(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】マグネットローラー、現像ローラー、現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/09 20060101AFI20220802BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20220802BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G03G15/09 A
G03G15/08 235
F16C13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018122987
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 伸也
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 太
(72)【発明者】
【氏名】島 俊明
(72)【発明者】
【氏名】吉本 真一
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-157966(JP,U)
【文献】特開2016-153813(JP,A)
【文献】特開昭63-038968(JP,A)
【文献】特開昭63-007604(JP,A)
【文献】特開昭52-065453(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121571(WO,A1)
【文献】特開平06-230677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08-13/095
15/08-15/095
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、前記中心軸まわりに並ぶ複数の磁極を含むマグネット部を備え、
前記マグネット部は、前記中心軸を囲む外周面を有し、かつ、磁性体粒子およびバインダーを含有する磁性体組成物で一体的に成形されており、
互いに隣り合う前記磁極が有する磁力は、互いに異なっており、
前記中心軸まわりに前記複数の磁極が並ぶことにより複数組の隣り合う2つの前記磁極が存在し、
前記マグネット部の前記外周面には、前記複数組の隣り合う2つの前記磁極のうち少なくともいずれか
2組の隣り合う2つの前記磁極の間に、前記中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部が
それぞれ設けられており、
前記溝部
の各々は、互いに対向し、前記中心軸側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち小さい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記第2傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち大きい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記溝部が
それぞれ設けられた部分における前記中心軸に直交する前記マグネット部の断面において、前記第1傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第1仮想線と前記第1傾斜面とが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度とし、前記第2傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第2仮想線と前記第2傾斜面とがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度とした場合に、前記第1溝角度は、前記第2溝角度よりも小さい、マグネットローラー。
【請求項2】
前記磁力の差が大きい隣り合う2つの前記磁極の間に設けられた前記溝部における前記第1溝角度と前記第2溝角度との差は、前記磁力の差が小さい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部における前記第1溝角度と前記第2溝角度との差よりも大きい、請求項
1に記載のマグネットローラー。
【請求項3】
前記磁力の差が大きい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部の深さは、前記磁力の差が小さい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部の深さよりも深い、請求項
1または
2に記載のマグネットローラー。
【請求項4】
前記中心軸の前記軸方向における前記マグネット部の両端から前記軸方向に沿って突出するように設けられたシャフト部をさらに備え、
前記マグネット部と前記シャフト部とは、前記磁性体組成物で一体的に成形されている、請求項1から
3のいずれか1項に記載のマグネットローラー。
【請求項5】
前記溝部は、前記軸方向に平行な方向に沿って、前記マグネット部の一端から前記マグネット部の他端にかけて設けられている、請求項1から
4のいずれか1項に記載のマグネットローラー。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載のマグネットローラーと、
前記マグネット部の前記外周面を覆う円筒状の現像スリーブと、を備えた、現像ローラー。
【請求項7】
請求項
6に記載の現像ローラーと、
