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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】洗浄便座装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
E03D9/08 B
E03D9/08 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018075975
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019183512
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 伸元
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-223470(JP,A)
【文献】特開2004-308264(JP,A)
【文献】特開2005-090030(JP,A)
【文献】特開2004-263424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の局部洗浄を行うノズルを備え、前記ノズルを洗浄可能な洗浄便座装置であって、
洗浄水を加温する温水ヒータを有する熱交換器と、
前記熱交換器からの洗浄水の供給先を少なくとも前記局部洗浄用と前記ノズルの洗浄用とに切り替え可能な切替弁と、
前記局部洗浄の開始前に所定の低温の洗浄水で前記ノズルを洗浄する低温ノズル洗浄を実行し、前記局部洗浄の開始前以外の所定タイミングで前記低温よりも高い高温の洗浄水で前記ノズルを洗浄する高温ノズル洗浄を実行するように、前記温水ヒータと前記切替弁とを制御する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、前記高温ノズル洗浄を実行してから所定時間以内に前記局部洗浄が行われる場合には、前記温水ヒータをオフとした状態で洗浄水を捨て水として排出するように、前記温水ヒータと前記切替弁とを制御する
浄便座装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄便座装置であって、
前記洗浄便座装置の使用者を検知する検知手段を備え、
前記制御装置は、前記局部洗浄の終了後に前記検知手段により使用者を検知しなくなったタイミングまたは使用者を検知しなくなってから一定時間経過したタイミングを前記所定タイミングとして、前記高温ノズル洗浄を実行する
洗浄便座装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄便座装置であって、
前記制御装置は、前記局部洗浄において前記温水ヒータにより加温される温度の洗浄水を前記低温の洗浄水として、前記低温ノズル洗浄を実行する
洗浄便座装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の洗浄便座装置であって、
前記制御装置は、前記高温ノズル洗浄を実行してから所定の時間間隔が経過したタイミングを前記所定タイミングとして、前記高温ノズル洗浄を再実行する
洗浄便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗浄便座装置としては、人体局部を洗浄するノズルと、洗浄水を加温する温水ヒータとを備え、人体局部を洗浄する場合よりも高温の洗浄水でノズルを洗浄するものが提案されている。例えば、特許文献1の洗浄便座装置では、高温洗浄モードにおいて、高温の洗浄水をノズルから吐出させることで洗浄水の流路内に繁殖した細菌を殺菌する。また、高温洗浄モード中は、人体局部の洗浄動作を禁止することで、人体に高温の洗浄水がかかるのを防止している。また、特許文献2の洗浄便座装置では、ノズルに向けて高温の洗浄水を吐出する吐出部を備えており、ノズルが装置本体内に収納されているとき以外は吐出部から高温の洗浄水の吐出を禁止することで、人体に高温の洗浄水がかかるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-311078号公報
