(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B24B 49/02 20060101AFI20220802BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20220802BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20220802BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B24B49/02 A
B23Q17/20 A
B24B5/04
B24B47/22
(21)【出願番号】P 2018032334
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】牧内 明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏美
(72)【発明者】
【氏名】井上 輝之
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-084948(JP,U)
【文献】米国特許第05551906(US,A)
【文献】米国特許第05761821(US,A)
【文献】特表2015-533662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/00 - 51/00
B24B 5/00 - 5/50
B23Q 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
前記ベッドの上面に設けられ、ガイドレールに沿って移動可能なトラバーステーブルと、
前記トラバーステーブルの上面に設けられ、当該上面に対し垂直な旋回軸線回りに旋回可能な旋回テーブルと、
前記旋回テーブルの上面に設けられ、工作物の両端をそれぞれ支持し、両支持点を通る回転軸線回りに当該工作物を回転させる主軸台及び心押台と、
前記工作物の外周に向けてそれぞれ移動可能に設けられ、前記工作物の同一外周円上における前記工作物の中心軸線を通る直線との2つの交点の位置の検出がそれぞれ可能な2つの検出プローブを有する位置検出装置と、を備え
、
前記2つの検出プローブは、前記ガイドレールと平行な回転軸線回りに所定角度範囲でそれぞれ回転可能な2つのアームの自由端側にそれぞれ配置され、前記アームが前記所定角度の一方側の角度に回転したとき、前記工作物の外周位置の検出が可能な位置に位置決めされ、前記アームが前記所定角度の他方側の角度に回転したとき、前記工作物から退避した位置に位置決めされる、工作機械。
【請求項2】
前記2つのアームの自由端部は、前記2つの検出プローブが前記工作物の同一外周円上に位置するように、前記ガイドレールと平行な同一方向にそれぞれ折り曲げられる、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、前記ベッドの上面に設けられ、前記工作物の外周の研削が可能な砥石車を当該砥石車の中心軸線回りに回転可能に支持する砥石台、を備え、
前記位置検出装置は、前記砥石台に設けられる、請求項1
又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、
上面に前記主軸台及び前記心押台が設けられて前記トラバーステーブルの上面に設けられ、当該上面に対し垂直な旋回軸線回りに旋回可能な旋回テーブル、を備える、請求項1-
3の何れか一項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の工作機械としての旋盤は、工作物の外周位置を検出する1つの検出プローブを有する位置検出装置を備える。検出プローブは、主軸の中心軸線と平行な回転軸線回りに回転可能なアームの先端に固定され、主軸の中心軸線と同一高さになる検出位置と工作物に干渉しない退避位置との間で回転する。位置検出装置は、検出プローブで工作物の外周における180度隔てた対向する位置を検出し、検出した2つの外周位置に基づいて工作物の外径寸法等を算出する。
【0003】
また、特許文献2に記載の工作機械としての円筒研削盤は、工作物の外周位置を検出する2つの検出プローブを有する位置検出装置を備える。2つの検出プローブは、上下動可能な可動枠に所定間隔をあけて配置される。位置検出装置は、2つの検出プローブで工作物の外周における180度隔てた対向する位置をそれぞれ検出し、検出した2つの外周位置に基づいて工作物の外径寸法等を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭61-13243号公報
【文献】特許第2546062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検出プローブが固定されるアームは、旋盤で研削可能な最大径の工作物の直径よりも大きい長さに形成する必要がある。このため、位置検出装置は、工作物が比較的小径の場合、検出プローブで当該工作物の外周位置を検出した後、検出プローブを当該外周位置に対し180度隔てた対向する外周位置に大きく移動させる必要があり、工作物の外径寸法等の算出に時間が掛かるという問題がある。
【0006】
特許文献2に記載の2つの検出プローブは、円筒研削盤で研削可能な最大径の工作物の直径よりも大きい間隔をあけて可動枠に配置する必要がある。このため、位置検出装置は、工作物が比較的小径の場合、一方の検出プローブで当該工作物の外周位置を検出した後、他方の検出プローブを当該外周位置に対し180度隔てた対向する外周位置に大きく移動させる必要があり、工作物の外径寸法等の算出に時間が掛かるという問題がある。さらに、この移動時に一方の検出プローブが円筒研削盤に備わる振れ止め装置、定寸装置、仮受台、配管、カバー等と干渉する場合があり、その場合は工作物の外径寸法等の算出ができないという問題がある。
