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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】杭の健全性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20220802BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N29/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018106941
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019211308
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健史
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-325224(JP,A)
【文献】特開2014-224756(JP,A)
【文献】特開2002-333437(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092869(WO,A1)
【文献】特開平10-009847(JP,A)
【文献】特開2011-158415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の長さの幅及びこの幅より短い厚さと、前記幅より長い深さとを有する壁杭の杭頭部を打撃して発生させた弾性波の反射性状を、前記杭頭部で測定し、
前記反射性状のスペクトル解析を行ない、
前記スペクトル解析において、前記壁杭の幅方向の長さに基づく第1振動数及び前記壁杭の深さ方向の全長に基づく第2振動数を特定し、前記第1振動数より低い周波数であって、前記第2振動数以外の卓越振動数の有無により、前記壁杭の健全性を評価することを特徴とする杭の健全性評価方法。
【請求項2】
前記スペクトル解析において、前記反射性状をフーリエ変換し、少なくとも前記第1振動数以上の周波数を除去し、逆フーリエ変換した波形を生成し、
前記逆フーリエ変換した波形における、前記壁杭の先端の反射波形が出現する時刻における形状に基づいて、前記壁杭の健全性を更に評価することを特徴とする請求項1に記載の杭の健全性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁杭の健全性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、既存杭の再利用の可否や杭の品質管理手法として、杭の健全性評価が行なわれている。杭の健全性評価方法として、簡便な非破壊試験のインティグリティ試験(IT試験)が知られている。この試験では、評価対象の杭の杭頭部を打撃し、これにより発生する弾性波の反射性状を測定する(例えば、非特許文献1参照。)。そして、非特許文献1に記載されているように、測定結果の反射性状(波形)に基づいて杭の健全性を評価する。
【0003】
例えば、図15は、丸杭におけるIT試験の測定結果を示す。図15(a)はひび割れがない丸杭の反射性状(測定波形)であり、図15(b)及び図15(c)は、ひび割れがそれぞれ上端から1m、3mの位置にある場合の丸杭の反射性状である。
図15(a)に示す反射性状においては、0.001~0.004s間において細かな規則的な振動波形があるものの、最初の打撃振幅と最後の杭先端振幅以外に有意な応答がない。このため、この測定波形の形状から、この丸杭には、損傷がなく、健全な杭と判断することができる。
【0004】
一方、図15(b)に示す反射性状においては、約0.0008sに、最初の打撃波形に付属する振幅と、これに伴う約0.001sにおけるプラス側の大きな振幅が存在している。また、図15(c)に示す反射性状においては、約0.0018sにマイナス側(下向き)の振幅がある。これらの特徴は、丸杭においてひび割れがある場合の反射性状の応答である。従って、図15(a)に示すように、丸杭の反射性状(波形)において、先端反射が明確であり、先端反射よりも浅い部位に、損傷を示す大きな反射がない場合には、ひび割れのある杭と区別して、杭の健全性が高いと評価することができる。
【0005】
