(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】硬貨搬送装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/00 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
G07D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018037821
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】307003777
【氏名又は名称】株式会社日本コンラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 清
(72)【発明者】
【氏名】本合 史伯
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】宣原 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】小杉 真一
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 史夫
(72)【発明者】
【氏名】林 貴裕
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130099(JP,A)
【文献】特開2016-115267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から投入される硬貨を下部に繰り出す硬貨搬送装置であって、
側壁と底壁とを有する円筒部と、
前記円筒部の内側に配置され、前記円筒部の中心を回転中心とするロータと、を備え、
前記側壁と前記底壁と前記ロータとの間には硬貨が通る通路が形成され、
前記ロータは、
外周部に、前記通路に滞留した硬貨を前記ロータの上部に持ち上げるための持ち上げ斜面を有
し、
前記持ち上げ斜面は、平面視において、前記ロータの回転軸を中心とする渦巻曲線に沿って形成されている
ことを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項2】
前記ロータは、上部から下部になるにつれて外形状が徐々に大きくなる円盤状である
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨搬送装置。
【請求項3】
前記ロータは、上部に曲率の小さい平坦面を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬貨搬送装置。
【請求項4】
前記円筒部は、前記底壁に硬貨を落下させる落下穴を有し、
前記ロータは、下部に、硬貨を前記落下穴に誘導するリング状の誘導部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬貨搬送装置。
【請求項5】
前記底壁の上面から前記誘導部の位置までの鉛直距離は、硬貨の半径より小さい
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨搬送装置。
【請求項6】
前記ロータは、下部に鉛直面を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の硬貨搬送装置。
【請求項7】
前記ロータは、前記ロータの前記鉛直面から外方に突出する突部を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の硬貨搬送装置。
【請求項8】
前記円筒部は、前記底壁に、前記側壁へ遷移する通路傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の硬貨搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一括して投入された硬貨を1枚ずつ分離して繰り出す硬貨搬送装置において、円筒部の内側に配置されたロータの回転によって、硬貨を円筒部の内周壁に沿って搬送して、1枚ずつ硬貨落下穴に落ち込ませることによって繰り出すものがある(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-115267号公報
【文献】特開2017-130099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の硬貨搬送装置では、一括して投入する硬貨の量によっては、硬貨同士が競り合うことによって硬貨落下穴から落下せずに滞ってしまい、硬貨を一括して投入してからその硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すまでの時間がかかる場合がある。