前記現像ローラーに担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、を備えた現像装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の現像装置と、前記現像装置によって現像されたトナー像を記録媒体に転写させるための転写部材と、を備えた画像形成装置。
【請求項9】
中心軸を有し、前記中心軸まわりに並ぶ複数の磁極を含むマグネット部を備え、
前記マグネット部は、前記中心軸を囲む外周面を有し、かつ、磁性体粒子およびバインダーを含有する磁性体組成物で一体的に成形されており、
互いに隣り合う前記磁極が有する磁力は、互いに異なっており、
前記中心軸まわりに前記複数の磁極が並ぶことにより複数組の隣り合う2つの前記磁極が存在し、
前記マグネット部の前記外周面には、前記複数組の隣り合う2つの前記磁極のうち少なくともいずれか2組の隣り合う2つの前記磁極の間に、前記中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部がそれぞれ設けられており、
前記溝部の各々は、互いに対向し、前記中心軸側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち小さい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記第2傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち大きい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記溝部がそれぞれ設けられた部分における前記中心軸に直交する前記マグネット部の断面において、前記第1傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第1仮想線と前記第1傾斜面とが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度とし、前記第2傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第2仮想線と前記第2傾斜面とがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度とした場合に、前記第1溝角度は、前記第2溝角度よりも小さく、
前記磁力の差が大きい隣り合う2つの前記磁極の間に設けられた前記溝部における前記第1溝角度と前記第2溝角度との差は、前記磁力の差が小さい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部における前記第1溝角度と前記第2溝角度との差よりも大きい、マグネットローラー。
【請求項10】
中心軸を有し、前記中心軸まわりに並ぶ複数の磁極を含むマグネット部を備え、
前記マグネット部は、前記中心軸を囲む外周面を有し、かつ、磁性体粒子およびバインダーを含有する磁性体組成物で一体的に成形されており、
互いに隣り合う前記磁極が有する磁力は、互いに異なっており、
前記中心軸まわりに前記複数の磁極が並ぶことにより複数組の隣り合う2つの前記磁極が存在し、
前記マグネット部の前記外周面には、前記複数組の隣り合う2つの前記磁極のうち少なくともいずれか2組の隣り合う2つの前記磁極の間に、前記中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部が設けられており、
前記溝部の各々は、互いに対向し、前記中心軸側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち小さい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記第2傾斜面は、隣り合う2つの前記磁極のうち大きい前記磁力を有する前記磁極側に位置し、
前記溝部がそれぞれ設けられた部分における前記中心軸に直交する前記マグネット部の断面において、前記第1傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第1仮想線と前記第1傾斜面とが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度とし、前記第2傾斜面の下端および前記中心軸を通過する第2仮想線と前記第2傾斜面とがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度とした場合に、前記第1溝角度は、前記第2溝角度よりも小さく、
前記磁力の差が大きい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部の深さは、前記磁力の差が小さい隣り合う2つの前記磁極間に設けられた前記溝部の深さよりも深い、マグネットローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナーの搬送に用いられるマグネットローラー、現像ローラー、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、現像ローラーを用いて現像剤を感光体に供給する。現像ローラーは、複数の磁極を有するマグネットローラーと、マグネットローラーの外周を回転可能に覆う円筒状の現像スリーブとを含む。
【0003】
マグネットローラーに含まれる各磁極には、役割があり、現像スリーブ表面の磁力パターンを所望の磁力波形にすることが要求されている。マグネットローラーには、各磁極を異なる部品で形成し、これら複数の別部品をシャフトの周囲に貼り付けたものがある。
【0004】
複数の別部品でマグネットローラーを製造する場合には、各部品をシャフトに貼り付ける製造工程が必要となり、製造コストが増加したり、各部品の貼付け位置がずれたりする場合がある。
