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特許7115295(メタ)アクリレート化合物、重合体、レジスト材料及び(メタ)アクリレート化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート化合物、重合体、レジスト材料及び(メタ)アクリレート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20220802BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220802BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20220802BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08F20/28
G03F7/039 601
C07C67/08
C07C69/54 B CSP
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018240956
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100762
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】猪木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 禎治
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03410892(US,A)
【文献】特開2012-073564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物。
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基であり、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R及び/又はRが水素又はメチル基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合しない場合のR が塩素、メチル基、エチル基又は4-ヒドロキシシクロヘキシル基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成する場合の環が前記同一の炭素をスピロ原子とするシクロペンチル又はシクロヘキシルである、
請求項1に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を含有し、
重量平均分子量が2,000~100,000である、
(メタ)アクリレート化合物の重合体。
【化2】
(式中、Rは水素又はメチル基であり、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記繰り返し単位のモル分率が少なくとも5%である、
請求項3に記載の重合体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の重合体と、
酸発生剤と、
有機溶剤と、
を含む、レジスト材料。
【請求項6】
下記一般式(2)で表される3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンをエステル化するステップを含む、
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリレート化合物、の製造方法。
【化3】
(式中、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート化合物、重合体、レジスト材料及び(メタ)アクリレート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型の感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光及びKrFエキシマレーザー光等の露光光の照射によって露光部において感放射線性酸発生剤から酸を生成させる。生成した酸を触媒とする反応により、現像液に対する露光部と未露光部との溶解速度が変化し、基板上にレジストパターンが形成される。
【0003】
従来用いられていたポリヒドロキシスチレンのような芳香族環を有する樹脂では、ArFエキシマレーザー光に対する透明性が不十分であるため、ArFエキシマレーザー光を光源とする場合には使用できない。このため、芳香族環を有していないアクリル系樹脂が注目されるようになってきた。しかし、アクリル系樹脂には、耐ドライエッチング性が低いという欠点がある。
【0004】
これに対し、透明性と耐ドライエッチング性とを兼ね備えたアクリル系樹脂が提案されている。当該アクリル系樹脂として、例えば、エステル部にアダマンタン骨格を有する単量体の重合体が特許文献1に開示されている。さらに当該アクリル系樹脂として、エステル部にアダマンタン骨格を有する単量体とアクリル酸テトラヒドロピラニルエステルとの共重合体が特許文献2に示されている。
【0005】
一方、ArFエキシマレーザー光を用いるプロセスにおいては、0.2μm以下の超微細パターンを解像性よく形成させることが重要である。しかし、超微細パターンを形成させる場合、上述のアダマンタン骨格を含む重合体等は基板との密着性が不足し、パターン倒れを生じてしまうという不都合がある。
【0006】
このため、特許文献3に開示されたアクリル酸の3-オキソシクロヘキシルエステル及び特許文献4に開示されたγ-ブチロラクトンのような含酸素複素環基を有するアクリル酸エステルを構成単位として導入した組成物が提案されている。含酸素複素環基を有するアクリル酸エステルを導入したアクリル系樹脂は、密着性の点で改善が認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-39665号公報
