(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】インターミディエイトシャフト
(51)【国際特許分類】
F16D 1/027 20060101AFI20220802BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20220802BHJP
F16D 1/068 20060101ALI20220802BHJP
B62D 1/20 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F16D1/027
F16D1/02 230
F16D1/068
B62D1/20
(21)【出願番号】P 2018078246
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】菅野 沙矢香
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5732600(US,A)
【文献】国際公開第03/031250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00
F16C 29/00
B62D 1/00
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿ったボール溝を内周面に有するスリーブと、
前記スリーブの一端部に対して接合された連結部材と、
前記スリーブの一端部と前記連結部材との少なくとも一方をカシメることで形成されたカシメ部とを備え、
前記カシメ部は、前記ボール溝に対して周方向で異なる位置に配置されている
インターミディエイトシャフト。
【請求項2】
前記スリーブの一端部と前記連結部材との一方には、軸方向に突出した凸部が設けられていて、前記スリーブの一端部と前記連結部材との他方には、前記凸部が嵌合する嵌合部が設けられていて、
前記凸部及び前記嵌合部は、前記軸方向視において非円形である
請求項1に記載のインターミディエイトシャフト。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記スリーブの一端部に設けられていて、
前記凸部は、前記連結部材に設けられていて、
前記凸部及び前記嵌合部は、前記軸方向視において長尺に形成されており、
前記ボール溝は、前記嵌合部における一対の長辺部のそれぞれに設けられていて、
前記カシメ部は、前記嵌合部における一対の短辺部のそれぞれに設けられている
請求項2に記載のインターミディエイトシャフト。
【請求項4】
前記嵌合部における前記長辺部には、前記ボール溝を挟むように配置されて、前記凸部に当接する一対の平面部が形成されている
請求項3に記載のインターミディエイトシャフト。
【請求項5】
前記スリーブの一端部と、前記連結部
材とは溶接されている
請求項1~4のいずれか一項に記載のインターミディエイトシャフト。
【請求項6】
前記カシメ部は、複数設けられていて、前記周方向に均等に配置されている
請求項1~5のいずれか一項に記載のインターミディエイトシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターミディエイトシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車では、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、ステアリングギヤシャフトとしての例えばピニオン軸とが、インターミディエイトシャフトを介して連結されている。インターミディエイトシャフトのスリーブとシャフトとは、例えばボール溝及びボールを備えた伸縮軸(例えば特許文献1参照)を採用することにより、伸縮自在となっている。
【0003】
また、スリーブの他端部には、ピニオン軸に連結された自在継手の一部をなすヨークが直接接合されていたり、ヨークとの間に介在するチューブが直接接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インターミディエイトシャフトにおいては、ヨークまたはチューブなどの連結部材とスリーブとの接合が劣化するおそれがある。当該接合の劣化は、連結部材とスリーブとの位置ズレの一因となる。
【0006】
本発明は、スリーブと連結部材との接合を長期的に安定して維持することができるインターミディエイトシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るインターミディエイトシャフトは、軸方向に沿ったボール溝を内周面に有するスリーブと、スリーブの一端部に対して接合された連結部材と、スリーブの一端部と連結部材との少なくとも一方をカシメることで形成されたカシメ部とを備え、カシメ部は、前記ボール溝に対して周方向で異なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインターミディエイトシャフトによれば、スリーブと連結部材との接合を長期的に安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るインターミディエイトシャフトの使用形態の一例を示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係るインターミディエイトシャフトの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るインターミディエイトシャフトに備わる外軸とチューブとを分解して示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るチューブの他端部の形状を示す平面図である。
