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特許7114929セラミック成形用のシート型、およびそれを用いたセラミック成形方法
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  • 特許-セラミック成形用のシート型、およびそれを用いたセラミック成形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】セラミック成形用のシート型、およびそれを用いたセラミック成形方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/02 20060101AFI20220802BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220802BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20220802BHJP
   B44C 3/12 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B28B3/02 J
B32B27/00 Z
B32B38/18 F
B44C3/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018034049
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147318
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横井 敏浩
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064022(WO,A1)
【文献】特開2010-005901(JP,A)
【文献】特開2011-228674(JP,A)
【文献】特開2008-155413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00-7/44
B32B 27/00
B32B 38/18
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック原料を上型と下型とでプレス成型する際に用いられ、前記上型または下型と
前記セラミック原料との間に介在させて成形体の表面に凹凸模様を付与するための、セラ
ミック成形用のシート型であって、
シート状の基材と、当該基材の表面に形成された樹脂層とを備え、
前記樹脂層はセラミック成形体の表面に付与される凹凸模様を形成可能な立体形状を有するものであり、
前記樹脂層は紫外線硬化樹脂を用いて形成され、
前記樹脂層は、前記紫外線硬化樹脂が半硬化の状態であり、かつ、タックのない状態である、シート型。

【請求項2】
前記上型または下型が無端ベルトである、請求項1に記載のシート型。
【請求項3】
請求項1に記載のシート型を用いてなるセラミックの成形方法であって、
前記上型または前記下型に、前記シート型を装着する工程と、
前記セラミック原料を前記下型に供給する工程と、
前記下型および前記上型をプレスしてセラミック成形体を得る工程と
を含んでなることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に所定の模様を有するセラミック成形体を得るためのシート型、およびそれを用いた表面に所定の模様を有するセラミック成形体を得るためのプレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック成形体を作製する方法としてプレス成形法が広く知られており、例えば、上型、下型、および枠型を備えるラムプレスを用いたプレス成形法が使用されている。また、大型セラミック板を成形するために、無端ベルトを用いたプレス成形法が使用されることがある。一方、セラミック製品に意匠を施すため、セラミック成形体に当該意匠を付与しておくことが通常行われるが、この場合、当該意匠を直接形成したプレス形成型が一般に用いられている。
【0003】
例えば、特表2016-538162号公報(特許文献1)には、無端ベルトをプレス型に用い、この無端ベルトの表面に付加印刷により立体構造を形成することが開示されている。つまり、特許文献1にあっては、付加印刷によりプレス型に直接立体構造が形成されている。また、立体的に造形された成形型の例として、特開2017-024012号公報(特許文献2)には、光造形法または3次元プリンタを用いて作製された光硬化型樹脂製の成形型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-538162号公報
【文献】特開2017-024012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術にあっては、プレス成形機の成形型に直接所望の立体形状を形成するため、セラミック製品毎に専用の成形型を用意する必要があり、時間とコストがかかる。とりわけ、セラミック製品が大型の場合、大型セラミック板に凹凸のある特殊面状を付与するためにはより特別な成形型が必要であり、このような成形型の作製にかかる時間とコストは多大である。また、大型セラミック板等の特殊製品は汎用品に比べて少量生産される可能性が高く、成形型の作製にかかる高額な費用を償却することが困難となる。そのため、短期間かつ低コストで大型セラミック板への特殊面状の加飾を可能にする成形型の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、大型セラミック板への特殊面状の加飾を簡易化することができ、ひいては、意匠提案力の向上および意匠開発期間の短縮が可能な手法を提供するものである。