したがって、従来の硬貨搬送装置には、硬貨を一括して投入してからその硬貨を1枚ずつ分離して繰り出し終えるまでの時間を短縮し、繰り出し効率(硬貨の1枚当たりの投入から繰り出しまでの時間)を改善する余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繰り出し効率に優れた硬貨搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の硬貨搬送装置は、上部から投入される硬貨を下部に繰り出す硬貨搬送装置であって、側壁と底壁とを有する円筒部と、前記円筒部の内側に配置され、前記円筒部の中心を回転中心とするロータと、を備え、前記側壁と前記底壁と前記ロータとの間には硬貨が通る通路が形成され、前記ロータは、外周部に、前記通路に滞留した硬貨を前記ロータの上部に持ち上げるための持ち上げ斜面を有する。
(2)上記(1)の構成において、前記ロータは、上部から下部になるにつれて外形状が徐々に大きくなる円盤状である。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記ロータは、上部に曲率の小さい平坦面を有する。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、前記持ち上げ斜面は、平面視において、前記ロータの回転軸を中心とする渦巻曲線に沿って形成されている。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、前記円筒部は、前記底壁に硬貨を落下させる落下穴を有し、前記ロータは、下部に、硬貨を前記落下穴に誘導するリング状の誘導部を備える。
(6)上記(5)の構成において、前記底壁の上面から前記誘導部の位置までの鉛直距離は、硬貨の半径より小さい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの構成において、前記ロータは、下部に鉛直面を有する。
(8)上記(7)の構成において、前記ロータは、前記ロータの前記鉛直面から外方に突出する突部を有する。
(9)上記(1)から(8)のいずれかの構成において、前記円筒部は、前記底壁に、前記側壁へ遷移する通路傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、繰り出し効率に優れた硬貨搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】ロータの図示が省略された硬貨搬送装置を示す斜視図である。
【
図3】硬貨が投入された状態における硬貨搬送装置を示す斜視図である。
【
図10】硬貨が投入された状態における硬貨搬送装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、以下の説明では、特に説明がない限り、ロータの回転軸方向を上下方向とし、円筒部の開口側を上、円筒部の底壁側を下とする。平面視において時計回りの方向(
図10における矢印の方向)をロータの正回転方向とする。
【0009】
図1は硬貨搬送装置100を示す斜視図である。
図2はロータ20の図示が省略された硬貨搬送装置100を示す斜視図である。
図3は硬貨Cが投入された状態における硬貨搬送装置100を示す斜視図である。なお、
図1から
図3において、蓋体30は開状態となっている。
【0010】
図1に示すように、硬貨搬送装置100は、上部から投入される硬貨Cを下部に繰り出すものであり、一括して投入された複数枚の硬貨Cを1枚ずつ分離して繰り出すものである。そして、円筒部10の内側に配置されたロータ20の回転によって、硬貨Cを円筒部10の内周壁である側壁11に沿って搬送して、1枚ずつ落下穴H(
図10参照)に落ち込ませることによって繰り出すものである。ロータ20は、通常、正回転方向a(
図10参照)に回転する。
【0011】
具体的には、硬貨搬送装置100は、側壁11と底壁12とを有する円筒部10と、円筒部10の内側に配置され、円筒部10の中心を回転中心とするロータ20とを備える。
また、硬貨搬送装置100は、中央に、硬貨Cの投入口30hを有し、閉状態において円筒部10の上部開口部の一部を覆い、
図1から
図3に示すような開状態において円筒部10の上部開口部を完全に開放する、開閉自在な蓋体30を備える。
【0012】
ユーザは、通常において、蓋体30が閉状態(不図示)となっている硬貨搬送装置100を使用し、蓋体30の投入口30hに硬貨Cを投入する。
また、ユーザは、メンテナンス等において、蓋体30を開状態とし、円筒部10からロータ20を取り出して、
図2に示す状態にしたり、円筒部10にロータ20を取り付けて
図1に示す状態にしたりできる。
【0013】
また、円筒部10の側壁11と円筒部10の底壁12とロータ20との間には、硬貨Cが通る通路Pが形成されている。すなわち、通路Pは、ロータ20の周囲に円環状に配置される。
そして、通路Pの下部、すなわち、円筒部10の底壁12には、硬貨Cが通過可能な大きさの落下穴H(
