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特許7115083燃料電池システム及び該燃料電池システムを備えた電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び該燃料電池システムを備えた電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220802BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20220802BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20220802BHJP
   B60L 50/62 20190101ALI20220802BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220802BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/00 Z
H01M8/04746
H01M8/04537
H01M8/04228
B60L50/62
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018130519
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020009655
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】水下 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】平光 雄介
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520500(JP,A)
【文献】特開2013-235717(JP,A)
【文献】特表2008-535196(JP,A)
【文献】特開2007-157544(JP,A)
【文献】特開2018-085308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
B60L 50/00 - 58/40
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスの水素ガスを燃料極に供給するとともに、酸化剤ガスの空気を空気極に供給して、供給された燃料ガスと空気とを反応させて発電するように構成した燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
前記燃料電池の空気極に圧縮空気を供給するための空気コンプレッサと、
前記空気極の入口側に設けられ圧縮空気の供給を制御する空気入口弁と、
前記空気極の出口側に設けられ前記空気極からの空気の排出を制御する空気排出弁と、
前記空気極の入口と出口との間の空気流通経路に設けられ前記燃料電池の外部への空気の排出を制御する空気内部循環パージ弁と、
前記空気入口弁と前記空気排出弁と前記空気内部循環パージ弁との開閉を制御して前記燃料電池内部に供給された空気を内部循環するように制御する空気内部循環制御部と、を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記空気内部循環制御部は、前記空気排出弁を閉じ、前記空気入口弁を開き、前記空気内部循環パージ弁の開閉を繰り返して、前記燃料電池内部に供給された空気を内部循環することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記空気内部循環制御部は、空気内部循環制御の実行中に前記空気コンプレッサの出力を減少することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記空気内部循環制御部は、空気内部循環制御の実行中に前記燃料電池の出力電圧が所定の電圧以下になったとき空気内部循環制御を停止することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記請求項1から4の何れか1項に記載の燃料電池システムを備え、さらに前記燃料電池で発生される電力を充電する二次電池を備え、前記二次電池の電力によって主に駆動される電動車両であって、前記二次電池のSOCが所定のSOC以下になったときに前記燃料電池が発電を開始することを特徴とする電動車両。
【請求項6】
前記空気内部循環制御部は、所定の走行出力以下のときに実行されることを特徴とする請求項5に記載の電動車両。
【請求項7】