また、IT試験で測定した反射性状を用いて、杭の健全性を、より効率的に評価する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献記載の技術では、測定結果の弾性波の反射性状(波形)において、杭頭部の波形の値と、杭のひび割れ部の波形の値と、杭の先端部の波形の値とを検出し、これらの値に基づいて杭の健全性を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-224756号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】モニタリングサービス 「杭の健全性試験」、[online]、[平成30年4月17日検索]、インターネット<http://moni.co.jp/integrity-test/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存杭には、丸杭だけでなく、壁状の壁杭を用いている場合もある。壁杭では、杭頭部の打撃により発生した弾性波が、水平方向(幅方向)の杭端部においても反射する。このため、壁杭の場合には、ひび割れの有無によらず、深さ方向の反射性状に水平(幅)方向の反射性状が重畳し、波形が複雑になり、杭先端における反射が不明確になることがある。従って、深さ方向の杭の健全性を評価することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する杭の健全性評価方法は、壁杭の杭頭部を打撃して発生させた弾性波の反射性状を、前記杭頭部で測定し、前記反射性状のスペクトル解析を行ない、前記スペクトル解析において、前記壁杭の幅方向の長さに基づく第1振動数より低い周波数であって、前記壁杭の深さ方向の長さに基づく第2振動数以外の卓越振動数の有無により、前記壁杭の健全性を評価する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁杭の健全性を、効率的かつ的確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における評価対象の壁杭の形状を説明する斜視図。
図2】実施形態における杭の健全性評価を行なう装置の構成図。
図3】実施形態における杭の打撃点、基準評価点及び応答評価点の位置関係を説明する説明図。
図4】実施形態において幅が3mの壁杭についての反射性状を示す測定波形であって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図5】実施形態における各処理の処理手順の説明図であって、(a)は評価処理、(b)はスペクトル解析処理、(c)は卓越振動数に基づく健全性判定処理の流れ図。
図6】実施形態における卓越振動数を説明する説明図。
図7】実施形態において幅が3mの壁杭についてのスペクトル解析における振幅-周波数グラフであって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図8】実施形態における各処理の処理手順の説明図であって、(a)はローパス波形の生成処理、(b)はローパス波形に基づく健全性判定処理の流れ図。
図9】実施形態において幅が3mの壁杭についてのローパス波形のグラフであって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図10】実施形態において幅が3mの壁杭についてのローパス波形のグラフであって、(a)は2000Hz以上の周波数を除去したひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は2000Hz以上の周波数を除去した上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は2000Hz以上の周波数を除去した上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図11】実施形態において幅が4mの壁杭についての反射性状を示す測定波形であって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図12】実施形態において幅が4mの壁杭についてのスペクトル解析における振幅-周波数グラフであって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図13】実施形態において幅が4mの壁杭についてのローパス波形のグラフであって、(a)はひび割れがない壁杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭についてのグラフ。
図14】変更例における卓越振動数の特定を説明する説明図。
図15】従来技術におけるIT試験で測定した丸杭の反射性状(波形)の測定波形のグラフであって、(a)はひび割れがない丸杭についてのグラフ、(b)は上端面から1mの位置にひび割れがある丸杭についてのグラフ、(c)は上端面から3mの位置にひび割れがある丸杭についてのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図13を用いて、杭の健全性評価方法の一実施形態を説明する。本実施形態における杭の健全性評価方法では、壁杭を評価対象とする。
図1に示す評価対象の壁杭10は既存杭等であって、弾性体である鉄筋コンクリートで構成される。この壁杭10は、水平断面が角丸長方形状の長尺物である。壁杭10は、水平方向の長さの幅W1及び厚さT1と、深さ方向の長さL1を有する。本実施形態では、長さL1は、幅W1及び厚さT1よりも長い。
【0013】
図2に示す壁杭10は、杭頭部が地上に露出し、その下部が地中に埋設している。