【文献】特開平5-265212号公報
【文献】特開平5-346668号公報
【文献】特開平7-181677号公報
【文献】特開2002-145955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
含酸素複素環基を有する単量体は極性が非常に高い一方、アダマンタン骨格をもつ単量体は極性が非常に低いという特徴を持っている。双方の単量体を共重合に付すと、前者は前者、後者は後者で単独重合する傾向がある。その結果、ランダム重合体にはならずに分子間又は分子内で大きな組成分布となる重合体が生成しやすい。
【0009】
このように大きな組成分布となる重合体をフォトレジスト用樹脂として用いると、フォトレジスト用の溶媒に溶解しにくい、及び基板にスピンコートする際に相分離構造を形成してレジストパターンの形成の障害となる等の不具合が生じやすい。また、大きな組成分布となる重合体をフォトレジスト用樹脂として用いると、現像液に対する溶解性にバラツキが生じるため、微細なパターンを精度よく形成できないことがある。
【0010】
重合時の上述の問題を回避するため、特許文献5には、アダマンタン骨格に極性置換基を付加した化合物が開示されている。しかし、当該化合物は合成に手間がかかるため、合成コストが高くなる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、他の感光性樹脂との相溶性に優れるとともに、重合体に高い透明性を付与できる(メタ)アクリレート化合物、重合体、レジスト材料及び(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係る(メタ)アクリレート化合物は、
下記一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基であり、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【0013】
この場合、前記一般式(1)中、R及び/又はRが水素又はメチル基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合しない場合のR が塩素、メチル基、エチル基又は4-ヒドロキシシクロヘキシル基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成する場合の環が前記同一の炭素をスピロ原子とするシクロペンチル又はシクロヘキシルである、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る(メタ)アクリレート化合物の重合体は、
下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を含有し、
重量平均分子量が2,000~100,000である。
【化2】
(式中、Rは水素又はメチル基であり、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【0015】
この場合、前記繰り返し単位のモル分率が少なくとも5%である、
こととしてもよい。
【0016】
本発明の第3の観点に係るレジスト材料は、
上記本発明の第2の観点に係る重合体と、
酸発生剤と、
有機溶剤と、
を含む。
【0017】
本発明の第4の観点に係る、上記(メタ)アクリレート化合物の製造方法は、
下記一般式(2)で表される3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンをエステル化するステップを含む。
【化3】
(式中、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、R と異なり、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和環状炭化水素基であり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る(メタ)アクリレート化合物は、他の感光性樹脂との相溶性に優れるとともに、重合体に高い透明性を付与できる。また、本発明に係る重合体は高い透明性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る(メタ)アクリレート化合物は、シクロブタノン構造を有する。当該(メタ)アクリレート化合物は上記の一般式(1)で表される。例えば、(メタ)アクリレート化合物は、以下説明する2段階の合成法で製造できる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
【0021】
まず、第1段階の反応は下記に示される反応である。第1段階の反応は、一般式(3)で示されるシクロブタン-1,3-ジオンを上記一般式(2)で示される3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンに変換する反応である。溶媒中でシクロブタン-1,3-ジオンに還元剤を作用させることにより、Rが水素である3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンを得ることができる。
【0022】
【化4】
【0023】