図10参照)が設けられている。これにより、通路Pを移動する硬貨Cが、落下穴Hが設けられた位置に到達した際に、落下するようになっている。
なお、落下穴Hから落下した後の硬貨Cは、適宜、硬貨Cの種類を識別する硬貨識別手段(不図示)及び硬貨Cを種類ごとに振り分ける硬貨振分装置(不図示)を経て、硬貨Cを種類ごとに貯留する硬貨貯留装置(不図示)に至る。
【0014】
次に、硬貨搬送装置100を構成する各部を詳細に説明する。
【0015】
(円筒部10)
図1から
図3に示すように、円筒部10は、ロータ20を内部に収めた状態で上方に複数の硬貨Cを滞留させられる空間を確保するものである。
円筒部10は、側壁11と底壁12とを有する。底壁12は、平面視において、ロータ20の外周と円筒部10の側壁11との間となる位置に、落下穴Hを有する。これにより、通路P内の硬貨Cは、円筒部10の側壁11に沿って移動し、落下穴Hの位置に至ると、落下穴Hから落下する。
円筒部10は、底壁12に、側壁11へ遷移する通路傾斜面12a(
図11から
図14参照)を有する。これにより、通路P内で縦姿勢になった硬貨C(
図3における硬貨C1、C2及びC3)を、底壁12の側壁11側、すなわち、通路傾斜面12aの下方に設けられた落下穴Hに向けてガイドできる。よって、硬貨Cを底壁12に設けられた落下穴Hから確実に落下させることができる。
円筒部10は、モータ(不図示)を内蔵し、底壁12の中心から上方に突出してロータ20に対して回転を伝達するモータ軸Mを有する。円筒部10の側壁11は、モータ軸Mの軸線を中心とする円筒形状となっている。
【0016】
(ロータ20)
図4はロータ20を上方から見た斜視図である。
図5はロータ20を下方から見た斜視図である。
図6はロータ20の分解斜視図である。
図7はロータ20の平面図である。
図8はロータ20の側面図である。
図9は
図7におけるA矢視断面図である。
図10は硬貨Cが投入された状態における硬貨搬送装置100の平面図である。
図11は
図10におけるB矢視断面図である。
図12は
図10におけるF矢視断面図である。
図13は
図10におけるD矢視断面図である。
図14は
図10におけるE矢視断面図である。
【0017】
ロータ20は、投入口30hから投入された硬貨Cが水平に近い平坦面を有する上部に載せられた状態をしばらく維持する機能と、ロータ20の上部に載せられた硬貨Cにロータ20の回転によって遠心力を作用させて硬貨Cを通路Pに導く機能と、ロータ20と接触する硬貨Cの姿勢を変える機能と、通路P内で移動する硬貨Cを持ち上げる機能と、通路P内で硬貨Cを落下穴Hに誘導する機能と、を有する。
また、ロータ20は、
図10に示すように、通常時において、又は、投入口30hから硬貨Cが投入されたことをトリガーとして、正回転方向a(平面視において時計回り)に回転する。この回転により、ロータ20は、硬貨Cとの接触部における摩擦を通じて、硬貨Cに対して遠心力を作用させたり、ロータ20に接触する硬貨Cの姿勢を変えたりすることができる。
【0018】
ロータ20は、モータ(不図示)の出力軸であるモータ軸M(
図2参照)の回転に応じて回転する。
ロータ20は、
図6に示すように、ロータ本体21と、カバー22と、ノブ23と、誘導部24と、を有し、
図4及び
図5に示すように、それらは、組み立てられている。
また、ロータ20は、内部に、モータ軸M(
図2参照)と係合する係合部K(
図9参照)を有する。なお、ロータ20は、モータ軸M(
図2参照)の回転をロータ20に伝達するギヤ等の伝達装置を内蔵してもよい。
【0019】
図4及び
図9に示すように、ロータ20は、上部から下部になるにつれて外形状が徐々に大きくなる円盤状である。ロータ20は円盤状であるので、ロータ20の上部に硬貨Cをしばらく留めることができるとともに、ロータ20の回転数(回転速度)が同じでも、硬貨Cに作用する遠心力を、中心から外周になるにつれて大きくできる。
また、ロータ20は、上部から下部になるにつれて外形状が徐々に小さくなるので、ロータ20の上部に載置された硬貨Cの姿勢を、横姿勢から縦姿勢に徐々に変化させられる。よって、複数の硬貨Cが通路Pに一斉になだれ込むことなく通路P内の硬貨Cを比較的まばらにでき、しかも、硬貨Cの姿勢が整うので、通路P内で硬貨Cが互いに競り合って詰まったりすることを抑制できる。
【0020】
また、ロータ20は、外周部に、通路Pに滞留した硬貨Cをロータ20の上部に持ち上げるための持ち上げ斜面Gを有する。持ち上げ斜面Gは、