【0007】
本発明は、工作物の外周位置を短時間で検出できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る工作機械は、ベッドと、前記ベッドの上面に設けられ、ガイドレールに沿って移動可能なトラバーステーブルと、前記トラバーステーブルの上面に設けられ、当該上面に対し垂直な旋回軸線回りに旋回可能な旋回テーブルと、前記旋回テーブルの上面に設けられ、工作物の両端をそれぞれ支持し、両支持点を通る回転軸線回りに当該工作物を回転させる主軸台及び心押台と、前記工作物の外周に向けてそれぞれ移動可能に設けられ、前記工作物の同一外周円上における前記工作物の中心軸線を通る直線との2つの交点の位置の検出がそれぞれ可能な2つの検出プローブを有する位置検出装置とを備え、前記2つの検出プローブは、前記ガイドレールと平行な回転軸線回りに所定角度範囲でそれぞれ回転可能な2つのアームの自由端側にそれぞれ配置され、前記アームが前記所定角度の一方側の角度に回転したとき、前記工作物の外周位置の検出が可能な位置に位置決めされ、前記アームが前記所定角度の他方側の角度に回転したとき、前記工作物から退避した位置に位置決めされる。
【0009】
工作物の外周位置の検出において、配置間隔が固定された2つの検出プローブで検出する場合は、小径の工作物の検出動作時間が長くなる傾向にあるが、本発明の位置検出装置は、2つの独立動作可能な検出プローブで検出するので、上記検出動作時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の工作機械をY軸線方向から見た図である。
【
図2A】
図1の工作機械を構成する位置検出装置をY軸線方向から見た図である。
【
図2B】
図2Aの位置検出装置をZ軸線方向から見た図である。
【
図2C】
図2Aの位置検出装置をX軸線方向から見た図である。
【
図3】
図2Aの位置検出装置の動作状態を説明するための図である。
【
図4A】
図2Aの位置検出装置で小径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが退避位置に位置決めされている状態である。
【
図4B】
図2Aの位置検出装置で小径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが検出開始位置に位置決めされている状態である。
【
図4C】
図2Aの位置検出装置で小径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが第一検出位置に位置決めされている状態である。
【
図4D】
図2Aの位置検出装置で小径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが第二検出位置に位置決めされている状態である。
【
図4E】
図2Aの位置検出装置で小径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが退避位置に戻って位置決めされている状態である。
【
図5A】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、検出プローブが退避位置に位置決めされている状態である。
【
図5B】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第一検出プローブが検出開始位置に位置決めされている状態である。
【
図5C】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第一検出プローブが第一検出位置に位置決めされている状態である。
【
図5D】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第一検出プローブが退避位置に戻って位置決めされている状態である。
【
図5E】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第二検出プローブが検出開始位置に位置決めされている状態である。
【
図5F】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第二検出プローブが第二検出位置に位置決めされている状態である。
【
図5G】
図2Aの位置検出装置で大径の工作物を検出する際の動作状態を示す図であり、第二検出プローブが退避位置に戻って位置決めされている状態である。
【
図6A】
図1の工作機械を構成するカバーをY軸線方向から見た図である。
【
図7A】旋回テーブルを反時計回りに旋回したときの
図6Aのカバーの動作状態を示す図である。
【
図7B】旋回テーブルを時計回りに旋回したときの
図6Aのカバーの動作状態を示す図である。
【
図8A】
図1の工作機械を構成する主軸台の内部構造を示す断面図である。
【
図9A】円筒状の工作物の研削方法における位置検出動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9B】円筒状の工作物の研削方法における旋回テーブルの旋回動作及び研削動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図1の工作機械に工作物を搬入した状態を示す平面図である。
【
図11】
図10の工作機械に搬入された工作物の位置検出を説明するための平面図である。
【
図12】
図11の工作物の旋回を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.円筒研削盤の構成)
本実施形態に係る旋回テーブルを備える工作機械としてテーブルトラバース型の円筒研削盤について、
図1を参照して説明する。なお、
