(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
G08C 15/00 20060101AFI20220802BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220802BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20220802BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20220802BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20220802BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20220802BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G08C15/00 G
H02J7/00 B
F16C41/00
F16C19/06
F16C19/52
G08C19/00 G
G08C25/00 F
(21)【出願番号】P 2018068858
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106607(JP,A)
【文献】特開2014-153882(JP,A)
【文献】特開2013-32211(JP,A)
【文献】特開2016-130577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00-25/04
H02J 7/00
F16C 19/06
F16C 19/52
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に相対的に回転する第1部品及び第2部品を有する回転装置であって、
前記第1部品と前記第2部品との相対的な回転に基づいて発電する発電部と、
前記発電部が発電する電力によって充電される、充放電可能な蓄電部と、
センサと、
前記蓄電部に蓄電された電力と、前記センサで検出されるデータとが供給される制御部と、
前記蓄電部の電圧を監視する電圧監視部と、を備え、
前記制御部は、
前記データを記憶する記憶回路と、
前記データを外部装置に送信する通信回路と、を有し、
前記蓄電部の電圧が第1閾値以下になると前記データの前記記憶回路への書き込みおよび前記データの前記通信回路による前記外部装置への送信を停止し、
前記蓄電部の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になると前記データの前記記憶回路への書き込みおよび前記データの前記通信回路による前記外部装置への送信を開始する、回転装置。
【請求項2】
前記蓄電部の電圧に基づいて、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給を制御する出力制御回路、をさらに備え、
前記出力制御回路は、
前記蓄電部の電圧が前記第2閾値よりも
高い第3閾値以上の場合は、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給をオンにし、
前記蓄電部の電圧が前記
第1閾値よりも低い第
4閾値未満の場合は、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給をオフにする、請求項
1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記通信回路は、前記外部装置とペアリングをされ、
前記制御部は、前記蓄電部の電圧が前記第4閾値以上の場合、前記ペアリングを維持する、請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記センサは、
第1センサと、前記第1センサとは検出の対象が異なる第2センサと、を有する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の回転装置。
【請求項5】
前記第1部品および前記第2部品は、それぞれ、軸受の外輪および内輪である、請求項1から4のいずれか1項に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、軸受周囲の各種物理量をセンサにより検出し、検出情報を受信側装置へ無線送信するセンサ付きの軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-307435号公報
【文献】特開2016-130577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサ付き軸受では、発電部で発電された電力がセンサや通信回路に供給される。センサや通信回路に供給される電力が不足すると、センサや通信回路が正常ではない動作をしたり、意図しないタイミングで動作を停止したりする可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電力不足による誤動作を防止可能な回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様の回転装置は、回転軸を中心に相対的に回転する第1部品及び第2部品を有する回転装置であって、前記第1部品と前記第2部品との相対的な回転に基づいて発電する発電部と、前記発電部が発電する電力によって充電される、充放電可能な蓄電部と、センサと、前記蓄電部に蓄電された電力と、前記センサで検出されるデータとが供給される制御部と、前記蓄電部の電圧を監視する電圧監視部と、を備え、前記電圧監視部は、前記蓄電部の電圧に基づく信号を前記制御部に送信する電圧監視回路を有する。
【0007】
これによれば、制御部は、電力不足となる前に通常モードからスリープモードに移行することができる。これにより、回転装置は、電力不足によって制御部が誤動作することを防止することができる。また、例えば、電圧監視回路にリセットICが用いられると、電圧監視の消費電力が少なくて済む。
【0008】
望ましい態様として、前記制御部は、前記データを外部に送信する通信回路と、前記通信回路を制御する制御回路と、を有し、前記電圧監視回路は、前記蓄電部の電圧が第1閾値以下になると前記制御回路に第1信号を送信し、前記制御回路が前記第1信号を受信すると、前記通信回路は前記データの外部への送信を停止する。これによれば、制御回路及び通信回路は、電力不足となる前に通常モードからスリープモードに移行することができる。
【0009】
望ましい態様として、前記電圧監視回路は、前記蓄電部の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になると、前記制御回路に第2信号を送信し、前記制御回路が前記第2信号を受信すると、前記通信回路は前記データの外部への送信を開始する。これによれば、回転装置は、蓄電部が所定の電圧まで充電されると、制御回路及び通信回路はスリープモードから通常モードに復帰することができる。
【0010】
望ましい態様として、前記制御部は、前記データを記憶する記憶回路、をさらに有し、前記制御回路は前記記憶回路を制御し、前記制御回路が前記第1信号を受信すると、前記制御回路は前記データの前記記憶回路への書き込みを停止する。これによれば、回転装置は、制御回路が記憶回路にデータを書き込む途中で電力不足となることを防ぐことができる。