【文献】特開2004-92030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、高温の洗浄水によりノズルを洗浄可能なものにおいては、人体に高温の洗浄水がかかるのを防止しつつノズルを適切に洗浄することが求められている。一方で、高温の洗浄水によるノズルの洗浄を頻繁に行うと、温水ヒータの電力消費が過大となるから、ノズルを適切に洗浄するためになお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、人体に高温の洗浄水がかかるのを防止すると共に温水ヒータの電力消費を抑えつつノズルを適切に洗浄することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の洗浄便座装置は、人体の局部洗浄を行うノズルを備え、前記ノズルを洗浄可能な洗浄便座装置であって、洗浄水を加温する温水ヒータを有する熱交換器と、前記熱交換器からの洗浄水の供給先を少なくとも前記局部洗浄用と前記ノズルの洗浄用とに切り替え可能な切替弁と、前記局部洗浄の開始前に所定の低温の洗浄水で前記ノズルを洗浄する低温ノズル洗浄を実行し、前記局部洗浄の開始前以外の所定タイミングで前記低温よりも高い高温の洗浄水で前記ノズルを洗浄する高温ノズル洗浄を実行するように、前記温水ヒータと前記切替弁とを制御する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の洗浄便座装置では、局部洗浄の開始前に低温ノズル洗浄を実行し、局部洗浄の開始前以外の所定タイミングで高温ノズル洗浄を実行する。これにより、人体に高温の洗浄水がかかることなく局部洗浄の開始前に洗浄ノズルの汚れを除去することが可能となり、洗浄ノズルに付着した細菌などを所定タイミングで殺菌することが可能となるため、洗浄ノズルを適切に洗浄することができる。また、低温ノズル洗浄と高温ノズル洗浄とを併用することにより、常に高温ノズル洗浄を行うものに比して、電力消費を抑えつつノズルの洗浄機会を増やすことができる。したがって、人体に高温の洗浄水がかかるのを防止すると共に温水ヒータの電力消費を抑えつつノズルを適切に洗浄することができる。
【0009】
本発明の洗浄便座装置において、前記制御装置は、前記高温ノズル洗浄を実行してから所定時間以内に前記局部洗浄が行われる場合には、前記温水ヒータをオフとした状態で洗浄水を捨て水として排出するように、前記温水ヒータと前記切替弁とを制御するものとしてもよい。こうすれば、高温ノズル洗浄に用いられた高温の洗浄水が切替弁内などに残存していても、捨て水として排出することで人体にかかるのを防止することができる。
【0010】
本発明の洗浄便座装置において、前記洗浄便座装置の使用者を検知する検知手段を備え、前記制御装置は、前記局部洗浄の終了後に前記検知手段により使用者を検知しなくなったタイミングまたは使用者を検知しなくなってから一定時間経過したタイミングを前記所定タイミングとして、前記高温ノズル洗浄を実行するものとしてもよい。こうすれば、高温の洗浄水が人体にかかるのを防止しつつ、局部洗浄の終了後に比較的速やかに高温ノズル洗浄を行うことができる。このため、ノズルに付着した汚れが固着したり細菌が増殖したりする前に高温ノズル洗浄を行って、汚れの除去効果や細菌の殺菌効果をより高めることができる。
【0011】
本発明の洗浄便座装置において、前記制御装置は、前記局部洗浄において前記温水ヒータにより加温される温度の洗浄水を前記低温の洗浄水として、前記低温ノズル洗浄を実行するものとしてもよい。こうすれば、低温ノズル洗浄を実行した後に速やかに局部洗浄を開始することができる。
【0012】
本発明の洗浄便座装置において、前記制御装置は、前記高温ノズル洗浄を実行してから所定の時間間隔が経過したタイミングを前記所定タイミングとして、前記高温ノズル洗浄を再実行するものとしてもよい。こうすれば、高温ノズル洗浄を所定の時間間隔毎に実行することができるから、殺菌効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
図2】洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図である。