【0007】
したがって、本発明は、短時間かつ低コストで作製することができ、それ故大型セラミック板への特殊面状の加飾を簡易化できるセラミック成形用シート型の提供をその目的としている。
【0008】
そして、本発明によるセラミック成形用シート型は、セラミック原料を上型と下型とでプレス成型する際に用いられ、前記上型または下型と前記セラミック原料との間に介在させて成形体の表面に凹凸模様を付与するための、セラミック成形用のシート型であって、シート状の基材と、当該基材の表面に形成された樹脂層とを備え、前記樹脂層は紫外線硬化樹脂を積層してなるものであり、前記紫外線硬化樹脂が半硬化の状態であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるセラミック成形方法は、上型または下型に、本発明によるセラミック成形用シート型を装着する工程と、セラミック原料を前記下型に供給する工程と、前記下型および前記上型をプレスしてセラミック成形体を得る工程とを含んでなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるセラミック成形用シート型が装着された成形機の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
セラミック成形用シート型
図1を参照しつつ本発明によるセラミック成形用のシート型について説明する。本発明のシート型1は、その表面に、セラミック成形体の表面に付与したい立体形状(凹凸模様)を形成可能な立体形状12(凸凹模様)が形成されてなるシート状の部材である。シート型1は、プレス成形機2が備える平面を形成するための上型21および下型22とは別個のものであり、セラミック原料3をプレス成形する際に、上型21または下型22とセラミック原料3との間に介在させて用いられる。例えば、図1に示す態様では、シート型1を上型21に装着し、シート型1の立体形状12がセラミック原料3と接するようにしている。これにより、シート型1の立体形状12が反映された凹凸模様を成形体に付与することができる。なお、図1に示す例において、上型21はスライド5に接するように設置され、下型22はボルスタ4に接するように設置されている。
【0012】
プレス成形機のプレス型と本発明のシート型を別個の部材とし、プレス成形時にシート型をプレス型に装着して用いることにより、目的とする成形体に応じたシート型を短時間かつ低コストで効率的に作製することができる。これにより、目的とする成形体を需要に応じて効率的に生産することが可能となる。斯かる生産モデルは、例えば、セラミック製品に多種多様な面状または特殊もしくは複雑な面状を短時間かつ低コストで加飾することを可能とする。とりわけ、特殊面状等の加飾が必要な大型セラミック板を多種少量生産する場合に非常に有利である。短時間かつ低コストで作製可能なシート型は、このシート型を使い捨て可能な部材として提供することを可能とするとともに、このシート型を用いて製造されるセラミック製品に係る意匠提案力の向上および意匠開発期間の短縮を可能とする。
【0013】
本発明のシート型1は、シート状の基材11と、この基材11の表面に形成される樹脂層12を含む。樹脂層12は、セラミック成形体の表面に付与したい凹凸模様を形成可能な立体形状12を有する。シート型1を2層構造とすることにより、セラミック成形体に付与したい凹凸模様を形成可能な立体形状12を付加的に形成することができる。また、立体形状12を樹脂層とすることで、印刷等の手段により、立体形状を低廉に、または簡易に形成することができる。
【0014】
基材
シート型1の基材11はシート状物である。基材11は、シート型1が装着されるプレス型(21、22)、好ましくは無端ベルトの屈曲に追従可能な柔軟性を有していることが好ましい。このような基材11の材質は、織布に合成樹脂を含浸または積層した複合材であることが好ましい。また、基材11は、樹脂層12を形成するためのインクが吸収されない程度に、吸水性が低い素材であることが好ましい。また、基材11の厚さは、成形時の圧力により基材11が変形したり、基材11が圧力を吸収して成形不良を発生したりすることがないように、0.1mm以上1mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上0.5mm以下である。
【0015】
樹脂層
シート型1の樹脂層12は紫外線硬化樹脂を用いて形成され、セラミック成形体の表面に付与される凹凸模様を形成可能な立体形状を有する。また、樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂は半硬化の状態とされる。
【0016】
本発明のより好ましい態様によれば、樹脂層12は、基材11に、インクジェット印刷により、重合成分および光重合開始剤を含むラジカル重合型の紫外線硬化性インクを適用し、紫外線を照射してインクを硬化させて得られた層を複数積層することにより、作製される。目的とするセラミック成形体の表面構造を形成可能な所定の印刷パターンでインクジェット印刷することにより、所望の表面構造(凹凸形状)が形成された樹脂層12を得る。紫外線照射は単層を形成する毎に行うことが好ましい。
