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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20220802BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 27/11568 20170101ALI20220802BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 27/11573 20170101ALI20220802BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220802BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20220802BHJP
   G11C 16/10 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01L29/78 371
H01L27/11568
H01L27/088 B
H01L27/11573
H01L27/06 102A
H01L27/088 H
G11C16/04 150
G11C16/10 140
G11C16/10 143
H01L27/088 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018100851
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019204925
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江間 泰示
(72)【発明者】
【氏名】安田 真
【審査官】西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-349308(JP,A)
【文献】特開2016-184721(JP,A)
【文献】特開2003-173689(JP,A)
【文献】特開2007-288060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 27/11568
H01L 21/8234
H01L 27/11573
G11C 16/04
G11C 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリトランジスタを有し、
前記複数のメモリトランジスタの各々は、
半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、前記第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域よりも低い第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、
前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、
を有し、
前記サイドウォール絶縁膜に電荷を注入することによって情報を記憶し、
前記サイドウォール絶縁膜への電荷の注入時に、
前記半導体基板が接地され、
前記ゲート電極に接地電位よりも高い第1の電圧が印加され、
前記ドレイン領域に接地電位よりも高い第2の電圧が印加され、
前記ソース領域に前記接地電位よりも高く、前記第1の電圧及び前記第2の電圧よりも低い第3の電圧が印加され
更に、
前記複数のメモリトランジスタの前記ソース領域に接続されたビット線と、
前記ビット線と接地との間に接続されたトランジスタと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ビット線が複数設けられ、前記複数設けられたビット線毎に前記トランジスタがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の電圧及び前記第2の電圧が互いに等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トランジスタと接地との間に接続された抵抗素子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記抵抗素子は、ポリシリコンから構成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記抵抗素子は直接的に接地に接続されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トランジスタと接地との間に接続された電圧源を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記トランジスタは直接的に接地に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記トランジスタのゲートには、オン動作時に前記第3の電圧が供給されるための抵抗が生じるように電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の電圧及び前記第2の電圧は5V以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2の半導体領域における前記第1導電型の不純物の濃度が前記第1の半導体領域における前記第1導電型の不純物の濃度よりも低いことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の1つに、不揮発性メモリがある。例えば、ゲート電極側壁のサイドウォール絶縁膜に電荷(ホットキャリア)を蓄積することによって情報を記憶するMOS(Metal Oxide Semiconductor)型電界効果トランジスタをメモリトランジスタとして含む不揮発性メモリが知られている。
【0003】
サイドウォール絶縁膜にホットキャリアを蓄積することによって情報を記憶するメモリトランジスタ群を備えた不揮発性メモリでは、不揮発性メモリ全体のプログラムスピードが、個々のメモリトランジスタのプログラムスピードに依存してくる。個々のメモリトランジスタのプログラムスピードが十分でないと、不揮発性メモリの容量によっては、その不揮発性メモリを含むシステム上で許容される時間内に所定のプログラムが行えないといった不具合を招くおそれがある。
【0004】
そこで、メモリトランジスタのプログラムスピードの向上を図った半導体装置が特許文献1に提案されている。この半導体装置によれば、所期の目的を達成することができる。
【0005】