一般式(2)において、Rは水素、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、又は1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和若しくは不飽和環状炭化水素基である。一般式(2)及び(3)において、Rは水素、ハロゲン、分岐を有してもよい炭素数1~6の飽和アルキル、分岐を有してもよい炭素数2~6の不飽和アルキル、若しくは1つ以上の水素がオキソ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、チオール基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数3~6の飽和若しくは不飽和環状炭化水素基、又はヘテロアリールであり、同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して環を形成してもよい。
【0024】
炭素数1~6の飽和アルキルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が例示される。炭素数1~6の飽和アルキルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基がより好ましい。特に好ましくは、合成の容易さから、炭素数1~6の飽和アルキルはメチル基及びエチル基である。
【0025】
炭素数2~6の不飽和アルキルとしては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基及び5-ヘキセニル基等が例示される。好ましくは、炭素数2~6の不飽和アルキルは、炭素数2~4の直鎖のアルケニル基である。
【0026】
炭素数3~6の飽和又は不飽和環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-オキソシクロヘキシル基、3-オキソシクロヘキシル基、4-オキソシクロヘキシル基、2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、2-アミノシクロヘキシル基、3-アミノシクロヘキシル基、4-アミノシクロヘキシル基、2-シアノシクロヘキシル基、3-シアノシクロヘキシル基、4-シアノシクロヘキシル基、2-メトキシシクロヘキシル基、3-メトキシシクロヘキシル基、4-メトキシシクロヘキシル基、2-メルカプトシクロヘキシル基、3-メルカプトシクロヘキシル基、4-メルカプトシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、シクロプロペニル基、2-シクロブテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1,3-シクロペンタジエニル基、1,4-シクロペンタジエニル基、2,4-シクロペンタジエニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、1,3-シクロヘキサジエニル基、1,4-シクロヘキサジエニル基、1,5-シクロヘキサジエニル基、2,4-シクロヘキサジエニル基、2,5-シクロヘキサジエニル基、フェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2-アミノフェニル基、3-アミノフェニル基、4-アミノフェニル基、2,4-ジアミノフェニル基、2-シアノフェニル基、3-シアノフェニル基、4-シアノフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2-メルカプトフェニル基、3-メルカプトフェニル基、4-メルカプトフェニル基、2,4-ジメルカプトフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基及び4-クロロフェニル基等が例示される。炭素数3~6の飽和又は不飽和環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、4-アミノシクロヘキシル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、4-アミノフェニル基、2,4-ジアミノフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基及び4-メルカプトフェニル基が好ましく、シクロヘキシル基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、4-アミノシクロヘキシル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-アミノフェニル基及び4-メトキシフェニル基がより好ましい。特に好ましくは、合成の容易さから、炭素数3~6の飽和又は不飽和環状炭化水素基は、シクロヘキシル基及びフェニル基である。
【0027】
ヘテロアリールとしては、例えば、環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄及び窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環が挙げられる。ヘテロアリールの炭素数は、2~5個が好ましい。ヘテロアリールの具体例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基及びトリアジニル基等が挙げられる。ヘテロアリールとしては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基及びピリジル基が好ましい。特に好ましくは、ヘテロアリールは、フリル基、チエニル基、ピロリル基及びピリジル基である。
【0028】
同一の炭素に結合した2個のRの炭素同士が結合して形成された環としては、当該同一の炭素をスピロ原子とするシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が例示される。上記の環としては、当該同一の炭素をスピロ原子とするシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが好ましく、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルがより好ましい。特に好ましくは、合成の容易さから、上記の環は、当該同一の炭素をスピロ原子とするシクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0029】