図1においては、後述するトラバーステーブル20の移動方向を直交三軸のうちのZ軸線方向とし、砥石台15の移動方向を直交三軸のうちのX軸線方向とし、Z軸線方向及びX軸線方向に直角な方向を直交三軸のうちのY軸線方向とする。
【0012】
図1に示すように、円筒研削盤10は、床面に載置されるベッド11と、ベッド11の上面に設けられるテーブルユニット12と、テーブルユニット12の上面に設けられる主軸台13及び心押台14と、ベッド11の上面に設けられ、砥石車16を有する砥石台15と、砥石台15に設けられる位置検出装置50と、ベッド11の側面に設けられる制御装置17とを備える。
【0013】
テーブルユニット12は、ベッド11の上面に設けられるトラバーステーブル20と、トラバーステーブル20の上面に設けられる旋回テーブル30と、トラバーステーブル20の上面において旋回テーブル30を旋回させるアクチュエータ40とを備える。
【0014】
トラバーステーブル20は、上面視が長尺状の矩形状に形成される。トラバーステーブル20は、図略のアクチュエータ(リニアモータ等)の駆動によって、ベッド11上にてZ軸線方向に敷設されるガイドレール21に沿って移動可能である。トラバーステーブル20の上面は、旋回テーブル30の下面が摺動可能となるように、きさげ加工等が施されている。
【0015】
旋回テーブル30は、上面視が扁平の六角形状に形成される。旋回テーブル30は、トラバーステーブル20の上面を摺動しながら、旋回軸30aを中心にY軸線回りに旋回可能に支持される。
図1には、旋回テーブル30がZ軸線に対して旋回角度θをとった状態が示されている。旋回テーブル30の下面は、トラバーステーブル20の上面と同様に、きさげ加工等が施されている。
【0016】
アクチュエータ40は、旋回テーブル30の旋回角度θを調整する。アクチュエータ40は、トラバーステーブル20の上面の一端側に設けられ、トラバーステーブル20に対する旋回テーブル30の一端側の位置を移動させる。より詳細には、アクチュエータ40は、トラバーステーブル20の上面の一端側に設けられるモータ41と、モータ41に連結されるボールねじ42と、旋回テーブル30の一端側に設けられるボールねじナット43とを備える。
【0017】
アクチュエータ40は、モータ41の駆動よりボールねじ42が回転し、ボールねじナット43の位置がX-Z平面上において移動することで、旋回テーブル30を旋回させる。そして、旋回テーブル30が旋回した状態において、旋回テーブル30をトラバーステーブル20に固定するため、旋回テーブル30の長手方向の両端側にはクランプ装置31a,31bが設けられる。
【0018】
ここで、旋回テーブル30を旋回させると、トラバーステーブル20の上面には三角形の面が露出するが、この露出面にクーラントや切削油、研削屑や砥粒等が付着すると、旋回テーブル30の旋回時に摩耗やこじれが発生し、旋回角度の精度が低下するおそれがある。そこで、トラバーステーブル20と旋回テーブル30の間には、
図6A及び
図6Bに示すように、トラバーステーブル20の上面を保護するカバー60が配置される。なお、このカバー60の詳細については後述する。
【0019】
主軸台13及び心押台14は、センタ13a及びセンタ14aをそれぞれ備え、テーブルユニット12の上面に固定される。主軸台13のセンタ13a及び心押台14のセンタ14aは、円筒状の工作物Wの両端をそれぞれ支持する。主軸台13には、工作物Wをセンタ13a,14aの両支持点を通る中心軸線回りに回転させるための主軸モータ13bが内蔵される。
【0020】
ここで、主軸台13には、
図8に示すように、センタ13aを支持するベアリング13cが内蔵される。工作物Wの回転時には、主軸モータ13bやベアリング13cの発熱等で主軸台13は高温になる。この状態で例えば非常停止等で主軸モータ13bの駆動を停止した場合、主軸台13の内部が冷却していくに従って内部圧力が低下し、主軸台13の外装に付着したクーラントや切削油等を吸い込んでしまうおそれがある。
【0021】
そこで、主軸台13には、クーラントや切削油等が主軸台13の隙間からセンタ13aを支持するベアリング13cへ浸入することを抑制するため、高圧のエアを主軸台13の外部から内部へ供給するためのエアパージ経路130(13d,13e,13f,13g)が設けられる。なお、エアパージ経路130(13d,13e,13f,13g)の詳細については後述する。
【0022】
砥石台15は、図略のアクチュエータ(リニアモータ等)の駆動によって、ベッド11上にてX軸線方向に敷設されるガイドレール15aに沿って移動可能である。砥石台15は、工作物Wの外周の研削が可能な砥石車16の中心軸線16aがZ軸線方向を向くようにして、当該砥石車16を中心軸線16a回りに回転可能に支持する。
【0023】
位置検出装置50は、砥石台15に設けられ、2つの独立動作可能な第一、第二検出プローブ51,52で工作物Wの外周位置や端面位置を検出する。1つの検出プローブで検出する場合は、検出範囲が砥石台15のX軸線方向のストロークに制限されるが、位置検出装置50は、2つの独立動作可能な第一、第二検出プローブ51,52で検出するので、検出範囲は砥石台15のX軸線方向のストロークの制限を受け難くなる。
【0024】
また、円筒研削盤10で円筒状の工作物Wを研削する場合、工作物Wに振れがあるときや、旋回テーブル30の旋回角度を0度に設定しても、工作物Wの中心軸線がトラバーステーブル20のガイドレール21に対し傾いているとき等は、工作物Wの両端側の外周位置をそれぞれ検出し、検出した外周位置に基づいて工作物Wの芯出しを行う必要がある。配置間隔が固定された2つの検出プローブで検出する場合は、小径の工作物Wの検出動作時間が長くなる傾向にあるが、位置検出装置50は、2つの独立動作可能な第一、第二検出プローブ51,52で検出するので、上記検出動作時間を短縮できる。なお、位置検出装置50の詳細については後述する。
