(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20220802BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220802BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220802BHJP
H01F 27/23 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F41/04 B
H01F27/00 R
H01F27/23
(21)【出願番号】P 2018210867
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2020-06-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕平
(72)【発明者】
【氏名】濱野 守裕
(72)【発明者】
【氏名】都築 慶一
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-069754(JP,A)
【文献】特開2014-152059(JP,A)
【文献】特開2017-092434(JP,A)
【文献】特開2017-092061(JP,A)
【文献】特開2017-011103(JP,A)
【文献】特開2006-319009(JP,A)
【文献】特開平05-036531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/00、27/23、41/04
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層ガラス層、前記内層ガラス層の上面及び底面に設けられた磁性体層、並びに、前記磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層からなる積層体の表面に外部電極を設けてなる電子部品であって、
前記内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて前記コイル積層体の上面に配置される上面側引き出し電極層と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて前記コイル積層体の底面に配置される底面側引き出し電極層と、からなり、
前記コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層、2次コイル導体を備える2次コイル導体層、3次コイル導体を備える3次コイル導体層及び並列1次コイル導体を備える並列1次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されており、
前記外部電極は、第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極、第4外部電極、第5外部電極及び第6外部電極を備え、
前記1次コイル導体は、前記第1外部電極及び前記第4外部電極と接続されており、
前記2次コイル導体は、前記第2外部電極及び前記第5外部電極と接続されており、
前記3次コイル導体は、前記第3外部電極及び前記第6外部電極と接続されており、
前記並列1次コイル導体は、前記第1外部電極及び前記第4外部電極と接続されており、
前記1次コイル導体と前記並列1次コイル導体とは並列に接続されており、
前記1次コイル導体、前記2次コイル導体、前記3次コイル導体及び前記並列1次コイル導体は、それぞれ、コイルパターンと、前記コイルパターンの一端でありコイルパターンの内側に配置される内側端部と、前記コイルパターンの一端でありコイルパターンの外側に配置される外側端部とを備え、
前記1次コイル導体及び前記2次コイル導体の前記内側端部が、コイルパターンの内側に設けられた第1ビアホール導体及び第2ビアホール導体によりそれぞれ前記底面側引き出し電極層と接続されており、
前記3次コイル導体及び前記並列1次コイル導体の前記内側端部が、コイルパターンの内側に設けられた第3ビアホール導体及び第4ビアホール導体によりそれぞれ前記上面側引き出し電極層と接続されており、
前記積層体の上面視において、前記第1ビアホール導体及び前記第2ビアホール導体は、前記第3ビアホール導体及び前記第4ビアホール導体のいずれかと少なくとも一部が重なる位置に配置されており、
前記積層体を構成するすべてのコイル導体層において、コイルパターンの内側に設けられたビアホール導体の数は最大で2個であり、
前記内層ガラス層を構成する絶縁層、及び、前記外層ガラス層は、いずれも、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、石英及びアルミナからなる誘電体ガラス材料からなり、
前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記ガラス材料の含有率が60wt%以上65wt%以下であり、
前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、
前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記アルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下である、ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記1次コイル導体層と前記並列1次コイル導体層は、前記コイル積層体の上面視において互いに略重なるコイルパターンを有する請求項
1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記2次コイル導体層は、前記コイル積層体の上面視において互いに略重なるコイルパターンを有する複数の2次コイル導体を備える請求項
1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記3次コイル導体層は、前記コイル積層体の上面視において互いに略重なるコイルパターンを有する複数の3次コイル導体を備える請求項1~
3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記外層ガラス層の前記石英の含有率が、前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記石英の含有率よりも少ない請求項1~
4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記外層ガラス層の前記石英の含有率と、前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記石英の含有率の差が3wt%以上6wt%以下である請求項
5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記内層ガラス層を構成する絶縁層の前記アルミナの含有率が0.6wt%以上1wt%以下である請求項1~
6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項8】
前記外層ガラス層の厚さは、それぞれ15μm以上45μm以下である請求項1~
7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の電子部品を製造する方法であって、
内層ガラス層となるセラミックグリーンシートAを準備する工程と、
磁性体層となるセラミックグリーンシートBを準備する工程と、
外層ガラス層となるセラミックグリーンシートCを準備する工程と、
前記セラミックグリーンシートAにコイル導体パターンを形成してコイルシートを得る工程と、
前記セラミックグリーンシートAに引き出し電極パターンを形成して引き出し電極シートを得る工程と、
前記セラミックグリーンシートC、前記セラミックグリーンシートB、前記引き出し電極シート、前記コイルシート、前記引き出し電極シート、前記セラミックグリーンシートB、前記セラミックグリーンシートCをこの順で積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を焼成する工程と、
前記焼成した積層体に外部電極を形成する工程と、を含み、
前記セラミックグリーンシートAには、前記セラミックグリーンシートA全体に対して、34wt%以上37wt%以下の石英及び0.5wt%以上4wt%以下のアルミナがフィラー成分として添加されている、ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モバイル機器においてメインICとディスプレイやカメラを接続するデジタルデータ転送規格として、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)D-PHY規格が採用されており、2本の伝送ラインを用いた差動信号で伝送する方式が用いられている。
このような差動信号を伝送する場合には、コモンモードノイズが発生するため、これを除去するためのフィルタ(コモンモードフィルタ)が用いられている。
【0003】
このようなコモンモードフィルタとして、例えば、第1の非磁性体部と、前記第1の非磁性体部の下面に形成された第1の磁性体部、前記第1の非磁性体部の上面に形成された第2の磁性体部と、前記第1の非磁性体部内に埋設されAgで構成された第1のコイル、第2のコイルと、前記第1の磁性体部の下面、第2の磁性体部の上面のうち少なくとも一方に形成された第2の非磁性体部とを備え、前記第1の非磁性体部、前記第2の非磁性体部を、フィラーとガラスで構成し、前記第2の非磁性体部の前記フィラーの含有率を前記第1の非磁性体部の前記フィラーの含有率より少なくしたコモンモードノイズフィルタが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたコモンモードノイズフィルタを製造する過程で、外部電極を形成するためのめっき液に含浸する際にクラックが発生しやすいという問題があった。
【0006】
