(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】排気浄化装置および車両
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20220802BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/28 301W
(21)【出願番号】P 2018125073
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 功
(72)【発明者】
【氏名】金田 建都
(72)【発明者】
【氏名】水上 直
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記筐体の内壁面部に固定される一端部、および、前記開口部から露出する位置に配置される他端部を有する繋ぎ板と、
前記内壁面部に固定される第1端部、および、前記繋ぎ板の前記他端部に固定される第2端部を有し、前記内壁面部とにより排気ガスの通路を形成する整流板と、
を備える、
排気浄化装置。
【請求項2】
前記繋ぎ板の前記一端部は、
前記内壁面部に溶接により固定され、波形状を有する、
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記繋ぎ板の前記他端部は、
前記整流板に溶接により固定され、波形状を有する、
請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の排気浄化装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、筐体と、筐体に収容され、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための触媒とを備え、浄化した排気ガスを筐体内から下流側の排気管へ流出する排気浄化装置が知られている。このような排気浄化装置の場合、筐体の形状によっては、排気ガスが筐体内で渦を巻くことがある。この渦は、内燃機関の運転状態によって変動して、排気管から異音が発生する要因となる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、筐体内の排気ガスの流れを均一にするための整流板を備えた排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筐体に整流板を固定する組み立て作業において、例えば、整流板の形状や整流板が配置される場所によっては、筐体と整流板との固定箇所を、例えば、整流板自身が外部から覆う場合があって、固定箇所へ工具を容易に移動できずに、組み立て作業性が低下するという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、組み立て作業性を向上することが可能な排気浄化装置および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示における排気浄化装置は、
開口部を有する筐体と、
前記筐体の内壁面部に固定される一端部、および、前記開口部から露出する位置に配置される他端部を有する繋ぎ板と、
前記内壁面部に固定される第1端部、および、前記繋ぎ板の前記他端部に固定される第2端部を有し、前記内壁面部とにより排気ガスの通路を形成する整流板と、
を備える。
【0008】
また、本開示における車両は、前記排気浄化装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、組み立て作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る排気浄化装置の一例を示す概略図である。
【
図2】X軸に対して-Y側に傾斜した方向から見た第2筐体の内部の斜視図である。
【
図3】X軸に対して+Y側に傾斜した方向から見た第2筐体の内部の斜視図である。
【
図4】X軸に対して+Z側に傾斜した方向から見た第2筐体の内部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る排気浄化装置2の一例を示す概略図である。なお、
図1には、X軸、Y軸及びZ軸が描かれている。以下の説明では、
図1における左右方向をX方向といい、左方向を「+X方向」又は「+X側」、右方向を「-X方向」又は「-X側」という。また、
図1における上下方向をY方向といい、上方向を「+Y方向」又は「+Y側」、下方向を「-Y方向」又は「-Y側」という。さらに、
図1において紙面に垂直な方向をZ方向といい、手前方向を「+Z方向」又は「+Z側」、奥方向を「-Z方向」又は「-Z側」という。
図1に、排気ガスの流れを矢印で示す。
【0012】
図2は、X軸に対して-Y側に傾斜した方向から見た第2筐体2bの内部の斜視図である。排気浄化装置2は、
図1および
図2に示すように、第1筐体2a、第2筐体2b、触媒3、フィルター3a、整流板11および繋ぎ板12を備えている。
【0013】
第1筐体2aは、触媒3およびフィルター3aを収容している。第1筐体2aの上流側端部には貫通孔4aが設けられている。第1筐体2aの下流側端部には連通孔4bが設けられている。貫通孔4aには、上流側排気管1が接続されている。上流側排気管1は、排気マニホールド(図示略)に接続されている。
【0014】
第2筐体2bは、第1筐体2aの下流側に配置される。第2筐体2bは、-X方向へ開かれた開口部2dを有している。第2筐体2bの内部は、開口部2dおよび連通孔4bを介して第1筐体2aの内部と連通している。
【0015】
