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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220802BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B41J2/175 301
B41J2/01 451
B41J2/175 141
B41J2/175 133
B41J2/175 305
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018112050
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214160
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】新井 篤
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160881(JP,A)
【文献】特開2015-051595(JP,A)
【文献】特開2018-069533(JP,A)
【文献】特開2015-229289(JP,A)
【文献】米国特許第06024429(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置において、
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンク内のインクを攪拌する攪拌部と、
インクタンクの重量を検知する重量センサーと、
前記攪拌部の動作を制御し、さらに、前記重量センサーの検出結果を受ける制御部と、を備え、
前記制御部は、前記インクタンクにおける静置時の重量計測値と、攪拌時の重量計測値の差分を求め、前記差分に基づいて攪拌時の重量計測値を補正して推定重量を求めることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記推定重量に基づいてインク残量を出力する請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、攪拌直前に静置時の重量計測値を取得し、攪拌開始後に、攪拌時の重量計測値を取得することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記静置時は、攪拌停止時およびインクを所定時間内に均一に攪拌できない速度の攪拌時を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記静置時の重量計測値を基準値、攪拌開始時の重量計測値を攪拌重量とし、基準値-攪拌重量を校正重量とし、攪拌時の重量計測値+校正重量により前記推定重量を算出することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記静置時の重量計測値を所定時間内における平均値により求めることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、攪拌開始時の重量計測値を、攪拌開始後、所定時間を除外して求めることを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、インクタンクへのインク補給があると、静置時の重量計測値を新たに求め、新たに求められた重量計測値を前記基準値に反映することを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記インクタンク内の攪拌動作を、所定のタイミングで実施する制御を行い、指定されたタイミングで静置状態にして重量計測を実施し、攪拌時の重量計測値との差分補正を行う制御を行うことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
指示されたタイミングは、一定の時間、プリント数、インクの消費量または送液量、オペレータからの指示、インク補給動作のいずれか1つまたは複数である請求項9記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
重量計測値は、重量センサーにおける出力値の複数回分の中央値を使用し、攪拌時の動作変動時は、一定時間と中央値算出時間を加算した時間以降の値を出力することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記一定時間は、タンク内のインク変動状態が安定する時間である請求項11記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記インクがゲル状のインクである請求項1~12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記攪拌部は、攪拌力を変更する機能を有する請求項1~13のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記攪拌力の変更は、攪拌速度と攪拌部の翼条件の変更により行われる請求項14記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記攪拌部の翼条件が、高さ、位置および形状の一つ以上の変更により行われる請求項15記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
