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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】水中用レーザ光源
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/024 20060101AFI20220802BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20220802BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20220802BHJP
【FI】
H01S5/024
H04B10/80
H04B10/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018063804
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176046
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】西 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
(72)【発明者】
【氏名】西村 直喜
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228889(JP,A)
【文献】特開2004-022918(JP,A)
【文献】特開2004-361439(JP,A)
【文献】特開平05-005857(JP,A)
【文献】特開平09-218320(JP,A)
【文献】特開2004-252425(JP,A)
【文献】特開平11-284273(JP,A)
【文献】特開2018-032650(JP,A)
【文献】米国特許第06842467(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H04B 10/00 - 10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で使用され、光出射窓を備える耐水圧容器を備え、
前記耐水圧容器内には、複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザからの各レーザ光を集光させ集光レンズと、
前記集光レンズで集光された各レーザ光を入射し、入射した各レーザ光を前記光出射窓に出射する光ファイバとを備え、
前記複数の半導体レーザは、前記耐水圧容器の一端に接触して配置されることを特徴とする水中用レーザ光源。
【請求項2】
前記光出射窓は、前記耐水圧容器の一端と対向する他端に配置され、前記光ファイバの出射側は、前記光出射窓の付近に配置されていることを特徴とする請求項記載の水中用レーザ光源。
【請求項3】
前記複数の半導体レーザは、互いに異なる中心波長を持つ複数の半導体レーザ群から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水中用レーザ光源。
【請求項4】
水中で使用され、光出射窓を備える耐水圧容器を備え、
前記耐水圧容器内には、単一の半導体レーザと、
前記単一の半導体レーザからのレーザ光を集光させる集光レンズと、
前記集光レンズで集光されたレーザ光を入射し、入射した各レーザ光を前記光出射窓に出射する光ファイバと、を備え、
前記単一の半導体レーザは、前記耐水圧容器の一端に接触して配置されることを特徴とする水中用レーザ光源。
【請求項5】
前記光出射窓は、前記耐水圧容器の一端と対向する他端に配置され、前記光ファイバの出射側は、前記光出射窓の付近に配置されていることを特徴とする請求項記載の水中用レーザ光源。
【請求項6】
前記半導体レーザの中心波長は、350nm~850nmの帯域内のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の水中用レーザ光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術、水中技術、水中光無線通信、水中測距、水中探査、水中光検出を行うための水中用レーザ光源に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水中探査を目的とした水中ロボット技術は、目覚ましく発展し、最近では、自律型無人潜水機(AUV)の開発が進んでいる。水中資源の探査等を目的とし、AUVを始めとした水中ロボットを効果的に運用するためには、水中ロボット間や水中ロボット-水上船舶間等での無線通信技術の通信能力を向上させる必要がある。従来、水中での無線通信手段として水中での信号の減衰が小さい音波を利用した音響通信が主に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、音波は水中での伝搬速度が遅く周波数も低いため、10kbps程度の低速な通信しかできなかった。このため、データ量の多い画像や動画を送受信できないため、水中ロボット探査には不十分である。
【0004】
そこで、高速通信可能な水中無線通信手段として注目されている技術が光通信技術である。可視光波長帯の光は、音波には劣るものの、比較的水中での減衰が小さく、さらに、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)等の高速変調できるデバイスを使用することで水中での高速無線通信が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-55408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水中光無線通信技術は、高速化できる一方で、水中で強度減衰が起こる。例えば、比較的水質が良く可視光の透過率が高い条件下でも水中での光の減衰は、-0.5dB/mである。このことは、10mで光強度が3分の1程度まで減衰することを示している。