前記空気内部循環制御部は、電動車両の走行中に前記燃料電池が発電停止するときに実行されることを特徴とする請求項5に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及び該燃料電池システムを備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、燃料ガスである水素ガスが、燃料極に供給されるとともに、酸化剤ガスである空気を空気極に供給して、供給された水素ガスと空気とを電気化学反応させて発電するように構成されている。
【0003】
そして、燃料極で消費されなかった余剰の水素ガスは、水素循環流路によって、燃料極への水素供給流路に還流されて、供給される水素ガスと混合され、燃料極へ再び供給されるようになっている。また、空気においても空気極で消費されなかった空気は空気循環流路によって空気極への空気供給流路に還流されるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応により反応させて発電する燃料電池と、燃料電池を通過した酸化剤ガスを燃料電池の上流へ循環させる酸化剤循環流路と、燃料電池の運転制御及び酸化剤循環流路の循環流量を制御する制御手段とを備えた燃料電池システムが示され、制御手段は、燃料電池の最高セル電圧もしくは平均セル電圧が予め設定された所定電圧以下となるように酸化剤循環流路を流れる酸化剤ガスの循環流量を制御することが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、燃料電池システムの運転方法が開示され、燃料電池スタックの性能回復制御を開始すると判断された際、含水量調整装置により電解質膜・電極構造体に水分を供給しながら、密封された空気循環路で酸化剤ガスを循環させた状態で、燃料電池スタックの発電電圧を0.3V以下に維持することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-157544号公報
【文献】特開2016-035910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの特許文献にも、空気極から排出された空気を空気循環流路によって空気極へ還流されるように循環流路が形成されるシステムが開示されているが、燃料電池スタックの外部に配管を設けて、それによって空気循環流路を形成するものである。従って、配管の設置が必要なため、システム構造の複雑化及び大型化を招く問題がある。
【0008】
一方、空気コンプレッサから空気極へ供給する酸化剤ガスとしての空気量は、オフガスとして大気放出する未反応酸素量を加味して、過剰量を燃料電池の内部に供給しているため、空気コンプレッサの稼動効率の低下を招き、その結果として燃料電池の発電効率の低下を招く問題がある。
【0009】
そこで、上記の課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、未反応酸素を燃料電池内部で逆流させて再循環させることによって、未反応酸素を効率よく発電に利用して燃料電池の発電効率を向上させ、しかも簡単な構造で達成させることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、燃料ガスの水素ガスを燃料極に供給するとともに、酸化剤ガスの空気を空気極に供給して、供給された燃料ガスと空気とを反応させて発電するように構成した燃料電池を備えた燃料電池システムであって、前記燃料電池の空気極に圧縮空気を供給するための空気コンプレッサと、前記空気極の入口側に設けられ圧縮空気の供給を制御する空気入口弁と、前記空気極の出口側に設けられ前記空気極からの空気の排出を制御する空気排出弁と、前記空気極の入口と出口との間の空気流通経路に設けられ前記燃料電池の外部への空気の排出を制御する空気内部循環パージ弁と、前記空気入口弁と前記空気排出弁と前記空気内部循環パージ弁との開閉を制御して前記燃料電池内部に供給された空気を内部循環するように制御する空気内部循環制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成(1)によれば、空気極の入口と出口との間の空気流通経路に設けられ燃料電池の外部への空気の排出を制御する空気内部循環パージ弁を設け、空気内部循環制御部によって、これら空気入口弁と空気排出弁と空気内部循環パージ弁との開閉を制御して、燃料電池内部に供給された空気を内部循環するように制御するので、未反応酸素を効率よく発電に利用することができる。これによって燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0012】