攪拌時と静置時における重量測定値の差分が、インク残量検知で許容される範囲に収まるように攪拌力をコントロールする制御と機能を有する請求項1~16のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルからインクを吐出させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルからインクを吐出させて媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置は、種々の分野で利用されており、例えば、工業用途に利用されるものの中には、ノズルへインクを供給するインクタンクに補充インクを随時追加しながら利用可能なものがある。
このようなインクジェット記録装置に用いられるインクには、長時間放置しておくことにより成分が分離するものがある。したがって、このようなインクには、そのままでは、適切な比率でノズルに供給されないという問題がある。
これに対し、インクタンクにおいて一定間隔で当該インクタク内のインクの攪拌を行うことで、ノズルに供給するインクが分離されないように保つ技術が知られている。
【0003】
ところで、インクジェット記録装置では、インクタンクのインクの量が少なくなると、インクの供給不良などが生じるため、適切な時期にインクを補給することが必要になる。このため、従来のインクジェット記録装置では、インクタンクのインク量を検知する構成を備えている。
インクタンクのインク量の低下を検出する方法としては、インクタンク内に2個の電極を備え、電極間に電流を供給してそれら電極間の電気抵抗を検出し、それに応じてインク量が所定量以下であることを判別する方式(例えば特許文献1)や、液面高さ測定、重量測定の方式(例えば特許文献2)などが知られている。
しかし、電極を用いた方式はインク量の検出誤差が生じやすく、液面高さ測定では、攪拌時に液面高さが変動するため正確な測定が困難と考えられる。重量測定では、ロードセルなどを用いることができ、ロードセルは、インクに接触せずに測定が可能であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-160881号公報
【文献】特開2015-051595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インク量の計測に重量センサーを用いることで、ゲル状のインクがインクタンク内部に不均一に注入され、また、攪拌スクリューが動作している状況でも的確にインク量の増加を検出することができると考えられている。
しかし、攪拌動作時に重量計測値が変動することが確認されている。これは攪拌対流により、タンク内でインクがアンバランスな状態で暴れて、タンク壁面がインクの運動エネルギーを受けて振動をすることで、垂直成分以外の荷重がかかり、それが誤差要因として重量センサーの測定値を狂わせるため、重量検知が変化すると考えられる。
特に、大判サイズで連続プリントを行うプリンタでは大量のインクを貯蔵するタンクが必要なことであり、タンク内のインク残量の幅が拡大している。この拡大したインク量に対応した攪拌機構では、攪拌能力をより強化する目的で、インク流動を強力にするため、重量検知の変動が生じ易くなる。
残量検知を正確に行うことで、残プリント可能枚数を正確に把握できるので、作業でのインク切れ等の障害を抑えられ、インクの在庫管理も適正に行って残量検知を正確に行うことができる手段が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、インクタンクの重量計測精度を改善して攪拌時のインク残量を的確に予測することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のインクジェット記録装置のうち、第1の形態は、ノズルからインクを吐出させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置において、
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンク内のインクを攪拌する攪拌部と、
インクタンクの重量を検知する重量センサーと、
前記攪拌部の動作を制御し、さらに、前記重量センサーの検出結果を受ける制御部と、を備え、
前記制御部は、前記インクタンクにおける静置時の重量計測値と、攪拌時の重量計測値の差分を求め、前記差分に基づいて攪拌時の重量計測値を補正して推定重量を求めることを特徴とする。
【0008】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、前記推定重量に基づいてインク残量を出力する。
【0009】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、攪拌直前に静置時の重量計測値を取得し、攪拌開始後に、攪拌時の重量計測値を取得することを特徴とする。
【0010】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記静置時は、攪拌停止時およびインクを所定時間内に均一に攪拌できない速度の攪拌時を含むことを特徴とする。
【0011】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、前記静置時の重量計測値を基準値、攪拌開始時の重量計測値を攪拌重量とし、基準値-攪拌重量を校正重量とし、攪拌時の重量計測値+校正重量により前記推定重量を算出することを特徴とする。