【0011】
望ましい態様として、前記電圧監視回路は、前記蓄電部の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になると、前記制御回路に第2信号を送信し、前記制御回路が前記第2信号を受信すると、前記制御回路は前記データの前記記憶回路への書き込みを開始する。これによれば、回転装置は、制御回路が記憶回路にデータを書き込む途中で電力不足となることを防ぐことができる。
【0012】
望ましい態様として、前記電圧監視回路は、前記第1信号を送信する第1電圧監視回路と、前記第2信号を送信する第2電圧監視回路と、を有する。これによれば、第1電圧監視回路が出力する第1信号に基づいて、制御部は通常モードからスリープモードに移行することができる。また、第2電圧監視回路が出力する第2信号に基づいて、制御部はスリープモードから通常モードに復帰することができる。
【0013】
望ましい態様として、前記蓄電部の電圧に基づいて、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給を制御する出力制御回路、をさらに備え、前記出力制御回路は、前記蓄電部の電圧が前記第2閾値よりも低い第3閾値以上の場合は、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給をオンにし、前記蓄電部の電圧が前記第3閾値未満の場合は、前記蓄電部から前記制御部への電力の供給をオフにする。これによれば、回転装置は、蓄電部の電圧がゼロとなる前に、制御部への電力の供給を停止することができる。
【0014】
望ましい態様として、前記センサは、第1センサと、前記第1センサとは検出の対象が異なる第2センサと、を有する。これによれば、回転装置は、有用なデータをより多く出力することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力不足による誤動作を防止可能な回転装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態のセンサ付き軸受の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のセンサ付き軸受の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、発電部と凸部とを含む部分の断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、発電部と凹部とを含む部分の断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、センサ基板を含む部分の断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のセンサ付き軸受における起電力の電圧と時間との関係を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、本実施形態のセンサユニットの平面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態のカバーの斜視図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の角度センサの出力信号波形の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の蓄電部の電圧変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図12】
図12は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の動作シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の動作期間と、CPUの消費電力との関係を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、センサ付き軸受の回転数の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
図1は、本実施形態のセンサ付き軸受の斜視図である。
図2は、本実施形態のセンサ付き軸受の分解斜視図である。
図3は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、発電部と凸部とを含む部分の断面図である。
図4は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、発電部と凹部とを含む部分の断面図である。
図5は、本実施形態のセンサ付き軸受であって、センサ基板を含む部分の断面図である。
図1に示すセンサ付き軸受1は、
図2に示すように、センサユニット5と、トーンリング30と、軸受本体20とを有している。
【0019】
図3から
図5に示すように、軸受本体20は、外輪21と、内輪22と、転動体23とを有する転がり軸受である。外輪21と内輪22は、回転軸Ax(
図1参照)を中心に相対的に回転する。以下、内輪22が回転輪として説明するが、内輪22と外輪21とが相対回転していれば、どちらが回転していてもよい。
【0020】
カバー10は、円環状の天板12と、天板12の周囲に接続され、筒状の側板11とを有する。カバー10は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような磁性を有する材料で形成される。
【0021】
図2に示すように、センサユニット5において、複数の発電部3と基板40とが、天板12の一方の面12Aに取り付けられている。一方の面12Aは、軸受本体20と対向する側の面である。基板40は、電源基板41と、センサ基板42とを有している。
【0022】
例えば、
図1及び
図2に示すように、天板12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19Aが締結することで、発電部3は、天板12に固定される。同様に、天板12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19Bが締結することで、電源基板41とセンサ基板42とが、天板12に固定される。
図1に示すように、ボルト19A及びボルト19Bは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有している。
【0023】
トーンリング30には、外径側に突出する凸部31と、凸部31よりも内径側に凹む凹部32とが周方向に交互に設けられている。トーンリング30は、軸受本体20側に突出する筒状突起33を内周側に有している。トーンリング30は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような磁性を有する材料で形成される。
【0024】