その一方で、近年、消費電力の低減に対する要望がますます高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-184721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、消費電力を更に低減することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体装置の一態様は、複数のメモリトランジスタを有し、前記複数のメモリトランジスタの各々は、半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜と、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、前記第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域よりも低い第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、を有し、前記サイドウォール絶縁膜に電荷を注入することによって情報を記憶する。前記サイドウォール絶縁膜への電荷の注入時に、前記半導体基板が接地され、前記ゲート電極に接地電位よりも高い第1の電圧が印加され、前記ドレイン領域に接地電位よりも高い第2の電圧が印加され、前記ソース領域に前記接地電位よりも高く、前記第1の電圧及び前記第2の電圧よりも低い第3の電圧が印加される。半導体装置は、更に、前記複数のメモリトランジスタの前記ソース領域に接続されたビット線と、前記ビット線と接地との間に接続されたトランジスタと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、消費電力を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2】疑似メモリトランジスタを示す断面図である。
図3】第1の実施形態の疑似メモリトランジスタの測定結果を示す図である。
図4】参考例の疑似メモリトランジスタの測定結果を示す図である。
図5】プログラム動作の第1~第2の条件及び読み出し動作の条件を示す図である。
図6】第1~第2の条件のプログラム前後のId-Vg特性を示す図である。
図7】第1~第2の条件に関する疑似メモリトランジスタのId-Vg特性を示す図である。
図8】プログラム動作の他の電圧条件を示す図である。
図9】第1~第5の条件のプログラム前後のId-Vg特性を示す図である。
図10】プログラム時間とId-Vg特性との関係を示す図である。
図11】第1、第4及び第5の条件に関する疑似メモリトランジスタのId-Vg特性を示す図である。
図12】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリの一例を示す図である。
図13】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのプログラム動作を示す図である。
図14】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのリード動作を示す図である。
図15】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのイレーズ動作を示す図である。
図16】第2の実施形態に係る半導体装置の一部を示す図である。
図17】第3の実施形態に係る半導体装置の一部を示す図である。
図18】メモリトランジスタ及びスイッチングトランジスタを含む回路を示す図である。
図19】スイッチングトランジスタのゲート電圧とメモリトランジスタのドレイン電流との関係を示す図である。
図20】スイッチングトランジスタのゲート電圧とメモリトランジスタの動作ウィンドウとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0013】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、不揮発性メモリの一例であって、そのメモリ領域1に設けられたトランジスタ(メモリトランジスタ)10、ロジック領域2に設けられたトランジスタ(ロジックトランジスタ)20、及び入出力(I/O)領域3に設けられたトランジスタ(I/Оトランジスタ)を有する。メモリトランジスタ10、ロジックトランジスタ20及びI/Oトランジスタ30は、p型の共通の半導体基板101上に形成(混載)される。半導体基板101には、シリコン(Si)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)等の各種半導体基板が用いられる。メモリトランジスタ10が形成される領域(素子領域)、ロジックトランジスタ20が形成される領域(素子領域)、及びI/Oトランジスタ30が形成される領域(素子領域)は、STI(Shallow Trench Isolation)法、熱酸化法等を用いて半導体基板101に形成された素子分離領域102によって画定される。
【0014】
なお、図1には1つのメモリトランジスタ10を例示するが、半導体装置100のメモリ領域1には、複数のメモリトランジスタ10、或いは少なくとも1つのメモリトランジスタ10とその他のメモリトランジスタが含まれ得る。図1には1つのロジックトランジスタ20を例示するが、半導体装置100のロジック領域2には、複数のロジックトランジスタ20、或いは少なくとも1つのロジックトランジスタ20とその他のロジックトランジスタが含まれ得る。図1には1つのI/Oトランジスタ30を例示するが、半導体装置100のI/O領域3には、複数のI/Oトランジスタ30、或いは少なくとも1つのI/Oトランジスタ30とその他のI/Oトランジスタが含まれ得る。
【0015】
メモリ領域1において半導体基板101の表面に、p型のウェル111が形成されている。メモリトランジスタ10は、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜116、ゲート絶縁膜116の上方に設けられたゲート電極117、並びにゲート電極117の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜120s及び120dを有する。メモリトランジスタ10は更に、ゲート電極117の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられた、n型のソース領域115s及びドレイン領域115dを有する。メモリトランジスタ10は、半導体基板101内であって、サイドウォール絶縁膜120sの下方に設けられ、ソース領域115sよりも低濃度でn型の不純物を含む第1の半導体領域114sを有する。メモリトランジスタ10は、半導体基板101内であって、サイドウォール絶縁膜120dの下方に設けられ、ドレイン領域115dよりも低濃度でn型の不純物を含む第2の半導体領域114dを有する。第1の半導体領域114sは、例えばLDD(lightly doped drain)領域であり、第2の半導体領域114dは、例えばノンドープ領域である。第2の半導体領域114dがLDD領域であってもよい。
【0016】