図3】洗浄ノズル21の収納状態を示す説明図である。
図4】洗浄ノズル21の進出状態を示す説明図である。
図5】ノズルユニット作動処理の一例を示すフローチャートである。
図6】局部洗浄用処理の一例を示すフローチャートである。
図7】ノズル殺菌用処理の一例を示すフローチャートである。
図8】変形例のノズル殺菌用処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
図1は洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、図2は洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図であり、図3は洗浄ノズル21の収納状態を示す説明図であり、図4は洗浄ノズル21の進出状態を示す説明図である。本実施形態において、左右方向、前後方向及び上下方向は、図1図3図4に示した通りとする。
【0016】
便器1は、トイレ室内に配設された洋式便器であり、便器1の上面に洗浄便座装置10が設置されている。洗浄便座装置10は、図1に示すように、便器1の後方に設置される便座装置本体11と、便座装置本体11に回動自在に支持された便座12と、便座装置本体11に回動自在に支持された便蓋13と、使用者により操作される操作パネル14とを備える。操作パネル14には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ、洗浄水の勢いを調整する水勢調整スイッチ、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ、洗浄の停止を指示する停止スイッチなどが設けられている。
【0017】
洗浄便座装置10は、図2に示すように、人体の局部洗浄を行う2つの洗浄ノズルとしておしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22とを有するノズルユニット20と、洗浄便座装置10の全体を制御する制御装置60とを備える。ノズルユニット20は、給水源からの給水を所定の給水圧に減圧する給水減圧弁24と、給水減圧弁24を通過した洗浄水を加温する温水ヒータ25aや洗浄水の温度を検出する温度センサ25bが設けられた熱交換ユニット25と、洗浄水の流量を調整する流量調整弁26と、洗浄水の供給先を切り替える流路切替弁27とを備える。温水ヒータ25aは、図示しない交流電源からの電力により駆動し、熱交換ユニット25内に流入した洗浄水を瞬間的に加熱する。局部洗浄が行われる場合、温水ヒータ25aは、操作パネル14の温度調整スイッチを介して調整された温度に応じて、例えば35~40℃程度の範囲内の水温となるように洗浄水を加熱する。また、流量調整弁26により局部洗浄中よりも洗浄水の流量を絞った状態で温水ヒータ25aが洗浄水を加熱することにより、局部洗浄を行う場合よりも高温に洗浄水を加熱可能である。例えば、局部洗浄を行う場合の半分程度以下となるように流量調整弁26で流量を絞りつつ温水ヒータ25aで洗浄水を加熱することにより、例えば60~70℃程度の高温まで加熱可能となっている。
【0018】
また、ノズルユニット20は、この他に、おしり洗浄ノズル21を前後方向に進退移動させるおしり洗浄ノズル駆動部31と、ビデ洗浄ノズル22を前後方向に進退移動させるビデ洗浄ノズル駆動部32と、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外周全体を覆うノズルカバー23(図3参照)と、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄するノズル洗浄器29(図3参照)とを備える。
【0019】