【
図5】実施の形態に係る外軸の一端部の断面図である。
【
図6】実施の形態に係る外軸の一端部の形状を示す平面図である。
【
図7】実施の形態に係るチューブの他端部と外軸の一端部との組付け直後の状態を示す断面図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII切断線を含む切断面を見た断面図である。
【
図9】
図7におけるIX-IX切断線を含む切断面を見た断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係るチューブの他端部と外軸の一端部とのカシメ後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100の使用形態の一例を示す模式図である。
図1に示すように、インターミディエイトシャフト100は、自動車のステアリング装置10に設けられている。具体的には、ステアリング装置10は、一端にステアリングホイール11が連結されたステアリングシャフト12と、ピニオン軸13及びラック軸14を含むラックアンドピニオン機構からなり転舵輪15を転舵する転舵機構16と、ステアリングシャフト12とピニオン軸13との間に介在して操舵トルクを伝達するインターミディエイトシャフト100とを備えている。
【0013】
インターミディエイトシャフト100の一方の端部が、第一自在継手17を介してステアリングシャフト12と連結されている。インターミディエイトシャフト100の他方の端部が、第二自在継手18を介してピニオン軸13と連結されている。
【0014】
ステアリングホイール11が操作されてステアリングシャフト12が回転されると、その回転がインターミディエイトシャフト100を介してピニオン軸13及びラック軸14に伝達される。これにより、転舵機構16は転舵輪15を転舵させる。
【0015】
次に、本実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100について詳細に説明する。
図2は、実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100の概略構成を示す斜視図である。
図3は、実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100に備わる外軸140とチューブ160とを分解して示す斜視図である。なお、
図2以降の図において、X軸方向をインターミディエイトシャフト100の軸方向とした直交座標系とする。つまり、互いに直交するY軸方向及びZ軸方向も、X軸方向に直交している。以下の説明では、X軸方向マイナス側の端部を一端部と称し、X軸方向プラス側の端部を他端部と称す。
【0016】
図2に示すようにインターミディエイトシャフト100は、伸縮自在な中間シャフト110と、中間シャフト110の他端部に設けられた第一自在継手17と、中間シャフト110の一端部に設けられた第二自在継手18とを備えている。中間シャフト110は、外軸140と、内軸150と、チューブ160とを備えている。
【0017】
図2及び
図3に示すように外軸140は、内軸150とチューブ160との間に配置され、内軸150とチューブ160とを連結するスリーブの一例である。
【0018】
外軸140は、円筒状の軸体であり、貫通孔141を有している。外軸140の他端部には、内軸150がX軸方向プラス側から挿入されている。外軸140の内周面には、X軸方向に延びる一対のボール溝142が形成されている(
図6参照)。ボール溝142の内周面は、X軸方向視において凹曲面となっている。一対のボール溝142は、Z軸方向で対向している。
【0019】
内軸150は軸体であり、その他端部には第一自在継手17が設けられている。第一自在継手17は、内軸150に結合された第一ヨーク171と、ステアリングシャフト12に結合された第二ヨーク172と、第一ヨーク171と第二ヨーク172とを連結する十字軸173とを含む。十字軸173の各軸部は、図示しない軸受を介して、第一ヨーク171と第二ヨーク172のそれぞれのアームに回転自在に支持されている。
【0020】
内軸150の外周面には、X軸方向に延びる一対のボール溝151が形成されている(
図6参照)。ボール溝151の内周面は、X軸方向視において凹曲面となっている。一対のボール溝151はZ軸方向で対向している。つまり、外軸140に内軸150が挿入されて組み付けられた状態では、互いのボール溝142、151同士がZ軸方向で対向している。互いのボール溝142、151がなす空間は、X軸方向視で略円形状である。この空間内には、X軸方向に配列された複数のボールBが配置されている。この複数のボールBがボール溝142、151内を摺動するので、内軸150と外軸140とがスムーズにX軸方向に伸縮することができる。外軸140及び内軸150には、ボールBの抜けを規制する構造が設けられている。具体的には、外軸140の他端部には、蓋体147が取り付けられている。この蓋体147には、内軸150の摺動を許容するための貫通孔148が形成されているとともに、ボールBの抜けを規制する壁部149が形成されている。また、内軸150の一端部には、ボールBの抜けを規制するストッパ部材(図示省略)が設けられている。
