設定されている。これにより、中心導体Pbの棒状本体Pb1及び広幅部Pb3が筒状体Pa内に挿入された際に、棒状本体Pb1の基端面が筒状体Pa内に位置するようになっている。
【0046】
広幅部Pb3は、例えば断面円形の棒状本体Pb1と先端側接続部Pb2との間に位置する部位が、図5の左右方向に鍛圧される等により、棒状本体Pb1よりも薄肉かつ幅広に形成されている。そして、先端側接続部Pb2の基端部と広幅部Pb3との間、及び広幅部Pb3と棒状本体Pb1の先端部との間には、広幅部Pb3に近づくのに従って板厚が徐々に小さくなるとともに、幅寸法が徐々に大きくなるように形状が変化するテーパ状部Pb4がそれぞれ設けられている。
【0047】
広幅部Pb3の板厚tは、筒状体Paに形成されたスリットPa1の幅寸法、つまりスリット幅Sと略等しいか、あるいはスリット幅Sよりもやや大きく形成されている。また、広幅部Pb3の軸方向長さlは、スリットPa1の軸方向長さLよりも短く形成されている。さらに、広幅部Pb3は、少なくとも筒状体Paの内径よりも大きな幅寸法wを有し、当実施形態では広幅部Pb3の幅寸法wが筒状体Paの外径よりもやや大きな値に設定されている。
【0048】
上述の構成において、棒状本体Pb1が筒状体Pa内に挿入されるとともに、広幅部Pb3の両側辺部が筒状体PaのスリットPa1内に挿入されることにより、広幅部Pb3の両側辺部がスリットPa1の内壁面に圧着される。この結果、筒状体Paと中心導体Pbとが一体に連結されたプローブPrが組み立てられることになる。
【0049】
また、広幅部Pb3の幅寸法wは、支持部材31に形成された挿通孔部Haの内径よりも小さく形成され、これにより、図3に示すように、プローブPrの筒状体Pa及び広幅部Pb3が挿通孔部Ha内に配設されて、支持部材31に支持されるように構成されている。さらに、広幅部Pb3の幅寸法wが、支持プレート31aに形成された小径部Hbの内径よりも大きく形成されることにより、プローブPrを支持部材31に支持させた際に、中心導体Pbが支持部材31から抜け落ちることが防止されるようになっている。
【0050】
中心導体Pbの先端側接続部Pb2は、その直径が支持プレート31aに設けられた小径部Hbの内径よりも小さく形成されることより、小径部Hbに挿通可能に構成されている。また、プローブPrを支持部材31に支持させた状態で、先端側接続部Pb2の先端面が支持プレート31aの小径部Hbから支持部材31の外方に突出した状態となるように、先端側接続部Pb2の全長が、支持プレート31aの板厚よりも大きく形成されている。そして、後述する基板101等の検査時に、先端側接続部Pb2の先端面が、はんだバンプBP等からなる検査対象の被検査点に当接するように構成されている。
【0051】
支持プレート31b,31cの合計厚さ、すなわち図3に示す支持プレート31aの後端側面と、ベースプレート321の前端側面との間隔βは、筒状体Paを圧縮させる負荷が作用していないときの自然長よりわずかに短くされている。これにより、挿通孔部Ha内に配設された筒状体Paは、支持プレート31cとベースプレート321とで挟まれてやや圧縮された状態となる。そして、筒状体Paに設けられたばね部Pa3の復元力により、筒状体Paの一端部が支持プレート31aに当接し、筒状体Paの他端部が電極34aに当接した状態となるように構成されている。
【0052】
この結果、筒状体Paと電極34aとが導通接触した状態となり、筒状体Paが配線34を介して基板検査装置1の検査回路に電気的に接続される。また、筒状体Paと中心導体Pbとが導通接続されることにより、プローブPrの一端面、つまり中心導体Pbの先端面が、検査対象の基板101の被検査点に当接して、この被検査点を検査回路に電気的に接続することが可能となる。
【0053】
図7は、プローブPrの一端面が基板101の被検査点に圧接された状態を示す説明図である。被検査点は、例えばはんだバンプBP、配線パターン、接続端子等である。検査部4が基板101に対して位置決めされ、検査治具3が基板101に対して圧接されると、プローブPrの一端面が被検査点に圧接される。そうすると、プローブPrの先端部が他端部側に押圧され、筒状体Paのばね部Pa3が圧縮されて変形することにより、筒状体Paの一端部が支持部材31の後端側に押し込まれる。これに応じて発生したばね部Pa3の復元力により、プローブPrの一端面が被検査点に弾性的に圧接された状態となって、プローブPrと被検査点との接触安定性が向上する。