おしり洗浄ノズル21は、図3図4に示すように、内部に洗浄水の流路が形成されると共に先端部の上面にノズル孔21aが形成された中空の筒状部材として構成されている。また、ビデ洗浄ノズル22も同様に構成されている。おしり洗浄ノズル駆動部31は、図示は省略するが、例えば、駆動源としてのモータと、モータにより回転するピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛み合うと共におしり洗浄ノズル21に接続されピニオンギヤの回転に伴って移動可能なラック(フレキシブルラック)とを備えており、モータの正回転または逆回転によりおしり洗浄ノズル21を前方または後方に移動させる。また、ビデ洗浄ノズル駆動部32も同様に構成されている。なお、制御装置60は、おしり洗浄ノズル駆動部31やビデ洗浄ノズル駆動部32の各モータの回転量や図示しない位置センサなどから、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の位置を検出可能である。
【0020】
ノズルカバー23は、図3図4に示すように、おしり洗浄ノズル21およびビデ洗浄ノズル22が収納位置にある収納状態で(図3参照)、それらの先端を覆う開閉式のシャッター23aを有する。このシャッター23aは、左右に延びる長尺の平板状部材であり、上辺部に設けられた回動軸回りに回動可能である。シャッター23aは、おしり洗浄ノズル駆動部31の駆動によりおしり洗浄ノズル21が進出したりビデ洗浄ノズル駆動部32の駆動によりビデ洗浄ノズル22が進出したりすると、進出する洗浄ノズル(図4ではおしり洗浄ノズル21)に裏面が押されて回動軸回りに回動することで開状態となる。
【0021】
ノズル洗浄器29は、おしり洗浄ノズル21およびビデ洗浄ノズル22の上方に配置されており、下面に設けられた吐出口29aから洗浄水を吐出することでおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄する。また、ノズル洗浄器29は、各洗浄ノズルが進退移動している状態で、吐出口29aから洗浄水を吐出することで、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の外表面の全体を洗浄することができる。
【0022】
おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22とノズル洗浄器29とは、図2に示すように、流路切替弁27に接続されている。流路切替弁27は、熱交換ユニット25(流量調整弁26)からの洗浄水の供給先を、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22とノズル洗浄器29とのいずれかに選択的に切り替え可能となっている。なお、流路切換弁27は、図示しないモータにより駆動されるロータリバルブなどとして構成されている。
【0023】
制御装置60は、図示は省略するが、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,タイマ,入出力ポートなどを備える。制御装置60には、図2に示すように、操作パネル14からの操作信号やトイレ室内への使用者の入室を検知する入室検知センサ15からの検知信号、便座12への使用者の着座を検知する着座検知センサ16からの検知信号、洗浄水の温度を検出する温度センサ25bからの検出信号などが入力ポートを介して入力される。また、制御装置60からは、給水減圧弁24への駆動信号や温水ヒータ25aへの駆動信号,流量調整弁26への駆動信号,流路切替弁27への駆動信号,おしり洗浄ノズル駆動部31への駆動信号、ビデ洗浄ノズル駆動部32への駆動信号などが出力ポートを介して出力される。
【0024】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10(ノズルユニット20)の動作について説明する。図5はノズルユニット作動処理の一例を示すフローチャートである。制御装置60は電源オンの状態でこの処理を実行する。ノズルユニット作動処理では、制御装置60は、まず、入室検知センサ15からの検知信号に基づいてトイレ室内への使用者の入室を検知したか否か(S100)、着座検知センサ16からの検知信号に基づいて便座12への使用者の着座を検知したか否か(S110)、をそれぞれ判定する。制御装置60は、S100で使用者の入室を検知したと判定し且つS110で使用者の着座を検知したと判定すると、図6に示す局部洗浄用処理を行い(S120)、S100で使用者の入室を検知しないと判定すると、図7に示すノズル殺菌用処理を行う(S130)。以下、説明の都合上、ノズル殺菌用処理を説明してから局部洗浄用処理を説明する。