【0025】
制御装置17は、工作物Wの回転及び砥石車16の回転を制御すると共に、工作物Wと砥石車16との相対移動(直交三軸のうちのZ軸線方向及びX軸線方向の移動)を制御することにより工作物Wの外周を研削する。また、制御装置17は、位置検出装置50の動作を制御し、検出した工作物Wの外周位置に基づいて、工作物Wの中心軸線や外径等を算出する。
【0026】
(2.位置検出装置の構成)
図2A-
図2Cに示すように、位置検出装置50は、砥石台15の上面に設けられ、砥石台15とともにベッド11上にてX軸線方向に移動可能である。これにより、位置検出装置50専用の移動装置は不要となり、コスト低減が図れる。位置検出装置50は、工作物Wの外周位置をそれぞれ検出する第一検出プローブ51及び第二検出プローブ52と、第一、第二検出プローブ51,52がそれぞれ取り付けられる第一アーム53及び第二アーム54と、第一、第二アーム53,54をそれぞれ回転させる第一油圧シリンダ55及び第二油圧シリンダ56とを備える。
【0027】
第一検出プローブ51及び第一アーム53は、砥石台15の上面前側(工作物W側)において、第一油圧シリンダ55で回転軸50aを中心にZ軸線回りに回転可能に支持され、第二検出プローブ52及び第二アーム54は、砥石台15の上面前側において、第二油圧シリンダ56で回転軸50aを中心にZ軸線回りに回転可能に支持される。
図2A-
図2Cにおいては、第一、第二検出プローブ51,52は、砥石台15に対し上方の退避位置に位置決めされた状態を示す。
【0028】
第一、第二検出プローブ51,52は、一般的な接触式のプローブであり、先端の接触子51a,52aで接触した位置をそれぞれ検出する。なお、第一、第二検出プローブ51,52は、光やレーザ等の非接触式のプローブでもよい。
第一、第二アーム53,54は、L字状にそれぞれ形成され、
図2A-
図2Cにおいては、X軸線方向に見たときに同一方向を向く逆L字となるようにして、Z軸線方向に並べて配置される。ここで、第一、第二アーム53,54におけるZ軸線方向に延びる上部を折れ曲がり部53a,54aと称し、折れ曲がり部53a,54aよりも下部を基部53b,54bと称する。
【0029】
第一、第二アーム53,54の基部53b,54bの下端側は、砥石台15の上面前側において、同一の回転軸50aを中心にZ軸線回りに自由回転可能にそれぞれ支持される。第一、第二アーム53,54の折れ曲がり部53a,54aの自由端部側には、第一、第二検出プローブ51,52の接触子51a,52aが工作物W側を向くようにして、第一、第二検出プローブ51,52が折れ曲がり部53a,54aの自由端から突出するようにそれぞれ取り付けられる。
【0030】
第一アーム53の基部53bの略中央部には、第一油圧シリンダ55のロッド55aの先端が自由回転可能に取り付けられ、第一油圧シリンダ55の後端は、砥石台15の上面後側(工作物Wとは逆側)において自由回転可能に取り付けられる。第二アーム54の基部54bの上部には、第二油圧シリンダ56のロッド56aの先端が自由回転可能に取り付けられる。第二油圧シリンダ56の後端は、砥石台15の上面後側において自由回転可能に取り付けられる。
【0031】
第一、第二アーム53,54の折れ曲がり部53a,54aは、折れ曲がり部53a,54aの自由端側にそれぞれ取り付けられる第一、第二検出プローブ51,52が同一XY平面上において平行になる長さに形成される。これにより、第一、第二検出プローブ51,52は、工作物Wの同一外円周上の外周位置をそれぞれ検出できる。
【0032】
また、第一、第二アーム53,54の折れ曲がり部53a,54aは、第一、第二検出プローブ51,52の接触子51a,52aにおける工作物Wの中心軸線C方向の位置(
図2Cの点Q)が一致する長さに形成される。これにより、接触子51a,52aは、工作物Wの中心軸線C方向の位置が一致して固定されることになるので、第一、第二アーム53,54がそれぞれ別の動作をしても、接触子51a,52aの位置決めにおいて、工作物Wの形状や工作物Wの支持などによる誤差の影響を抑制でき、精度良く測定することができる。また、第一、第二アーム53,54の折れ曲がり部53a,54aの長さを調整することで、第一、第二アーム53,54を回転させる駆動部などと干渉しないで、加工部に近い位置で測定することができる。
【0033】
また、第一アーム53の基部53bは、円筒研削盤10で加工可能な最大径の工作物Wの砥石車16と反対側(作業者側)の外周位置を検出する際、当該工作物Wと第一検出プローブ51とが干渉しない長さに形成される。なお、第一、第二アーム53,54の回転軸50aは、同一の回転軸としたが、回転軸50aを異なるものにしても良い。また、第一油圧シリンダ55や第二油圧シリンダ56は、油圧シリンダとしたが、モータやその他の駆動アクチュエータでも良い。
【0034】
(3.位置検出装置の動作)
図3に示すように、第一、第二油圧シリンダ55,56のロッド55a,56aが伸縮することにより、第一、第二アーム53,54は、第一、第二検出プローブ51,52とともに所定角度φの範囲内で回転軸50aを中心にZ軸線回りに回転する。すなわち、
図3の実線で示すように、第一、第二油圧シリンダ55,56のロッド55a,56aの伸長により、第一、第二アーム53,54が所定角度φの一方側(工作物W側)の角度に回転したとき、第一、第二検出プローブ51,52は、工作物Wの外周位置の検出が可能な検出開始位置に位置決めされる。
【0035】
そして、第一、第二検出プローブ51,52は、工作物Wの中心軸線Cを挟んで180度隔てた外周位置、すなわち工作物Wの外周円CCと工作物Wの中心軸線C及び砥石車16の中心軸線16aを通るX軸線に平行な直線Sとの2つの交点P1,P2(以下、「第一、第二検出位置P1,P2」という)の位置のXZ座標値を検出する。