【0012】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、前記静置時の重量計測値を所定時間内における平均値により求めることを特徴とする。
【0013】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、攪拌開始時の重量計測値を、攪拌開始後、所定時間を除外して求めることを特徴とする。
【0014】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、インクタンクへのインク補給があると、静置時の重量計測値を新たに求め、新たに求められた重量計測値を前記基準値に反映することを特徴とする。
【0015】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記制御部は、前記インクタンク内の攪拌動作を、所定のタイミングで実施する制御を行い、指定されたタイミングで静置状態にして重量計測を実施し、攪拌時の重量計測値との差分補正を行う制御を行うことを特徴とする。
【0016】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、指示されたタイミングは、一定の時間、プリント数、インクの消費量または送液量、オペレータからの指示、インク補給動作のいずれか1つまたは複数である。
【0017】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、重量計測値は、重量センサーにおける出力値の複数回分の中央値を使用し、攪拌時の動作変動時は、一定時間と中央値算出時間を加算した時間以降の値を出力することを特徴とする。
【0018】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記一定時間は、タンク内のインク変動状態が安定する時間である。
【0021】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記インクがゲル状のインクである。
【0022】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記攪拌部は、攪拌力を変更する機能を有する。
【0023】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記攪拌力の変更は、攪拌速度と攪拌部の翼条件の変更により行われる。
【0024】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、前記攪拌部の翼条件が、高さ、位置および形状の一つ以上の変更により行われる。
【0025】
他の形態のインクジェット記録装置の発明は、他の形態の発明において、攪拌時と静置時における重量測定値の差分が、インク残量検知で許容される範囲に収まるように攪拌力をコントロールする制御と機能を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インクタンクの重量計測精度を改善して攪拌時のインク残量を的確に予測することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の全体構成を示す側面図である。
図2】同じく、インク供給部を側面から見た模式図である。
図3】同じく、インクジェット記録装置の制御ブロックを示す図である。
図4】同じく、インクの推定重量を求める状態を説明する図である。
図5】従来の重量センサーによって、インクタンクの重力を検知している結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
インクジェット記録装置1は、図1に示すように、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40と、インク供給部50(図2参照)などを備える。インクジェット記録装置1では、制御部40の制御に基づいて、給紙部10から画像形成部20に搬送された記録媒体Pに対して、インク供給部50から供給されたインクにより画像形成部20で画像を形成した後、当該記録媒体Pを排紙部30に排出する。
【0029】
給紙部10は、画像形成が行われる記録媒体Pを保持し、画像形成前に画像形成部20に供給する。給紙部10は、給紙トレイ11と、搬送部12とを有する。
給紙トレイ11は、一又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレイ11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するよう設けられており、最上の記録媒体Pが搬送部12により搬送される位置で保持される。なお、記録媒体Pとしては用紙を使用することができるが、記録媒体の種別は用紙に限定されるものではなく、布やプラスチックなどであってもよい。
【0030】
搬送部12は、輪状のベルト123を複数(例えば、2本)のローラー121、122により回転駆動してベルト123上の記録媒体Pを搬送する搬送機構、及び給紙トレイ11に載置された記録媒体Pのうち最上のものをベルト123に受け渡す供給部を有する。搬送部12は、供給部によりベルト123に受け渡された記録媒体Pをベルト123の回転動作に伴って搬送する。
【0031】