【0005】
そこで、製造工程の簡略化するとともに、マグネット部とシャフト部との相対位置ずれの抑制するために、マグネット部とシャフト部とを磁性体材料にて一体に成形したマグネットローラーが開発されている。
【0006】
このように、マグネット部とシャフト部とが一体に成形されたマグネットローラーが開示された文献として、たとえば特開2016-153813号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0007】
特許文献1に開示のマグネットローラーにあっては、磁力が最も大きい磁極の幅を決定するように、マグネットローラーの軸方向に延在する2つの溝部が、周方向に並んで設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マグネット部とシャフト部とが一体に成形されたマグネットローラーを着磁する場合に、着磁させた磁極の磁力が所望の値からばらつくことがある。このような場合には、磁極の幅が変動し、隣り合う2つの磁極が切り替わる位置がずれる。
【0010】
特許文献1に開示のマグネットローラーにあっては、2つの溝部によって主磁極の幅が決定されるものの、着磁の際に主磁極の磁力がばらついた場合には、溝部の形状の如何によっては隣接する磁極との切り替わり位置が変動することが起こり得る。
【0011】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、隣り合う2つの磁極の切り替わり位置のずれを抑制することができるマグネットローラー、現像ローラー、現像装置、および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に基づくマグネットローラーは、中心軸を有し、上記中心軸まわりに並ぶ複数の磁極を含むマグネット部を備える。上記マグネット部は、上記中心軸を囲む外周面を有し、かつ、磁性体粒子および樹脂を含有する磁性体組成物で一体的に成形されている。互いに隣り合う上記磁極が有する磁力は、互いに異なっている。上記中心軸まわりに上記複数の磁極が並ぶことにより複数組の隣り合う2つの上記磁極が存在し、上記マグネット部の上記外周面には、上記複数組の隣り合う2つの上記磁極のうち少なくともいずれか1組の隣り合う2つの上記磁極の間に、上記中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部が設けられている。上記溝部は、互いに対向し、上記中心軸側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面および第2傾斜面を有する。上記第1傾斜面は、隣り合う2つの上記磁極のうち小さい上記磁力を有する上記磁極側に位置し、上記第2傾斜面は、隣り合う2つの上記磁極のうち大きい上記磁力を有する上記磁極側に位置する。上記溝部が設けられた部分における上記中心軸に直交する上記マグネット部の断面において、上記第1傾斜面の下端および上記中心軸を通過する第1仮想線と上記第1傾斜面とが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度とし、上記第2傾斜面の下端および上記中心軸を通過する第2仮想線と上記第2傾斜面とがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度とした場合に、上記第1溝角度は、上記第2溝角度よりも小さい。
【0013】
上記本開示に基づくマグネットローラーにあっては、上記複数組の隣り合う2つの上記磁極のうち2組以上の隣り合う2つの上記磁極の間に、上記溝部がそれぞれ形成されていてもよい。
【0014】
上記本開示に基づくマグネットローラーにあっては、上記磁力の差が大きい隣り合う2つの上記磁極の間に設けられた上記溝部における上記第1溝角度と上記第2溝角度との差は、上記磁力の差が小さい隣り合う2つの上記磁極間に設けられた上記溝部における上記第1溝角度と上記第2溝角度との差よりも大きくてもよい。
【0015】
上記本開示に基づくマグネットローラーにあっては、上記磁力の差が大きい隣り合う2つの上記磁極間に設けられた上記溝部の深さは、上記磁力の差が小さい隣り合う2つの上記磁極間に設けられた上記溝部の深さよりも深くてもよい。
【0016】
上記本開示に基づくマグネットローラーは、上記中心軸の上記軸方向における上記マグネット部の両端から上記軸方向に沿って突出するように設けられたシャフト部をさらに備えることが好ましい。この場合には、上記マグネット部と上記シャフト部とは、上記磁性体組成物で一体的に成形されていてもよい。
【0017】
上記本開示に基づくマグネットローラーにあっては、上記溝部は、上記軸方向に平行な方向に沿って、上記マグネット部の一端から上記マグネット部の他端にかけて設けられていることが好ましい。
【0018】
本開示に基づく現像ローラーは、上記マグネットローラーと、上記マグネット部の上記外周面を覆う円筒状の現像スリーブと、を備える。
【0019】
本開示に基づく現像装置は、上記現像ローラーと、上記現像ローラーに担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、を備える。
【0020】
本開示に基づく画像形成装置は、上記現像装置と、上記現像装置によって現像されたトナー像を記録媒体に転写させるための転写部材と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、隣り合う2つの磁極の切り替わり位置のずれを抑制することができるマグネットローラー、現像ローラー、現像装置、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る現像装置の概略図である。