【0021】
チューブ160は、外軸140の一端部に対して接合された連結部材の一例である。チューブ160は、円筒状の軸体であり、貫通孔162を有している。チューブ160の一端部には第二自在継手18が設けられている。第二自在継手18は、チューブ160に結合された第一ヨーク181と、ピニオン軸13に結合された第二ヨーク182と、第一ヨーク181と第二ヨーク182とを連結する十字軸183とを含む。十字軸183の各軸部は、図示しない軸受を介して、第一ヨーク181と第二ヨーク182のそれぞれのアームに回転自在に支持されている。
【0022】
チューブ160の他端部は、外軸140の一端部に対して接合されている。以降、チューブ160と外軸140との接合構造について説明する。具体的には、チューブ160の他端部に設けられた凸部161と、外軸140の一端部に設けられた嵌合部144とが嵌合し溶接されることで、チューブ160と外軸140とが接合されている。
【0023】
まず、チューブ160の他端部について詳細に説明する。
図4は、実施の形態に係るチューブ160の他端部の形状を示す平面図である。
図3及び
図4に示すように、チューブ160の他端部には、台座部163と、凸部161とを備えている。
【0024】
台座部163は、チューブ160の外周面よりも外径が小さい円環状の部位であり、その先端面で凸部161を支持している。X軸方向視において、チューブ160の外周面がなす円形と、台座部163の外周面がなす円形とは同心円となっている。このため、チューブ160の外周面と、台座部163の外周面とは全周にわたって均等な段差部164が形成されている。
【0025】
凸部161は、X軸方向視においてY軸方向に長尺に形成されている。具体的には、凸部161は、Y軸方向に長尺な長円環状に形成されている。凸部161における一対の長辺部161aは、貫通孔162を挟んでZ軸方向に並んでいる。凸部161における一対の短辺部161bは、貫通孔162を挟んでY軸方向に並んでいる。凸部161における一対の短辺部161bのそれぞれには、その外周面に凹部165が形成されている。一対の凹部165は、貫通孔162を挟んでX軸方向に並んでいる。つまり、一対の凹部165は、周方向に均等に配置されている。また、凸部161は、X軸方向視において台座部163内に収まっている。
【0026】
次に、外軸140の一端部について詳細に説明する。
図5は、実施の形態に係る外軸140の一端部の断面図である。
図6は、実施の形態に係る外軸140の一端部の形状を示す平面図である。なお、
図5は、
図6におけるV-V切断線を含む切断面を見た断面図である。また、
図6においては、内軸150の外形を破線で示し、ボールBの外形を二点鎖線で示している。
【0027】
図5及び
図6に示すように、外軸140の一端部には、ガイド部143と、嵌合部144とが設けられている。ガイド部143は、組立時にチューブ160の台座部163を所定位置までガイドする部位である。具体的には、ガイド部143は円環状に形成されており、その内周面上で台座部163を摺動させてガイドする。ガイド部143の先端面には、チューブ160の段差部164が当接するので、凸部161のそれ以上の進入が規制される。
【0028】
嵌合部144は、チューブ160の凸部161が嵌合する部位である。嵌合部144は、ガイド部143よりもX軸方向プラス側に配置された部位である。嵌合部144は、チューブ160の他端部まで連続して設けられているが、凸部161が嵌合する部分は先端側の一部のみである。
【0029】
嵌合部144は、環状に形成されており、その内周面がY軸方向に長尺な略長円状に形成されている。嵌合部144における一対の長辺部144aは、貫通孔141を挟んでZ軸方向に並んでいる。嵌合部144における一対の短辺部144bは、貫通孔141を挟んでY軸方向に並んでいる。短辺部144bは、ガイド部143と同じ肉厚である。一方、長辺部144aは、ガイド部143よりも厚肉に形成されている。一対の長辺部144aのそれぞれに対してボール溝142が形成されている。また、一対の長辺部144aのそれぞれには、ボール溝142を周方向で挟むように配置されて、凸部161に当接する一対の平面部146が形成されている。
【0030】
次に、チューブ160と外軸140との組立方法について説明する。ここでは、作業者がチューブ160と外軸140とを組み立てる場合を例示するが、組立装置によってチューブ160と外軸140とを自動で組み立ててもよい。その場合においても、同様の手順でチューブ160と外軸140とが組み立てられる。
【0031】
まず、作業者は、チューブ160の他端部を外軸140の一端部に対して組み付ける。具体的には、作業者は、チューブ160の凸部161及び台座部163を、外軸140の一端部側から貫通孔141に挿入する。これにより、ガイド部143の先端面がチューブ160の段差部164に当接するまで、台座部163がガイド部143の内周面上を摺動するとともに、凸部161が嵌合部144に嵌合する。
【0032】