ゲート絶縁膜116には、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸化ハフニウム(HfO)等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜116の膜厚は、例えば、メモリトランジスタ10について設定される閾値電圧に基づいて設定される。
【0017】
ゲート電極117には、多結晶シリコン(ポリシリコン)のほか、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0018】
サイドウォール絶縁膜120sは、例えば、絶縁膜である酸化膜118s及び窒化膜119sが積層された構造を含み、サイドウォール絶縁膜120dは、例えば、絶縁膜である酸化膜118d及び窒化膜119dが積層された構造を含む。酸化膜118s及び118dには、例えば、酸化シリコンが用いられる。窒化膜119s及び119dには、例えば、窒化シリコンが用いられる。例えば、半導体基板101上にはゲート絶縁膜116がそのまま延在し、ゲート電極117の側面にはゲート電極117を熱酸化して形成した酸化膜が設けられることによって、全体としてゲート電極117の側壁及び半導体基板101上に断面L字状に酸化膜118s及び118d並びにゲート絶縁膜116が設けられ、酸化膜118s及び118d並びにゲート絶縁膜116上に窒化膜119s及び119dが設けられる。図1には、酸化膜118s及び窒化膜119s並びに酸化膜118d及び窒化膜119dの2層構造のサイドウォール絶縁膜120s及び120dを例示するが、サイドウォール絶縁膜120s及び120dを、断面L字状とした3層構造としたり、4層以上の絶縁膜の積層構造としたりすることもできる。サイドウォール絶縁膜120s及び120dは、酸化膜や窒化膜の単層構造とすることも可能である。例えば、サイドウォール絶縁膜120s及び120dは、ゲート電極117のゲート長方向(半導体基板101の平面方向)の幅(厚み)W1が、ロジックトランジスタ20の後述するサイドウォール絶縁膜220の幅(厚み)W2よりも大きくなるように、設けられてもよい。
【0019】
ソース領域115s及びドレイン領域115dには、所定の導電型の不純物、即ち、リン(P)やヒ素(As)等のn型の不純物が、所定の濃度で含まれる。
【0020】
メモリトランジスタ10では、ゲート電極117の下方の、第1の半導体領域114sと第2の半導体領域114dとの間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域113として機能する。第2の半導体領域114dがチャネル領域の一部として機能することもある。チャネル領域113は、例えばi型のノンドープ領域である。
【0021】
メモリトランジスタ10は、チャネル領域113の下方に設けられた第3の半導体領域112を有する。第3の半導体領域112は、チャネル領域113よりも高濃度の不純物を含む領域である。第3の半導体領域112は、スクリーン層(SCR層)とも称される。第3の半導体領域112には、ソース領域115s及びドレイン領域115dに含まれる不純物とは異なる導電型の不純物が、所定の濃度で含まれる。第3の半導体領域112の不純物濃度によって、メモリトランジスタ10の閾値電圧が制御される。また、第3の半導体領域112により、ソース領域115sとドレイン領域115dとの間のパンチスルーが抑制される。第3の半導体領域112は、半導体基板101とゲート絶縁膜116との界面からチャネル領域113の厚さ分、半導体基板101の内部に埋め込まれた位置に設けられ、その不純物濃度で閾値電圧が調整されるため、例えば、1×1019cm-3程度の比較的高い不純物濃度とされる。第3の半導体領域112のp型の不純物の濃度は、第1の半導体領域114sのn型の不純物の濃度よりも低く、第2の半導体領域114dのn型の不純物の濃度よりも高いことが好ましい。また、第2の半導体領域114dのn型の不純物の濃度は、第3の半導体領域112のp型の不純物の濃度の1/10以下であることがより好ましい。
【0022】
メモリトランジスタ10は、サイドウォール絶縁膜120dに電荷(ここでは、電子)を蓄積することによって情報を記憶する不揮発性メモリトランジスタであり、主に窒化膜119dに電荷が蓄積される。窒化シリコンのような窒化膜119dは、電荷をトラップする準位を有し、また、酸化シリコンのような酸化膜118d及びゲート絶縁膜116は、窒化膜119dに蓄積された電荷の散逸を抑える。
【0023】
ロジック領域2において半導体基板101の表面に、p型のウェル211が形成されている。ロジックトランジスタ20は、図1に示すように、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜216、ゲート絶縁膜216の上方に設けられたゲート電極217、ゲート電極217の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜220を有する。ロジックトランジスタ20は更に、ゲート電極217の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられ、ソース領域又はドレイン領域として機能する二つの不純物領域215を有する。ロジックトランジスタ20はまた、サイドウォール絶縁膜220の下方の半導体基板101内で、二つの不純物領域215の内側に、LDD領域214を有してよい。
【0024】
ゲート絶縁膜216には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜216の膜厚は、例えば、ロジックトランジスタ20について設定される閾値電圧に基づいて設定され、例えば、ゲート絶縁膜216はゲート絶縁膜116より薄い。
【0025】
ゲート電極217には、ポリシリコンのほか、チタン等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0026】
サイドウォール絶縁膜220は、例えば、絶縁膜である酸化膜218及び窒化膜219が積層された構造を含む。酸化膜218には、例えば、酸化シリコンが用いられる。窒化膜219には、例えば、窒化シリコンが用いられる。サイドウォール絶縁膜220は、必ずしも酸化膜218及び窒化膜219の積層構造を含むことを要せず、酸化膜や窒化膜といった絶縁膜の単層構造とすることができる。サイドウォール絶縁膜220は、ゲート電極217のゲート長方向(半導体基板101の平面方向)の幅W2が、メモリトランジスタ10のサイドウォール絶縁膜120s、120dの各幅W1よりも小さくなるように、設けられてもよい。
【0027】
不純物領域215には、n型の不純物が、所定の濃度で含まれる。LDD領域214には、不純物領域215に含まれる不純物と同じ導電型の不純物が、不純物領域215よりも低濃度で含まれる。
【0028】
ロジックトランジスタ20では、ゲート電極217の下方の、二つのLDD領域214の間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域213として機能する。
【0029】