更に、壁杭10の健全性を評価するために、従来のIT試験と同様に、ハンマー11、加速度計12、測定装置15及び解析装置20を用いる。
【0014】
ハンマー11を用いて、壁杭10の杭頭部を打撃することにより、壁杭10に弾性波を発生させる。
加速度計12は、壁杭10の杭頭部の評価点(基準評価点及び応答評価点)に設けられ、ハンマー11の打撃により発生した弾性波の加速度を計測時間に対応付けて検出する。応答評価点は、弾性波が壁杭内を伝達した反射波を取得する位置である。また、基準評価点は、応答評価点における反射性状を評価するときの基準となる反射波を取得する位置(例えば、打撃位置に最寄の計測位置)である。
【0015】
加速度計12には、測定装置15が接続される。測定装置15は、基準化速度(速度比)を、計測時間に対応付けて記憶部に記録する。本実施形態では、打撃力の強弱による応答のばらつきを抑制するために、基準化速度として、打撃時における基準評価点の加速度を基準にして、測定した加速度を評価する値を用いる。具体的には、この基準化速度は、応答評価点において測定された加速度を、打撃時刻に基準評価点で測定された加速度で除算して算出する。この基準化速度を時系列に表示して、壁杭10における弾性波の反射性状(測定波形Wf(t))が生成される。この弾性波の反射性状は、具体的には、図4(a)~図4(c)に示す波形である。
【0016】
図2に示す解析装置20は、測定装置15に記憶された反射性状を解析することにより、壁杭10の健全性の評価を行なう。この解析装置20は、解析部21、波形生成部22及び出力部25を備える。
【0017】
解析部21は、スペクトル解析処理を実行する。
図5(b)に示すように、本実施形態のスペクトル解析処理は、フーリエ変換を用いて、測定波形に含まれる周波数成分を分離する。
【0018】
更に、図2に示す解析部21は、第1振動数fw及び第2振動数flを特定し、卓越振動数fcの有無を判定する。第1振動数fwは、壁杭10の幅W1方向の側面で反射した振動数であって、幅W1に応じた周波数である。第2振動数flは、壁杭10の長さL1方向の面(下面)で反射した振動数であって、第1振動数fwよりも低い壁杭10の長さL1に応じた周波数である。
【0019】
具体的には、第1振動数fw及び第2振動数flは、棒形状における振動数(基準第1振動数及び基準第2振動数)の算出式を用いて算出した基準振動数に対して、それぞれ許容範囲を含む周波数帯の最大ピーク値の周波数として特定される。
ここで、基準第1振動数は、壁杭10の杭頭部の中心付近の測定点では、(〔弾性波速度Vp〕/〔杭の幅W1〕)により算出する。基準第2振動数は、(〔弾性波速度Vp〕/〔杭の長さL1〕/2)により算出する。
解析部21は、これら基準第1振動数及び基準第2振動数の算出式と、これに用いる弾性波速度Vpと、算出した基準第1振動数及び基準第2振動数に対して、第1振動数fw及び第2振動数flを算出する許容範囲(例えば200Hz)とを記憶している。弾性波速度Vpは、例えば5000(m/s)である。なお、壁杭10の幅W1及び長さL1は、入力部(図示せず)において入力され、メモリに記憶される。
【0020】
また、卓越振動数fcは、第2振動数fl~第1振動数fwまでの間に存在するピークの周波数であって、鋭く大きいピーク値(振幅)に対応する周波数である。
ここで、図6に示すスペクトル解析における振幅-周波数グラフを用いて、卓越振動数fcを特定するために、鋭く大きいピークであるか否かの判定について説明する。このために、解析部21は、鋭さを判定する判定指標値Hs及び判定振幅値Asを記憶している。
解析部21は、第2振動数flから第1振動数fwまでの間における各ピーク点をすべて特定する。例えば、図6においては、ピーク点Pt1,Pt2,Pt3等を特定する。
次に、各ピーク点を形成する曲線の変曲点である2つのボトム点を特定し、このうち、振幅が大きい第1ボトム点を特定する。例えば、ピーク点Pt1,Pt2,Pt3に対して、それぞれ第1ボトム点Pb1,Pb2,Pb3を特定する。
次に、特定した第1ボトム点Pb1,Pb2,Pb3と同じ振幅で、この第1ボトム点の曲線とは異なるもう1つの曲線における点の周波数から、第1ボトム点の周波数までのバンド幅を特定する。例えば、ピーク点Pt1,Pt2,Pt3に対して、それぞれバンド幅B1,B2,B3を特定する。
そして、ピーク点の振幅(ピーク値)から第1ボトム点における振幅を減算して、ピーク高さを算出する。例えば、ピーク点Pt1,Pt2,Pt3に対して、それぞれピーク高さAp1,Ap2,Ap3を特定する。
【0021】
そして、ピーク高さをバンド幅で除算した指標値(Ap1/B1,Ap2/B2,Ap3/B3)が、判定指標値Hsより小さい場合には、このピーク点のピークは鋭くないと特定する。
また、ピーク高さをバンド幅で除算した指標値が、判定指標値Hs以上の場合には、このピーク点のピークは鋭いと特定する。そして、この場合、ピーク高さが判定振幅値As以上の場合には、このピーク点の周波数を卓越振動数fcと特定する。
