(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】籾摺選別機
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20220802BHJP
B02B 3/00 20060101ALI20220802BHJP
B02B 3/04 20060101ALI20220802BHJP
B07B 7/00 20060101ALI20220802BHJP
B07B 13/11 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B02B7/00 C
B02B3/00 C
B02B3/04 102
B07B7/00 A
B07B13/11 E
(21)【出願番号】P 2018234496
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 政司
(72)【発明者】
【氏名】清家 丈晴
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-221904(JP,A)
【文献】特開2018-158288(JP,A)
【文献】特開平03-123645(JP,A)
【文献】特開2007-326006(JP,A)
【文献】実開平02-121175(JP,U)
【文献】特開2011-218263(JP,A)
【文献】特開2017-056443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 - 7/02
B07B 1/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾摺装置(2)で摺った籾を揺動選別装置(6)に送ると共に風選部(3)の吸引ブロワ(3b)で籾殻を吸引して籾殻ダクト(3a)から機外に排出し、揺動選別装置(6)で選別した玄米を仕上げ米昇降機(7)で玄米タンク(7a)に送る籾摺選別機(1)において、
前記玄米タンク(7a)と吸引ブロワ(3b)を接続する吸塵ダクト(64)を設け、
吸塵ダクト(64)は吸引ブロワ(3b)の前後に向かう後吸塵ダクト(62)と前吸塵ダクト(63)に分岐し、
吸塵ダクト(64)内の吸塵路(66)に吸引風力を検出する吸引風力センサ(10)を設け
、
前記吸塵ダクト(64)の上面には、外気吸入口(55)を設け、該外気吸入口(55)に吸気調整用開口蓋(56)を設け、該開口蓋(56)より吸塵始端部側に吸引風力センサ(10)を設け、
前記開口蓋(56)を複数のスリット穴を形成した吸気プレート(56a)と前記吸気プレート(56a)に対してスライドして開口度を調整する調整プレート(56b)で構成すると共に、前記開口蓋(56)を後吸塵ダクト(62)と前吸塵ダクト(63)に跨った位置に設け、
前記外気吸入口(55)に対して前記開口蓋(56)を着脱可能にしたことを特徴とする籾摺選別機。
【請求項2】
前記吸引風力センサ(10)を支軸(10b)に吊り下げた感圧プレート(10a)とし、前記支軸(10b)に取り付けた表示針(10c)を機外から視認可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の籾摺選別機。
【請求項3】
前記吸引風力センサ(10)に限界検出センサ(10e)を設け、該限界検出センサ(10e)が所定時間以上の限界風力を検出すると、籾摺選別機(1)の駆動モータ(25)を停止することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の籾摺選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾を摺って分離した籾殻を機外に吸引排出し玄米を選別して取り出す籾摺選別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の如く、籾摺選別機は、籾を籾摺ロールで摺って籾殻と玄米に分離し、軽い籾殻を吸引ブロワの吸引風で排気筒から機外に排出し、玄米を仕上米コンベアで機外に取り出すようにしている。そして、吸引風の風力を検出するピトー管を排気筒内に設けて、その検出した風力を目安として吸気ファンを駆動するモータを制御して吸引風力を調整する。
【0003】
また、特許文献2には、揺動選別装置の側部に玄米揚穀機を備え、玄米揚穀機で発生する塵埃が吸塵ダクトを通して吸引ブロワの吸引風で籾殻と共に排気筒から排出される構成の籾摺選別機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-184348号公報
