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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/15 20060101AFI20220802BHJP
   B62D 7/14 20060101ALI20220802BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B62D7/15 B
B62D7/14 B
B66F9/06 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018139282
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015403
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 修
(72)【発明者】
【氏名】山口 晴行
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205740213(CN,U)
【文献】特開平06-032599(JP,A)
【文献】特開2012-188182(JP,A)
【文献】特開2003-026397(JP,A)
【文献】特開2017-095235(JP,A)
【文献】特開2018-111589(JP,A)
【文献】特開昭63-039007(JP,A)
【文献】特開2001-233219(JP,A)
【文献】米国特許第07861820(US,B1)
【文献】米国特許第09789902(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/15
B62D 7/14
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して直動ガイドにより昇降可能にガイドされた、荷を支持する荷支持部と、
前記基体に支持され、所定の間隔で並んだ2つの駆動輪と、
前記基体の前記2つの駆動輪の間に設けた、前記荷支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基体に設けた、前記駆動輪を別個に操舵する2つの操舵部と、
前記基体の下部から前記荷支持部が前記荷を支持する側へ突出する支持部材により支持され、前記駆動輪が並ぶ方向と平行に、所定の間隔で並んだ2つの従動輪と、
を備え、
前記2つの駆動輪の間隔よりも前記2つの従動輪の間隔は小さく、
前記2つの駆動輪の操舵軸間の中点を通り、前記2つの駆動輪の操舵軸を結ぶ直線に垂直な平面を対称面として、前記2つの従動輪の回動軸は面対称の位置にあり、
前記対称面を境にして同側にある前記駆動輪及び前記従動輪に対して、前記操舵部の操舵による前記駆動輪の動作を前記従動輪に伝える2つの操舵伝動部をさらに備えるとともに
前記操舵伝動部により伝えられた前記駆動輪の操舵角と同じ操舵角を中心として、前記従動輪を所定の角度範囲内で遊動可能に連結する遊動連結部をさらに備えることを特徴とする、
搬送車。
【請求項2】
前記支持部材に、前記従動輪が並ぶ方向と平行で、且つ、前記従動輪が並ぶ間隔と同じ間隔で並び、前記対称面に関して面対称の位置にある、少なくとも2つの副従動輪をさらに備える、
請求項に記載の搬送車。
【請求項3】
前記操舵伝動部は、前記操舵部によって操舵される前記駆動輪の操舵角と前記従動輪の操舵角とが同位相の関係になるように、前記駆動輪と前記従動輪とを連結する、
請求項に記載の搬送車。
【請求項4】
前記遊動連結部は、
前記従動輪の回動軸と同軸に配置した一対のリング状部材を備え、
前記リング状部材の一方は、前記操舵連動部の一部を成し、
前記リング状部材の他方は、前記従動輪を支持するハウジングに連結され、
前記リング状部材に、一方には円弧状長孔を、他方には、前記円弧状長孔に重なる丸孔を設け、
前記一対のリング状部材間にわたるように、前記円弧状長孔及び前記丸孔に挿通される軸体をさらに備える、
請求項に記載の搬送車。
【請求項5】