【0036】
また、
図3の一点鎖線で示すように、第一、第二油圧シリンダ55,56のロッド55a,56aの縮小により、第一、第二アーム53,54が所定角度φの他方側の角度に回転したとき、第一、第二検出プローブ51,52は、上述の検出開始位置から上方(Y軸線方向)へ退避した退避位置に位置決めされる。このように、第一、第二検出プローブ51,52は、それぞれ独立して検出開始位置と退避位置の間を移動できるので、一方の検出プローブの検出時のときに他方の検出プローブが工作物W等と干渉する場合は、他方の検出プローブは退避して当該干渉を回避できる。
【0037】
例えば、
図4Aに示すように、第一、第二検出プローブ51,52における工作物Wの径方向の配置間隔Hよりも小径d(<H)の工作物Wの第一、第二検出位置P1,P2を検出する場合を説明する。なお、位置検出装置50は、第一、第二アーム53,54を回転する際に、第一、第二検出プローブ51,52が当該工作物Wと干渉しない位置に位置決めされているものとする。
【0038】
先ず、
図4Bに示すように、図略の第一、第二油圧シリンダ55,56のロッド55a,56aを伸長させて第一、第二アーム53,54を同時に回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を検出開始位置に位置決めする。このとき、第一、第二検出プローブ51,52の接触子51a,52aは、工作物Wの外周からそれぞれ離間している。
【0039】
次に、
図4Cに示すように、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wから離間する方向に移動させ、第一検出プローブ51の接触子51aを工作物Wの外周に接触させて第一検出位置P1を検出する。次に、
図4Dに示すように、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wに接近する方向に移動させ、第二検出プローブ52の接触子52aを工作物Wの外周に接触させて第二検出位置P2を検出する。
【0040】
その後、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wから離間する方向に移動させ、第一、第二検出プローブ51,52を検出開始位置に戻す。そして、
図4Eに示すように、第一、第二油圧シリンダ55,56のロッド55a,56aを縮小させて第一、第二アーム53,54を同時に回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を検出開始位置から上方の退避位置に位置決めする。以上により、当該工作物Wの第一、第二検出位置P1,P2の検出が完了する。
【0041】
また、例えば、
図5Aに示すように、第一、第二検出プローブ51,52における工作物Wの径方向の配置間隔Hよりも大径D(>H)の工作物Wの第一、第二検出位置P1,P2を検出する場合を説明する。なお、位置検出装置50は、第一アーム53を回転する際に、第一検出プローブ51が当該工作物Wと干渉しない位置に位置決めされているものとする。
【0042】
先ず、
図5Bに示すように、図略の第一油圧シリンダ55のロッド55aを伸長させて第一アーム53を回転させ、第一検出プローブ51を検出開始位置に位置決めする。このとき、第一検出プローブ51の接触子51aは、工作物Wの外周から離間している。
【0043】
次に、
図5Cに示すように、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wから離間する方向に移動させ、第一検出プローブ51の接触子51aを工作物Wの外周に接触させて第一検出位置P1を検出する。その後、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wに接近する方向に移動させ、第一検出プローブ51を検出開始位置に戻す。
【0044】
そして、
図5Dに示すように、第一油圧シリンダ55のロッド55aを縮小させて第一アーム53を回転させ、第一検出プローブ51を検出開始位置から上方の退避位置に位置決めする。
【0045】
次に、
図5Eに示すように、図略の第二油圧シリンダ56のロッド56aを伸長させて第二アーム54を回転させ、第二検出プローブ52を検出開始位置に位置決めする。このとき、第二検出プローブ52の接触子52aは、工作物Wの外周から離間している。
【0046】
次に、
図5Fに示すように、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wに接近する方向に移動させ、第二検出プローブ52の接触子52aを工作物Wの外周に接触させて第二検出位置P2を検出する。その後、位置検出装置50(砥石台15)をX軸線方向の工作物Wから離間する方向に移動させ、第二検出プローブ52を検出開始位置に戻す。
【0047】
そして、
図5Gに示すように、第二油圧シリンダ56のロッド56aを縮小させて第二アーム54を回転させ、第二検出プローブ52を検出開始位置から上方の退避位置に位置決めする。以上により、当該工作物Wの第一、第二検出位置P1,P2の検出が完了する。
【0048】
(4.カバーの構成)
従来の円筒研削盤は、砥石台の両側にカバーを設けてテーブル上面におけるクーラントや切削油、研削屑や砥粒等の付着を防止するもの(特許第3923769号公報、特許第3065536号公報参照)があるが、円筒研削盤が大型化する問題がある。
【0049】
本実施形態の円筒研削盤10では、
図6A及び
図6Bに示すように、カバー60は、プラスチックシート等で旋回テーブル30の長手方向の長さと略同一であって旋回テーブル30の短手方向にジャバラとなる構造に形成される。ジャバラを閉じたときのカバー60の長手方向中央部は、旋回テーブル30の