【文献】特許第6191738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の籾摺選別機では、籾殻や塵埃を排出する排気筒に設けたピトー管で吸引風の風力を検出しているが、排気筒は多くの籾殻や塵埃が通過するので、ピトー管が塵埃で詰まって短時間で風力計測が不正確になり、たびたび籾摺選別機を止めてピトー管に付着する塵埃を取り除くメンテナンス作業を行う必要がある。
【0006】
この発明は、籾摺選別機において吸引ファンの吸引風力を適正に制御するための吸引風力計測を長時間安定して行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0008】
第1の本発明は、
籾摺装置(2)で摺った籾を揺動選別装置(6)に送ると共に風選部(3)の吸引ブロワ(3b)で籾殻を吸引して籾殻ダクト(3a)から機外に排出し、揺動選別装置(6)で選別した玄米を仕上げ米昇降機(7)で玄米タンク(7a)に送る籾摺選別機(1)において、
前記玄米タンク(7a)と吸引ブロワ(3b)を接続する吸塵ダクト(64)を設け、
吸塵ダクト(64)は吸引ブロワ(3b)の前後に向かう後吸塵ダクト(62)と前吸塵ダクト(63)に分岐し、
吸塵ダクト(64)内の吸塵路(66)に吸引風力を検出する吸引風力センサ(10)を設け、
前記吸塵ダクト(64)の上面には、外気吸入口(55)を設け、該外気吸入口(55)に吸気調整用開口蓋(56)を設け、該開口蓋(56)より吸塵始端部側に吸引風力センサ(10)を設け、<効果は0063>
前記開口蓋(56)を複数のスリット穴を形成した吸気プレート(56a)と前記吸気プレート(56a)に対してスライドして開口度を調整する調整プレート(56b)で構成すると共に、前記開口蓋(56)を後吸塵ダクト(62)と前吸塵ダクト(63)に跨った位置に設け、
前記外気吸入口(55)に対して前記開口蓋(56)を着脱可能にしたことを特徴とする籾摺選別機である。
第2の本発明は、
前記吸引風力センサ(10)を支軸(10b)に吊り下げた感圧プレート(10a)とし、前記支軸(10b)に取り付けた表示針(10c)を機外から視認可能にしたことを特徴とする第1の本発明の籾摺選別機である。
第3の本発明は、
前記吸引風力センサ(10)に限界検出センサ(10e)を設け、該限界検出センサ(10e)が所定時間以上の限界風力を検出すると、籾摺選別機(1)の駆動モータ(25)を停止することを特徴とする第1又は2の本発明の籾摺選別機である。
本発明に関連する第1の発明は、籾摺装置(2)で摺った籾を揺動選別装置(6)に送ると共に風選部(3)の吸引ブロワ(3b)で籾殻を吸引して籾殻ダクト(3a)から機外に排出し、揺動選別装置(6)で選別した玄米を仕上げ米昇降機(7)で玄米タンク(7a)に送る籾摺選別機(1)において、
前記玄米タンク(7a)と吸引ブロワ(3b)を接続する吸塵ダクト(64)を設け、吸塵ダクト(64)内の吸塵路(66)に吸引風力を検出する吸引風力センサ(10)を設けたことを特徴とする籾摺選別機とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、前記吸引風力センサ(10)を支軸(10b)に吊り下げた感圧プレート(10a)とし、前記支軸(10b)に取り付けた表示針(10c)を機外から視認可能にしたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の籾摺選別機とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、前記吸塵ダクト(64)の上面には、外気吸入口(55)を設け、該外気吸入口(55)に吸気調整用開口蓋(56)を設け、該開口蓋(56)の近傍に吸引風力センサ(10)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の籾摺選別機とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、開口蓋56を複数のスリット穴を形成した吸気プレート56aとこの吸気プレート56aに対してスライドして開口度を調整する調整プレート56bで構成したことを特徴とする本発明に関連する第3の発明の籾摺選別機とする。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、外気吸入口55に対して開口蓋56を着脱可能にしたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の籾摺選別機とする。