図6において、ピーク点Pt2の指標値(Ap2/B2)は、判定指標値Hsより小さいため、このピーク点Pt2に対応する周波数は卓越振動数fcではない。一方、ピーク点Pt1,Pt3の指標値(Ap1/B1,Ap3/B3)は、判定指標値Hs以上であり、鋭いピーク点である。そして、ピーク点Pt1のピーク高さAp1は、判定振幅値As以上であり、ピーク点Pt3のピーク高さAp3は判定振幅値Asより小さい。このため、ピーク点Pt1に対する周波数は卓越振動数fcであるが、ピーク点Pt3に対応する周波数は卓越振動数fcではないと判定する。
【0022】
波形生成部22は、反射性状に含まれる低周波成分を抽出した波形(ローパス波形)を生成するローパス波形生成処理を実行する。
図8(a)に示すように、本実施形態のローパス波形生成処理では、スペクトル解析処理により分離した周波数成分のうち、高周波(除去対象周波数)を除去し、残った低周波成分を逆フーリエ変換して、波形を生成する。ここでは、少なくとも第1振動数fw以上の高周波成分を除去するために、波形生成部22は、壁杭10の幅W1に応じて除去対象周波数を特定する。本実施形態では、波形生成部22は、除去対象周波数として、第1振動数fw及び第2振動数flの間の周波数を、予め記憶したルール(例えば、特定の中間値のきりのよい周波数)で特定する。
【0023】
図2の出力部25は、ディスプレイなどの出力装置への出力を制御する。例えば、出力部25は、スペクトル解析した結果(振幅-周波数グラフ)や生成したローパス波形をディスプレイに表示する。
【0024】
(試験方法)
図1に示す壁杭10として、幅W1が約3mで、厚さT1が約1m、長さL1が約7mの壁杭10を想定する。
【0025】
図3に示すように、本実施形態では、ハンマー11で打撃する位置は、壁杭10の端部から0.5mとする。また、加速度計12の取り付け位置(応答評価点)は、打撃位置から1.5mとする。更に、打撃位置から0.5mの位置に、基準評価点として加速度計12を取り付ける。
【0026】
作業者がハンマー11で壁杭10の杭頭部を打撃して、壁杭10内に弾性波を発生させる。発生した弾性波は、壁杭10内を伝播する。この場合、弾性波は、壁杭10の軸方向(長さL1方向)に伝播し、壁杭10と地盤との境界面(壁杭10の下端面)で反射し、反射波が杭頭部に設置された加速度計12に到達する。更に、弾性波は、壁杭10の水平方向(幅W1方向)にも伝搬し、壁杭10と地盤との境界面(壁杭10の側面)で反射し、加速度計12に到達する。この際に、壁杭10にひび割れ等の境界部分があれば、このひび割れ部分で弾性波が反射する。
【0027】
そして、加速度計12は、壁杭10と地盤との各境界面(壁杭10の下端面や側面)で反射した弾性波により生じた振動(加速度)を計測する。この加速度計12が測定した測定時間毎の加速度は、測定装置15において反射性状として記憶される。
【0028】
(評価処理)
次に、図4図13を用いて、解析装置20が実行する評価処理について説明する。
図5(a)に示すように、測定装置15で記憶された反射波を取得した解析装置20は、評価処理を実行する。
【0029】
この評価処理において、まず、解析装置20は、測定波形Wf(t)の取得処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、解析装置20は、測定装置15から反射性状(測定波形Wf(t))を取得する。
【0030】
次に、解析装置20は、スペクトル解析処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、解析装置20の解析部21が、取得した測定波形Wf(t)をフーリエ変換し、周波数スペクトル(周波数毎の振幅)を算出する。
【0031】
次に、解析装置20は、壁杭10の長さL1及び幅W1に応じた振動数(fl,fw)の特定処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、解析装置20の解析部21は、壁杭10の長さL1と、記憶している弾性波速度Vp及び算出式とを用いて、基準第2振動数を算出する。そして、解析部21は、算出した基準第2振動数と許容範囲から第2振動数が出現する周波数帯を特定し、この周波数帯における最大振幅(ピーク点)の周波数を、長さL1に応じた第2振動数flとして特定する。
具体的には、壁杭10の長さL1は7mである。このため、基準第2振動数は、算出式を用いて357(=5000/7/2)Hzであり、これに対して許容範囲を含む周波数帯(157~557Hz)におけるピーク点における周波数を、第2振動数flとして特定する。
更に、解析部21は、壁杭10の幅W1と、弾性波速度Vp及び算出式とを用いて基準第1振動数を算出する。そして、解析部21は、算出した基準第1振動数と許容範囲から第1振動数が出現する周波数帯を特定し、この周波数帯における最大ピーク値の周波数を、幅W1に応じた第1振動数fwとして特定する。
本実施形態の壁杭10の幅W1は3mであるため、基準第1振動数は、算出式を用いて1666(=5000/3)Hzと算出される。そして、これに対して許容範囲を含む周波数帯(約1466~1866Hz)における最大ピークにおける周波数を、第1振動数fwとして特定する。