前記荷は、矩形かつ平面形状からなる床材の少なくとも四隅に車輪を備えた物流台車に物品を積載したもの、又は空荷の前記物流台車であり、
前記荷支持部は、前記従動輪とともに、前記物流台車の床材の下側へ進入し、前記床材の下方から前記物流台車を支持する、
請求項1~の何れか1項に記載の搬送車。
【請求項6】
前記荷支持部は、
前記直動ガイドによりガイドされる垂直部と、
前記垂直部の下端から略水平に伸び、前記駆動輪が並ぶ方向と平行な方向に離間した、前記荷を支持する一対のフォーク部と
からなり、
前記一対のフォーク部の間隔は、前記2つの駆動輪の間隔以下で、且つ、前記従動輪の間隔以上である、
請求項1~の何れか1項に記載の搬送車。
【請求項7】
前記荷は、矩形かつ平面形状からなる床材の四隅に自在車輪を備えるとともに、前記床材の長辺部の中央に固定車輪をさらに備えた六輪台車に物品を積載したもの、又は空荷の前記六輪台車であり、
前記一対のフォーク部の各々は、前記従動輪とともに、前記床材の長手方向に隣り合う、前記自在車輪と前記固定車輪との間における前記床材の下側へ進入し、前記床材の下方から前記六輪台車を支持する、
請求項に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫や工場内で荷を搬送するローリフト型の搬送車に関わり、さらに詳しくは、物流台車の搬送に好適な搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場内で荷を搬送する、床面レベルにあるパレット等をフォークにて若干持ち上げてそのまま床面上を搬送するローリフト型の搬送車がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1の搬送車は、基台2に設けた、1つの操舵駆動輪1、及び2つの補助輪12,12、並びに左右のフォーク4,4の先端部に設けた従動輪5,5を備えるとともに、基台2の内部中央に、前輪である操舵駆動輪1と後輪である従動輪5,5との間に設けた、左右のフォーク4,4を昇降させる昇降装置6を備える。
特許文献2の第1図、第2図及び第4図の搬送車は、本体フレーム11に設けた、1つの操舵駆動輪29、及び2つの補助輪39,39、並びに左右のフォーク部13,13の先端部に設けた従動輪22,22を備えるとともに、本体フレーム11の後部に、前輪である操舵駆動輪29と後輪である従動輪22,22との間に設けた、左右のフォーク部13,13を昇降させる昇降装置(フォーク昇降用の油圧シリンダ19等)を備える。
【0003】
一方、倉庫や工場内では、搬送、配送、又は保管を行う物流台車(例えば、非特許文献1ないし3参照)が広く用いられている。スリムな物流台車を用いることにより、物流台車に物品を積載した状態、又は物流台車から物品を降ろした空荷の状態で、その物流台車を人が手押ししながら狭い通路を移動できる。
このような物流台車を前記ローリフト型の搬送車で搬送する場合、前記ローリフト型の搬送車は、姿勢を変えることなく前後方向に対して直交するように走行する横行走行はできず、その上前後方向の長さが長いので、狭い通路の移動には不向きである。
【0004】
なお、特許文献2の第6図(a)ないし(c)の説明図には、特許文献2の発明のスピンターンを実施する3輪又は4輪構成の変形例として、操舵輪と駆動輪を分ける構成や、何れの車輪も操舵駆動輪にするようにした構成が記載されている。この中の第6図(b)のように3輪の全てを操舵駆動輪にすれば、前記横行走行が可能になる。
しかしながら、車輪の全てを操舵駆動輪にすると、後輪56,56の構造が複雑且つ嵩高となってしまうので、製造コストの増大に繋がるとともに、フォークが低床であるローリフト型としてのメリットが損なわれる。その上、前記ローリフト型の搬送車は前後方向の長さが長いので、走行スペースが小さい状態で前後走行及び横行走行の両方を行うことができない。
【0005】
他方、横方向に荷役作業を行う無人搬送車として、平面コ字状の車体1の中央部一側にフォークFを備え、前記車体1の通常走行方向の前後に設けた駆動操舵輪2a,2b、及び同じく前後に設けた従動輪3a,3bを備えたものがある(例えば、特許文献3参照)。