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、吸引風力センサ10に限界検出センサ10eを設け、該限界検出センサ10eが所定時間以上の限界風力を検出すると、籾摺選別機1の駆動モータ25を停止することを特徴とする本発明に関連する第1から5の何れか一つの発明の籾摺選別機とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸引風力センサに塵埃が堆積し難く、吸引風力センサの掃除メンテナンスの頻度が低く、籾摺選別機を長時間安定して使用出来る。また、開口蓋より吸塵始端部側に吸引風力センサを設けているので、吸塵ダクトの吸塵能力を確実に検出できる。さらに、1つの開口蓋を開けるだけで、後吸塵ダクト(62)と前吸塵ダクトの双方の清掃を行える。
本発明に関連する第1の発明で、風選部3の吸引ブロワ3bは、米昇降機7の玄米タンク7a内に生じる塵埃も吸塵路66を通して吸引しているが、吸塵路66を通る吸引風の風力を吸引風力センサ10で計測することで、吸引ブロワ3bの吸引力を推測する。そして、吸塵路66で吸引される塵埃は少ないために、吸引風力センサ10に塵埃が堆積し難く、吸引風力センサ10の掃除メンテナンスの頻度が低く、籾摺選別機を長時間安定して使用出来る。
【0015】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、吸引風力センサ10は感圧プレート10aが吸引風圧を受けて支軸10bと共に回動するのを表示針10cの動きとして籾摺選別機1の機体側部にいる作業者に知らせることが出来る。
【0016】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、風選部3の吸引ブロワ3bの外気吸入口55に設ける開口蓋56の吸気量調整が近くにある吸引風力センサ10を見ながら行える。
【0017】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第3の発明の効果に加えて、開口蓋56の吸気プレート56aに対して調整プレート56bをスライドするだけで外気吸入口55から吸引する吸引ブロワ3bの吸引空気量を調整できる。
【0018】
本発明に関連する第5の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、開口蓋56を取り外して外気吸入口55を広く開口して内部の点検・掃除等のメンテナンスを容易に行える。
【0019】
本発明に関連する第6の発明で、本発明に関連する第1から5の何れか一つの発明の効果に加えて、玄米が籾殻ダクト3aから籾殻と共に排出されるのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】籾摺選別機の正面側斜視図(a)および背面側斜視図(b)
【
図4】揺動選別装置の正面図(a)および側面図(b)
【
図7】異物受の分解斜視図(a)および要部側面図(b)
【
図9】混合米移送樋及び混合米昇降機の平断面図(a)および混合米移送樋及び第2エアノズル装着状況を示す背断面図(b)
【
図10】
図9(a)A-Aで示す混合米昇降機の下部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態につき、図面に基づき説明する。
【0022】
まず、本発明の適用対象である籾摺選別機の全体について説明する。
【0023】
籾摺選別機1は、
図1の正面側斜視図(a)および背面側斜視図(b)に示すように、機体正面側左端の籾摺装置2と、籾殻ダクト3aを備える風選部3と、その後部に配置の混合米昇降機4および混合米タンク5と、この混合米タンク5を後部に受ける前後に長い揺動選別装置6と、その側方の仕上げ米昇降機7とを備えて構成される。
【0024】
籾摺選別機1の内部構成は、
図2の正面図に示すように、籾を収容する籾ホッパ2aをロール型籾摺装置2の上方に配置し、この籾摺装置2から脱桴穀粒を風選部3の吸引ブロワ3bにより風選処理して分離した籾殻を籾殻ダクト3aから中継ファン80を経て籾殻庫81に排出するとともに、風選穀粒(籾と玄米との混合米)を混合米昇降機4により混合米タンク5に貯留し、この風選穀粒を供給調節可能な混合米タンク5から、揺動選別装置6の選別始端部H側に供給し、この揺動選別装置6の左右方向の揺動動作で比重選別し、揺上げ側に玄米を偏らせ、この玄米の玄米領域Aに合わせて選別終端側Tに可動玄米仕切板8aを配置することによって選別玄米を仕切り、仕上げ米昇降機7に至る排出路9の循環排出切換え弁70を開いて仕上げ玄米として排出する(