【0025】
図7のノズル殺菌用処理では、制御装置60は、まず、トイレ室内への使用者の入室が検知されていない不在時間が一定時間に到達したタイミングであるか否かを判定する(S400)。なお、制御装置60は、図示は省略するが、不在時間を計測していない状態においてS100で使用者の入室を検知しないと判定すると不在時間の計測を開始し、不在時間を計測している状態においてS100で使用者の入室を検知したと判定すると不在時間の計測を終了するものとする。制御装置60は、S400で不在時間が一定時間に到達したタイミングでないと判定すると、そのままノズル殺菌用処理を終了する。制御装置60は、ノズル殺菌用処理を終了すると、図5のS100に戻り処理を繰り返す。
【0026】
一方、制御装置60は、S400で不在時間が一定時間に到達したタイミングであると判定すると、高温ノズル洗浄に応じた温度で洗浄水を加熱するように温水ヒータ25をオン状態とすると共に流量調整弁26により洗浄水の流量を絞るよう調整する(S410)。また、制御装置60は、流路切替弁27による洗浄水の供給先をノズル洗浄器29に切り替えてノズル洗浄器29から高温の洗浄水を吐出しながら各洗浄ノズルを進退移動させて高温ノズル洗浄を実行する(S420)。ここで、各洗浄ノズルには、汚物の飛散などにより大腸菌などの細菌が付着することがあり、その細菌を適切に殺菌するためには、特開2004-92030号公報に記載されているように60℃以上の高温の洗浄水をかけることが望ましい。このため、ノズル殺菌用処理では、局部洗浄よりも高温(例えば60~70℃程度)の洗浄水をノズル洗浄器29から吐出させておしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄する高温ノズル洗浄を実行するのである。また、この高温ノズル洗浄は、例えば1分や3分などの数分程度に亘って行われる。なお、高温の洗浄水が使用者にかかるのを防ぐために、使用者の不在時に限って高温ノズル洗浄を実行する。
【0027】
そして、制御装置60は、高温ノズル洗浄の実行が完了したと判定すると(S430)、温水ヒータ25をオフとしノズル洗浄器29から高温の洗浄水の吐出を停止して(S440)、ノズル殺菌用処理を終了する。なお、図示は省略するが、制御装置60は、高温ノズル洗浄の実行中に使用者の入室を検知した場合には、S440と同様に高温の洗浄水の吐出を停止し、各洗浄ノズルを収納位置に移動させてノズル殺菌用処理を終了する。
【0028】
次に、図6の局部洗浄用処理を説明する。局部洗浄用処理では、制御装置60は、まず、上述した高温ノズル洗浄の実行後の経過時間が所定の冷却必要時間内であるか否かを判定する(S200)。ここで、高温ノズル洗浄の実行直後は、熱交換ユニット25や流量調整弁26、流路切替弁27を含む洗浄水の流路内に、高温の洗浄水が残存していることになる。この高温の洗浄水は、時間が経過するにつれて温度が低下していき、局部洗浄用の水温である40℃程度まで低下すれば、使用者の局部にかかっても問題はない。しかし、温度が十分に低下する前に局部洗浄が開始されると、流路内に残存している比較的高温の洗浄水が使用者の局部に吐出されることになってしまう。このため、本実施形態では、高温ノズル洗浄の実行により流路内に残存している高温の洗浄水が40℃程度まで低下するまでの時間を予め求めておき、求めた時間に若干のマージンを加えてS200の所定の冷却必要時間を定めるものとした。また、制御装置60は、図7のノズル殺菌用処理のS440で高温ノズル洗浄の実行を完了してからの経過時間を計測し、S200ではその経過時間が所定の冷却必要時間内であるか否かを判定する。
【0029】
制御装置60は、S200で高温ノズル洗浄の実行後の経過時間が所定の冷却必要時間内であると判定すると、温水ヒータ25aをオフとしてノズル洗浄器29から捨て水を排出する(S210)。これにより、熱交換ユニット25や流量調整弁26、流路切替弁27を含む洗浄水の流路内に残存していた比較的高温の洗浄水を捨て水として排出することができるから、局部洗浄を開始した際に、設定水温よりも高温の洗浄水が洗浄ノズルから吐出されて使用者の局部にかかるのを防止することができる。また、この捨て水は洗浄ノズルにかかるため、洗浄ノズルを洗浄することができる。なお、S200で経過時間が所定の冷却必要時間外であると判定した場合や、そもそも高温ノズル洗浄の実行後の経過時間を計測していない場合には、S210の処理をスキップする。
