(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20220802BHJP
G03G 21/08 20060101ALI20220802BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220802BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/08
G03G15/16 103
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2018186457
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【氏名又は名称】久保 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】吉山 次人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正安
(72)【発明者】
【氏名】森田 さや香
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 國智
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-32777(JP,A)
【文献】特開2017-32778(JP,A)
【文献】特開2001-324843(JP,A)
【文献】特開平6-83162(JP,A)
【文献】特開2002-148889(JP,A)
【文献】特開2004-184876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 21/08
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部材と、
印刷対象の画像に対応した潜像を形成する作像時に、前記帯電部材に印加する帯電バイアスとして交流電圧と直流電圧とが重畳したACバイアスを出力し、前記潜像を形成しないが前記感光体を回転駆動する非作像動作時に、前記帯電バイアスとして直流電圧であるDCバイアスを出力する帯電用電源部と、
前記帯電部材により帯電した前記感光体に対して所定の処理を行う処理部と、
前記非作像動作時において、前記DCバイアスにより帯電する前後の前記感光体の電位差の値が設定値以下の値となるように前記帯電用電源部および前記処理部を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記潜像を現像したトナー像を被転写体に転写するための転写部材と、前記転写部材に印加する転写バイアスを出力する転写用電源部とを有しており、
前記制御部は、前記非作像動作時において、前記転写バイアスを前記作像時よりも低くする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記感光体における前記転写部材と対向する転写位置を通過した領域に除電用の光を照射するイレーサを有しており、
前記制御部は、前記非作像動作時において、前記光の照射を停止させる、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記感光体のうちの前記作像時よりも低い前記転写バイアスが印加された状態の前記転写部材と対向した領域が前記帯電部材と対向するときに前記DCバイアスを印加するように、前記帯電用電源部を制御する、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記感光体のうちの前記光が照射される除電位置を通過した領域が前記帯電部材と対向するときに前記DCバイアスを印加するように、前記帯電用電源部を制御する、
請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記帯電部材に対する前記DCバイアスの印加から前記ACバイアスの印加への切替えを、作像動作の開始タイミングが到来したときに直ちに行う、
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記感光体の帯電に関わる帯電関連状態に応じた値を前記設定値として用いる、
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電関連状態は、環境条件、前記感光体の積算使用量または膜厚、前記帯電部材の積算使用量または抵抗値のうちの少なくとも1つである、
請求項7記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を帯電させて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、筒状の感光体の周面を一様に帯電させ、感光体が安定に回転している状態で画像データに応じたパターン露光を行い、それによって周面の帯電荷を部分的に消去して潜像を形成する。そして、感光体の周面にトナーを付着させて潜像をトナー像として可視化し、そのトナー像を転写することにより用紙(記録媒体)に画像を形成する。
【0003】
感光体を帯電させる方式として接触帯電(接触方式)がしばしば用いられる。接触帯電は、ローラまたはブラシなどの帯電部材を感光体と接触するように配置し、帯電部材に電圧を印加して感光体との間で放電を生じさせる方式である。感光体と帯電部材とが厳密に接触する必要はなく、最大1mm程度の微小間隙を設けて感光体と帯電部材とを近接させる接触帯電もある。
【0004】
接触帯電には、帯電部材に直流電圧を印加するDC帯電と、直流電圧を重畳した交流電圧を印加するAC帯電とがあるが、一般に、DC帯電よりも帯電の均一性に優れるAC帯電が用いられる。
【0005】
接触帯電では、感光体の近傍で放電が生じるので、非接触帯電と比べて感光体の表面が劣化しやすい。劣化した表層は帯電部材と擦れて剥がれることから、感光体の削れの進行が速い。また、放電生成物が感光体に固着しやすい。固着した放電生成物は点状の画像ノイズを発生させたり、感光体の表面のクリーニング性を低下させたりする。