また、燃料電池の内部において空気を循環させるので、燃料電池スタックの外部に配管を設けて、それによって空気循環流路を形成する必要がないため、システム構造の簡素化が可能となる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、前記空気内部循環制御部は、前記空気排出弁を閉じ、前記空気入口弁を開き、前記空気内部循環パージ弁の開閉を繰り返して、前記燃料電池内部に供給された空気を内部循環することを特徴とする。
【0014】
上記構成(2)によれば、空気内部循環制御部によって、空気排出弁を閉じ、空気入口弁を開き空気内部循環パージ弁の開閉を繰り返すことで、燃料電池内部に供給された空気の一部は、リターン(逆流)ガスとなって空気内部循環パージ弁に向かって逆流させることができ、それによって燃料電池内部において未反応酸素を効率よく利用して発電を行うことが可能になる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、前記空気内部循環制御部は、空気内部循環制御の実行中に前記空気コンプレッサの出力を減少することを特徴とする。
【0016】
上記構成(3)によれば、空気内部循環制御の実行中に空気コンプレッサの出力が減少される。すなわち、通常発電時における圧縮空気量よりも減少させるので、空気コンプレッサの負荷が低減されて空気コンプレッサの稼働効率を向上できる。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、前記空気内部循環制御部は、空気内部循環制御の実行中に前記燃料電池の出力電圧が所定の電圧以下になったとき空気内部循環制御を停止することを特徴とする。
【0018】
上記構成(4)によれば、燃料電池の出力電圧が所定の電圧以下になった場合には、空気内部循環制御を停止するので、通常発電中に空気内部循環制御が実行されても、空気内部循環制御が停止されて通常発電電圧に戻るため、燃料電池の出力性能には大きな影響は生じない。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、電動車両は前記燃料電池システムを備え、さらに前記燃料電池で発生される電力を充電する二次電池を備え、前記二次電池の電力によって主に駆動される電動車両であって、前記二次電池のSOC(State Of Charge、充電状態)が所定のSOC以下になったときに前記燃料電池が発電を開始することを特徴とする。
【0020】
上記構成(5)によれば、二次電池のSOCに基づいて燃料電池の発電が開始される。すなわち、電動車両は、二次電池の充電に特化したレンジエクステンダー用燃料電池を搭載した電動車両である。このような電動車両においては、駆動モータは二次電池出力で駆動されるため、上記した空気内部循環制御部による制御を行っても、電動車両の走行性能には大きく影響せずに、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、前記空気内部循環制御部は、所定の走行出力以下のときに実行されることを特徴とする。
【0022】
上記構成(6)によれば、燃料電池が発電状態でも、電動車両が所定の走行出力以下であるので、空気内部循環制御部による循環制御を実行しても、電動車両の走行性能に影響なく燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0023】
(7)幾つかの実施形態では、前記空気内部循環制御部は、電動車両の走行中に前記燃料電池が発電停止するときに実行されることを特徴とする。
【0024】
上記構成(7)によれば、燃料電池による発電によって、二次電池が所定のSOCまで充電された後、燃料電池は発電を停止してアイドリング状態となる。このアイドル状態となるときに、空気内部循環制御部による循環制御を実行することで、燃料電池の発電停止条件が成立後、直ちに発電を停止する場合に比べて燃料電池の内部の空気を有効利用することによって発電効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、空気極の入口と出口との間の空気流通経路に設けられ燃料電池の外部への空気の排出を制御する空気内部循環パージ弁を設け、空気内部循環制御部によって、空気入口弁と空気排出弁と空気内部循環パージ弁との開閉を制御して、燃料電池内部に供給された空気を内部循環するように制御するので、未反応酸素を効率よく発電に利用することができる。これによって燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0026】