このような搬送車によれば、図1のように通常走行で前後方向へ移動できるとともに、姿勢を変えることなく図2のように横行走行で左右方向へ移動できる。
このような搬送車は、左折又は右折に際し、通常走行のみによって円弧上をカーブして進む搬送車と比べて、走行スペースを小さくできるので、狭い通路の移動に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3541758号公報
【文献】特許第2661720号公報
【文献】特許第2814823号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】“各種物流機材”、ヤマト・インダストリー株式会社のウェブページ、[平成30年7月10日検索]、インターネット<URL:http://www.yamato-in.co.jp/buturyuu/index.html>
【文献】“バックヤード・店舗機器シリーズ紹介”、三甲株式会社のウェブページ、[平成30年7月10日検索]、インターネット<URL:http://www.sanko-kk.co.jp/products/backyard/>
【文献】“物流機器の製品情報”、株式会社マキテックのウェブページ、[平成30年7月10日検索]、インターネット<URL:http://www.makitech.co.jp/carry/index.html#rokurin>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のような横方向に荷役作業を行う搬送車によれば、フォークを低床化しつつ、前後方向及び左右方向へ移動することができる。
しかしながら、車体1の平面コ字状の開口内にフォークFを備えているとともに、フォークFの前後に従動輪3a,3b及びそれらのハウジングが存在することから、構造的に大きくなりやすく、その上、フォークで掬える荷が前記開口内に収まるものに限られる。よって、特許文献3のような平面コ字状の搬送車は、物流台車の搬送には適さない。
【0009】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、物流台車等の荷を支持しながら狭い通路を様々な方向へ移動できる搬送車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕基体に対して直動ガイドにより昇降可能にガイドされた、荷を支持する荷支持部と、
前記基体に支持され、所定の間隔で並んだ2つの駆動輪と、
前記基体の前記2つの駆動輪の間に設けた、前記荷支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基体に設けた、前記駆動輪を別個に操舵する2つの操舵部と、
前記基体の下部から前記荷支持部が前記荷を支持する側へ突出する支持部材により支持され、前記駆動輪が並ぶ方向と平行に、所定の間隔で並んだ2つの従動輪と、
を備え、
前記2つの駆動輪の間隔よりも前記2つの従動輪の間隔は小さく、
前記2つの駆動輪の操舵軸間の中点を通り、前記2つの駆動輪の操舵軸を結ぶ直線に垂直な平面を対称面として、前記2つの従動輪の回動軸は面対称の位置にあることを特徴とする、
搬送車。
【0011】
〔2〕基体に対して直動ガイドにより昇降可能にガイドされた、荷を支持する荷支持部と、
前記基体に支持され、所定の間隔で並んだ2つの駆動輪と、
前記基体の前記2つの駆動輪の間に設けた、前記荷支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基体に設けた、前記駆動輪を別個に操舵する2つの操舵部と、
前記基体の下部から前記荷支持部が前記荷を支持する側へ突出する支持部材により支持され、前記駆動輪が並ぶ方向と平行に、所定の間隔で並んだ2つの従動輪と、
を備え、
前記従動輪は、全方向車輪であり、
前記2つの駆動輪の間隔よりも前記2つの従動輪の間隔は小さく、
前記2つの駆動輪の操舵軸間の中点を通り、前記2つの駆動輪の操舵軸を結ぶ直線に垂直な平面を対称面として、前記2つの従動輪の平面視中央は面対称の位置にあることを特徴とする、