【0032】
そして、解析装置20は、卓越振動数に基づく健全性判定処理を実行する(ステップS1-4)。この卓越振動数に基づく健全性判定処理の詳細については、後述する。
次に、解析装置20の波形生成部22は、ローパス波形の生成処理を実行する(ステップS1-5)。ここで、波形生成部22は、第1振動数fwよりも低く第2振動数flを含まない1000Hz以上の高い周波数成分を、除去対象周波数として特定する。従って、波形生成部22は、ステップS1-2において生成した振幅-周波数グラフにおいて、1000Hz以上の周波数を除いたスペクトルを逆フーリエ変換し、ローパス波形を生成する。
【0033】
そして、解析装置20は、ローパス波形に基づく健全性判定を実行する(ステップS1-6)。このローパス波形に基づく健全性判定の詳細については、後述する。
そして、解析装置20は、出力処理を実行する(ステップS1-7)。具体的には、解析装置20の出力部25は、健全性判定(S1-4,S1-6)における壁杭10の健全性の判定結果を含む出力画面を生成して、ディスプレイに表示する。
【0034】
図7に示すように、出力部25は、この出力画面に、第1振動数fw、第2振動数flを示したスペクトル解析の振幅-周波数グラフを含める。
更に、図9に示すように、出力部25は、出力画面にローパス波形を含める。そして、作業者は、出力画面を参考にして、壁杭10の健全性を確認する。
【0035】
<卓越振動数に基づく健全性判定処理>
次に、図5(c)を用いて、卓越振動数に基づく健全性判定処理の詳細について説明する。
【0036】
ここで、解析装置20の解析部21は、特定した第1振動数fwよりも低い周波数で、第2振動数fl以外の卓越振動数(fc)があるかを判定する(ステップS2-1)。具体的には、解析部21は、第2振動数flから第1振動数fwの間にある各ピークを特定する。そして、解析部21は、各ピークの第1ボトム点を特定し、第1ボトム点に基づいてバンド幅及びピーク高さを特定する。解析部21は、特定したピーク高さをバンド幅で割った指標値が判定指標値Hs以上で、かつピーク高さが判定振幅値As以上の場合には、このピーク点の周波数を卓越振動数fcとして特定する。
【0037】
ピーク高さをバンド幅で割った指標値が判定指標値Hsより小さく、またピーク高さが判定振幅値Asより小さい場合には、解析部21は、そのピーク点の周波数は、卓越振動数でないと判定する。そして、第2振動数fl~第1振動数fwの範囲に、特定できる卓越振動数が1つもないと判定した場合(ステップS2-1において「NO」の場合)には、解析部21は、壁杭10は健全性が高いと判断する(ステップS2-2)。
一方、1つ以上の卓越振動数fcを特定したと判定した場合(ステップS2-1において「YES」の場合)には、解析部21は、壁杭10は健全性が低いと判断する(ステップS2-3)。
【0038】
<スペクトル解析処理の具体例>
図4には、3次元有限要素法の解析モデルを使用したシミュレーションによって取得した反射性状(測定波形Wf(t))を示す。図4(a)は、ひび割れのない健全な壁杭10における反射性状、図4(b)は、上端面から1mの位置にひび割れがある壁杭10における反射性状、図4(c)は、上端面から3mの位置にひび割れがある壁杭10における反射性状である。
また、図7は、図4の反射性状を、フーリエ変換し、横軸を周波数、縦軸を振幅としたスペクトル解析のグラフを示している。図7(a)は、図4(a)に示す測定波形Wf(t)をフーリエ変換した、ひび割れのない健全な壁杭のグラフである。図7(b)及び図7(c)は、図4(b)及び図4(c)に示す測定波形Wf(t)を、それぞれフーリエ変換したグラフである。図4(b)及び図4(c)は、上端面から1m及び3mのそれぞれの位置に、ひび割れを設けた壁杭のスペクトル解析のグラフである。
【0039】
図7(a)に示すように、第2振動数fl~第1振動数fwにおけるピーク点のうち、ピーク高さをバンド幅で除算した指標値が判定指標値Hs以上で、かつピーク高さが判定振幅値As以上となるピーク点は、存在していない。このため、このスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、健全性が高いと評価することができる。
【0040】
図7(b)に示すように、第2振動数fl~第1振動数fwにおけるピーク点のうち、ピーク高さをバンド幅で除算した指標値が判定指標値Hs以上で、かつピーク高さが判定振幅値As以上となるピーク点は、1つある。このため、このピーク点の周波数を卓越振動数fcとして特定する。また、図7(c)においては、第2振動数fl~第1振動数fwにおけるピーク点のうち、ピーク高さをバンド幅で割った指標値が判定指標値Hs以上で、かつピーク高さが判定振幅値As以上となるピーク点は、2つある。
従って、図7(b)及び図7(c)のスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、第2振動数flから第1振動数fwまでの間において卓越振動数fcが存在し、この健全性が低いと評価することができる。