【0006】
接触帯電において生じるこのような現象は、特に、AC帯電を採用した場合に顕著となる。それは、AC帯電では、印加電圧の振幅が放電開始電圧の2倍以上であるので、必然的に放電電流量がDC帯電よりも多いからである。
【0007】
接触帯電による感光体の劣化または画像ノイズの発生を抑えるための先行技術として、特許文献1~5に記載の技術がある。
【0008】
特許文献1、2には、画像形成実行時はAC帯電を行い、画像非形成時はDC帯電を行うことが開示されている。特許文献3には、画像非形成時はAC帯電もDC帯電も行わないことが開示されている。
【0009】
特許文献4には、AC帯電による画像形成が終了した後のシーケンスとして、交流電圧の印加をオフし、次に直流電圧の印加をオフし、その後に像担持体(感光体)の回転を停止させることが開示されている。
【0010】
特許文献5には、AC帯電を行う正規の帯電期間および潜像の形成に必要な強さよりも弱い帯電を行う弱帯電期間を設定し、弱帯電期間においては交流電圧をオフしまたは低くすることが開示されている。
【0011】
また、画像形成に際して画像形成装置の状態によってAC帯電とDC帯電とを使い分ける先行技術がある。すなわち、特許文献6には、感光体の膜厚が大きくて適度の放電が生じにくい状態である場合はAC帯電を行い、感光体の使用により膜厚が減ってDC帯電により適度の放電を生じさせることが可能になった状態である場合はDC帯電を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平4-37776号公報
【文献】特開平11-272023号公報
【文献】特開平11-160965号公報
【文献】特開2003-217035号公報
【文献】特開2007-94354号公報
【文献】特開2018-45114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
感光体を帯電させる必要がある期間は、用紙に形成して出力する画像に対応した潜像を形成する作像時に限らない。潜像を形成しないが感光体を回転駆動する非作像動作時にも感光体を帯電させる場合がある。
【0014】
非作像動作時としては、特許文献1に記載のあるウォーミング期間、前回転期間、紙間、および後回転期間の他にも、トナー強制補給時、各種の清掃処理時、画像安定化時などがある。特に、複数の感光体を有するカラー画像形成装置では、いずれかの色についての画像調整時にその色に対応する感光体に連動して他の色に対応する感光体も回転させることがある。
【0015】
例えば、トナー強制補給時に帯電を停止すると、感光体と稼働中の現像器との間の電位バランスが不適正となり、トナーが感光体に付着したり周囲に飛散したりするおそれがある。したがって、トナー強制補給時に帯電が行われる。
【0016】
従来、非作像動作時については、帯電の品質が画像の良否として現れないことから、DC帯電の品質は意識されてこなかった。
【0017】
ところが、非作像動作時において、作像時と同様の電位に感光体を帯電させるDC帯電を行ったときに、作像時の電位設定によっては過放電が起こり、感光体の帯電電位が局所的に過度に高くなることがわかった。
【0018】
例えば、2成分現像を行う画像形成装置においては、過放電により帯電電位が過度に高くなった部分にキャリアが付着する。このため、感光体、トナー像の被転写体、およびその他の部材に傷が生じ、生じた傷がもとで画像不良が発生する。つまり、過放電が起こると、傷が生じた部材の交換が必要となってしまう、という問題が顕在化した。
【0019】
近年、接触帯電が高速機にも用いられるようになり、AC帯電の高速化に伴う高周波対応のために、接触方式の帯電部材として低抵抗のものが求められている。高速のAC帯電に適した低抵抗の帯電部材を用いてDC帯電を行う場合には、比較的に高抵抗の帯電部材を用いてDC帯電を行う場合よりも過放電が起こりやすい。
【0020】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、非作像動作時に行うDC帯電の品質を従来よりも向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部材と、前記画像に対応した潜像を形成する作像時に、前記帯電部材に印加する帯電バイアスとして交流電圧と直流電圧とが重畳したACバイアスを出力し、前記潜像を形成しないが前記感光体を回転駆動する非作像動作時に、前記帯電バイアスとして直流電圧であるDCバイアスを出力する帯電用電源部と、前記帯電部材により帯電した前記感光体に対して所定の処理を行う処理部と、前記非作像動作時において、前記DCバイアスにより帯電する前後の前記感光体の電位差の値が設定値以下の値となるように前記帯電用電源部および前記処理部を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、出力するべき画像に対応する潜像を形成しない非作像動作時における直流電圧の印加による感光体の帯電の品質を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成の概要を示す図である。
【
図2】感光体の帯電に関わる要部の構成を示す図である。
【
図3】感光体のDC帯電特性の例を示すグラフである。
【
図4】イレーサによる除電を行わない場合における過放電の発生条件を示すグラフである。
【
図5】感光体の表面電位の推移の例を示す図である。
【
図6】画像形成装置における非作像動作時のDC帯電に関わる処理の流れの例を示す図である。
【
図8】転写バイアスと除電を行わない場合の帯電前電位との関係を示すグラフである。
【
図10】AC帯電制御の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構成の概要を示す図である。