発電部3は、永久磁石13と、ヨーク14と、コイル15とを有している。永久磁石13は、天板12に接するように固定されている。ヨーク14は、永久磁石13に接するように固定されている。ヨーク14は、永久磁石13に磁気的に接続されていればよく、直接接続されていなくてもよい。ヨーク14は、ケイ素鋼板、NiFe合金などの磁性を有する材料で形成されている。ヨーク14の内部における磁束量が増えるように、ヨーク14は、カバー10の材質と同等以上の透磁率を有する材料が用いられていることが望ましい。ヨーク14がケイ素鋼板であると、透磁率が高くなり、ヨーク14内に磁束が通りやすくなる。
【0025】
コイル15は、導線がヨーク14を巻回するいわゆるマグネットワイヤである。隣り合う発電部3のコイル15同士は、直列に接続され、直列接続された複数の発電部3のコイル15から引き出された配線が電源基板41に接続されている。
【0026】
図3に示すように、側板11の一端が外輪21の外周に設けられた溝21Aに嵌め込まれ固定される。筒状突起33は、内輪22の内周に設けられた溝22Aに嵌め込まれ固定されている。これにより、
図3及び
図4に示すように、ヨーク14の内周側端面及び天板12の内周側端面がトーンリング30の凸部31又は凹部32に対向する位置に配置される。そして、カバー10及びトーンリング30は、軸受本体20への取り付けが容易である。
【0027】
永久磁石13の磁界により磁束Mfが、ヨーク14、トーンリング30の凸部31又は凹部32、カバー10の天板12を通る。このため、永久磁石13、ヨーク14、トーンリング30の凸部31又は凹部32、カバー10の天板12が磁気回路となる。
【0028】
また、
図5に示すように、凸部31の外周側端面31IFの一部には、トーンリング30よりも強い磁性を示す磁性体311が取り付けられている。例えば、凸部31の外周側端面31IFには、磁性体の形状と大きさに対応した凹部が設けられている。この凹部に磁性体311は嵌め込まれている。磁性体311と、磁性体311の周囲の外周側端面31IFは、面一又はほぼ面一となっている。磁性体311は、例えば、硬磁性体の永久磁石である。トーンリング30において、磁性体311の取り付け箇所は1箇所のみである。外輪21に対して内輪22が相対的に1回転(360°回転)する毎に、磁性体311は角度センサ443に最も近づく。角度センサ443は、例えばホール素子を含む。
【0029】
図6は、本実施形態のセンサ付き軸受における起電力の電圧と時間との関係を説明するための説明図である。ここで、
図6の横軸は時間Tであり、縦軸は起電力の電圧Viである。外輪21が固定され、内輪22が回転することによって内輪22と共にトーンリング30が回転し、トーンリング30と発電部3とが相対的に回転する。ヨーク14にとっては、内周側端面から
図3に示す凸部31の外周側端面31IFまでのエアギャップと、内周側端面から
図4に示す凹部32の外周側端面32IFまでのエアギャップと、が交互に入れ替わる。
【0030】
このように、トーンリング30の外周の凸部31と凹部32とにより、発電部3のヨーク14とトーンリング30の外周との距離が周期的に変化する。これにより、発電部3に生じる磁束Mfの密度が変化する。永久磁石13を備えたヨーク14とトーンリング30とが接近している場合には、永久磁石13、ヨーク14、トーンリング30を通る磁束Mfは大きく、ヨーク14とトーンリング30とが離れている場合には、永久磁石13、ヨーク14、トーンリング30を通る磁束Mfが小さくなる。この磁束Mfの密度変化に応じて、ヨーク14の周りにマグネットワイヤを巻いたコイル15に電圧変化が発生する。
【0031】
すなわち、ヨーク14と凸部31の外周側端面31IFとが最も近づいたときに、
図3に示す磁束Mfが大きくなり、
図6に示す起電力の電圧V1が電源基板41に供給される。ヨーク14と凹部32の外周側端面32IFとが最も遠ざかるときに、
図4に示す磁束Mfが小さくなり、
図6に示す起電力の電圧V2が電源基板41に供給される。
【0032】
図7は、本実施形態のセンサユニットの平面図である。
図7に示すように、電源基板41には、電源部43が実装されている。電源部43は、発電部3から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。センサ基板42には、センサ44と、通信回路を有する制御部45と、アンテナ47とが実装されている。電源部43からの直流電力は、センサ44及び制御部45に供給される。センサ44、制御部45及びアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部又は全部が1つのICチップで構成されていてもよい。また、センサ44は、例えば、加速度センサ441と、温度センサ442及び角度センサ443を有する。
【0033】
図8は、本実施形態のカバーの斜視図である。
図8に示すように、カバー10には、貫通孔12Hが開けられている。貫通孔12Hは、
図1に示すように、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。上述したように、カバー10は、軸受本体20側にアンテナ47を備えている。ここで、カバー10は、磁性を有しているので、アンテナ47からの電磁波をシールドする作用を有している。このため、
図7に示すように、軸受本体20の回転軸Zr方向からみた平面視において、アンテナ47が非磁性蓋17と重なるように配置されている。すなわち、カバー10のアンテナ47に対向する部分には、非磁性蓋17が設けられている。このため、アンテナ47の電磁波WVは、非磁性蓋17を介して、通信部151へ到達することができる。
【0034】
また、
図8に示すように、天板12の一方の面12Aに、発電部3を配置するための複数の凹部18が設けられている。例えば、複数の凹部18の各々は、コイル15を配置するための第1凹部18Aと、永久磁石13を配置するための第2凹部18Bとを有する。一方の面12Aを基準面としたとき、第1凹部18Aは第2凹部18Bよりも深い。
【0035】
図9は、本実施形態の角度センサの出力信号波形の一例を示す図である。
図9の横軸は角度センサ443に対するトーンリング30の回転角度(deg)であり、縦軸は角度センサ443に生じる検知電圧である。外輪21が固定され、内輪22が回転することによって内輪22と共にトーンリング30が回転し、トーンリング30は角度センサ443に対して回転する。角度センサ443と
図3に示した凸部31の外周側端面31IFまでのエアギャップと、角度センサ443から
図4に示した凹部32の外周側端面32IFまでのエアギャップと、が交互に入れ替わる。
【0036】
このように、角度センサ443とトーンリング30との距離が周期的に変化する。これにより、角度センサ443を通る磁束密度(磁場)が変化し、角度センサ443を通る磁束密度の変化に応じて角度センサ443の検知電圧が変化する。例えば、角度センサ443とトーンリング30の凸部31の外周側端面31IFとが接近している場合には、角度センサ443を通る磁束は大きくなる。このとき、
図9に示す電圧V11が、角度センサ443から出力される。角度センサ443とトーンリング30の凸部31の外周側端面31IFとが離れている場合には、角度センサ443を通る磁束は小さくなる。このとき、
図9に示す電圧V12が、角度センサ443から出力される。電圧V11>電圧V12である。
【0037】
また、
図5に示したように、凸部31の外周側端面31IFには、トーンリング30よりも保持力が大きく、硬磁性を示す磁性体311が取り付けられている。磁性体311が角度センサ443に最も近づくとき、