図3)。
【0025】
その一方で、揺動選別装置6の揺下げ側に偏る籾は、その籾領域Bに合わせて可動籾仕切板8bを配置することにより、籾領域Bの選別籾が再籾摺路12を経てスロワ11で再び籾摺装置2に還元供給し、残余の混合米領域Cに選別される混合米は、再選別路13を経て混合米昇降機4で混合米タンク5に溜められて再び揺動選別装置6に循環供給する。このようにして、籾摺作業の進行とともに玄米を選別して玄米領域Aから排出路9を通って仕上げ米昇降機5によって仕上げ玄米として排出する。
【0026】
揺動選別装置6について詳細に説明する。
図4の正面図(a)および側面図(b)に示すように、前後に長い揺動選別板14を両側板14a,14bによって多段に固定した選別部と、その上部背面側で混合米を受けて各揺動選別板14に分配供給する分配用受部15からなる混合米分配部とを一体に構成し、揺下側となる左の側板14aには、籾領域Bの選別籾を再籾摺路12に導く籾玄米分離体16を備える。
【0027】
揺動選別装置6を構成する多段構成の揺動選別板14は、それぞれに選別用の凹部14cを多数形成しており、全体を左右方向の右側が高く傾斜するとともに選別始端側Hの後端部を高くして分配用受樋15から混合米を受けつつ左右に傾斜揺動することにより、それぞれの前端部を選別終端側Tとして穀粒が比重選別される。揺動選別板14の揺上げ側には玄米層の玄米領域A、揺下げ側には籾層の籾領域B、中間部には混合米層の混合米領域Cが形成される。
【0028】
そして、
図5に示す如く、揺動選別装置6の揺動選別板14毎に籾領域Bの選別終端側Tの側部に籾領域Bの籾を取り出す籾案内口17を設け、該籾案内口17の側方に対向する位置に、箱型状の籾玄米分離体16を側板14aに取付ける。籾玄米分離体16には各揺動選別板14それぞれの籾領域Bの籾が籾案内口17を通過して流入し、そこで籾に混じる玄米を分離し、前記再籾摺路12に籾を案内し、再選別路13に玄米を案内する構成である。
【0029】
籾玄米分離体16内には、籾に混じる玄米を漏下する網目体である目抜孔を多数形成した多孔板16aを揺動選別板14の段数分設ける。各多孔板16aの下方には、それぞれ漏下選別された玄米を受ける玄米案内板16bを設ける。すなわち、多孔板16aと玄米案内板16bを上下方向に交互に配置する構成である。
【0030】
玄米案内板16bの玄米排出側には、各玄米案内板16bから排出した玄米が一括して通過案内する玄米案内通路18を設け、この玄米案内通路18を前記再選別路13に連通する。また、各段の多孔板16aを漏下しなかった籾を一括して通過案内する籾案内通路19を設け、籾案内通路19と再籾摺路12を連通する。
【0031】
この実施の形態の玄米案内通路18は玄米案内板16bの側方に配置し、籾案内通路19は多孔板16aの前側に配置している。
【0032】
各多孔板16aと玄米案内通路18とを籾仕切壁16Sで仕切り、玄米案内板16bと玄米案内通路18は連通する構成とし、各多孔板16aと籾案内通路19とを連通し、玄米案内板16bと籾案内通路19とを玄米仕切壁16Gで仕切る構成である。すなわち、多孔板16a、玄米案内板16b、籾案内通路19、玄米案内通路18、籾仕切壁16S、玄米仕切壁16Gが籾玄米分離体16の箱体内に設けられている。
【0033】
多段の揺動選別板14毎に設けた籾案内口17から籾領域Bの籾が籾玄米分離体16の多孔板16aに流入する。多孔板16aにより混入している玄米が漏下し、多孔板16a上に残った籾は籾仕切壁16Sにより玄米案内通路18への流入を阻止されつつ籾案内通路19に流入し、再籾摺路12に落下して案内される。また、多孔板16aを漏下した玄米は玄米案内板16bに落下して供給され、玄米仕切壁16Gにより籾案内通路19への流入を阻止されつつ玄米案内通路18に入り、落下して再選別路13に案内される。本構成により、籾領域Bから取り出された籾に混じる玄米を各段の選別によって滞留無しに精度良く選別することができる。
【0034】
この場合において、籾玄米分離体16を側板14aの外側に沿って設け、前後方向に長い多孔板16aによる長い選別行程を形成することにより籾と玄米の選別精度を向上することができるため、籾摺装置2に戻る玄米量が低減し、二度摺りによる肌ずれ玄米の量を低減することができる。また、選別された玄米は再選別路13を介して迅速な再選別処理が可能となる。
【0035】
また、各玄米案内板16bは、籾案内口17の多孔板16aの下方で玄米を玄米案内通路18側に送出する傾斜角度を設けることにより、多孔板16aから受けた漏下選別穀粒が迅速に案内されて滞留のない効率のよい再選別が可能となる。また、多孔板16aは揺動選別板14と平行する姿勢で設けており、揺動選別板と同様に前後方向に前下がり傾斜する構成のため、籾を円滑に籾案内通路19に排出できる。