【
図3】実施の形態1に係る現像ローラーの磁力分布を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るマグネットローラーの概略斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係るマグネットローラーの概略断面図である。
【
図6】実施の形態1に係るマグネットローラーにおいて着磁させた磁極の磁力がばらついた場合の隣り合う2つの磁極の磁力分布を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係るマグネットローラーの概略断面図である。
【
図8】実施の形態の効果を検証するために行なった検証実験の条件および結果を示す図である。
【
図9】比較例1A,1Bにおけるマグネットローラーの概略断面図である。
【
図10】比較例2A,2Bにおけるマグネットローラーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0024】
(実施の形態1)
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置の概略図である。
図1を参照して、実施形態に係る画像形成装置100について説明する。
【0025】
図1には、カラープリンタとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンタとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンタであってもよいし、FAXであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびFAXの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0026】
画像形成装置100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、転写部材としての二次転写ローラー33と、クリーニング装置36と、カセット37と、定着装置40と、制御装置101とを備える。
【0027】
画像形成ユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
【0028】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、中間転写ベルト30の回転方向に沿って順に配置されている。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、感光体10と、帯電装置11と、露光装置12と、クリーニング装置17と、現像装置50とを備える。
【0029】
感光体10は、トナー像を担持する像担持体である。一例として、感光体10は、ドラム形状を有する。感光体10の表面には、感光層が形成されている。帯電装置11は、感光体10の表面を一様に帯電する。露光装置12は、制御装置101からの制御信号に応じて感光体10にレーザーを照射し、指定された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。感光体10上に形成された静電潜像は、現像装置50によってトナー像として現像される。現像装置50の詳細については後述する。
【0030】
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。この接触部分に印加された転写バイアスによって、感光体10上に現像されたトナー像が中間転写ベルト30に転写される。このとき、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
【0031】
クリーニング装置17は、クリーニングブレードを備える。クリーニングブレードは、感光体10に圧接され、トナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
【0032】
カセット37には、用紙Sがセットされる。用紙Sは、カセット37から1枚ずつ二次転写ローラー33に送られる。二次転写ローラー33は、中間転写ベルト30に転写されたトナー像を用紙Sに転写する。用紙Sの送り出しおよび搬送のタイミングと、中間転写ベルト30上のトナー像の位置とを同期させることで、用紙Sの適切な位置にトナー像が転写される。その後、用紙Sは、定着装置40に送られる。
【0033】
定着装置40は、用紙Sを加圧および加熱する。これにより、トナー像は、用紙S上で融解し、用紙S上に定着する。その後、用紙Sは、トレー48に排紙される。
【0034】
クリーニング装置36は、クリーニングブレードを備える。クリーニングブレードは、中間転写ベルト30に圧接され、トナー像の転写後に中間転写ベルト30に残留するトナーを回収する。回収されたトナーは、搬送スクリュー(図示しない)で搬送され、廃トナー容器(不図示)に貯められる。
【0035】
制御装置101は、たとえば、現像装置50における現像ローラー60(
図2参照)を回転駆動するためのモーター(図示しない)などを制御し、現像装置50から感光体10に供給される現像剤の量を調整する。
【0036】
なお、画像形成装置100の構造は、
図1に示される例に限定されない。たとえば、画像形成装置100は、1つの感光体10と、回転可能に構成されている複数の現像装置50で構成されてもよい。この場合、画像形成装置100は、各現像装置50を回転することで、各現像装置50を感光体10に順に導く。これにより、各色のトナー像が感光体10上に現像され、カラー像が形成される。
【0037】
[現像装置]
図2は、実施の形態に係る現像装置の概略図である。