壁杭10にひび割れがある場合には、このひび割れ部分で弾性波が反射するため、第2振動数flより高く第1振動数fwより低い周波数が大きくなり、卓越振動数fcとして出現すると考えられる。このため、図7(b)及び図7(c)に示すスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭10は、ひび割れ等の可能性があるため、健全性が低いと判定することができる。
【0041】
<ローパス波形に基づく健全性判定処理>
次に、図8(b)を用いて、ローパス波形に基づく健全性判定処理の詳細について説明する。
【0042】
図8(b)に示すように、解析装置20の解析部21は、ローパス波形において、杭先端の反射の形状が明確であるか否かの判定処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、まず、解析部21は、壁杭10の長さL1と弾性波速度Vpとから、杭先端における反射検出時刻を特定する。そして、解析部21は、特定した反射検出時刻における第1ピーク値の基準化速度がマイナス値であり、杭先端の反射波形が打撃波形と同じ下向きであるか否かを判定する。ここで、解析部21は、反射検出時刻のピーク値(基準化速度)が、打撃波形と同じ下向き(マイナス値)であると判定した場合には、杭先端の反射の形状が明確と判定する。
【0043】
ここで、杭先端の反射の形状が明確であると判定した場合(ステップS3-1において「YES」の場合)には、解析部21は、この壁杭10は健全性が高いと判定する(ステップS3-2)。
【0044】
一方、杭先端の反射の形状が明確ではないと判定した場合(ステップS3-1において「NO」の場合)には、解析部21は、この壁杭10は健全性が低いと判定する(ステップS3-3)。
【0045】
<ローパス波形の具体例>
図9には、生成したローパス波形を示す。図9(a)~(c)のそれぞれに示す波形は、それぞれ図7(a)~(c)のスペクトル波形において1000Hz以上の周波数を取り除き、逆フーリエ変換して生成したローパス波形である。
【0046】
図9(a)に示すように、ひび割れのない壁杭についてのローパス波形では、反射検出時刻(約0.004秒)おける波形部分が、打撃波形と同じ下向き(マイナス値)形状であるため、杭先端の反射が明確である。このため、この波形の元となった測定波形Wf(t)を測定した壁杭10は、ひび割れがなく健全性が高いと判定することができる。
【0047】
また、図9(b)及び図9(c)に示すひび割れがある壁杭についてのローパス波形において、杭先端の反射検出時刻(約0.004秒)における波形部分が、打撃波形と異なる上向き(プラス値)の形状であるため、杭先端の反射が明確でない。このため、この波形の元となった測定波形Wf(t)を測定した壁杭10は、ひび割れ等があり、健全性が低いと判定することができる。
【0048】
図10には、除去対象周波数を高く設定したローパス波形を示す。図10(a)~(c)は、それぞれ図7(a)~(c)におけるスペクトル解析のうち、第1振動数fwより高い2000Hz以上の周波数を取り除いた周波数の振幅を逆フーリエ変換して生成した波形である。この場合、ひび割れのない健全な壁杭10の測定波形Wf(t)に基づく図10(a)に示すローパス波形も、ひび割れのある壁杭10の測定波形Wf(t)に基づく図10(b)~(c)に示すローパス波形も、第1振動数fwが残存し、ひび割れ等による反射と混在し、壁杭10の健全の判定は難しい。
【0049】
<幅を変更した壁杭についてのスペクトル解析とローパス波形>
図11図13には、幅を4mとした壁杭を、3次元有限要素法の解析モデルを使用したシミュレーションによって取得した測定波形Wf(t)、これに基づくスペクトル解析及びローパス波形を示している。この場合の壁杭の長さL1と厚さT1は、上述した壁杭10と同じく、それぞれ7mと1mである。
【0050】
図11(a)は、ひび割れのない健全な壁杭について取得した反射性状(測定波形Wf(t))である。図11(b)及び図11(c)は、上端面から1m及び3mのそれぞれの位置に、ひび割れを設けた壁杭について取得した反射性状である。
図12(a)~図12(c)は、図11(a)~図11(c)の反射性状をフーリエ変換したスペクトル解析のグラフである。このため、第1振動数fwは、基準第1振動数(1250(=5000/4)Hz)に基づいて特定される周波数帯(約1050~1450Hz)における最大振幅の周波数である。また、第2振動数flは、壁杭10の長さL1は7mであるので、第2振動数flは、周波数帯(157~557Hz)における最大振幅の周波数を、第2振動数flとして特定する。
図12(a)においては、第2振動数fl~第1振動数fwにおいては、卓越振動数fcが存在していない。このため、このスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、健全性が高いと評価することができる。
【0051】