図7に示すように、円盤形状の回転体における外周部の一部(本実施形態においては周方向に均等に3箇所)を切り欠くように形成されている。これにより、通路P内において滞留している硬貨Cは、ロータ20の回転に伴い、持ち上げ斜面Gによって姿勢を変えられながら、再びロータ20の上部に持ち上げられる。特に、通路P内において円筒部10の底壁12に接することなく、他の硬貨Cとロータ20との間で挟まっている硬貨Cは、ロータ20の回転に伴い、持ち上げ斜面Gによって姿勢を変えられながら、ロータ20の上部に持ち上げられる。これに対して、通路P内において円筒部10の底壁12(の通路傾斜面12a)に接している硬貨Cは、競り合う関係の他の硬貨Cが持ち上げ斜面Gによって持ち上げられるので、底壁12に設けられた落下穴Hに至ると、他の硬貨Cに邪魔されることなく落下できる。
よって、通路P内で硬貨Cが互いに競り合って詰まったりすることを抑制できる。したがって、一括して投入する硬貨Cの量が多くても、順調に硬貨Cを繰り出すことができるので、硬貨Cの繰り出し効率を向上できる。
【0021】
ロータ20を構成するロータ本体21は、
図4、
図7及び
図8に示すように、表面に、最上部から順に、第1傾斜面21a、第2傾斜面21b、第3傾斜面21c及び鉛直面21dを有する。
【0022】
第1傾斜面21aは、ロータ20の上部の中央におけるノブ23を係止する孔の周囲にあり、ノブ23の傾斜面23aの延長上において傾斜面23aに繋がるように傾斜している。すなわち、第1傾斜面21aの傾斜角度(水平面を基準とする角度)は、ノブ23の傾斜面23aの傾斜角度と略同じとなっている。これにより、ノブ23の上方にある投入口30hからノブ23の上に落下した硬貨Cを、傾斜面23aを経て円滑に第1傾斜面21aへ移動させることができる。
【0023】
第2傾斜面21bは、ロータ20の上部にあり、硬貨Cを載せた状態を維持する部分である。
第2傾斜面21bは、水平面に対して緩やかな傾斜(例えば、0°以上10°以下程度)を有するか、又は、略水平な、平坦面となっている。これにより、硬貨Cをしばらくの間、第2傾斜面21bの上に維持できるとともに、通路P側(ロータ20の外周側)にある他の硬貨Cを押す力(ロータ20の半径方向の分力)が弱められる。よって、複数の硬貨Cが通路Pに一斉になだれ込むことなく通路P内の硬貨Cを比較的まばらにできるので、通路P内で硬貨Cが互いに競り合って詰まったりすることを抑制できる。
【0024】
また、第2傾斜面21bは、曲率の小さい平坦面を有してもよい。すなわち、第2傾斜面21bは、上方に凸となるように僅かに湾曲していてよい。
言い換えると、第2傾斜面21bは、水平面に対して緩やかな傾斜を有するか、又は、略水平であって、その上で、曲率の小さい平坦面を有してもよい。
これにより、ロータ20の上部に載った硬貨C(
図3における硬貨C4及びC5)は、第2傾斜面21bに対して全面的に接しないので、硬貨Cの姿勢が変わりやすくなり、通路Pの硬貨Cが無くなってきたときに、第2傾斜面21bに滞留する硬貨Cを通路Pにスムーズに送り込むことができ、通路P側(ロータ20の外周側)の硬貨Cの滞留量を抑制できる。
【0025】
第3傾斜面21cは、第2傾斜面21bと鉛直面21dとの間にある環状の面であり、硬貨Cの姿勢を、第2傾斜面21bにおける横姿勢から、鉛直面21dにおける縦姿勢にするための遷移部分である。
第3傾斜面21cは、第2傾斜面21bより、傾斜角度が大きい。これにより、中心部から通路P側に向かって第2傾斜面21bの上を摺動する硬貨Cの姿勢を、第2傾斜面21bにおける横姿勢から、鉛直面21dにおける縦姿勢に段階的に変えることができる。
【0026】
鉛直面21dは、硬貨Cをロータ20の周りに移動させるための通路P(
図11参照)を、円筒部10の側壁11及び底壁12とともに構成する。ロータ20が外周部に鉛直面21dを有することにより、通路Pに至った硬貨Cの姿勢を鉛直面21dに沿って縦姿勢にできる。よって、硬貨Cを落下穴Hから円滑に落下させることができる。
【0027】
ロータ本体21は、第1傾斜面21aから第2傾斜面21bに亘って、下方になるにつれて幅(周方向の寸法)が広くなる凹み21Gを有する。これにより、ロータ20の上部に載っている硬貨Cの姿勢を変えて乱すことができ、硬貨Cの詰まりを抑制できる。
【0028】
持ち上げ斜面Gは、通路Pに滞留した硬貨Cをロータ20の上部に持ち上げるためにロータ20の外周部に形成される斜面である。
【0029】
持ち上げ斜面Gは、特に、通路Pにおいて、
図12に示すような、上端が側壁11に接していない状態の硬貨Cを、ロータ20の上部に持ち上げるために形成される。これにより、上端が側壁11に接している状態で落下穴Hに向かって移動している硬貨C(
図11参照)が落下穴Hから落下するのを妨げるような硬貨C(
図12参照)を、順に、
図12、
図13及び
図14の状態を経て、ロータ20の上部に持ち上げることができるので、他の硬貨Cによって落下を妨げられていない硬貨C(
図11参照)を円滑に落下穴Hから落下させることができる。
【0030】
持ち上げ斜面Gは、