搬送車。
〔3〕前記支持部材に、前記従動輪が並ぶ方向と平行で、且つ、前記従動輪が並ぶ間隔と同じ間隔で並び、前記対称面に関して面対称の位置にある、少なくとも2つの副従動輪をさらに備える、
前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の搬送車。
【0012】
〔4〕前記対称面を境にして同側にある前記駆動輪及び前記従動輪に対して、前記操舵部の操舵による前記駆動輪の動作を前記従動輪に伝える2つの操舵伝動部をさらに備える、
前記〔1〕に記載の搬送車。
〔5〕前記操舵伝動部は、前記操舵部によって操舵される前記駆動輪の操舵角と前記従動輪の操舵角とが同位相の関係になるように、前記駆動輪と前記従動輪とを連結する、
前記〔4〕に記載の搬送車。
〔6〕前記操舵伝動部により伝えられた前記駆動輪の操舵角と同じ操舵角を中心として、前記従動輪を所定の角度範囲内で遊動可能に連結する遊動連結部をさらに備える、
前記〔4〕又は前記〔5〕に記載の搬送車。
〔7〕前記遊動連結部は、
前記従動輪の回動軸と同軸に配置した一対のリング状部材を備え、
前記リング状部材の一方は、前記操舵連動部の一部を成し、
前記リング状部材の他方は、前記従動輪を支持するハウジングに連結され、
前記リング状部材に、一方には円弧状長孔を、他方には、前記円弧状長孔に重なる丸孔を設け、
前記一対のリング状部材間にわたるように、前記円弧状長孔及び前記丸孔に挿通される軸体をさらに備える、
前記〔6〕に記載の搬送車。
【0013】
〔8〕前記荷は、矩形かつ平面形状からなる床材の少なくとも四隅に車輪を備えた物流台車に物品を積載したもの、又は空荷の前記物流台車であり、
前記荷支持部は、前記従動輪とともに、前記物流台車の床材の下側へ進入し、前記床材の下方から前記物流台車を支持する、
前記〔1〕~前記〔7〕の何れかに記載の搬送車。
〔9〕前記荷支持部は、
前記直動ガイドによりガイドされる垂直部と、
前記垂直部の下端から略水平に伸び、前記駆動輪が並ぶ方向と平行な方向に離間した、前記荷を支持する一対のフォーク部と
からなり、
前記一対のフォーク部の間隔は、前記2つの駆動輪の間隔以下で、且つ、前記従動輪の間隔以上である、
前記〔1〕~前記〔8〕の何れかに記載の搬送車。
〔10〕前記荷は、矩形かつ平面形状からなる床材の四隅に自在車輪を備えるとともに、前記床材の長辺部の中央に固定車輪をさらに備えた六輪台車に物品を積載したもの、又は空荷の前記六輪台車であり、
前記一対のフォーク部の各々は、前記従動輪とともに、前記床材の長手方向に隣り合う、前記自在車輪と前記固定車輪との間における前記床材の下側へ進入し、前記床材の下方から前記六輪台車を支持する、
前記〔9〕に記載の搬送車。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る搬送車によれば、主に以下のような効果を奏する。
(1)2つの駆動輪の間隔よりも2つの従動輪の間隔は小さく、2つの駆動輪の操舵軸及び2つの従動輪の回動軸、又は2つの駆動輪操舵軸及び2つの全方向車輪である従動輪の平面視中央が面対称の位置にあるとともに、2つの駆動輪は操舵部により個別に操舵されるので、搬送車は全方向へ移動できる。
(2)2つの従動輪を基体の下部から突出する支持部材により支持しており、従動輪及び支持部材が荷支持部により支持される荷と干渉しにくいので、大きさの異なる物流台車等が荷である場合であっても、その荷を搬送車が搬送できる。
(3)荷支持部を昇降駆動する昇降駆動部を基体の2つの駆動輪の間に設けていることから、2つの駆動輪が並ぶ方向と直交する水平方向の長さを短くできるので、スリムな物流台車等が荷である場合であっても、その荷を搬送車が支持しながら狭い通路を移動できる。
(4)従動輪が全方向車輪である構成、又は操舵部の操舵による駆動輪の動作を従動輪に伝える操舵伝動部を備える構成にすることにより、搬送車の走行安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る搬送車を示す概略平面図である。