ロジックトランジスタ20は、チャネル領域213の下方に設けられた比較的高濃度の半導体領域212を有する。半導体領域212は、ロジックトランジスタ20の閾値電圧のばらつきの低減、消費電力の低減等に寄与する。
【0030】
ロジック領域2のロジックトランジスタ20は、例えば、メモリ領域1のメモリトランジスタ10に対してリード(読み出し)を行うために用いられる。
【0031】
I/O領域3において半導体基板101の表面に、p型のウェル311が形成されている。I/Oトランジスタ30は、図1に示すように、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜316、ゲート絶縁膜316の上方に設けられたゲート電極317、ゲート電極317の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜320を有する。I/Oトランジスタ30は更に、ゲート電極317の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられ、ソース領域又はドレイン領域として機能する二つの不純物領域315を有する。I/Oトランジスタ30はまた、サイドウォール絶縁膜320の下方の半導体基板101内で、二つの不純物領域315の内側に、LDD領域314を有してよい。
【0032】
ゲート絶縁膜316には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜316の膜厚は、例えば、I/Oトランジスタ30について設定される閾値電圧に基づいて設定され、例えば、ゲート絶縁膜116の膜厚と同程度である。
【0033】
ゲート電極317には、ポリシリコンのほか、チタン等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0034】
サイドウォール絶縁膜320は、例えば、絶縁膜である酸化膜318及び窒化膜319が積層された構造を含む。酸化膜318には、例えば、酸化シリコンが用いられる。窒化膜319には、例えば、窒化シリコンが用いられる。サイドウォール絶縁膜320は、必ずしも酸化膜318及び窒化膜319の積層構造を含むことを要せず、酸化膜や窒化膜といった絶縁膜の単層構造とすることができる。
【0035】
不純物領域315には、n型の不純物が、所定の濃度で含まれる。LDD領域314には、不純物領域315に含まれる不純物と同じ導電型の不純物が、不純物領域315よりも低濃度で含まれる。
【0036】
I/Oトランジスタ30では、ゲート電極317の下方の、二つのLDD領域314の間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域313として機能する。I/Oトランジスタ30は、例えば、メモリ領域1のメモリトランジスタ10に対してプログラム(書き込み)、イレーズ(消去)を行うために用いられる。
【0037】
次に、メモリトランジスタ10のプログラム、リードの各動作について説明する。
【0038】
プログラム動作は、ゲート電極117、ソース領域115s及びドレイン領域115d並びに半導体基板101の各ノードを所定の電位にしてホットキャリアを生成させ、生成させたホットキャリアをサイドウォール絶縁膜120dに注入、蓄積(保持)させることで、行う。半導体基板101が接地され、ゲート電極117に接地電位より高い第1の電圧(正電圧)が印加され、ドレイン領域115dに接地電位より高い第2の電圧(正電圧)が印加され、ソース領域115sに第3の電圧(正電圧)が印加される。第3の電圧は接地電位よりも高く、第1の電圧及び第2の電圧よりも低い。このように電位を調整すると、メモリトランジスタ10では、チャネル領域113に反転層(図示せず)が形成され、チャネル領域113をソース領域115sからドレイン領域115dに向かって電子が流れる。チャネル領域113をドレイン領域115dに向かって流れる電子は、ドレイン領域115dの近傍で、ドレイン領域115dに印加された第2の電圧による電界によって高エネルギー状態となり、これによりホットエレクトロンが生成される。ドレイン領域115dの近傍で生成されたホットエレクトロンは、ゲート電極117に印加された第1の電圧による電界によって、サイドウォール絶縁膜120dに注入、蓄積される。
【0039】
リード動作は、例えば、ドレイン領域115d及び半導体基板101を接地し、ゲート電極117及びソース領域115sに正電圧を印加することで、行う。ゲート電極117に印加する正電圧は大きなリード電流を得るために比較的高く設定し、ソース領域115sに印加する正電圧はリードディスターブを軽減し、また、消費電流を低く抑えるために低く設定する。サイドウォール絶縁膜120dに電子が注入、蓄積されていれば、第2の半導体領域114dの電子に対するポテンシャルが高くなり、結果として第2の半導体領域114dの抵抗が高くなる。そのため、ソース領域115sからドレイン領域115dに流れる電流が低下する。サイドウォール絶縁膜120dに電子が注入、蓄積されていなければ、第2の半導体領域114dの抵抗が高くならず、ソース領域115sからドレイン領域115dに流れる電流は低下しない。このようにソース領域115sからドレイン領域115dに流れる電流によって、サイドウォール絶縁膜120dの電子の有無(“0”又は“1”の情報)が読み出される。
【0040】
メモリトランジスタ10をpチャネル型とする場合には、半導体基板101はn型、ソース領域115s、ドレイン領域115d及び第1の半導体領域114sはp型、第2の半導体領域114dはp型又はi型とされる。
【0041】
pチャネル型のメモリトランジスタ10では、例えば、各ノードに上記のプログラム動作時とは反対符号の電圧を印加することで、サイドウォール絶縁膜120dへの正孔の注入、蓄積が行われる。また、pチャネル型のメモリトランジスタ10では、例えば、各ノードに上記のリード動作時とは反対符号の電圧を印加することで、サイドウォール絶縁膜120dの正孔の有無が読み出される。
【0042】
ここで、プログラム動作時の電圧について詳述する。
【0043】
先ず、プログラム動作時の電圧に関連して、ボディ効果について本発明者らが行った実験について説明する。図2(A)は、メモリトランジスタ10を模した疑似メモリトランジスタを示す断面図であり、図2(B)は、参考例の疑似メモリトランジスタを示す断面図である。
【0044】
図2(A)に示すように、疑似メモリトランジスタ10aでは、窒化膜119s及び119dに代えてそれぞれ酸化膜119sa及び119daが形成されている。その他の構成はメモリトランジスタ10と同様である。また、図2(B)に示すように、参考例の疑似メモリトランジスタ10bは第3の半導体領域112を含まず、チャネル領域113がp型のウェル111に含まれる。その他の構成は疑似メモリトランジスタ10aと同様である。
【0045】