図2は、感光体4の帯電に関わる要部の構成を示す図である。
【0025】
図1に示される画像形成装置1は、タンデム型のプリンタエンジン10を備える電子写真方式のカラープリンタである。画像形成装置1は、ネットワークを介して外部のホスト装置から入力されるジョブに応じて、カラーまたはモノクロの画像を形成する。画像形成装置1は、その動作を制御する制御回路100を有している。制御回路100は、制御プログラムを実行するプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および不揮発性メモリなどを備えている。
【0026】
プリンタエンジン10は、4個のイメージングユニット3y,3m,3c,3k、プリントヘッド6、および中間転写ベルト12を有する。
【0027】
イメージングユニット3y~3kは、それぞれ筒状の感光体4、帯電ローラ5、現像器7、イレーサ8、およびクリーナ9などを有している。感光体4は、潜像を形成するための像担持体である。イメージングユニット3y~3kの基本的な構成は同様であるので、以下においてこれらを区別せずに「イメージングユニット3」と記すことがある。
【0028】
プリントヘッド6は、イメージングユニット3y~3kのそれぞれに対してパターン露光を行うためのレーザビームL1を射出する。プリントヘッド6において、感光体4の回転軸方向にレーザビームL1を偏向する主走査が行われる。この主走査と並行して、感光体4を定速回転させる副走査が行われる。
【0029】
中間転写ベルト12は、トナー像の一次転写における被転写体である。中間転写ベルト12は、一対のローラ12A,12B間に巻回されて回転する。中間転写ベルト20の材料としては、ポリカーボネート、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、またはポリイミドを主原料としてカーボンを分散させた半導電性材料が用いられる。中間転写ベルト12の内側には、イメージングユニット3y,3m,3c,3kごとに一次転写ローラ11が配置されている。
【0030】
カラー印刷モードにおいて、イメージングユニット3y~3kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の4色のトナー像を並行して形成する。4色のトナー像は、回転中の中間転写ベルト12に順次に一次転写される。最初にYのトナー像が転写され、それに重なるようにMのトナー像、Cのトナー像、およびKのトナー像が順次に転写される。
【0031】
一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ16と対向するとき、下方の給紙カセット14から取り出されてタイミングローラ15を経て搬送されてきたシート(記録媒体)2に二次転写される。トナー像が転写されたシート2は、定着器17の内部を通って上部の排紙トレイ19に出力される。定着器17を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像がシート2に定着する。
【0032】
各イメージングユニット3において、感光体4は、一次転写が終わるごとにクリーナ9により清掃されて次の作像サイクルに備える。中間転写ベルト12は、例えばブレード式のベルトクリーナ12Cにより清掃される。ベルトクリーナ12Cは、イメージングユニット3yに近いローラ12Aと対峙する位置に配置されている。ベルトクリーナ12Cのブレードは、常に中間転写ベルト12に圧接している。
【0033】
図2(A)に示すように、画像形成装置1は、イメージングユニット3による作像に関わる制御を受け持つ作像制御部103を有する。作像制御部103の機能は、制御回路100のハードウェア構成により、および制御プログラムがCPUによって実行されることにより実現される。
【0034】
図2(A)において、感光体4は、支持体であるドラムと一体に一方向に回転するよう駆動される。感光体4が回転しているとき、感光体4の周面は、帯電位置P1、露光位置P2、現像位置P3、転写位置P4、除電位置P5、および清掃位置P6を順に繰り返し通過する。
【0035】
感光体4は、導電性の基体に下引き層、有機分子を含む電荷発生層、および電荷輸送層を積層した積層型有機感光体である。感光体4の寿命に関わる電荷輸送層の厚みは、例えば30~40μm程度とされる。
【0036】
帯電ローラ5は、帯電位置P1で感光体4に当接し、感光体4に従動して回転する。帯電位置P1は、帯電ローラ5と感光体4とのニップ部、およびニップ部の近傍を含む。帯電ローラ5は、金属製の芯金とそれに支持されたロール状の半導電性ゴム層とから構成される。半導電性ゴム層の体積抵抗率は、例えば10^4~10^8Ω・cmの範囲内の値に選定される。半導電性ゴム層は、単層構造のものでも多層構造のものでもよい。
【0037】
この帯電ローラ5には、芯金に接続された帯電用の高圧電源回路31によって帯電バイアスV1が印加される。高圧電源回路31は、作像制御部103からの制御信号S31に従って、作像時に帯電バイアスV1としてACバイアスV11を出力し、非作像動作時に帯電バイアスV1としてDCバイアスV12を出力する。ACバイアスV11は、
図2(B)に示すように、交流電圧Vacと直流電圧Vdcとを重畳させた高周波電圧である。DCバイアスV12は、直流電圧である。つまり、作像時にはAC帯電が行われ、非作像動作時にはDC帯電が行われる。
【0038】
AC帯電を作像時に限定して行うことにより、非作像動作時にもAC帯電を行う場合と比べて、感光体4の摩耗が低減されて感光体4の寿命が延びる。
【0039】
AC帯電では、交流電圧Vacの振幅(ピークトゥピーク電圧)Vppを十分に大きくすることにより、感光体4の膜厚の経時変化にかかわらず放電を生じさせて感光体4を直流電圧Vdcに応じた電位に帯電させることができる。したがって、AC帯電では、感光体4の膜厚を考慮することなく狙いの(所望の)帯電電位V0に応じて直流電圧Vdcの値が設定される。帯電電位V0は、帯電直後の感光体4の表面電位である