第1段階の反応に用いるシクロブタン-1,3-ジオンは、特に限定されず、市販のものを用いることもできるし、カルボン酸クロライドと塩基との反応、αハロカルボン酸ハライドと亜鉛との反応、及び酸、酸無水物又はケトンの熱分解によって得られるケテンから公知の方法によって合成してもよい。
【0030】
第1段階の反応に用いる還元剤としては、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム等の金属水素化物類、水素化アルミニウムリチウム及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム等の金属水素錯化合物類、ボラン及びボラン・テトラヒドロフラン錯体等のボラン試薬類等が好ましい。還元剤の使用量は、還元剤の種類によって異なるが、例えばテトラヒドロホウ酸ナトリウムを用いた場合は、原料のジケトン1molに対し0.1~2.0mol、特に0.2~0.5molとすることが好ましい。
【0031】
第1段階の反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、いかなる溶媒でも用いることができる。具体的には、溶媒としては、水の他に、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及びジブチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン及びヘプタン等の炭化水素類が挙げられる。これらの中から選択して単独又は2種以上を混合して、第1段階の反応に用いる溶媒としてもよい。
【0032】
第1段階の反応温度は、還元剤によって異なるが、例えばテトラヒドロホウ酸ナトリウムを用いた場合、好ましくは-78℃~60℃、特に-30℃~30℃である。第1段階の反応時間は、ガスクロマトグラフィー(GC)等により反応を追跡して決定することが好ましい。第1段階の反応時間は、例えば0.5~10時間程度である。反応終了後は必要に応じて水を添加した後、例えば、濾過、濃縮、抽出、洗浄(水洗、酸又はアルカリ洗浄等)、蒸留、再結晶及びカラムクロマトグラフィー等の分離精製手段を用いることによって、目的の3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンを得ることができる。
【0033】
第1段階の反応は触媒存在下の水素化反応によっても行うことができる。水素化反応に用いる触媒としては、Pd、Ru、Rh、Pt、Ni及びCu等が挙げられる。好ましくは、水素化反応に用いる触媒は、Ni、Ru又はRhである。これらの金属は、炭素又はアルミナ等の担体に担持されていてもよい。
【0034】
水素化反応に用いる溶媒としては、水素化反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、いかなる溶媒でも用いることができる。具体的には、水素化反応に用いる溶媒は、水の他に、メタノール及びエタノール等のアルコール類、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ニトロメタン、アセトン、酢酸エチル、トルエン及び酢酸等が挙げられる。これらの中から選択して単独又は2種以上を混合して、水素化反応に用いる溶媒としてもよい。
【0035】
水素化反応に用いる触媒は、原料である化合物1質量部に対して0.01~5質量部、好ましくは0.1~2質量部である。水素圧は常圧~100MPa、好ましくは常圧~15MPaである。反応温度は0~180℃、好ましくは20~120℃である。反応時間はGC等により反応を追跡して決定することが好ましい。水素化反応の反応時間は、例えば1~24時間程度である。
【0036】
第1段階の反応において、アルキルグリニャール試薬又はアルキルリチウム試薬等を用いることで、上記一般式(2)中のRがアルキル又は環状炭化水素基で置換された3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンを得ることができる。当該反応に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、いかなる溶媒でも用いることができる。具体的には、溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及びジブチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン及びヘプタン等の炭化水素類が挙げられる。これらの中から選択して単独又は2種以上を混合して、当該反応に用いる溶媒としてもよい。
【0037】
当該反応温度は、-78℃~60℃、好ましくは-60℃~30℃である。反応時間はGC等により反応を追跡して決定することが好ましく、例えば、1~24時間程度である。
【0038】
第2段階の反応は下記に示される反応である。第2段階の反応では、3-ヒドロキシ-シクロブタン-1-オンをエステル化する。エステル化反応は、(メタ)アクリル化反応であってもよい。エステル化によって本実施の形態に係る(メタ)アクリレート化合物が得られる。第2段階の反応は、(メタ)アクリル酸クロリドと塩基とを用いる方法、(メタ)アクリル酸無水物と塩基とを用いる方法、(メタ)アクリル酸を用いた酸触媒エステル化反応、(メタ)アクリル酸とジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤とを用いたエステル化反応等の常法に従って行なうことができる。必要があれば得られた(メタ)アクリレート化合物はクロマトグラフィー、蒸留及び再結晶等の常法により精製することが可能である。