特許文献1に記載のコモンモードノイズフィルタでは、非磁性体部と、非磁性体部の上面及び下面に形成された磁性体部の熱膨張係数の違いによって、非磁性体部が外側方向に引っ張られているため、めっき液による僅かな腐食によって、非磁性体部にクラックが生じやすいと考えられている。このようなクラックは、特に、非磁性体部の側面に引き出し電極を有する場合に顕著である。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、製造時にクラックの発生しにくい電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品の第一実施形態は、内層ガラス層、上記内層ガラス層の上面及び底面に設けられた磁性体層、並びに、上記磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層からなる積層体の表面に外部電極を設けてなる電子部品であって、上記内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の上面に配置される上面側引き出し電極層と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の底面に配置される底面側引き出し電極層と、からなり、上記コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層、2次コイル導体を備える2次コイル導体層、3次コイル導体を備える3次コイル導体層及び並列1次コイル導体を備える並列1次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されており、上記外部電極は、第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極、第4外部電極、第5外部電極及び第6外部電極を備え、上記1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記2次コイル導体は、上記第2外部電極及び上記第5外部電極と接続されており、上記3次コイル導体は、上記第3外部電極及び上記第6外部電極と接続されており、上記並列1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記1次コイル導体と上記並列1次コイル導体とは並列に接続されており、上記内層ガラス層を構成する絶縁層、及び、上記外層ガラス層は、いずれも、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、石英及びアルミナからなる誘電体ガラス材料からなり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記ガラス材料の含有率が60wt%以上65wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記アルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の電子部品の第二実施形態は、内層ガラス層、上記内層ガラス層の上面及び底面に設けられた磁性体層、並びに、上記磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層からなる積層体の表面に外部電極を設けてなる電子部品であって、上記内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の上面及び/又は底面に配置される引き出し電極層と、からなり、上記コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層及び2次コイル導体を備える2次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されており、上記外部電極は、第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極及び第4外部電極を備え、上記1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第3外部電極と接続されており、上記2次コイル導体は、上記第2外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記内層ガラス層を構成する絶縁層、及び、上記外層ガラス層は、いずれも、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、石英及びアルミナからなる誘電体ガラス材料からなり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記ガラス材料の含有率が60wt%以上65wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記アルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の電子部品の製造方法は、本発明の電子部品を製造する方法であって、内層ガラス層となるセラミックグリーンシートAを準備する工程と、磁性体層となるセラミックグリーンシートBを準備する工程と、外層ガラス層となるセラミックグリーンシートCを準備する工程と、上記セラミックグリーンシートAにコイル導体パターンを形成してコイルシートを得る工程と、上記セラミックグリーンシートAに引き出し電極パターンを形成して引き出し電極シートを得る工程と、上記セラミックグリーンシートC、上記セラミックグリーンシートB、上記引き出し電極シート、上記コイルシート、上記引き出し電極シート、上記セラミックグリーンシートB、上記セラミックグリーンシートCをこの順で積層して積層体を得る積層工程と、上記積層体を焼成する工程と、上記焼成した積層体に外部電極を形成する工程と、を含み、上記セラミックグリーンシートAには、上記セラミックグリーンシートA全体に対して、34wt%以上37wt%以下の石英及び0.5wt%以上4wt%以下のアルミナがフィラー成分として添加されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造時にクラックの発生しにくい電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の電子部品の第一実施形態の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層を各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層の別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層のさらに別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層のさらに別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の電子部品の第二実施形態の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の電子部品の第二実施形態を構成する内層ガラス層の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電子部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
[電子部品]
まず、本発明の電子部品について説明する。
【0015】
[第一実施形態]
本発明の電子部品の第一実施形態は、内層ガラス層、上記内層ガラス層の上面及び底面に設けられた磁性体層、並びに、上記磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層からなる積層体の表面に外部電極を設けてなる電子部品であって、上記内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の上面に配置される上面側引き出し電極層と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の底面に配置される底面側引き出し電極層と、からなり、上記コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層、2次コイル導体を備える2次コイル導体層、3次コイル導体を備える3次コイル導体層及び並列1次コイル導体を備える並列1次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されており、上記外部電極は、第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極、第4外部電極、第5外部電極及び第6外部電極を備え、上記1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記2次コイル導体は、上記第2外部電極及び上記第5外部電極と接続されており、上記3次コイル導体は、上記第3外部電極及び上記第6外部電極と接続されており、上記並列1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記1次コイル導体と上記並列1次コイル導体とは並列に接続されており、上記内層ガラス層を構成する絶縁層、及び、上記外層ガラス層は、いずれも、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、石英及びアルミナからなる誘電体ガラス材料からなり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記ガラス材料の含有率が60wt%以上65wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記アルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の電子部品の第一実施形態では、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、従来よりも多くの石英を含有しているため、内層ガラス層の熱膨張係数(CTE)が磁性体層の熱膨張係数に近くなっている。
そのため、内層ガラス層に掛かる引張応力が小さくなり、めっき液と接触した際にクラックが発生することを抑制することができる。
内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が34wt%未満であると、磁性体層との熱膨張係数の差が大きくなってしまい、クラックが発生しやすくなる。一方、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が37wt%を超えると、内層ガラス層の焼結性が低下し、機械的強度が低下する。
また、本発明の電子部品の第一実施形態では、内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下であるため、内層ガラス層にクリストバライト相を生成させることができ、めっき液と接触した際のクラックの発生をさらに抑制することができる。
内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が0.5wt%未満であると、内層ガラス層が過焼結となり気泡が発生しやすくなる。一方、内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が4wt%を超えると、内層ガラス層の焼結性が低下し、さらに磁性体層との熱膨張係数の差が大きくなってしまい、クラックが発生しやすくなる。
【0017】
本発明の電子部品の第一実施形態を構成する外部電極について説明する。
本発明の電子部品の第一実施形態は、積層体の表面に第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極、第4外部電極、第5外部電極及び第6外部電極(以下、まとめて第1~第6外部電極ともいう)を備える。
積層体の表面における第1~第6外部電極の配置は、特に限定されないが、1次コイル導体が第1外部電極及び第4外部電極と接続されること、2次コイル導体が第2外部電極及び第5外部電極と接続されること、3次コイル導体が第3外部電極及び第6外部電極と接続されることを考慮すると、第1外部電極と第4外部電極とが対向する位置に配置され、第2外部電極と第5外部電極とが対向する位置に配置され、第3外部電極と第6外部電極とが対向する位置に配置されていることが好ましい。
【0018】