そして、疑似メモリトランジスタ10a及び10bについて、ドレイン電流Idとゲート電圧Vgとの関係(Id-Vg特性)を調べた。このとき、半導体基板101の電圧(基板電圧)Vbは0V又は-3Vとし、ソース領域115sの電圧(ソース電圧)Vsは0Vとし、ドレイン領域115dの電圧(ドレイン電圧)Vdは3.3Vとし、ゲート電極117の電圧(ゲート電圧)Vgを掃引した。図3は、疑似メモリトランジスタ10aの測定結果を示し、図4は、疑似メモリトランジスタ10bの測定結果を示す。
【0046】
図3に示すように、プログラム時のゲート電圧Vgが3.3Vであるとすると、疑似メモリトランジスタ10aでは、電位Vbbを-3Vとすることにより、電位Vbbが0Vのときと比較して、プログラム時のドレイン電流Id(プログラム電流)を1/100程度まで低減することができる。ドレイン電流Idの低減は消費電力の低減に繋がる。一方、図4に示すように、プログラム時のゲート電圧Vgが3.3Vであるとすると、疑似メモリトランジスタ10bでは、電位Vbを-3Vとしても、プログラム時のドレイン電流Idは電位Vbを0Vとしたときとほとんど変化しない。
【0047】
本発明者らは、この実験を通じて、第3の半導体領域112を有するメモリトランジスタ10の半導体基板101に負の電圧を印加することでプログラム電流を効果的に低減できることを見出した。
【0048】
なお、酸化膜119sa及び119daを用いているのは、窒化膜119s及び119dを用いると電子の注入に伴って閾値電圧が変化し、静特性を測定できないからである。
【0049】
本発明者らは、メモリトランジスタ10においてボディ効果によりプログラム電流がどの程度低下するかについての実験も行った。図5(A)は、プログラムの第1の条件を示す断面図であり、図5(B)は、プログラムの第2の条件を示す断面図である。また、図5(C)は、読み出し条件を示す断面図である。
【0050】
図5(A)に示すように、第1の条件では、ゲート電圧Vgを4V、ドレイン電圧Vdを4V、ソース電圧Vsを0V、基板電圧Vbを0Vとした(Vg/Vd/Vs/Vb=4/4/0/0(V))。一方、図5(B)に示すように、第2の条件では、ゲート電圧Vgを3V、ドレイン電圧Vdを3V、ソース電圧Vsを0V、基板電圧Vbを-3Vとした(Vg/Vd/Vs/Vb=3/3/0/-3(V))。また、いずれの条件においても、プログラム時間は10μsとした。また、図5(C)に示すように、読み出し時には、ゲート電圧Vgを掃引し、ドレイン電圧Vdを0V、ソース電圧Vsを0.5V、基板電圧Vbを0Vとした。Id-Vg特性はプログラム(書き込み)の前後で測定した。この結果を図6に示す。
【0051】
図6に示すように、第2の条件でプログラムを行った場合には、第1の条件でプログラムを行った場合よりもドレイン電流Idが大幅に低下した。このことは、第2の条件でプログラムを行うことで、より短時間で所定の閾値電圧の変化量が得られることを示す。つまり、第2の条件によれば第1の条件よりも高速でプログラムを行うことができる。
【0052】
更に、疑似メモリトランジスタ10aについて、第1の条件、第2の条件でId-Vg特性を測定した。この結果を図7に示す。
【0053】
図7に示すように、第1の条件でのプログラム電流が0.1mA以上であるのに対し、第2の条件でのプログラム電流は0.1μA以下であり、第1の条件でのプログラム電流の1/1000倍以下であった。このことは、第2の条件によれば、プログラム時間が一定の条件下で、第1の条件よりも著しくプログラム電流を低減できることを示す。このようなプログラム電流の傾向はメモリトランジスタ10でも得られる。
【0054】
従って、プログラムによる閾値電圧の変化量(ΔVth)が予め定められている場合、第2の条件によれば第1の条件よりも短時間かつ小プログラム電流で実現することができ、消費電力を大幅に低減することができる。このように、本発明者らの実験を通じて、第3の半導体領域112を有するメモリトランジスタ10では、半導体基板101に負電圧を印加しながらプログラムを行うことで、プログラムスピードを向上させ、プログラム電流を低減することができることが明らかになった。半導体基板101に負電圧を印加することでプログラムスピードが向上するのは、ドレイン領域115dと半導体基板101との間の電位差が増加し、ホットエレクトロンの生成が増加するからである。
【0055】
ただし、第2の条件のように半導体基板101に負電圧を印加するためには負電圧ポンプが必要とされ、負電圧ポンプの動作に伴って消費電力が逆に上昇するおそれがある。また、欠陥等により半導体基板101を流れる電流が異常に大きくなると、負電圧ポンプの能力を上回り、基板電圧Vbが浮いてスナップバックに入るおそれもある。そこで、第2の条件と等価な条件として、半導体基板101を接地し、ゲート電圧Vgを6V、ドレイン電圧Vdを6V、ソース電圧Vsを3Vとする第3の条件(Vg/Vd/Vs/Vb=6/6/3/0(V)))が考えられる。また、第3の条件よりもゲート電圧Vg、ドレイン電圧Vd及びソース電圧Vsを下げた、半導体基板101を接地し、ゲート電圧Vgを4V、ドレイン電圧Vdを4V、ソース電圧Vsを1Vとする第4の条件(Vg/Vd/Vs/Vb=4/4/1/0(V)))も考えられる。更に、半導体基板101を接地し、ゲート電圧Vgを5V、ドレイン電圧Vdを5V、ソース電圧Vsを1Vとする第5の条件(Vg/Vd/Vs/Vb=5/5/1/0(V)))も考えられる。図8(A)は、プログラムの第3の条件を示す断面図であり、図8(B)は、プログラムの第4の条件を示す断面図であり、図8(C)は、プログラムの第5の条件を示す断面図である。図9に、第1~第5の条件のプログラム前後のId-Vg特性を示す。
【0056】
図9に示すように、第3の条件によれば、第2の条件と同様のId-Vg特性が得られる。第5の条件によれば、第1及び第3の条件よりもプログラムスピードが高い。一方、第4の条件では、第1~第3の条件よりもプログラムスピードが低い。ただし、プログラムスピードが低くても、プログラム電流が小さければ、所定の閾値電圧の変化量ΔVthを得るためのプログラム動作に要する消費電力を低減することができる。
【0057】
そこで、本発明者らは、第4の条件のプログラム時間依存を調査した。この調査では、第1の条件でプログラム時間を10μsとした場合と同等のドレイン電流Idの低下量が得られるプログラム時間、及び第5の条件でプログラム時間を10μsとした場合と同等のドレイン電流Idの低下量が得られるプログラム時間を求めた。この結果を図10に示す。
【0058】
図10に示すように、第4の条件でプログラム時間を20μsとした場合に、第1の条件でプログラム時間を10μsとした場合と同等のドレイン電流Idの低下量が得られた。また、第4の条件でプログラム時間を170μsとした場合に、第5の条件でプログラム時間を10μsとした場合と同等のドレイン電流Idの低下量が得られた。
【0059】
本発明者らは、第1の条件、第4の条件及び第5の条件のId-Vg特性も調査した。この結果を図11に示す。図11に示すように、第1の条件におけるプログラム電流は120μAであり、第4の条件におけるプログラム電流は9μAであり、第5の条件におけるプログラム電流は30μAである。