【0030】
続いて、制御装置60は、局部洗浄の設定水温に応じて温水ヒータ25aをオン状態とすると共に流路切替弁27による洗浄水の供給先を各洗浄ノズルに切り替えて(S220)、各洗浄ノズルから捨て水を排出する(S230)。ここで、高温ノズル洗浄中に高温の洗浄水がおしり洗浄ノズル21内やビデ洗浄ノズル22内に入る場合がある。例えば、図3の状態では、ノズル洗浄器29から吐出された高温の洗浄水が直接ノズル孔21aからおしり洗浄ノズル21内に入ったり、図4の状態ではノズル洗浄器29から吐出されておしり洗浄ノズル21の外表面を伝った高温の洗浄水がノズル孔21aからおしり洗浄ノズル21内に入ったりする。このようにおしり洗浄ノズル21内に高温の洗浄水が入った状態で局部洗浄が開始されると、設定温度よりも高温の洗浄水が使用者の局部にかかることがある。ビデ洗浄ノズル22についても同様である。このため、各洗浄ノズルから洗浄水を捨て水として排出することで、高温の洗浄水が洗浄ノズル内に入っていた場合でも使用者の局部に高温の洗浄水がかかるのを防止することができる。なお、洗浄ノズルからの捨て水は、局部洗浄の開始が指示されたときに実行するものなどとしてもよい。
【0031】
そして、制御装置60は、局部洗浄(おしり洗浄またはビデ洗浄)の開始が指示されるのを待つ(S240)。S240の判定は、操作パネル14からの操作信号によりおしり洗浄スイッチやビデ洗浄スイッチが操作されたか否かに基づいて行われる。制御装置60は、局部洗浄の開始が指示されたと判定すると、流路切替弁27の供給先をノズル洗浄器29に切り替えてノズル洗浄器29から洗浄水を吐出しながら、局部洗浄を行う洗浄ノズル(おしり洗浄ノズル21またはビデ洗浄ノズル22のいずれか)を前進させることで、低温ノズル洗浄を実行して(S250)、洗浄ノズルが局部洗浄位置に到達するのを待つ(S260)。なお、低温ノズル洗浄では、高温ノズル洗浄よりも水温の低い洗浄水を用いてノズル洗浄を行う。ここでは、局部洗浄の設定水温に応じて洗浄水を加熱するように温水ヒータ25aを駆動しているから、常温よりも高い40℃程度の洗浄水を用いてノズル洗浄が行われることになり、常温で洗浄するよりも汚れを落としやすいものなる。
【0032】
また、制御装置60は、S250で洗浄ノズルが局部洗浄位置に到達したと判定すると、流路切替弁27の供給先を局部洗浄を行う洗浄ノズルに切り替えてその洗浄ノズルから洗浄水を吐出させる(S270)。即ち、低温ノズル洗浄を終了して局部洗浄を開始する。局部洗浄を開始すると、制御装置60は、局部洗浄の停止が指示されるのを待つ(S280)。S280の判定は、操作パネル14の停止スイッチが操作されたか否かに基づいて行われる。制御装置60は、局部洗浄の停止が指示されたと判定すると、流路切替弁27の供給先をノズル洗浄器29に切り替えてノズル洗浄器29から洗浄水を吐出させながら洗浄ノズルを後退させる(S290)。即ち、局部洗浄を終了して再び低温ノズル洗浄を行うから、局部洗浄の終了直後に低温ノズル洗浄を行うことができる。次に、制御装置60は、洗浄ノズルがノズルカバー23内の収納位置に到達したか否かを判定し(S300)、到達したと判定すると、温水ヒータ25aをオフとしてノズル洗浄器29からの洗浄水の吐出を終了することで(S310)、低温ノズル洗浄を終了して、局部洗浄用処理を終了する。
【0033】
このように、局部洗浄を行う際には、局部洗浄の開始前の洗浄ノズルの前進中に低温ノズル洗浄を実行すると共に局部洗浄の終了後の洗浄ノズルの後退中に低温ノズル洗浄を実行するのである。このため、局部洗浄前に、洗浄ノズルに汚れなどが残存していてもそれを除去することができる。また、洗浄ノズルの外表面を洗浄水で濡らすことができるから、局部洗浄中に洗浄ノズルの外表面に汚れが付着しにくくすることができる。また、局部洗浄中に洗浄ノズルに汚れや細菌などが付着しても、局部洗浄後にそれらを洗い落とすことができる。また、制御装置60は、局部洗浄用処理を終了すると、図5のノズルユニット作動処理のS100に戻り処理を行い、使用者がトイレ室から退室したままの状態であれば図7のノズル殺菌用処理が行われるから、使用者の不在時間が一定時間を経過すると高温ノズル洗浄を実行することになる。この一定時間を数分や数十分程度などの短時間としておけば、局部洗浄後の低温ノズル洗浄で除去しきれなかった汚れが固着したり細菌などが増殖したりする前に、高温の洗浄水を用いてノズル洗浄を行うことができる。細菌を殺菌するには高温の洗浄水が効果的であるから、高温ノズル洗浄を行うことで、洗浄ノズルをより適切に洗浄することができる。