【0017】
本発明にあっては、上に述べたとおり、紫外線硬化樹脂が半硬化の状態で樹脂層12が形成される。紫外線硬化樹脂が「半硬化の状態」とは、硬化が不完全な状態、すなわち、紫外線硬化樹脂中に重合性官能基が残存しており、それにより硬化が未だ不十分で、柔軟性を保った状態を意味する。また、インクが紫外線にさらに反応して硬化する余地を残していながら、インクの流動性がない状態を意味し、好適には、樹脂層12のタックが無い状態を意味する。タックとは、樹脂層12の表面に指の腹を当て、離した時に樹脂層12が指に付かない状態をいう。本発明において、半硬化の状態は、紫外線照射条件、例えば、照度、波長、時間、タイミングの1以上を調整して実現される。
【0018】
樹脂層12を形成する紫外線硬化樹脂を半硬化の状態とすることにより、シート型1に可撓性または耐屈曲性を付与することができる。つまり、シート型1は取扱いが容易であるうえ、割れや破損等の不具合が発生しない。このようなシート型1を成形機2の成形型に装着して用いることにより、目的とする成形体を効率的に生産することが可能となる。その結果、セラミック製品に多種多様な面状または特殊もしくは複雑な面状を短時間かつ低コストで加飾することが可能となる。とりわけ、特殊面状等の加飾が必要な大型セラミック板を多種少量生産できるとともに、大型セラミック板に係る意匠提案力が向上し、意匠開発期間が短縮される。シート型1は、プレス成形に広く一般に用いられている型に装着する際の作業性に優れている。本発明のシート型1は、例えば、タイル成形用金型に好適に適用可能であり、無端ベルトからなるプレス型により好適に適用可能である。
【0019】
さらに、紫外線硬化樹脂が半硬化の状態で形成された樹脂層12は、布や反物状の基材の表面に容易に形成することができる。このようにして得られた可撓性または耐屈曲性を有するシート型1は巻き取り性に優れるため、大板セラミック用の成形型としても容易に取扱うことができる。また、シート型1を巻き取る際や、成形時の加圧下において、シート型1の樹脂層12は割れたり、破損したりしないとの利点を有する。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、樹脂層12は、シート型1が装着されるプレス型(21、22)、好ましくは無端ベルトの屈曲に追従可能な柔軟性を有する。また、樹脂層12は、プレス成型の圧力により形状が保持できる程度の硬さを有する。
【0021】
紫外線硬化性インクを硬化させるために照射する紫外線の光源としては、従来公知のUV硬化性インクジェットインクに使用する光源が採用され得る。例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等が挙げられる。市販品としては、例えばFusionSystem社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等が挙げられる。また、紫外線硬化性インクを硬化させるために必要な紫外線の所要量は、積算光量で50~1000mJ/cmの照射で硬化するものであることが好ましく、50~200mJ/cmで硬化するものであることがより好ましい。
【0022】
重合成分
紫外線硬化性インクに含まれる重合成分として、公知の重合成分を用いることができるが、好ましい重合成分は(メタ)アクリルモノマーである。
【0023】
(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定はなく公知の(メタ)アクリルモノマーを使用することができる。例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル、イソボニル等の置換基を有する単官能メタアクリレート、また、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジメタアクリレート、また、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジメタアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリメタアクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、ジペンタエリスリトールのポリメタアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸メタアクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸メタアクリレート等の多官能メタアクリレート等が挙げられる。
【0024】
紫外線硬化性インクは多官能モノマーを含んでいてもよい。多官能モノマーを併用することで硬化物(樹脂層12)の強度及び耐溶剤性を上げることが可能である。紫外線硬化性インクが含み得る多官能モノマーとしては、特に限定はなく公知の多官能モノマーを使用できる。例えば、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、ヘキサメチレンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールのポリアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸アクリレート等の多官能アクリレート、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物等のビニルエーテル基を有する重合性化合物等が挙げられる。これらは単独でもよく、2種類以上併用して用いることもできる。