また、第1外部電極、第2外部電極及び第3外部電極が積層体の第1の端面に設けられ、第4外部電極、第5外部電極及び第6外部電極が、上記第1の端面と対向する第2の端面に設けられていることが好ましい。
さらに、第1の端面において、第1外部電極が第2外部電極と第3外部電極の間に配置されており、第2の端面において、第4外部電極が第5外部電極と第6外部電極の間に配置されていることが好ましい。
各コイル導体層を構成するコイル導体の断面積が略同じである場合、1次コイル導体層及び並列1次コイル導体層と接続される第1外部電極と第4外部電極は、2次コイル導体層及び3次コイル導体層と異なる直列抵抗(RDC)となる。このとき、1次コイル導体層及び並列1次コイル導体層と接続される第1外部電極及び第4外部電極が、それぞれ、第2外部電極と第3外部電極の間、第5外部電極と第6外部電極の間に配置されていると、外部電極の位置に極性が発生しないため、電子部品の左右を区別することなく使用できる。
【0019】
本発明の電子部品の第一実施形態を構成する外部電極について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の電子部品の第一実施形態の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、電子部品1は、積層体100の端面に、第1外部電極200a、第2外部電極200b、第3外部電極200c、第4外部電極200d、第5外部電極200e、第6外部電極200fが設けられている。
第1外部電極200a、第2外部電極200b、第3外部電極200cは第1の端面100Aに設けられており、第4外部電極200d、第5外部電極200e、第6外部電極200fは第1の端面100Aと対向する第2の端面100Bに設けられている。
また、第1外部電極200aは、第2外部電極200b及び第3外部電極200cの間に配置されており、第4外部電極200dは、第5外部電極200e及び第6外部電極200fの間に配置されている。
なお、
図1に示す電子部品1において、第1~第6外部電極200a~200fは積層体100の底面100C及び上面100Dの一部にも形成されているが、積層体100の底面100C及び上面100Dには外部電極が形成されていなくてもよい。
積層体100は、内層ガラス層80、内層ガラス層80の上面及び底面に設けられた磁性体層(87、86)、並びに、磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層(89、88)からなる。より具体的には、積層体100は、内層ガラス層80、内層ガラス層80の上面に設けられた上面側磁性体層87、上面側磁性体層87の上面に設けられた上面側外層ガラス層89、内層ガラス層80の底面に設けられた底面側磁性体層86及び底面側磁性体層86の底面に設けられた底面側外層ガラス層88からなる。
【0020】
本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層について説明する。
内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えてコイル積層体の上面に配置される上面側引き出し電極層と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えてコイル積層体の底面に配置される底面側引き出し電極層とからなる。
【0021】
本発明の電子部品の第一実施形態において、コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層、2次コイル導体を備える2次コイル導体層、3次コイル導体を備える3次コイル導体層及び並列1次コイル導体を備える並列1次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されてなる。
【0022】
本発明の電子部品の第一実施形態において、内層ガラス層はさらに、絶縁体層を備えていてもよい。
絶縁体層は底面側引き出し電極層の底面側及び/又は上面側引き出し電極層の上面側に形成されることが好ましい。
【0023】
図2及び
図3を参照しながら内層ガラス層の構成を説明する。
図2は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層を各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図であり、
図3は、
図1におけるA-A線断面図である。
図2に示すように、内層ガラス層80は、底面側から順に、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70がこの順で積層されて構成されている。1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30及び並列1次コイル導体層40をまとめてコイル積層体50ともいう。
底面側引き出し電極層60及び上面側引き出し電極層65には、内層ガラス層80の端面に露出し、外部電極と接続するための引き出し電極60a、60b、60d、60e、65a、65c、65d、65fが設けられている。
絶縁体層70には、コイル導体や引き出し電極は設けられていない。
なお、
図2では、内層ガラス層を構成する各層を接続するビアホール導体を二点鎖線で示している。
【0024】
引き出し電極60aは、
図1に示す第1外部電極200aと接続される。
引き出し電極60bは、
図1に示す第2外部電極200bと接続される。
引き出し電極60dは、
図1に示す第4外部電極200dと接続される。
引き出し電極60eは、
図1に示す第5外部電極200eと接続される。
引き出し電極65aは、
図1に示す第1外部電極200aと接続される。
引き出し電極65cは、
図1に示す第3外部電極200cと接続される。
引き出し電極65dは、
図1に示す第4外部電極200dと接続される。
引き出し電極65fは、
図1に示す第6外部電極200fと接続される。
なお、内層ガラス層80を構成する1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30及び並列1次コイル導体層40には、内層ガラス層80の端面に露出して、外部電極と接続するための引き出し電極は設けられていない。
【0025】
1次コイル導体層10は、絶縁層11の表面にコイルパターンである1次コイル導体13を備えている。1次コイル導体13の一方の端部は、コイルパターンの外側に存在する外側端部13aであり、もう一方の端部は、コイルパターンの内側に存在する内側端部13dである。
2次コイル導体層20は、絶縁層21の表面にコイルパターンである2次コイル導体23を備えている。2次コイル導体23の一方の端部はコイルパターンの外側に存在する外側端部23bであり、もう一方の端部はコイルパターンの内側に存在する内側端部23eである。
3次コイル導体層30は、絶縁層31の表面にコイルパターンである3次コイル導体33を備えている。3次コイル導体33の一方の端部はコイルパターンの外側に存在する外側端部33cであり、もう一方の端部はコイルパターンの内側に存在する内側端部33fである。
並列1次コイル導体層40は、絶縁層41の表面にコイルパターンである並列1次コイル導体43を備えている。並列1次コイル導体43の一方の端部はコイルパターンの外側に存在する外側端部43aであり、もう一方の端部はコイルパターンの内側に存在する内側端部43dである。
【0026】
図3に示すように、1次コイル導体層10を構成する1次コイル導体13は、第1ビアホール導体15によって底面側引き出し電極層60と接続されている。
具体的には、1次コイル導体層10に設けられた1次コイル導体13の内側端部13dと底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60dとが、コイルパターンの内側に設けられた第1ビアホール導体15によって接続されている。
なお、
図2に示すように、1次コイル導体13の外側端部13aは、ビアホール導体16により底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60aと接続されている。
【0027】
2次コイル導体層20を構成する2次コイル導体23は、第2ビアホール導体25によって底面側引き出し電極層60と接続されている。
具体的には、2次コイル導体層20に設けられた2次コイル導体23の内側端部23eと底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60eとが、コイルパターンの内側に設けられた第2ビアホール導体25により接続されている。
なお、
図2に示すように、2次コイル導体23の外側端部23bは、ビアホール導体26により底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60bと接続されている。
【0028】
3次コイル導体層30を構成する3次コイル導体33は、第3ビアホール導体35によって上面側引き出し電極層65と接続されている。
具体的には、3次コイル導体層30に設けられた3次コイル導体33の内側端部33fと上面側引き出し電極層65に設けられた引き出し電極65fとが、コイルパターンの内側に設けられた第3ビアホール導体35により接続されている。
なお、
図2に示すように、3次コイル導体33の外側端部33cは、ビアホール導体36により上面側引き出し電極層65に設けられた引き出し電極65cと接続されている。
【0029】
並列1次コイル導体層40を構成する並列1次コイル導体43は、第4ビアホール導体45によって上面側引き出し電極層65と接続されている。
具体的には、並列1次コイル導体層40に設けられた並列1次コイル導体43の内側端部43dと上面側引き出し電極層65に設けられた引き出し電極65dとが、コイルパターンの内側に設けられた第4ビアホール導体45により接続されている。
なお、
図2に示すように、並列1次コイル導体43の外側端部43aは、ビアホール導体46により上面側引き出し電極層65に設けられた引き出し電極65aと接続されている。
【0030】
図2及び
図3に示すように、内層ガラス層80の上面視において、第1ビアホール導体15と第3ビアホール導体35は重なる位置に配置されており、第2ビアホール導体25と第4ビアホール導体45は重なる位置に配置されている。
このことにより、内層ガラス層80を構成するすべてのコイル導体層において、コイルパターンの内側に設けられたビアホール導体の数が最大で2個となっている。
なお、
図2及び
図3に内層ガラス層80では、第1ビアホール導体15と第3ビアホール導体35、第2ビアホール導体25と第4ビアホール導体45は、内層ガラス層80の上面視においてそれぞれ完全に重なっているが、第1ビアホール導体15と第3ビアホール導体35、第2ビアホール導体25と第4ビアホール導体45は内層ガラス層80の上面視においてそれぞれ少なくとも一部が重なっていればよい。
【0031】
本発明の電子部品の第一実施形態では、内層ガラス層を構成するすべてのコイル導体層において、コイルパターンの内側に設けられたビアホール導体の数が最大で2個となっているため、コイルパターンの内側の面積を3つ目のビアホール導体を設けること以外の用途に用いることができる。3つ目のビアホール導体を設けること以外の用途としては、例えば、コイルパターンの巻数を増加させることや、内磁路を設けること等が挙げられる。コイルパターンの巻数を増加させたり内磁路を設けることによって、電子部品のインピーダンス特性を向上させることができる。