【0060】
下記表1に、以上の実験により測定された第1の条件、第4の条件及び第5の条件の消費電力を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、第4の条件で10μsのプログラムを行った場合には、第1の条件で10μsのプログラムを行った場合の1/12程度まで消費電力が低減された。第4の条件で10μsのプログラムを行った場合の閾値電圧の変化量ΔVthは、第1の条件で10μsのプログラムを行った場合の閾値電圧の変化量ΔVthよりも小さいが、第4の条件で20μsのプログラムを行うことで同程度の変化量ΔVthを得ることができる。そして、第4の条件で20μsのプログラムを行った場合でも消費電力は0.7nJと極めて低い。
【0063】
また、第5の条件で10μsのプログラムを行うことにより、消費電力が1.5nJとなるものの、極めて大きな変化量ΔVthを得ることができる。つまり、第5の条件によれば、消費電力を第1の条件の1/3以下としながら、極めて高いプログラムスピードを得ることができる。第4の条件で170μsのプログラムを行えば同程度の変化量ΔVthを得ることができるが、プログラム時間が長く、この点で第5の条件が好ましい。
【0064】
そして、第1の実施形態では、上述のように、プログラム動作時に、半導体基板101が接地され、ゲート電極117に第1の電圧が印加され、ドレイン領域115dに第2の電圧が印加され、ソース領域115sに第3の電圧が印加される。第3の電圧は第1の電圧及び第2の電圧よりも低い。従って、上述の実験から明らかなように、第1の実施形態によれば、このような電圧条件が採用されるため、プログラム動作時の消費電力を大幅に低減することができる。
【0065】
なお、第1の電圧及び第2の電圧は互いに等しくてもよく、互いに相違していてもよいが、回路構成の複雑化を回避するために、互いに等しいことが好ましい。また、第3の電圧は1Vに限定されず、例えば0.9V又は0.3V等であってもよい。
【0066】
また、第3の条件によれば、プログラムスピードを向上し、プログラム電流を低減できると考えられるが、6Vの電圧を生成するために消費電力が上昇するおそれがある。従って、ゲート電圧Vg(第1の電圧)及びドレイン電圧Vd(第2の電圧)は5V以下とすることが好ましい。
【0067】
次に、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリについて説明する。図12は、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリの一例を示す図である。図12には、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリの一例の要部平面レイアウトを模式的に図示している。
【0068】
図12に示すように、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリ80(半導体装置)は、素子分離領域(素子分離領域102に相当)に画定された素子領域として、方向Sに延在され、方向Sと直交する方向Tに並設された複数(一例として4つ)のアクティブ領域81a,81b,81c,81dを有する。これらのアクティブ領域81a,81b,81c,81dを横切るように、方向Tに、ゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜116に相当)を介して、ワード線WL1,WL2(ゲート電極117に相当)が延在される。ワード線WL1,WL2の側壁には、サイドウォール絶縁膜83(サイドウォール絶縁膜120s及び120dに相当)が形成される。各アクティブ領域81a,81b,81c,81dのワード線WL1,WL2の両側にそれぞれ、ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域84(ソース領域115s及びドレイン領域115dに相当)が形成される。サイドウォール絶縁膜83の下方で、二つの不純物領域84の内側には、第1の半導体領域(第1の半導体領域114sに相当)及び第2の半導体領域(第2の半導体領域114dに相当)が形成され、これらの間にチャネル領域(チャネル領域113に相当)が形成される。また、チャネル領域の下方に、SCR層となる不純物領域(第3の半導体領域112に相当)が形成される。不揮発性メモリ80には、これらの要素によって形成された複数(一例として8つ)のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90h(メモリトランジスタ10に相当)が含まれる。
【0069】
各不純物領域84上には、上層に向かって延びるプラグ91(コンタクト)が形成される。各不純物領域84は、プラグ91を介して、第1層目の導体層に含まれる配線92a,92bに接続される。
【0070】
配線92aは、方向Tに延在される。配線92aは、アクティブ領域81aのメモリトランジスタ90a,90bで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81bのメモリトランジスタ90c,90dで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81cのメモリトランジスタ90e,90fで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81dのメモリトランジスタ90g,90hで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、ソース線(SL1)として用いられる。
【0071】
配線92bは、各メモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hの、ソース線SL1と繋がる不純物領域84とは反対側の不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。
【0072】
各配線92b上には、上層に向かって延びるビア93が形成される。アクティブ領域81aのメモリトランジスタ90a,90bの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL1に接続される。アクティブ領域81bのメモリトランジスタ90c,90dの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL2に接続される。アクティブ領域81cのメモリトランジスタ90e,90fの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL3に接続される。アクティブ領域81dのメモリトランジスタ90g,90hの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL4に接続される。ビット線BL1,BL2,BL3,BL4は、不揮発性メモリ80の第2層目の導体層に含まれる。ビット線BL1,BL2,BL3,BL4には、それぞれプログラムイネーブル信号で制御されるスイッチングトランジスタPE1,PE2,PE3,PE4の一端が接続される。スイッチングトランジスタPE1,PE2,PE3,PE4の他端には第3の電圧の電圧源95が接続される。