【0039】
【化5】
【0040】
本実施の形態に係る(メタ)アクリレート化合物は、より具体的には、例えば、次の構造式(4)で表される2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレートである。
【0041】
【化6】
【0042】
また、当該(メタ)アクリレート化合物としては、次の構造式(5)~(27)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
好ましくは、本実施の形態に係る上記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート化合物は、上記一般式(1a)で示される繰り返し単位を含有する重合体の原料として用いられる。
【0046】
本実施の形態に係る重合体は上記一般式(1a)の繰り返し単位に加え、レジスト材料としての性能を向上させるために、下記のような重合性炭素-炭素2重結合を有する各種の化合物から得られる繰り返し単位をさらに含有させてもよい。当該繰り返し単位としては、α,β-不飽和カルボン酸類、α,β-不飽和カルボン酸エステル類、α,β-不飽和ニトリル類、α,β-不飽和ラクトン類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイミド類、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン誘導体、アリルエーテル類、ビニルエーテル類及びビニルエステル類等が例示される。
【0047】
より詳細には、α,β-不飽和カルボン酸類は(メタ)アクリル酸等である。α,β-不飽和カルボン酸エステル類は、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル及びマレイン酸エステル等である。α,β-不飽和ニトリル類はアクリロニトリル等である。α,β-不飽和ラクトン類は5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン等である。本実施の形態に係る重合体をレジスト材料に用いる場合、当該重合体は、上記(1a)の繰り返し単位に加え、例えば、アダマンタン骨格を有する単量体及び含酸素複素環基を有するアクリル酸エステルから得られる繰り返し単位をさらに含有させるのが好ましい。好適には、アダマンタン骨格を有する単量体は2-メタクリロイルオキシ-2-メチルアダマンタン(MAdMA)及び1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチル=メタクリレート等である。含酸素複素環基を有するアクリル酸エステルはα-メタクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン(GBLMA)及び5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-2-イル=メタクリレート等である。
【0048】
本実施の形態に係る重合体は、上記一般式(1)に示される(メタ)アクリレート化合物と上記の他の重合性化合物とをラジカル重合、アニオン重合及びカチオン重合等の常法により重合させることにより製造することができる。重合反応の溶媒としては、例えば、エーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシド、アルコール及び炭化水素等が挙げられる。より具体的には、エーテルは、ジエチルエーテル等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル等である。エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル及び乳酸エチル等である。ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等である。アミドは、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等である。スルホキシドは、ジメチルスルホキシド等である。アルコールは、メタノール、エタノール及びプロパノール等である。炭化水素は、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素並びにシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等である。
【0049】
重合反応の溶媒として、上記の重合反応の溶媒を混合した混合溶媒を用いてもよい。重合開始剤として、公知の重合開始剤を使用できる。重合反応の温度は、例えば30~150℃程度の範囲で適宜選択すればよい。
【0050】
本実施の形態に係る重合体の重量平均分子量(Mw)は、例えば1,000~500,000程度、好ましくは2,000~100,000である。ポリスチレン換算の数平均分子量をMnとすると、当該重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.5~3.5である。
【0051】
当該重合体における上記一般式(1a)で示される繰り返し単位のモル分率は、重合体の用途又は特性等に応じて調整される。当該重合体における上記一般式(1a)で示される繰り返し単位のモル分率は、例えば、1~99%、2~80%、3~70%、4~60%又は5~50%、好ましくは、少なくとも5%、8%又は10%である。
【0052】
本実施の形態に係る(メタ)アクリレート化合物は、下記実施例に示すように、他の感光性樹脂との相溶性に優れる。また、本実施の形態に係る重合体は高い透明性を有する。当該重合体をレジスト材料に利用する場合、上記一般式(1a)の繰り返し単位に加え、含酸素複素環基を有するアクリル酸エステルから得られる繰り返し単位を当該重合体にさらに含有させることで、レジスト材料の基板への密着性を高めることができる。