図9に示す電圧V10が角度センサ443から出力される。電圧V10>電圧V11である。トーンリング30において、磁性体311の取り付け箇所は1箇所のみである。角度センサ443に対してトーンリング30が相対的に1回転(360°回転)する毎に、磁性体311は角度センサ443に最も近づき、角度センサ443から電圧V10が1回出力される。このため、電圧V10を、角度センサ443によって検出される角度の原点とすることができる。本実施形態では、上記原点を検出するために、閾値Vmが設定される。V11<Vm≦V10である。角度センサ443から出力される電圧が閾値Vmを越えるとき、制御回路451は角度センサ443が原点を検出したと判断することができる。
【0038】
また、角度センサ443は、原点を検出してから次に原点を出力するまでの間に、
図2に示した凸部31及び凹部32の数に応じた周期分の電圧波形を出力する。例えば、角度センサ443は、原点を検出してから次に原点を出力するまでの間に、7周期分の電圧波形を出力する。7周期分の電圧波形を出力するとは、V10又はV11(極大値)と、V12(極小値)とをそれぞれ7個ずつ交互に出力する、ということである。したがって、制御回路451は、原点の検出数と、原点を検出してからの極大値と極小値の検出数とをカウントすることで、角度センサ443に対するトーンリング30のおよその回転角度を演算することができる。また、制御回路451は、原点の検出数と、原点を検出してからの極大値と極小値の検出数とをカウントすると共に、角度センサ443が出力する電圧値を検出することで、角度センサ443に対するトーンリング30の回転角度をより詳細に演算することもできる。
【0039】
なお、
図5に示したように、角度センサ443はセンサ基板42及びカバー10を介して外輪21に固定されている。また、トーンリング30は内輪22に固定されている。このため、角度センサ443に対するトーンリング30の回転角度は、外輪21に対する内輪22の回転角度に等しい。
【0040】
図10は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の構成例を示す図である。
図10に示すように、センサ付き軸受1の基板40(
図2参照)に搭載されている回路40Aは、発電部50と、電源部43と、センサ44と、制御部45と、電圧監視部46と、アンテナ47と、を含む。発電部50は、
図2から
図4までに示した複数の発電部3と、トーンリング30と、で構成される。また、電源部43は、整流回路431と、平滑回路432と、蓄電回路433と、充放電可能な蓄電部434と、出力制御回路435と、定電圧出力回路436と、を有する。
【0041】
発電部50は、単相交流電力を発電して電源部43の整流回路431に出力する。整流回路431は、発電部3で発電された単相交流電力を全波整流して直流電力へと変換し、直流電力を平滑回路432に出力する。整流回路431としてダイオードブリッジが例示されるが、本実施形態はこれに限定されない。平滑回路432は、整流回路431から出力された直流電力を平滑化して、直流電力から交流成分を低減する。そして、平滑回路432は、交流成分が低減された直流電力を蓄電回路433に出力する。蓄電回路433は、平滑回路432から出力された直流電力によって蓄電部434を充電する。
【0042】
出力制御回路435は、定電圧出力回路436に制御信号を送信して、定電圧出力回路436を制御する。定電圧出力回路436は、出力制御回路435の制御下で、蓄電部434から出力される直流電力を一定電圧に調整して、センサ44及び制御部45に出力する。
【0043】
例えば、出力制御回路435は、蓄電部434の電圧をモニタする。蓄電部434の電圧が予め設定した閾値(例えば、後述の
図11の第4管理値BV4)以上の場合、出力制御回路435は定電圧出力回路436に電力の供給を指示する信号を送信する。これにより、定電圧出力回路436は、蓄電部434から出力される直流電力を一定電圧に調整して、センサ44及び制御部45に出力する。一方、蓄電部434の電圧が予め設定した閾値(例えば、後述の
図11の第1管理値BV1)未満の場合、出力制御回路435は定電圧出力回路436に電力の供給停止を指示する信号を送信する。これにより、定電圧出力回路436は、センサ44及び制御部45への電力供給を停止する。
【0044】
図10及び
図11に示すように、センサ44は、供給される直流電力を使用して、各種の物理量又は化学量を検出する。例えば、センサ44は、軸受本体20(
図3から
図5参照)の振動を検出する加速度センサ441と、軸受本体20の周囲温度を検出する温度センサ442と、上述の角度センサ443とを有する。また、図示しないが、センサ44は、軸受本体20の周囲湿度を検出する湿度センサ、軸受本体20の潤滑油の酸化劣化に伴って生じるガス状の炭化水素、硫化水素、アンモニア等を検出するガスセンサ、軸受本体20において生じる摩擦音を検出する超音波センサ等を有してもよい。
【0045】
制御部45は、センサ44によって検出されたデータを記憶したり、アンテナ47を介して外部に送信したりする。例えば、制御部45は、制御回路451と、記憶回路452と、通信回路453と、を有する。制御回路451は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。記憶回路452は、例えば、NAND型又はNOR型のフラッシュメモリである。通信回路453は、制御回路451を構成するCPUに含まれている。または、通信回路453は、CPUとは別のICチップで構成されていてもよい。制御回路451、記憶回路452及び通信回路453は、電源部43から供給される直流電力を使用して動作する。
【0046】
制御回路451は、記憶回路452と通信回路453とを制御する。例えば、制御回路451は、センサ44によって検出された各種データをアナログデータからデジタルデータに変換する(すなわち、A/D変換する)。また、制御回路451は、A/D変換されたデジタルデータを記憶回路452に転送して書き込む。制御回路451は、A/D変換されたデジタルデータをキャッシュメモリに一時的に記憶し、一時的に記憶したデジタルデータを任意のタイミングで読み出して記憶回路452に転送してもよい。また、制御回路451は、記憶回路452からデジタルデータを読み出して、通信回路453に出力する。
【0047】
通信回路453は、制御回路451の制御下で、記憶回路452から読み出されたデジタルデータをアンテナ47を介して外部に送信する。例えば、
図1に示したように、通信回路453は、電磁波WVの無線通信により、デジタルデータを外部に送信する。送信されたデジタルデータは、上位装置150の通信部151で受信される。通信部151で受信したデジタルデータは、コンピュータ152で処理される。このように、センサ付き軸受1は、デジタルデータを無線で送信することができるので、小型化が可能になる。なお、本実施形態において、通信回路453によるデジタルデータの外部への送信は、無線ではなく、有線であってもよい。
【0048】
電圧監視部46は、蓄電部434の電圧を監視する。電圧監視部46は、第1リセットIC461と、第2リセットIC462とを有する。第1リセットIC461は、制御部45の制御回路451に第1信号RST1を出力する。例えば、蓄電部434の電圧が第2管理値BV2(後述の