画像形成部20は、記録媒体P上にインクを吐出させて画像を形成する。画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、用紙加熱部23と、ヘッドユニット24と、照射部25と、デリバリー部26と、インク室と、インク加熱部28などを有する。
【0032】
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転に伴って当該記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24及び照射部25と対向し、搬送される記録媒体Pに対して画像形成に係る処理を行う。
【0033】
受け渡しユニット22は、給紙部10の搬送部12と画像形成ドラム21との間の位置に設けられ、搬送部12により搬送された記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。受け渡しユニット22は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持するスイングアーム部221や、スイングアーム部221に担持された記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す円筒状の受け渡しドラム222等を有し、搬送部12上の記録媒体Pをスイングアーム部221により取り上げて受け渡しドラム222に受け渡すことで記録媒体Pを画像形成ドラム21の外周面に沿う向きに誘導して画像形成ドラム21に受け渡す。
【0034】
用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pを加熱する。用紙加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、画像形成ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてヘッドユニット24の上流側に設けられる。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持されて用紙加熱部23の近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるようにその発熱を制御部40により制御される。
【0035】
ヘッドユニット24は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。ヘッドユニット24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色について個別に設けられている。図1では、画像形成ドラム21の回転に伴い搬送される記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。
本実施形態のヘッドユニット24は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(幅方向)について記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で設けられている。即ち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。ヘッドユニット24は、複数の記録ヘッドを配列してラインヘッドを構成することができる。
【0036】
照射部25は、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させるためのエネルギー線を照射する。照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を有し、当該蛍光管を発光させて紫外線といったエネルギー線を照射する。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、画像形成ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてヘッドユニット24の下流側に設けられる。照射部25は、画像形成ドラム21に担持されてインクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射して当該エネルギー線の作用により記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させる。
【0037】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオード等が挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば、発光ダイオード等)がより望ましい。また、エネルギー線は紫外線に限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良く、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。
【0038】
デリバリー部26は、照射部25によりエネルギー線が照射された記録媒体Pを画像形成ドラム21から排紙部30に搬送する。デリバリー部26は、輪状のベルト263を複数(例えば、2本)のローラー261、262により回転駆動してベルト263上の記録媒体Pを搬送する搬送機構や、記録媒体Pを画像形成ドラム21から当該搬送機構に受け渡す円筒状の受け渡しドラム264等を有する。デリバリー部26は、受け渡しドラム264によりベルト263に受け渡された記録媒体Pをベルト263により搬送して排紙部30に送り出す。