【0034】
以上説明した洗浄便座装置10では、局部洗浄の開始前に低温ノズル洗浄を実行し、使用者が退室して一定時間が経過したタイミングで高温ノズル洗浄を実行する。局部洗浄の開始前の低温ノズル洗浄により洗浄ノズルの汚れを局部洗浄の開始前に除去することが可能となる。また、高温ノズル洗浄により、洗浄ノズルに付着した細菌などを殺菌する効果を高めることができる。また、高温ノズル洗浄と低温ノズル洗浄とを併用することにより、電力消費を抑えつつ洗浄ノズルの洗浄機会を増やして汚れの除去を行うことができる。
【0035】
また、洗浄便座装置10では、高温ノズル洗浄を実行してから所定の冷却必要時間(所定時間)が経過する前に局部洗浄が行われる際には、温水ヒータ25aをオフとして洗浄水を捨て水として排出する。このため、高温ノズル洗浄に用いられた高温の洗浄水が流路に残存していても捨て水として排出して、人体にかかるのを防止することができる。
【0036】
また、洗浄便座装置10では、局部洗浄の終了後において使用者が退室してから一定時間が経過したタイミングで高温ノズル洗浄を実行するから、高温の洗浄水が人体にかかるのを確実に防止しつつ、洗浄ノズルに付着した汚れが固着したり細菌が増殖したりする前に高温の洗浄水でそれらを適切に除去することができる。
【0037】
また、洗浄便座装置10では、局部洗浄の設定温度と同じ温度で低温ノズル洗浄を実行するから、低温ノズル洗浄を実行した後の捨て水などを不要として速やかに局部洗浄を開始することができる。
【0038】
上述した実施形態では、局部洗浄の開始前と終了後に低温ノズル洗浄を行うものとしたが、これに限られるものではない。例えば、局部洗浄の開始前に低温ノズル洗浄を行い、局部洗浄の終了後は低温ノズル洗浄を行わないものとしてもよい。このようにしても、局部洗浄の終了後に使用者が退室して一定時間が経過すれば高温ノズル洗浄が行われるから、洗浄ノズルの清潔性が大きく低下することはない。
【0039】
上述した実施形態では、局部洗浄の終了後に高温ノズル洗浄を行うタイミングを、使用者が退室して一定時間が経過したタイミングとしたが、これに限られず、入室検知センサからの検知信号に基づいて使用者が退室したことを検知したタイミングとしてもよいし、着座検知センサからの検知信号に基づいて使用者が立ち上がったことを検知したタイミングとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、局部洗浄の終了後に使用者が退室して一定時間が経過したタイミングで高温ノズル洗浄を行うものとしたが、これに限られず、他のタイミングで高温ノズル洗浄を行うものとしてもよい。例えば、図8の変形例のノズル殺菌用処理に示すように、制御装置60は、S400で不在時間が一定時間に到達したタイミングでないと判定した場合、前回の高温ノズル洗浄後に所定の時間間隔が経過したか否かを判定する(S405)。そして、所定の時間間隔が経過したタイミングであると判定すると、S410以降の高温ノズル洗浄を実行する。これにより、高温ノズル洗浄を実行してから所定の時間間隔が経過したタイミングで高温ノズル洗浄を再実行することができるから、所定の時間間隔毎に高温ノズル洗浄を実行することができる。このため、1回の高温ノズル洗浄で殺菌しきれなかった細菌を殺菌することができるなど殺菌効果をより高めることができる。
【0041】