図2】同じく概略正面図である。
図3】同じく概略斜視図である。
図4】搬送車が荷を支持した状態を示す概略平面図である。
図5A】フォーク部を物流台車の床材の下側に挿入した状態を示す概略正面図である。
図5B】フォーク部を上昇させて物流台車を持ち上げた状態を示す概略正面図である。
図6A】操舵伝動部の概略説明図であり、駆動輪及び従動輪を前後方向へ向けた例を示している。
図6B】操舵伝動部の概略説明図であり、駆動輪及び従動輪を左右方向へ向けた例を示している。
図6C】操舵伝動部の概略説明図であり、駆動輪の操舵軸及び従動輪の回動軸を図6Bの位置から平面視で反時計方向へ45°回動させた例を示している。
図6D】操舵伝動部の概略説明図であり、駆動輪の操舵軸及び従動輪の回動軸を図6Bの位置から平面視で時計方向へ45°回動させた例を示している。
図6E】操舵伝動部の概略説明図であり、駆動輪を円弧状経路における円弧の接線方向へ向けた例を示している。
図7】遊動連結部まわりを示す部分横断面要部拡大平面図であり、従動輪の回動軸の操舵角が駆動輪と操舵角と同じである場合を示している。
図8A】遊動連結部まわりを示す部分横断面要部拡大平面図であり、図7の位置から従動輪が遊動した例を示している。
図8B】遊動連結部まわりを示す部分横断面要部拡大平面図であり、図7の位置から従動輪が図8Aと反対方向へ遊動した例を示している。
図9A】遊動連結部まわりを示す部分縦断面要部拡大正面図である。
図9B】遊動連結部まわりを示す部分縦断面要部拡大右側面図である。
図10】従動輪を全方向車輪にした本発明の実施の形態に係る搬送車を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の実施形態において、2つの駆動輪が並ぶ方向を前後方向(図1の矢印A1の方向を前方)とし、前方へ向かって左右を定義し、前方から見た図を正面図とする。
【0017】
<搬送車>
図1の概略平面図、図2の概略正面図、及び図3の概略斜視図、並びに図4の概略平面図に示す本発明に係る実施形態に係る搬送車1は、基体2、荷Lを支持する荷支持部3、荷支持部3を昇降駆動する昇降駆動部4、2つの駆動輪W1,W1、2つの従動輪W2,W2、駆動輪W1,W1を別個に操舵する2つの操舵部5,5、駆動輪W1,W1を別個に駆動する走行駆動部6,6、及び操舵部5の操舵による駆動輪W1の動作を従動輪W2に伝える2つの操舵伝動部7,7等を備える。
【0018】
駆動輪W1は基体2により操舵軸J1まわりに回動可能に支持され、自在車輪である従動輪W2は、基体2の下部から左方(荷支持部3が荷Lを支持する側)へ突出する支持部材9により回動軸J2まわりに回動可能に支持される。
荷支持部3は、基体2に対して前後の直動ガイドG,Gにより昇降可能にガイドされる垂直部3Aと、垂直部3Aの下端から略水平に左方に伸び、駆動輪W1,W1が並ぶ方向A1と平行な方向に離間した、荷Lを支持する一対のフォーク部3B,3Bとからなる。
【0019】
<車輪の配置>
2つの駆動輪W1,W1は、所定の間隔D1で前後に並び、2つの従動輪W2,W2は、駆動輪W1,W1が並ぶ方向A1と平行な方向(図1の方向A2)に、所定の間隔D2で並ぶ。
図1に示すように、2つの駆動輪W1,W1の操舵軸J1,J1の間隔D1よりも2つの従動輪W2,W2の回動軸J2,J2の間隔D2は小さい(D1>D2)。
2つの従動輪W2,W2の回動軸J2,J2は、対称面Eに関して面対称である。
対称面Eは、2つの駆動輪W1,W1の操舵軸J1,J1間の中点Bを通り、操舵軸J1,J1を結ぶ直線Cに垂直な平面である。
よって、対称面Eを境にして前方の駆動輪W1の操舵軸J1及び従動輪W2の回動軸J2と、対称面Eを境にして後方の駆動輪W1の操舵軸J1及び従動輪W2の回動軸J2とは、対称面Eに関して面対称の位置にある。
このような車輪の配置により、搬送車1が全方向へ移動する際の動作が安定する。
【0020】
<荷>
図4の概略平面図、並びに図5A及び図5Bの概略正面図に示す荷Lは、例えば物流台車LTの一例である、車輪Hを六輪備えた六輪台車Mである。