【0039】
インク室は、インク供給部50のインクタンク51から汲み出されたインクを貯留する。一又は複数のインク室に貯留されたインクは、インク流路を介して各記録ヘッドの複数のノズルにそれぞれ供給される。インク室には、フロートセンサーが設けられ、当該フロートセンサーによる液面位置の検出データに基づいて制御部40がポンプを動作させることにより所定量のインクが貯留されるようになっている。
【0040】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pを格納する。排紙部30は、板状の排紙トレイ31などを有し、この排紙トレイ31上に画像形成後の記録媒体Pを載置する。
【0041】
インク供給部50は、画像形成部20のヘッドユニット24にインクを供給し、各色のインクをヘッドユニット24のノズルから吐出可能とする。
インク供給部50は、インクタンク51と、重量センサー52と、ポンプ53と、供給管54と、筐体55などを備える。
インクタンク51は、画像形成に用いられる各色のインクをそれぞれ貯留する容器である。このインクタンク51からポンプ53により汲み出されたインクがヘッドユニット24に送られる。また、このインクタンク51は、供給管54を介してインクの追加補充が可能となっている。
【0042】
本実施形態のインクジェット記録装置1で用いられるインクは、所定の温度、例えば、40度~100度程度の相変化温度を有し、この相変化温度以上に加熱上昇されることで一様に液化(ゾル化)する。一方、このインクは、通常の室温程度(0度~30度)を含む当該所定の温度以下ではゲル化する。このインクは、ゲル化した状態で徐々にインク成分と他の成分との分離が進むが、一度攪拌が行われると分離がより速やかに(例えば、一日程度のうちに)進行するようになる。このインクの組成及び製造方法については、後に詳述する。
【0043】
インクタンク51は、図2に示すように、攪拌スクリュー51aと回転モーター51bとを有する攪拌部を備え、回転モーター51bにより攪拌スクリュー51aが回転されることでインクタンク51内のインクが攪拌されて、各成分が混合される。このインクタンク51は、例えば、30リットルのインクが収容可能となっている。
【0044】
重量センサー52(計測部)は、インクタンク51の下方に設けられ、インクタンク51の重量を計測して所定のサンプリングレートでデジタル変換した後、計測値データを制御部40に出力する。
ポンプは、インクタンク51からインクを汲み出して画像形成部20に送る。ポンプの汲み出すインクは、ゲル状態のまま各成分が混合されたものであり、当該ゲル状インクを汲み出すのに十分な揚力を有する。
【0045】
供給管54は、インクタンク51に補充されるインクの注入口である。この供給管54は、通常では、その上部を蓋材などによって閉鎖しておくことができるとともに、インクの補充の際には、蓋材を取り外して外付けのインクパック60をその上部に安定に取り付けることが可能となっている。或いは、別個に蓋材を設けず、インクパック60の着脱に応じて供給管54が開閉する構造であっても良い。供給管54の開口部分には、インクパック60の着脱を検知する着脱センサーが設けられている。
【0046】
インクパック60(注入容器)内のインクは、ゲル化した後に一度攪拌、せん断されたものである。これによりインクパック60から供給管54を介してインクタンク51にインクを注入し易くしている一方、インクパック60の内部でインク成分が分離し易くなっている。
ゲル化した状態のインクは、供給管54に取り付けられたインクパック60内から重力だけではインクタンク51に十分に流入しない。インクパック60は、可変形状の容器、又はこのような可変形状の容器が内部に収められた箱体であり、ユーザーの手や押圧器具(例えば、空気圧)を用いて容器外部から力を加えることで、インクパック60の容器内部に残留するゲル状のインクを搾出することができるようになっている。
【0047】
筐体55は、インク供給部50の各部を固定保持する。この筐体55は、下部に複数の車輪及び伸縮又は上下動可能な支持脚を有しており、必要に応じて支持脚の長さを調整して、車輪により移動させたり、支持脚によって所定の位置に固定配置させたりすることが可能となっている。
【0048】
次に、本実施形態のインク供給部50により供給されるインクについて説明する。
本実施形態で用いられるインクは、紫外線(UV)硬化型のインクである。このUV硬化型インクは、UVが照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化する。
【0049】
このインクは、例えば、粘度が100mPa・s以上のゲル状態と、粘度が100mPa・s以下(主に10mPa・s以下)の液体(ゾル)状態との間で相変化する。例えば、温度上昇時において、インクの温度が60℃以上の場合にインクの粘度が100mPa・sを下回る。一方、温度下降時には、インクの温度が45℃未満に低下した場合にインクの粘度が100mPa・sを上回る。即ち、このインクの例では、インクの温度が60℃(T1:第1温度)以上の場合には、温度の上昇又は下降に係らず、粘度が100mPa・sを下回って液状となり、45℃(T2:第2温度)未満の場合には、温度の上昇又は下降に係らず、粘度が100mPa・sを上回ってゲル状となる。