【0032】
本発明の電子部品の第一実施形態において、積層体の外形寸法は特に限定されないが、長さ0.80mm以上1.00mm以下、幅0.58mm以上0.78mm以下、高さ0.25mm以上0.45mm以下であることが好ましい。
なお積層体の角部及び稜線部は丸みを帯びていてもよい。
積層体の角部及び稜線部が丸みを帯びている場合、丸みを帯びていないものとして、上記外形寸法を測定するものとする。
【0033】
本発明の電子部品の第一実施形態において、内層ガラス層は、底面側引き出し電極層、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層、並列1次コイル導体層及び上面側引き出し電極層の他に、1次コイル導体層と2次コイル導体層の間、2次コイル導体層と3次コイル導体層の間、3次コイル導体層と並列1次コイル導体層の間に、コイル導体層から電流を引き出す引き出し電極層を別途、有していてもよい。
ただし、各コイル導体層の間に引き出し電極層を配置してしまうと、コイル導体間の距離が変動することにより特性インピーダンスが変化するため、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層及び並列1次コイル導体層の間で特性インピーダンスの整合が困難となる。従って、本発明の電子部品を構成する積層体において、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層及び並列1次コイル導体層の間には、引き出し電極層が配置されていないことが好ましい。
【0034】
本発明の電子部品の第一実施形態において、内層ガラス層を構成する絶縁層及び外層ガラス層を構成する材料は、誘電体ガラス材料からなる。
誘電体ガラス材料は、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、並びに、フィラー成分である石英(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)からなる。
ガラス材料としては、ホウケイ酸系ガラスを使用することが好ましい。
ホウケイ酸系ガラスの組成としては、例えば、SiO2:70wt%以上、85wt%以下、B2O3:10wt%以上、25wt%以下、K2O:0.5wt%以上、5wt%以下、Al2O3:0wt%以上、5wt%以下が挙げられる。
上記組成のホウケイ酸系ガラスは比誘電率が低いため、電子部品の高周波特性を改善することができる。
【0035】
本発明の電子部品の第一実施形態において、内層ガラス層を構成する絶縁層及び外層ガラス層には、上記ガラス材料、石英、アルミナに加え、フェライト材料などの磁性材料や、フィラー成分であるフォルステライト(2MgO・SiO2)を含有していてもよい。
特に、内層ガラス層を構成する絶縁層には、絶縁層全体の重量の34wt%以上、37wt%以下の石英及び0.5wt%以上4wt%以下のアルミナをフィラー成分として含有させることがより好ましい。
石英は、比誘電率がホウケイ酸系ガラスに比べて更に低いため、電子部品の高周波特性をさらに改善することができる。
フォルステライト及びアルミナは抗折強度が高いため、電子部品の機械的強度を向上させることができる。
フェライト材料としては、例えば、Ni-Zn-Cu系フェライトが挙げられる。
フェライトは、比透磁率が高いため、インピーダンス特性を向上させやすい。
【0036】
本発明の電子部品の第一実施形態において、外層ガラス層の石英の含有率は特に限定されないが、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率よりも少ないことが好ましい。
外層ガラス層の石英の含有率が、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率よりも少ないと、外層ガラス層に掛かる圧縮応力が大きくなるため、たわみ強度を増加させることができる。
【0037】
本発明の電子部品の第一実施形態において、外層ガラス層の石英の含有率と内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率の差は、3wt%以上6wt%以下であることが好ましい。
外層ガラス層の石英の含有率と内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率の差が3wt%以上6wt%以下であると、たわみ強度を充分に増加させることができる。
上記石英の含有率の差が3wt%未満であると、外層ガラス層に掛かる圧縮応力が小さく、たわみ強度が充分に増加しないことがある。一方、上記石英の含有率の差が6wt%を超える場合、内層ガラス層、磁性体層及び外層ガラス層の熱膨張係数の差が大きくなり、内層ガラス層にクラックが発生しやすくなることがある。
【0038】
本発明の電子部品の第一実施形態において、外層ガラス層の厚さは特に限定されないが、15μm以上45μm以下であることが好ましい。
外層ガラス層の厚さが15μm未満であると、磁性体層と内層ガラス層の熱膨張係数の差に起因する応力を外層ガラス層が充分に吸収することができず、内層ガラス層にクラックが発生しやすくなる。一方、外層ガラス層の厚さが45μmを超える場合、外層ガラス層に充分な圧縮応力が掛からず、外層ガラス層が剥離しやすくなることがある。
【0039】
本発明の電子部品の第一実施形態において、コイル導体層を構成するコイル導体は、コイルパターンと、該コイルパターンの外側に配置される外側端部と、コイルパターンの内側に配置される内側端部とを有する。
コイル導体は、上記絶縁層上に導電性ペーストを印刷等の方法により配置することにより形成することができる。
コイル導体を構成する材料は特に限定されないが、Ag等が挙げられる。
【0040】
本発明の電子部品の第一実施形態において、各コイル導体のターン数(巻数ともいう)は、特に限定されず、所望の周波数特性に応じて巻数を設定すればよいが、上記ターン数は6以上であることが好ましい。
【0041】
本発明の電子部品の第一実施形態において、各コイル導体の導体長さ(コイルパターン部分の配線長)は特に限定されないが、全てのコイル導体で略同じであることが望ましい。
【0042】
本発明の電子部品の第一実施形態において、各コイル導体の断面積(コイル導体パターンの線幅と厚さの積)は特に限定されないが、各コイル導体層の直列抵抗を揃える観点からは、2次コイル導体及び3次コイル導体の断面積を略等しくし、1次コイル導体及び並列1次コイル導体の断面積を上記2次コイル導体及び3次コイル導体の断面積の0.5倍とすることが望ましい。
1次コイル導体及び並列1次コイル導体の断面積を上記2次コイル導体及び3次コイル導体の断面積の0.5倍とすることで、第1外部電極と第4外部電極との間の直列抵抗、第2外部電極と第5外部電極との間の直列抵抗、及び、第3外部電極と第6外部電極との間の直列抵抗を略同じ値に調整することができる。
【0043】
本発明の電子部品の第一実施形態において、各コイル導体におけるコイルパターンのピッチ(コイル導体パターンの線幅と、隣接するコイル導体パターンまでの距離の合計)は特に限定されないが、28μm以上、34μm以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の電子部品の第一実施形態において、コイル導体の断面積は、30μm2以上、160μm2以下であることが好ましい。
コイル導体の断面積が30μm2未満の場合、スクリーン印刷等の方法によりコイル導体層を形成することが困難となり、配線不良(断線)を起こしやすくなる。一方、コイル導体の断面積が160μm2を超える場合、コイルパターン同士の距離が接近しすぎないようにコイルパターンの巻数を減少させる必要が生じてしまい、所望のインピーダンス特性を得られないことがある。
【0045】
本発明の電子部品の第一実施形態において、底面側引き出し電極層及び上面側引き出し電極層は、絶縁層の表面に引き出し電極が形成されてなる。
引き出し電極を構成する材料は特に限定されないがAg等が挙げられる。
また、絶縁体層を構成する材料としては、ガラス材料等の非磁性材料が挙げられる。
【0046】
本発明の電子部品第一実施形態において、1次コイル導体層と底面側引き出し電極層、2次コイル導体層と底面側引き出し電極層、3次コイル導体層と上面側引き出し電極層、並列1次コイル導体層と上面側引き出し電極層は、それぞれ、ビアホール導体により接続されている。
ビアホール導体を形成する材料は特に限定されないが、Ag等が挙げられる。
【0047】
本発明の電子部品の第一実施形態において、外部電極を構成する材料は特に限定されないが、NiやSnなどが挙げられる。
NiやSnからなる電極層の内側に、さらに、下地電極が設けられていてもよい。
下地電極としては、Ag粉末とガラスフリットを含有した導電性ペーストを積層体の表面に塗布し、焼成したもの等が挙げられる。
下地電極の表面にめっきによってNi膜やSn膜を形成することによって、外部電極が形成される。
【0048】
本発明の電子部品の第一実施形態において、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層及び並列1次コイル導体層は、それぞれ2つ以上のコイル導体を有していてもよい。
1つのコイル導体層が2つ以上のコイル導体を有する場合、各コイル導体は、積層体の上面視において互いに略重なるコイルパターンを有していることが好ましい。
この時、各コイル導体同士は並列に接続される。
2次コイル導体層を構成する2次コイル導体の数を2つとし、3次コイル導体層を構成する3次コイル導体の数を2つとすると、各コイル導体の断面積を同じにした場合に、2次コイル導体層及び3次コイル導体層における直列抵抗の合成値が、1次コイル導体及び並列1次コイル導体の直列抵抗の合成値と略等しくなる。この場合、1次コイル導体層及び並列1次コイル導体層に接続される第1、第4外部電極間の直列抵抗、2つの2次コイル導体を有する2次コイル導体層に接続される第2、第5外部電極間の直列抵抗、2つの3次コイル導体を有する3次コイル導体層に接続される第3、第6外部電極間の直列抵抗が略等価なものとなる。従って、上述したように、第1外部電極及び第4外部電極を第2外部電極及び第3外部電極の間、及び、第5外部電極及び第6外部電極の間に配置しない場合であっても、電子部品の左右を区別することなく使用できる。
【0049】
コイル導体層が複数のコイル導体を備える場合について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層の別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図であり、
図5は、
図4に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
図4及び
図5に示すように、内層ガラス層81は底面側から順に、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70がこの順で積層されて構成されている。
2次コイル導体層20は、2次コイル導体を2つ(23、23’)有しており、3次コイル導体層30は、3次コイル導体を2つ(33、33’)有している。
2つの2次コイル導体23、23’はそれぞれ、絶縁層21、21’の表面に形成されている。2つの3次コイル導体33、33’はそれぞれ、絶縁層31、31’の表面に形成されている。