【0007】
同時に、光源から放射された光は、徐々に拡散するため、光源から離れるほど光の密度も大きく低下する。水中光無線通信技術に期待される通信距離は、少なくとも数10m~100m程度であり、光強度の減衰を加味すると、如何に強い光を遠くまで到達させるかという点が重要である。
【0008】
水中の光の減衰を可能な限り抑制するためには、光源から放射される光の拡散を抑制することが効果的である。このため、光源としては、高い指向性を持つレーザ光が適している。
【0009】
また、近年の半導体レーザの技術の発展に伴い、低消費電力でワットクラスの光出力が得られる可視光レーザダイオードを使用することが容易になっている。
【0010】
一方、水中では、必ずしも水質が良好な状態ばかりではなく、さらに光軸合わせの観点からは、レーザ光線を極限まで絞り込むことは難しい。水質の不良な環境下でレーザ光線を拡散させた状態で光通信を行うには、LD単体での1~2W程度の光出力は数10m~100mの水中光無線通信技術の実現には十分とは言えない。このため、水中光無線通信技術の実現にはLD光源の高出力化が最も大きな課題である。
【0011】
また、LD光源の高出力化に伴い、LD光源の発熱量が増大した際に、密閉された耐水圧容器中では空冷によるLD・LEDの冷却が難しく発光強度の低下や寿命の短縮が発生する。安定した高出力光を送信するためには、光源全体を冷却する必要がある。
【0012】
本発明の課題は、高出力化を図ることができ、しかも発熱する半導体レーザを冷却することができる水中用レーザ光源を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る水中用レーザ光源の請求項1は、水中で使用され、光出射窓を備える耐水圧容器を備え、前記耐水圧容器内には、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの各レーザ光を集光させ集光レンズと、前記集光レンズで集光された各レーザ光を入射し、入射した各レーザ光を前記光出射窓に出射する光ファイバとを備え、前記複数の半導体レーザは、前記耐水圧容器の一端に接触して配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、記光出射窓は、前記耐水圧容器の一端と対向する他端に配置され、前記光ファイバの出射側は、前記光出射窓の付近に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項の発明では、前記複数の半導体レーザは、互いに異なる中心波長を持つ複数の半導体レーザ群から構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項の発明は、水中で使用され、光出射窓を備える耐水圧容器を備え、前記耐水圧容器内には、単一の半導体レーザと、前記単一の半導体レーザからのレーザ光を集光させる集光レンズと、前記集光レンズで集光されたレーザ光を入射し、入射した各レーザ光を前記光出射窓に出射する光ファイバと、を備え、前記単一の半導体レーザは、前記耐水圧容器の一端に接触して配置されることを特徴とする。
【0018】
請求項の発明は、前記光出射窓は、前記耐水圧容器の一端と対向する他端に配置され、前記光ファイバの出射側は、前記光出射窓の付近に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の半導体レーザからの各レーザ光を集光レンズで集光させるので、集光レンズで集光された各レーザ光により高出力化を図ることができる。
【0020】
また、1つの光ファイバにレーザ光を入力することで、光ファイバ後のレーザ光線を一つのビームとして扱うことができる。
【0021】
また、光ファイバにより光出射部と熱源となる半導体レーザとを分離し、発熱する半導体レーザを、耐水圧容器の一端に接触して配置したので、耐水圧容器が水中で冷却される。このため、発熱する複数の半導体レーザを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1の水中用レーザ光源の構成図である。
図2】本発明の実施例2の水中用レーザ光源の構成図である。
図3】本発明の実施例3の水中用レーザ光源の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1の水中用レーザ光源の構成図である。図1に示す水中用レーザ光源は、例えば、水中光無線通信用レーザ光源に適用され、水中で使用される耐水圧容器Aを備える。耐水圧容器Aは、円筒部1と、円筒部1の一端に設けられた蓋2と、円筒部1の一端に対向する他端に設けられた窓付蓋3とからなる。
【0024】
耐水圧容器A内には、複数の半導体レーザ11a~11fと、複数のコリメートレンズ12a~12fと、集光レンズ13と、光ファイバ22、レーザ光制御基板31と、レーザ光指向性制御用レンズ23とが設けられている。
【0025】
複数の半導体レーザ11a~11fと、コリメートレンズ12a~12fと、集光レンズ13とは、筐体20内に配置されている。コリメートレンズ12a~12fと、集光レンズ13とは、集光光学系21を構成している。
【0026】
複数の半導体レーザ11a~11fは、所定の間隔で配置され、且つ耐水圧容器Aの一端である蓋2に接触して配置され、レーザ光(可視光で波長が約350nm~850nm)を出射する。光出射窓4は、耐水圧容器Aの蓋2と対向する窓付蓋3に配置され、光ファイバ22の出射側は、光出射窓4の付近に配置されている。
【0027】