【0025】
紫外線硬化性インクは、硬化塗膜性能を上げる観点から、分子量の高いアクリレートオリゴマー等の反応性オリゴマーを含んでもよい。反応性オリゴマーの量は、インクジェット噴射の際にサテライトが発生する可能性を低くするため、少量が好ましい。例えば、重合成分全量に対し20質量%を超えない量がより好ましい。
【0026】
反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられ、2種類以上併用して用いることができる。
【0027】
光重合開始剤
紫外線硬化性インクに含まれる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合開始剤が使用される。
【0028】
ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられる。さらに、これら以外の分子開裂型のものとして、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が採用され得る。また、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型光重合開始剤も採用され得る。これらは一種のみでもよく複数種が混合されてもよい。
【0029】
紫外線硬化性インクを硬化させるために照射する紫外線の光源としてUV-LEDランプを使用する場合には、UV-LEDの発光ピーク波長を加味して光重合開始剤を選択することが好ましい。例えばUV-LEDを使用する場合に適した光重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0030】
添加剤
紫外線硬化性インクは任意成分として以下に述べる添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
紫外線硬化性インクは、光重合開始剤に対する増感剤を含んでいてもよい。この増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、重合性成分と付加反応を起こさないアミン類が挙げられる。
【0032】
紫外線硬化性インクは、インクの保存安定性を高めるため、ハイドロキノン、メトキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合禁止剤をインク中に0.01~2質量%の範囲で含んでいてもよい。
【0033】
紫外線硬化性インクは、着色剤を含む着色用インク又は着色剤を含まないインクであってもよい。インクが着色剤を含む場合は、所望の色に着色した樹脂層12を得ることができる。インクが着色剤を含まない場合は、色の付いていない樹脂層12を得ることができる。着色剤は顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0034】
厚みのある樹脂層12を作製する場合には、着色剤として染料を用いると、透明かつ着色効果のある立体物が得られる。染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、油性染料など、従来インクジェット記録に使用されてきた各種染料が挙げられる。中でも、油性染料がインク重合成分への溶解性及び硬化物の発色性の点で特に好ましい。
【0035】
不透明な樹脂層12を得るには着色材として顔料を採用することが好ましく、例えば、無機顔料及び有機顔料を採用することができる。
【0036】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、及び、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0037】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200Bなどが、コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、キャポット社製のRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、デグッサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、Color Black S150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、Special Black6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0038】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0039】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントヴァイオレット19等が挙げられる。
【0040】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、60、16、22が挙げられる。