2次コイル導体23’及び3次コイル導体33’を除いた各コイル導体とビアホール導体及び引き出し電極との接続については、
図1~3に説明した内層ガラス層80の場合と同様である。
【0050】
2次コイル導体層20において、2つの2次コイル導体23、23’は、内層ガラス層81の上面視において、互いに略重なっている。
2次コイル導体23’はコイルパターンの外側に設けられた外側端部23b’及びコイルパターンの内側に設けられた内側端部23e’を有しており、外側端部23b’及び内側端部23e’の位置は、積層体の上面視において、2次コイル導体23の外側端部23b及び内側端部23eと略重なる。従って、2次コイル導体23、23’は、第2ビアホール導体25、25’及びビアホール導体26により底面側引き出し電極層60と接続されている。
【0051】
3次コイル導体層30において、2つの3次コイル導体33、33’は、内層ガラス層81の上面視において、互いに略重なっている。
3次コイル導体33’はコイルパターンの外側に設けられた外側端部33c’及びコイルパターンの内側に設けられた内側端部33f’を有しており、外側端部33c’及び内側端部33f’の位置は、積層体の上面視において、3次コイル導体33の外側端部33c及び内側端部33fと略重なる。従って、3次コイル導体33、33’は、第3ビアホール導体35、35’及びビアホール導体36により上面側引き出し電極層65と接続されている。
【0052】
内層ガラス層81においては、底面側から、1次コイル導体13、2次コイル導体23、2次コイル導体23’、3次コイル導体33、3次コイル導体33’、並列1次コイル導体43がこの順で積層されている。さらに、1次コイル導体13と並列1次コイル導体43が並列に接続されており、2次コイル導体23と2次コイル導体23’が並列に接続されており、3次コイル導体33と3次コイル導体33’が並列に接続されている。
このような状態だと、1次コイル導体層10及び並列1次コイル導体層40と2次コイル導体層20との間の特性インピーダンス、2次コイル導体層20と3次コイル導体層30との間の特性インピーダンス、3次コイル導体層30と1次コイル導体層10及び並列1次コイル導体層40との間の特性インピーダンスを整合させることができる。
各コイル導体層間の特性インピーダンスが略一致している(整合している)と、電子部品によるエネルギー損失を抑制することができる。
【0053】
本発明の電子部品の第一実施形態では、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層及び並列1次コイル導体層中のコイルパターンの内側、かつ、積層体の上面視において第1ビアホール導体、第2ビアホール導体、第3ビアホール導体及び第4ビアホール導体と重ならない位置に、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層及び並列1次コイル導体層を貫通する内磁路が設けられていてもよい。
コイルパターンの内側に、上記内磁路が設けられていると、各コイル導体が発生させる磁界の相互作用が強まり、インピーダンス特性が良好となる。
【0054】
内磁路を備える内層ガラス層について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層のさらに別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図であり、
図7は、
図6に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
図6及び
図7に示すように、内層ガラス層82は、底面側から順に、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70がこの順で積層されて構成されている。1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30及び並列1次コイル導体層40が積層したものはコイル積層体52である。
【0055】
図7に示すように、内層ガラス層82は、コイルパターンの内側に、内磁路90を有している。
内磁路90は、第1ビアホール導体15、第2ビアホール導体25、第3ビアホール導体35及び第4ビアホール導体45と、上面視において重ならない位置で、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70を貫通している。
図6及び
図7に示す内層ガラス層82は、
図1~3に示した内層ガラス層80、
図4~5に示した内層ガラス層81とは異なり、各コイル導体層のコイルパターンの外側に、ビアホール導体が形成されていない。
【0056】
1次コイル導体層10において、1次コイル導体13の外側端部13aは内層ガラス層82の端面に直接露出しており、内側端部13dは第1ビアホール導体15によって底面側引き出し電極層60の引き出し電極60dと接続されている。
2次コイル導体層20において、2次コイル導体23の外側端部23bは内層ガラス層82の端面に直接露出しており、内側端部23eは第2ビアホール導体25によって底面側引き出し電極層60の引き出し電極60eと接続されている。
3次コイル導体層30において、3次コイル導体33の外側端部33cは内層ガラス層82の端面に直接露出しており、内側端部33fは第3ビアホール導体35によって上面側引き出し電極層65の引き出し電極65fと接続されている。
並列1次コイル導体層40において、並列1次コイル導体43の外側端部43aは内層ガラス層82の端面に直接露出しており、内側端部43dは第4ビアホール導体45によって上面側引き出し電極層65の引き出し電極65dと接続されている。
【0057】
内磁路を構成する材料は、特に限定されないが、比透磁率が大きいものが好ましい。比透磁率が大きい材料としては、例えば、Ni-Zn-Cu系フェライト等のフェライトが挙げられる。
【0058】
図8及び
図9を参照して、本発明の電子部品の第一実施形態の更に別の形態について説明する。
図8は、本発明の電子部品の第一実施形態を構成する内層ガラス層のさらに別の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図であり、
図9は、
図8に示す内層ガラス層を、
図1におけるA-A線と同じ位置で切断した場合の様子を模式的に示す断面図である。
図8及び
図9に示すように、内層ガラス層83は、底面側から順に、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70がこの順で積層されて構成されている。
【0059】
図9に示すように、内層ガラス層83は、コイルパターンの内側に、内磁路90を有している。
内磁路90は、第1ビアホール導体15、第2ビアホール導体25、25’、第3ビアホール導体35、35’及び第4ビアホール導体45と、内層ガラス層83の上面視において重ならない位置で、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20、3次コイル導体層30、並列1次コイル導体層40、上面側引き出し電極層65及び絶縁体層70を貫通している。
【0060】
また、2次コイル導体層20を構成する2次コイル導体23、23’は、コイルパターンの外側端部23b、23b’が直接、内層ガラス層83の端面に露出しており、第2外部電極200bと接続される。
3次コイル導体層30を構成する3次コイル導体33、33’も、コイルパターンの外側の端部である外側端部33c、33c’が直接、内層ガラス層83の端面に露出しており、第3外部電極200cと接続される。
その他のビアホール導体及び各コイル導体と引き出し電極との接続関係については、
図6~7に説明した内層ガラス層82の場合と同様である。
【0061】
本発明の電子部品の第一実施形態において、内層ガラス層が内磁路を有している場合、内磁路と底面側磁性体層及び上面側磁性体層が同一の材料で構成されていてもよい。この場合、積層体を準備する段階では内磁路を形成する領域を空隙(貫通孔)としておき、積層体を準備した後に、磁性体層の原料となる磁性体ペーストを該空隙(貫通孔)中に充填する方法によって、内磁路と磁性体層を同時に形成する方法を採用してもよい。
なお、上面側引き出し電極層の上面に絶縁体層が設けられている場合、上面側磁性体層は絶縁体層の上面に設けられていることが好ましい。また、底面側引き出し電極層の底部に絶縁体層が設けられている場合、底面側磁性体層は絶縁体層の底面に設けられていることが好ましい。
【0062】
[第二実施形態]
本発明の電子部品の第二実施形態は、内層ガラス層、上記内層ガラス層の上面及び底面に設けられた磁性体層、並びに、上記磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層からなる積層体の表面に外部電極を設けてなる電子部品であって、上記内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えて上記コイル積層体の上面及び/又は底面に配置される引き出し電極層と、からなり、上記コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層及び2次コイル導体を備える2次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されており、上記外部電極は、第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極及び第4外部電極を備え、上記1次コイル導体は、上記第1外部電極及び上記第3外部電極と接続されており、上記2次コイル導体は、上記第2外部電極及び上記第4外部電極と接続されており、上記内層ガラス層を構成する絶縁層、及び、上記外層ガラス層は、いずれも、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、石英及びアルミナからなる誘電体ガラス材料からなり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記ガラス材料の含有率が60wt%以上65wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、上記内層ガラス層を構成する絶縁層の上記アルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下である、ことを特徴とする。
【0063】
本発明の電子部品の第二実施形態では、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が34wt%以上37wt%以下であり、従来よりも多くの石英を含有しているため、内層ガラス層の熱膨張係数(CTE)が磁性体層の熱膨張係数に近くなっている。
そのため、内層ガラス層に掛かる引張応力が小さくなり、めっき液と接触した際にクラックが発生することを抑制することができる。
内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が34wt%未満であると、磁性体層との熱膨張係数の差が大きくなってしまい、クラックが発生しやすくなる。一方、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率が37wt%を超えると、内層ガラス層の焼結性が低下し、機械的強度が低下する。