図11参照)よりも大きいとき、第1リセットIC461は、第1信号RST1として、電圧が低いロウ(Low)信号を出力する。蓄電部434の電圧が第2管理値BV2以下のとき、第1リセットIC461は、第1信号RST1として、電圧が高いハイ(High)信号を出力する。第1信号RST1として出力されるHigh信号が、後述のスリープ信号である。
【0049】
第2リセットIC462は、制御部45の制御回路451に第2信号RST2を出力する。例えば、蓄電部434の電圧が第3管理値BV3(後述の
図11参照)未満のとき、第2リセットIC462は、第2信号RST2として、電圧が低いロウ(Low)信号を出力する。蓄電部434の電圧が第3管理値BV3以上のとき、第2リセットIC462は、第2信号RST2として、電圧が高いハイ(High)信号を出力する。第2信号RST2として出力されるHigh信号が、後述のウェイクアップ信号である。
【0050】
なお、第1リセットIC461及び第2リセットIC462としては、例えば、「エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社製 S-1009シリーズ」をそれぞれ用いることができる。
【0051】
上述したように、本実施形態の発電部50(
図10参照)は、軸受本体20(
図3参照)の外輪21(
図3参照)に対して内輪22(
図3参照)が回転することによって発電し、発電した電力によって蓄電部434が充電される。このように、蓄電部434の充電は、外輪21に対する内輪22の回転に依存する。蓄電部434の充電は、センサ44(
図10参照)及び制御部45(
図10参照)の各動作とは関係なく随時行われる。以上を前提に、
図11を参照しながら、蓄電部434の電圧変化について説明する。
【0052】
図11は、本実施形態の蓄電部の電圧変化の一例を模式的に示すグラフである。
図11において、横軸は時間を示し、縦軸は蓄電部434(
図10参照)の電圧を示す。また、
図11のL1は、本実施形態の電圧変化の一例を示している。
図11の破線L2は、比較例の電圧変化を示している。
【0053】
図11に示すように、本実施形態では、蓄電部434の電圧について、複数の管理値(例えば、第1設定値BV1から第5設定値BV5)が予め設定される。第1管理値BV1は、蓄電部434から制御部45への電源供給がオンからオフに切り替わるときの電圧値である。第2管理値BV2は、制御部45が通常モードからスリープモードに移行するときの電圧値である。第3管理値BV3は、制御部45がスリープモードから通常モードに復帰するときの電圧値である。第4管理値BV4は、蓄電部434から制御部45への電源供給がオフからオンに切り替わるときの電圧値である。第5管理値BV5は、蓄電部434が過充電と判断されるときの電圧値である。
【0054】
なお、スリープモードとは、消費電力を低く抑えて待機する状態のことである。通常モードよりもスリープモードの方が、単位時間当たりの消費電力が小さい。例えば、制御部45を構成するCPUのスリープモードにおける単位時間当たりの消費電力は、同CPUの通常モードにおける単位時間当たりの消費電力よりも十分に小さい。制御部45は、スリープモードでは、ペア通信を行う接続先(例えば、
図1の上位装置150)のサーチと認証(以下、ペアリング)に電力を使用するが、それ以外の用途では電力を極力消費しないで待機する。
【0055】
例えば、制御部45は、スリープモードでは、センサ44で検出される物理量又は化学量に関するデータの記憶回路452への書き込みや読み込み、外部への送信を停止する。このため、制御部45の単位時間当たりの消費電力は、通常モードよりもスリープモードの方が低く抑えられる。制御部45の制御回路451及び通信回路453がCPUで構成されている場合、制御回路451及び通信回路453の単位時間当たりの消費電力は、CPUの単位時間当たりの消費電力とほぼ同じである。
【0056】
図11では、蓄電部434の電圧は当初は約0(V)であり、その状態から蓄電される場合を示している。発電部50(
図10参照)が発電すると、その発電された電力は蓄電部434に蓄電される。制御部45(
図10参照)がスリープモードにあるとき、制御部45の消費電力は低く抑えられているため、蓄電部434の電圧は上昇する。蓄電部434の電圧が上昇し、その値が第3管理値BV3以上になると、第2リセットIC462はウェイクアップ信号を制御回路451に送信する。制御回路451がウェイクアップ信号を受信すると、制御部45はスリープモードから標準モードに移行する。ただし、この段階では、出力制御回路435(
図10参照)によって、センサ44及び制御部45への電力供給は停止した状態に維持される。蓄電部434の電圧がさらに上昇し、その値が第4管理値BV4以上になると(
図11のBP1参照)、出力制御回路435(
図10参照)は、定電圧出力回路436(
図10参照)に制御信号を送信して、センサ44及び制御部45への電力供給を開始させる。
【0057】
標準モードの制御部45に電力が供給されると、制御回路451による記憶回路452へのデータの書き込みや読み出し、通信回路453によるデータの送信等が行われる。このため、制御部45の消費電力が増大し、蓄電部434の電圧は下降する。
【0058】
次に、蓄電部434の電圧値が第2管理値BV2以下になると(
図11のBP2参照)、第1リセットIC461はスリープ信号を制御回路451に送信する。制御回路451がスリープ信号を受信すると、制御部45は標準モードからスリープモードに移行する。上述したように、スリープモードでは制御部45の消費電力が低く抑えられるため、蓄電部434の電圧は再び上昇する。
【0059】
蓄電部434の電圧が上昇し、その値が第3管理値BV3以上になると(
図11のBP3参照)、第2リセットIC462はウェイクアップ信号を制御回路451に送信する。制御回路451がウェイクアップ信号を受信すると、制御部45はスリープモードから標準モードに復帰する。標準モードでは制御部45の消費電力が増大するため、蓄電部434の電圧は再び下降する。
【0060】
このように、本実施形態において、蓄電部434の電圧は、第2管理値BV2以上、第3管理値BV3以下の範囲VR内に維持することが容易である。これにより、センサ44や制御部45に供給される電力が不足することを防ぐことができる。また、蓄電部434の電圧が上記範囲VR内にあるときに、記憶回路452へのデータの書き込みや読み込み、通信回路453によるデータの送信等は、安定に行われる。これにより、電力不足が原因でセンサ44や制御部45が誤動作することを防ぐことができる。
【0061】
なお、蓄電部434の電圧が第1管理値BV1未満の場合は、蓄電部434から制御部45に電力が供給されたとしても、センサ44や制御部45は電力不足で動作しない、又は安定に動作しない可能性が高い。そのため、蓄電部434の電圧が第1管理値BV1未満の場合、出力制御回路435(
図10参照)は、定電圧出力回路436(
図10参照)からセンサ44及び制御部45への電力供給を停止させる。また、蓄電部434の電圧が第5管理値BV5以上の場合は、蓄電部434は過充電となる。この場合は、蓄電回路433(
図10参照)は蓄電部434への充電を遮断する。