図6Aの上側(砥石台15側)の長手側面中央に突出して設けられる取着部32に取着される。
【0050】
ジャバラを閉じたときのカバー60の長手方向中央部は、取着箇所からクーラントや切削油等が浸入しないように取着部32に取着される。そして、カバー60の
図6Aの上側(砥石台15側)の長手側面は、ガイド部材33の長手側面に密着され、カバー60の
図6Aの下側(砥石台15とは反対側)の長手側面は、旋回テーブル30の
図6Aの上側(砥石台15側)の長手側面に密着される。
【0051】
取着部32は、長尺の直方体状のガイド部材33の中央に設けられる回転軸33aに自由回転可能に支持される。そして、ガイド部材33は、トラバーステーブル20の
図6Aの上側(砥石台15側)の長手側面に設けられる溝部22内にガタを持った状態でZ軸線方向に摺動可能に配置される。
【0052】
(5.カバーの動作)
図7Aに示すように、旋回テーブル30が旋回軸30aを中心にY軸線回りに反時計回りに旋回すると、ガイド部材33は溝部22内でZ軸線方向(図示左方向)に摺動する。また、
図7Bに示すように、旋回テーブル30が旋回軸30aを中心にY軸線回りに時計回りに旋回すると、ガイド部材33は溝部22内でZ軸線方向(図示右方向)に摺動する。
【0053】
この状態では、旋回テーブル30の旋回軸30aとカバー60の長手中央部がオフセットしているため、旋回角度が大きくなるにつれて、カバー60に摺動方向への内部荷重が発生し、カバー60が損傷するおそれがある。しかし、ガイド部材33は、溝部22内においてガタがあるので、カバー60には摺動方向への内部荷重は発生しないか、発生しても小さい。よって、カバー60の損傷を抑制できる。
【0054】
また、トラバーステーブル20における旋回面(上面)は、カバー60によりクーラントや切削油、研削屑や砥粒等の付着を防止できるので、旋回面の平坦度を長期に維持でき、旋回テーブル30の高精度な位置決めによる加工精度の向上が可能となる。また、カバー60は、旋回テーブル30の旋回時にベッド11から飛び出さない構造であるので、円筒研削盤10のコンパクト化により装置コストの低減を図ることができ、また作業性を高めて加工品の信頼性を向上できる。
【0055】
(6.エアパージ経路の構成)
従来の円筒研削盤は、高圧のエアを主軸台の外部から内部へ供給してクーラントや切削油等の浸入を防止するもの(特許第4867277号公報、特許第5931103号公報参照)がある。しかし、研削時に砥石車の回転で加速されてエアの圧力に打ち勝つクーラントや切削油等が発生すると、クーラントや切削油等が主軸台の隙間から浸入する問題がある。
【0056】
本実施形態の円筒研削盤10では、
図8A-
図8Cに示すように、エアパージ経路130(13d,13e,13f,13g,13h,13i)は、ベアリング13cに対し工作物W側に設けられる前側エアパージ室13dと、ベアリング13cに対し主軸モータ13b側に設けられる後側エアパージ室13eと、前側エアパージ室13dと後側エアパージ室13eの間に設けられる大気圧室13fと、大気圧室13fの底部から外部に連通する排出穴13gとを備える。なお、排出穴13gは、図略のパイプにより主軸台13から離れた位置に導かれている。
【0057】
図示矢印で示すように、エアは、前側エアパージ室13dから工作物W側へ向けて噴出される。また同時に大気圧室13fに向けて供給されるとともに、後側エアパージ室13eから大気圧室13fに向けて供給される。そして、大気圧室13fに供給されるエアは、排出穴13gを通って外部に排気される。大気圧室13f内は外気圧につながっているため、恒に大気圧に保たれる。このため、後側エアパージ室13eは、恒に大気圧室13fより高い気圧となる。
【0058】
前述したように非常停止等により主軸台13の内部が冷却された場合、外部のエアが排出穴13gから大気圧室13fを通って主軸台13の内部に供給される。大気圧室13fは、通常はクーラントや切削油等が直接供給される箇所ではないため、クーラントや切削油等が主軸台13の内部に浸入する可能性は低い。また、大気圧室13fと工作物W側は同じ大気圧であるため、冷却によるエアの移動は発生しない。
【0059】
また、上述したようにエアの圧力に打ち勝つクーラントや切削油等が発生し、クーラントや切削油等が大気圧室13fに浸入したとしても、クーラントや切削油等は大気圧室13fで圧力が低下するので、さらに奥のベアリング13cまで浸入する可能性は低い。
【0060】
また、エアに混じってクーラントや切削油等が大気圧室13f内に浸入しても、エアとともにクーラントや切削油等は大気圧室13fの底部の排出穴13gから外部に自然に排出される。なお、排出穴13gは、大気圧室13fの底部に設けられているため、外部からのクーラントや切削油等の浸入は防止される。
【0061】
(7.制御装置の動作)
制御装置17における円筒状の工作物Wの研削動作(加工方法)について
図9A、
図9B及び
図10-
図13を参照して説明する。なお、
図4Aに示すように、研削前の工作物Wの外径dは、第一、第二検出プローブ51,52における工作物Wの径方向の配置間隔Hよりも小さい(d<H)とする。ただし、研削前の工作物Wの外径dが、第一、第二検出プローブ51,52における工作物Wの径方向の配置間隔Hよりも大きい場合(d>H)も同様に適用できる。
【0062】
また、
図10に示すように、工作物Wは、一点鎖線で示す目標径がddの円筒形状に研削するものとする。また、通常の研削は、空研削、粗研削、精研削、微研削、スパークアウトの各工程を行うが、以下の説明では、便宜上、粗研削及び精研削を行う場合について説明する。
【0063】
制御装置17は、位置検出装置50が工作物Wの一端側(主軸台13側)の外周に接近するように、砥石台15及びトラバーステーブル20をX軸線方向及びZ軸線方向に移動する(