図2を参照して、実施の形態に係る現像装置50について説明する。
【0038】
図2に示すように、現像装置50は、ハウジング51を備える。ハウジング51の内部には、隔壁51Aと、第1撹拌部材54Aと、第2撹拌部材55Aと、現像ローラー60とが設けられている。
【0039】
隔壁51Aは、現像ローラー60の軸方向に沿って設けられている。ハウジング51の内部は、隔壁51Aにより、第1搬送室54と第2搬送室55とに分離される。第1搬送室54および第2搬送室55の内部には、現像剤Dが収容されている。現像剤Dは、トナーと磁性キャリアとで構成されている。
【0040】
第1搬送室54の内部には、第1撹拌部材54Aが設けられている。第1撹拌部材54Aは、現像剤Dを撹拌しながら、現像剤Dを第1搬送室54から第2搬送室55に搬送する。第2搬送室55の内部には、第2撹拌部材55Aが設けられている。第2撹拌部材55Aは、現像剤Dを撹拌しながら、現像剤Dを現像ローラー60に搬送する。第1撹拌部材54Aおよび第2撹拌部材55Aが互いに反対方向に回転することで、現像剤Dは、隔壁51Aの両端に設けられている循環口(図示しない)を通じて第1搬送室54と第2搬送室55との間で循環する。
【0041】
現像ローラー60は、感光体10と所要間隔を空けて、感光体10に対向するように設けられている。現像ローラー60は、マグネットローラー52と、現像スリーブ53とを含む。マグネットローラー52は、第1搬送室54から現像剤Dを引き付ける。マグネットローラー52の詳細な形状については、
図4および
図5を用いて後述する。
【0042】
現像スリーブ53は、円筒形状を有し、後述するマグネット部521(
図3参照)の外周面521a(
図4参照)を覆う。現像スリーブ53は、マグネットローラー52の周囲に回転可能に設けられている。スリーブ径は、たとえば16mmである。
【0043】
現像スリーブ53の外周面には、複数の溝(不図示)が設けられている。たとえば40本の溝が設けられている。複数の溝は、周方向に並んで設けられている。溝の深さは、たとえば75μmである。なお、溝の本数や深さは、適宜変更することができる。なお、現像スリーブ53の外周面に溝を設けずに、ブラスト加工を施してもよい。
【0044】
現像装置50のハウジング51には、現像剤Dの搬送量を調整(規制)するための規制部材56が設けられている。規制部材56の一端は、ハウジング51に固定されている。規制部材56は、たとえば板状であり、板面が現像スリーブ53の回転面に直交するように配置されている。なお、規制部材56は、板状に限定されず、丸棒の形状であってもよい。規制部材56は、現像ローラー60の軸方向に沿って設けられる。
【0045】
規制部材56は、現像ローラー60の現像スリーブ53の表面に対向するように設けられている。より具体的には、規制部材56は、後述するマグネットローラー52の規制極S1に対向する部分において、現像スリーブ53から間隔Dbを空けて設けられている。
【0046】
規制部材56は、磁性体で構成されることが好ましい。これにより、規制部材56と現像ローラー60との間で磁界が形成され、規制部材56表面に磁気吸引力が働く。これにより、現像剤Dをより擦り切りやすくなり、現像剤Dの層厚を調整しやすくなる。
【0047】
図3は、実施の形態に係る現像ローラーの磁力分布を示す図である。
図3を参照して、現像ローラー60の機能について説明する。
【0048】
図3に示すように、現像ローラー60の磁力分布は、周方向に並ぶ複数のピークを有する。現像ローラー60の磁力分布は、後述するマグネットローラー52のマグネット部521から発生される磁力によって形成される。複数のピークは、マグネット部521が有する複数の磁極によって形成される。
【0049】
複数の磁極は、汲上極S2、搬送極N2、規制極S1、現像極N1、および剥離極S3を含む。汲上極S2、搬送極N2、規制極S1、現像極N1、および剥離極S3は、
図3中に示す矢印DR1方向(マグネットローラー52の周方向)に沿って順に並んで設けられている。
【0050】
現像剤Dは、撹拌されることで静電気を発生し、帯電される。帯電された現像剤Dは、汲上極S2に引き付けられて、現像スリーブ53に付着する。現像スリーブ53に付着した現像剤Dは、搬送極N2によって規制極S1に向けて搬送される。
【0051】
搬送された現像剤Dは、規制極S1から磁力を受けて、現像スリーブ53の表面上で感光体10に向かって垂直方向に連なる。これにより、現像剤Dは、規制部材56に擦り切られ、現像剤Dの搬送量が均一になる。
【0052】
現像剤Dは、規制極S1を通過後に、現像極N1に搬送される。現像剤Dは、現像極N1から磁力を受けて、磁力の方向に連なった状態になる。すなわち、現像極N1は、現像スリーブ53に担持された現像剤を穂立ちさせて磁気ブラシを形成する。
【0053】
現像剤Dを構成するトナーは、負極性に帯電され、現像剤Dを構成するキャリアは正極性に帯電される。感光体10に形成されている静電潜像は負極性に帯電されているが、現像ローラー60に印加されている現像電位と比較すると電位が高くなっている。このため、トナーが、感光体10に付着する。これにより、感光体10に形成されている静電潜像は、トナー像として現像される。その後、現像スリーブ53上に残留する現像剤Dは、剥離極S3に搬送される。剥離極S3に搬送された現像剤Dは、剥離極S3の後半から磁界が弱くなりゼロに近い状態が続くことによって現像スリーブ53から剥離される。
【0054】
[マグネットローラー]
図4は、実施の形態1に係るマグネットローラーの概略斜視図である。
図5は、実施の形態1に係るマグネットローラーの概略断面図である。
図5は、
図4に示すV-V線におけるマグネット部の断面図である。
図4および