六輪台車Mは、矩形かつ平面形状からなる床材Fの四隅に自在車輪I,I,…を備えるとともに、床材Fの左右の長辺部の中央に固定車輪K,Kをさらに備える。
搬送車1は、荷Lである、六輪台車Mに物品を積載したもの、又は空荷の六輪台車Mを搬送する。
なお、物流台車LTは、六輪台車Mに限定されるものではなく、床材Fの少なくとも四隅に車輪H,H,…を備えたものであればよい。
【0021】
搬送車1の荷支持部3の前後のフォーク部3B,3Bは、支持部材9,9及び従動輪W2,W2とともに、床材Fの下側へ進入し、床材Fの下方から物流台車LTを支持する。
図4及び図5Aの例では、一対のフォーク部3B,3Bの各々は、支持部材9及び従動輪W2とともに、六輪台車Mの床材Fの長手方向に隣り合う、自在車輪Iと固定車輪Kとの間における床材Fの下側へ進入し、床材Fの下方から六輪台車Mを支持する。
このように六輪台車Mの固定車輪Kを挟むようにして、床材Fの下方から六輪台車Mを保持することにより、安定した六輪台車Mの搬送が可能となる。
【0022】
<昇降駆動部>
昇降駆動部4は、例えば油圧シリンダーであり、基体2の2つの駆動輪W1,W1の間に設ける。
図4及び図5Aのようにフォーク部3B,3Bを六輪台車Mの床材Fの下側に挿入した状態から、昇降駆動部4を駆動してフォーク部3B,3Bを上昇させることにより、図5Bのように六輪台車Mを上昇させることができる。
【0023】
<フォーク部の間隔>
図1に示す一対のフォーク部3B,3Bの間隔(フォーク部3B,3Bの幅方向中央の間隔)D3は、2つの従動輪W2,W2の間隔D2と等しい。
フォーク部3B,3Bの間隔D3は、2つの駆動輪W1,W1の間隔D1以下で、且つ、2つの従動輪W2,W2の間隔D2以上であればよい(D2≦D3≦D1)。
それにより、フォーク部3B,3Bにより物流台車LTを保持した状態が安定するので、図5Bのように物流台車LTを支持して搬送する動作が安定する。
また、荷支持部3の荷Lを受ける部分(例えば、フォーク部3B,3B)を、従動輪W2,W2の上側に配置することにより、荷支持部3の荷Lを受ける部分の低床化を図ることができる。
【0024】
<操舵部及び走行駆動部>
操舵部5は、例えば電動モータ及び減速機である操舵用駆動装置5A、操舵用駆動装置5Aの出力軸に固定された小径ギヤ5B、小径ギヤ5Bに噛合し、駆動輪W1とともに操舵軸J1まわりに回動するハウジングに取り付けた大径ギヤ5Cからなる。
操舵部5による操舵軸J1の回動角度は、図3に示す位置検出器Nで検出する。
走行駆動部6は、例えば電動モータ及び減速機であり、駆動輪W1を回転させる。
走行駆動部6は、駆動輪W1とともに操舵軸J1まわりに回動する。
【0025】
<操舵伝動部>
図1及び図3に示すように、操舵伝動部7は、スプロケット7A、無端チェーン7B、スプロケット7C、伝動軸7D、スプロケット7E、無端チェーン7F、及びスプロケット7Gからなる。
【0026】
スプロケット7Aは操舵軸J1とともに回動し、スプロケット7Cはスプロケット7Aから前後方向内方へ離間する。
スプロケット7A及び7Cには、無端チェーン7Bが架け渡される。
スプロケット7Cには上下方向に長い鉛直軸である伝動軸7Dの上端部が固定され、伝動軸7Dの下端部にはスプロケット7Eが固定され、従動輪W2のハウジング10(図7図9A)には、スプロケット7Gが連結される。
スプロケット7E及び7Gには、無端チェーン7Fが架け渡される。
【0027】
操舵伝動部7,7は、駆動輪W1,W1及び従動輪W2,W2の配置(D1>D2)により、平面視で、略L字状又は略逆L字状になる。
このような機構により、操舵伝動部7は、図1に示す対称面Eを境にして同側にある駆動輪W1及び従動輪W2に対して、操舵部5の操舵による駆動輪W1の動作を従動輪W2に伝える。
【0028】
次に、操舵伝動部7の動作について、図6Aないし図6Eの概略説明図により説明する。
図6Aのように、操舵部5,5により駆動輪W1,W1を前後方向へ向けると、操舵伝動部7,7によりトルクが伝達され、従動輪W2,W2も前後方向へ向く。