【0073】
不揮発性メモリ80では、個々のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hが、1つのメモリセルとして機能する。不揮発性メモリ80における情報のプログラム、リード及びイレーズの各動作の一例について、図13図14及び図15を参照して具体的に説明する。なお、ここでは、nチャネル型のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hを備える不揮発性メモリ80を例にする。
【0074】
図13は、不揮発性メモリ80のプログラム動作を示す図である。図13(A)にはプログラム動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、図13(B)にはプログラム動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。なお、図13(B)は図13(A)のL1-L1断面模式図である。
【0075】
例えば、メモリトランジスタ90a(メモリセル)に対するプログラム動作時には、半導体基板82(半導体基板101及びウェル111に相当)が接地され、ゲート絶縁膜81上のワード線WL1の電位がhigh(第1の電圧)、ビット線BL1の電位がlow(第3の電圧)、ソース線SL1の電位がhigh(第2の電圧)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)、非選択のビット線BL2~BL4の電位はhigh(4V~5V)とされる。これにより、メモリトランジスタ90aの第2の半導体領域86(第2の半導体領域114dに相当)上方のサイドウォール絶縁膜83(サイドウォール絶縁膜120dに相当)に、ホットエレクトロン(ホットキャリア49、電荷49a)が注入、蓄積され、情報のプログラムが行われる。
【0076】
メモリトランジスタ90aの第2の半導体領域86が極低濃度である場合、第2の半導体領域86の電場は比較的小さい。一方、第2の半導体領域86の外側に隣接する不純物領域84は高濃度であるため、電場は不純物領域84の端部で急激に大きくなる。結果として、ソース線SL1側の不純物領域84(ドレイン)近傍でホットエレクトロンが効率的に生成され、生成されたホットエレクトロンが第2の半導体領域86上方のサイドウォール絶縁膜83に効率良く注入される。また、第1の半導体領域85の不純物濃度が第2の半導体領域86の不純物濃度よりも高いため、優れた耐久性を得ることができる。
【0077】
図14は、不揮発性メモリ80のリード動作を示す図である。図14(A)にはリード動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、図14(B)にはリード動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。なお、図14(B)は図14(A)のL2-L2断面模式図である。
【0078】
メモリトランジスタ90aに対するリード動作時には、ワード線WL1の電位がhigh(2.0V)、ビット線BL1の電位がhigh(0.5V)、ソース線SL1の電位がlow(0V)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)、非選択のビット線BL2~BL4の電位はlow(0V)とされる。なお、図14には、サイドウォール絶縁膜83に電荷49aが注入、蓄積されたメモリトランジスタ90aを例示している。このような電位とした時にビット線BL1側からソース線SL1側に流れる電流を検出することで、メモリトランジスタ90aの情報のリードが行われる。
【0079】
図15は、不揮発性メモリ80のイレーズ動作を示す図である。図15(A)にはイレーズ動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、図15(B)にはイレーズ動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。なお、図15(B)は図15(A)のL3-L3断面模式図である。
【0080】
メモリトランジスタ90aに対するイレーズ動作時には、まず、ワード線WL1に繋がるメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gに対して上記のようなプログラム動作が行われる。このようにメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gがプログラム状態とされた後、ワード線WL1の電位が負(negative,-5V~-6V)、ビット線BL1~BL4の電位がlow(0V)、ソース線SL1の電位がhigh(4V~5V)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)とされる。これにより、メモリトランジスタ90aを含む、ワード線WL1に繋がるメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gにプログラムされた情報のイレーズが行われる。
【0081】
イレーズ動作時には、ソース線SL1側の不純物領域84近傍でホットホール(ホットキャリア49)が生成され、第2の半導体領域86上方のサイドウォール絶縁膜83に蓄積されていた電子(電荷49a)が中和される。ホットホールは、ソース線SL1側の不純物領域84近傍で生成されるため、当該不純物領域84から離れた領域の閾値電圧への影響が抑えられる。従って、ワード線WL1のゲート長Lgを過剰に小さくしなければ、全体としての閾値電圧は正、つまりメモリトランジスタ90aのオフ電流が初期の値を大きく超えることはない。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る半導体装置では、スイッチングトランジスタと接地との間に第3の電圧の電圧源に代えて抵抗素子が接続されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。図16は、第2の実施形態に係る半導体装置の一部を示す図である。図16には、図13(B)に相当する部分を示す。
【0083】