また、本発明の電子部品の第二実施形態では、内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が0.5wt%以上4wt%以下であるため、内層ガラス層にクリストバライト相を生成させることができ、めっき液と接触した際のクラックの発生をさらに抑制することができる。
内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が0.5wt%未満であると、内層ガラス層が過焼結となり気泡が発生しやすくなる。一方、内層ガラス層を構成する絶縁層のアルミナの含有率が4wt%を超えると、ガラスの焼結性が低下し、さらに磁性体層との熱膨張係数の差が大きくなってしまい、クラックが発生しやすくなる。
【0064】
本発明の電子部品の第二実施形態を構成する外部電極について説明する。
本発明の電子部品の第二実施形態は、積層体の表面に第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極及び第4外部電極(以下、まとめて第1~第4外部電極ともいう)を備える。
積層体の表面における第1~第4外部電極の配置は、特に限定されないが、1次コイル導体が第1外部電極及び第3外部電極と接続されること、2次コイル導体が第2外部電極及び第4外部電極と接続されることを考慮すると、第1外部電極と第3外部電極とが対向する位置に配置され、第2外部電極と第4外部電極とが対向する位置に配置されていることが好ましい。
【0065】
本発明の電子部品の第二実施形態を構成する外部電極について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の電子部品の第二実施形態の一例を模式的に示す斜視図である。
図10に示すように、電子部品5は、積層体105の端面に、第1外部電極205a、第2外部電極205b、第3外部電極205c、第4外部電極205dが設けられている。
第1外部電極205a及び第2外部電極205bは第1の端面105Aに設けられており、第3外部電極205c、第4外部電極205dは第1の端面105Aと対向する第2の端面105Bに設けられている。
なお、
図10に示す電子部品5において、第1~第4外部電極205a~205dは積層体105の底面105C及び上面105Dの一部にも形成されているが、積層体105の底面105C及び上面105Dには外部電極が形成されていなくてもよい。
積層体105は、内層ガラス層85、内層ガラス層85の上面及び底面に設けられた磁性体層(87、86)、並びに、磁性体層の上面及び底面に設けられた外層ガラス層(89、88)からなる。より具体的には、積層体105は、内層ガラス層85、内層ガラス層85の上面に設けられた上面側磁性体層87、上面側磁性体層87の上面に設けられた上面側外層ガラス層89、内層ガラス層80の底面に設けられた底面側磁性体層86及び底面側磁性体層86の底面に設けられた底面側外層ガラス層88からなる。
【0066】
本発明の電子部品の第二実施形態を構成する内層ガラス層について説明する。
内層ガラス層は、絶縁層の表面にコイルパターンを備えたコイル導体が形成されてなるコイル導体層を複数個積層したコイル積層体と、絶縁層の表面に引き出し電極を備えてコイル積層体の上面に配置される上面側引き出し電極層及び/又は絶縁層の表面に引き出し電極を備えてコイル積層体の底面に配置される底面側引き出し電極層とからなる。
【0067】
本発明の電子部品の第二実施形態において、コイル積層体は、1次コイル導体を備える1次コイル導体層及び2次コイル導体を備える2次コイル導体層が、底面側からこの順で積層されてなる。
【0068】
本発明の電子部品の第二実施形態において、内層ガラス層はさらに、絶縁体層を備えていてもよい。
絶縁体層は底面側引き出し電極層の底面側及び/又は2次コイル導体層の上面側に形成されることが好ましい。
【0069】
本発明の電子部品の第二実施形態を構成する内層ガラス層について、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、本発明の電子部品の第二実施形態を構成する内層ガラス層の一例を、各層ごとに分離し並べた様子を模式的に示す説明図であり、
図12は、
図10におけるB-B線断面図である。
図11に示すように、内層ガラス層85は、底面側から順に、底面側引き出し電極層60、1次コイル導体層10、2次コイル導体層20及び絶縁体層70がこの順で積層されて構成されている。1次コイル導体層10及び2次コイル導体層20をまとめてコイル積層体55ともいう。
底面側引き出し電極層60には、内層ガラス層85の端面に露出し、外部電極と接続するための引き出し電極60c及び60dが設けられている。
絶縁体層50には、コイル導体や引き出し電極は設けられていない。
なお、
図11では、内層ガラス層を構成する各層を接続するビアホール導体15、25を二点鎖線で示している。
【0070】
引き出し電極60cは、
図10に示す第3外部電極205cと接続される。
引き出し電極60dは、
図10に示す第4外部電極205dと接続される。
【0071】
1次コイル導体層10は、絶縁層11の表面にコイルパターンである1次コイル導体13を備えている。1次コイル導体13の一方の端部は、コイルパターンの外側に存在する外側端部13aであり、もう一方の端部は、コイルパターンの内側に存在する内側端部13cである。
2次コイル導体層20は、絶縁層21の表面にコイルパターンである2次コイル導体23を備えている。2次コイル導体23の一方の端部は、コイルパターンの外側に存在する外側端部23bであり、もう一方の端部は、コイルパターンの内側に存在する内側端部23dである。
【0072】
図11に示すように、1次コイル導体層10を構成する1次コイル導体13は、第1ビアホール導体15によって底面側引き出し電極層60と接続されている。
具体的には、1次コイル導体層10に設けられた1次コイル導体13の内側端部13cと底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60cとが、コイルパターンの内側に設けられた第1ビアホール導体15によって接続されている。
なお、1次コイル導体13の外側端部13aは、内層ガラス層85の端面に直接露出しており、
図10に示す外部電極205aと接続される。
【0073】
2次コイル導体層20を構成する2次コイル導体23は、第2ビアホール導体25によって底面側引き出し電極層60と接続されている。
具体的には、2次コイル導体層20に設けられた2次コイル導体23の内側端部23dと底面側引き出し電極層60に設けられた引き出し電極60dとが、コイルパターンの内側に設けられた第2ビアホール導体25により接続されている。
なお、2次コイル導体23の外側端部23bは、内層ガラス層85の端面に直接露出しており、
図10に示す外部電極205bと接続される。
【0074】
なお、本発明の電子部品の第二実施形態においては、内層ガラス層を構成するコイル積層体の上面又は底面の少なくとも一方に、引き出し電極層が形成されている。
すなわち、本発明の電子部品の第二実施形態において、内層ガラス層は、コイル積層体の上面に上面側引き出し電極層が形成されたものであってもよく、コイル積層体の底面に底面側引き出し電極層が形成されたものであってもよく、コイル積層体の上面及び底面に上面側引き出し電極層及び底面側引き出し電極層がそれぞれ形成されたものであってもよい。
【0075】
本発明の電子部品の第二実施形態において、内層ガラス層を構成する絶縁層及び外層ガラス層を構成する材料は、誘電体ガラス材料からなる。
誘電体ガラス材料は、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、並びに、フィラー成分である石英(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)からなる。
ガラス材料としては、ホウケイ酸系ガラスを使用することが好ましい。
ホウケイ酸系ガラスの組成としては、例えば、SiO2:70wt%以上、85wt%以下、B2O3:10wt%以上、25wt%以下、K2O:0.5wt%以上、5wt%以下、Al2O3:0wt%以上、5wt%以下が挙げられる。
上記組成のホウケイ酸系ガラスは比誘電率が低いため、電子部品の高周波特性を改善することができる。
【0076】
本発明の電子部品の第二実施形態において、内層ガラス層を構成する絶縁層及び外層ガラス層は、上記ガラス材料、石英、アルミナに加え、フェライト材料などの磁性材料や、フィラー成分であるフォルステライト(2MgO・SiO2)を含有していてもよい。
特に、内層ガラス層を構成する絶縁層には、絶縁層全体の重量の34wt%以上、37wt%以下の石英及び0.5wt%以上4wt%以下のアルミナをフィラー成分として含有させることがより好ましい。
石英は、比誘電率がホウケイ酸系ガラスに比べて更に低いため、電子部品の高周波特性をさらに改善することができる。
フォルステライト及びアルミナは抗折強度が高いため、電子部品の機械的強度を向上させることができる。
フェライト材料としては、例えば、Ni-Zn-Cu系フェライトが挙げられる。
フェライトは、比透磁率が高いため、インピーダンス特性を向上させやすい。
【0077】
本発明の電子部品の第二実施形態において、外層ガラス層の石英の含有率は特に限定されないが、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率よりも少ないことが好ましい。
外層ガラス層の石英の含有率が、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率よりも少ないと、外層ガラス層に掛かる圧縮応力が大きくなるため、たわみ強度を増加させることができる。
【0078】
本発明の電子部品の第二実施形態において、外層ガラス層の石英の含有率と内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率の差は、3wt%以上6wt%以下であることが好ましい。
外層ガラス層の石英の含有率と内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率の差が3wt%以上6wt%以下であると、たわみ強度を充分に増加させることができる。
上記石英の含有率の差が3wt%未満であると、外層ガラス層に掛かる圧縮応力が小さく、たわみ強度が充分に増加しないことがある。一方、上記石英の含有率の差が6wt%を超える場合、内層ガラス層、磁性体層及び外層ガラス層の熱膨張係数の差が大きくなり、内層ガラス層にクラックが発生しやすくなることがある。
【0079】
本発明の電子部品の第二実施形態において、外層ガラス層の厚さは特に限定されないが、15μm以上45μm以下であることが好ましい。
外層ガラス層の厚さが15μm未満であると、磁性体層と内層ガラス層の熱膨張係数の差に起因する応力を外層ガラス層が充分に吸収することができず、内層ガラス層にクラックが発生しやすくなる。一方、外層ガラス層の厚さが45μmを超える場合、外層ガラス層に充分な圧縮応力が掛からず、外層ガラス層が剥離しやすくなることがある。
【0080】
本発明の電子部品の第二実施形態において、コイル導体層を構成するコイル導体は、コイルパターンと、該コイルパターンの外側に配置される外側端部と、コイルパターンの内側に配置される内側端部とを有する。