また、燃料電池の内部において空気を循環させるので、燃料電池スタックの外部に配管を設けて、それによって空気循環流路を形成する必要がないため、システム構造の簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを備えた電動車両の全体構成図を示す。
図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムにおける燃料極と空気極との部分の構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムにおける燃料極と空気極との部分の構成図である。
図4】従来技術の燃料極と空気極との部分の構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの制御フローチャートである。
図6図5のフローチャートにおける「空気内部循環制御」の部分のフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの「空気内部循環制御」の制御タイムチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの「空気内部循環制御」の制御タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0029】
本発明の一実施形態に係る燃料電池システム1について、図1を参照して説明する。図1は、燃料電池システム1を備えた電動車両3の全体構成図を示す。
【0030】
この燃料電池システム1は、水素及び酸素の供給を受けて発電を行う燃料電池(FC:Fuel Cell)5と、燃料電池5で発生される電力を充電する二次電池(駆動用バッテリ)7と、を備える。また、電動車両3には、この二次電池7の電力によって駆動される駆動モータ9が備えられている。燃料電池5は、主に、二次電池7を充電するために用いられる所謂レンジエクステンダー用の燃料電池として構成されている。
【0031】
また、図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池5の空気極11に酸素を供給する空気供給手段13と、燃料電池5の燃料極15に水素ガスを供給する水素供給手段17と、燃料電池5の起動(発電)および停止、さらに、燃料電池5の発電電力の二次電池7への充電、駆動モータ9への電力の供給を総合的に制御する制御装置19を備えている。
【0032】
そして、制御装置19には、二次電池7のSOC(State Of Charge、充電状態)に基づいて燃料電池5の起動(発電)及び停止(アイドリング)を制御する発電制御部21と、空気極11に供給された空気を燃料電池5(空気極11)の内部において循環するように制御する空気内部循環制御部23とを有している。
【0033】
燃料電池5は、固体高分子電解質膜を挟んで空気極11と燃料極15とを対設した構造を有する発電セルをセパレータで挟持して、これを複数積層して構成されている。また、複数の発電セルの各空気極側の触媒層に酸素である空気が供給され、各燃料極側の触媒層に燃料ガスの水素ガスが供給されるようになっている。そして、燃料極15に水素ガスを供給するとともに空気極11に酸素を含む空気を供給することで、水素と酸素とを化学反応させて電極間に発生する起電力として電気エネルギーを取り出す。
【0034】
図1においては、複数の発電セルの各空気極をまとめて便宜的に空気極11として示し、複数の発電セルの各燃料極をまとめて便宜的に燃料極15として示している。そして、燃料電池5には、空気極11に空気を供給する空気供給通路25が接続され、燃料極15には、水素ガスを供給する水素供給通路27が接続されている。
【0035】
空気供給通路25には、上流側に図示しないフィルターを介して外気が導入される空気コンプレッサ29が設けられている。空気コンプレッサ29は、制御装置19によって、回転速度が制御されて、空気極11へ供給される空気流量が制御される。また、空気極11への空気の供給を制御する空気入口弁31が空気供給通路25に設けられ、制御装置19によって開閉が制御される。
【0036】
空気コンプレッサ29の下流側には空気コンプレッサ29からの加圧空気を冷却するインタークーラを設けてもよい。以上の空気供給通路25と、空気コンプレッサ29と、空気入口弁31とによって空気供給手段13が構成されている。
【0037】
また、水素供給通路27の上流側には、燃料ガスである水素を高圧状態で貯蔵する図示しない高圧水素タンク及び高圧水素タンクからの水素ガスの圧力を調整する調圧弁が設けられ、調圧された水素ガスの燃料極15への供給を制御する水素入口弁33が設けられ、水素入口弁33が閉じられると燃料極15への水素ガスの供給が遮断されるとともに、燃料極15へ供給された水素ガスを燃料極15の内部に封止するように制御される。
【0038】