【0053】
なお、本実施の形態に係る(メタ)アクリレート化合物は、改質剤又は添加剤としても利用できる。
【0054】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るレジスト材料は、上記実施の形態1に係る重合体と、酸発生剤と、有機溶剤と、を含む。酸発生剤としては、光酸発生剤及び熱酸発生剤等が使用できる。光酸発生剤は、光を照射されることにより酸を発生する化合物であればよく、好ましくは、300nm以下の高エネルギー線又は電子線の照射により酸を発生する化合物である。当該光酸発生剤と上記実施の形態1に係る重合体と、有機溶剤と、を含むレジスト材料が均一溶液で、均一な塗布、製膜が可能であれば、いかなる酸発生剤でもよい。
【0055】
例えば、酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、スルホン酸エステル、オキサチアゾール誘導体、s-トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン及びベンゾイントシレート等が例示される。
【0056】
具体的には、ヨードニウム塩はジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェート等である。スルホニウム塩は、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート及びトリフェニルスルホニウムメタンスルホネート等である。スルホン酸エステルは、1-フェニル-1-(4-メチルフェニル)スルホニルオキシ-1-ベンゾイルメタン、1,2,3-トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3-ジニトロ-2-(4-フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン及び1-フェニル-1-(4-メチルフェニルスルホニルオキシメチル)-1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルメタン等である。ジスルホン誘導体はジフェニルジスルホン等である。上記の酸発生剤の2種以上組み合わせて酸発生剤として使用してもよい。
【0057】
上記レジスト材料における酸発生剤の含有量は、生成する酸の強度又は上記重合体における各モノマー単位の比率等に応じて適宜選択できる。レジスト材料における酸発生剤の含有量は、例えば、上記重合体100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部の範囲から適宜選択される。
【0058】
有機溶剤としては、上記実施の形態1に係る重合体及び上記酸発生剤等が溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類及びラクトン類が挙げられる。具体的には、ケトン類は、シクロヘキサノン等である。アルコール類は、1-メトキシ-2-プロパノール及び1-エトキシ-2-プロパノール等である。エーテル類は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテル等である。エステル類は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル及び3-エトキシプロピオン酸エチル等である。ラクトン類はγ-ブチロラクトン等である。上記の有機溶剤の2種以上組み合わせた混合溶剤を有機溶剤として使用してもよい。好適には、有機溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテルや1-エトキシ-2-プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤である。
【0059】
レジスト材料における有機溶剤の含有量は、酸発生剤の種類又は上記重合体における各モノマー単位の比率等に応じて適宜選択できる。レジスト材料における有機溶剤の含有量は、例えば、上記重合体100重量部に対して100~10000質量部、好ましくは150~8000質量部、さらに好ましくは200~2000重量部の範囲から適宜選択される。
【0060】
本実施の形態に係るレジスト材料は、必要に応じて、上記一般式(1a)の繰り返し単位を含まない他の重合体、溶解阻止剤、酸性化合物、塩基性化合物、安定剤、色素及び界面活性剤等の他の成分を添加してもよい。
【0061】
本実施の形態に係るレジスト材料を使用したパターンの形成は、公知のリソグラフィー技術で行うことができる。例えば、パターン形成方法は、基板上に、当該レジスト材料を用いてレジスト膜を形成する膜形成ステップと、高エネルギー線を用いてレジスト膜にパターンを照射する照射ステップと、現像液を用いてレジスト膜を現像する現像ステップとを含む。
【0062】
膜形成ステップでは、スピンコーティング等の手法で所定の膜厚となるようにレジスト材料を基板上に塗布し、60~150℃に加熱してレジスト材料に含まれている有機溶剤を蒸発させる。これによりレジスト膜が形成される。
【0063】
照射ステップでは、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、又は直接、ビーム露光により、高エネルギー線をレジスト膜に照射する。露光は、通常の露光法の他、マスクとレジスト膜との間を液浸する液浸法を用いてもよい。この場合、水に不溶な保護膜を用いてもよい。
【0064】
現像ステップでは、アルカリ水溶液の現像液を用いて、浸漬法、パドル法及びスプレー法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンを形成する。その後、レジスト膜を洗浄し、ポストベークステップ等を適宜行ってもよい。