【0036】
また、玄米案内通路18の下端に揺動選別板14の下方を傾斜して設ける再選別連通部18aを接続し、再選別連通部18aを再選別路13に連通することにより、籾案内通路19の後方に再選別連通部18aを設けることとなり、籾玄米分離体16で分離した籾と玄米のそれぞれの搬送行程を簡潔に構成することができる。
【0037】
前記分配用受樋15は、混合米タンク5の下方に設けられ、混合米タンク5からの混合米を広幅に形成した移送樋部15aを経て多段揺動選別板14の背面側から各段に分配する分配樋14dに供給するものである。
図6の部分矢視図を含む透視正面図に示す分配用受樋15には、混合米に混在する長尺異物Dを分離するため、目抜孔20aを形成した受部多孔板20を横姿勢に設け、その排出端に臨んで長尺異物Dを側方に排出するための異物排出口21を形成している。受部多孔板20の排出端から異物排出口21までの間には、混合米を漏下して最上段の揺動選別板14に供給する目抜孔22aを形成した選別部多孔板22を設ける。目抜孔22aは少なくとも受部多孔板20の排出端側に全幅に亘って形成する。受部多孔板20からほぼ大部分の混合米は移送樋部15aに漏下し分配樋14dに向け移送されるもので、該移送樋部15aには移送ラックを適宜に形成してもよい。
【0038】
分配用受樋15の揺下側には前記分配樋14dから各段の揺動選別板14への流入量が均一化できるように流量調節用の均し弁23を設ける。また、後続の選別部多孔板22は短区間であるが異物排出口21に向けやや上り傾斜として長尺異物Dの移送を遅らせながら残留する混合米を漏下させるものである。
【0039】
上記構成の受部多孔板20は、混合米タンク5から受けた混合米を揺動動作によって下方の混合米流下板15aに漏下することによって各揺動選別板14に分配供給し、また、受部多孔板20に残留された混合米中の長尺異物Dは揺動によってその終端側に移送される。この長尺異物Dは更に選別部多孔板22に移動し、長尺異物Dに混じる混合米を漏下して最上段の揺動選別板14に供給する一方、長尺異物Dは、異物排出口21から排出される。したがって、受部多孔板20と選別部多孔板22とによる簡易な構成により、藁屑等の長尺異物Dを順次排出することができる。
【0040】
この場合において、最上段の揺動選別板14と対向する位置に選別部多孔板22を配置することにより、特段の案内部材を要することなく、混合米を揺動選別板14に供給することができる。また、選別部多孔板22は、異物排出口21まで昇り傾斜に形成することにより長尺異物Dの移動が抑制されて混合米を確実に漏下することができる。
【0041】
異物排出口21からの長尺異物Dを受ける異物受21Dは、
図7の分解斜視図(a)および要部側面図(b)に示すように、異物排出口21の直下位置で揺動選別板14の背面側を覆う外装カバー24の張出部24aに形成した開口に開放可能に受板部24bを設けて構成する。すなわち、受板部24bが外装カバー24の一部を形成している。
【0042】
この異物受21Dは、蝶番等により受板24bを開放可能に軸支することにより、閉鎖時は外部からの異物侵入を防止するとともに、混合米分配部に受けた混合米から分離された長尺異物Dを異物排出口21から受けて貯留する。この貯留異物Dは、機体の側方位置で受板部24bを回動して開放操作することにより、受板部24bが傾斜ガイドとなって機外に落下排出されることから、作業者が貯留異物Dに触れることなく、下方配置の収容部材(図示せず)に収容することができる。
【0043】
この場合において、張出部24aに形成した開口を囲む仕切24cを設けることにより、受板部24bに受けた異物Dの散乱を防止することができる。
【0044】
駆動モータ25による籾摺選別機各部の伝動構成(
図8)は、モータ25から第1ベルト26を介して籾摺装置2の籾摺ロール2a,2bを軸支するロール軸2cに伝動し、このロール軸2cから第2ベルト27を介して、摺出米移送棚28揺動軸28a、混合米昇降機4の連動軸4a、二番ラセン軸29、及び揺動選別装置6の揺動クランク軸6b等に伝動する。前記昇降機4の連動軸4aから第3ベルト30を介して、混合米昇降機4の連動軸4aと、混合米ラセン軸31を伝動し、前記二番ラセン29軸から第4ベルト32を介して、吸引ブロワ3bのファン軸3cに伝動し、前記揺動選別装置6連動軸6aから第5ベルト33を介して揺動クランク軸6bに伝動し、第6ベルト34を介して仕上げ米昇降機7の連動軸に伝動する形態である。
【0045】
次いで、