コリメートレンズ12a~12fは、複数の半導体レーザ11a~11fに対向して配置され、複数の半導体レーザ11a~11fからの各レーザ光をコリメートして集光レンズ13に導く。
【0028】
集光レンズ13は、コリメートレンズ12a~12fからの各レーザ光を集光して光ファイバ22に導く。光ファイバ22は、コリメートレンズ12a~12fからの各レーザ光を入射し、レーザ光をファイバ出射端から出射する。
【0029】
レーザ光指向性制御用レンズ23は、光ファイバ22からのレーザ光を所定の比較広がり角度に調整して光出射窓4を通して水中に導く。
【0030】
なお、光ファイバ22から出射されたレーザ光は、レーザ光指向性制御用レンズ23を設けることなく、直接、耐水圧容器a外に出射するような構成を用いてもよい。
【0031】
また、光ファイバ22の周辺には空間が発生する。この空間に、複数の半導体レーザ11a~11fをパルス駆動させるための制御回路を有するレーザ光制御基板31を配置している。このため、耐水圧容器aの限られた空間を有効に活用することができる。
【0032】
このように実施例1の水中用レーザ光源によれば、複数の半導体レーザ11a~11fからの各レーザ光を集光レンズ13で集光させるので、集光レンズ13で集光された各レーザ光により高出力化を図ることができる。
【0033】
また、1つの光ファイバ22にレーザ光を入力することで、光ファイバ22の出射後のレーザ光線を一つのビームBMとして扱うことができる。
【0034】
また、熱源となる半導体レーザ11a~11fは、耐水圧容器Aの蓋2に接触させて冷却する。一方、光ファイバの光出射側(光出射部)からのレーザ光を耐水圧容器Aの蓋2と対向する他端に配置された光出射窓4から出射させる。これにより、熱源と光出射部とを分けることができる。
【0035】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2の水中用レーザ光源の構成図である。実施例2の水中用レーザ光源では、図1に示す複数の半導体レーザ11a~11fが、互いに異なる中心波長を持つ第一LD群14と第二LD群15とから構成されていることを特徴とする。
【0036】
第一LD群14は、中心波長が第一波長λを有する3つの半導体レーザからなる。第二LD群15は、中心波長が第一波長λを有する3つの半導体レーザからなる。
【0037】
実施例2の水中用レーザ光源によれば、単一の水中光無線通信用レーザ光源から複数波長のレーザ光を同時に出射することができる。あるいは、複数波長のレーザ光を切り替えて出射することができる。
【0038】
また、水中光無線通信用レーザ光源から出射される複数波長は、水質の状態に応じて選択することができる。
【0039】
また、水中では、耐水圧容器Aの光出射窓4にも水圧がかかる。このため、光出射窓4は、図2に示すように、水深で決定される水圧に耐えるための厚みtと有効径Dを有する。これによれば、有効径Dが小さく、厚みtも小さいので、水中用レーザ光源のコストダウンを実現することができる。
【0040】
また、コリメートレンズ12a~12fの位置を制御することにより、光ファイバ22の出射端から出射したビームの径が光出射窓4の有効径Dに収まるように制御する。このようにすることで、径の小さい光出射窓4からレーザ光BMを水中に出射させることができる。
【0041】
(実施例3)
図3は、本発明の実施例3の水中用レーザ光源の構成図である。実施例3の水中用レーザ光源は、耐水圧容器A内には、単一の半導体レーザ16と、コリメートレンズ12a、コリメートレンズ12aからのレーザ光を集光させる集光レンズ13aと、集光レンズ13aで集光されたレーザ光を入射する光ファイバ22と、光ファイバ22から出射されるレーザ光を水中に出射させる光出射窓4とを備えることを特徴とする。
【0042】
単一の半導体レーザ16は、耐水圧容器Aの一端にある蓋2に接触して配置され、光出射窓4は、耐水圧容器Aの蓋2と対向する他端に配置され、円形の光ファイバ22の出射側は、光出射窓4の付近に配置されている。
【0043】
短距離水中通信において、半導体レーザの出力が1個分の出力で十分な場合で、かつ、半導体レーザ11aが楕円型かつ縦横の拡がり角度が異なる光源である場合には、単一の半導体レーザ16からの楕円型かつ縦横の拡がり角度が異なるレーザビームを円形の光ファイバ22に通すことで、円形のビームに整形することができる。
【0044】
これにより、レンズを用いたビームの拡がり角度を容易に調整でき、水中光無線通信の送受信確率を向上させることができる。
【0045】
また、単一の半導体レーザ16は、耐水圧容器Aの一端にある蓋2に接触して配置され、光出射窓4は、耐水圧容器Aの蓋2と対向する他端に配置され、円形の光ファイバ22の出射側は、光出射窓4の付近に配置されている。
【0046】
従って、実施例1,2の水中用レーザ光源の効果と同様に、熱源となる半導体レーザ11aは、耐水圧容器Aの蓋2に接触させて冷却する。一方、光ファイバの光出射側(光出射部)からのレーザ光を耐水圧容器Aの蓋2と対向する他端に配置された光出射窓4から出射させる。これにより、熱源と光出射部とを分けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、通信技術、水中技術、水中光無線通信、水中測距、水中探査、水中光検出に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
A 耐水圧容器
1 円筒部
2 蓋
3 窓付蓋
4 光出射窓
11a~11f,16 半導体レーザ
12a~12f コリメートレンズ
13,13a 集光レンズ
14 第一LD群
15 第二LD群
21 集光光学系
22 光ファイバ
23 レーザ光指向性制御用レンズ
31 レーザ光制御基板
BM レーザビーム










図1
図2
図3