図9AのステップS1)。なお、第一、第二検出プローブ51,52は、退避位置に位置決めされているものとする。
【0064】
制御装置17は、位置検出装置50で
図10に示す工作物Wの一端側(主軸台13側)における第一外周円CC1上の第一、第二検出位置P1f,P2fの検出が可能なように、予め入力されている砥石台15に対する第一、第二検出プローブ51,52の位置座標及び工作物Wの外径等に基づいて、砥石台15及びトラバーステーブル20を位置決めする(
図9AのステップS2)。
【0065】
制御装置17は、第一、第二油圧シリンダ55,56を作動させて第一、第二アーム53,54を回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を検出位置に位置決めする(
図9AのステップS3)。そして、砥石台15を工作物Wの外周から離間する方向に移動し、第一検出プローブ51を工作物Wの第一外周円CC1上の第一検出位置P1fに接触させ、検出した工作物Wの第一検出位置P1fのXZ座標値(X1f,Z1f)を記憶する(
図9AのステップS4、
図11参照)。
【0066】
次に、制御装置17は、砥石台15を工作物Wの外周に接近する方向に移動し、第二検出プローブ52を工作物Wの第一外周円CC1上の第二検出位置P2fに接触させ、検出した工作物Wの第二検出位置P2fのXZ座標値(X2f,Z2f)を記憶する(
図9AのステップS5、
図11参照)。そして、第一、第二油圧シリンダ55,56を作動させて第一、第二アーム53,54を回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を退避位置に位置決めする(
図9AのステップS6)。
【0067】
制御装置17は、位置検出装置50で
図10に示す工作物Wの他端側(心押し台14側)における第二外周円CC2上の第一、第二検出位置P1b,P2bの検出が可能なように、予め入力されている砥石台15に対する第一、第二検出プローブ51,52の位置座標及び工作物Wの外径等に基づいて、砥石台15及びトラバーステーブル20を位置決めする(
図9AのステップS7)。
【0068】
制御装置17は、第一、第二油圧シリンダ55,56を作動させて第一、第二アーム53,54を回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を検出位置に位置決めする(
図9AのステップS8)。そして、砥石台15を工作物Wの外周から離間する方向に移動し、第一検出プローブ51を工作物Wの第二外周円CC2上の第一検出位置P1bに接触させ、検出した工作物Wの第一検出位置P1bのXZ座標値(X1b,Z1b)を記憶する(
図9AのステップS9、
図11参照)。
【0069】
次に、制御装置17は、砥石台15を工作物Wの外周に接近する方向に移動し、第二検出プローブ52を工作物Wの第二外周円CC2上の第二検出位置P2bに接触させ、検出した工作物Wの第二検出位置P2bのXZ座標値(X2b,Z2b)を記憶する(
図9AのステップS10、
図11参照)。そして、第一、第二油圧シリンダ55,56を作動させて第一、第二アーム53,54を回転させ、第一、第二検出プローブ51,52を退避位置に位置決めする(
図9AのステップS11)。そして、工作物Wの研削は完了したか否かを判断する(
図9AのステップS12)。
【0070】
制御装置17は、工作物Wの研削が完了していないときは、記憶した第一外周円CC1上の第一、第二検出位置P1f,P2fのXZ座標値(X1f,Z1f),(X2f,Z2f)及び第二外周円CC2上の第一、第二検出位置P1b,P2bのXZ座標値(X1b,Z1b),(X2b,Z2b)に基づいて、工作物Wの第一、第二外周円CC1,CC2の中心位置Cpf,Cpb(一端側中心位置、他端側中心位置)のXZ座標値(Xcf,Zcf),(Xcp,Zcp)を算出する(
図9BのステップS13、
図11参照)。
【0071】
すなわち、
図11に示すように、第一外周円CC1上の第一検出位置P1fのX座標値X1fと第一外周円CC1の中心位置CpfのX座標値XcfとのX軸線方向の距離aは、第一外周円CC1上の第二検出位置P2fのX座標値X2fと第一外周円CC1の中心位置CpfのX座標値XcfとのX軸線方向の距離aと等しい。よって、距離aは、式(1)で表され、中心位置CpfのX座標値Xcfは、式(2)で表される。なお、Z座標値も同様に表される。また、第二外周円CC2も同様に表される。以上から、式(3)及び式(4)が求まるので、工作物Wの第一、第二外周円CC1,CC2の中心位置Cpf,Cpb(一端側中心位置、他端側中心位置)のXZ座標値(Xcf,Zcf),(Xcp,Zcp)を算出できる。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
そして、工作物Wの第一、第二外周円CC1,CC2の中心位置Cpf,Cpbを通る直線を工作物Wの中心軸線Cとして算出する(
図9BのステップS14、
図11参照)。これにより、工作物Wの中心軸線Cは自動的に容易に求められる。なお、ステップS1-S14は、本発明の「中心軸線演算部」、「中心軸線演算工程」に相当する。
【0077】
制御装置17は、第一外周円CC1の中心位置CpfのX座標値Xcfと第二外周円CC2の中心位置CpbのX座標値Xcbが同一であるか否かを判断する(
図9BのステップS15)。そして、第一外周円CC1の中心位置CpfのX座標値Xcfと第二外周円CC2の中心位置CpbのX座標値Xcbが同一でないときは、工作物Wの中心軸線Cが第一外周円CC1の中心位置Cpfから第二外周円CC2の中心位置Cpbに向かって正に傾斜(
図10において右肩上がり)しているか否かを判断する(
図9BのステップS16)。
【0078】