以上の図示しない高圧水素タンク及び調圧弁と、さらに水素供給通路27と、水素入口弁33とによって水素供給手段17が構成されている。
【0039】
燃料電池5の空気極11及び燃料極15に、それぞれ供給された空気及び水素ガスは、それぞれ一部が消費され、未使用の空気及び水素ガスは、空気排出通路35及び水素排出通路37を介して外部(大気)に排出されるようになっている。空気排出通路35には空気排出弁39が設けられ、水素排出通路37には水素排出弁41が設けられ、それぞれは、制御装置19によって開閉が制御される。
【0040】
また、水素排出通路37と水素供給通路27を接続するように水素再循環通路43が設けられ、燃料電池5の燃料極出口ガスを燃料極15の入口側に循環させるようになっている。この水素再循環通路43は、水素供給通路27の水素入口弁33の下流側と、水素排出通路37の水素排出弁41の上流側とを連結するように接続されている。
【0041】
また、この水素再循環通路43には燃料極出口ガスを水素供給通路27に戻すように流す水素再循環ポンプ45が設けられている。このような水素再循環通路43及び水素再循環ポンプ45によって、水素を再循環させて燃料の水素ガスを効率よく利用できるようになっている。
【0042】
また、空気極11においては、空気極11の内部の空気を外部に排出可能なように、空気極11の入口と出口との間の空気流通経路47に内部パージ通路49が接続され、その内部パージ通路49に空気内部循環パージ弁51が設けられている(図2、3参照)。なお、図4は、空気内部循環パージ弁51が設けられていない従来技術の空気極11'の構造を示す。
【0043】
図2は、空気極11の入口と出口との間の空気流通経路47に接続する内部パージ通路49が空気極11の入口の直後に設けられている例を示し、図3は、内部パージ通路49が空気極11の入口と出口との略中間部に位置して設けられている例を示す。そして、内部パージ通路49に空気内部循環パージ弁51が設けられている。この内部パージ通路49の設置位置については、図2、3の例に限るものではなく、空気極11の入口と出口との間であればよい。
【0044】
また、図1に示すように、燃料電池5によって発電された電力は、DC/DCコンバータ53を介して、二次電池7の所定電圧に変換されて二次電池7に充電されるようになっている。また、二次電池7からの電力、または燃料電池5からの電力(一部の電力)はインバータ55を介して所定の交流電力に変換されて駆動モータ9に供給されて電動車両3の駆動輪を駆動するようになっている。
【0045】
次に、制御装置19について説明する。制御装置19には、図示しない信号入力部、信号出力部、記憶部、演算部、タイマー等が設けられている。そして、信号入力部には、二次電池7の充電状態を検出する充電状態検出手段57から二次電池7のSOCの信号が入力される。
【0046】
また、駆動モータ9の出力として車速を検出する車速センサ59から車速信号、燃料電池5の出力電圧を検出する電圧センサ61からの信号がそれぞれ入力されている。
【0047】
制御装置19の発電制御部21によって、既に説明したように、二次電池7のSOCに基づいて燃料電池5の発電開始及び発電停止(アイドリング)の制御が実行される。
【0048】
また、空気内部循環制御部23によって、空気極11に供給された空気を燃料電池5(空気極11)の内部において循環するように、空気入口弁31と空気排出弁39と空気内部循環パージ弁51との開閉を制御する。
【0049】
図5に、制御装置19の制御フローチャートを示す。まず、ステップS1において、電動車両3の車速を車速センサ59の検出値から読み込み、充電状態検出手段57から二次電池7のSOCを読み込む。
【0050】
ステップS2では、ステップS1で読み込んだ車速から電動車両3が走行中かを判定し、走行中である場合にステップS3に進む。
【0051】
ステップS3では、ステップS1で読み込んだ二次電池7のSOCが、FC発電停止(アイドリング)SOC(SOC)以上かを判定する(図8(G)のt)。すなわち、燃料電池5は、二次電池7のSOCが、FC発電開始SOC(SOC、不図示)以下に低下したときに発電を開始し、二次電池7に充電を行い、その充電に伴ってSOCが上昇して、FC発電停止(アイドリング)SOC(SOC)以上かを判定して、SOCに達すると二次電池7への充電を停止する。なお、SOC図8に図示されていないが、SOC>SOCの関係の所定の閾値である。
【0052】
従って、ステップS3での判定が、FC発電停止SOC(SOC)以上でありYesの場合には、ステップS7に進んでFC発電停止(アイドリング)に移行する。そして、次に、ステップS6で空気内部循環制御を実行する。
【0053】