例えば、狙いの帯電電位V0の値が-600ボルトである場合に、直流電圧Vdcは-600ボルトとされる。交流電圧Vacの振幅Vppは2000ボルト程度とされ、周波数は2kHz程度とされる。
【0040】
他方、DC帯電では、DCバイアスV12について(1)式の関係が成り立つ。
V12=V0+Vth …(1)
ただし、Vth:放電開始電圧
放電開始電圧Vthは、環境条件(主に湿度)および耐久条件(主に感光体4の膜厚)に影響される。したがって、DCバイアスV12は、環境条件および耐久条件に応じて放電開始電圧Vthを補正して狙いの帯電電位V0に対応する値に設定される。例えば、狙いの帯電電位V0の値が-600ボルトであり、放電開始電圧Vthが-600ボルトである場合に、DCバイアスV12は-1200ボルトとされる。
【0041】
作像時の直流電圧Vdcおよび非作像動作時のDCバイアスV12は、いずれもマイナス(負極性)の電圧である。直流電圧VdcまたはDCバイアスV12が帯電ローラ5に印加されるとき、回転している感光体4の周面のうちの転写位置P4を通過して帯電位置P1に向かう領域(これを「帯電前領域4a」と称する)は、帯電ローラ5に対して相対的にプラス側の電位になっている。
【0042】
図2(A)に描かれた状態では、図中に白色の破線を付して他の領域と区別してある通り、感光体4のうちの転写位置P4から清掃位置P6を通過した辺りまでの領域が帯電前領域4aになっている。この状態からさらに感光体4が回転すると、転写位置P4から帯電位置P1までの領域の全体が帯電前領域4aとなる。
【0043】
感光体4の帯電前領域4aが帯電位置P1に到着すると、帯電ローラ5との間で放電が始まり、帯電位置P1を通過すると、放電が止まる。放電により、感光体4にマイナスの電荷が付与され、感光体4の表面電位は帯電電位V0になる。この帯電電位V0は、上に述べた通り、直流電圧Vdc(作像時)またはDCバイアスV12(非作像動作時)に依存する。
【0044】
露光位置P2において、プリントヘッド6からのレーザビームL1が感光体4に入射する。感光体4における一様に帯電した領域が露光位置P2を通過するときにパターン露光を行うことにより、潜像を形成することができる。パターン露光では、レーザビームL1を断続しまたはその光強度を変調する。作像時においては、ジョブにより指定された出力するべき画像に対応する印字データに基づいてパターン露光が行われ、出力するべき画像に対応した潜像が形成される。
【0045】
なお、パターン露光は、作像時のみに行われるものではなく、非作像動作時においても行われることがある。例えば、画像安定化に際してテスト用のトナーパターンを形成する場合もパターン露光が行われる。ただし、この場合に形成される潜像は、シート2に転写されることなく廃棄されるトナーパターンに対応するものであり、出力するべき印刷対象の画像に対応するものではない。
【0046】
現像器7は、現像位置P3を通過する感光体4の周面にトナーを付着させて潜像をトナー像として可視化する。本実施形態において、現像器7は、2成分現像器であり、トナーとキャリアとを混合して撹拌することにより、トナーをマイナス極性に帯電させる。そして、帯電したトナーをスリーブ7aにより現像位置P3へ供給する。スリーブ7aには、現像バイアスV3が現像用の高圧電源回路32により印加される。
【0047】
高圧電源回路32は、作像制御部103からの制御信号S32に従って、マイナスの直流電圧が重畳した交流電圧を現像バイアスV3として出力する。例えば、直流電圧は-400ボルトに設定され、交流電圧の振幅は1500ボルトに設定され、周波数は3kHzに設定される。
【0048】
転写位置P4において、中間転写ベルト12が一次転写ローラ11により押圧されて感光体4と当接する。このとき、一次転写ローラ11には、転写用の高圧電源回路33により転写バイアスV4が印加されている。転写バイアスV4により形成される転写電界により、感光体4から中間転写ベルト12にトナー像が一次転写される。
【0049】
高圧電源回路33は、片極性出力型の直流電源回路である。ただし、両極性出力型としてもよい。高圧電源回路33の出力は、作像制御部103からの制御信号S33により制御される。
【0050】
イレーサ8は、除電位置P5を通過する感光体4にその残留電荷を減少させる光ビームL2を照射する。イレーサ8の光源は、例えば波長685nmの可視光を射出する発光ダイオードアレイであり、感光体4の回転軸方向の全長にわたる照射(全面露光)が可能である。イレーサ8は、光源を発光させるための給電回路を有しており、作像制御部103からの制御信号S8に従って光ビームL2を照射したり照射を停止したりする。照射強度は可変である。光ビームL2の照射により、感光体4の表面電位は、0ボルトまたはそれに近い-10~0ボルト程度の値になる。
【0051】
本実施形態において、イレーサ8は、一次転写ローラ11および高圧電源回路33とともに、処理部51を構成する。処理部51は、帯電ローラ5により帯電した感光体4に対して行う処理のうち、帯電前領域4aの電位に関わる一次転写および除電を受け持つ。
【0052】
クリーナ9は、清掃位置P6を通過する感光体4の周面から残留トナーなどの付着物を除去する。その方式は、例えば常に感光体4に圧接する弾性のブレード9aにより付着物をかき取るブレードクリーニング方式である。ブラシまたはローラなどを用いる他の方式であってもよい。
【0053】
さて、作像制御部103は、非作像動作時に行うDC帯電において過放電が起こらないように、高圧電源回路31および処理部51を制御する。詳しくは、作像制御部103は、非作像動作時のDCバイアスV12による帯電の前後の感光体4の電位差の値が、しきい値C1以下の値となるように、DCバイアスV12、転写バイアスV4、およびイレーサ8のオンオフを設定する。このしきい値C1は、以下に述べる事実に基づいて設定された値であり、作像時におけるAC帯電の前後の感光体4の電位差の値とは異なる値である。