また、図12(b)においては、第2振動数fl~第1振動数fwにおいては、1つの卓越振動数fcが存在し、このスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、健全性が低いと評価することができる。
【0052】
また、図12(c)においては、第2振動数fl~第1振動数fwにおいては、1つの卓越振動数fcが存在し、このスペクトル解析の測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、健全性が低いと評価することができる。
【0053】
図13には、幅を4mとした壁杭の測定波形Wf(t)から生成したローパス波形を示す。具体的には、図13(a)~(c)のそれぞれに示す波形は、それぞれ図12(a)~(c)のスペクトル解析において1000Hz以上の周波数を取り除き、逆フーリエ変換して生成したローパス波形である。
【0054】
図13(a)に示すローパス波形では、反射検出時刻(約0.004秒)おける波形部分が、打撃波形と同じ下向き(マイナス値)形状であるため、杭先端の反射が明確である。このため、この波形の元となった測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、ひび割れがなく健全性が高いと判定することができる。
【0055】
また、図13(b)及び図13(c)に示すひび割れがある壁杭についてのローパス波形において、杭先端の反射検出時刻(約0.004秒)における部分は、打撃波形と同じ向きの山形であると言い難く、杭先端の反射が明確でない。このため、この波形の元となった測定波形Wf(t)を測定した壁杭は、ひび割れ等があり、健全性が低いと判定することができる。
【0056】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、スペクトル解析において、壁杭10の幅W1に基づく第1振動数fwより低い周波数で、壁杭10の長さL1に基づく第2振動数fl以外の卓越振動数の有無を検出して、壁杭10の健全性を判定する。これにより、壁杭10の杭頭部を打撃して発生させた弾性波の反射性状(波形)を用いて、効率的に、壁杭10の健全性を判定することができる。
【0057】
(2)本実施形態では、ローパスフィルタにより、少なくとも第1振動数fw以上の周波数を除去して生成したローパス波形において、杭先端の反射の形状が明確か否かによって、壁杭10の健全性を判定する。これにより、壁杭10の杭頭部を打撃して発生させた弾性波の反射性状(波形)を用いて、壁杭10の健全性を効率的に判定することができる。
【0058】
(3)本実施形態では、ローパス波形において、壁杭10の弾性波速度Vpを用いて、壁杭10の先端からの反射による波形の先端検出時刻を特定し、この先端検出時刻における波形が、打撃波形と同じ下向き形状の場合に、壁杭10は健全であると判定する。これにより、生成したローパス波形を用いて、壁杭10の健全性を判定することができる。
【0059】
(4)本実施形態では、スペクトル解析処理(ステップS1-2)では、フーリエ変換を用いる。更に、ローパス波形の生成処理(ステップS1-5)では、逆フーリエ変換を用いる。これにより、測定波形Wf(t)から、壁杭10の幅W1に基づく高周波成分を除いたローパス波形を生成することができる。そして、従来の丸杭における健全性判定に用いる同様な波形を用いて、壁杭10の健全性を判定することができる。
(5)本実施形態では、第1振動数fw(第2振動数fl)を、弾性波速度Vpを用いて算出した基準第1振動数(基準第2振動数)と許容範囲から、第1振動数(第2振動数)の周波数帯を特定し、この周波数帯における最大振幅(ピーク点)の周波数として特定する。これにより、反射が複雑になる壁杭において、誤差を考慮して、第1振動数fw(第2振動数fl)を特定することができる。
【0060】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、解析装置20が、評価処理において健全性判定処理(ステップS1-4,S1-6)を実行した。これに代えて、解析装置20が、これらの判定処理を省略して、スペクトル解析による振幅-周波数グラフや、ローパス波形を出力画面に表示して、これらを閲覧した管理者(人)が、壁杭10の健全性を判定してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、1000Hz以上の高周波成分を除去対象周波数として除去したローパス波形を生成した。この除去対称周波数は、管理者の指示に応じて、適宜、設定してもよい。例えば、スペクトル解析処理において、出力画面に振幅-周波数グラフを表示し、この画面において、管理者によって指定された除去対称周波数と、ローパス波形生成処理の実行指示を取得した場合、解析装置が、ローパス波形を生成し、このローパス波形を出力部25に出力する。これにより、判定対象の壁杭10の状況に応じて、判定し易いローパス波形を生成することができる。
【0062】