図9,10に基づき、混合米移送構成と残米処理構成について説明する。前記混合米ラセン軸31は、混合米移送樋35内に配置され、前記籾摺装置2の摺出米移送棚28から流下する摺出米と前記再選別路13の混合米を受けて前記混合米昇降機4に移送する構成としている。複数のバケット4b,4b・・・を無端ベルト4cに装着し、上下のプーリ4u,4d間に巻回した混合米昇降機4は、籾摺選別機1の機体後部であって、風選部3の後方に立設される。そして、前記混合米移送樋35の移送終端側を混合米昇降機4の下端側に接続している。この混合米移送樋35の接続部35aは、前記バケット4b,4b・・・の穀粒掬い上げ側(下降工程側)に固定され、混合米移送樋35内を混合米ラセン軸31の回転で移送された混合米は、混合米昇降機4の下端側壁への連通開口部から昇降機4の下部に流下案内される構成としている。混合米昇降機4の底部内側面には、バケット4b内に向かうガイド面を設けている。
【0046】
混合米移送樋35の搬送方向に沿って開閉弁36を備え、混合米移送樋35の底部を開閉可能に構成され、この移送樋35の底部にたまる残米を排出できる。開閉弁36の下方には、排出された残米を受ける残米受部としての残米受ボックス37を備える。
【0047】
なお、混合米昇降機4は、籾摺選別機1の機体に対して前記第2ベルト27の配設空間をおいて後方に、即ち機体背面を覆う背面カバー38よりも適宜間隔後方に立設されており、混合米移送樋35の前記接続部35aである移送樋終端側も機体よりも後方に位置するものとなっており、前記混合米移送樋35に設ける底部開口及びこれに対応する開閉弁36は、機体内側の区間に配設される構成である。
【0048】
そして、前記混合米昇降機4の下部に第1エアノズル40を配置している。第1エアノズル40は
図9,10に示すように、前記混合米移送樋35を接続する側とは反対側の側壁に取り付けるもので、該第1エアノズル40の噴風方向(ハ)は、混合米昇降機4の底部の噴気板67の下部に向かう斜め下方方向に設定されている。そして、エア噴出は間欠的に行う構成とされ、その噴出タイミングは、前記無端ベルト4cに取り付けられたスクレーパ4sが混合米昇降機4の底面を通過するタイミングに合わせている。このように構成すると、エア噴出されるとスクレーパ4sに衝突して混合米の吹き上げ効果を助長でき、ひいてはバケット4bによる掬い上げ効率を向上できる。
【0049】
なお、この第1エアノズル40には、籾摺選別機1機体前方に設置したコンプレッサ41から圧搾空気が接続ホース42を介して供給される構成である。
【0050】
上記のように、第1エアノズル40を設けるものであるから、籾摺選別運転終了後に混合米昇降機4の底部の残米をノズルからのエア噴出によって跳ね上げ、バケット4b,4b・・・による掬い上げを効率良く行える。
【0051】
また、前記混合米移送樋35の混合米昇降機4との接続部35aに第2エアノズル43を設けている。第2エアノズル43は、混合米移送樋35の上壁部に装着され、ノズル噴風方向を混合米ラセン軸31による移送方向(ロ)とは逆の移送上手方向に向けて設けてある。なお、第2エアノズル43の支持体44は、ベースプレート44aとノズル装着面44bを有した上方膨出状部44cとからなり、混合米移送樋35の接続部35a上壁部に形成した孔部に対応させて装着している。ノズル装着面44bは水平面と角度αを有して第2エアノズル43の噴風方向(イ)を決定している。
【0052】
このように、第2エアノズル43を設けるから、籾摺選別運転終了後、混合米ラセン軸31と混合米昇降機4を駆動させた状態で、開閉弁36を開き、第2エアノズル43からエア噴出させることにより、混合米移送樋35の移送終端側に移送されようとする混合米を開閉弁36による開口部から残米受ボックス37に回収できる。混合米移送樋35の接続部35aには開閉弁36を構成しないものであるから、第2エアノズル43による移送方向とは逆の方向に残米をエア噴出によって開閉弁36の存在する箇所へ移動させることができ、残米を可及的に少なくできる。
【0053】
さらに、前記混合米移送樋35の始端側に混合米移送方向に向けて第3エアノズル45、仕上げ米昇降機7の下部に第4エアノズル46を設ける。第3エアノズル45は、混合米移送樋35内の残米の開閉弁36から下方への排出を促進する。また、機体前面に装着する点検用蓋47を利用して装着するから、点検交換作業を容易に行える。ベースプレート48aとノズル装着面48bを有した支持部48を装着している。そして、第4エアノズル46は、仕上げ米昇降機7の底部の残米を跳ね上げてバケットの掻き揚げ効率を高める。
【0054】