【0054】
図3は感光体4のDC帯電特性の例を示すグラフである。横軸は、DCバイアスV12の値を示し、縦軸は、感光体4の帯電電位V0の値を示す。値の単位は両軸ともにボルト(V)である。
【0055】
通常の場合、すなわち過放電が生じない場合は、図中に破線で示すように帯電電位V0はDCバイアスV12に比例する。しかし、過放電が生じた場合は、帯電電位V0は、通常の場合よりも高くなる方向にシフトしてしまう。
【0056】
帯電電位V0の測定値は、測定環境に依存する大きさの対象領域における平均的な電位の値である。そこで、過放電が発生した場合の帯電の均一性を調べるためにDC帯電後に現像を行ってテスト画像を形成すると、過放電が生じた場合に形成されるテスト画像は、網目状のノイズを有するものであった。つまり、過放電が生じた場合における実際の帯電状態は、帯電電位V0が通常の場合に対してシフトしただけでなく、電位にムラのある不均一な状態となる。
【0057】
非作像動作時においても、現像器7のスリーブ7aは、不要のトナー付着を防ぐために帯電電位V0に対して適切な電位差(例えば、150~200ボルト)が得られるようにバイアスされる。このため、感光体4における過放電により過度にマイナスに帯電した部位に2成分現像中のキャリアが付着してしまう。
【0058】
現像器7から離れたキャリアは、感光体4、中間転写ベルト12、および定着器17などに傷を生じさせる。生じた傷がもとで画像不良が発生するので、傷が生じた部材を交換は交換しなければならない。すなわち、過放電の発生が間接的に画質を低下させ、部品交換によるランニングコストの上昇を招く。
【0059】
したがって、作像時だけでなく、非作像動作時についても帯電の品質(均一性)を良好にする必要がある。
【0060】
DC帯電の品質を損なう過放電が発生する条件を調べたところ、次の結果が得られた。
【0061】
図4はイレーサ8による除電を行わない場合における過放電の発生条件を示すグラフである。
図5は感光体4の表面電位Vpの推移の例を示す図である。
【0062】
図4において、横軸は、DCバイアスV12の絶対値|V12|を示す。左縦軸は、過放電が生じる最小の転写バイアスV4minの値を示し、右縦軸は、DCバイアスV12の絶対値|V12|と最小の転写バイアスV4minとの和SVの値を示す。また、実線は、DCバイアスV12の絶対値|V12|と最小の転写バイアスV4minとの関係を示し、破線は、DCバイアスV12の絶対値|V12|と和SVとの関係を示している。
【0063】
なお、本明細書において、帯電バイアスV1をはじめとする各種のバイアス(印加電圧)について、極性にかかわらず、そのバイアスの値と0との差(すなわち絶対値)が大きいことを「高い」と表現し、当該差を大きくすることを「高くする」と表現する。そして、当該差が小さいことを「低い」と表現し、当該差を小さくすることを「低くする」と表現する。したがって、極性がマイナスである場合は、例えば-1000ボルトは-500ボルトよりも高い。極性がプラスである場合は、1000ボルトは500ボルトよりも高い。
【0064】
図4において、DCバイアスV12の絶対値|V12|が大きいほど、転写バイアスV4の値が比較的に小さくても過放電が発生している。すなわち、DCバイアスV12が高いほど、転写バイアスV4がより低くても過放電が発生する。
【0065】
また、DCバイアスV12の絶対値|V12|の大小にかかわらず、過放電が発生するときの和SVは、概ね一定の値(2350~2400ボルト)である。つまり、和SVが一定値以上である場合に過放電が発生することがわかる。
【0066】
図5に示すように、感光体4の表面電位Vpは、転写バイアスV4が印加された状態の転写位置P4を通過するときに、帯電電位V0から低下して転写後電位Vp4になる。転写後電位Vp4は、帯電電位V0と転写バイアスV4とに依存し、図示の例のようにマイナスの電位となる場合に限らず、プラスの電位となる場合もある。帯電電位V0と転写後電位Vp4との差である低下量dVは、低下前の帯電電位V0を一定とした場合には、転写バイアスV4が高いほど大きい。逆に、転写バイアスV4を一定とした場合には、低下前の帯電電位V0が低いほど、低下量dVは小さい。
【0067】
しかし、帯電電位V0の値を切り替えて複数の値ごとに最小の転写バイアスV4minを求めたところ、最小の転写バイアスV4minの印加による低下量dVは、帯電電位V0の値にかかわらず、ほぼ一定である。具体的には、
図4にプロットされた複数のバイアス条件、すなわちDCバイアスV12の絶対値|V12|(低下前の帯電電位V0に対応する)と最小の転写バイアスV4minとの組合せにおいて、いずれも低下量dVは約400ボルトであった。
【0068】
イレーサ8による除電を行わない場合は、転写前領域4aが帯電位置P1に到着するまで転写後電位Vp4はほとんど変わることなく保たれ、帯電前電位V1bとなる(V1b=Vp4)。帯電前電位V1bは、転写前領域4aが帯電位置P1に到着して放電が始まる直前の表面電位Vpである。
【0069】
したがって、和SVが一定値以上である場合に過放電が発生することは、DC帯電における帯電後電位V1a(すなわち帯電電位V0)にかかわらず、帯電前後の電位差ΔVが所定のしきい値C1を超える場合に過放電が発生することを意味している。帯電前後の電位差ΔVとは、帯電前電位V1bと帯電後電位V1aとの差である。
【0070】
つまり、帯電前後の電位差ΔVを所定のしきい値C1以下に制御することにより、DC帯電における過放電を抑えることができる。そして、電位差ΔVをしきい値C1以下とするために帯電電位V0を適宜選定することが許される。
【0071】
そこで、帯電前後の電位差dV4をしきい値C1以下とするために、例えば転写バイアスV4を作像時と同じ値とし、DCバイアスV12を低くする(絶対値を小さくする)。または、DCバイアスV12の絶対値|V12|と転写バイアスV4との和SVが