【0062】
図11の破線L2に示すように、比較例では、制御回路にスリープ信号が供給されないため、制御回路等が電力を使い果たして停止する可能性がある。例えば、制御回路が記憶回路にデータを書き込む途中で電力を使い果たして停止してしまうと、データが破損した状態で記憶回路に記憶される可能性がある。また、制御回路及び通信回路は、蓄電部から電力が再供給されたときに接続先と再ペアリングする必要が生じる。このため、比較例は、より多くのエネルギーと時間を消費することになる。
【0063】
本実施形態では、制御回路451及び通信回路453が電力を使い果たして停止する前に、リセットICから制御回路451にスリープ信号が供給される。このため、本実施形態のセンサ付き軸受1は、電力不足によって、データが破損した状態で記憶回路452に記憶されることを防ぐことができる。また、センサ付き軸受1は、接続先(例えば、
図1の上位装置150)との再ペアリングの必要回数を減らすことができる。これにより、センサ付き軸受1は、再ペアリングに要するエネルギーと時間を減らすことができる。
【0064】
次に、
図10に示した回路40Aの動作シーケンスについて説明する。
図12は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の動作シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、出力制御回路435(
図10参照)が蓄電部434(
図10参照)の電圧を確認する(ステップST1)。次に、出力制御回路435は、蓄電部434の電圧が予め設定した第4管理値BV4以上か否かを判断する(ステップST2)。蓄電部434の電圧が第4管理値BV4以上の場合(ステップST2;Yes)、出力制御回路435は定電圧出力回路436に制御信号を送信して、センサ44(
図10参照)及び制御部45(
図10参照)への出力を指示する。これにより、定電圧出力回路436は、定電圧の電力をセンサ44及び制御部45にそれぞれ供給する(ステップST3)。一方、蓄電部434の電圧が第4管理値BV4未満の場合(ステップST2;No)は、動作シーケンスはステップST1に戻る。
【0066】
電源部43から電力が供給されると、制御部45は初期設定を行う(ステップST4)。例えば、制御回路451(
図10参照)及び通信回路453(
図10参照)は、初期設定として、ペア通信を行う接続先のサーチと認証(ペアリング)を行う。また、制御回路451は、記憶回路452(
図10参照)へのデータ転送処理の開始条件と終了条件とを設定する。一例を挙げると、開始条件は、角度センサ443から出力される原点(
図9参照)の検出である。制御回路451は、原点を検出するための閾値Vm(
図9参照)に関する情報を、制御部45を構成するCPUのレジスタに書き込む。また、終了条件は、原点の検出回数である。制御回路451は、終了条件となる原点の検出回数を、制御部45を構成するCPUのレジスタに書き込む。
【0067】
センサ44に定電圧の電力が供給されると、センサ44は物理量又は化学量の検出を開始する(ステップST5)。例えば、加速度センサ441は、軸受本体20(
図3から
図5参照)の振動を検出してアナログデータを出力する。温度センサ442は、軸受本体20の周囲温度を検出して、アナログデータを出力する。角度センサ443は、外輪21に対する内輪22の回転角度を検出してアナログデータを出力する。アナログデータは、制御回路451が有するA/D変換機能によって、デジタルデータにそれぞれ変換される。
【0068】
制御回路451が原点を検出すると、制御回路451はデジタルデータを記憶回路452に転送する。例えば、制御回路451は、制御回路451のキャッシュメモリにデジタルデータを一時的に記憶するとともに、キャッシュメモリに記憶したデジタルデータを記憶回路452に時分割で出力する。記憶回路452は、制御回路451が出力したデジタルデータを記憶する。
【0069】
次に、制御回路451は、記憶回路452からデジタルデータを読み出して、通信回路453に出力する。通信回路453は、デジタルデータをアンテナ47から外部に送信する(ステップST6)。
【0070】
通信回路453による送信処理を終了した後、制御回路451は、物理量又は化学量の検出を継続して行うか否かを判断する(ステップST7)。物理量又は化学量の検出を継続する場合(ステップST7;Yes)は、動作シーケンスはステップST9へ進む。また、物理量又は化学量の検出を継続しない場合(ステップST7;No)は、動作シーケンスはステップST8へ進む。ステップST8では、出力制御回路435は、定電圧出力回路436に制御信号を送信して、センサ44及び制御部45への出力停止を指示する。これにより、定電圧出力回路436は、センサ44及び制御部45への電力の供給を停止する。そして、回路40Aは動作シーケンスを終了する。
【0071】
一方、ステップST9では、出力制御回路435は蓄電部434の電圧を再び確認する。次に、出力制御回路435が、蓄電部434の電圧が第1管理値BV1以上か否かを判断する(ステップST10)。蓄電部434の電圧が第1管理値BV1未満の場合(ステップST10;No)は、動作シーケンスはステップST8へ進む。この場合、定電圧出力回路436は、センサ44及び制御部45への電力の供給を停止する。蓄電部434の電圧が第1管理値BV1以上の場合(ステップST10;Yes)は、定電圧出力回路436は、センサ44及び制御部45への電力の供給を継続する。
【0072】
電圧監視部46は、蓄電部434の電圧に基づく第1信号RST1を制御回路451に出力する。制御回路451は、第1信号RST1に基づいて、蓄電部434の電圧が第2管理値BV2以下か否かを判断する(ステップST11)。例えば、第1リセットIC461の閾値電圧は、第2管理値BV2に設定されている。蓄電部434の電圧が第2管理値BV2以下の場合、第1リセットIC461は、第1信号RST1として、High信号(スリープ信号)を出力する。蓄電部434の電圧が第2管理値BV2よりも大きい場合、第1リセットIC461は、第1信号RST1として、Low信号を出力する。制御回路451は、第1信号RST1としてHigh信号(スリープ信号)を受信すると、蓄電部434の電圧は第2管理値BV2以下であると判断する(ステップST11:Yes)。また、制御回路451は、第1信号RST1としてLow信号を受信すると、蓄電部434の電圧は第2管理値BV2よりも大きい(ステップST11:No)と判断する。
【0073】
蓄電部434の電圧が第2管理値BV2よりも大きい場合(ステップST11;No)は、動作シーケンスはステップST5へ戻る。また、蓄電部434の電圧が第2管理値BV2以下の場合(ステップST11;No)は、制御回路451及び、制御回路451が制御する通信回路453は、通常モードからスリープモードに移行する(ステップST12)。
【0074】