次に、前記分配用受樋15の長尺異物Dの側部の異物排出口21からの排出を促進すべく設けるエア噴出手段について説明する。
図6に示すように、前記分配用受樋15にはカバー15bを備え、該カバー15bには混合米タンク5の排出口下方にのぞむ受入口15cを形成している。受部多孔板20の移送終端部から側部の異物排出口21の間にあって長尺異物Dを移送する補助移送板としての選別部多孔板22の上方に、穀粒等飛散防止板50を垂下状に設けている。なお、この飛散防止板50は、その下辺で長尺異物Dの偏在を是正して幅方向に均分化する機能を併せ有する。さらに、選別部多孔板22の上面に形成される異物貯留部51において堆積する長尺異物Dに対し、前記異物排出口21に向けて斜め上方からエア噴出する第5エアノズル52を設ける。この第5エアノズル52は前記カバー15bに支持体53を介して装着され、噴出方向52jを前記異物排出口21に向けているため、特に異物排出口21手前に移送される長尺異物Dに向けエア噴出され、異物排出口21からの排出を促進できる。なお、エア噴出によって異物排出口21近傍の長尺異物Dを拡散できるので選別部多孔板22の揺動と相まって長尺異物Dのほぐし効果を生じ、混在する混合米の漏下を促進できる。特にエア噴出を受けて飛散する混合米は、飛散防止板50に衝突して選別部多孔板22に落下できる。
【0055】
上例では、排出補助手段として単一のエアノズル52を用いたが、幅方向に複数のエアノズルを配設してもよく、また
図11に示すように、多数の噴口54aが形成され一端からエア噴出する構成としたエア筒54を配設する構成としてもよい。エア筒54の長さを選別部多孔板22の全幅にわたるよう形成している。エア筒54のエア噴出方向54jは異物排出口21に向けている。
【0056】
エア噴出手段としてのエアノズル52やエア筒54を設ける場合には、エア噴出を間欠的に行う方が、長尺異物Dの吹き上げほぐし効果の点で優れ排出促進に都合がよい。また、この間欠噴出のタイミングを、揺動選別装置6の揺動運動に連動させると効果的である。すなわち、分配用受樋15は揺動選別板14と一体に構成され同期して揺動下死点から揺動上死点の間を斜め上下に揺動(ニ)しているが、前記噴出のタイミングを揺動選別装置6の傾斜揺動の上死点到達時、到達直前又は到達直後に設定するものである。揺動上死点から下死点側への揺動切り替わりの時点及びその前後において、長尺異物Dは異物排出口21から排出される量が多い傾向となるが、この排出量が多い時に合わせて間欠噴出タイミングを設定することで効果的な排出を行え、選別部多孔板22の上面の異物貯留部51への長尺異物Dの過剰堆積を防ぐことができる。なお、エア噴出を間欠的に行う構成は、後述のエアバルブを電気的にオン、オフできる構成として、設定タイマ信号や揺動選別装置6の揺動位置検出手段からの検出信号に基づいてオン出力させ、エアを間欠的に噴出できる構成としている。
【0057】
本実施例において、受部多孔板20の終端部から異物排出口21までの移送を選別部多孔板22による構成としたが、選別部多孔板22に代替して長尺異物Dを貯留できる無孔の底板22aの構成としてもよい。無孔の底板22aとしても、有孔の選別部多孔板22と同様に、揺動運動(ニ)と相まって底板22aの上部に形成される異物貯留部51の長尺異物Dを異物排出口21に向けて移送可能である。無孔の底板22aとする場合には、異物排出口21を経た後に長尺異物Dに残る混合米を分離処理する構成を付加する。
【0058】
前記のように、分配用受部15の斜め上下の往復揺動運動(ニ)を伴って、選別部多孔板22(又は底板22a)上の異物貯留部51に到達する長尺異物Dは、ある一定以上の堆積をもって異物排出口21からの排出が行えるものである一方、異物の量によっては過剰堆積を来し易いが、エアノズル52やエア筒54のようなエア噴出手段をもって、異物排出口21へ向けたエア噴出により異物排出口21から長尺異物Dの排出を促進でき、ひいては過剰の上記堆積を防止して円滑な長尺異物Dの処理を行える。
【0059】
また、エア噴出は間欠的に行わせ、そのタイミングを揺動上死点近傍に設定することによって、前記の効果を奏するものであるが、過剰堆積を検出する手段、例えば静電容量センサ55、を選別部多孔板22の下面に設けることで精度良く過剰堆積状態を検出でき、この検出後過剰堆積が解消されるまでエアの間欠噴出を継続する構成とすることができる。
【0060】
図11は、吸塵ダクト64の平面図で、吸塵ダクト64は揺動選別板14の上方に配置し、始端部を仕上げ昇降機7の玄米タンク7aと接続し、終端部を吸引ブロワと接続する。吸塵ダクト64の上面には外気吸入口55を形成し、その下部で吸引ブロワ3bの前後に向かう後吸塵ダクト62と前吸塵ダクト63を含み、仕上げ米昇降機7の玄米タンク7a内に通じる吸塵ダクト64を接続している。すなわち、吸塵ダクト64は、途中部より、後吸塵ダクト62と前吸塵ダクト63に分岐する構成である。