また、ステップS3での判定が、FC発電停止SOC(SOC)未満でありNoの場合には、ステップS4に進んでFC発電を続行する。そして、次に、ステップS5では、走行出力(車速)が閾値(H)以下かを判定する。ステップS5の判定がYesの場合には、次に、ステップS6で空気内部循環制御を実行する。
【0054】
以上の一実施形態によれば、空気極11の入口と出口との間の空気流通経路47に設けられ燃料電池の外部への空気の排出を制御する空気内部循環パージ弁51を設け、空気内部循環制御部23によって、空気入口弁31と空気排出弁39と空気内部循環パージ弁51との開閉を制御して、空気極11の内部に供給された空気を内部循環するように空気内部循環制御が行われるので、未反応酸素を効率よく発電に利用することができる。これによって燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【0055】
また、空気極11の内部において空気を循環させるので、燃料電池スタックの外部に配管を設けて、それによって空気循環流路を形成する必要がないため、システム構造の簡素化が可能となる。
【0056】
また、電動車両3が、二次電池7の充電に特化したレンジエクステンダー用燃料電池を搭載した電動車両であるので、空気内部循環制御部23による制御を行っても、電動車両3の走行性能には大きく影響せずに、燃料電池5の発電効率を向上させることができる。
【0057】
また、電動車両3が走行中であって、二次電池7のSOCが、FC発電開始SOC(SOC)以下に低下して燃料電池5が発電を開始して通常発電状態でも、電動車両3が所定の走行出力以下の場合(車速がH以下の場合)には、空気内部循環制御部23による循環制御を行う。空気内部循環制御によって通常発電時より発電電力が低下しても、所定の走行出力以下であるため、走行性能に大きな悪影響が生じない。従って、電動車両3の走行性能に影響を与えないで燃料電池5の発電効率を向上させることができる(図5ステップS5、S6)。
【0058】
また、燃料電池5の発電によって、二次電池7のSOCがFC発電停止SOC(SOC)以上まで充電されて、燃料電池5が発電を停止してアイドリング状態となるときに、空気内部循環制御部23による循環制御を実行するので、FC発電停止SOCの条件が成立後、直ちに発電を停止する場合に比べて燃料電池5の内部の空気を有効利用することによって発電効率を向上させることができる。
【0059】
次に、図6に一実施形態を示す。この図6に示す一実施形態では、空気内部循環制御部23の制御を示し、主な制御の流れは、空気排出弁39を閉じ、空気入口弁31を開き、空気内部循環パージ弁51の開閉を繰り返す。これによって、燃料電池5の内部に供給された空気を内部循環させる。
【0060】
図6において、まず、ステップS11で、空気コンプレッサ29からの流量を空気内部循環空気量に低下させる。つまり、通常発電時の空気流量よりも低下させる。次に、ステップS12では、空気排出弁39を閉じる。次にステップS13では、空気入口弁31を開く。なお、空気入口弁31が開状態であればその状態を維持する。
【0061】
次に、ステップS14では、空気内部循環パージ弁51の開閉作動を繰り返す。繰り返しのインターバルは特に限定するものではなく、空気極11の内部の空気が空気内部循環パージ弁51を介して外部へ排出される時間であればよい。例えば1~10秒間隔で開閉を繰り返す。
【0062】
次に、ステップS15では、FC電圧を電圧センサ61から検出して、所定電圧(V)以下かを判定する。FC電圧が所定電圧(V)以下であれば、判定結果はYesとなって空気内部循環制御は終了する。また、ステップS15での判定が所定電圧(V)を超えている場合には、Noと判定して、ステップS11に戻ってステップS11からの処理を繰り返して空気内部循環制御を継続する。
【0063】
図2、3に示すように、空気内部循環パージ弁51が開くと、空気極11の内部に供給された空気の一部は、図2、3の矢印Kで示すようにリターン(逆流)ガスとなって空気内部循環パージ弁51に向かって逆流させることができる。これによって、供給された空気を内部循環させて未反応酸素を効率よく発電に利用することができる。
【0064】
なお、前述したように、図2は、空気極11の入口と出口との間の空気流通経路47に接続する内部パージ通路49が空気極11の入口の直後に設けられている例を示し、図3は、内部パージ通路49が空気極11の入口と出口との略中間部に位置して設けられている例を示す。
【0065】
図2では、空気入口弁31から供給される新規の空気は、入口直後の空気内部循環パージ弁51aから排出されるように流れ、さらに、空気極11内部の空気は、リターン(逆流)ガスとなって空気内部循環パージ弁51aに向かって逆流する。