コイル導体は、上記絶縁層上に導電性ペーストを印刷等の方法により配置することにより形成することができる。
コイル導体を構成する材料は特に限定されないが、Ag等が挙げられる。
【0081】
本発明の電子部品の第二実施形態において、各コイル導体のターン数(巻数ともいう)は、特に限定されず、所望の周波数特性に応じて巻数を設定すればよいが、上記ターン数は6以上であることが好ましい。
【0082】
本発明の電子部品の第二実施形態において、各コイル導体の導体長さ(コイルパターン部分の配線長)は特に限定されないが、全てのコイル導体で略同じであることが望ましい。
【0083】
本発明の電子部品の第二実施形態において、各コイル導体におけるコイルパターンのピッチ(コイル導体パターンの線幅と、隣接するコイル導体パターンまでの距離の合計)は特に限定されないが、28μm以上、34μm以下であることが好ましい。
【0084】
本発明の電子部品の第二実施形態において、コイル導体の断面積は、30μm2以上、160μm2以下であることが好ましい。
コイル導体の断面積が30μm2未満の場合、スクリーン印刷等の方法によりコイル導体層を形成することが困難となり、配線不良(断線)を起こしやすくなる。一方、コイル導体の断面積が160μm2を超える場合、コイルパターン同士の距離が接近しすぎないようにコイルパターンの巻数を減少させる必要が生じてしまい、所望のインピーダンス特性を得られないことがある。
【0085】
本発明の電子部品の第二実施形態において、底面側引き出し電極層及び/又は上面側引き出し電極層は、絶縁層の表面に引き出し電極が形成されてなる。
引き出し電極を構成する材料は特に限定されないがAg等が挙げられる。
また、絶縁体層を構成する材料としては、ガラス材料等の非磁性材料が挙げられる。
【0086】
本発明の電子部品の第二実施形態において、1次コイル導体層と底面側引き出し電極層又は上面側引き出し電極層、2次コイル導体層と底面側引き出し電極層又は上面側引き出し電極層は、それぞれ、ビアホール導体により接続されている。
ビアホール導体を形成する材料は特に限定されないが、Ag等が挙げられる。
【0087】
本発明の電子部品の第二実施形態において、外部電極を構成する材料は特に限定されないが、NiやSnなどが挙げられる。
NiやSnからなる電極層の内側に、さらに、下地電極が設けられていてもよい。
下地電極としては、Ag粉末とガラスフリットを含有した導電性ペーストを積層体の表面に塗布し、焼成したもの等が挙げられる。
下地電極の表面にめっきによってNi膜やSn膜を形成することによって、外部電極が形成される。
【0088】
本発明の電子部品の第二実施形態において、1次コイル導体層及び2次コイル導体層は、それぞれ2つ以上のコイル導体を有していてもよい。
1つのコイル導体層が2つ以上のコイル導体を有する場合、各コイル導体は、積層体の上面視において互いに略重なるコイルパターンを有していることが好ましい。
この時、各コイル導体同士は並列に接続される。
【0089】
[電子部品の製造方法]
続いて、本発明の電子部品の製造方法について説明する。
本発明の電子部品の製造方法は、内層ガラス層となるセラミックグリーンシートAを準備する工程と、磁性体層となるセラミックグリーンシートBを準備する工程と、外層ガラス層となるセラミックグリーンシートCを準備する工程と、上記セラミックグリーンシートAにコイル導体パターンを形成してコイルシートを得る工程と、上記セラミックグリーンシートAに引き出し電極パターンを形成して引き出し電極シートを得る工程と、上記セラミックグリーンシートC、上記セラミックグリーンシートB、上記引き出し電極シート、上記コイルシート、上記引き出し電極シート、上記セラミックグリーンシートB、上記セラミックグリーンシートCをこの順で積層して積層体を得る積層工程と、上記積層体を焼成する工程と、上記焼成した積層体に外部電極を形成する工程と、を含み、上記セラミックグリーンシートAには、上記セラミックグリーンシートA全体に対して、34wt%以上37wt%以下の石英及び0.5wt%以上4wt%以下のアルミナがフィラー成分として添加されている、ことを特徴とする。
【0090】
本発明の電子部品の製造方法では、まず、内層ガラス層となるセラミックグリーンシートAを作製する。
例えば、少なくともK、B、及びSiを含有するガラス材料、並びに、フィラー成分である石英(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)を混合した混合材料に、ポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤及び分散剤等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法などの方法によりセラミックグリーンシートAを得る。
このセラミックグリーンシートAを焼成することにより内層ガラス層を構成する絶縁層となる。
セラミックグリーンシートB及びセラミックグリーンシートCも同様の方法で作製することができる。
セラミックグリーンシートA、セラミックグリーンシートB及びセラミックグリーンシートCをまとめて、単にセラミックグリーンシートともいう。
【0091】
ガラス材料としては、ホウケイ酸系ガラスを使用することが好ましい。
ホウケイ酸系ガラスの組成としては、例えば、SiO2:70wt%以上85wt%以下、B2O3:10wt%以上25wt%以下、K2O:0.5wt%以上5wt%以下、Al2O3:0wt%以上5wt%以下のものが挙げられる。
上記組成のホウケイ酸系ガラスは比誘電率が低いため、電子部品の高周波特性を改善することができる。
【0092】
上記ガラス材料、石英、アルミナに加えて、フェライト材料などの磁性材料や、フィラー成分であるフォルステライト(2MgO・SiO2)を含有してもよい。
上記フィラー成分の添加量は、セラミックグリーンシートA全体に対して、石英が34wt%以上、37wt%以下、アルミナが0.5wt%以上、4wt%以下である。
石英は、比誘電率がホウケイ酸系ガラスに比べてさらに低く、高周波特性をさらに改善することができる。
フォルステライト及びアルミナは、抗折強度が高く、機械的強度を向上させることができる。
フェライト材料としては、例えば、Ni-Zn-Cu系フェライトが挙げられる。
フェライトは、比透磁率が高いため、インピーダンス特性を向上させやすい。
【0093】
フェライト材料として、例えば、鉄、ニッケル、亜鉛及び銅の酸化物原料を混合して800℃、1時間で仮焼した後、ポールミルにより粉砕し、乾燥することにより、平均粒径が約0.5μmのNi-Zn-Cu系のフェライト原料(酸化物混合粉末)を得ることができる。
【0094】
フェライト材料を用いてセラミックグリーンシートBを作製する場合、高いL値(インダクタンス)を得るためには、Fe2O3:40mol%以上49.5mol%以下、ZnO:5mol%以上35mol%以下、CuO:4mol%以上12mol%以下、残部:NiO及び微量添加剤(不可避不純物を含む)の組成のフェライト材料を用いることが好ましい。
【0095】
ガラス材料を用いてセラミックグリーンシートCを作製する場合、セラミックグリーンシートAよりもフィラー成分である石英の添加量を少なくすることが好ましい。
セラミックグリーンシートCを作製する場合、セラミックグリーンシートC全体に対して、フィラー成分として石英が28wt%以上34wt%以下、アルミナが0.5wt%以上4wt%以下であることが好ましい。
【0096】
作製したセラミックグリーンシートAに、所定のレーザー加工を施して、直径30μm以上、40μm以下程度のビアホールを形成する。Agペーストをビアホールに充填し、さらに、11μm程度の厚みを有するコイル導体パターン(コイル導体)をスクリーン印刷し、乾燥することで、焼成によりコイル導体層となるコイルシートを得る。
【0097】
また、作製したセラミックグリーンシートAに、必要に応じてレーザー加工を施してビアホールを形成し、さらに11μm程度の厚みを有する引き出し電極パターンをスクリーン印刷し、乾燥することで、焼成により引き出し電極層となる電極シートを得る。
【0098】
なお、コイル導体パターン及び引き出し電極パターン(まとめてパターンともいう)を印刷していないセラミックグリーンシートAを焼成することで絶縁体層となる。
【0099】
その後、底面側外層ガラス層となるセラミックグリーンシートC、底面側磁性体層となるセラミックグリーンシートB、底面側引き出し電極層となる底面電極シート、1次コイル導体層となる1次コイルシート、2次コイル導体層となる2次コイルシート、3次コイル導体層となる3次コイルシート、並列1次コイル導体層となる並列1次コイルシート、上面側引き出し電極層となる上面電極シート、パターンを印刷していないセラミックグリーンシートA、上面側磁性体層となるセラミックグリーンシートB、上面側外層ガラス層となるセラミックグリーンシートCをこの順で積層して、熱圧着することで積層シートを得る。
このとき、1次コイル導体、2次コイル導体、3次コイル導体及び並列1次コイル導体のコイルパターンが上面視で略重なるように、かつ、各コイルシートに形成されたビアホールのうち、対応するもの同士が上面視で重なるように、かつ、ビアホールと引き出し電極の位置をあわせて、各コイルシート及び電極シートを積層する。
得られた積層シートを所定の寸法に切断することにより、焼成により積層体となる積層体前駆体を得る。
【0100】
積層体に内磁路を設ける場合、一旦、底面側引き出し電極層となる底面電極シート、1次コイル導体層となる1次コイルシート、2次コイル導体層となる2次コイルシート、3次コイル導体層となる3次コイルシート、並列1次コイル導体層となる並列1次コイルシート、上面側引き出し電極層となる上面電極シート、パターンを印刷していないセラミックグリーンシートAだけを積層、熱圧着して積層シートを準備し、この積層シートの所定位置にサンドブラストを行ってビアホールを形成して、内磁路となる内磁路ペーストを一括充填して焼成し、その後セラミックグリーンシートB及びセラミックグリーンシートCを積層する方法や、上述したコイルシートを作製する際に、セラミックグリーンシートAにレーザー加工を施して形成したビアホールに上記内磁路ペーストを順次充填する方法等を用いることができる。
内磁路ペーストは、例えば、Ni-Zn-Cu系のフェライト原料をポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤及び分散剤等を加えて混練することで得られる。
【0101】
その後、所定の温度、時間で脱バインダ及び焼成を施すことで、底面側外層ガラス層、底面側磁性体層、底面側引き出し電極層、1次コイル導体層、2次コイル導体層、3次コイル導体層、並列1次コイル導体層、上面側引き出し電極層、絶縁体層、上面側磁性体層及び上面側外層ガラス層がこの順に積層された焼成体(積層体)を得る。
脱バインダ条件としては、大気雰囲気下、350~500℃まで加熱する方法が挙げられる。
焼成条件としては、大気雰囲気下、850~920℃の温度まで加熱する方法が挙げられる。
【0102】
焼成により得られた積層体と研磨剤をバレルに収容して、バレルに回転運動を与えることで積層体の角部及び稜線部を丸める、バレル研磨を行うことが好ましい。
バレル研磨により積層体の切断面に形成されたバリが除去されるとともに、積層体の角部及び稜線部を丸めて機械的強度を高めることができる。
【0103】