【0041】
前記顔料の平均粒径は、10~300nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50~200nm程度のものである。また前記着色剤の添加量、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、インク全量の1~20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0042】
前記顔料は、前記重合成分等に対する分散安定性を高める目的で顔料分散剤を用いることが好ましい。具体的には、味の素ファインテクノ社製のアジスパー(登録商標)PB821、PB822、PB817、アビシア社製のソルスパース(登録商標)24000GR、32000、33000、39000、楠本化成社製のディスパロン(登録商標)DA-703-50、DA-705、DA-725等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、高分子分散剤の使用量は、顔料に対して10~80質量%の範囲が好ましく、特に20~60質量%の範囲が好ましい。使用量が10質量%以上で十分な分散安定性が得られ、80質量%以下でインクの粘度が高くなることを抑え、吐出安定性が向上する。
【0043】
紫外線硬化性インクは、基材11に対する接着性の付与等を目的に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル等の非反応性樹脂等を含んでいてもよい。添加量は少量とすることが好ましい。なぜなら、サテライトが発生する可能性を低減させることができ、また、耐溶剤性の低下を防ぐことができるからである。
【0044】
紫外線硬化性インクは、本発明の効果を損なわず、且つ吐出安定性を損なわない範囲において、必要に応じて界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類含んでいてもよい。
【0045】
セラミック原料
本発明において、セラミック原料は、粘土鉱物およびガラス質鉱物を少なくとも含むことが好ましい。
【0046】
粘土鉱物として好適に用いることができる材料は、例えば、粘土、陶石、蝋石、カオリン、セリサイト等セラミックの骨格を形成する物質の少なくとも一種である。より好ましい材料は粘土、陶石の双方またはいずれかである。粘土としては、天然粘土または合成粘土を用いることができる。天然粘土の具体例としては、粘土鉱物を主体とする可塑性の強い土壌、例えば本宮粘土、木節粘土、頁岩粘土、村上粘土,蛙目粘土などを挙げることができる。合成粘土としては、各種の鉱物質粉末及び有機結合剤を主成分として人工的に作製されたものを用いることができる。
【0047】
粘土鉱物の含有量は原料調合物全量に対して10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であることが、より好ましい。なお、原料調合物全量とは、セラミック原料の総量を意味し、湿式成形において添加される水や、界面活性剤または有機高分子などの、乾燥工程や焼成工程において消失する成分は含まれないものとする。
【0048】
ガラス質鉱物として好適に用いることができる材料は、例えば、長石および白雲母等である。より好ましい材料は長石であり、アルカリ長石および曹長石からなる群から選択される少なくとも一種であることが、さらに好ましい。ガラス質鉱物の含有量は原料調合物全量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることが、より好ましい。
【0049】
本発明において、セラミック原料は、灰長石、石灰石、珪灰石より選択されるCaを含有する化合物、骨材、色材等の任意成分をさらに含んでいてもよい。
【0050】
灰長石、石灰石、珪灰石より選択されるCaを含有する化合物の含有量は原料調合物全量に対して0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。Caを含有する化合物の含有量を低く抑えることにより、セラミック中にアノーサイトが生成されることを抑え、セラミックの結晶相をムライトが主生成物となるようにすることができる。
【0051】
本発明において、セラミック原料は骨材を含んでもよい。骨材を添加することにより、成形体の乾燥に伴う割れの発生を抑えることが可能となる。骨材の粒径は1.7mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。粒径が1.7mm以下の骨材を用いることにより、セラミックの吸水率を低下させることができる。また、骨材の粒径は0.1mm以上であることが好ましい。これにより、湿式成形を行なう場合は、坏土の乾燥時の水抜けがよくなり乾燥時間を短縮することができる。骨材として好適に用いることができる材料は、例えば、シャモット、珪石等が挙げられるが、I類のタイル等の低吸水性セラミックを原料とするセルベンを用いることが、より好ましい。また、骨材の含有量は原料調合物全量に対して0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