なお、上記インクは例であり、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
制御部40は、図3に示すように、インクジェット記録装置1の各部の動作を制御し、全体動作を統括する。制御部40は、CPU401(Central Processing Unit)、ROM402(Read Only Memory)、RAM403(Random Access Memory)などを備える。制御部40では、CPU401によりROM402から読み出されたプログラムがRAM403上で実行されて、種々の制御処理が実行される。
【0051】
インクジェット記録装置1では、制御部40がバス49を介して搬送駆動部41、ヘッド駆動部42、通信部43、操作表示部44、用紙加熱部23、インク加熱部28、照射部25、ポンプ53、ポンプ27b、フロートセンサー27a、回転モーター51b、重量センサー52、及び着脱センサー54aなどと接続されている。
【0052】
制御部40において、CPU401は、ROM402等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行し、実行された処理内容に応じてインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。RAM403は、CPU401により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM402は、CPU401等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0053】
搬送駆動部41は、制御部40からの制御信号に基づいて給紙部10、画像形成部20の画像形成ドラム21、受け渡しユニット22やデリバリー部26、及び排紙部30を動作させて適宜なタイミング及び速さで記録媒体Pの搬送を行わせる。
【0054】
ヘッド駆動部42は、制御部40からの制御信号に基づいてヘッドユニット24を動作させて、適切なタイミングで複数のノズルからインクを吐出させることで記録媒体P上に画像を形成させる。
制御部40は、搬送駆動部41、ヘッド駆動部42、用紙加熱部23及び照射部25に制御信号を出力してそれぞれ適宜なタイミングで動作させて、記録媒体Pを適切な条件でヘッドユニット24の複数のノズルと対向させ、また、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させる。
【0055】
通信部43は、インクジェット記録装置1と外部機器との間の通信を制御する。外部機器から送信される印刷ジョブや各種制御信号は、通信部43を介して受信されて制御部40に送られる。制御部40は、取得された印刷ジョブに応じて画像形成のための各種処理を行う。なお、画像データの解析やラスター化などの処理は、制御部40とは別個に画像処理用のCPUやメモリーを設けて処理を行わせることとしても良い。
【0056】
操作表示部44は、例えば、液晶画面とタッチセンサーとを有するタッチパネルなどである。制御部40は、表示制御信号を出力して液晶画面にステータスやメニューなどを表示させる。タッチセンサーは、外部からの入力操作を受け付けて入力信号を制御部40に出力する。制御部40は、当該入力信号に基づいて各種処理を行う。操作表示部44は、表示部として機能する。
【0057】
制御部40は、フロートセンサー27aにより計測されたインク室のインク量に基づいて、ポンプ53を動作させて、適切な量のインクをインク流路に供給するとともに、インク流路に供給されたインクを液状に保つようにインク加熱部28を動作させる。
また、制御部40は、定期的に、及び重量センサー52や着脱センサー54aからの入力信号に基づいて、回転モーター51bを動作させてインクタンク51のインクを攪拌し、各成分が混合した状態を保つ。
【0058】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるインクの攪拌動作について説明する。
本実施形態のインクジェット記録装置1では、制御部40は、所定周波数のクロック信号を計数して所定の間隔、例えば1時間間隔で回転モーター51bを所定の期間動作させてインクの攪拌を行わせるとともに、インクパック60の着脱センサー54aの信号に基づいて、インクパック60の装着時(p)から、インクパック60を取り外したタイミング(q)の後、所定の期間(t1、例えば、3分間)経過するまでの間、インクの攪拌を行わせる。この所定の期間t1としては、短時間であっても攪拌の効果は現れるが、分離した成分が十分に混合される時間であることが好ましい。なお、静置時間や攪拌動作を行うタイミングは適宜定めることができ、変更可能とするものであってもよい。また、静置状態は、指定されたタイミングで行うことができる。例えば、一定の時間、プリント数、インクの消費量または送液量、オペレータからの指示、インク補給動作のいずれか1つ以上に従って行うことができる。
【0059】
次に、従来装置において、インクタンクにおける静置時と、攪拌時の重量測定値を図5に示す。なお、インク供給ニットにおけるタンク内容量の実測データを図5に示している。
図5の上段の図に示すように、約14.9kgのインク残量では、プロペラ近傍において、攪拌時から静置時に至る際には、平均値のズレが約200gになっている。その詳細は、図5の下段に示している。