電圧監視部46は、蓄電部434の電圧に基づく第2信号RST2を制御回路451に出力する。制御回路451は、第2信号RST2に基づいて、蓄電部434の電圧が第3管理値BV3以上か否かを判断する(ステップST13)。例えば、第2リセットIC462の閾値電圧は、第3管理値BV3に設定されている。蓄電部434の電圧が第3管理値BV3以上の場合、第2リセットIC462は、第2信号RST2として、High信号(ウェイクアップ信号)を出力する。蓄電部434の電圧が第2管理値BV2未満の場合、第2リセットIC462は、第2信号RST2として、Low信号を出力する。制御回路451は、第2信号RST2としてHigh信号(ウェイクアップ信号)を受信すると、蓄電部434の電圧は第3管理値BV3以上であると判断する(ステップST13:Yes)。また、制御回路451は、第2信号RST2としてLow信号を受信すると、蓄電部434の電圧は第3管理値BV3未満である(ステップST13:No)と判断する。
【0075】
蓄電部434の電圧が第3管理値BV3以上の場合(ステップST13;Yes)は、制御回路451及び通信回路453はスリープモードから標準モードに復帰する(ステップST14)。制御回路451及び通信回路453が標準モードに復帰した後、動作シーケンスはステップST5へ戻る。また、蓄電部434の電圧が第3管理値BV3未満の場合(ステップST13;No)は、動作シーケンスはステップST12へ戻る。この場合、制御回路451及び通信回路453はスリープモードを維持する。
【0076】
図13は、本実施形態のセンサ付き軸受の基板に搭載されている回路の動作期間と、CPUの消費電力との関係を模式的に示す図である。
図13において、横軸は時間(s)を示し、縦軸は制御回路451(
図10参照)及び通信回路453(
図10参照)を構成するCPUの単位時間当たりの消費電力(W)を示す。
図13に示すように、回路40A(
図10参照)の動作期間は、期間tm1からtm3に区分される。期間tm1は、
図12に示したフローチャートのステップST4が実行される期間である。期間tm2は、
図12に示したフローチャートのステップST5が実行される期間である。期間tm3は、
図12に示したフローチャートのステップST6が実行される期間である。また、
図13において、EP1は、期間tm1におけるCPUの消費電力量(J)を示す。EP2は、期間tm2におけるCPUの消費電力量(J)を示す。EP3は、期間tm3におけるCPUの消費電力量(J)を示す。期間tm1では、CPUに突入電流が流れる。このため、期間tm1の開始直後は、CPUの単位時間当たりの消費電力は一時的に高くなる。
【0077】
本実施形態では、制御回路451及び通信回路453は、蓄電部434に蓄電された電力を使い果たして停止する前に、スリープモードに移行して電力の消費を抑制する。スリープモードでは、制御回路451及び通信回路453は、消費電力を低く抑えつつ、接続先とのペアリングを維持する。これにより、センサ付き軸受1(
図1参照)は、期間tm1の必要回数を減らすことができ、期間tm2と期間tm3とを繰り返し行うことができる。これにより、センサ付き軸受1は、消費電力量EP2、EP3に対する消費電力量EP1の割合を減らすことができる。
【0078】
図14は、センサ付き軸受の回転数の時間変化の一例を示すグラフである。
図14の横軸は、時間である。
図14の縦軸は、センサ付き軸受の回転数である。縦軸のRsaは、例えば、発電部50が発電する電力が、蓄電部434に蓄電可能な電力を上回るときのセンサ付き軸受1の回転数である。また、縦軸のRsbは、発電部50が発電する電力が、センサ付き軸受1が有する各種回路の最小消費電力を下回るときのセンサ付き軸受1の回転数である。
図14に示すようにセンサ付き軸受1の回転は、Rsa以上の高速回転になるときもあるし、Rsb以下の低速回転になるときもある。このように、センサ付き軸受1の回転数は時々刻々と変動することが多いため、発電部50が発電する電力は安定しないことが多い。
【0079】
しかしながら、センサ付き軸受1の蓄電回路433は、上記回転が高速回転のときも低速回転のときも、蓄電部434が充電可能であれば、発電部50が発電する電力を蓄電部434に蓄電する。例えば、蓄電回路433は、ツェナーダイオードを有する。高速回転の場合、蓄電回路433は、発電部50が発電する電力のうち、余剰電力をツェナーダイオードに流して外部に放出し、残りの電力を蓄電部434に流して蓄電する。また、低速回転の場合、蓄電回路433は、発電部50が発電する全ての電力を蓄電部434に流して蓄電する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係るセンサ付き軸受1は、相対的に回転する外輪21及び内輪22を有する軸受本体20と、外輪21と内輪22との相対的な回転に基づいて発電する発電部50と、発電部50が発電する電力によって充電される、充放電可能な蓄電部434と、軸受本体20の物理量又は化学量を検出するセンサ44と、蓄電部434に蓄電された電力と、センサ44で検出される物理量又は化学量に関するデータとが供給される制御部45と、蓄電部434の電圧を監視する電圧監視部46と、を備える。電圧監視部46は、蓄電部434の電圧に基づく第1信号RST1を制御部45に送信する第1リセットIC461と、蓄電部434の電圧に基づく第2信号RST2を制御部45に送信する第2リセットIC462と、を有する。
【0081】
これによれば、センサ付き軸受1は、制御部45が電力不足となる前に、制御部45は通常モードからスリープモードに移行することができる。これにより、センサ付き軸受1は、電力不足によって制御部45が誤動作することを防止することができる。
【0082】
例えば、制御回路451が記憶回路452にデータを書き込んでいるときに、電源が失われると、記憶回路452が破損する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、電圧監視部46が蓄電部434の電圧を監視する。そして、その監視の結果は、制御回路451に出力される。これにより、制御回路451は、記憶回路452へのデータの書き込みを安定に実行できる電力が、蓄電部434に残されているか否かを判断することができる。つまり、制御回路451は、記憶回路452にデータを安定に書き込むことができる状態にあるか、それとも、安定に書き込むことができない状態にあるかを判断することができる。本実施形態では、制御回路451による記憶回路452へのデータの書き込みは、蓄電部434の電圧が十分に高いとき(例えば、第2管理値BV2以上のとき)に実行される。これにより、制御回路451は、記憶回路452にデータを安定に書き込むことができ、電源消失による記憶回路452の破損を防止することができる。
【0083】
また、本実施形態に係るセンサ付き軸受1は、電圧監視部46が蓄電部434の電圧を監視することによって、ファームウェアをより安全にアップデートすることができる。詳しく説明すると、無線通信が可能なICチップを備えるモジュール(以下、無線モジュール)は多くの場合、ファームウェアのアップデートは、無線によるアップデート(OTA-DFU:Over the Air Device Farmware Update)でサポートされる。これは無線モジュールの使用環境は無線であることを前提としているため、有線によるアップデートツールの使用が困難であることが多いためである。OTAも最終的にはフラッシュメモリへの書込みを必要とするため、OTAの途中で電源を消失するとフラッシュメモリが破損する可能性がある。
【0084】