【0061】
外気吸入口55には、スリット状穴を形成した吸気プレート56aとそれに重ねてスライドしてスリット状穴の開口度を調整する調整プレート56bからなる開口蓋56を蝶番ネジ57で取り付けている。従って、蝶番ネジ57を外して開口蓋56を取り除くと、外気吸入口55が広く開口して吸塵ダクト64内部の掃除が行える。開口蓋56は後吸塵ダクト62と前吸塵ダクト63に跨った位置に設けることが望ましい。
【0062】
吸塵ダクト64の内部が吸塵路66となるが、この吸塵路66に吸引風力センサ10となるセンサボックス65を設けている。センサボックス65内には前後に支軸10bを通し、支軸10bに感圧プレート10aを固着して吊り下げ、支軸10bの前側に突出した部分に表示針10cを固着しているので、吸引風圧で感圧プレート10aが揺れると表示針10cの動きとして籾摺選別機1の前面から作業者が吸引風力を視認出来る。
【0063】
吸引風力センサ10は、外気吸入口55より始端部側に設けることで吸塵ダクト64の吸塵能力を確実に検出できる。
【0064】
吸引風力センサ10に限界検出センサ10eを設け、限界検出センサ10eが所定時間以上の限界風力を検出すると、籾摺選別機1の駆動モータ25を停止する。これにより、玄米が籾殻ダクト3aから籾殻と共に排出されるのを防止することができる。
【0065】
風選部3の吸引ブロワ3bは、米昇降機7の玄米タンク7a内に生じる塵埃も吸塵路66を通して吸引しているが、吸塵路66を通る吸引風の風力を吸引風力センサ10で計測することで、吸引ブロワ3bの吸引力を推測する。そして、吸塵路66で吸引される塵埃は少ないために、吸引風力センサ10に塵埃が堆積し難く、吸引風力センサ10の掃除メンテナンスの頻度が低く、籾摺選別機を長時間安定して使用出来る。
【0066】
また、吸引風力センサ10は感圧プレート10aが吸引風圧を受けて支軸10bと共に回動するのを表示針10cの動きとして籾摺選別機1の機体側部にいる作業者に知らせることが出来る。
【0067】
また、風選部3の吸引ブロワ3bの外気吸入口55に設ける開口蓋56の吸気量調整が近くにある吸引風力センサ10を見ながら行える。
【0068】
また、開口蓋56の吸気プレート56aに対して調整プレート56bをスライドするだけで外気吸入口55から吸引する吸引ブロワ3bの吸引空気量を調整できる。
【0069】
また、開口蓋56を取り外して外気吸入口55を広く開口して内部の点検・掃除等のメンテナンスを容易に行える。特に玄米が溜まりやすい後吸塵ダクト62と前吸塵ダクト63の残米を除去することができる。
【0070】
本実施の形態の吸引風力センサ10は中継ファン80を籾殻ダクト3aに接続したときに風力を測定できるので有用である。
【0071】
図13は、籾摺選別機1の自動制御フローチャート図で、ステップS1で運転スイッチをオンして運転を開始すると、ステップS6で混合米タンク5の重量センサが所定重量以上を検出するとステップS7で循環排出切換え弁70を排出側に切り換えてステップS8で仕上げ玄米を排出し、ステップS9で混合米タンク5の重量センサが所定重量以下を検出するとステップS10で循環排出切換え弁70を循環側に切り換えてステップS11で残米処理運転を開始し、ステップS12で所定時間経過を待って、ステップS13で循環排出切換え弁70を排出側に切り換えてステップS14の残米排出運転をする。
【0072】
残米排出運転では、ステップS17の残米排出運転設定時間例えば3分間が経過するまでステップS16で所定時間後連続墳風から間欠墳風を行い、ステップS18で駆動モータ25をオフにして装置各部の駆動を停止する。
【0073】
手動操作では、排出切換え弁70を排出側に切り換えると、所定時間連続墳風して後に間欠墳風を行う。
【0074】
なお、循環排出切換え弁70を循環側に切り換えると、連続墳風或いは間欠墳風を行うようにすると、残米処理が早くなる。また、エアーフィルターバルブは揺動選別装置6の仕上げ米昇降機7側に設ける。
【符号の説明】
【0075】
1 籾摺選別機
2 籾摺装置
3 風選部
3a 籾殻ダクト
3b 吸引ブロワ
6 揺動選別装置
7 仕上げ米昇降機
7a 玄米タンク
10 吸引風力センサ
10a 感圧プレート
10b 支軸
10c 表示針
10e 限界検出センサ
25 駆動モータ
55 外気吸入口
56 開口蓋
56a 吸気プレート
56b 調整プレート
66 吸塵路