図4に示す所定のしきい値C2以下となるようにDCバイアスV12および転写バイアスV4を設定する。
【0072】
ところで、画像形成装置1は、作像時において、転写位置P4の下流側に設けたイレーサ8を稼働させて帯電前の感光体4に対して全面露光を行う。これにより、パターン露光による表面電位Vpの不均一が解消されることから、その後の帯電の均一性が高まる。
【0073】
非作像動作時においてもイレーサ8を稼働させることは可能である。しかし、非作像動作時にイレーサ8を稼働させると、
図5に破線で示すように、感光体4の表面電位Vpが転写後電位Vp4よりも低くなってほぼ0ボルトの除電後電位Vp5になる。そして、この除電後電位Vp5が帯電前電位V1b’となり、帯電前後の電位差ΔV’がイレーサ8を稼働させない場合の電位差ΔVよりも大きくなってしまう。このため、転写バイアスV4が
図4の例より低くても過放電が発生するおそれがある。したがって、非作像動作時においては、イレーサ8による除電を停止するのが好ましい。
【0074】
また、過放電は、帯電ローラ5の抵抗値が低いほど発生しやすく、感光体4の膜厚が厚いほど発生しやすい。このため、しきい値C1は、帯電ローラ5および感光体4の状態に応じて変更するのが好ましい。
【0075】
次に、DC帯電に関わる制御の例を挙げる。
【0076】
図6は、画像形成装置1における非作像動作時のDC帯電に関わる処理の流れの例を示す図である。
図7は、DC帯電制御の処理の流れを示す図である。
図8は、転写バイアスV4と除電を行わない場合の帯電前電位V1bとの関係を示すグラフである。
図9は、しきい値情報92の例を示す図である。
図10は、AC帯電制御の処理の流れを示す図である。
【0077】
図6において、作像制御部103は、非作像動作を開始する以前の所定のタイミングで、作像時の帯電電位V0を帯電後電位V1aとして取得する(#201)。このタイミングは、例えば作像時における非作像動作時に切り替わる直前とすることができる。作像時のタイミングに限らず、感光体4の回転駆動を開始する以前、すなわち作像時でも非作像動作時でもないタイミングであってもよい。
【0078】
上に述べた通り、作像時のAC帯電では狙いの帯電電位V0に応じた直流電圧Vdcを印加するので、帯電後電位V1aとしてACバイアスV11の直流電圧Vdcの設定値を取得する。ただし、感光体4の経時変化などに因る帯電電位V0と直流電圧Vdcとのずれを補正するように直流電圧Vdcが設定される場合は、補正前の直流電圧Vdc(つまり狙いの帯電電位V0)を取得する。
【0079】
なお、一般に、作像動作の設定値のうちの帯電電位V0の設定値は、画像形成装置1の仕様に応じた一定値に定められる。例えば-600ボルトまたは-400ボルトなどとされる。そして、諸条件(画像の濃淡、カラー/モノクロ、シート2の厚さ、環境条件など)に応じた作像動作の最適化は、帯電電位V0を基準として感光体周りの他の設定値を調整することにより行われる。
【0080】
帯電後電位V1aの取得に続いて、作像制御部103は、転写バイアスV4の設定値を取得する(#202)。作像時に取得する場合は、現在の作像動作に適用される転写バイアスV4の設定値を取得する。作像時ではないときに取得する場合は、標準に定められた画像形成モード(例えば、標準速度でモノクロ画像を普通紙に形成するモード)において適用するために記憶されている転写バイアスV4の設定値を読み出す。
【0081】
次に、作像制御部103は、帯電電位V0と転写バイアスV4とによって特定される帯電前電位V1bを取得する(#203)。
【0082】
この帯電前電位V1bを取得するため、あらかじめ
図8に示される関係を求め、ルックアップテーブル、補間演算式、またはこれらを組み合せたデータの形で不揮発メモリに格納しておく。作像制御部103は、取得した帯電電位V0と転写バイアスV4の設定値とに対応する帯電前電位V1bを、ルックアップテーブルから読み出し、または補間演算式を用いて算出する。
【0083】
図8においては、帯電電位V0が-600ボルトである場合、および-400ボルトである場合における帯電前電位V1bが示される。
図8に示される関係によると、例えば帯電電位V0が-600ボルトであって転写バイアスV4が-1200ボルトであったときに取得される帯電前電位V1bの値は、約-217ボルトである。
【0084】
なお、イレーサ8を稼働させて除電を行う場合は、あらかじめ除電後の表面電位Vpである除電後電位Vp5を求めて帯電前電位V1bとして不揮発メモリに格納しておく。転写後電位Vp4がマイナスでかつ除電後電位Vp5よりも高い場合は、除電後電位Vp5が帯電前電位V1bとなる。除電後電位Vp5が耐久条件または環境条件により大きく変化する場合は、不揮発メモリから読み出した帯電前電位V1bをこれらの条件に応じて補正するのが望ましい。
【0085】
このようにして帯電前電位V1bを取得すると、作像制御部103は、(2)式に基づく演算を行って帯電前後の電位差ΔVを算出する(#204)。
ΔV=|V1a-V1b| …(2)
続いて、作像制御部103は、感光体4の膜厚情報および画像形成装置1の内部の適所に配置されたセンサによる環境測定情報を参照することによって、帯電に関わるマシン状態(帯電関連状態)を検知する(#205)。具体的には、感光体4の現在の膜厚D、および感光体4の周辺の湿度Rを検知する。
【0086】
膜厚Dの検知に用いる膜厚情報は、帯電電流を検出する公知の手法により測定された膜厚Dを示すものでもよいし、積算印刷ページ数または積算回転回数といった感光体4の耐久情報であってもよい。
【0087】
マシン状態を検知すると、作像制御部103は、
図9に示すしきい値情報92からマシン状態に対応するしきい値C1を取得する(#206)。しきい値情報92は、湿度Rの値を区分した複数の湿度レベルと感光体4の膜厚の値を区分した膜厚レベルとの組合せに対応するしきい値C1を示すルックアップテーブルである。
【0088】