図6Bのように、操舵部5,5により駆動輪W1,W1を左右方向に向けると、操舵伝動部7,7によりトルクが伝達され、従動輪W2,W2も左右方向へ向く。
図6Cのように、操舵部5,5により駆動輪W1,W1を図6Bの位置から平面視で反時計方向へ45°回動させると、操舵伝動部7,7によりトルクが伝達され、従動輪W2,W2も駆動輪W1,W1と同様に図6Bの位置から平面視で反時計方向へ45°回動する。
図6Dのように、操舵部5,5により駆動輪W1,W1を図6Bの位置から平面視で時計方向へ45°回動させると、操舵伝動部7,7によりトルクが伝達され、従動輪W2,W2も駆動輪W1,W1と同様に図6Bの位置から平面視で時計方向へ45°回動する。
【0029】
以上のように、操舵伝動部7は、操舵部5によって操舵される駆動輪W1の操舵角と従動輪W2の操舵角とが同位相の関係になるように、駆動輪W1と従動輪W2とを連結している。
よって、図4及び図5Bのように、搬送車1のフォーク部3B,3Bで六輪台車Mを掬った直後でも、方向転換することなく、六輪台車Mの長手方向への走行や旋回が可能となるので、六輪台車M,M,…が狭い通路に並べて置かれている場合であっても、搬送車1を転回することなく、搬送車1で六輪台車Mを狭い通路に沿って搬送できる。
【0030】
図6Eのように、旋回中心Pの円弧状経路に沿って搬送車1を移動させるために、操舵部5,5により駆動輪W1,W1を操舵して、旋回中心Pと操舵軸J1との距離である旋回半径Q1の円弧の接線方向へ駆動輪W1,W1を向けた場合、操舵伝動部7,7によりトルクが伝達され、従動輪W2,W2は、従動輪W2,W2の操舵角が駆動輪W1,W1の操舵角と同位相になるように回動する。
その場合、従動輪W2,W2は、旋回中心Pと回動軸J2との距離である旋回半径Q2(Q2>Q1)の円弧の接線方向へ向いていないのでスリップが生じ、円滑な移動ができなくなることがある。
そこで、以下に示す遊動連結部を備えるのが望ましい。
【0031】
<遊動連結部>
図7図8A及び図8Bの部分横断面要部拡大平面図、並びに図9Aの部分縦断面要部拡大正面図、及び図9Bの部分縦断面要部拡大右側面図に示すように、遊動連結部8は、従動輪W2の回動軸J2と同軸に配置した一対のリング状部材R1,R2を備える。
リング状部材R1は操舵連動部7のスプロケット7Gであり、リング状部材R2は従動輪W2を支持するハウジング10に、ボルト16,17により連結される。
リング状部材R1は、円弧状長孔11,11,…を有し、リング状部材R2は、円弧状長孔11,11,…に重なる丸孔12,12,…を有する。
軸体Sであるボルト14を、上側のリング部材R2の丸孔12、上下のリング部材R2,R1間に配したカラー13、下側のリング部材R1の円弧状長孔11に挿通し、下方からナット15を螺合する。
【0032】
このような構成の遊動連結部8により、図7に示す従動輪W2の回動軸J2の操舵角が駆動輪W1と操舵角と同じである場合から、スプロケット7G(リング状部材R1)が動かない状態で、従動輪W2は、図8Aから図8Bに示す所定角度範囲内で遊動できる。
このように、遊動連結部8は、操舵伝動部7により伝えられた駆動輪W1の操舵角と同じ操舵角を中心として、従動輪W2を所定の角度範囲内で遊動可能に連結するものである。
搬送車1に遊動連結部8,8を設けることにより、駆動輪W1,W1と従動輪W2,W2との間でスリップアングルに差をつけることができるので、搬送車1の滑らかな旋回が可能になる。
【0033】
遊動連結部8が、操舵連動部7のスプロケット7Gであるリング状部材R1、及びリング状部材R1と同軸で、従動輪W2を支持するハウジング10に連結されるリング状部材R2を備え、リング状部材R1、R2の一方には円弧状長孔11を、他方には、円弧状長孔11に重なる丸孔12を設け、一対のリング状部材R1,R2間にわたるように、円弧状長孔11及び丸孔12に挿通される軸体Sを備えるものであると、複雑な制御装置等を用いることなく簡単な構造で遊動連結部を実現できる。
【0034】
<操舵伝動部を備えない構成例>