触媒3は、例えば、三元触媒、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:DOC)、NOx吸蔵還元型触媒(Lean NOx Trap:LNT)等やこれらの組み合わせで構成される。三元触媒は、排気ガス中のCO、HC、NOxの3成分を同時に酸化・還元処理する。酸化触媒は、排気ガス中のHCやCOを酸化して排気ガスを浄化する役割と、LNTのNOx吸蔵能力を回復するためのNOx再生の際にNOxの還元剤として供給される燃料の炭化水素の一部を酸化して排気ガスの温度を昇温する役割とを有している。LNTは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して形成され、酸素過剰な排気ガス中のNOを酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化する。
【0016】
フィルター3aは、例えば、排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter:PM)を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)により構成される。
【0017】
図3は、X軸に対して+Y側に傾斜した方向から見た第2筐体2bの内部の斜視図である。
図4は、X軸に対して+Z側に傾斜した方向から見た第2筐体2bの内部の斜視図である。第2筐体2bは、
図2から
図4に示すように、側壁面部6,7、曲面部9を有している。なお、曲面部9の内側が、本発明の「内壁面部」に対応している。
【0018】
曲面部9は、
図2から
図4に示すように、+X方向に膨出するように湾曲している。曲面部9は、Z軸の方向に延在している。なお、曲面部9の-Y方向の端部を、特に、立壁面部10という。
【0019】
立壁面部10は、
図2から
図4に示すように、X軸の方向に起立している。立壁面部10は、Z軸の方向に延在している。立壁面部10は、開口部2dの-Y側の縁部となっている。
【0020】
側壁面部6は、
図2から
図4に示すように、曲面部9の+Z側に配置されている。側壁面部6は、X軸の方向に起立している。側壁面部6の-X側端部は、開口部2dの+Z側の縁部となっている。側壁面部6には貫通孔5が設けられている。貫通孔5には、
図4に示すように、下流側排気管13が接続されている。
【0021】
側壁面部7は、
図2から
図4に示すように、曲面部9の-Z側に配置されている。側壁面部7は、X軸の方向に起立している。側壁面部7の-X側端部は、開口部2dの-Z側の縁部となっている。
【0022】
整流板11は、曲面部9に対向して配置されている。整流板11は、-X方向に膨出するように湾曲している。整流板11の+Z側の端部は、側壁面部6に近接又は接している。整流板11の-Z側の端部は、側壁面部7の方向(Z軸の方向)へ延在している。これにより、整流板11は、曲面部9とにより排気ガスの通路を形成する。排気ガスの通路は、ほぼ円形状の断面を有し、かつ、第2筐体2b内に収まるように配置されている。排気ガスは、整流板11の-Z側の端部側から流入し、整流板11の+Z側の端部側から貫通孔5を通って流出する。
【0023】
整流板11と曲面部9とは、公知の固定方法により、相互に固定されている。本実施の形態では、公知の固定方法の一例として、溶接が用いられる。
【0024】
ところで、溶接強度が十分であるか否かについて確認するためには、溶接箇所が外部から視認できることが好ましい。溶接箇所が整流板11自身等によって外部から覆われている場合、溶接用の工具(例えば、溶接トーチ)を容易に移動できずに、溶接作業が困難になって、作業性が低下するという問題がある。また、この場合、溶接強度を容易に確認することができないため、溶接強度が安定しない要因になるという問題がある。
【0025】
そこで、本実施の形態では、溶接作業の作業性を向上し、かつ、溶接強度の確認を容易にするために、溶接箇所WP(
図2および
図3を参照)が開口部2dから露出するように構成されている。以下、この構成を中心に説明する。
【0026】
整流板11の+Y方向の端に位置する第1端部111は、曲面部9に溶接されている。第1端部111は、曲面部9に沿って+Y方向に延在している。これにより、第1端部111と曲面部9との溶接箇所WPは、
図2から
図4に示すように、開口部2dから露出している。
【0027】
整流板11の-Y方向の端に位置する第2端部112は、繋ぎ板12を介して立壁面部10に溶接されている。整流板11と繋ぎ板12との溶接箇所WP、および、繋ぎ板12と立壁面部10との溶接箇所WPの詳細については、後述する。
【0028】
繋ぎ板12は、Z軸の方向を長尺方向とする長尺体である。繋ぎ板12の短手方向の一端部121は、立壁面部10に溶接されている。繋ぎ板12の一端部121と立壁面部10との溶接箇所WPは、それらを溶接する際、開口部2dから露出している。その理由は、繋ぎ板12の一端部121と立壁面部10とを溶接した後に、整流板11と繋ぎ板12との溶接を行うため、一端部121と立壁面部10との溶接箇所WPが整流板11に覆われていないためである。
【0029】
繋ぎ板12の短手方向の他端部122は、整流板11の第2端部112に溶接されている。繋ぎ板12の他端部122は、X軸に対して+Y方向(開口部2dの内部側)に延在している。これにより、繋ぎ板12の他端部122と第2端部112との溶接箇所WPは、
図2に示されているように、開口部2dから露出している。
【0030】