本発明において、セラミック原料は色材を含んでもよい。色材としては、公知の無機顔料を利用でき、着色素地を得る場合は顔料を好適に利用できる。顔料としては、FeまたはCrを含有する無機系顔料を好適に用いることができる。これらの色材の含有量は原料調合物全量に対して0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明において、セラミック原料として、好ましくは噴霧乾燥、いわゆるスプレードライにより調製した坏土粒(顆粒)を用いることが好ましい。具体的には、粘土と無機繊維、さらには任意の陶磁器原料を水に混合してスラリーを形成した後、これをスプレードライヤーにて顆粒を形成して坏土粒を得る方法により製造される。このように製造されることで、上記の本発明による坏土粒に特徴的な内部構造が効率よく実現されるものと考えられる。本発明の好ましい態様によれば、坏土粒の粒径は、JIS R 1639-1(1999)「ファインセラミックス 顆粒特性の測定方法」の「機械ふるい分け法」により計測された結果として、250μm~600μmの粒子が80質量%以上の粒度分布を持つ。
【0054】
セラミックの成形方法
図1を参照しつつ本発明によるセラミック成形方法について説明する。本発明の成形方法にあっては、先ず、プレス成形機2の上型21または下型22に、本発明によるセラミック成形用シート型1を装着し、好ましくは張り付ける。例えば、図1に示す例において、シート型1は、その樹脂層12がセラミック原料3と接するように、上型21に装着されている。これにより、樹脂層12の立体形状が反映された凹凸模様を有する成形体が得られる。
【0055】
本発明の成形方法にあっては、次いで、セラミック原料3を下型22に供給する。なお、本発明において、シート型1を装着する工程を、原料を供給した後に行っても良い。
【0056】
本発明の成形方法にあっては、次いで、下型22および上型21をプレスしてセラミック成形体を得る。図1に示す例においては、スライド5がボルスタ4の側へ移動することにより、圧縮成形が行われる。
【0057】
得られたセラミック成形体は、その後、適宜、公知の切削加工、乾燥、施釉/着色工程に付され、さらに焼成され、表面に所望の凹凸模様が形成された板状のセラミックが得られる。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による大型セラミック板は、厚さが1mm以上20mm以下であり、1mm以上10mm以下であることが好ましい。より好ましい厚さは1mm以上6mm以下である。また、本発明による大型セラミック板は、1辺の長さが400mm以上3000mm以下であることが好ましく、800mm以上3000mm以下であることがより好ましく、1000mm以上3000mm以下であることが、さらに好ましい。長さがこの範囲にあることにより、目地を少なくできるため、施工の簡略化や意匠の多様化を実現することが可能となる。
【0059】
また、本発明による大型セラミック板は、短辺/厚さが80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。これにより、外装用途に適用可能な薄型で大型のセラミック板を得ることが可能となる。
【0060】
また、本発明による大型セラミック板は、その面積が0.25m以上であることが好ましい。また、その形状は特に限定されないが、平板であることが好ましい。
【実施例
【0061】
シート型の作製
平織りの織布を樹脂で被覆したシート状基材(厚さ0.27mm×1350mm幅×3m)に、LED-UV硬化フラットベッドインクジェットプリンタを用いて、重合成分と光重合開始剤を含んでなるラジカル重合型の紫外線硬化性インクを印刷することにより、樹脂層を形成し、シート型を作製した。
【0062】
基材へのインク塗出量を調整して、縦・横2cmの正方形、厚み1mmのパターンとし、このパターンを市松模様に多数配列させるとともに、紫外線照度を調整して、硬化状態の異なる3種の樹脂層を形成した下記シート型1~3を作製した。
・ シート型1:紫外線硬化樹脂が完全硬化の状態にある
・ シート型2:シート型1の作製条件よりも紫外線照射量を下げて、紫外線硬化樹脂が半硬化の状態にある
・ シート型3:シート型2の作製条件よりもさらに紫外線照射量を下げて、インクは流動しないが、樹脂層にタックが残った状態にある
【0063】
評価
作製したシート型1~3を、樹脂層が形成された面を谷折に90度折り、次いで、折り目を元に戻して、樹脂層の状態を目視観察した。結果は以下のとおりであった。
シート型1:曲げにより樹脂層が割れた。
シート型2:折り目が付かず、また、割れや剥離もなかった。
シート型3:曲げにより樹脂層が変形し、元に戻しても復元しなかった。
【0064】
シート型2を用いたセラミック成形体の作製
図1に示すように、上型および下型として無端ベルトを備えたプレス成形機の上型に、樹脂層が下型に対向するようにシート型2を張り合わせて装着し、粘土および長石を含む混合物をスプレードライで顆粒にした、磁器質タイル用の坏土を下型に供給し、下型および上型を40MPaでプレスして、平板(1m×2.8m×5mmの)の成形体を作製した。
【0065】
結果
作製した成形体の表面に、半硬化状態の樹脂層の凹凸の市松模様が反映された同様の凹凸の市松模様が形成されていた。また、成形を複数回繰り返した後にシート型2を上型から取り外し、状態を目視観察したところ、シート型2の樹脂層に破損は無く、成形に用いる前の状態が保持されていた。
【符号の説明】
【0066】
1 シート型、11 基材、12 樹脂層、2 プレス成形機、21 上型、22 下型、3 セラミック原料、4 ボルスタ、5 スライド
図1