図10の概略平面図は、操舵伝動部7を備えずに、従動輪W2を全方向車輪OWにした構成例を示しており、図1と同一の符号は、同一の又は相当する部品又は部分等を示している。
すなわち、図10の搬送車1は、従動輪W2,W2として、自在車輪ではなく全方向車輪OW,OWを備えている。
図10の搬送車1では、対称面Eに関して、2つの全方向車輪OW,OWである従動輪W2,W2の平面視中央T,Tが面対称の位置にある。
【0035】
全方向車輪OWは、「オムニホイール」と呼ばれる公知の車輪で(例えば、特開平2013-189068号公報参照)、バレルフレーム18の外周部に複数のバレル(樽型ローラ)19を装備してなるものであり、全方向に移動できる。
従動輪W2,W2を全方向車輪OW,OWにすることにより、従動輪W2,W2がキャスター輪である場合と比較して、従動輪W2,W2の挙動が安定し、旋回時の動作も円滑になる。
【0036】
また、支持部材9,9に、従動輪W2,W2が並ぶ方向A2と平行で、且つ、従動輪W2,W2が並ぶ間隔D2と同じ間隔で並び、対称面Eに関して面対称の位置にある、2つの副従動輪W3,W3をさらに備えており、副従動輪W3,W3も全方向車輪OW,OWとしている。それにより耐荷重が低い全方向車輪OW,OW,…に掛かる荷重を分散できる。
なお、副従動輪W3は、2つに限定されるものではなく、それよりも多く、要求仕様等に応じて4つ、6つ等を適宜設けることができる。
【0037】
以上のような搬送車1によれば、2つの駆動輪W1,W1の間隔D1よりも2つの従動輪W2,W2の間隔D2は小さく、2つの駆動輪W1,W1の操舵軸J1,J1及び2つの従動輪W2,W2の回動軸J2,J2、又は2つの駆動輪W1,W1の操舵軸J1,J1及び2つの全方向車輪OW,OWである従動輪W2,W2の平面視中央T,Tが面対称の位置にあるとともに、2つの駆動輪W1,W1は操舵部5,5により個別に操舵されるので、搬送車1は全方向へ移動できる。
その上、2つの従動輪W1,W1を基体2の下部から突出する支持部材9,9により支持しており、従動輪W2,W2及び支持部材9,9が荷支持部3により支持される荷Lと干渉しにくいので、大きさの異なる物流台車LT等が荷Lである場合であっても、その荷Lを搬送車1が搬送できる。
その上さらに、荷支持部3を昇降駆動する昇降駆動部4を基体2の2つの駆動輪W1,W1の間に設けていることから、2つの駆動輪W1,W1が並ぶ方向A1と直交する水平方向の長さを短くできるので、スリムな物流台車LT等が荷Lである場合であっても、その荷Lを搬送車1が支持しながら狭い通路を移動できる。
その上、操舵部5の操舵による駆動輪W1の動作を従動輪W2に伝える操舵伝動部7を備える構成、又は従動輪W2が全方向車輪OWである構成により、搬送車1の走行安定性を向上できる。
【0038】
以上の実施の形態の記載はすべてすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 搬送車 2 基体
3 荷支持部 3A 垂直部
3B フォーク部 4 昇降駆動部
5 操舵部 5A 操舵用駆動装置
5B 小径ギヤ 5C 大径ギヤ
6 走行駆動部 7 操舵伝動部
7A スプロケット 7B 無端チェーン
7C スプロケット 7D 伝動軸
7E スプロケット 7F 無端チェーン
7G スプロケット 8 遊動連結部
9 支持部材 10 ハウジング
11 円弧状長孔 12 丸孔
13 カラー 14 ボルト
15 ナット 16,17 ボルト
18 バレルフレーム 19 バレル
A1 駆動輪が並ぶ方向 A2 従動輪が並ぶ方向
B 中点 C 駆動輪の操舵軸を結ぶ直線
D1 駆動輪の間隔 D2 従動輪の間隔
D3 フォーク部の間隔 E 対称面
F 床材 G 直動ガイド
H 車輪 I 自在車輪
J1 駆動輪の操舵軸 J2 従動輪の回動軸
K 固定車輪 L 荷
LT 物流台車 M 六輪台車
N 位置検出器 OW 全方向車輪
P 旋回中心 Q1,Q2 旋回半径
R1,R2 リング状部材 S 軸体
T 平面視中央 W1 駆動輪
W2 従動輪 W3 副従動輪
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10