【0065】
本実施の形態に係るレジスト材料は、上記実施の形態1に係る重合体を含有する。当該重量体は、下記実施例に示すように他の感光性樹脂との相溶性に優れる上記実施の形態1に係る(メタ)アクリレート化合物を原料とするため、他の重合性化合物の単量体とのランダム重合体となりやすい。このため、当該レジスト材料は、レジスト用の溶媒に溶解しやすく、基板にレジストパターンを形成しやすいという利点がある。また、当該レジスト材料は、現像液に対する溶解性が均一であるため、微細なパターンを精度よく形成できる。
【0066】
なお、別の実施の形態では、上記レジスト材料から得られる硬化膜が提供される。また、他の実施の形態では、当該硬化膜を透明保護膜として有するカラーフィルター又は当該硬化膜を有する電子デバイスが提供される。
【実施例
【0067】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例における各測定は、下記の方法により行った。
【0068】
(重量平均分子量及び数平均分子量)
Mw及びMnは、次のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析で決定した。GPCカラム(東ソー社製、G2000HXL:2本及びG4000HXL:2本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:0.3質量%、試料注入量:50μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより各重合体のMw及びMnを測定した。各重合体のMw/Mnは、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0069】
13C-NMR分析)
各重合体における各構造単位の含有割合(mol%)は、JNM-ECP400(日本電子社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用した13C-NMR分析により求めた。
【0070】
(2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレートの合成)
以下の工程I~IIIにより、2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレートを合成した。
【0071】
[工程I]
2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオン(150g,1.1mol)をメタノール(1500g)に溶解させ-30℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(10.2g、0.27mol)を少しずつ加えた。反応終了後、反応混合物に濃塩酸(28.8g)を加えた。続いて減圧濃縮することにより、3-ヒドロキシ-2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1-オンの粗体を得た。
【0072】
[工程II]
工程Iで得た3-ヒドロキシ-2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1-オンの粗体をトルエン(450ml)に溶解させ、不溶物をろ過後、-10℃に冷却し、ヘプタン(250ml)を加えた。析出した結晶を吸引ろ過で集めることにより無色固体(123g、0.86mol)を得た。
【0073】
H-NMR(CDCl;δppm):3.95(d,J=5.0Hz,1H)、1.86(d,J=5.0Hz,1H)、1.22(s,6H)、1.18(s,6H)
【0074】
[工程III]
工程IIで得た3-ヒドロキシ-2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1-オン(150g,1.1mol)、メタクリル酸無水物(212g,1.4mol)及びIrganox1076(0.21g)を酢酸エチル(1350g)に溶解させ40℃に加温し、トリエチルアミン(145g,1.4mol)を滴下した。混合物を40℃に保ったまま5時間撹拌した。反応液をGCで分析したところ、反応転化率98.7%であった。
【0075】
反応終了後、反応混合物を5%塩化ナトリウム水溶液(1000g)で1回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(1000g)で2回、10%塩化ナトリウム水溶液(1000g)で2回洗浄した。有機層を減圧濃縮することにより、2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレートの粗体(203g)を得た。粗体を蒸留精製することにより、2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレート(化合物1)の無色液体(161g、0.76mol)を得た。GCで純度を測定したところ、純度は97.9%であった。
【0076】
H-NMR(CDCl;δppm):6.18(m,1H)、5.63(m,1H)、4.74(s,1H)、1.99(m,3H)、1.32(s,6H)、1.18(s,6H)
【0077】
(実施例1)
実施例1として、次の組成式の樹脂を以下のように合成した。
【化9】
(式中、x:y:z=0.59:0.09:0.32である。)
【0078】