ところで、溶接方法の種類として、例えば、プラグ溶接やすみ肉溶接がある。プラグ溶接では、溶接する前に母材に穴をあけておく必要がある。すみ肉溶接では、穴を開けるような準備が必要でないという利点がある。また、すみ肉溶接では、プラグ溶接と比べて、溶接強度の確認がし易いという利点もある。
【0031】
本実施の形態では、溶接方法として、すみ肉溶接が用いられる。また、すみ肉溶接による溶接箇所WPの位置および形状は、例えば、第2筐体2b等の熱膨張や熱収縮で生じる熱応力に対する十分な強度を有するように構成されている。
【0032】
図5は、
図2のV-V線断面図である。
図5に、溶接箇所WPを、ハッチングを付して示す。また、
図5に、整流板11を省略して示す。
図5に示すように、繋ぎ板12における立壁面部10と溶接される一端部121は、矩形波の形状を有している。また、繋ぎ板12における整流板11の第2端部112(
図2を参照)と溶接される他端部122は、矩形波の形状を有している。
【0033】
一端部121と立壁面部10との溶接箇所WPは、
図5に示すように、矩形波における山部121aと谷部121bとの間の中間部121cの箇所である。溶接箇所WPを中間部121cの箇所とすることにより、排気ガス処理時にZ軸の方向に生じる熱応力に対する十分な強度が得られる。
【0034】
他端部122と整流板11の第2端部112との溶接箇所WPは、
図5に示すように、矩形波における山部122aの箇所である。溶接箇所WPを山部122aの箇所とすることにより、X軸の方向に生じる熱応力に対する十分な強度が得られる。
【0035】
次に、排気浄化装置2の組み立て作業について、
図2から
図5を参照して説明する。
【0036】
先ず、整流板11の第1端部111を、曲面部9に溶接する。
【0037】
次に、繋ぎ板12の一端部121を、立壁面部10に溶接する。
【0038】
次に、整流板11の第2端部112を、繋ぎ板12の他端部122に溶接する。
【0039】
なお、上記組み付け作業では、整流板11の第1端部111を曲面部9に溶接した後に、繋ぎ板12の一端部121を立壁面部10に溶接したが、逆の態様であってもよい。つまり、繋ぎ板12の一端部121を立壁面部10に溶接した後に、整流板11の第1端部111を曲面部9に溶接してもよい。この態様においても、繋ぎ板12の一端部121と立壁面部10との溶接箇所が開口部2dから露出しているので、溶接作業を容易に行うことが可能となる。
【0040】
上記実施の形態に係る排気浄化装置2によれば、開口部2dを有する第2筐体2bと、第2筐体2bの立壁面部10に溶接される一端部121、および、開口部2dから露出する位置に配置される他端部122を有する繋ぎ板12と、曲面部9に溶接される第1端部111、および、繋ぎ板12の他端部122に溶接される第2端部112を有し、曲面部9とにより排気ガスの通路を形成する整流板11と、を備える。これにより、整流板11の第2端部112と繋ぎ板12の他端部122との溶接箇所が開口部2dから露出していて、溶接箇所へ工具を容易に移動できるため、組み立て作業性を向上することができる。また、溶接強度を容易に確認することができるため、溶接強度を安定させることが可能となる。
【0041】
また、上記実施の形態に係る排気浄化装置2によれば、立壁面部10に溶接される繋ぎ板12の一端部121は波形状を有している。これにより、繋ぎ板12の一端部121と立壁面部10との溶接部分WPを、波形状における山部121aや谷部121bとし、または、山部121aと谷部121bとの間の中間部121cとして、熱応力がかかる方向に応じて溶接箇所WPの位置や形状を変更することができるため、十分な溶接強度を得ることが可能となる。同様の理由から、整流板11の第2端部112に溶接される繋ぎ板12の他端部122は、波形状を有してもよい。
【0042】
なお、上記実施の形態では、繋ぎ板12の一端部121等が有する波形状は、矩形波に限定されず、例えば、三角波や正弦波などであってもよい。この場合においても、例えば、三角波の山部、谷部、傾斜部を適宜選択して溶接箇所とし、また、溶接箇所の形状を適宜変更することで、第2筐体2b等の熱膨張や熱収縮で生じる熱応力に対する十分な強度を得ることが可能となる。
【0043】
また、上記実施の形態では、排気浄化装置2として、触媒3等を備えたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、排気ガスに還元剤を噴出する装置を備えたチャンバーであってもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、例えば、整流板11と曲面部9とを固定する方法の一例として溶接を用いたが、本発明は、これに限らず、整流板11と曲面部9を固定することができる公知の固定方法であればよく、例えば、ロウ付けであってもよい。ロウ付けであっても、固定箇所が開口部2dから露出していることで、組み付け作業性を上げることが可能となる。
【0045】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の排気浄化装置は、組み立て作業性を向上することが要求される車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0047】
1 上流側排気管
2 排気浄化装置
2a 第1筐体
2b 第2筐体
2d 開口部
3 触媒
3a フィルター
4a 貫通孔
4b 連通孔
5 貫通孔
6,7 側壁面部
9 曲面部
10 立壁面部
11 整流板
12 繋ぎ板
13 下流側排気管
111 第1端部
112 第2端部
121 一端部
121a 山部
121b 谷部
121c 中間部
122 他端部
122a 山部