図7は、実施の形態に係るチューブ160の他端部と外軸140の一端部との組付け直後の状態を示す断面図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII切断線を含む切断面を見た断面図である。
図9は、
図7におけるIX-IX切断線を含む切断面を見た断面図である。
図7は、
図8及び
図9のVII-VII切断線を含む切断面を見た断面図であり、チューブ160の凸部161と、外軸140の嵌合部144との嵌合状態を示している。
【0033】
図7~
図9に示すように、凸部161の一対の長辺部161aはそれぞれ嵌合部144の一対の長辺部144aに対して当接しており、凸部161の一対の短辺部161bはそれぞれ嵌合部144の一対の短辺部144bに対して当接している。具体的には、凸部161の一対の長辺部144aは、嵌合部144の平面部146に対して面接触している。このため、例えばチューブ160が回転したとしても空回りすることなく、外軸140も回転することになる。
【0034】
また、嵌合直後においては、凸部161の短辺部161bには凹部165があるために、凸部161の短辺部161bと嵌合部144の短辺部144bとの間に隙間が形成されている。一対の凹部165は、外軸140の一対のボール溝142に対して周方向に異なる位置に配置されている。具体的には、一対の凸部161の並び方向(本実施の形態ではY軸方向)は、一対のボール溝142の並び方向(本実施の形態ではZ軸方向)に対して直交する方向となっている。
【0035】
次に、作業者は、外軸140の一端部をカシメることで、外軸140をチューブ160に接合する。
図10は、実施の形態に係るチューブ160の他端部と外軸140の一端部とのカシメ後の状態を示す断面図である。
図10は
図9に対応する図である。
【0036】
具体的には、作業者は、外軸140における凹部165に対向する部分をカシメることで、カシメ部200を形成する。本実施の形態では、一対の凹部165のそれぞれに対してカシメ部200が設けられるので、カシメ部200は2つとなる。このため、2つのカシメ部200はY軸方向に配列されている。つまり、2つのカシメ部200は、周方向に均等に配置されている。また、カシメ部200は、カシメによって塑性変形して凹部165に嵌まり込み、カシメ後において他の部分から凹んだ形状となる。このように凹部165にカシメ部200が嵌まり込んでいるので、外軸140とチューブ160とを強固に接合することができる。
【0037】
カシメ工程では、治具などを使用して複数のカシメ部200を同時に形成してもよいし、外軸140及びチューブ160を回転させながら一つずつカシメ部200を形成してもよい。
【0038】
次いで、作業者は、外軸140の一端部と、チューブ160の他端部とを溶接することで、チューブ160と外軸140との組み立てを完了する。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100は、X軸方向(軸方向)に沿ったボール溝142を内周面に有する外軸140(スリーブ)と、外軸140の一端部に対して接合されたチューブ160(連結部材)と、外軸140の一端部とチューブ160との少なくとも一方をカシメることで形成されたカシメ部200とを備え、カシメ部200は、ボール溝142に対して周方向で異なる位置に配置されている。
【0040】
これによれば、外軸140の一端部とチューブ160との少なくとも一方をカシメることで形成されたカシメ部200が設けられているので、例えば溶接が破損して溶接による接合が解除されたとしても、カシメ部200による接合を維持することができる。つまり、二重の接合構造が採用されているので、外軸140とチューブ160との接合を長期的に安定して維持することができる。
【0041】
また、カシメ部200がボール溝142に対して周方向で異なる位置に配置されているので、カシメによる外軸140のボール溝142の変形を抑制することができる。したがって、内軸150と外軸140との伸縮を安定化することができる。
【0042】
また、第一ヨーク181と外軸140との間にチューブ160が設けられているので、このチューブ160によって中間シャフト110を長尺化することが可能である。長さの異なるチューブ160を選択して用いれば、中間シャフト110を任意の長さにすることも可能である。
【0043】
また、外軸140の一端部にはX軸方向に突出した凸部161が設けられていて、チューブ160には凸部161が嵌合する嵌合部144が設けられていて、凸部161及び嵌合部144は、X軸方向視において非円形である。
【0044】
これによれば、凸部161及び嵌合部144がX軸方向視において非円形であるので、万が一、溶接による接合とカシメ部200による接合の両方が解除されたとしても、凸部161及び嵌合部144の一方が他方に対して空回りしない。これにより、万が一の場合においても、外軸140とチューブ160とを同時に回転させることができる。
【0045】
また、嵌合部144は外軸140の一端部に設けられていて、凸部161はチューブ160に設けられていて、凸部161及び嵌合部144は、X軸方向視において長尺に形成されており、ボール溝142は、嵌合部144における一対の長辺部144aのそれぞれに設けられていて、カシメ部200は、嵌合部144における一対の短辺部144bのそれぞれに設けられている。
【0046】