・上記実施形態においては、ローパス波形に基づく健全性判定処理(ステップS1-6)は、杭先端の反射の形状が明確か否かにより、壁杭の健全性を判定した。生成したローパス波形に基づく健全性判定は、杭先端の反射の形状が明確か否かによって判定する場合に限られず、従来の丸杭におけるIT試験の判定方法を用いてもよい。例えば、特許文献1に示す判定方法を、生成したローパス波形に適用して、壁杭の健全性を判定してもよい。具体的には、ローパス波形における杭頭部、ひび割れ部、壁杭の先端部に対応する基準化速度値a,b,cを特定し、振幅比b/a,b/cを算出する。そして、杭頭部からひび割れ部までの距離Lbと杭頭部ら先端部までの距離Lcとを算出し、振幅比b/a,b/cを用いて、振幅比B/A(=(b/a)×(Lb/Lc))及び振幅比B/C(=(b/c)×(Lb/Lc))を算出する。更に、この振幅比B/Aと振幅比B/Cを、健全性評価マップにプロットする。このマップは、横軸が振幅比B/Aで、縦軸が振幅比B/Cのマップである。プロットした位置が、マップの健全領域内であれば健全であると判定する。
【0063】
・上記実施形態においては、ローパス波形を生成する測定波形Wf(t)の横軸として、時間(sec)を用いた。ローパス波形を生成する測定波形Wf(t)の横軸は、時間に限定されず、深さ(杭頭部からの距離)であってもよい。
また、上記実施形態においては、測定波形Wf(t)の縦軸の基準化速度として、応答評価点における加速度を、基準評価点における加速度で除算した値を用いた。基準化速度の算出方法は、これに限定されず、例えば、応答評価点における加速度を、ハンマーの打撃地点における加速度で除算した値を用いてもよい。
【0064】
・上記実施形態においては、スペクトル解析において卓越振動数fcを、第2振動数から第1振動数fwまでの間におけるピーク点のうち、ピーク高さをバンド幅で除算した指標値が判定指標値Hs以上で、ピーク高さが判定振幅値As以上となるピーク点の周波数として特定した。卓越振動数は、この特定方法に限らず、卓越振動数fcを、第2振動数flの振幅及び第1振動数fwの振幅より大きい周波数として特定してもよい。
また、下記の方法により特定してもよい。
図14に示すように、ピーク値arに対して、第1判定振幅値a1(例えばa1=0.5×ar)、第2判定振幅値a2(例えばa2=0.7×ar)を定める。そして、ピークを含む曲線(ピーク曲線)において、第1判定振幅値a1以上のピークが単一であり、第2判定振幅値a2におけるバンド幅BW2が幅基準値Bsよりも小さい場合には、ピーク曲線のピークにおける周波数を卓越振動数fcと判定する。このような卓越振動数fcを含むピーク曲線においては、下記式(1)が成立する。
((P1+P2)/P1×P2)×fc=2-4h …(1)
ここで、振動数P1,P2は、第2判定振幅値a2における振動数、hは減衰定数である。なお、減衰定数hを0.1以下と設定する。
【0065】
・上記実施形態においては、ハンマー11によって打撃して壁杭10に弾性波を発生させた。壁杭10に弾性波を発生させる方法を、ハンマー11による打撃に限らず、例えば、鉄球を落下させて壁杭10を打撃し、壁杭10に弾性波を発生させてもよい。
【0066】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(α)壁杭の杭頭部を打撃して発生させた弾性波の反射性状を、前記杭頭部で測定し、
前記反射性状について、前記壁杭の水平方向の長さに基づく第1振動数以上の周波数を少なくとも除去した波形を生成し、この波形における、前記壁杭の先端の反射波形が出現する時刻における形状に基づいて、前記壁杭の健全性を評価することを特徴とする杭の健全性評価方法。
従って、この(α)に記載の発明によれば、従来の丸杭による健全性判定と同様にして健全性を判定することができる。
【0067】
(β)前記壁杭の弾性波速度を用いて、前記壁杭の先端の前記反射波形が出現する時刻における波形が、前記打撃による打撃波形と同じ向きの山形形状であると判定された場合には、前記壁杭の健全性が高いと判定することを特徴とする請求項2又は前記(α)に記載の杭の健全性評価方法。
従って、この(α)に記載の発明によれば、壁杭の先端の反射波形を特定することができる。
【0068】
(γ)前記卓越振動数は、第2振動数から第1振動数までの間におけるピーク点を特定し、特定したピーク点のピーク高さをバンド幅で割った指標値が判定指標値以上で、ピーク高さが判定振幅値以上となるピーク点の周波数であることを特徴とする請求項1、3又は上記(β)の何れか1つに記載の杭の健全性評価方法。
従って、この(γ)に記載の発明によれば、壁杭の健全性を効率的に判定することができる。
【符号の説明】
【0069】
fc…卓越振動数、fl…第2振動数、fw…第1振動数、L1…長さ、Lb,Lc…距離、T1…厚さ、Vp…弾性波速度、W1…幅、Wf…測定波形、10…壁杭、11…ハンマー、12…加速度計、15…測定装置、20…解析装置、21…解析部、22…波形生成部、25…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15