図4に示すように、ロータ20の鉛直面21dから第3傾斜面21cに亘って形成されている。持ち上げ斜面Gは、平面視において、ロータ20の回転軸を中心とする渦巻曲線に沿って形成されている。すなわち、持ち上げ斜面Gは、ロータ20が正回転するにつれてロータ20の回転中心に近づくような曲線に沿って形成されている。しかも、持ち上げ斜面Gは、三次元的には、ロータ20が正回転するにつれて下から上に向けて螺旋状に推移する曲線に沿って形成されている。これにより、通路P内において持ち上げ斜面Gに載った硬貨Cは、ロータ20の正回転に伴い、順に、
図12の硬貨C、
図13の硬貨C及び
図14の硬貨Cの状態を経て、縦姿勢から横姿勢になるように徐々に姿勢を変えられる。よって、落下穴Hに向かって移動している硬貨C(
図11参照)が落下穴Hから落下するのを妨げるような硬貨C(
図12から
図14参照)をロータ20の上部に持ち上げることができる
【0031】
ロータ20を構成するカバー22は、中央にモータ軸Mが通る孔が形成された環状板状であり、ロータ本体21の下部を覆うように配置されている。
ロータ本体21は、リング状の誘導部24を係止する係止部22kを周方向に複数個所(本実施形態では3箇所)有している。
図4から
図6に示すように、ロータ本体21の係止部22kの外形状は、リング状の誘導部24の外形状と補完し合って、円環状になっている。この円環状の外径は、鉛直面21dの外径より僅かに大きくなっている。
【0032】
また、係止部22kは、鉛直面21dから外方に突出する突部22pを有している。すなわち、ロータ20は、ロータ20の鉛直面21dから外方に突出する突部22pを有する。このような構成により、通路P内の硬貨Cは、ロータ20の回転に伴って回転する突部22pに触れて姿勢が変わるので、通路P内における硬貨Cの詰まりを解消することができる。
【0033】
ロータ20を構成するノブ23は、ロータ本体21の中央に形成された孔に嵌る大きさの円板状となっており、中央に上方に突出するつまみ23tを有し、下方にロータ本体21との着脱を可能にする係止手段が設けられている。このように、ノブ23はつまみ23tを有するので、ユーザがつまみ23tをつまんで持ち上げることで円筒部10からロータ20を取り外すことができ、モータを含む円筒部10のメンテナンスが可能になる。また、ノブ23は下方にロータ本体21との着脱を可能にする係止手段を有するので、ロータ本体21からノブ23を取り外すことができ、ロータ20内部のメンテナンスが可能になる。
【0034】
ロータ20を構成する誘導部24は、
図6に示すように、カバー22の係止部22kに係止される一部(本実施形態においては3箇所)が内側に凹んでおり、全体が略リング状のものである。誘導部24は、ロータ本体21より摩擦係数が高い材質の、例えば、ゴム製の弾性体によって形成されている。これにより、通路P内に至った硬貨Cは、ロータ20の回転に伴い、誘導部24からの摩擦力を受けて、通路P内を移動し、落下穴Hから落下する。
このように、ロータ20は、下部に、硬貨Cを落下穴Hに誘導するリング状の誘導部24を備える。よって、通路P内の硬貨Cを落下穴Hに移動させて落とすことができる。
【0035】
ここで、円筒部10の底壁12の上面から誘導部24の位置までの鉛直距離は、硬貨Cの半径より小さい。これにより、底壁12の上面から誘導部24の位置より硬貨Cの重心の位置が上になるので、通路P内における硬貨Cの姿勢を変えやすくなる。よって、硬貨Cの詰まりを解消しやすくできる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る硬貨搬送装置100は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。
【0037】
本発明によれば、上部から投入される硬貨Cを下部に繰り出す硬貨搬送装置100であって、側壁11と底壁12とを有する円筒部10と、円筒部10の内側に配置され、円筒部10の中心を回転中心とするロータ20と、を備え、側壁11と底壁12とロータ20との間には硬貨Cが通る通路Pが形成され、ロータ20は、外周部に、通路Pに滞留した硬貨Cをロータ20の上部に持ち上げるための持ち上げ斜面Gを有するので、複数種類の大きさ、重さ及び形状の組み合わせを有する硬貨Cを大量に一括して投入しても、通路P内の硬貨Cは詰まることなく、順次、落下穴Hに誘導され、通路P内において詰まる原因となるような滞留した硬貨Cは再びロータ20の上部に持ち上げられて戻される。よって、繰り出し効率に優れた硬貨搬送装置100を提供できる。
【符号の説明】
【0038】
100 硬貨搬送装置
10 円筒部
11 側壁
12 底壁
12a 通路傾斜面
20 ロータ
21 ロータ本体
21a 第1傾斜面
21b 第2傾斜面
21c 第3傾斜面
21d 鉛直面
21G 凹み
22 カバー
22k 係止部
22p 突部
23 ノブ
23a 傾斜面
23t つまみ
24 誘導部
30 蓋体
30h 投入口
a 正回転方向
C 硬貨
C1 硬貨
C2 硬貨
C3 硬貨
C4 硬貨
C5 硬貨
G 持ち上げ斜面
H 落下穴
K 係合部
M モータ軸
P 通路