図5を参照して、実施の形態1に係るマグネットローラー52の具体的な構造について説明する。
【0055】
図4に示すように、マグネットローラー52は、マグネット部521とシャフト部522とを備える。
【0056】
シャフト部522は、たとえば芯金によって構成されている。シャフト部522は、円柱状形状を有する。シャフト部522は、マグネット部521が有する中心軸Cの軸方向に沿って延在する。シャフト部522は、中心軸Cの軸方向におけるマグネット部521の両端から当該軸方向に沿って突出する。
【0057】
マグネット部521は、磁性体粒子およびバインダーを含有する磁性体組成物で一体的に成形されている。磁性体粒子としては、フェライト系、希土類系(SmCo系、NdFeB系)、MnAlC系、アルニコ系、SmFeN系のものから選択することができる。バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、低融点合金などを用いることができる。
【0058】
マグネット部521は、中心軸Cまわりに並ぶ複数の磁極(汲上極S2、搬送極N2、規制極S1、現像極N1、および剥離極S3)を含む。複数の磁極は、マグネットローラー52の周方向における磁力分布において複数のピークが形成されるように磁力を発生する。互いに隣り合う磁極の磁力は、異なっている。
【0059】
たとえば、汲上極S2は、現像スリーブ53表面上における磁力が略40mTとなるように着磁されている。搬送極N2は、現像スリーブ53表面上における磁力が略35mTとなるように着磁されている。規制極S1は、現像スリーブ53の表面上における磁力が略40mTとなるように着磁されている。現像極N1は、現像スリーブ53の表面上における磁力が略100mTとなるように着磁されている。剥離極S3は、現像スリーブ53の表面上における磁力が略60mTとなるように着磁されている。
【0060】
マグネット部521は、円筒形状を有する。マグネット部521は、シャフト部522が挿通された状態で当該シャフト部522に貼り付けられている。マグネット部521は、中心軸Cを囲む外周面521aを有する。マグネット部521の外周面521aには、溝部523が設けられている。
【0061】
溝部523は、マグネット部521の外周面521aに設けられている。溝部523は、マグネット部521の中心軸Cの軸方向に平行な方向に沿って延在する。溝部523は、上記軸方向に沿って、マグネット部521の一端からマグネット部521の他端にかけて設けられている。
【0062】
図5に示すように、溝部523は、複数組の隣り合う2つの磁極のうち少なくともいずれか1組の隣り合う2つの磁極の間に設けられている。具体的には、規制極S1と現像極N1との間に設けられている。現像極N1の磁力の大きさは、規制極S1の磁力の大きさよりも大きくなっている。なお、磁力の大きさとは、磁力の絶対値を意味する。
【0063】
溝部523は、略V字形状を有する。溝部523は、互いに対向し、中心側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面523aおよび第2傾斜面523bを有する。
【0064】
第1傾斜面523aは、隣り合う2つの磁極のうち小さい磁力を有する磁極側に位置する。具体的には、第1傾斜面523aは、規制極S1と現像極N1のうち規制極S1側に位置する。
【0065】
第2傾斜面523bは、隣り合う2つの磁極のうち大きい磁力を有する磁極側に位置する。具体的には、第2傾斜面523bは、規制極S1と現像極N1のうち現像極N1側に位置する。
【0066】
溝部523が設けられた部分における中心軸Cに直交するマグネット部521の断面において、第1傾斜面523aの下端および中心軸Cを通過する第1仮想線VL1と第1傾斜面523aとが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度θ1とし、第2傾斜面523bの下端および中心軸Cを通過する第2仮想線VL2と第2傾斜面523bとがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度θ2とした場合に、第1溝角度θ1は、第2溝角度θ2よりも小さい。
【0067】
図6は、実施の形態1に係るマグネットローラーにおいて着磁させた磁極の磁力がばらついた場合の隣り合う2つの磁極の磁力分布を示す図である。具体的には、
図6は、規制極S1から現像極N1にかけての磁力分布を示している。
【0068】
図6における縦軸は、磁力を示しており、S極側の磁力を正とし、N極側の磁力を負としている。
図6における横軸は、マグネット部521の中心角度を示している。マグネット部521の外周面521a上の所定の位置をマグネット部521の中心角度で0度とした場合に、マグネット部521の外周面521a上の位置を中心角度で表している。
【0069】
図6に示すように、複数のマグネット部521を上述の磁性体組成物で一体に成形した後に各マグネット部521において複数の磁極を着磁する際に、マグネット部521ごとに、着磁させた磁極の磁力がばらつく場合がある。
図6において、実線は、第1の着磁状態における磁力分布を示し、破線は、第2の着磁状態における磁力分布を示している。
【0070】
着磁の際のばらつきによって、第1の着磁状態における現像極N1の磁力の大きさ(絶対値)は、第2の着磁状態における現像極N1の磁力の大きさ(絶対値)よりも大きくなっている。
【0071】
一般的に磁力の大きさが大きくなる場合には、磁極の幅も大きくなり、隣り合う2つの磁極の切り替わりの位置(
図6における磁力が0となる位置の中心角度)が変位する。
【0072】
ここで、実施の形態においては、上述のように、第1溝角度θ1が第2溝角度θ2より小さくなるように、隣り合う2つの磁極の間におけるマグネット部521の外周面521a上に溝部523が設けられている。