【0054】
このように、本発明に係る接触端子(プローブPr)は、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体Pbとを備え、中心導体Pbが、筒状体Paに挿入された状態で設置される棒状本体Pb1と、筒状体Paの外部に突出した状態で設置される先端側接続部Pb2とを有している。そして、先端側接続部Pb2の基端部には、筒状体Paの内径よりも大きな幅寸法を有する広幅部Pb3が形成され、筒状体Paの一端部には、左右一対のスリットPa1が形成され、このスリットPa1に広幅部Pb3の両側辺部が挿入されるように構成されているため、基板101等の検査に使用するプローブPr、このプローブPrを用いた検査治具、及び検査装置を容易かつ適正に製造することができる。
【0055】
すなわち、上述の実施形態では、広幅部Pb3の板厚tがスリットPa1のスリット幅Sと略等しいか、あるいはスリット幅Sよりもやや大きい値に形成されている。これにより、ユーザーが棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入する際に、広幅部Pb3の両側辺部がスリットPa1内に圧入されて内側面に圧着されるようになっている。このため、特許文献1に開示された従来技術のように、極細径の筒状体に中心導体を溶着、又はカシメ加工する等の煩雑な等の煩雑な固着作業を要することなく、筒状体Paと中心導体Pbとが一体に連結されたプローブPrを容易かつ適正に製造することができる。
【0056】
また、筒状体Paが、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部Pa3を有する構成とした場合には、基板101等の検査を行う際に、筒状体Paのばね部Pa3を弾性変形させることにより、その復元力に応じて、先端側接続部Pb2の先端面からなるプローブPrの一端面を検査対象の被検査点に適正圧で圧接させることができる。しかも、筒状体Paの他端部、及び中心導体Pbの基端部等からなるプローブPrの他端面を電極34aに適正圧で圧接させることができる。
【0057】
なお、筒状体Paの他端部に形成られたスリットPa2を省略した構造とすることも可能である。しかし、筒状体Paの両端部にスリットPa1及びスリットPa2をそれぞれ設けた構成とした場合には、これらのスリットPa1及びスリットPa2に何れに対しても中心導体Pbの広幅部Pb3を圧入することができるため、使い勝手がよいという利点がある。
【0058】
また、上述の第一実施形態に代え、広幅部Pb3を有する二本の中心導体を備え、その一方が筒状体Paの一端部側に連結されるとともに、両中心導体の他方が筒状体Paの他端部側に連結された構成とすることもできる。そして、両中心導体の一方を、はんだバンプBP等からなる検査対象の被検査点に圧接させるとともに、両中心導体の他方を電極34aに圧接させた状態で検査対象の検査を行うように構成してもよい。
【0059】
図8は、本発明に係る接触端子の第一変形例を示し、図9は、本発明に係る接触端子の第二変形例を示す側面図、図10は、本発明に係る接触端子の第三変形例を示す側面図、図11は、本発明に係る接触端子の第四変形例を示す側面図、図12は、本発明に係る接触端子の第五変形例を示す側面図である。
【0060】
図8に示す第一変形例は、筒状体Paの一端部に設けられたスリットPa1の基端部に、スリット幅が大きくなるように切り欠かれた上下一対の切欠部Pa5が形成されたものである。この構成によれば、ユーザーが、中心導体Pbの広幅部Pb3をスリットPa1に挿入する際に、切欠部Pa5を起点として筒状体Paの周壁部を図8の上下方向に揺動変位させて筒状体Paの一端部を広げることにより、前記挿入操作を容易に行うことができる。
【0061】
また、図9に示す第二変形例では、筒状体Paの端部に至るほどスリット幅が大きくなるよう傾斜したテーパ状部Pa11を有するスリットPa1が設けられている。このようにテーパ状部Pa11を有している場合には、ユーザーが、中心導体Pbの広幅部Pb3をスリットPa1内に挿入する際に、テーパ状部Pa11を案内面として利用することにより、スリットPa1に対する広幅部Pb3の挿入操作をスムーズに行うことができる。