得られた積層体の所定位置に、外部電極を形成することにより、本発明の電子部品が得られる。
積層体の表面に外部電極を形成する方法としては、例えば、積層体の表面のうち、第1の端面及び第2の端面にそれぞれ3箇所ずつ下地電極を形成し、その下地電極の表面を覆うようにめっき電極を形成する方法が挙げられる。
下地電極は、例えば、Ag粉末と所定量のガラスフリットの混合物を含有した下地電極ペーストを積層体表面に塗布し、900℃程度の温度で焼成して焼き付ける方法が挙げられる。
【0104】
下地電極に対して、めっきにより、所定の厚みのNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、外部電極を形成する。
【0105】
以上により、本発明の電子部品の第一実施形態を作製することができる。
一方、上述した積層シートを作製する方法を、底面側外層ガラス層となるセラミックグリーンシートC、底面側磁性体層となるセラミックグリーンシートB、底面側引き出し電極層となる底面電極シート、1次コイル導体層となる1次コイルシート、2次コイル導体層となる2次コイルシート、パターンを印刷していないセラミックグリーンシートA、上面側磁性体層となるセラミックグリーンシートB、上面側外層ガラス層となるセラミックグリーンシートCをこの順で積層して、熱圧着する方法に変えることによって、本発明の電子部品の第二実施形態を作製することができる。
ただし、底面側引き出し電極層となる底面電極シートは必須ではなく、底面電極シートの代わりに上面側引き出し電極層となる上面電極シートを、並列1次コイルシート及び上面側磁性体層となるセラミックグリーンシートBの間に配置されるように積層してもよく、底面電極シート及び上面電極シートの両方を積層してもよい。
上面側引き出し電極層となる上面電極シートは、2次コイル導体となる2次コイルシートとパターンを印刷していないセラミックグリーンシートAの間に配置されることが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の電子部品及び本発明の電子部品の製造方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
[セラミックグリーンシートAの作製]
(1)K2O、B2O3、SiO2及びAl2O3がそれぞれ、2.0wt%、20.0wt%、76.0wt%、2.0wt%含まれるガラス材料粉末を準備した。
(2)ガラス材料粉末63.3重量部と、フィラー成分である石英34.1重量部及びアルミナ2.6重量部を混合してガラス原料粉末を得た。
(3)ガラス原料粉末、有機バインダ(ポリビニルブチラール系樹脂)、有機溶剤(エタノール及びトルエン)をPSZボールとともにポットミルに入れ、湿式で充分に混合粉砕し、スラリーを作製した。
(4)ドクターブレード法により、上記スラリーをシート状に成形加工し、これを矩形に打ち抜くことにより、平面視寸法が225mm×225mm、厚さ20μmのセラミックグリーンシートA(試料番号1)を複数枚作製した。
【0108】
ガラス材料、石英及びアルミナの含有率を表1のように変更して、セラミックグリーンシートA(試料番号2~9)をそれぞれ複数枚作製した。
【0109】
【0110】
[セラミックグリーンシートBの作製]
(1)所定量のFe2O3、NiO、ZnO及びCuOを含有したフェライト原料(仮焼粉末)を準備した。
(2)上記仮焼粉末100重量部に対して所定量の有機バインダ(ポリビニルブチラール系樹脂)、有機溶剤(エタノール及びトルエン)を添加し、PSZボールとともにポットミルに入れ、湿式で充分に混合粉砕し、磁性体スラリーを作製した。
(3)ドクターブレード法により、上記磁性体スラリーをシート状に成形加工し、これを矩形に打ち抜くことにより、平面視寸法が225mm×225mm、厚さ20μmのセラミックグリーンシートB(試料番号10)を複数枚作製した。
【0111】
[セラミックグリーンシートCの作製]
(1)K2O、B2O3、SiO2及びAl2O3がそれぞれ、2.0wt%、20.0wt%、76.0wt%、2.0wt%含まれるガラス材料粉末を準備した。
(2)ガラス材料粉末63.3重量部と、フィラー成分である石英34.1重量部及びアルミナ2.6重量部を混合してガラス原料粉末を得た。
(3)ガラス原料粉末、有機バインダ(ポリビニルブチラール系樹脂)、有機溶剤(エタノール及びトルエン)をPSZボールとともにポットミルに入れ、湿式で充分に混合粉砕し、スラリーを作製した。
(4)ドクターブレード法により、上記スラリーをシート状に成形加工し、これを矩形に打ち抜くことにより、平面視寸法が225mm×225mm、厚さ22μmのセラミックグリーンシートC(試料番号11)を複数枚作製した。
【0112】
ガラス材料、石英及びアルミナの含有率を表2のように変更して、セラミックグリーンシートC(試料番号12)を作製した。
【0113】
【0114】
(実施例1)
[電極シート及びコイルシートの作製]
セラミックグリーンシートA(試料番号1)に対して、所定箇所にレーザーを照射することによりビアホールを形成し、ビアホールに導電性ペーストを充填してビア導体を形成した後、所定形状の引き出し電極やコイル導体を印刷することで、底面側引き出し電極層となる底面電極シート、1次コイル導体層となる1次コイルシート、2次コイル導体層となる2次コイルシート、3次コイル導体層となる3次コイルシート、並列1次コイル導体層となる並列1次コイルシート、上面側引き出し電極層となる上面電極シートをそれぞれ作製した。
1次コイルシート、2次コイルシート、3次コイルシート及び並列1次コイルシートのターン数は8とした。
【0115】
[積層体前駆体の作製]
セラミックグリーンシートC(試料番号12)、セラミックグリーンシートB、上記底面電極シート、上記1次コイルシート、上記2次コイルシート(2枚)、上記3次コイルシート(2枚)、上記並列1次コイルシート、上記上面電極シート、セラミックグリーンシートA(試料番号1)、セラミックグリーンシートB、セラミックグリーンシートC(試料番号12)をこの順で積層し、80℃、100MPaの条件で熱圧着することで、
図4及び
図5に示すようなコイル導体パターン及び電極パターンを有する積層体シートを得た。得られた積層シートをダイサーにより裁断し、個片化した積層体前駆体を得た。
【0116】
[積層体の作製]
積層体前駆体を880℃で1.5時間焼成することで、実施例1に係る積層体を60個得た。
得られた積層体60個の寸法をマイクロメーターを用いて測定し平均値を求めたところ、L=0.92mm、W=0.70mm、T=0.40mmであった。
【0117】
[内層ガラス層、磁性体層及び外層ガラス層の厚さの測定]
実施例1に係る積層体3個について、長さL及び高さTで規定されるLT面が露出するように積層体の周囲を樹脂で固め、研磨機を用いて積層体の略中央部文まで研磨し、イオンミリング処理によって研磨ダレを除去した表面を走査型電子鏡で撮像し、内層ガラス層、磁性体層及び外層ガラス層の厚さを測定したところ、平均値はそれぞれ、内層ガラス層:160μm、磁性体層:70μm、外層ガラス層:42μmであった。
【0118】
(実施例2~6及び比較例1~4)
セラミックグリーンシートA及びセラミックグリーンシートCの試料番号を表3のように変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2~6及び比較例1~4に係る積層体を作製した。
【0119】
【0120】
[めっき性試験]
Ag粉末とガラスフリットを含有する外部電極用の導電性ペーストを実施例1~6及び比較例1~4に係る積層体の表面に塗布し、810℃で1分加熱することで、外部電極を形成するための下地電極を形成した。
続いて、下地電極を形成した積層体を、Niめっき液及びSnめっき液に順次含浸し、外部電極(第1~第6外部電極)を形成して実施例1~6及び比較例1~4に係る電子部品を得た。この電子部品をそれぞれ30個ずつ、LT面が露出するように電子部品の周囲を樹脂で固め、研磨機を用いて研磨し、引き出し電極が形成されている部分におけるクラックの有無をSEMで確認した。
30個中1個でもクラックが発生しているものを×、30個全てにクラックが発生していないものを○とした。結果を表3に示す。
【0121】
[たわみ性試験]
実施例1~5に係る電子部品30個をそれぞれ、大きさが100mm×40mm、厚さ1mmのたわみ強度試験用基板(ガラスエポキシ基板)の中央部にはんだ付けし、電子部品がハンダ付された面とは別の面から毎秒0.5mmの速さで3mmのたわみを加えて、電子部品が破断しないか評価した。
30個中1個でも破壊されたものを×、30個全て破壊されなかったものを○とした。結果を表3に示す。
なお、めっき性試験で評価が×となったものに関しては、たわみ性試験を実施していない(表3中、-で示している)。
【0122】
表3の結果より、内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率を34wt%以上、37wt%以下とし、ガラス材料の含有率を60wt%以上65wt%以下とし、アルミナの含有率を0.5wt%以上4wt%以下とした電子部品は、製造時に、めっき性に優れ、クラックが発生しにくいことがわかった。
また、外層ガラス層の石英の含有率を内層ガラス層を構成する絶縁層の石英の含有率よりも少なくすることにより、たわみ強度に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の電子部品は、例えば、コモンモードチョークコイル、インダクタ素子、LC複合部品等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0124】
1、5 電子部品
10 1次コイル導体層
11 絶縁層
13 1次コイル導体
13a 1次コイル導体の外側端部
13d 1次コイル導体の内側端部
15 第1ビアホール導体
16 ビアホール導体
20 2次コイル導体層
21、21’ 絶縁層
23、23’ 2次コイル導体
23b、23b’ 2次コイル導体の外側端部
23e、23e’ 2次コイル導体の内側端部
25、25’ 第2ビアホール導体
26 ビアホール導体
30 3次コイル導体層
31、31’ 絶縁層
33、33’ 3次コイル導体
33c、33c’ 3次コイル導体の外側端部
33f、33f’ 3次コイル導体の内側端部
35、35’ 第3ビアホール導体
36 ビアホール導体
40 並列1次コイル導体層
41 絶縁層
43 並列1次コイル導体
43a 並列1次コイル導体の外側端部
43d 並列1次コイル導体の内側端部
45 第4ビアホール導体
46 ビアホール導体
50、51、52、53、55 コイル積層体
60 底面側引き出し電極層
60a、60b、60c、60d、60e 引き出し電極
65 上面側引き出し電極層
65a、65c、65d、65f 引き出し電極
70 絶縁体層
80、81、82、83、85 内層ガラス層
86 底面側磁性体層
87 上面側磁性体層
88 底面側外層ガラス層
89 上面側外層ガラス層
90 内磁路
100、105 積層体
100A、105A 積層体の第1の端面
100B、105B 積層体の第2の端面
100C、105C 積層体の底面
100D、105D 積層体の上面
200a、205a 第1外部電極
200b、205b 第2外部電極
200c、205c 第3外部電極
200d、205d 第4外部電極
200e 第5外部電極
200f 第6外部電極