また、図5の中段の上側の図に示すように、約7.5kgのインク残量では、静置時から攪拌時に至る際には、平均値のズレが約130gであり、図5の中段の下側の図に示すように、約7.2kgのインク残量では、静置時から攪拌時に至る際に平均値のズレが約130gになっている。
【0060】
上記の3条件とも、攪拌停止状態と、攪拌中の重量値に差がある。
また、その差の量は、3条件とも異なっているため、一律に補正値を決めることは困難である。
特に、第3グラフの状態から、もう少しインクが減り、7035g(補給下限)になると、本体側の印刷動作を停止させる。しかし本体停止後に、攪拌を停止すると、インク残量は7165g程度と予想され、まだ130g補給可能な状態である。
そこで、インク残量が変わっても、インク重量を正確に測定できることが望まれる。
その際に、部品追加によるコストアップをせず、制御のみで解決することが望ましい。
【0061】
本実施形態によってインクの推定重量を得る手順を説明する。
なお、インクの攪拌は、補給中はずっと、補給していない通常時は30分毎に3分間攪拌を行っている。攪拌動作はモーターの制御信号と連動して情報を得る。インク重量は、ロードセルの重量センサーを使用して測定している。
バラツキ変動を緩和する為、測定値は出力値50ms毎×41回(2秒間)の中央値を0.1秒毎に出力する。なお、変動を緩和するための手法は特に限定されるものではなく、他の手法を用いるものであってもよい。
本体への送液補給を行ったかは、本体の送液ポンプの動作制御より情報を得る。
【0062】
インク重量を正確に測定する目的で、下記の動作制御を行う
(1)攪拌停止時の重量と比較
・攪拌中重量と静置時重量の差分を、検知重量に下駄をはかせて、制御値に使用する。
(a)攪拌開始前、静置状態の5秒間分の「2秒間中央値=出力値」の平均値を求める。それを『基準重量』にする
(b)攪拌開始直後、5秒間はマスクし、5秒後より『2秒間中央値』を出力する。
(c)5秒後の出力値について1秒分の平均値を求め、『攪拌重量』とする
(d)『校正重量』=『基準重量』-『攪拌重量』で求める
(e)『推定重量』=「出力値」+『校正重量』とし、制御に使用する。
攪拌中にユーザーの補給、本体へ送液があった場合は、静置からの下駄に変動分を加算する。
(f)重量変動が予想される場合は、校正を行う
<本体へ送液補給>本体への送液制御を行った場合
<ユーザーによるインク補給>タンクへの補給を検知し、インク量が増えた場合。
(「出力値」を5秒毎に平均値をとり、その平均値が攪拌開始時より200g以上増えた)
(g)連続攪拌時間が1分以上経過後、攪拌を停止する。
(h)停止後、5秒で波が収まる。その後7~10秒区間の「2秒中央値」の平均を求める。
その平均値を『基準重量』に上書きする。
(i)攪拌を再開し、上記(b)~(e)の推定重量にて制御する。
攪拌時間は、定常3分から一時停止前の攪拌時間を差し引いた時間とする。
【0063】
特に、インク残量を正確に測定したいのが、残量が減って、補給指示を表示する場合である。また送液下限量の判断が必要な残量になった場合は、正確に重量測定により重量誤検知起因で印刷を停止することが回避できる。
【0064】
図4のグラフでは、静置時に基準重量を求め、攪拌初期に、攪拌重量を得る。攪拌初期には、攪拌が安定するまでの所定時間を除外して攪拌重量を求めるのが望ましい。所定時間は、インクの特性などを考慮して適宜定めることができる。
【0065】
校正重量は、図4の上図に示すように、出力値から校正重量を加算して推定重量が得られる。推定重量は、攪拌中は一定の校正重量を使用する。しかし、攪拌を続けて静置状態になると、図4の下図に示すように、その際の推定重量と静置時の出力値との間に差異が生じることがある。そのときは、再度基準重量と、攪拌重量を求めて校正重量を修正することで、インクの推定重量の正確性を増すことができる。
なお、静置する度に、基準重量と攪拌重量を再度取得して修正を行うのが望ましいが、その実行間隔を予め定めておき、静置時が所定回数達する度に行うようにしてもよく、ユーザーの指示によって、取得を行うようにしてもよい。
なお、静置時は、攪拌を停止している時期の他に、インクを所定時間内に均一に攪拌できない速度の攪拌時であってもよい。所定時間は、適宜設定することができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、攪拌条件は不変であるものとしたが、インク量が少ない場合は攪拌能力(回転数)を落とすことができるようにしてもよい。さらに、攪拌翼高さを液面が高い時は効率が良い位置にし、液面が低くなった時は攪拌下限高さを下げるなどして、翼高さを下げると、同一の翼、回転数条件でも攪拌効率が良くなる。
また、攪拌翼では、攪拌翼の高さや位置、形状の変更などによって攪拌条件を変更できるものとしてもよい。攪拌条件を変更した場合は、校正重量の取得を行うのが望ましい。
また、攪拌では、攪拌時と静置時における重量測定値の差分が、インク残量検知で許容される範囲に収まるように攪拌力をコントロールする制御や攪拌条件の変更を行うのが望ましい。
【0067】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは、上記実施形態に対する適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
20 画像形成部
40 制御部
44 操作表示部
49 バス
50 インク供給部
51 インクタンク
51a 攪拌スクリュー
51b 回転モーター
52 重量センサー
53 ポンプ
54 供給管
図1
図2
図3
図4
図5