これによれば、嵌合部144における一対の短辺部144bのそれぞれにカシメ部200が設けられているので、2つのカシメ部200を対向配置することができる。したがって、外軸140を挟持するように圧縮することで2つのカシメ部200を形成することができるので、締結力を高めることが可能である。
【0047】
また、嵌合部144における長辺部144aは、短辺部144bよりも厚肉な部分である。この長辺部144aに対してボール溝142が設けられているので、ボール溝142を容易に形成することができる。また、カシメによるボール溝142の変形もより抑制することができる。
【0048】
また、嵌合部144における長辺部144aには、ボール溝142を挟むように配置されて、凸部161に当接する一対の平面部146が形成されている。
【0049】
これによれば、嵌合部144の一対の平面部146が凸部161に対して当接し、面接触しているので、外軸140及びチューブ160の一方の回転を他方に対してスムーズに伝達することができる。
【0050】
また、外軸140の一端部とチューブ160とは溶接されている。
【0051】
これによれば、外軸140の一端部とチューブ160とが溶接されているので、外軸140とチューブ160とを強固に接合することができる。
【0052】
また、カシメ部200は、複数設けられていて、周方向に均等に配置されている。
【0053】
これによれば、複数のカシメ部200が周方向に均等に配置されているので、外軸140とチューブ160とのそれぞれの軸心がカシメによって位置ズレすることを抑制することができる。
【0054】
以上、本発明に係るインターミディエイトシャフトについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記の実施の形態では、外軸140の一端部に接合される連結部材の一例としてチューブ160を例示した。しかし、連結部材は、外軸140の一端部に接合される部材であればチューブ160に限定されない。連結部材のその他の例としては、自在継手を構成するヨークなどが挙げられる。
【0056】
また、上記実施の形態では、インターミディエイトシャフト100の他端部側の第一自在継手17にステアリングシャフト12が連結され、一端部側の第二自在継手18にピニオン軸13が連結されている場合を例示した。しかし、インターミディエイトシャフト100の第一自在継手17にピニオン軸13が連結されて、第二自在継手18にステアリングシャフト12が連結されていてもよい。
【0057】
上記実施の形態では、凸部161及び嵌合部144が長尺な形状である場合を例示した。しかしながら、凸部161及び嵌合部144は非円形であればよい。凸部161及び嵌合部144が非円形であるので、凸部161及び嵌合部144の一方が他方に対して空回りすることを防止できる。凸部161及び嵌合部144のその他の形状としては、例えば、多角形状、一部が切り欠かれた略円形状などが挙げられる。また、空回りを規制できるのであれば、凸部161及び嵌合部144が互いに異なる形状であってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、溶接による接合と、カシメ部200による接合とが採用されたインターミディエイトシャフト100を例示した。しかしながら、溶接以外の接合方法を採用することも可能である。溶接以外の接合方法には、圧入、接着等が挙げられる。
【0059】
上記実施の形態では、カシメ部200が2つ設けられている場合を例示した。しかしながら、カシメ部は一つ以上であればよい。また、カシメ部200が複数設けられている場合においては、周方向に均等に配置されているのが望ましいが、周方向に不均等に配置されていてもよい。この場合には、複数のカシメ部200を形成する際の、各カシメ部200に対する締結力の合力を外軸140の軸心に位置合わせしておけば、外軸140とチューブ160とのそれぞれの軸心がカシメによって位置ズレすることを抑制することができる。
【0060】
また、上記実施の形態では、チューブ160の一端部に凸部161が設けられていて、外軸140に嵌合部144が設けられている場合を例示した。しかしながら、外軸の一端部に凸部が設けられていて、チューブに嵌合部が設けられていてもよい。この場合、チューブが外軸の外方に配置されるので、チューブに対してカシメ部が形成されることになる。
【0061】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ボール溝を有するインターミディエイトシャフトに適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 ステアリング装置、11 ステアリングホイール、12 ステアリングシャフト、13 ピニオン軸、14 ラック軸、15 転舵輪、16 転舵機構、17 第一自在継手、18 第二自在継手、100 インターミディエイトシャフト、110 中間シャフト、140 外軸(スリーブ)、141、148、162 貫通孔、142、151 ボール溝、143 ガイド部、144 嵌合部、144a、161a 長辺部、144b、161b 短辺部、146 平面部、147 蓋体、149 壁部、150 内軸、160 チューブ(連結部材)、161 凸部、163 台座部、164 段差部、165 凹部、171、181 第一ヨーク、172、182 第二ヨーク、173、183 十字軸、200 カシメ部、B ボール