【0062】
しかも、テーパ状部Pa11の基端部におけるスリット幅を、広幅部Pb3の板厚よりも小さな値に設定することにより、ユーザーが、棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入してプローブPrを組み立てる際に、広幅部Pb3の両側辺部にテーパ状部Pa11の基端部を強固に圧着させて、中心導体Pbと筒状体Paとを確実に導通接続することができる。
【0063】
さらに、図9に示す第二変形例においても、テーパ状部Pa11の基端部にスリット幅が大きくなるように切り欠かれた上下一対の切欠部Pa5が設けられた構成とした場合には、ユーザーが、中心導体Pbの広幅部Pb3をスリットPa1内に挿入する際に、切欠部Pa5を起点として筒状体Paの一端部を広げるように変形させることにより、前記挿入操作を容易に行うことができる。
【0064】
なお、広幅部Pb3の板厚tがスリットPa1のスリット幅Sと略等しいか、あるいはスリット幅Sよりもやや大きい値に形成されることにより、棒状本体Pb1が筒状体Pa内に挿入された際に、広幅部Pb3の両側辺部がスリットPa1に圧着されるように構成された上述の実施形態に代え、広幅部Pb3の板厚tよりもスリットPa1のスリット幅Sをやや大きい値に形成してもよい。
【0065】
この場合、図10に示す第三変形例に示すように、スリットPa1の先端部に、スリットPa1の基端部に比べてスリット幅が小さく形成された抜け止め部Pa6が設けられた構成とすることが好ましい。これにより、筒状体Paと中心導体Pbとの連結状態が、簡単な構成で安定して維持されるという利点がある。
【0066】
また、図11に示す第四変形例に示すように、スリットPa1の先端部に抜け止め部Pa6が設けられるとともに、スリットPa1の基端部にスリット幅が大きくなるように切り欠かれた上下一対の切欠部Pa5が設けられた構成としてもよい。この構成では、中心導体Pbの広幅部Pb3が抜け止め部Pa6を乗り越えてスリットPa1内に挿入される際に、切欠部Pa5を起点として筒状体Paの一端部を広げるように変形させることにより、前記挿入操作を容易に行うことができる。
【0067】
図12に示す第五変形例は、スリットPa1の先端部側に、筒状体Paの一端側に至るほどスリット幅が大きくなるよう傾斜したテーパ状部Pa12が形成されるとともに、スリットの基端部側に、一定のスリット幅を有するスリット本体部Pa13が形成されたものである。そして、テーパ状部Pa12とスリット本体部Pa13との間に、このスリット本体部Pa13に比べてスリット幅が小さく形成された抜け止め部Pa6が形成されている。
【0068】
この構成によれば、ユーザーが、中心導体Pbの広幅部Pb3をスリットPa1内に挿入する際に、テーパ状部Pa11を案内面として利用することにより、前記挿入操作をスムーズに行うことができる。そして、広幅部Pb3の両側辺部が抜け止め部Pa6を乗り越えてスリット本体部Pa13内に挿入されることにより、筒状体Paと中心導体Pbとの連結状態が安定して維持されることになる。
【0069】
また、図12に示す第五変形例においても、スリット本体部Pa13の基端部に、スリット幅が大きくなるように切り欠かれた上下一対の切欠部Pa5が設けられた構成としてもよい。これにより、中心導体Pbの広幅部Pb3が抜け止め部Pa6を乗り越える際に、切欠部Pa5を起点として筒状体Paが広げられて、前記乗り越え操作がスムーズに行われる。
【符号の説明】
【0070】
1 基板検査装置
3,3U,4D 検査治具
8 検査処理部
31 支持部材
34 配線
34a 電極
101 基板(検査対象)
L スリットの軸方向長さ
BP はんだバンプ(被検査点)
Pa 筒状体
Pa1 スリット
Pa11 テーパ状部
Pa12 テーパ状部
Pa13 スリット本体部
Pa3 ばね部
Pa4 螺旋溝
Pa5 切欠部
Pa6 抜け止め部
Pb 中心導体
Pb1 棒状本体
Pb2 先端側接続部
Pb3 広幅部
Pb4 テーパ状部
Pr プローブ(接触端子)
S スリット幅
t 板厚
w 幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12