制御装置17は、工作物Wの中心軸線Cが第一外周円CC1の中心位置Cpfから第二外周円CC2の中心位置Cpbに向かって正に傾斜しているとき(本例の場合)は、旋回テーブル30を
図10の時計回りに式(5)で表される旋回角度θcだけ旋回し(
図9BのステップS17、
図12参照)、工作物Wの中心軸線Cをトラバーステーブル20のガイドレール21と平行にすることで工作物Wの芯出しを行い、ステップS19へ進む。
【0079】
一方、制御装置17は、工作物Wの中心軸線Cが第一外周円CC1の中心位置Cpfから第二外周円CC2の中心位置Cpbに向かって負に傾斜(
図10において左肩上がり)しているときは、旋回テーブル30を
図10の反時計回りに式(6)で表される旋回角度θuだけ旋回し(
図9BのステップS18)、工作物Wの中心軸線Cをトラバーステーブル20のガイドレール21と平行にすることで工作物Wの芯出しを行い、ステップS19へ進む。なお、ステップS15-ステップS18は、本発明の「旋回テーブル旋回部」、「旋回テーブル旋回工程」、「第一旋回テーブル旋回工程」に相当する。
【0080】
【0081】
【0082】
制御装置17は、芯出しを行った工作物Wを回転させるとともに砥石車16を回転させ(
図9BのステップS19)、砥石車16が工作物Wの一端側(主軸台13側)の外周に接近するように、砥石台15及びトラバーステーブル20をX軸線方向及びZ軸線方向に移動する(
図9BのステップS20)。
【0083】
制御装置17は、砥石台15を工作物Wに向けて移動し、砥石車16が工作物Wの外周に接触してから粗研削時の切込量まで切り込んだら、砥石台15の移動を停止する。そして、トラバーステーブル20を砥石車16に対し工作物Wの一端側(主軸台13側)から他端側(心押し台14側)に向かうように移動し、砥石車16で工作物Wを粗研削する(
図9BのステップS21)。
【0084】
制御装置17は、粗研削が完了したか否かを判断し(
図9BのステップS22)、粗研削が完了していないときは、ステップS20に戻って上述の処理を繰り返す。一方、粗研削が完了したときは、砥石車16が工作物Wの一端側(主軸台13側)の外周に接近するように、砥石台15及びトラバーステーブル20をX軸線方向及びZ軸線方向に移動する(
図9BのステップS23)。
【0085】
制御装置17は、砥石台15を工作物Wに向けて移動し、砥石車16が工作物Wの外周に接触してから精研削時の切込量まで切り込んだら、砥石台15の移動を停止する。そして、トラバーステーブル20を砥石車16に対し工作物Wの一端側(主軸台13側)から他端側(心押し台14側)に向かうように移動し、砥石車16で工作物Wを精研削する(
図9BのステップS24)。そして、精研削が完了したか否かを判断し(
図9BのステップS25)、精研削が完了していないときは、ステップS23に戻って上述の処理を繰り返す。なお、ステップS19-S25は、本発明の「加工工程」に相当する。
【0086】
一方、制御装置17は、ステップS25において、精研削が完了したときは、ステップS1に戻って上述した位置検出装置50による処理(
図9AのステップS1-11)を行う。そして、ステップS12において、工作物Wの研削は完了したか否かを判断し、この場合は工作物Wの研削は完了しているので、ステップS26に進んで第一外周円CC1上の第一、第二検出位置P1f,P2fのX座標値X1f,X2f及び第二外周円CC2上の第一、第二検出位置P1b,P2bのX座標値X1b,X2bを式(7)及び式(8)に代入し、第一、第二外周円CC1,CC2の外径d1,d2を算出する(
図9BのステップS26)。
【0087】
【0088】
【0089】
そして、制御装置17は、第一、第二外周円CC1,CC2の外径d1,d2が目標径ddと同一であるか否かを判断し(
図9BのステップS27)、第一、第二外周円CC1,CC2の外径d1,d2が目標径ddと同一でないときは、ステップS23に戻って上述の処理を繰り返す。一方、制御装置17は、ステップS27において、第一、第二外周円CC1,CC2の外径d1,d2が目標径ddと同一であるときは、全ての処理を終了する。以上により、工作物Wの最終形状は、
図13に示すように、外径が目標径ddの高精度な円筒状に研削される。
【0090】
(8.その他)
上記実施形態においては、位置検出装置50による工作物Wの外周位置の検出は、粗研削及び精研削の完了後に行うようにしたが、粗研削の完了後及び精研削の完了後にそれぞれ行うようにしてもよい。これにより、工作物Wの加工精度をさらに向上できる。
また、位置検出装置50は、砥石台15と共に移動可能に設けられるが、位置検出装置50の専用の移動装置で単独移動可能に設けるように構成してもよい。
【0091】
また、位置検出装置50は、砥石台15の上面に設けられるので、第一、第二アーム53,54の回転軸線は砥石車16の回転軸線と異なる位置となっている。しかし、第一、第二アーム53,54の回転軸線と砥石車16の回転軸線とが同軸となるように第一、第二アーム53,54を設けるようにしてもよい。これにより、位置検出装置50は、砥石車16の回転軸線、すなわち中心を基準に位置検出できるので、熱変位の影響を受け難く、高精度な位置検出を維持できる。
【0092】
また、工作機械としてテーブルトラバース型の円筒研削盤を例にあげたが、砥石台トラバース型の円筒研削盤に適用可能である。また、本発明は、円筒研削盤に限らず、他の工作機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10:円筒研削盤、 11:ベッド、 13:主軸台、 14:心押台、 17:制御装置、 20:トラバーステーブル、 30:旋回テーブル、 50:位置検出装置、 51:第一検出プローブ、 52:第二検出プローブ、 53:第一アーム、 54:第二アーム、 W:工作物