あるいは、高温ノズル洗浄を行うタイミングを次のようにしてもよい。例えば、予め定められた所定時刻に高温ノズル洗浄を実行するものとしてもよい。この所定時刻は、夜中などの使用頻度の低い時間帯に定められるものとしてもよい。また、所定時刻の高温ノズル洗浄を毎日実行してもよいし、所定日数毎などに実行してもよい。また、使用頻度の低い時間帯は、制御装置60が時間帯毎の洗浄便座装置10の使用回数を計数しておき、その計数結果から定めるものなどとすればよい。あるいは、時間帯毎の洗浄便座装置10の使用回数の計数結果から、使用頻度の高い時間帯を特定し、その使用頻度の高い時間帯となる直前に高温ノズル洗浄を実行するものなどとしてもよい。
【0042】
実施形態では、低温ノズル洗浄を局部洗浄と同じ水温で行うものとしたが、これに限られず、温水ヒータ25aをオンとすることなく常温で行うなど局部洗浄とは異なる水温で行うものとしてもよい。即ち、所定の低温の洗浄水として加温された洗浄水を用いるものに限られず、常温水を用いるものとしてもよい。
【0043】
実施形態では、制御装置60が行うノズルユニット作動処理の中で高温ノズル洗浄を実行するものとしたが、これに限られず、高温ノズル洗浄の実行を指示するための洗浄スイッチを操作パネル14に設けておき、使用者からの操作指示に基づいて高温ノズル洗浄を実行するものとしてもよい。
【0044】
実施形態では、高温殺菌用処理で高温ノズル洗浄を実行し局部洗浄用処理で低温ノズル洗浄を実行するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、高温殺菌用処理で高温ノズル洗浄を実行した後に続けて低温ノズル洗浄を実行するものなどとしてもよい。実施形態の高温ノズル洗浄では洗浄水の流量を絞るものとしたから、高温ノズル洗浄は殺菌効果は高いものの汚れを洗い落とす洗浄力が低温ノズル洗浄に比べて劣ることがある。このため、高温ノズル洗浄に続けて低温ノズル洗浄を実行することで、殺菌効果と洗浄効果とを両立させることができる。
【0045】
実施形態では、ノズル洗浄用の洗浄水を吐出する専用のノズル洗浄器29を設けるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22との2本の洗浄ノズルのうち、一方の洗浄ノズルから高温の洗浄水をシャッター23aの裏面に向けて吐出させて、シャッター23aの裏面で跳ね返った洗浄水で他方の洗浄ノズルを高温ノズル洗浄するものなどとしてもよい。あるいは、洗浄ノズルを1本のみ備えるものであっても、その洗浄ノズルでシャッター23aを開状態とすると共にその洗浄ノズルからシャッター23aの裏面に向けて高温の洗浄水を吐出させて跳ね返った洗浄水で先端部(吐出孔近傍)の高温ノズル洗浄を行うものなどとしてもよい。
【0046】
実施形態において、便器1の便鉢部の表面に向かって洗浄水を噴出(噴霧)可能な噴霧器を備え、切替弁27が洗浄水の供給先を噴霧器に切り替え可能に構成してもよい。そして、高温ノズル洗浄後の捨て水に噴霧器の噴出を用いるものなどとしてもよい。
【0047】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、洗浄便座装置10が「洗浄便座装置」に相当し、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22が「ノズル」に相当し、温水ヒータ25aが「温水ヒータ」に相当し、熱交換ユニット22が「熱交換器」に相当し、流路切替弁27が「切替弁」に相当し、制御装置60が「制御装置」に相当する。また、入室検知センサ15が「検知手段」に相当する。
【0048】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、洗浄便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 便器、10 洗浄便座装置、11 便座装置本体、12 便座、13 便蓋、14 操作パネル、15 入室検知センサ、16 着座検知センサ、20 ノズルユニット、21 おしり洗浄ノズル、21a ノズル孔、22 ビデ洗浄ノズル、23 カバー、23a シャッター、24 給水減圧弁、25 熱交換ユニット、25a 温水ヒータ、25b 温度センサ、26 流量調整弁、27 流路切替弁、29 ノズル洗浄器、29a 吐出口、31 おしり洗浄ノズル駆動部、32 ビデ洗浄ノズル駆動部、60 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8