【0073】
このため、溝部523の底部の位置を基準としてマグネット部521の所定の中心角度だけ規制極S1側に移動した第1傾斜面523a上におけるマグネット部521の径r1は、溝部523の底の位置を基準として上記所定の中心角度と同じ角度だけ現像極N1側に移動した第2傾斜面523b上におけるマグネット部521の径r2よりも大きくなる。
【0074】
マグネット部521では、径が大きいほど磁力が強くなる。このため、現像極N1の磁力が大きくなった場合であっても、上述の径r1が径r2よりも大きいことで、現像極N1の磁力の幅が増加することを抑制することができる。この結果、規制極S1と現像極N1の切り替わり位置が規制極S1側に押し込まれて移動することを抑制することができる。
【0075】
以上のように、実施の形態1に係るマグネットローラー52、およびこれを利用した現像ローラー60、現像装置50、および画像形成装置100にあっては、隣り合う2つの磁極の切り替わり位置のずれを抑制することができる。
【0076】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係るマグネットローラーの概略断面図である。
図7を参照して、実施の形態2に係るマグネットローラー52Aについて説明する。
【0077】
実施の形態2に係るマグネットローラー52Aは、実施の形態1に係るマグネットローラー52と比較した場合に、マグネット部521Aの形状が相違する。その他の形状については、ほぼ同様である。
【0078】
マグネット部521Aにおいては、外周面521aに2つの溝部523,524が設けられている。溝部523は、規制極S1と現像極N1との間に設けられており、溝部524は、現像極N1と剥離極S3との間に設けられている。すなわち、複数組の隣り合う2つの磁極のうち2組の隣り合う2つの磁極の間に溝部が設けられている。
【0079】
溝部523は、実施の形態1とほぼ同様に構成されている。溝部524は、略V字形状を有する。溝部524は、互いに対向し、中心側に向うにつれて互いに近づくように傾斜する第1傾斜面524aおよび第2傾斜面524bを有する。
【0080】
第1傾斜面524aは、隣り合う2つの磁極のうち小さい磁力を有する磁極側に位置する。具体的には、第1傾斜面524aは、現像極N1と剥離極S3のうち剥離極S3側に位置する。
【0081】
第2傾斜面524bは、隣り合う2つの磁極のうち大きい磁力を有する磁極側に位置する。具体的には、第2傾斜面524bは、現像極N1と剥離極S3のうち現像極N1側に位置する。
【0082】
溝部524が設けられた部分における中心軸Cに直交するマグネット部521Aの断面において、第1傾斜面524aの下端および中心軸Cを通過する第3仮想線VL3と第1傾斜面524aとが成す角度のうち小さい方の角度を第1溝角度θ1aとし、第2傾斜面524bの下端および中心軸Cを通過する第4仮想線VL4と第2傾斜面523bとがなす角度のうち小さい方の角度を第2溝角度θ2aとした場合に、第1溝角度θ1aは、第2溝角度θ2aよりも小さい。
【0083】
また、磁力の差が大きい隣り合う2つの磁極の間に設けられた溝部における第1溝角度と第2溝角度との差は、磁力の差が小さい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部における第1溝角度と第2溝角度との差よりも大きくなっている。
【0084】
具体的には、規制極S1と現像極N1との磁力の差は、現像極N1と剥離極S3との磁力の差よりも大きくなっている。この場合において、規制極S1と現像極N1との間に設けられた溝部523における第1溝角度θ1と第2溝角度θ2との差は、現像極N1と剥離極S3との間に設けられた溝部524における第1溝角度θ1aと第2溝角度θ2aとの差よりも大きくなっている。
【0085】
さらに、磁力の差が大きい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部の深さは、磁力の差が小さい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部の深さよりも深くなっている。
【0086】
具体的には、規制極S1と現像極N1との間に設けられた溝部523の深さは、現像極N1と剥離極S3との間に設けられた溝部524の深さよりも深くなっている。
【0087】
以上のように構成されることにより、実施の形態2に係るマグネットローラー52Aは、実施の形態1に係るマグネットローラー52と同等以上の効果が得られる。
【0088】
具体的には、複数組の隣り合う2つの磁極のうち2組以上の隣り合う2つの磁極の間に溝部が設けられていることにより、実施の形態1と比較して、複数個の隣り合う2つの磁極の切り替わり位置がずれることを抑制することができる。
【0089】
一般的に、隣り合う2つの磁極の磁力差が大きいほど、磁力が小さい方に切り替わり位置が移動しやすくなる。
【0090】
実施の形態2のように、磁力の差が大きい隣り合う2つの磁極の間に設けられた溝部における第1溝角度θ1と第2溝角度θ2との差は、磁力の差が小さい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部における第1溝角度θ1aと第2溝角度θ2aとの差よりも大きくすることにより、磁力が低い方に切り替わり位置が移動することを抑制することができる。
【0091】
さらに、磁力の差が大きい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部の深さは、磁力の差が小さい隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部の深さよりも深くすることにより、磁力が小さい方に切り替わり位置が移動することを抑制することができる。