しきい値情報92における各しきい値C1は、複数のマシン状態のそれぞれにおけるDC帯電で過放電が生じる帯電前後の最小の電位差を求める実験の結果に基づいて定められる。すなわち、求めた最小の電位差よりも所定の余裕値だけ小さい値が各マシン状態でのしきい値C1とされる。
図9の例において、例えば感光体4の膜厚が28μm以上であり、湿度Rが80%を超える場合のしきい値C1は、300ボルトである。
【0089】
次に、作像制御部103は、先に算出した帯電前後の電位差ΔVがマシン状態に対応するしきい値C1よりも小さいか否かをチェックする(#207)。
【0090】
帯電前後の電位差ΔVがしきい値C1よりも小さい場合は(#207でYES)、非作像動作時における感光体4の表面電位Vpに関わる各部の動作条件を、感光体4の回転に伴う表面電位Vpの変遷が作像時と同様になるように設定する(#208)。詳しくは次の通りである。
【0091】
まず、狙いの帯電電位V0の値を作像時と同じ値に設定する。すなわち、帯電用の高圧電源回路31について、帯電電位V0が作像時と同じ値になるようにDCバイアスV12の出力値を設定する。DCバイアスV12を上記の(1)式により算出し、その際に放電開始電圧Vthの値として、湿度Rおよび膜厚Dに応じてデフォルト値を補正した値を用いる。
【0092】
帯電電位V0を作像時と同じ値とするので、現像バイアスV3および転写バイアスV4は、それぞれ作像時と同じ値でよい。したがって、高圧電源回路32,33の出力値を作像時と同じ値に設定する。また、イレーサ8のオンオフおよび光ビームL2の強度を作像時と同じ値に設定する。
【0093】
これらの設定により、この後の非作像動作時に行うDC帯電において、その前後の表面電位Vpの差(電位差ΔVdc)の値が作像時の電位差ΔVと同じ値になり、しきい値C1よりも小さくなる。
【0094】
他方、算出した帯電前後の電位差ΔVがしきい値C1よりも小さくない場合は(#207でNO)、DC帯電の前後の表面電位Vpの電位差ΔVdcがしきい値C1よりも小さくなるように表面電位Vpに関わる各部の動作条件を設定する(#209)。この場合において、算出した作像時の帯電前後の電位差ΔVはしきい値C1よりも大きいので、DC帯電の前後の電位差ΔVdcをしきい値C1よりも小さくすることにより、当該電位差ΔVdcは作像時の電位差ΔV0と異なる値になる。
【0095】
電位差ΔVdcをしきい値C1よりも小さくするために、例えば狙いの帯電電位V0を作像時よりも例えば50~100ボルト程度低くする。この場合、帯電電位V0を低くした分だけDCバイアスV12を低くして出力するように高圧電源回路31の出力値を設定する。帯電電位V0の低下に合わせて、現像バイアスV3の直流電圧も低くする。
【0096】
このように帯電電位V0を変更する場合、現像用の高圧電源回路32として出力可変幅が従来よりも大きなものが必要となることがある。例えば、極端な場合として、DCバイアスV12を印加を停止する場合には、帯電電位V0がほぼ0ボルトになるので、現像バイアスV3の直流電圧として+150ボルトの印加が必要となる。出力可変幅が大きくさらに両極性出力が可能な電源回路は大型になりがちである。
【0097】
また、非作像動作時にトナーを供給する場合には、ある程度以上の帯電電位V0が必要となることから、狙いの帯電電位V0を低くすることができないことがある。さらに、帯電電位V0を作像時と非作像動作時とにわたって一定値に維持したい場合もある。
【0098】
そこで、帯電電位V0を低くすることが難しい状況では、転写バイアスV4を作像時よりも低くする。これにより、帯電前後の電位差ΔVdcをしきい値C1よりも小さくすることができる。
【0099】
なお、転写後電位Vp4の極性がマイナスである場合は、上に述べたように除電位置P5で除電を行うと、表面電位Vpが0になってその後の帯電における帯電前後の電位差ΔVdcが増大する。したがって、この場合は、帯電電位V0を低くするか転写バイアスV4を低くするかにかかわらず、イレーサ8による光ビームL2の照射を停止させるのが好ましい。
【0100】
このように帯電前後の電位差ΔVdcがしきい値C1よりも小さくなるように非作像動作時の動作条件を設定した後、作像制御部103は、DC帯電制御の処理を実行する(#210)。
【0101】
図7に示すようにDC帯電制御の処理として、作像制御部103は、非作像動作の開始タイミングが到来するのを待つ(#211)。例えば、現在が作像動作中であれば、作像を終えてクリーニングなどの後処理に移行するタイミング、または複数枚の印刷の途中で画像安定化のため印刷を中断するタイミングなどが非作像動作の開始タイミングとなる。また、現在が作像動作中でない場合は、電源スイッチのオン時またはスリープ状態からの復帰時のウォームアップを始めるタイミングなどがこの開始タイミングとなる。
【0102】
非作像動作の開始タイミングが到来すると(#211でYES)、作像制御部103は、まず、処理部51の出力制御を行う(#212)。
【0103】
詳しくは、転写用の高圧電源回路33に対して、ステップ#208またはステップ#209で設定した転写バイアスV4の出力を指令する。これとともに、イレーサ8をオフに制御して光ビームL2の照射の停止させる。
【0104】
処理部51の出力制御を行うと、作像制御部103は、ステップ#208の指令に従って転写バイアスV4を印加している状態の転写位置P4を通過した帯電前領域4aが帯電位置P1に到着するタイミングが到来するのを待つ(#213)。すなわち、転写位置P4から帯電位置P1まで感光体4が回転するのに要する時間が経過するのを待つ。
【0105】
帯電前領域4aが帯電位置P1に到着するタイミングになると(#213でYES)、帯電用の高圧電源回路31に対して、ステップ#208またはステップ#209で設定したDCバイアスV12の出力を指令する。これにより、DC帯電が始まる。
【0106】
なお、作像動作から非作像動作に切り替える場合は、DCバイアスV12の出力を指令するときまたはそれ以前の適切なタイミングで、ACバイアスV11の交流電圧Vacの出力を停止させておく。DC帯電が始まった以後の適切なタイミングで、必要に応じて現像バイアスV3の直流電圧の値を変更する。