還流管、撹拌子及び3方コックを備えた100mlシュレンク管にGBLMA2.06g(12mmol)、MAdMA1.54g(6.6mmol)、2,2,4,4-テトラメチル-3-オキソシクロブチルメタクリレート0.40g(1.9mmol)、及びN,N’-アゾビスイソブチロニトリル0.40gを入れ、THF(テトラヒドロフラン)16.0gに溶解させた。続いて、フラスコ内を乾燥窒素置換した後、反応系の温度を60℃に保ち、窒素雰囲気下、6時間撹拌した。反応液をヘキサンと酢酸エチルとの9:1(25℃での体積比)混合液500mlに添加し、生じた沈殿物を濾別することで精製を行った。回収した沈殿を減圧乾燥後、再度THF16.0gに溶解させ、上述の沈殿精製操作を繰り返すことにより所望の樹脂3.33gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mwが16600、Mw/Mnが1.83であった。13C-NMR分析により求めた実施例1における各構造単位の含有割合は、GBLMA:化合物1:MAdMA=0.59:0.09:0.32であった。
【0079】
(比較例1)
比較例1として、次の組成式の樹脂を以下のように合成した。
【化10】
(式中、x:y=0.64:0.36である。)
【0080】
還流管、撹拌子及び3方コックを備えた100mlシュレンク管にGBLMA2.24g(13mmol)、MAdMA1.76g(7.5mmol)、及びN,N’-アゾビスイソブチロニトリル0.40gを入れ、THF16.00gに溶解させた。続いて、フラスコ内を乾燥窒素置換した後、反応系の温度を60℃に保ち、窒素雰囲気下、6時間撹拌した。反応液をヘキサンと酢酸エチルとの9:1(25℃での体積比)混合液500mlに添加し、生じた沈殿物を濾別することで精製を行った。回収した沈殿を減圧乾燥後、再度THF16.0gに溶解させ、上述の沈殿精製操作を繰り返すことにより所望の樹脂3.52gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mwが10400、Mw/Mnが2.47であった。13C-NMR分析により求めた比較例1における各構造単位の含有割合は、GBLMA:MAdMA=0.64:0.36であった。
【0081】
(比較例2)
比較例2として、次の組成式の樹脂を以下のように合成した。
【化11】
(式中、x:y:z=0.59:0.09:0.32である。)
【0082】
還流管、攪拌子及び3方コックを備えた100mlシュレンク管にGBLMA2.06g(12mmol)、MAdMA1.54g(6.6mmol)、1-メタクリロイルオキシ-3-ヒドロキシアダマンタン(HAdMA)0.40g(1.7mmol)、及びN,N’-アゾビスイソブチロニトリル0.40gを入れ、THF16.00gに溶解させた。続いて、フラスコ内を乾燥窒素置換した後、反応系の温度を60℃に保ち、窒素雰囲気下、6時間撹拌した。反応液をヘキサンと酢酸エチルとの9:1(25℃での容積比)混合液500mlに添加し、生じた沈殿物を濾別することで精製を行った。回収した沈殿を減圧乾燥後、再度THF16.0gに溶解させ、上述の沈殿精製操作を繰り返すことにより所望の樹脂3.15gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mwが12200、Mw/Mnが2.37であった。13C-NMR分析により求めた比較例2における各構造単位の含有割合は、GBLMA:HAdMA:MAdMA=0.59:0.09:0.32であった。
【0083】
(重合体のレジスト溶媒への溶解性の評価)
実施例1及び比較例1、2の重合体それぞれについて、重合体0.50gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.0gと混合して、重合体濃度14重量%の溶液を調製した。実施例1の重合体は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに完全に溶解した。一方、比較例1の重合体及び比較例2の重合体は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに完全には溶解しなかった。
【0084】
(重合体のランダム性の評価)
実施例1の重合体0.50gをシクロペンタノン3.0gに溶解したのち、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターを用いて濾過した。得られた溶液を石英基板上にNo.36のバーコーターを用いて塗布し、ホットプレートで90℃、180秒間の熱処理を施して、膜厚10μmの薄膜を形成した。比較例1及び比較例2についても同様にバーコーターを用いて、それぞれ膜厚10μm及び9μmの薄膜を形成した。これら薄膜について、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH4000)を用いてヘーズ値を測定した。なお、ヘーズ値が低いほど、分子間或いは分子内での組成分布が小さく、ランダム性の高い共重合体であることを示す。
【0085】
実施例1で形成した薄膜のヘーズ値は0.10%であった。比較例1及び比較例2で形成した薄膜のヘーズ値は、それぞれ0.43%及び0.17%であった。
【0086】
(重合体の透明性の評価)
実施例1及び比較例1、2の重合体それぞれについて、上記と同様に薄膜を形成した。当該薄膜について、紫外可視分光光度計を用いて193nmにおける1μmあたりの透過率を測定した。
【0087】
実施例1で形成した薄膜の透過率は91.4%であった。比較例1及び比較例2で形成した薄膜の透過率は、それぞれ76.8%及び91.4%であった。
【0088】
表1は、実施例1、比較例1及び比較例2の組成(繰り返し単位のモル分率)、レジスト溶媒への溶解性、ヘーズ値及び透過率を示す。なお、表1では、レジスト溶媒への溶解性では、「○」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに完全に溶解することを表し、「×」が完全に溶解しないことを表す。
【0089】
【表1】
【0090】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、レジスト材料、特にはフォトレジスト材料に好適である。