【0066】
図3においても、図2の場合と同様に、空気入口弁31から供給される新規の空気は、空気内部循環パージ弁51aから排出されるように流れ、さらに、空気極11内部の空気は、空気内部循環パージ弁51aに向かって逆流する。
【0067】
なお、空気内部循環パージ弁51a、51bが開のときに、空気入口弁31を閉じるようにして、空気入口弁31を空気内部循環パージ弁51の開閉のタイミングと逆の位相で開閉させてもよい。この場合には、空気入口弁31が閉じているときに空気内部循環パージ弁51が開くので、空気入口弁31からの新規空気が導入とともに空気内部循環パージ弁51から排出されることはなく、空気極11の内部の残留空気がリターン(逆流)ガスとなって空気内部循環パージ弁51に向かうように流れるため、逆流をより確実に発生させることができる。
【0068】
以上の図6図2図3の実施形態によれば、空気排出弁39を閉じ、空気入口弁31を開き空気内部循環パージ弁51の開閉を繰り返すことで、燃料電池5の燃料極15の内部に供給された空気の一部は、リターン(逆流)ガスとなって空気内部循環パージ弁51に向かって逆流させることができ、それによって空気極11内部において未反応酸素を効率よく利用して発電を行うことが可能になる。
【0069】
また、空気内部循環制御において、空気コンプレッサ29の出力が通常発電時における圧縮空気量よりも低い空気内部循環空気量に低下させるので、空気コンプレッサ29の負荷が低減されて空気コンプレッサ29の稼働効率を向上できる。
【0070】
また、空気内部循環制御において、燃料電池5の出力電圧が所定電圧(V)以下になったとき、空気内部循環制御は終了する。これによって、通常発電中に空気内部循環制御が実行されたのであれば再度通常発電に戻る。従って、空気内部循環制御を行っても所定の電圧値以下には低下しないように制御される。
【0071】
次に、図7に一実施形態を示す。この図7の実施形態は、図5のフローチャートのステップS5からS6に進んで、図6の空気内部循環制御が実行される場合の制御タイムチャートを示すものである。
【0072】
従って、制御内容は図5のステップS5において、走行出力(車速)が閾値(H)以下かを判定する。ステップS5の判定がYesの場合には、次に、ステップS6で空気内部循環制御を実行する。
【0073】
走行出力(車速)が閾値(H)以下になったときにの状態を、図7(G)の制御タイムチャートに示す。また、空気内部循環制御は、図6に示すステップS11~S15を実行する。このときのタイムチャートを図7(A)~(F)に示す。
【0074】
図7の制御タイムチャートは、横軸に時間経過を示し、縦軸に次の図7(A)~(G)のそれぞれを示す。横軸の期間t~t及びt以降は燃料電池5の通常発電の状態を示し、期間t~tは、空気内部循環制御の状態を示す。
【0075】
図7(A)は、空気排出弁39の作動状態を示す。tで空気内部循環制御が開始されると空気排出弁39を閉じ、tで空気内部循環制御が終了すると、空気排出弁39を開き通常発電に戻ることが示されている。
【0076】
図7(B)は、空気内部循環パージ弁51の作動状態を示す。tで空気内部循環制御が開始されると開閉作動をパルス的に繰り返し、tで空気内部循環制御が終了すると、閉じることが示されている。
【0077】
図7(C)は、空気コンプレッサ29の作動状態を示す。tで空気内部循環制御が開始されると通常発電空気量から空気内部循環空気量に低減された空気量が供給され、tで空気内部循環制御が終了すると、通常発電空気量に戻ることが示されている。
【0078】
図7(D)は、FC内部圧力を示す。すなわち、tで空気内部循環制御が開始され、tで終了して通常発電に戻る間、空気内部循環パージ弁51の作動状態に連動して、パルス的にFC内部圧力が変動することが示されている。
【0079】
図7(E)は、FC出力の状態を示す。tで空気内部循環制御が開始され、tで終了して通常発電に戻る間、通常発電FC出力から低下していくことが示されている。
【0080】
図7(F)は、FC電圧の状態を示す。tで空気内部循環制御が開始され、tで空気内部循環停止FC電圧に低下すると空気内部循環制御が終了して通常発電に戻る。空気内部循環制御の間、通常発電FC電圧から低下していくことが示されている。
【0081】
図7(G)は、電動車両3の走行出力(車速)の状態を示す。tで走行出力閾値(車速H)以下に低下して空気内部循環制御が開始されることが示されている。
【0082】
以上の図7に示した一実施形態によれば、電動車両3が所定の走行出力閾値(車速閾値)(H)以下に低下したとき、空気内部循環制御が開始され、FC電圧がtで空気内部循環停止FC電圧に低下したとき、空気内部循環制御が終了して通常発電に戻る。