【0107】
ステップ#213の処理を設けて所定の時間の経過を待ってDC帯電を始めることにより、AC帯電からDC帯電に切り替える場合において、切り替わる過渡期に過放電が発生するのを防ぐことができる。もしも転写バイアスV4の切替えと同時にDCバイアスV12の出力を開始すると、帯電前領域4aが帯電位置P1に到着までの間は、帯電前電位V1bが以前のAC帯電による電位となるために過放電が発生するおそれががある。
【0108】
これに対して、DC帯電からAC帯電に切り替える場合には、
図10に示すように、作像制御部103は、作像動作の開始タイミングが到来すると(#301でYES)、表面電位Vpに関わる動作条件の設定および制御対象に対する出力指令を直ちに行う(#302、#303)。
【0109】
AC帯電では、交流電圧Vacの印加により短い周期で帯電と除電が繰り返されるので、過放電が発生したとしても、それによる過剰の電荷が除電される。したがって、過放電の発生を防ぐための待ち時間を設けることなく動作条件を変更して画像形成の開始を迅速化することができる。
【0110】
以上の実施形態によると、出力するべき画像に対応する潜像を形成しない非作像動作時におけるDCバイアスV12の印加による感光体4の帯電に際して、過放電の発生を抑えることができ、当該帯電の品質を従来よりも向上させることができる。
【0111】
潜像の可視化に2成分現像剤を用いる場合において、感光体4および他の部材にキャリアが付着するのを抑えることができ、キャリア付着による感光体4などの損傷を防ぐことができる。
【0112】
上に述べた実施形態において、制御の簡略化のため
図4の関係を用いて、DCバイアスV12および転写バイアスV4を決めるようにしてもよい。その場合、作像時の狙いの帯電電位V0を取得して(1)式によりDCバイアスV12を求める。そして、DCバイアスV12の絶対値|V12|と最小の転写バイアスV4minとの和SVがあらかじめ実験結果に基づいて定めたしきい値C2よりも小さくなるように、DCバイアスV12および転写バイアスV4を決める。このしきい値C2は、
図9のしきい値情報92と同様のルックアップテーブルを用いて、マシン状態に応じて選定するのが望ましい。
【0113】
転写バイアスV4の印加に際して高圧電源回路33において定電流制御が行われる場合には、定電流制御時の平均電圧を用いたり、あらかじめ実験により求めた電圧値への変換テーブルを用いたりして転写バイアスV4を特定すればよい。
【0114】
また、イレーサ8による除電を行う場合は、あらかじめ求めておいた除電後電位Vp5から転写バイアスV4への変換値を転写バイアスV4の値として用いるようにしてもよい。ただし、望ましくは除電を行わず、転写バイアスV4を低くするのがよい。
【0115】
イレーサ8として、コロナ放電式または接触式などの帯電器を用いる構成においては、感光体4の電位条件によっては、除電ではなく再帯電が可能な場合がある。その場合は、除電を停止するのではなく転写バイアスV4を低くする代わりにまたはそれと併用して積極的にイレーサ8で帯電前電位V1bを制御するようにしてもよい。
【0116】
マシン状態として、湿度Rまたは温度などの他の環境条件、感光体4の積算使用量または膜厚D、帯電ローラ5の積算使用量または抵抗値のうちの少なくとも1つを検知し、その検知結果に応じてしきい値C1を切り替えるように構成してもよい。
【0117】
上に述べた実施形態において、非作像動作時としては、作像動作の前処理時、同じく後処理時、複数枚のシート2を用いる場合の紙間に対応するパターン露光のインターバル期間、マシン状態を適切に保つための各種の調整の実行時、および他色の調整のために連動する感光体4の回転時などがある。各種の調整には、現像器7内のトナー濃度が低くなった場合のトナー強制補給、中間転写ベルト12の清掃、二次転写ローラ周りの清掃、現像器7からの不要なトナーの吐き出し、清掃部材へのトナーまたは外添剤を供給するためのトナー帯の作成、画像安定化処理、および感光体に付着した放電生成物の除去などが含まれる。
【0118】
例えばウォームアップ時のように作像動作中以外の状態から非作像動作に移行する場合には、DC帯電を開始する前に感光体4が1~数回転する短い時間だけAC帯電を行ってもよい。それにより、最初のDC帯電における帯電前電位V1bを所定の転写後電位Vp4とすることができ、帯電前後の電位差ΔVをしきい値C1以下にすることができる。
【0119】
ユーザによる指示または環境条件が大きく変化したことなどを契機として行う画像調整において作像動作の設定を更新したときに、非作像動作の準備としてDC帯電に関わる出力値を更新して記憶しておき、その後の非作像動作時にその出力値でDC帯電を行うようにしてもよい。
【0120】
上に述べた実施形態において、除電に影響する残留トナー量が比較的に多い場合は、クリーナ9により感光体4を清掃した後に除電を行うように、イレーサ8とクリーナ9との位置関係を変更してもよい。
【0121】
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理の内容、順序、またはタイミング、しきい値情報92の内容などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 画像形成装置
2 シート(記録媒体)
4 感光体
5 帯電ローラ(帯電部材)
V1 帯電バイアス
Vac 交流電圧
Vdc 直流電圧
V11 ACバイアス
V12 DCバイアス
31 高圧電源回路(帯電用電源部)
51 処理部
ΔV 電位差
103 作像制御部(制御部)
C1 しきい値(設定値)
11 一次転写ローラ(転写部材)
12 中間転写ベルト(被転写体)
31 高圧電源回路(転写用電源部)
8 イレーサ
L2 光ビーム(除電用の光)
P4 転写位置
4a 帯電前領域(領域)