図16に示すように、スイッチングトランジスタPE1と接地との間に、電圧源95に代えて抵抗素子Rが接続されている。このように構成された第2の実施形態では、メモリトランジスタ90aにプログラム電流が流れると、抵抗素子Rにて電圧降下が生じ、その分だけソース電圧が上昇する。例えば、抵抗素子Rの抵抗値が30kΩであれば、30μAのプログラム電流が流れると、ソース電圧は0.9Vとなる。また、0.3Vのソース電圧を得ようとする場合には、抵抗素子Rの抵抗値は10kΩでよい。更に、N本(Nは2以上の整数)のビット線について一括してプログラムする場合には、プログラム電流の総和がN倍となるため、抵抗素子Rの抵抗値は1本についてプログラムする場合の1/Nにすることができる。
【0084】
このように、第2の実施形態によれば、電圧源95を用いずに第3の電圧を得ることができる。例えば、抵抗素子Rは多結晶シリコン(ポリSi)を用いて構成することができる。抵抗素子Rを、十分な寄生抵抗を備えたトランジスタで構成してもよい。
【0085】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る半導体装置では、スイッチングトランジスタとして、寄生抵抗が比較的大きなものが用いられ、このスイッチングトランジスタの他端が接地されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。図17は、第3の実施形態に係る半導体装置の一部を示す断面図である。図17には、図13(B)に相当する部分を示す。
【0086】
図17に示すように、ビット線BL1と接地との間に、スイッチングトランジスタPE1に代えてスイッチングトランジスタPE1aが接続されている。スイッチングトランジスタPE1aは、スイッチングトランジスタPE1よりも寄生抵抗が大きく構成されており、オン抵抗が調整可能である。
【0087】
このように構成された第3の実施形態では、メモリトランジスタ90aにプログラム電流が流れると、スイッチングトランジスタPE1aにて電圧降下が生じ、その分だけソース電圧が上昇する。つまり、スイッチングトランジスタPE1aは、スイッチングトランジスタPE1及び抵抗素子Rの機能を具備している。
【0088】
ここで、スイッチングトランジスタPE1aのゲート電圧の好ましい範囲について説明する。本発明者らは、図18に示す回路を準備し、その特性を測定した。メモリトランジスタ90aのゲート幅、ゲート長はそれぞれ0.16μm、0.10μmであり、スイッチングトランジスタPE1aのゲート幅、ゲート長はそれぞれ0.30μm、0.35μmである。スイッチングトランジスタPE1aのゲート酸化膜の厚さは7nmである。ここでは、第5の条件のように、メモリトランジスタ90aのゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdを5Vとした。
【0089】
スイッチングトランジスタPE1aのゲート電圧Vgaが1.0V~3.5Vの範囲で、メモリトランジスタ90aに流れるドレイン電流Idを測定した。この結果を図19に示す。図19の縦軸に示すドレイン電流Idは、スイッチングトランジスタPE1aを設けず、メモリトランジスタ90aのソースを接地した場合のドレイン電流Idを100%として規格化してある。図19に示すように、ゲート電圧Vgaを高くするほど、ドレイン電流Idが大きくなる。図19に示す結果から、1V程度のゲート電圧Vgaでメモリトランジスタ90aのソース電圧が1V程度になっていると考えられる。
【0090】
スイッチングトランジスタPE1aのゲート電圧Vgaが1.0V~3.5Vの範囲で、10000回のプログラム及びイレーズを行った場合の動作ウィンドウを測定した。この結果を図20に示す。図20に示すように、ゲート電圧Vgaが1.6V未満であると、動作ウィンドウが狭くなる。
【0091】
図19及び図20に示す結果から、ゲート幅、ゲート長、ゲート酸化膜の厚さがそれぞれ0.30μm、0.35μm、7nmのスイッチングトランジスタPE1aを用いる場合、ゲート電圧Vgaは1.6V以上とすることが好ましい。
【0092】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0093】
(付記1)
半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、前記第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域よりも低い第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、
前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、
を有し、
前記サイドウォール絶縁膜に電荷を注入することによって情報を記憶し、
前記サイドウォール絶縁膜への電荷の注入時に、
前記半導体基板が接地され、
前記ゲート電極に接地電位よりも高い第1の電圧が印加され、
前記ドレイン領域に接地電位よりも高い第2の電圧が印加され、
前記ソース領域に前記接地電位よりも高く、前記第1の電圧及び前記第2の電圧よりも低い第3の電圧が印加されることを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記第1の電圧及び前記第2の電圧が互いに等しいことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記ソース領域と接地との間に接続された抵抗素子を有することを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記ソース領域と接地との間に接続されたトランジスタを有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第3の電圧は0.3V、0.9V又は1Vであることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1の電圧及び前記第2の電圧は5V以下であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第1の電圧は1.6V以上であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記第2の半導体領域における前記第1導電型の不純物の濃度が前記第1の半導体領域における前記第1導電型の不純物の濃度よりも低いことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記第2の半導体領域は、ノンドープ領域であることを特徴とする付記8に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0094】
10:メモリトランジスタ
100:半導体装置
101:半導体基板
112:第3の半導体領域(スクリーン層)
113:チャネル領域
114s:第1の半導体領域
114d:第2の半導体領域
115s:ソース領域
115d:ドレイン領域
117:ゲート電極
118s、118d:酸化膜
119s、119d:窒化膜
120s、120d:サイドウォール絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図19
図20