これに対して、本実施形態に係るセンサ付き軸受1は、無線によるファームウェアのアップデート(OTA)時も、第1リセットIC461及び第2リセットIC462を有する電圧監視部46が、蓄電部434の電圧を監視する。記憶回路452が有するフラッシュメモリへのアップデート用データの書き込みは、電圧監視部46が蓄電部434の電圧を監視する状態で行われる。OTA時に蓄電部434の電圧が不足すると(例えば、第2管理値BV2以下になると)、制御回路451及び通信回路453は通常モードからスリープモードに移行し、フラッシュメモリへの書き込みは中断される。その後、蓄電部434の電圧が回復すると(例えば、第3管理値BV3以上になると)、制御回路451及び通信回路453はスリープモードから通常モードに移行し、フラッシュメモリへの書き込みは再開される。かりに、蓄電部434の電圧が回復せず、電源を消失した場合でも、スリープモードによりフラッシュメモリへの書き込みは停止しているため、フラッシュメモリの破損は回避される。フラッシュメモリの破損が回避されるため、電源回復後にOTAの再開又はやり直しが可能である。
【0085】
なお、記憶回路452が備えるフラッシュメモリにおいて、ファームウェアが格納される領域(以下、ファームエリア)は、フラッシュメモリの全容量の半分未満とすることが好ましい。また、フラッシュメモリの残りの容量は、ファームウェアのアップデート用データの格納に備える領域、及び、センサ44で検出される物理量又は化学量に関するデータの格納に備える領域とすることが好ましい。これにより、電源消失時にアップデート用データが失われることを防ぐことができる。また、フラッシュメモリにおいて、ファームエリアと、アップデート用データの格納に備える領域は、上記のOTAごとに切り替えられることが好ましい。これにより、フラッシュメモリの特定領域にデータの書込みが集中することを防ぐことができ、フラッシュメモリの劣化を抑制することができる。
【0086】
また、センサ付き軸受1では、蓄電部434の電圧監視にリセットIC(第1リセットIC461、第2リセットIC462)が用いられる。これにより、センサ付き軸受1は、電圧監視の消費電力を低く抑えることができる。
【0087】
例えば、蓄電部434の電圧を監視する方法として、リセットICを用いるのではなく、制御回路451のA/D変換機能を用いる方法も考えられる。制御回路451のA/D変換機能を用いれば、高い精度の分解能で電圧情報を得られることができる。しかし、A/D変換は電流の消費量が大きい。蓄電部434の電圧測定を制御回路451のA/D変換機能を用いて行うと、蓄電部434に蓄電された電力を大幅に減少させてしまう。本実施形態は、この点を考慮して、蓄電部434の電圧監視に低消費電力のリセットICを用いている。これにより、センサ付き軸受1は、電圧監視の消費電力を低く抑えることができる。
【0088】
また、センサ付き軸受1は、蓄電部434の電圧監視にリセットICを用いることによって、制御回路451及び通信回路453のスリープモードから通常モードへの復帰を、好適なタイミングで実行することができる。
【0089】
詳しく説明すると、制御回路451のA/D変換機能による電圧監視を行う場合、通常モードからスリープモードに移行することは可能であるが、スリープモードに入ってしまうと制御回路451は低消費電力で待機する。このため、制御回路451は、どのタイミングでスリープモードから通所モードに復帰すればよいのか分からなくなる。タイマによるウェイクアップも考えられるが、センサ付き軸受1は受動的に回転して電力を得るため、一定時間後に電力が回復する保証はない。このため、制御回路451のA/D変換機能による電圧監視では、スリープモードから通常モードへの復帰を好適なタイミングで実行することは難しい。本実施形態は、この点も考慮して、蓄電部434の電圧監視にリセットICを用いている。
【0090】
センサ付き軸受1は回転させられるものであるため、発電量を制御することはできないが、どんなに低い回転数であったとしても蓄電を行う。本実施形態は、センサ付き軸受1の回転数が時々刻々と変動する不安定な電力事情の中での、誤動作防止対策と省電力化対策である。本実施形態によれば、不安定な電力事情の中でも誤動作を防止可能であり、しかも、省電力化も可能であるセンサ付き軸受1を提供することができる。
【0091】
上述の第2管理値BV2が本開示の「第1閾値」に対応し、上述の第3管理値BV3が本開示の「第2閾値」に対応し、上述の第1管理値が本開示の「第3閾値」に対応している。また、上述のスリープ信号(第1信号RST1のHigh信号)が本開示の「第1信号」に対応している。また、上述のウェイクアップ信号(第2信号RST2のHigh信号)が本開示の「第2信号」に対応している。また、上述の加速度センサ441、温度センサ442及び角度センサ443の中から任意に選択される2つのセンサが、本開示の「第1センサ」及び「第2センサ」に対応している。
【0092】
なお、本実施形態において、リセットICがハイ(High)信号又はロウ(Low)信号を出力するときの閾値電圧の設定値は、上位装置150のコンピュータ152等によって書き換え可能であってもよい。例えば、第1リセットIC461と第2リセットIC462は、それぞれレジスタを内蔵していてもよい。上位装置150のコンピュータ152は、上位装置150の通信部151を介して、第1リセットIC461のレジスタに格納されている第2管理値BV2を書き換え可能であってもよい。同様に、コンピュータ152は、通信部151を介して、第2リセットIC462のレジスタに格納されている第3管理値BV3を書き換え可能であってもよい。これによれば、ユーザは、リセットICを交換しなくても、第1リセットIC461がスリープ信号を出力するときの電圧値と、第2リセットIC462がウェイクアップ信号を出力するときの電圧値とを任意に変更することができる。
【0093】
また、上記の実施形態では、本開示の電圧監視回路としてリセットICを説明したが、リセットICはあくまで一例である。本開示の電圧監視回路は、例えば、低消費電力で動作するボルテージディテクタや電圧検出器でもよい。また、低消費電力なオペアンプで構成されるコンパレータ回路でもよい。
【0094】
また、上記の実施形態では、本開示の回転装置としてセンサ付き軸受1を例示したが、本開示の回転装置はセンサ付き軸受に限定されない。本開示の回転装置は、例えば、センサ付き軸受ではなく、軸受と同軸に取り付けられるセンサ付き回転装置であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 センサ付き軸受(回転装置の一例)
10 カバー
20 軸受本体(回転装置本体の一例)
21 外輪(第1部品の一例)
22 内輪(第2部品の一例)
40 基板
40A 回路
41 電源基板
42 センサ基板
43 電源部
44 センサ
45 制御部
46 電圧監視部
47 アンテナ
50 発電部
150 上位装置
151 通信部
152 コンピュータ
434 蓄電部
435 出力制御回路
436 定電圧出力回路
441 加速度センサ
442 温度センサ
443 角度センサ
451 制御回路
452 記憶回路
453 通信回路
461 第1リセットIC(第1電圧監視回路の一例)
462 第2リセットIC(第2電圧監視回路の一例)
BV1 第1管理値
BV2 第2管理値
BV3 第3管理値
BV4 第4管理値
BV5 第5管理値
RST1 第1信号
RST2 第2信号