【0083】
従って、電動車両3が所定の走行出力以下の場合(車速がH以下の場合)には、空気内部循環制御部23による循環制御を行って通常発電より発電電力が低下しても、走行出力に大きな悪影響が生じないので、電動車両3の走行性能に影響を与えないで燃料電池5の発電効率を向上させることができる。
【0084】
さらに、空気内部循環停止FC電圧に低下したとき空気内部循環制御が終了されて通常発電に戻るので、空気内部循環制御を行っても燃料電池の性能は維持されるように制御される。
【0085】
次に、図8に一実施形態を示す。この図8の実施形態は、図5のフローチャートのステップS3、S7、S6に進んで、図6の空気内部循環制御が実行される場合の制御タイムチャートを示すものである。
【0086】
従って、制御内容は図5のステップS3において、二次電池7のSOCがFC発電停止SOC(SOC)以上であり、ステップS7に進んでFC発電停止(アイドリング)に移行する。そして、ステップS6で空気内部循環制御を実行する。
【0087】
二次電池7のSOCがFC発電停止SOC(SOC)以上に上昇した状態を図8(G)の制御タイムチャートに示す。また、空気内部循環制御は、図6に示すステップS11~S15を実行する。このときのタイムチャートを図8(A)~(F)に示す。
【0088】
図8の制御タイムチャートは、横軸に時間経過を示し、縦軸に次の図8(A)~(G)のそれぞれを示す。横軸の期間t~tは、燃料電池5の通常発電の状態を示し、t~tは、空気内部循環制御の状態を示し、t以降は、発電停止状態を示す。
【0089】
図8(A)は、空気排出弁39の作動状態を示す。tでFC発電停止条件が成立して空気内部循環制御が開始され、そのt以降は空気排出弁39が閉状態を維持することが示されている。
【0090】
図8(B)は、空気内部循環パージ弁51の作動状態を示す。tで空気内部循環制御が開始されると開閉作動をパルス的に繰り返し、tで空気内部循環制御が終了すると、閉じることが示されている。
【0091】
図8(C)は、空気コンプレッサ29に作動状態を示す。tで空気内部循環制御が開始されると通常発電空気量から空気内部循環空気量に低減された空気量が供給され、tで空気内部循環制御が終了すると、空気コンプレッサ29は停止することが示されている。
【0092】
図8(D)は、FC内部圧力を示す。tで空気内部循環制御が開始され、tで空気内部循環制御が終了する間、空気内部循環パージ弁51の作動状態に連動して、パルス的にFC内部圧力が変動することが示されている。
【0093】
図8(E)は、FC出力を示す。tで空気内部循環制御が開始されtで終了する間、通常発電FC出力から低下し、tでFC出力はゼロになることが示されている。
【0094】
図8(F)は、FC電圧の状態を示す。tで空気内部循環制御が開始され、tで空気内部循環停止FC電圧に低下すると空気内部循環制御が終了してFC電圧は発電停止FC電圧になる。空気内部循環制御の間、通常発電FC電圧から低下していくことが示されている。
【0095】
図8(G)は、二次電池7のSOCの状態を示す。tで二次電池7のSOCがFC発電停止SOC(SOC)以上に上昇して空気内部循環制御が開始されることが示されている。
【0096】
以上の図8に示した一実施形態によれば、燃料電池5による発電によって、二次電池7がFC発電停止SOC(SOC)以上に上昇して発電を停止してアイドリングとなるときに、空気内部循環制御部23による循環制御を実行させるので、FC発電停止SOCの条件が成立後、直ちに発電を停止する場合に比べて燃料電池5の内部の空気を有効利用することによって発電効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、未反応酸素を燃料電池内部で逆流させて再循環させることによって、未反応酸素を効率よく発電に利用して燃料電池の発電効率を向上させることができ、しかも簡単な構造で達成させることができるので、燃料電池システム及び該燃料電池システムを備えた電動車両への利用に適している。
【符号の説明】
【0098】
1 燃料電池システム
3 電動車両
5 燃料電池
7 二次電池
9 駆動モータ
11 空気極
13 空気供給手段
15 燃料極
17 水素供給手段
19 制御装置
21 発電制御部
23 空気内部循環制御部
29 空気コンプレッサ
31 空気入口弁
33 水素入口弁
39 空気排出弁
41 水素排出弁
43 水素再循環通路
45 水素再循環ポンプ
51 空気内部循環パージ弁
57 充電状態検出手段
59 車速センサ
61 電圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8