【0092】
(検証実験)
図8は、実施の形態の効果を検証するために行なった検証実験の条件および結果を示す図である。
図8を参照して、実施の形態の効果を検証するために行なった検証実験の条件および結果について説明する。
【0093】
図8に示すように、検証実験においては、比較例1A、比較例1B、比較例2A、比較例2B、実施例1Aおよび実施例1Bに係るマグネットローラーを準備した。比較例1A,1Bの組み合わせ、比較例2A,2Bの組み合わせ、および実施例1A,1Bの組み合わせの各組み合わせにおいて、主磁極である現像極N1の磁力をばらつかせて、規制極S1と現像極N1との磁力が切り替わる位置を確認した。なお、磁力が切り替わる位置は、マグネット部521の中心軸Cまわりの磁力をガウスメーターにて測定することで確認した。
【0094】
実施例1A,1Bにおけるマグネットローラーとしては、実施の形態1に係るマグネットローラー52を準備した。実施例1A,1Bにおいては、第1溝角度θ1を30°とし、第2溝角度θ2を45°とした。
【0095】
図9は、比較例1A,1Bにおけるマグネットローラーの概略断面図である。
図9に示すように、比較例1A,1Bにおけるマグネットローラー52Xとしては、マグネット部521に溝部が設けられていないものを準備した。
【0096】
図10は、比較例2A,2Bにおけるマグネットローラーの概略断面図である。
図10に示すように、比較例2A,2Bにおけるマグネットローラー52Yとしては、マグネット部521の外周面521a上において、規制極S1と現像極N1との間に溝部523が設けられているものを準備した。比較例2A,2Bにおいては、溝部523の第1溝角度θ1と第2溝角度θ2とを同じとし、第1溝角度θ1および第2溝角度θ2を45度とした(
図8参照)。
【0097】
再び
図8に示すように、比較例1A,1Bにおいては、溝部が設けられていないことにより、現像極N1の磁力がばらつくことで、規制極S1と現像極N1との磁力が切り替わる位置が、マグネット部521の中心角度で5.8°移動した。
【0098】
比較例2A,2Bにおいては、溝部が設けられているものの、第1溝角度θ1と第2溝角度θ2とが同じであるため、現像極N1の磁力がばらつくことで、規制極S1と現像極N1との磁力が切り替わる位置が、マグネット部521の中心角度で5.3°移動した。
【0099】
実施例1A,1Bにおいては、第1溝角度θ1が第2溝角度θ2よりも小さいことにより、現像極N1の磁力がばらついた場合であっても、規制極S1と現像極N1との磁力の切り替わり位置が、マグネット部521の中心角度でわずか0.8°移動しただけであった。
【0100】
以上の結果から、隣り合う2つの磁極の間に、中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部を設け、上記第1溝角度を上記第2溝角度よりも小さくすることにより、隣り合う2つの磁極の切り替わり位置のずれを抑制することができることが実験的にも確認されたと言える。
【0101】
上述した実施の形態1および2においては、マグネット部521が、円筒形状を有し、シャフト部522が挿通された状態で当該シャフト部522に貼り付けられた場合を例示して説明したが、これに限定されない。マグネット部521とシャフト部522とが磁性体組成物で一体的に成形されていてもよい。この場合には、シャフト部522へのマグネット部521の貼付けが不要となるため、マグネット部521の製造コストを低減させることができる。
【0102】
上述した実施の形態1においては、規制極S1と現像極N1との間に溝部が設けられている場合を例示して説明したが、これに限定されない。溝部は、現像極N1と剥離極S3との間に設けられていてもよいし、剥離極S3と汲上極S2との間に設けられていてもよいし、汲上極S2と搬送極N2との間に設けられていてもよいし、搬送極N2と規制極S1との間に設けられていてもよい。すなわち、上述の第1溝角度θ1が第2溝角素θ2よりも小さくなる限り、複数組の隣り合う2つの磁極のうち少なくともいずれか1組の隣り合う2つの磁極の間に、中心軸の軸方向に平行な方向に沿って延在する溝部が設けられていればよい。
【0103】
3組以上の隣り合う2つの磁極間にそれぞれ溝部が設けられる場合には、磁力差が大きくなるにつれて隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部における第1溝角度と第2溝角度との差を大きくしてもよい。また、磁力差が大きくなるにつれて隣り合う2つの磁極間に設けられた溝部の深さを深くしてもよい。
【0104】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1C,1K,1M,1Y 画像形成ユニット、10 感光体、11 帯電装置、12 露光装置、15C,15K,15M,15Y トナーボトル、17 クリーニング装置、30 中間転写ベルト、31 一次転写ローラー、33 二次転写ローラー、36 クリーニング装置、37 カセット、40 定着装置、48 トレー、50 現像装置、51 ハウジング、51A 隔壁、52,52A,52X,52Y マグネットローラー、53 現像スリーブ、54 第1搬送室、54A 第1撹拌部材、55 第2搬送室、55A 第2撹拌部材、56 規制部材、60 現像ローラー、100 画像形成装置、101 制御装置、521,521A マグネット部、521a 外周面、522 シャフト部、523 溝部、523a 第1傾斜面、523b 第2傾斜面、524 溝部、524a 第1傾斜面、524b 第2傾斜面。